JP6917239B2 - タンパク質およびその製造方法、タンパク質組成物ならびにそれを用いたnmnの測定方法および測定組成物 - Google Patents

タンパク質およびその製造方法、タンパク質組成物ならびにそれを用いたnmnの測定方法および測定組成物 Download PDF

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本発明は耐熱性が高く、かつ高比活性なNMNATおよびその製造方法、タンパク質組成物ならびにそれを用いた検体中NMNの高感度測定方法および測定組成物に関する。
ニコチンアミドモノヌクレオチド(以下NMNと記載)は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下NADと記載)の中間代謝産物である。NMNはサーチュインと呼ばれる抗老化に関与する酵素の一つであるSIRT1を活性化することが報告されており(例えば非特許文献1)、NMNの投与による作用として、インスリン抵抗性改善や脂質異常症の改善(例えば非特許文献1)、ミトコンドリア機能改善(例えば非特許文献2)、老化に伴う体重増加の抑制やエネルギー代謝亢進、老化に関する遺伝子の抑制(例えば非特許文献3)などが報告されている。また、NMNは初期の糖尿病性腎症の予後マーカーとして使用できることも報告されている(例えば非特許文献4)。
NMNの測定方法はニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(Nicotinamide mononucleotide adenylyltransferase、以下NMNATと記載)を用いた測定方法が知られている(例えば特許文献1)。
NMNATは真核生物から原核生物、古細菌にいたるまで様々な生物種で同定されている。真核生物由来のものとしては例えば、Homo sapiens(例えば非特許文献5)、マウス(例えば非特許文献6)、ブタ肝臓(例えば非特許文献7)、シロイヌナズナ(例えば非特許文献8)、Saccharomyces cerevisiae(例えば非特許文献9)由来などのNMNATが報告されている。また、原核生物由来のものとしては例えば、Escherichia coli(例えば非特許文献9、10)、Bacillus subtilis(例えば非特許文献11)由来などのNMNATが、古細菌由来のものとしては、Methanococcus jannaschii(例えば非特許文献12)、Sulfolobus solfataricus(例えば非特許文献13)、Pyrococcus horikoshii(例えば非特許文献14)由来NMNATなどが知られている。
これらのNMNATのいくつかについては熱安定性が調べられている。Saccharomyces cerevisiae由来NMNATは65℃、5分間のインキュベーションで65%の活性が失われ、Escherichia coli由来NMNATは60℃、5分間のインキュベーションで95%の活性が失われるという報告があり(例えば非特許文献9)、公知の真核生物および原核生物由来NMNATの熱安定性は低い。一方、Methanococcus jannaschii由来NMNATは70℃で6時間のインキュベーションで安定(例えば非特許文献12)、Sulfolobus solfataricus由来NMNATは80℃で2時間のインキュベーションで安定(例えば非特許文献13)、Pyrococcus horikoshii OT−3由来NMNATは80℃で30分間のインキュベーションで安定(例えば非特許文献14)という報告があり、古細菌由来のNMNATの熱安定性は高い。
一方、古細菌由来のNMNATの比活性についても報告があり、Methanococcus jannaschii由来NMNATの比活性は70℃条件下で187 U/mg(例えば非特許文献12)、Sulfolobus solfataricus由来NMNATの比活性は70℃条件下で8.8 U/mg(例えば非特許文献12)、Pyrococcus horikoshii OT−3由来NMNATの比活性は70℃条件下で14.9 U/mg(例えば非特許文献13)である。特に、Methanococcus jannaschii由来NMNは比活性が高く、37℃においても高い比活性を有していると考えられる。
一方、古細菌由来NMNATを大腸菌で組換えタンパク質として生産した場合の生産量は、Methanococcus jannaschii由来NMNATでは3〜4 mg/培養液1L(非特許文献12)、Pyrococcus horikoshii OT−3由来NMNATでは3.3 mg/培養液7L(例えば非特許文献13)と少ない。
なお、Thermus thermophilus HB8 DSM579株のゲノム配列はすでに解読されている(International Nucleotide Sequence DatabaseのAccession No.AP008226)。
特開昭59−166099
Cell. Metab. 14(4), 528−536, 2011 Cell. 155(7), 1624−1638, 2013 Cell. Metab. 24(6), 795−806, 2016 Curr. Hypertens. Rev. 12(2), 95−104, 2016 Front. Biosci(Landmark Ed). 14, 410−431, 2009 PLos. One. 7(12), e53271, 2012. Biochem. J. 80, 318−323, 1961 Plant. J. 49(4), 694−703, 2007 Arch. Biochem. Biophys. 120(2), 440−450, 1967 J. Bacteriol. 181(17), 5509−5511, 1999 J. Biol. Chem. 277(5), 3698−3707, 2001 Methods Enzymol. 331, 292−298, 2001 J. Bacteriol. 179(24), 7718−7723, 1997 J. Mol. Catal. B. Enzym. 23, 273−279, 2003
NMNの測定用組成物や測定用キットを作製するにあたり、保存安定性を向上させるためには含有するNMNATの熱安定性が高いものが望ましい。また、酵素の使用量を減少させるために比活性が高いものが望ましい。さらに、測定用組成物や測定用キットの培養コストを低減するために使用するNMNATの培養液1Lあたりの生産量は多いことが好ましい。
本発明が解決しようとする課題は、熱安定性が高く、かつ、比活性の高いタンパク質およびその製造方法ならびにタンパク質組成物を提供し、保存安定性が高く、かつ高感度にNMN測定が可能なNMNの測定用組成物や測定キットを安価に提供することである。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、熱安定性と比活性とが高いNMNAT活性を有するタンパク質を見出した。本タンパク質は、培養液1Lあたりの生産量が高いことを初めて見出した。本発明のタンパク質の特性を利用して、保存安定性が高く、かつ高感度なNMNの測定用組成物や測定キットを安価に創出できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明としては以下のものが挙げられる。
[1]
以下の(1)〜(3)の性質を有する、タンパク質。
(1)NMNにアデノシン三リン酸のアデニル酸を転移しNADを生成する活性を有する。
(2)70℃で45分間安定である。
(3)比活性が15(μmol/min/mg)以上である。
[2]
以下の(4)の性質をさらに有する、タンパク質。
(4)Thermus thermophilus由来であるか、またはThermus thermophilus由来の遺伝子の移入による形質転換体由来である。
[3]
以下の(5)〜(7)の性質をさらに有する、[1]または[2]に記載のタンパク質。
(5)SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で測定した前記タンパク質の分子量が20,000〜30,000である。
(6)ニッケルイオンで活性化される。
(7)至適pHが7〜8である。
[4]
以下の(a)〜(c)のいずれかである、[1]〜[3]のいずれかに記載のタンパク質。
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質
(c)配列番号1に示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質
[5]
[1]〜[4]のいずれかに記載のタンパク質を含む、タンパク質組成物。
[6]
以下の(A)〜(C)のいずれかを含むポリヌクレオチド。
(A)配列番号2に示される塩基配列
(B)配列番号2に示される塩基配列において、1もしくは複数個の塩基が置換、欠失、挿入、および/または付加された塩基配列を有し、かつ、NMNにアデノシン三リン酸のアデニル酸を転移しNADを生成する活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
(C)配列番号2に示す塩基配列と80%以上の配列同一性を有し、かつ、NMNにアデノシン三リン酸のアデニル酸を転移しNADを生成する活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
[7]
以下の(A)〜(C)のいずれかを含むポリヌクレオチド。
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列
(B)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、NMNにアデノシン三リン酸のアデニル酸を転移しNADを生成する活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
(C)配列番号1に示されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列
[8]
[6]または[7]に記載のポリヌクレオチドを含む、組換えベクター。
[9]
[8]に記載の組換えベクターを導入した、形質転換体。
[10]
配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子を組換えベクターに挿入する工程と、前記工程で得られた組換えベクターを用いて宿主細胞を形質転換し、形質転換体を製造する工程と、前記工程で得られた形質転換体を培地に培養し、培養液からNMNにアデノシン三リン酸のアデニル酸を転移しNADを生成する活性を有するタンパク質を採取する工程を含む、タンパク質の製造方法。
[11]
宿主細胞が微生物である、[10]に記載の製造方法。
[12]
以下の工程(A)〜(D)を含む、NMNを測定する方法。
(A)試料と[1]〜[4]のいずれかに記載のタンパク質または[5]に記載のタンパク質組成物とを接触せしめ、試料中のNMNをNADに変換せしめる工程
(B)変換された試料中のNADを下記式(1)の酵素サイクリング法により反応せしめる工程
Figure 0006917239
(C)ホルマザン色素の変化量に対応するシグナルの変化量を検出する工程
(D)検出されたシグナルの変化量に基づき、試料が含有するNMNの量を算出する工程
[13]
テトラゾリウム塩が2‐(2‐メトキシ‐4‐ニトロフェニル)‐3‐(4−ニトロフェニル)‐5‐(2、4‐ジスルホフェニル)‐2H‐テトラゾリウム一ナトリウム(以下、WST−8)である、[12]に記載の方法。
[14]
脱水素酵素が12α−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼである、[12]または[13]に記載の方法。
[15]
下記の成分を含む、NMNの測定用組成物。
(A)[1]〜[4]のいずれかに記載のタンパク質または[5]に記載のタンパク質組成物
(B)NADをNADHに変換せしめる脱水素酵素
(C)脱水素酵素の基質
(D)テトラゾリウム塩
(E)テトラゾリウム塩をホルマザン色素に変換せしめる還元酵素
[16]
テトラゾリウム塩がWST−8である、[15]に記載の測定用組成物。
[17]
脱水素酵素が12α−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼである、[15]または[16]に記載の測定用組成物。
[18]
[15]〜[17]のいずれかに記載の測定用組成物を用いて、被検体由来の試料中のNMNの量を算出する工程を含む、NMNが関与する疾患および/または状態を、診断および/または管理する方法。
[19]
NMNが関与する疾患および/または状態が、インスリン抵抗性、脂質異常症、糖尿病性腎症、またはアルツハイマー病である[18]に記載の方法。
[20]
NMNが関与する疾患および/または状態の診断および/または管理用組成物である、[15]〜[17]のいずれかに記載の測定用組成物。
[21]
前記NMNが関与する疾患および/または状態が、インスリン抵抗性、脂質異常症、糖尿病性腎症、またはアルツハイマー病である[20]に記載の測定用組成物。
本発明によれば、熱安定性と比活性が高く、生産量の多いThermus thermophilus HB8 DSM579株由来組換え体NMNATを取得することにより、保存安定性が高く、かつ高感度なNMNの測定用組成物や測定キットを安価に製造することが可能となった。
実施例4において、組換え体NMNATの熱安定性。 実施例5において、金属塩の種類と濃度を変えた時の組換え体NMNATの示す比活性。 実施例6において、緩衝液および各pHにおけるNMNATの相対活性。 実施例7において、0〜10 μMのβ‐NMNを試料とした時の10分間の反応時間の反応タイムコース。 実施例7において、0〜10 μMのβ‐NMNを試料とした時の1分間あたりの吸光度変化。
本発明は、以下の(1)〜(3)の性質を有する、タンパク質(以下、NMNATとも記載)である。
(1)NMNにアデノシン三リン酸のアデニル酸を転移しNADを生成する活性を有する。
(2)70℃で45分間安定である。
(3)比活性が15(μmol/min/mg)以上、好ましくは17(μmol/min/mg)以上、より好ましくは19(μmol/min/mg)以上である。
本明細書において、「安定」とは、70℃で45分間処理する前に対して、その処理をした後のNMNにアデノシン三リン酸のアデニル酸を転移しNADを生成する活性が、90%以上残存することを意味し、好ましくは93%以上、より好ましくは96%以上残存する。
本発明のタンパク質は、以下の(5)〜(7)の性質をさらに有することがさらに好適である。
(5)SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で測定した本発明のタンパク質の分子量が20,000〜30,000である。
(6)ニッケルイオンで活性化される。
(7)至適pHが7〜8である。
本明細書において、「活性化される」とは、NMNにアデノシン三リン酸のアデニル酸を転移しNADを生成する活性が、金属塩(例えばニッケルイオン)が存在しない場合に比べて強まることを意味する。
本発明のタンパク質は、金属塩の存在下で活性化される。金属塩としては、例えばNiCl2、CoCl2、MgCl2、およびMnCl2が挙げられ、その濃度は例えば、下限が1 mM以上、好ましくは2 mM以上、より好ましくは4 mM以上、上限は特に設けないが好ましくは8 mM以下、よりに好ましくは6 mM以下である。
本明細書において、「至適pH」とは、NMNにアデノシン三リン酸のアデニル酸を転移しNADを生成する活性を高く保つことができるpHの領域を意味する。pHは、公知の緩衝液、酸や塩基により調整することができ、もちろんそれらは用いなくともよい。
本発明のタンパク質(以下NMNATとも記載)は、(1)〜(3)の性質を有する以外には、由来、剤型、結晶型、添加物、商品名等により限定されない。
本発明のタンパク質は、NMNにアデノシン三リン酸のアデニル酸を転移しNADを生成する活性を有するものであれば由来は限定されず、例えば天然の生物由来であってもよいが、培養等が容易で酵素の取得が容易となる点で、微生物由来である酵素が好ましい。好ましい微生物由来の本発明のタンパク質としては、例えばThermus属由来のものが挙げられ、Thermus thermophilus由来のものがより好ましい。つまり、本発明のタンパク質は、以下の(4)の性質をさらに有することがより好ましい。
(4)Thermus thermophilus由来であるか、またはThermus thermophilus由来の遺伝子の移入による形質転換体由来である。
このような微生物はバイオリソースセンターから購入可能(例えば、ドイツのDSMZなどから)である。
分離した微生物の同定は、実験書(鈴木健一朗ら、微生物の分類・同定実験法― 分子遺伝学・分子生物学的手法を中心に、シュプリンガー・フェアラーク東京)等に従うことにより同定することができ、又、市販の各種菌株同定キット(日本ビオメリュー社等)を使用することによっても可能であり、さらには、財団法人日本食品分析センター(東京都渋谷区元代々木町52番1号)等に依頼して同定することもよい。
かくして得られた本発明のタンパク質を形成する天然の微生物は、さらにNTG等の薬剤、紫外線、および/または放射線で処理した変異株とすることもできる。該変異株によって、本発明のタンパク質の生産性を向上することや、本発明のタンパク質の変異体を形成させることが可能であり、安定性、生産性、反応性等が優れた性質を有する変異体を形成することも可能である。
また、得られた本発明のタンパク質をコードする塩基配列やその情報は、本発明のタンパク質やそれを形成する天然の微生物を用いた、プロテインシーケンス、DNAシーケンスや公知遺伝子工学手法で取得できる。配列番号2は、本発明のタンパク質において好ましい例であるThermus thermophilus由来の遺伝子の塩基配列を示す。
本発明のタンパク質は、(1)〜(3)の性質を有するものであれば特に限定されないが、例えば以下の(a)〜(c)のいずれかであるタンパク質が挙げられる。
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質
(c)配列番号1に示されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質
本明細書において、「1もしくは複数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、および/または付加された」という場合、置換、欠失、挿入等されるアミノ酸の個数は、結果として得られるタンパク質がNMNにアデノシン三リン酸のアデニル酸を転移しNADを生成する活性を有する限り特に限定されない。また、ここでの「複数個」は、2以上の整数個を意味し、好ましくは2〜20個、より好ましくは2〜10個、さらに好ましくは2〜5個、よりさらに好ましくは2個、3個、4個である。タンパク質における置換、欠失、挿入等の位置は、結果として得られるタンパク質がNMNにアデノシン三リン酸のアデニル酸を転移しNADを生成する活性を有する限り、N末端でも、C末端でも、その中間であってもよい。
本明細書において、「配列番号Xに示されるアミノ酸配列とY%以上の配列同一性を有する」とは、2つのタンパク質のアミノ酸配列の一致が最大になるように整列(アライメント)させたときに、共通するアミノ酸残基数の、配列番号Xに示す全アミノ酸数に対する割合が、Y%以上であることを意味する。
本発明のタンパク質の二次構造、三次構造、および四次構造は、特に限定されない。
本発明は、本発明のタンパク質を含むタンパク質組成物である。本発明のタンパク質組成物は、適宜必要に応じて、安定化剤又は賦型剤として、各種の塩類、糖類、酵素、脂質、界面活性化剤等をさらに含んでもよい。また、適宜必要に応じて本発明のタンパク質組成物を凍結乾燥する場合、本発明のタンパク質組成物は、安定化剤又は賦型剤としてサッカロース、マンニトール、食塩、アルブミン等を好ましくは0.5〜10質量%を含んでもよい。
本発明は、以下の(A)〜(C)のいずれかを含むポリヌクレオチドである。
(A)配列番号2に示される塩基配列
(B)配列番号2に示される塩基配列において、1もしくは複数個の塩基が置換、欠失、挿入、および/または付加された塩基配列を有し、かつ、NMNにアデノシン三リン酸のアデニル酸を転移しNADを生成する活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
(C)配列番号2に示す塩基配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の同一性を有し、かつ、NMNにアデノシン三リン酸のアデニル酸を転移しNADを生成する活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
本明細書において、「1もしくは複数個の塩基が置換、欠失、挿入、および/または付加された」という場合、置換、欠失、挿入等される塩基の個数は、結果として得られるポリヌクレオチドがNMNにアデノシン三リン酸のアデニル酸を転移しNADを生成する活性を有するタンパク質をコードする限り特に限定されない。また、ここでの「複数個」は、2以上の整数個を意味し、好ましくは2〜60個、より好ましくは2〜15個、さらに好ましくは2〜5個、よりさらに好ましくは2個、3個、4個である。ポリヌクレオチドにおける置換、欠失、挿入等の位置は、結果として得られるポリヌクレオチドがNMNにアデノシン三リン酸のアデニル酸を転移しNADを生成する活性を有するタンパク質をコードする限り、3’末端でも、5’末端でも、その中間であってもよい。
本明細書において、「配列番号Xに示される塩基配列とY%以上の配列同一性を有する」とは、2つのポリヌクレオチドの塩基配列の一致が最大になるように整列(アライメント)させたときに、共通する塩基数の、配列番号Xに示す全塩基数に対する割合が、Y%以上であることを意味する。
また、本発明は、以下の(A)〜(C)のいずれかを含むポリヌクレオチドであってもよい。
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列
(B)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、NMNにアデノシン三リン酸のアデニル酸を転移しNADを生成する活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
(C)配列番号1に示されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列
常法を用いて宿主細胞に導入することにより本発明のポリヌクレオチドを含む、本発明の形質転換体を得ることができる。そのためには、形質転換体において導入ポリヌクレオチドを発現させるための組換えベクターとして、本発明のポリヌクレオチドを導入(挿入)した本発明の組換えベクターを使用することができる。このような組換えベクターとしては、微生物、好ましくは原核細胞、より好ましくはEscherichia属細菌を宿主細胞として導入し、得られた形質転換体を培養した場合に、NMNATを含む培養物が得られる組換えベクターであれば特に限定されないが、宿主細胞内で自律的に増殖し得るファージまたはプラスミドのうち、遺伝子組換え用として構築されたものが好ましい。
本発明は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子を組換えベクターに挿入する工程と、前記工程で得られた組換えベクターを用いて宿主細胞を形質転換し、形質転換体を製造する工程と、前記工程で得られた形質転換体を培地に培養し、培養液からNMNにアデノシン三リン酸のアデニル酸を転移しNADを生成する活性を有するタンパク質を採取する工程を含む、タンパク質の製造方法(以下、NMNATの製造方法とも記載)である。
本発明は、以下の工程(A)〜(D)を含む、NMNを測定する方法(以下測定方法と記載)である。
(A)試料と本発明のタンパク質(NMNAT)またはタンパク質組成物とを接触せしめ、試料中のNMNをNADに変換せしめる工程
(B)変換された試料中のNADを下記式(1)の酵素サイクリング法により反応せしめる工程。
Figure 0006917239
(C)ホルマザン色素の変化量に対応するシグナルの変化量を検出する工程
(D)検出されたシグナルの変化量に基づき、試料が含有するNMNの量を算出する工程
本発明の測定方法の工程(A)は、NMNをNADに変換せしめる工程であり、特に限定されないが、例えば特許文献1に記載されるように(例えば特許請求の範囲)、NMNおよびATP(アデノシン三リン酸)を含む試料に、金属イオン(例えばマグネシウムイオン、ニッケルイオン、コバルトイオン、マンガンイオン、好ましくはニッケルイオン、コバルトイオン、より好ましくはニッケルイオン)の存在下で本発明のタンパク質またはタンパク質組成物を接触せしめ、NMNをNADに、ATPをピロリン酸(PPi)に変換させることができる。このようにNMNをNADに変換する方法については、上記の方法に限定されず、公知の方法であればいずれも採用することができる。
本発明の測定方法の工程(A)において使用するNMNATの量は、試料中のNMNが測定できれば特に限定されず、試料に含まれるNMNの存在量、目的とするNMNを変換せしめる程度、使用する装置、NMNATの純度、および/または経済的な事情等に応じて好ましい結果が得られるように決定し得る。本発明の測定方法の工程(A)において、更に、ATP等を使用する場合、その種類と量についても同様である。
本発明の測定方法の工程(A)において使用するNMNATの量は、例えば、下限が0.01 U/mL以上、好ましくは0.1 U/mL以上、より好ましくは0.5 U/mL以上、上限は特に設けないが、100 U/mL以下、好ましくは50 U/mL以下、より好ましくは20 U/mL以下である。
本発明の測定方法の工程(A)は、少なくともATPの存在下であることが好ましい。上記条件下で使用するATPの量は、例えば、下限が0.01 mM以上、好ましくは0.1 mM以上、より好ましくは0.5 mM以上、上限は特に設けないが好ましくは50 mM以下、よりに好ましくは20 mM以下である。
本発明の測定方法の工程(A)は、少なくとも金属イオンとして金属塩(例えばNiCl2、CoCl2、MgCl2、MnCl2)の存在下であることが好ましい。上記条件下で使用する金属塩の量は、例えば、下限が0.01 mM以上、好ましくは0.1 mM以上、より好ましくは1.0 mM以上、さらに好ましくは2.0 mM以上、上限は特に設けないが好ましくは30 mM以下、よりに好ましくは10 mM以下である。
本発明の測定方法の工程(B)は、工程(A)にて変換された試料中のNADの変化量を検出する方法である。NADの変化量は公知の方法で検出することができる。一般的にはNADの変化に伴う吸光スペクトルや吸光強度の変化を装置を用いて光学的方法で検出する方法が例示され、NADの酸化還元に伴う吸収スペクトルや特定波長における吸光強度の変化を検出する方法でもよい。NADの酸化還元に伴う電位差を測定する場合は電極を使用することもできる。また、感度向上等を目的としてNADサイクリング反応を用いることもできる。
本発明の工程(B)は下記式(1)の酵素サイクリング法により反応せしめNADの変化量を定量する工程であり、使用する酵素サイクリング法は特に限定されないが、例えば特許第4127767号公報に記載されるようにサイクリング反応をさせることができる。このようにNADのサイクリング反応を用いてNADを定量する方法については、上記の方法に限定されず、公知の酵素サイクリング法であればいずれも採用することができる。
式(1)中の脱水素酵素の基質(式(1)中では、脱水素酵素基質と記載)としては、特に限定されないが、L−ラクテート、エタノール、グリセロール、グリセロール−3−ホスフェート、グルコース、L−マレート、L−グルタメイト、3α−ヒドロキシステロイド、および12α−ヒドロキシステロイドが挙げられる。この中でも好ましくは、12α−ヒドロキシステロイドであり、より好ましくはコール酸(塩)である。
脱水素酵素の基質の量は、12α−ヒドロキシステロイドを使用する場合、使用するコール酸の量は、例えば、下限が0.01 mM以上、好ましくは0.1 mM以上、より好ましくは0.2 mM以上、さらに好ましくは1.0 mM以上、上限は特に設けないが好ましくは100 mM以下、よりに好ましくは50 mM以下である。
式(1)中の脱水素酵素としては、脱水素酵素の基質を反応生成物に変換できる酵素であれば特に限定されず、12α−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、ラクテートデヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、グリセロールデヒドロゲナーゼ、グリセロール−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、マレートデヒドロゲナーゼ、グルタメイトデヒドロゲナーゼ、3α−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、および12α−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼが挙げられる。この中で好ましくは12α−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼである。
脱水素酵素の量は、12α−ヒドロキシステロイドを使用する場合、使用する12α−ヒドロキシステロイドの量は、例えば、下限が0.1 U/mL以上、好ましくは0.2 U/mL以上、より好ましくは1.0 U/mL以上、さらに好ましくは2.0 U/mL以上、上限は特に設けないが好ましくは100 U/mL以下、よりに好ましくは50 U/mL以下である。
式(1)中の反応生成物としては、脱水素酵素の基質によって適宜変わるため特に限定されないが、例えば、ピルビン酸、アセトアルデヒド、ジヒドロキシアセトン、ジヒドロキシアセトンホスフェート、グルコノ−δ−ラクトン、オキサロ酢酸、2−オキソグルタレイト、3−ケトステロイド、および12−ケトステロイドが挙げられる。
式(1)中のテトラゾリウム塩としては、特に限定されないが、例えば、2−(2−メトキシ−4−ニトロフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム一ナトリウム(WST−8)、2−(4−インドフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム一ナトリウム、2−(4−インドフェニル)−3−(2,4−ジニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム一ナトリウムが挙げられる。この中で好ましくはWST−8である。
テトラゾリウム塩の量は、WST−8を使用する場合、使用するWST−8の量は、例えば、下限が0.01 mM以上、好ましくは0.02 mM以上、より好ましくは0.1 mM以上、さらに好ましくは0.2 mM以上、上限は特に設けないが好ましくは30 mM以下、よりに好ましくは10 mM以下である。
式(1)中の還元酵素としては、テトラゾリウム塩をホルマザン色素に変換できる還元酵素であれば特に限定されない。還元酵素は、好ましくはジアホラーゼ(DI)である。
還元酵素の量は、DIを使用する場合、使用するDIの量は、例えば、下限が0.01 U/mL以上、好ましくは0.1 U/mL以上、より好ましくは1.0 U/mL以上、さらに好ましくは2.0 U/mL以上、上限は特に設けないが好ましくは500 U/mL以下、よりに好ましくは300 U/mL以下である。
式(1)中のホルマザン色素は、テトラゾリウム塩によって適宜変わるため特に限定されない。ホルマザン色素は、好ましくは水溶性ホルマザン色素である。
本発明は、下記の成分を含む、NMNの測定用組成物である。
(A)本発明のタンパク質またはタンパク質組成物
(B)NADをNADHに変換せしめる脱水素酵素
(C)脱水素酵素の基質
(D)テトラゾリウム塩
(E)テトラゾリウム塩をホルマザン色素に変換せしめる還元酵素
(B)NADをNADHに変換せしめる脱水素酵素は、(C)脱水素酵素の基質、(D)テトラゾリウム塩、および(E)テトラゾリウム塩をホルマザン色素に変換せしめる還元酵素は、それぞれ、式(1)中の脱水素酵素、脱水素酵素の基質、テトラゾリウム塩、および還元酵素と同義である。
本発明は、本発明の測定用組成物を用いて、被検体由来の試料中のNMNの量を算出する工程を含む、NMNが関与する疾患および/または状態を、診断および/または管理する方法である。
上述した本発明の測定用組成物は、NMNが関与する疾患および/または状態の測定用組成物であることもできる。
本発明の測定用組成物およびそれを用いた方法は、NMNが関与する疾患および/または状態を、高特異度及び高感度に診断および/または管理することができるものである。これらは、例えば、NMNが関与する疾患の疑いのある被験者のスクリーニングおよびNMNが関与する疾患と診断されて治療を受けた患者の再発の管理に使用することができる。
本発明の測定用組成物におけるNMNが関与する疾患および/または状態としては、例えばインスリン抵抗性、脂質異常症、糖尿病性腎症、アルツハイマー病が挙げられ、これらの疾患および/または状態を測定することができる。
[実施例1]
<Thermus thermophilus HB8 DSM579株由来NMNAT組換え体酵素の製造>
Thermus thermophilus HB8 DSM579株より染色体DNAを、フェノール・クロロホルム法にて抽出した。配列番号3に記載の塩基配列をセンスプライマー、配列番号4に記載の塩基配列をアンチセンスプライマーとして、KOD FX(品番:KFX−101,東洋紡社製)を用いてPCRを行い、約600 bpのPCR産物を得た。得られたPCR産物をNdeI(品番:1161A,タカラバイオ社製)とHindIII(品番:1060A,タカラバイオ社製)で消化し、発現ベクターであるpET21a(+)ベクター(品番:69740−3,Novagen社製)のNdeI−HindIII部位に挿入して、NMNAT/pET21a(+)発現用プラスミドを得た。上記発現プラスミドをOne shot BL21(DE3)Chemically Competent E.coli(品番:C6000−03,Invitrogen社製)に形質転換し、NMNATをコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドを含む組換えベクターを有する形質転換体、NMNAT/pET−21a(+)/BL21(DE3)を得た。
[実施例2]
<組換えNMNATの培養と可溶化>
実施例1記載の形質転換体1コロニーを50 μg/mLのアンピシリンを含む液体LB培地5 mMに植菌し、試験管にて25℃で16時間培養してシードとした。上記のシードを50 μg/mLのアンピシリンを含む液体培地(1% グリセロール、2% ソルビトール、3% ミースト、1% ラクトース、0.05% アデカノールLG−109(ADEKA社製))1.6 Lに1/1000量植菌し、ジャーファーメンターにて28℃、pH6.8、650 rpmの条件で24時間培養した。同条件で2つのジャーファーメンターにて培養した(3.2 L培養)。24時間後、培養液を遠心分離して集菌した後、菌体を10 mM Tris−HCl(pH7.5)に溶解し、超音波発生器で破砕し、可溶化した。可溶化液を70℃で30分間反応させた後、遠心分離し、得られた上清を粗酵素液とした。
[実施例3]
<組換え体NMNATの精製>
実施例2で得られた粗酵素液を10 mM Tris−HCl(pH8.5)溶液で平衡化したQ Sepharose Big Beads(GEヘルスケア社製)を充填したカラムに吸着させた。その後0および0.5 M 塩化カリウムを含む10 mM Tris−HCl(pH8.5)溶液を用いた10 CV(Column Volume)のリニアグラジエントにより溶出した。SDS−PAGEにて組換え体NMNATの溶出画分を確認した後、溶出画分の溶液をAmicon Ultra−15遠心式フィルターユニット(ミリポア社製)で濃縮し、3 M 塩化カリウムを添加した。3 M 塩化カリウムを添加したNMNATを含む溶液を、3 M 塩化カリウムを含む10 mM Tris−HCl(pH7.5)溶液で平衡化したPhenyl Sepharose 6 Fast Flow(high sub)(GEヘルスケア社製)を充填したカラムに吸着させ、3および0 M 塩化カリウムを含む10 mM Tris−HCl(pH7.5)溶液を用いた10 CVのリニアグラジエントにより溶出した。溶出画分をSDS−PAGEにて確認後回収し、Amicon Ultra−15遠心式フィルターユニット(ミリポア社製)で濃縮した後、PD−10カラム(GEヘルスケア社製)で脱塩した。脱塩したNMNATを含む溶液を10 mM Tris−HCl(pH8.5)溶液で平衡化したQ Sepharose High Performance(GEヘルスケア社製)を充填したカラムに吸着させた。その後0および0.5 M 塩化カリウムを含む10 mM Tris−HCl(pH8.5)溶液を用いた10 CVのリニアグラジエントにより溶出した。溶出画分をSDS−PAGEにて確認後回収し、Amicon Ultra−15遠心式フィルターユニット(ミリポア社製)で濃縮した後、10 mM Tris−HCl(pH8.0)溶液で透析し、組換え体NMNAT酵素溶液14 mLを得た。得られたNMNAT酵素溶液をSDS−PAGEにて電気泳動を行ったところ、20kDaと29kDaの間にNMNATのバンドが確認された。また、280 nmの吸光度を用いてタンパク質濃度を計算したところ、32.7 mg/mL(培養液3.2Lあたり)であり、培養液1LあたりのNMNAT生産量は143.1 mgであった。
[実施例4]
<組換え体NMNATの熱安定性>
実施例3で精製した組換え体NMNATの熱安定性を調べるため、70℃で15分、30分、45分間インキュベーション後の残存活性を調べた。試薬の組成は以下の通りである。
<R1試薬>
100mM HEPES(4−(2−hydroxyethyl)−1−piperazineethanesulfonic acid)−NaOH(pH7.5)
1mM MgCl2
1mM β−NMN
1mM ATP
20U/mL 12α−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ
4mM コール酸ナトリウム
(試料)
NMNATを10 mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)にて希釈し、NMNAT溶液を作製した。作製したNMNAT溶液を4つに分注し、それぞれを、4℃保存、70℃で15分間インキュベート、70℃で30分間インキュベート、70℃で45分間インキュベートし、それぞれについて活性測定を行った。(活性測定)
活性の測定には7080形日立自動分析装置を使用した。測定パラメーターを以下に示す。
(7080形日立自動分析装置測定パラメーター)
分析方法 レートA
測定波長(副/主) 405nm/340nm
反応時間 5分
測光ポイント 10−13
試料量 5μL
R1試薬量 150μL
(NMNAT活性値算出方法)
NMNAT活性値(μmol/min/mL)
={(ΔAbs/min)/NADHミリモル吸光係数}÷{(試料量)/(試料量+R1試薬量)}
={(ΔmAbs/min)/6.22}÷{(試料量)/(試料量+R1試薬量)}÷1000
5 μLの試料と150 μLのR1試薬を混合し、37℃でインキュベートし反応を開始した。反応開始後3−4分(測光ポイント10−13)の試料の吸光度変化の値から、水(ブランク)の同測光ポイントにおける吸光度変化の値を差し引き、1分間当たりの吸光度変化の値(ΔmAbs/min)を算出し、前記の式を用いてNMNAT活性値(μmol/min/mL)を算出した。4℃保存したNMNATの活性値を100%とした時の各インキュベート時間(Incubation time(min))における残存活性率(Remaining activity(%))を図1に示した。
活性測定の結果、NMNAT活性は70℃で45分間のインキュベーションを行った後でも98%以上残存することが示された(図1)。
[実施例5]
<組換え体NMNATの金属塩の影響と比活性>
実施例3で精製した組換え体NMNATの金属塩の影響と比活性を調べるため、R1試薬中の金属塩の種類と濃度を変えて活性測定を行った。金属塩としてNiCl2、CoCl2、MgCl2、MnCl2を使用し、濃度は1 mM、2 mM、4 mM、6 mM、8 mM、10 mMで測定を行った。試薬の組成は以下の通りである。
<R1試薬>
100mM HEPES−NaOH(pH8.0)
1〜10mM 上記各金属塩
1mM β−NMN
1mM ATP
20U/mL 12α−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ
4mM コール酸ナトリウム
(試料)
10 mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)にて希釈したNMNAT溶液。
(活性測定)
活性の測定には7080形日立自動分析装置を使用した。測定パラメーターを以下に示す。
(7080形日立自動分析装置測定パラメーター)
分析方法 レートA
測定波長(副/主) 405nm/340nm
反応時間 5分
測光ポイント 10−13
試料量 5μL
R1試薬量 150μL
5 μLの試料と150 μLのR1試薬を混合し、37℃でインキュベートし反応を開始した。反応開始後3−4分(測光ポイント10−13)の試料の吸光度変化の値から、水(ブランク)の同測光ポイントにおける吸光度変化の値を差し引き、1分間当たりの吸光度変化の値(ΔmAbs/min)を算出し、前記の式を用いてNMNAT活性値(μmol/min/mL)を算出した。さらに、得られたNMNAT活性値(μmol/min/mL)を試料中NMNAT溶液の濃度(mg/mL)で除算し、NMNAT比活性(μmol/min/mg)を算出した。各金属塩(Divalent metal)の種類と濃度におけるNMNAT比活性(μmol/min/mg)を図2に示した。
図2に示す通り、4 mMニッケルイオン存在下での組換え体NMNATの比活性(Specific activity)は19.2(μmol/min/mg)であった。
[実施例6]
<組換えNMNATの至適pH>
実施例3で精製した組換え体NMNATの至適pHを調べるため、R1の緩衝液の種類とpHを変えて活性測定を行った。緩衝液として酢酸(acetate)‐NaOH(pH5.1〜6.0)、HEPES−NaOH(pH6.0〜7.9)、リン酸カリウム(Pik)緩衝液(pH6.3〜7.5)、Tris−HCl(pH7.7〜8.9)、グリシン(Glycine)‐NaOH(pH8.9〜9.7)を使用した。試薬の組成は以下の通りである。
<R1試薬>
100mM 各緩衝液(各pH)
1mM NiCl2
1mM β−NMN
1mM ATP
20U/mL 12α−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ
4mM コール酸ナトリウム
(試料)
10 mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)にて希釈したNMNAT溶液。
(活性測定)
活性の測定には7080形日立自動分析装置を使用した。測定パラメーターを以下に示す。
(7080形日立自動分析装置測定パラメーター)
分析方法 レートA
測定波長(副/主) 405nm/340nm
反応時間 5分
測光ポイント 10−13
試料量 5μL
R1試薬量 150μL
5 μLの試料と150 μLのR1試薬を混合し、37℃でインキュベートし反応を開始した。反応開始後3−4分(測光ポイント10−13)の試料の吸光度変化の値から、水(ブランク)の同測光ポイントにおける吸光度変化の値を差し引き、1分間当たりの吸光度変化の値(ΔmAbs/min)を算出し、前記の式を用いてNMNAT活性値(μmol/min/mL)を算出した。もっとも高い活性を示したHEPESバッファー(pH7.8)の活性を100%としたときの、各緩衝液の各pHにおけるNMNAT活性の相対値(%)を図3に示した。至適pHは7〜8であることが示された。
[実施例7]
<NMN測定試薬の検討>
実施例3で精製した組換え体NMNATを用いて、NMN測定試薬を作製した。試薬の組成は以下のとおりである。
<R1試薬>
200mM Tris−HCl(pH8.0)
4mM NiCl2
1mM ATP
0.4mM WST−8
1U/mL 組換えNMNAT
30U/mL 12α−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ
0.5% TritonX−100
<R2試薬>
200mM Tris−HCl(pH8.0)
24mM コール酸ナトリウム
180U/mL ジアホラーゼ
0.5% TritonX−100
(試料)
0〜10 μM β‐NMN
(活性測定)
活性の測定には7170形日立自動分析装置を使用した。測定パラメーターを以下に示す。
(7170形日立自動分析装置測定パラメーター)
分析方法 レートA
測定波長(副/主) 600nm/450nm
反応時間 10分
測光ポイント 26−30
試料量 5μL
R1試薬量 150μL
R2試薬量 50μL
5 μLの試料と150 μLのR1試薬を混合して37℃で4.5分間インキュベートした後(測光ポイント1−16)、50 μLのR2試薬を添加して反応を開始した(測光ポイント17)。R2試薬の添加による反応開始後約3−4分(測光ポイント26−30)の試料の吸光度から、水(ブランク)の同測光ポイントにおける吸光度を差し引き、1分間当たりの吸光度変化の値(ΔmAbs/min)を算出した。β‐NMNの各濃度における450 nmにおける吸光度(Abs.)のタイムコース(Reaction time(min)を図4に、β‐NMNの各濃度(μM)における1分間当たりの吸光度変化の値(ΔmAbs/min)を図5に示した。
組換え体NMNATを用いて、NMN測定が可能であった。
本発明により製造したNMNATは、試料中のNMNを測定する測定キットの原料として使用することができる。
配列番号1は、Thermus thermophilus由来のタンパク質のアミノ酸配列を示す。
配列番号2は、Thermus thermophilus由来の遺伝子の塩基配列を示す。
配列番号3は、センスプライマーの塩基配列を示す。
配列番号4は、アンチセンスプライマーの塩基配列を示す。

Claims (9)

  1. 以下の(1)〜(3)の性質を有し、以下の(a)〜(c)のいずれかである、タンパク質を含む、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)の測定用タンパク質組成物
    (1)NMNにアデノシン三リン酸のアデニル酸を転移しニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)を生成する活性を有する。
    (2)70℃で45分間安定である。
    (3)比活性が15(μmol/min/mg)以上である。
    (a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
    (b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1もしくは2個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質
    (c)配列番号1に示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質
  2. 前記タンパク質が以下の(4)の性質をさらに有する、請求項1に記載のタンパク質組成物
    (4)Thermus thermophilus由来であるか、またはThermus thermophilus由来の遺伝子の移入による形質転換体由来である。
  3. 前記タンパク質が以下の(5)〜(7)の性質をさらに有する、請求項1または2に記載のタンパク質組成物
    (5)SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で測定した前記タンパク質の分子量が20,000〜30,000である。
    (6)ニッケルイオンで活性化される。
    (7)至適pHが7〜8である。
  4. 以下の工程(A)〜(D)を含む、NMNを測定する方法。
    (A)試料と請求項1〜のいずれか一項に記載のタンパク質組成物とを接触せしめ、試料中のNMNをNADに変換せしめる工程
    (B)変換された試料中のNADを下記式(1)の酵素サイクリング法により反応せしめる工程。
    Figure 0006917239
    (C)ホルマザン色素の変化量に対応するシグナルの変化量を検出する工程
    (D)検出されたシグナルの変化量に基づき、試料が含有するNMNの量を算出する工程
  5. テトラゾリウム塩が2‐(2‐メトキシ‐4‐ニトロフェニル)‐3‐(4−ニトロフェニル)‐5‐(2、4‐ジスルホフェニル)‐2H‐テトラゾリウム一ナトリウム(WST−8)である、請求項に記載の方法。
  6. 脱水素酵素が12α−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼである、請求項またはに記載の方法。
  7. 下記の成分(A)〜(E)を含む、NMNの測定用組成物。
    (A)請求項1〜のいずれか一項に記載のタンパク質組成物
    (B)NADをNADHに変換せしめる脱水素酵素
    (C)脱水素酵素の基質
    (D)テトラゾリウム塩
    (E)テトラゾリウム塩をホルマザン色素に変換せしめる還元酵素
  8. テトラゾリウム塩がWST−8である、請求項に記載の測定用組成物。
  9. 脱水素酵素が12α−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼである、請求項またはに記載の測定用組成物。
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