JP4816103B2 - グリセロールキナーゼ改変体 - Google Patents

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Description

本発明は、安定性が向上したグリセロールキナーゼ改変体、該グリセロールキナーゼ改変体をコードする遺伝子、および該グリセロールキナーゼ改変体の製造法に関する。
グリセロールキナーゼ(EC 3.5.2.10)は、グリセロールをマグネシウムとATPに依存したリン酸化反応によって、グリセロール−3−リン酸に変換する反応を触媒する酵素である。グリセロールキナーゼは、1937年にKalckarによって、肝臓内に発見された(例えば、比特許文献1参照)。その後、ラット肝、ハト肝、キャンディダ・ミコデルマ(Candida mycoderma)、セルロモナス・フラビゲナ(Cellulomonas flavigena)、サーマス・フラバス(Thermus flavus)などからの精製が報告され(例えば、非特許文献2〜5および特許文献1参照)、生物全般に広く存在することが知られている。また、ヒト、バチルス・ズブチルス(Bacillus subtilis)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サーマス・フラバス(Thermus flavus)などから遺伝子のクローニングが報告されている(例えば、非特許文献6〜9参照)。特に、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)において、該酵素は詳しく研究されており、1967年にHayashiらによって精製され(例えば、非特許文献10参照)、1988年にそのクローニングが報告されている(例えば、非特許文献10参照)。また、遺伝子調節の研究、アロステリック阻害剤による阻害の研究など、幅広い研究がなされている。
一方、グリセロールキナーゼは実用面において、臨床検査薬用原料酵素として利用されている。すなわち、試料中の中性脂肪(トリグリセリド)をリパーゼで加水分解し、生じたグリセロールを該酵素によってグリセロール−3−リン酸に変換する。このグリセロール−3−リン酸は、グリセロール−3−リン酸酸化酵素を用いて比色定量法や、グリセロール−3−リン酸脱水素酵素を用いた紫外部吸収定量法などにより血中の中性脂肪測定に利用されている。
近年の生化学検査用臨床検査薬は、溶液状態の検査薬が主流となっている。そのため、液状での高い安定性が求められるようになっている。また、一般に液状検査薬は、長期保存を可能にするために防腐剤が添加されている。防腐剤は、試薬を保存している間の微生物の増殖を抑制することを目的として試薬に添加される物質であるが、この防腐剤が酵素を不安定化することがあるため、防腐剤に対する耐性が高いことも含めて安定性が高いことが検査薬用酵素に要求される性質の一つとなっている。
これまで高い熱安定性を示す酵素が液状診断薬で優れた保存性を有するとの観点から、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)やサーマス・フラバス(Thermus flavus)など好熱性細菌由来のグリセロールキナーゼが汎用されてきた。しかし、これらのグリセロールキナーゼは、防腐剤に対する耐性が比較的低いという問題を有していた。
本発明者らは、防腐剤に対する高い耐性を有するセルロモナス・エスピーJCM2471株(Cellulomonas sp. JCM2471)由来の新規なグリセロールキナーゼを単離し、遺伝子組換え技術によって高純度な該グリセロールキナーゼを安価に大量供給することを可能にした。しかしながら、該グリセロールキナーゼは、上記の好熱性細菌由来グリセロールキナーゼに比べて熱安定性が低いという弱点を有していた(特許文献2参照)。
特開昭56−121484号公報 H.Kalckar著, 「Enzymologia」,1937年,第2巻,p47 C.Bublitzら著, 「J.Biol.Chem.」,1954年,第211巻,p951 E.P.Kennedy著, 「Methods Enzymol.」,1962年,第5巻,p476 H.U.Bergmeyerら著, 「Biochem.」,1961年,第333号,p471 H.S.Huangら著, 「J.Ferment.Bioeng.」,1997年,第83号,p328 C.A.Sargentら著, 「Hum.Mol.Genet.」,1994年,第3巻,p1317 C.Holmbergら著, 「J.Gen.Microbial.」,1990年,第136巻,p2367 P.Pavlikら著,「Curr.Genet.」,1993年,第24巻,p21 H.U.Huangら著, 「Boichim.Biochem,Acta」,1937年,第2巻,p47 S.Hayashiら著, 「J.Biol.Chem.」,1967年,第242巻,p1030 D,W.Pettigrewら著, 「J.Biol.Chem.」,1988年,第263巻,p135 特開2004−121234号公報
本発明の目的は、高い熱安定性を有し、かつ防腐剤に対しても高い耐性を示すグリセロールキナーゼを提供し、該酵素の中性脂肪およびグリセロールの定量への利用を可能とすることである。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、親タンパク質をタンパク質工学的に改変することにより、高い熱安定性かつ防腐剤耐性を有する改変型グリセロールキナーゼを得ることに成功し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、以下のような構成からなるものである。
項1.グリセロールキナーゼ活性を有する親タンパク質を構成するアミノ酸配列中のシステイン残基が他のアミノ酸に置換されたことを特徴とする安定化された改変蛋白質。
項2.他のアミノ酸がセリン、アスパラギン、バリンの何れかであることを特徴とする項1記載の安定化された改変蛋白質。
項3.グリセロールキナーゼ活性を有する親タンパク質が以下の(a)または(b)であることを特徴とする項1記載の安定化された改変タンパク質。
(a)配列表・配列番号1に記載されたアミノ酸配列からなり、かつグリセロールキナーゼ活性を有するタンパク質。
(b)(a)のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸からなり、かつグリセロールキナーゼ活性を有するタンパク質。
項4.グリセロールキナーゼ活性を有するタンパク質が配列表・配列番号1に記載されたアミノ酸配列を有し、該アミノ酸配列中の第268番目および/または第111番目のシステイン残基が他のアミノ酸に置換されたことを特徴とする項1記載の安定化された改変タンパク質。
項5.グリセロールキナーゼ活性を有する親タンパク質の遺伝情報を有するDNA中のシステイン残基をコードする塩基を他のアミノ酸をコードする塩基で置換した改変タンパク質の遺伝情報を有するDNAを作成し、該DNAを組み込んだ組換えプラスミドを宿主細胞へ導入し、得られた形質転換体を栄養培地にて培養し、改変タンパク質を採取することを特徴とする安定化された改変タンパク質の製造法。
項6.他のアミノ酸がセリンまたはアスパラギンであることを特徴とする項5記載の安定化された改変タンパク質の製造法。
項7.親タンパク質が項3記載の(a)または(b)のグリセロールキナーゼ活性を有するタンパク質であることを特徴とする項5記載の安定化された改変タンパク質の製造法。
項8.グリセロールキナーゼ活性を有するタンパク質が配列表・配列番号1に記載されたアミノ酸配列を有し、該アミノ酸配列中の第268番目のシステイン残基をコードする塩基および/または第111番目のシステイン残基をコードする塩基が他のアミノ酸をコードする塩基に置換されたことを特徴とする項7記載の安定化された改変タンパク質の製造法。
項9.グリセロールキナーゼ活性を有する親タンパク質の遺伝情報を有するDNAとして、以下の(c)または(d)に記載されたDNAを含有することを特徴とする項7記載の安定化された改変タンパク質の製造法。
(c)配列表・配列番号2に記載された塩基配列からなるDNA
(d)(c)の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつグリセロールキナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
本発明による改変型グリセロールキナーゼは、高い熱安定性且つ防腐剤に対しても高い耐性を有し、臨床検査薬用酵素として優れた改変型グリセロールキナーゼを供給することが可能である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のグリセロールキナーゼ改変体は、グリセロールキナーゼ活性を有する親タンパク質を構成するアミノ酸配列中のシステインが他のアミノ酸に置換されることにより安定化された改変型タンパク質である。本発明における「安定化」とは、例えば改変体(a)と改変前の親タンパク質(b)を各々適当な緩衝液中に溶解して、適用な温度で一定期間保存した後の残存活性率が(a)>(b)となるような状態をいう。
「適当な温度で一定期間保存」の条件は、生体分子を含有する診断薬などが実際に長期保存される温度として汎用される2℃〜10℃の冷蔵条件下で6ヶ月以上の保存を選択する。時間がない場合は、例えば、「40℃、7日間保存」、または、「50℃、15分間保存」などの加速(苛酷)試験の条件が選択される。さらに好ましくは、適当な濃度の防腐剤を含有する条件である。
「適当な緩衝液」は、グリセロールキナーゼが作用するpH範囲で十分な緩衝能を持つよう、その種類と濃度を選べば特に限定されないが、例えば、50mMトリス緩衝液(pH8.0)、または、50mMのPIPES−NaOH緩衝液(pH7.0)などが選択される。診断薬用途を想定して、緩衝液にはさらに界面活性剤、塩類、キレート剤、防腐剤などを含んでいてもよい。
保存におけるグリセロールキナーゼの濃度は、特に限定されないが、通常の診断試薬に使用される濃度を想定した0.2〜30U/mlが好ましく選択される。さらに好ましくは1〜10U/mlである。
本発明の一実施態様としては、グリセロールキナーゼ活性を有する親タンパク質を構成するアミノ酸配列中のシステイン残基が他のアミノ酸に置換されたことを特徴とする安定化された改変蛋白質である。好ましくは、置換される他のアミノ酸がセリンまたはアスパラギンである安定化された改変タンパク質である。
本発明の改変に使用する親タンパク質は、特に限定されるものではないが、例えば公知のバチルス属やサーマス属、セルロモナス属等に由来するグリセロールキナーゼなどを用いることができる。なお、親タンパク質は天然型である必要はない。
本発明では一例として、サーマス・フラバスDSM674のグリセロールキナーゼを親タンパク質として用いた。本発明者らのグループは、これまでに特開平11−9279号公報に開示されるように、サーマス・フラバスDSM674より抽出した染色体DNAよりグリセロールキナーゼ遺伝子の単離に成功し、そのDNAの全構造を決定し、本グリセロールキナーゼ遺伝子工学的手法によって形質転換体に高生産させることに成功し、高純度な酵素を安価に大量供給することを可能にしている(特許文献3参照。)。サーマス・フラバスDSM674のグリセロールキナーゼのアミノ酸配列を、配列表の配列番号1に示す。また、これらのアミノ配列をコードするDNA配列を、配列表の配列番号2に示す。但し、本発明は配列番号1に記載されるアミノ酸配列を有するグリセロールキナーゼを親タンパク質として改変したものに限定されるものでなく、本願発明の酵素特性の本質である安定性が損なわれない範囲で、更に1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたものであっても良い。具体例には、グリセロールキナーゼの精製を簡素化するためにアミノ酸配列のN末端側、又はC末端側にヒスチジンタグを付加したものが例示される他、グリセロールキナーゼ活性を有する他の蛋白質を親タンパク質として用いたものであってもよい。
本発明の好ましい一実施態様としては、配列表の配列番号1に記載されたアミノ酸配列中の第268番目のシステイン残基が他のアミノ酸に置換されたことを特徴とする安定化された改変蛋白質である。または該改変タンパク質をコードするDNAである。
特開平11−9279号公報
本発明の好ましい一実施態様としては、配列表の配列番号1に記載されたアミノ酸配列中の第268番目のシステイン残基が他のアミノ酸に置換されたことを特徴とする安定化された改変蛋白質である。本発明の別の好ましい実施態様としては、配列表の配列番号1に記載されたアミノ酸配列中の第111番目のシステイン残基が他のアミノ酸に置換されたことを特徴とする安定化された改変蛋白質である。
本願発明の別の実施態様は、グリセロールキナーゼ活性を有する親タンパク質の遺伝情報を有するDNA中のシステイン残基をコードする塩基を他のアミノ酸をコードする塩基で置換した改変タンパク質の遺伝情報を有するDNAを作成し、該DNAを組み込んだ組換えプラスミドを宿主細胞へ導入し、得られた形質転換体を栄養培地にて培養し、改変タンパク質を採取することを特徴とする安定化された改変タンパク質の製造法。本発明の安定化されたグリセロールキナーゼの製造方法は、特に限定されないが、以下に示すような手順で製造することが可能である。グリセロールキナーゼ活性を有するタンパク質を構成するアミノ酸配列を改変する方法としては、通常行われる遺伝情報を改変する手法が用いられる。すなわち、タンパク質の遺伝情報を有するDNAの特定の塩基を変換することにより、或いは特定の塩基を挿入または欠失させることにより、改変蛋白質の遺伝情報を有するDNAが作成される。DNA中の塩基を変換する具体的な方法としては、例えば市販のキット(QuickChange Site Directed Mutagenesis Kit;Stratagene製など)の使用、或いはポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)の利用が挙げられる。
作製された改変タンパク質の遺伝情報を有するDNAは、プラスミドと連結された状態にて宿主微生物中に移入され、改変タンパク質を生産する形質転換体となる。この際のプラスミドとしては、例えば、エシェリヒア・コリー(Escherichia coli)を宿主微生物とする場合にはpBluescript,pUC18などが使用できる。宿主微生物としては、例えば、エシェリヒア・コリー W3110、エシェリヒア・コリーC600、エシェリヒア・コリーJM109、エシェリヒア・コリーDH5αなどが利用できる。宿主微生物に組換えベクターを移入する方法としては、例えば宿主微生物がエシェリヒア属に属する微生物の場合には、カルシウムイオンの存在下で組換えDNAの移入を行なう方法などを採用することができ、更にエレクトロポレーション法を用いても良い。更には、市販のコンピテントセル(例えば、コンピテントハイJM109;東洋紡績製)を用いても良い。
こうして得られた形質転換体である微生物は、栄養培地で培養されることにより、多量の改変タンパク質を安定して生産し得る。形質転換体である宿主微生物の培養形態は宿主の栄養生理的性質を考慮して培養条件を選択すればよく、通常多くの場合は液体培養で行うが、工業的には通気撹拌培養を行うのが有利である。培地の栄養源としては微生物の培養に通常用いられるものが広く使用され得る。炭素源としては資化可能な炭素化合物であればよく、例えば、グルコ−ス,シュークロース、ラクトース、マルトース、フラクトース、糖蜜、ピルビン酸などが使用される。窒素源としては利用可能な窒素化合物であればよく、例えばペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン加水分解物、大豆粕アルカリ抽出物などが使用される。その他、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、マンガン、亜鉛などの塩類、特定のアミノ酸、特定のビタミンなどが必要に応じて使用される。培養温度は菌が発育し、改変蛋白質を生産する範囲で適宜変更し得るが、エシェリヒア・コリーの場合、好ましくは20〜42℃程度である。培養時間は条件によって多少異なるが、改変タンパク質が最高収量に達する時期を見計らって適当時期に培養を終了すればよく、通常は6〜48時間程度である。培地pHは菌が発育し改変タンパク質を生産する範囲で適宜変更し得るが、特に好ましくはpH6.0〜9.0程度である。
培養物中の改変タンパク質を生産する菌体を含む培養液をそのまま採取し利用することもできるが、一般には常法に従って改変タンパク質が培養液中に存在する場合は、濾過,遠心分離などにより、改変タンパク質含有溶液と微生物菌体とを分離した後に利用される。改変タンパク質が菌体内に存在する場合には、得られた培養物から濾過または遠心分離などの手段により菌体を採取し、次いでこの菌体を機械的方法またはリゾチームなどの酵素的方法で破壊し、また必要に応じてEDTA等のキレート剤及びまたは界面活性剤を添加して改変タンパク質を可溶化し、水溶液として分離採取する。
この様にして得られた改変タンパク質含有溶液を、例えば、減圧濃縮、膜濃縮、更に硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムなどの塩析処理、或いは親水性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトンなどによる分別沈澱法により沈澱せしめればよい。また、加熱処理や等電点処理も有効な精製手段である。吸着剤或いはゲル濾過剤などによるゲル濾過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーにより、精製された改変タンパク質を得ることができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例中、グリセロールキナーゼの活性は、以下のように測定した。ATPはオリエンタル酵母社より購入した。牛血清アルブミンはシグマアルドリッチ社より購入した。グリセロール−3−リン酸酸化酵素(コード番号G3O-301)、ペルオキシダーゼ(コード番号PEO-301)は東洋紡績製を使用した。その他の試薬はナカライテスク社より購入したものを使用した。
<グリセロールキナーゼ活性測定法>
グリセロールを基質とし、グリセロール−3−リン酸の生成量によって測定した。0.1%4−アミノアンチピリン水溶液10ml、0.1%フェノール溶液20ml、27.5U/mlペルオキシダーゼ、200mM HEPES緩衝液(pH7.9)に20U/mlの濃度に溶解したグリセロール−3−リン酸酸化酵素40ml、20mMMgCl2と40mMATPを含む200mM HEPES緩衝液(pH7.9)10mlを加え、これを以下の測定のための原液とした。各反応は、この測定原液3mlに酵素溶液0.1mlと0.3Mグリセロール水溶液0.05mlを添加し、混和後、37℃に制御された分光光度計で500nmの吸光度を3〜4分間記録し、その初期直線部分から1分間当たりの吸光度変化を求めた(ΔODtest)。盲検は酵素溶液の代わりに酵素希釈液(0.2%牛血清アルブミンを含む20mMリン酸カリウム緩衝液,pH7.5)を0.1ml加え、上記同様に操作を行って1分間当りの吸光度変化を求めた(ΔODblank)。得られた吸光度変化量より下記計算式に基づきグリセロールキナーゼの酵素活性を算出した。尚、上記条件で1分間に1マイクロモルのグリセロールをリン酸化する酵素量を1単位(U)とする。
計算式
活性値(U/ml)={ΔOD/min(ΔODtest−ΔODblank)×3.15(ml)×希釈倍率}/{13.3×1/2×1.0(cm)×0.1(ml)}
3.15(ml):反応混液液量
13.3:キノン色素を上記測定条件下で測定した時のミリモル吸光係数
1/2:酵素反応で生成した過酸化水素の1分子から形成するキノン色素が1/2分子であることによる係数
1.0cm:セルの光路長
0.1(ml):酵素サンプル液量
実施例1 グリセロールキナーゼの発現プラスミドの構築
サーマス・フラバスDSM674由来グリセロールキナーゼの発現プラスミドpGYK12は、特開平11−9279号公報記載の方法に従って構築した。本発現プラスミドのサイズは、約4.2Kbpで、pUC18のマルチクローニングサイトに、DSM674由来グリセロールキナーゼをコードする遺伝子をコードする挿入DNA断片を含む。その塩基配列を配列表の配列番号2に、また該塩基配列から推定されるグリセロールキナーゼのアミノ酸配列を配列表の配列番号1に示す。
実施例2 グリセロールキナーゼ改変体発現プラスミドの構築
グリセロールキナーゼ遺伝子を含む発現プラスミドpGYK12と、配列表の配列番号3記載の合成オリゴヌクレオチドおよびこれと相補的な合成オリゴヌクレオチドを用いて、QuickChangeTM Site-Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE製)を用いて、そのプロトコールに従って変異処理操作を行い、更に塩基配列を決定して、配列番号1記載のアミノ酸配列の268番目のシステインがセリンに置換されたグリセロールキナーゼ改変体をコードする組換えプラスミド(pGYKM1)を取得した。
pGYK12と、配列表の配列番号4記載の合成オリゴヌクレオチドおよびこれと相補的な合成オリゴヌクレオチドを用いて、QuickChangeTM Site-Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE製)を用いて、上記と同様の操作により、配列番号1記載のアミノ酸配列の268番目のシステインがアルギニンに置換されたグリセロールキナーゼ改変体をコードする組換えプラスミド(pGYKM2)を取得した。
pGYK12と、配列表の配列番号5記載の合成オリゴヌクレオチドおよびこれと相補的な合成オリゴヌクレオチドを用いて、QuickChangeTM Site-Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE製)を用いて、上記と同様の操作により、配列番号1記載のアミノ酸配列の111番目のシステインがバリンに置換されたグリセロールキナーゼ改変体をコードする組換えプラスミド(pGYKM3)を取得した。
実施例3 グリセロールキナーゼ改変体の作製1
pGYKM1、pGYKM2、pGYKM3の各組換えプラスミドで、グリセールキナーゼ欠損株であるエシェリヒア・コリKM1株(特開平11−9279号公報参照)を、ジーン・パルサー用いたエレクトロポレーション法によりを形質転換し、該形質転換体をそれぞれ取得した。
50mlのLB培地を500ml容坂口フラスコに分注し、121℃、20分間オートクレーブを行い、放冷後別途無菌濾過したアンピシリンをとイソプロピル−β−D−チオガラクトシドをそれぞれ終濃度が100μl/mlと1mMになるように添加した。この培地に100μl/mlのアンピシリンを含むLB培地で予め37℃、12時間培養したエシェリヒア・コリーKM1(pGYKM1)の培養液を1ml接種し、37℃で16時間通気攪拌培養を行った。培養終了より菌体を遠心分離により集菌し、0.2mMメルカプトエタノールを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に懸濁した後、フレンチプレスにて破砕し、更に遠心分離を行い、上清液を粗酵素液として得た。この改変体をGYKM1と命名した。pGYKM2、pGYKM3の各組み換えプラスミドによるエシェリヒア・コリKM1株形質転換体についても、上記方法と同様にして粗酵素標品を取得した。これらの改変体をそれぞれGYKM2、GYKM3と命名した。
比較例1 野生型グリセロールキナーゼの作製1
比較例として、pGYK12によりエシェリヒア・コリKM1株を形質転換体し、実施例3の方法と同様にして該形質転換体を培養して、改変前の親タンパク質を取得した。
実施例4 グリセロールキナーゼ改変体の評価1
実施例3で取得したグリセロールキナーゼ改変体(GYKM1、GYKM2、GYKM3)および比較例1で取得した改変前のグリセロールキナーゼをそれぞれ、50℃で15分間保存した後の残存酵素活性率(%)を測定した。また、その結果を表1に示す。表1から判るように本発明のグリセロールキナーゼ改変体は、改変前の親タンパク質と比べて液状安定性が向上していることが確認された。
Figure 0004816103
実施例5 グリセロールキナーゼ改変体の評価2
実施例3で取得したグリセロールキナーゼ改変体(GYKM1、GYKM2、GYKM3)および比較例1で取得した改変前のグリセロールキナーゼにそれぞれ、防腐剤として0.05%プロクリン300(シグマアルドリッチ社)を加えたものを、4℃で9日間保存した後の残存酵素活性率(%)を測定した。その結果を表2に示す。表2から判るように本発明のグリセロールキナーゼ改変体は、改変前の親タンパク質と比べて液状安定性が向上していることが確認された。
Figure 0004816103
実施例6 グリセロールキナーゼ改変体の作製2
実施例3で取得したpGYKM1、pGYKM2、によるエシェリヒア・コリKM1株の各形質転換体を、100μl/mlのアンピシリンを含むLB培地で予め30℃、16時間前培養した後、2mlを100μl/mlのアンピシリンと1mMのイソプロピル−β−D−チオガラクトシドを含む200mlのTerrific brothを接種し、35℃で20時間通気攪拌培養を行った。それぞれの培養終了液より菌体を遠心分離により集菌し、20mMリン酸緩衝液(pH7.5)に懸濁した後、超音波処理により破砕し、更に遠心分離を行い、上清液を粗酵素液として得た。得られた粗酵素液をポリエチレンイミンによる除核酸および硫安分画を行い、5mMのMgCl2共存下で57℃、16時間の熱処理後、20mMリン酸緩衝液(pH7.5)で透析を行った。更にDEAEセファロースCL−6B(GEヘルスケアバイオサイエンス製)により分離・精製し、GYKCS268、GYKCN268の各精製酵素標品を得た。本方法により得られた標品は、SDS−PAGE的にほぼ単一なバンドを示した。
比較例2 野生型グリセロールキナーゼの作製2
比較例2で取得したpGYK12によるエシェリヒア・コリKM1株の形質転換体を、実施例5の方法と同様にして培養および精製を行い、改変前の親タンパク質の精製酵素標品を取得した
実施例7 グリセロールキナーゼ改変体の評価3
実施例6で取得した各グリセロールキナーゼ改変体(GYKM1、GYKM2)および比較例2で取得した改変前のグリセロールキナーゼの各精製酵素標品をそれぞれ、0.1%(W/V)トリトンX−100と防腐剤として0.02%2−メチルイソチアゾロン(ロッシュ・ダイアグノスティックス社)を含むPIPES−NaOH緩衝液(pH7.0)中に5U/mlになるように加え、9℃で14日間保存した後の残存酵素活性率(%)を測定した。その結果を表3に示す。表3から判るように本発明のグリセロールキナーゼ改変体は、改変前と比べて安定性が向上していることが確認された。
Figure 0004816103
実施例8
上記実施例4、5、7において、2℃〜10℃の冷蔵条件下で6ヶ月以上の保存下でも、本発明のグリセロールキナーゼ改変体は、改変前と比べて安定性が向上していることが推定される。
本発明によって、グリセロールキナーゼ活性を有する蛋白質を蛋白工学的手法により改変し、安定性が改良されたザルコシンオキシダーゼ改変体を供給することが可能となった。本発明の改変型ザルコシンオキシダーゼは、臨床検査薬用原料酵素として中性脂肪測定試薬に適用することで、該試薬の保存安定性を向上させることができる。

Claims (3)

  1. 以下の(a)または(b)で表されるグリセロールキナーゼ活性を有する親タンパク質を構成するアミノ酸配列において第268番目のシステイン残基がセリン又はアスパラギンに、あるいは、第111番目のシステイン残基がバリンに置換されたことを特徴とする改タンパク質。
    (a)配列表・配列番号1に記載されたアミノ酸配列からなり、かつグリセロールキナーゼ活性を有するタンパク質。
    (b)(a)のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸からなり、かつグリセロールキナーゼ活性を有するタンパク質。
  2. 請求項1に記載の改変タンパク質の遺伝情報を有するDNAを作成し、該DNAを組み込んだ組換えプラスミドを宿主細胞へ導入し、得られた形質転換体を栄養培地にて培養し、改変タンパク質を採取することを特徴とする改変タンパク質の製造法。
  3. グリセロールキナーゼ活性を有する親タンパク質の遺伝情報を有するDNAとして、以下の(c)または(d)に記載されたDNAを含有することを特徴とする請求項2に記載の改変タンパク質の製造法。
    (c)配列表・配列番号2に記載された塩基配列からなるDNA
    (d)(c)の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつグリセロールキナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
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