JP4816103B2 - グリセロールキナーゼ改変体 - Google Patents
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Description
項1.グリセロールキナーゼ活性を有する親タンパク質を構成するアミノ酸配列中のシステイン残基が他のアミノ酸に置換されたことを特徴とする安定化された改変蛋白質。
項2.他のアミノ酸がセリン、アスパラギン、バリンの何れかであることを特徴とする項1記載の安定化された改変蛋白質。
項3.グリセロールキナーゼ活性を有する親タンパク質が以下の(a)または(b)であることを特徴とする項1記載の安定化された改変タンパク質。
(a)配列表・配列番号1に記載されたアミノ酸配列からなり、かつグリセロールキナーゼ活性を有するタンパク質。
(b)(a)のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸からなり、かつグリセロールキナーゼ活性を有するタンパク質。
項4.グリセロールキナーゼ活性を有するタンパク質が配列表・配列番号1に記載されたアミノ酸配列を有し、該アミノ酸配列中の第268番目および/または第111番目のシステイン残基が他のアミノ酸に置換されたことを特徴とする項1記載の安定化された改変タンパク質。
項5.グリセロールキナーゼ活性を有する親タンパク質の遺伝情報を有するDNA中のシステイン残基をコードする塩基を他のアミノ酸をコードする塩基で置換した改変タンパク質の遺伝情報を有するDNAを作成し、該DNAを組み込んだ組換えプラスミドを宿主細胞へ導入し、得られた形質転換体を栄養培地にて培養し、改変タンパク質を採取することを特徴とする安定化された改変タンパク質の製造法。
項6.他のアミノ酸がセリンまたはアスパラギンであることを特徴とする項5記載の安定化された改変タンパク質の製造法。
項7.親タンパク質が項3記載の(a)または(b)のグリセロールキナーゼ活性を有するタンパク質であることを特徴とする項5記載の安定化された改変タンパク質の製造法。
項8.グリセロールキナーゼ活性を有するタンパク質が配列表・配列番号1に記載されたアミノ酸配列を有し、該アミノ酸配列中の第268番目のシステイン残基をコードする塩基および/または第111番目のシステイン残基をコードする塩基が他のアミノ酸をコードする塩基に置換されたことを特徴とする項7記載の安定化された改変タンパク質の製造法。
項9.グリセロールキナーゼ活性を有する親タンパク質の遺伝情報を有するDNAとして、以下の(c)または(d)に記載されたDNAを含有することを特徴とする項7記載の安定化された改変タンパク質の製造法。
(c)配列表・配列番号2に記載された塩基配列からなるDNA
(d)(c)の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつグリセロールキナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
「適当な温度で一定期間保存」の条件は、生体分子を含有する診断薬などが実際に長期保存される温度として汎用される2℃〜10℃の冷蔵条件下で6ヶ月以上の保存を選択する。時間がない場合は、例えば、「40℃、7日間保存」、または、「50℃、15分間保存」などの加速(苛酷)試験の条件が選択される。さらに好ましくは、適当な濃度の防腐剤を含有する条件である。
「適当な緩衝液」は、グリセロールキナーゼが作用するpH範囲で十分な緩衝能を持つよう、その種類と濃度を選べば特に限定されないが、例えば、50mMトリス緩衝液(pH8.0)、または、50mMのPIPES−NaOH緩衝液(pH7.0)などが選択される。診断薬用途を想定して、緩衝液にはさらに界面活性剤、塩類、キレート剤、防腐剤などを含んでいてもよい。
保存におけるグリセロールキナーゼの濃度は、特に限定されないが、通常の診断試薬に使用される濃度を想定した0.2〜30U/mlが好ましく選択される。さらに好ましくは1〜10U/mlである。
本発明の好ましい一実施態様としては、配列表の配列番号1に記載されたアミノ酸配列中の第268番目のシステイン残基が他のアミノ酸に置換されたことを特徴とする安定化された改変蛋白質である。または該改変タンパク質をコードするDNAである。
グリセロールを基質とし、グリセロール−3−リン酸の生成量によって測定した。0.1%4−アミノアンチピリン水溶液10ml、0.1%フェノール溶液20ml、27.5U/mlペルオキシダーゼ、200mM HEPES緩衝液(pH7.9)に20U/mlの濃度に溶解したグリセロール−3−リン酸酸化酵素40ml、20mMMgCl2と40mMATPを含む200mM HEPES緩衝液(pH7.9)10mlを加え、これを以下の測定のための原液とした。各反応は、この測定原液3mlに酵素溶液0.1mlと0.3Mグリセロール水溶液0.05mlを添加し、混和後、37℃に制御された分光光度計で500nmの吸光度を3〜4分間記録し、その初期直線部分から1分間当たりの吸光度変化を求めた(ΔODtest)。盲検は酵素溶液の代わりに酵素希釈液(0.2%牛血清アルブミンを含む20mMリン酸カリウム緩衝液,pH7.5)を0.1ml加え、上記同様に操作を行って1分間当りの吸光度変化を求めた(ΔODblank)。得られた吸光度変化量より下記計算式に基づきグリセロールキナーゼの酵素活性を算出した。尚、上記条件で1分間に1マイクロモルのグリセロールをリン酸化する酵素量を1単位(U)とする。
計算式
活性値(U/ml)={ΔOD/min(ΔODtest−ΔODblank)×3.15(ml)×希釈倍率}/{13.3×1/2×1.0(cm)×0.1(ml)}
3.15(ml):反応混液液量
13.3:キノン色素を上記測定条件下で測定した時のミリモル吸光係数
1/2:酵素反応で生成した過酸化水素の1分子から形成するキノン色素が1/2分子であることによる係数
1.0cm:セルの光路長
0.1(ml):酵素サンプル液量
サーマス・フラバスDSM674由来グリセロールキナーゼの発現プラスミドpGYK12は、特開平11−9279号公報記載の方法に従って構築した。本発現プラスミドのサイズは、約4.2Kbpで、pUC18のマルチクローニングサイトに、DSM674由来グリセロールキナーゼをコードする遺伝子をコードする挿入DNA断片を含む。その塩基配列を配列表の配列番号2に、また該塩基配列から推定されるグリセロールキナーゼのアミノ酸配列を配列表の配列番号1に示す。
グリセロールキナーゼ遺伝子を含む発現プラスミドpGYK12と、配列表の配列番号3記載の合成オリゴヌクレオチドおよびこれと相補的な合成オリゴヌクレオチドを用いて、QuickChangeTM Site-Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE製)を用いて、そのプロトコールに従って変異処理操作を行い、更に塩基配列を決定して、配列番号1記載のアミノ酸配列の268番目のシステインがセリンに置換されたグリセロールキナーゼ改変体をコードする組換えプラスミド(pGYKM1)を取得した。
pGYK12と、配列表の配列番号4記載の合成オリゴヌクレオチドおよびこれと相補的な合成オリゴヌクレオチドを用いて、QuickChangeTM Site-Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE製)を用いて、上記と同様の操作により、配列番号1記載のアミノ酸配列の268番目のシステインがアルギニンに置換されたグリセロールキナーゼ改変体をコードする組換えプラスミド(pGYKM2)を取得した。
pGYK12と、配列表の配列番号5記載の合成オリゴヌクレオチドおよびこれと相補的な合成オリゴヌクレオチドを用いて、QuickChangeTM Site-Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE製)を用いて、上記と同様の操作により、配列番号1記載のアミノ酸配列の111番目のシステインがバリンに置換されたグリセロールキナーゼ改変体をコードする組換えプラスミド(pGYKM3)を取得した。
pGYKM1、pGYKM2、pGYKM3の各組換えプラスミドで、グリセールキナーゼ欠損株であるエシェリヒア・コリKM1株(特開平11−9279号公報参照)を、ジーン・パルサー用いたエレクトロポレーション法によりを形質転換し、該形質転換体をそれぞれ取得した。
50mlのLB培地を500ml容坂口フラスコに分注し、121℃、20分間オートクレーブを行い、放冷後別途無菌濾過したアンピシリンをとイソプロピル−β−D−チオガラクトシドをそれぞれ終濃度が100μl/mlと1mMになるように添加した。この培地に100μl/mlのアンピシリンを含むLB培地で予め37℃、12時間培養したエシェリヒア・コリーKM1(pGYKM1)の培養液を1ml接種し、37℃で16時間通気攪拌培養を行った。培養終了より菌体を遠心分離により集菌し、0.2mMメルカプトエタノールを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に懸濁した後、フレンチプレスにて破砕し、更に遠心分離を行い、上清液を粗酵素液として得た。この改変体をGYKM1と命名した。pGYKM2、pGYKM3の各組み換えプラスミドによるエシェリヒア・コリKM1株形質転換体についても、上記方法と同様にして粗酵素標品を取得した。これらの改変体をそれぞれGYKM2、GYKM3と命名した。
比較例として、pGYK12によりエシェリヒア・コリKM1株を形質転換体し、実施例3の方法と同様にして該形質転換体を培養して、改変前の親タンパク質を取得した。
実施例3で取得したグリセロールキナーゼ改変体(GYKM1、GYKM2、GYKM3)および比較例1で取得した改変前のグリセロールキナーゼをそれぞれ、50℃で15分間保存した後の残存酵素活性率(%)を測定した。また、その結果を表1に示す。表1から判るように本発明のグリセロールキナーゼ改変体は、改変前の親タンパク質と比べて液状安定性が向上していることが確認された。
実施例3で取得したグリセロールキナーゼ改変体(GYKM1、GYKM2、GYKM3)および比較例1で取得した改変前のグリセロールキナーゼにそれぞれ、防腐剤として0.05%プロクリン300(シグマアルドリッチ社)を加えたものを、4℃で9日間保存した後の残存酵素活性率(%)を測定した。その結果を表2に示す。表2から判るように本発明のグリセロールキナーゼ改変体は、改変前の親タンパク質と比べて液状安定性が向上していることが確認された。
実施例3で取得したpGYKM1、pGYKM2、によるエシェリヒア・コリKM1株の各形質転換体を、100μl/mlのアンピシリンを含むLB培地で予め30℃、16時間前培養した後、2mlを100μl/mlのアンピシリンと1mMのイソプロピル−β−D−チオガラクトシドを含む200mlのTerrific brothを接種し、35℃で20時間通気攪拌培養を行った。それぞれの培養終了液より菌体を遠心分離により集菌し、20mMリン酸緩衝液(pH7.5)に懸濁した後、超音波処理により破砕し、更に遠心分離を行い、上清液を粗酵素液として得た。得られた粗酵素液をポリエチレンイミンによる除核酸および硫安分画を行い、5mMのMgCl2共存下で57℃、16時間の熱処理後、20mMリン酸緩衝液(pH7.5)で透析を行った。更にDEAEセファロースCL−6B(GEヘルスケアバイオサイエンス製)により分離・精製し、GYKCS268、GYKCN268の各精製酵素標品を得た。本方法により得られた標品は、SDS−PAGE的にほぼ単一なバンドを示した。
比較例2で取得したpGYK12によるエシェリヒア・コリKM1株の形質転換体を、実施例5の方法と同様にして培養および精製を行い、改変前の親タンパク質の精製酵素標品を取得した
実施例6で取得した各グリセロールキナーゼ改変体(GYKM1、GYKM2)および比較例2で取得した改変前のグリセロールキナーゼの各精製酵素標品をそれぞれ、0.1%(W/V)トリトンX−100と防腐剤として0.02%2−メチルイソチアゾロン(ロッシュ・ダイアグノスティックス社)を含むPIPES−NaOH緩衝液(pH7.0)中に5U/mlになるように加え、9℃で14日間保存した後の残存酵素活性率(%)を測定した。その結果を表3に示す。表3から判るように本発明のグリセロールキナーゼ改変体は、改変前と比べて安定性が向上していることが確認された。
上記実施例4、5、7において、2℃〜10℃の冷蔵条件下で6ヶ月以上の保存下でも、本発明のグリセロールキナーゼ改変体は、改変前と比べて安定性が向上していることが推定される。
Claims (3)
- 以下の(a)または(b)で表されるグリセロールキナーゼ活性を有する親タンパク質を構成するアミノ酸配列において第268番目のシステイン残基がセリン又はアスパラギンに、あるいは、第111番目のシステイン残基がバリンに置換されたことを特徴とする改変タンパク質。
(a)配列表・配列番号1に記載されたアミノ酸配列からなり、かつグリセロールキナーゼ活性を有するタンパク質。
(b)(a)のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸からなり、かつグリセロールキナーゼ活性を有するタンパク質。 - 請求項1に記載の改変タンパク質の遺伝情報を有するDNAを作成し、該DNAを組み込んだ組換えプラスミドを宿主細胞へ導入し、得られた形質転換体を栄養培地にて培養し、改変タンパク質を採取することを特徴とする改変タンパク質の製造法。
- グリセロールキナーゼ活性を有する親タンパク質の遺伝情報を有するDNAとして、以下の(c)または(d)に記載されたDNAを含有することを特徴とする請求項2に記載の改変タンパク質の製造法。
(c)配列表・配列番号2に記載された塩基配列からなるDNA
(d)(c)の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換もしくは付加された塩基配列からなり、かつグリセロールキナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
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