JP4122174B2 - 歯科用切削装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は歯科用切削装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図4は、従来から使用されている歯科用切削装置であるハンドピース100の軸部102と該軸部102の先端に一体的に設けられたヘッド部104の構成を示す。この先端ヘッド部104において、外装体であるハウジング106の内部には、柱状切削工具108の一端を着脱自在に保持するロータ110と、このロータ110を回転自在に支持する軸受部112,114と、ロータ110に外装された翼車116が収容されており、軸部102の給気路118から供給された高圧空気を翼車116に当てることで、この翼車116とロータ110、及びロータ110に保持された切削工具108を回転するようにしてある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このようなハンドピース100では、通常軸部102に排気路(図示せず)が形成されており、翼車116に当たった空気は排気路を介して排気するように構成されている。しかし、一部の高圧空気は、翼車116に当たった後、軸受部114、さらにハウジング106とロータ110の隙間120を通り、切削工具108に沿って該切削工具108の先端部に向かって高速で噴射される。また、ハンドピース100のヘッド部104には冷却用の水を噴出する機構が付設されており、回転する切削工具108と歯122との間に発生する熱を放散する配慮がなされているが、切削工具108の先端に向かって噴射された高速空気が冷却水を吹き飛ばし、そのために十分な冷却効果が得られないという事態を招くことがある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
このような問題を解消するために、本発明は、ヘッド部のハウジング内に、上記ハウジングの工具挿入口を介して挿入された柱状切削工具を保持する回転筒と、上記回転筒に外装されて固定された翼車とを収容し、上記翼車に高圧の空気を当てて上記翼車・回転筒・切削工具に回転を与える歯科用切削装置において、
上記ハウジングは、上記切削工具の先端に向けて水を噴射する注水孔を有し、
上記ハウジングは、上記工具挿入口側に上記回転筒の周囲を覆う環状部と、上記工具挿入口の近傍で上記回転筒の回転軸に向かって伸びて上記工具挿入口を形成するとともに上記工具挿入口の近傍にある上記回転筒端部の一部を覆う環状フランジからなるカバー部を有し、
上記環状部は、上記回転筒の中心軸から径方向外側に向かって伸び、上記環状部の内側と外側を連通する空気放出孔を有し、
上記空気放出孔は、上記注水孔から上記切削工具の先端に向けて噴射される水の注水を妨げることがない位置に配置されていることを特徴とする。
【0005】
本発明の他の形態は、歯科用切削装置において、上記ハウジングが、アウターハウジングと、上記アウターハウジングの内部に着脱可能に収容されたインナーハウジングとを有し、上記アウターハウジングは上記工具挿入口を囲む開口部を有し、上記インナーハウジングは上記開口部に内装された環状部を有し、上記カバー部が上記環状部に設けられていることを特徴とする。
【0006】
本発明の他の形態は、歯科用切削装置において、上記空気放出孔が、上記工具挿入口の近くにある上記回転筒端部よりも、上記切削工具の先端側に配置されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の他の形態は、歯科用切削装置において、上記空気放出孔が、上記切削工具の先端側に向かって且つ上記切削工具から離れる方向に上記空気を放出するように形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の他の形態は、歯科用切削装置において、上記空気放出孔が、上記中心軸方向に関して上記翼車側に近いところにある空気案内部が上記翼車よりも遠いところにある空気案内部よりも上記回転筒の中心軸から外側に伸びていることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係る歯科用切削装置であるハンドピース10の一部、特に術者が手にとって握る把持部12の一部と、この把持部12の先端に取り付けたヘッド部14を拡大した断面図である。図示するように、把持部12は、先端(図面上左側の端部)に開口部を有する筒状部材からなる。一方、ヘッド部14は、概略、筒状部材の先端開口部に挿入されて固定される軸部16と、以下に説明する切削機構を収容するハウジング18とを有する。
【0010】
ハウジング18は、軸部16と一体的に構成された椀型のアウターハウジング20と、このアウターハウジング20の内側に着脱可能に装着された椀型のインナーハウジング22を有する。アウターハウジング20は上部開口と下部開口部を有する。上部開口部は、この上部開口部を通じてアウターハウジング20の内部にインナーハウジング22が装入できる大きさとしてある。一方、下部開口部24は、この下部開口部24を通じてインナーハウジング22の一部が下方に突出できる大きさとしてある。
【0011】
インナーハウジング22の外形はアウターハウジング20の内形に似せてあり、このインナーハウジング22をアウターハウジング20に装入した状態で、インナーハウジング22とアウターハウジング20との間に出来る隙間ができるだけ小さくなるようにしてある。また、アウターハウジング20の内面に対向するインナーハウジング22の外面には複数の環状溝(Oリング収容溝)が形成されており、これらの環状溝に収容されたOリング26、28、30によって、アウターハウジング20とインナーハウジング22との間がシールされている。一方、図1及び図2に示すように、アウターハウジング20の底部には複数の注水孔32が等間隔に形成されている。これらの注水孔32は、インナーハウジング22に対向する内面に形成された環状水路34によって相互に接続されているとともに、軸部16に形成された給水路(図示せず)に接続されている。
【0012】
インナーハウジング22は、アウターハウジング20の下部開口24を貫通して該下部開口24の下方に突出する環状部36を一体的に備えている。この環状部36は、ハウジング18の中心軸38に向かって内方に伸びる環状フランジからなるカバー部40を備えており、このカバー部40の内側に切削工具挿入口42が形成されている。また、環状部36は、ハウジング18の中心軸38から径方向外側に向かって伸びる複数(本実施の形態では3つ)の空気放出孔(空気誘導部)44が形成されている。そして、これら空気放出孔44の断面積は、カバー部40と該カバー部40の切削工具挿入口42に挿入される切削工具46との間に形成される隙間の断面積よりも大きくしてある。
【0013】
インナーハウジング22の内側には上部軸受部48と下部軸受部50が配置されており、上部軸受部48はインナーハウジング22の上部開口部に固定された環状のトップハウジング52に保持され、下部軸受部50はインナーハウジング22に保持されている。図示するように、上部軸受部48とトップハウジング52との間、また下部軸受部50とインナーハウジング22との間には、両者の間をシールするOリング54,56を設けるのが好ましい。
【0014】
上部軸受部48と下部軸受部50は、ハウジング18の中心軸38と同軸的に配置されたロータ58の回転筒60を回転自在に保持している。この回転筒60は、上部軸受部48と下部軸受部50の間に配置された環状の翼車(タービン)62を保持しており、この翼車62と共に回転するようにしてある。また、回転筒60はその内面に切削工具保持機構であるチャック64を備えており、インナーハウジング22のカバー部40に形成されている切削工具挿入口42を介して挿入された円柱状の切削工具46を保持するようにしてある。
【0015】
本実施の形態において、翼車62は、外周上部に形成された上段ブレード部66と、外周下部に形成された下段ブレード部68を有する。本明細書では翼車62の構成は詳細に説明しないが、この翼車62には特開2001−162416号公報に開示されている二段式の翼車が好適に利用できる。一方、上段ブレード部66に対向するインナーハウジング22と軸部16の部分には給気路70,72が形成されている。また、下段ブレード部68に対向するインナーハウジング22と軸部16の部分には排気路74,76が形成されている。そして、インナーハウジング22の内面には、上段ブレード部66と下段ブレード部68にそれぞれ流体的に連結する空気路78が形成されている。
【0016】
以上の構成を収容したアウターハウジング20の上部開口部には、トップハウジング52を固定する環状の固定リング80が取り付けてある。また、固定リング80はキャップ82を上下動可能に保持している。キャップ82は内面にチャック解除部84として機能するボス部を備えており、通常、該キャップ82の内側に収容されているばね86によって図示する位置に保持されており、ばね86の付勢力に対向してキャップ82を下方に移動すると、チャック解除部84がチャック64を解除して切削工具46を取り外すことができるようにしてある。
【0017】
以上の構成を備えたハンドピース10によれば、把持部12に収容されている給水管(図示せず)を介して供給された水は、軸部16の給水路とハウジング18の環状水路34を介して複数の注水孔32から切削工具46の先端に向けて噴射される。また、把持部12に収容されている給気管(図示せず)を介して供給された高圧空気は、軸部16とインナーハウジング22の給気路72、70を介して、翼車62の上段ブレード部66に当てられる。上段ブレード部66に当たった高圧空気は、空気路78を介して下段ブレード部68に当てられる。その結果、翼車62に回転が与えられる共に、この翼車62を備えたロータ58が回転する。また、ロータ58に保持された切削工具46が回転する。
【0018】
上段ブレード部66と下段ブレード部68に当たった高圧空気の殆どは、インナーハウジング22と軸部16に形成された排気路74,76と、これに連通する把持部12の内部空間を介して、把持部12に形成された排気孔(図示せず)から大気中に放出される。また、下段ブレード部68に当たった高圧空気の一部は、下部軸受部50の隙間とインナーハウジング22とロータ58との間の隙間を通り、さらにロータ58の下端面上を通り、空気放出孔44から中心軸38と直交する方向に放出される。
【0019】
したがって、高圧空気は切削工具46の先端に向かって放出することがないので、切削工具46と該切削工具46によって切削中の歯牙との間に入り、そこに注水されている冷却水を吹き飛ばすということもない。また、空気放出孔44の断面積は、カバー部40と切削工具46との間に形成される隙間の断面積よりも大きくしてあるので、空気放出孔44を通じて放出される高圧空気によって生じる騒音は極めて小さく、術者や患者に不快感を与えることもない。
【0020】
また、ロータ58の下端部は、インナーハウジング22に形成されたカバー部40によって覆われているので、治療中の歯牙や口腔内粘膜に接触することがない。そのため、歯牙や口腔内粘膜を不要に傷つけることがないし、ロータ58が歯牙に当たって損傷することもない。さらに、本実施の形態では、ハウジング18をアウターハウジング20とインナーハウジング22とで形成し、インナーハウジング22に形成したカバー部40でロータ58の下端を覆う構成を採用しているので、歯牙との接触によってインナーハウジング22が損傷した場合でも、このインナーハウジング22を交換するだけで済み、アウターハウジング20を交換する必要がない。
【0021】
なお、本発明は種々のハンドピース10に適用することが可能で、例えば、図3に示すように、図4に示した従来のハンドピースを改良し、アウターハウジング88の下部開口部90を介してインナーハウジング92の一部を下方に突出させるとともに、この突出した環状部94にロータ110の下端部を覆うカバー部96を設け、このカバー部96に軸受部を介して噴出する高圧空気を中心軸から外側に向けて誘導する一つ又は複数の空気放出孔98を形成してもよい。
【0022】
ところで、ヘッド部に水滴が付着した場合、種々の問題を生じる。例えば、このヘッド部に付着した水滴によって術者の視野が妨げられる。また、光重合によるレジン充填治療などのように乾燥した環境が要求される治療中にヘッド部に付着した水が落下してレジンに付着するとその治療効果が損なわれる。さらにヘッド部に付着した水が患者の顔に落下すると患者に不快感を与える。そこで、図5及び図6に示すように、環状カバー部40の一部であって空気誘導部である空気放出口44を形成している部分に切り欠き130(特に、図5を参照)を形成し、翼車62に近いところにある空気案内部132を翼車よりも遠いところにある空気案内部134よりも中心軸38から外側に伸ばすことで、空気放出口44から噴出する空気を切削工具の先端に向けて傾斜させることが好ましい。また、図7に示すように、空気放出口44は中心軸38から外側に向かって、切削工具の先端側に向けてやや斜めに傾けて形成しても同様の作用効果が得られる。ここで、空気放出口44を斜めに形成する範囲は、少なくとも空気放出口44の噴出口近傍を含むものであればよい。
【0023】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、工具挿入口の近くにある回転筒端部はその一部一部又は全部がハウジングのカバー部によって覆われているので、回転筒が患者の歯牙や口腔内粘膜に接触して傷つけることがないし、歯牙との接触によって回転筒が損傷することもない。
【0024】
また、本発明によれば、ハウジングは、工具挿入口の近くに、翼車から工具挿入口に向かって流れる空気を切削工具の径方向外側に向かって案内する空気誘導部を備えているので、この空気誘導部によって誘導される高圧空気が冷却水を吹き飛ばしてその冷却効果を低下させることもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る歯科用切削装置の部分拡大断面図。
【図2】 図1に示す歯科用切削装置の底面図。
【図3】 図4に示す歯科用切削装置を本発明に基づいて改良した、本発明の他の形態の部分拡大断面図。
【図4】 従来の歯科用切削装置の断面図。
【図5】 本発明の他の形態の歯科用切削装置の拡大斜視図。
【図6】 図5に示す歯科用切削装置の拡大断面図。
【図7】 本発明の他の形態の歯科用切削装置の拡大断面図。
【符号の説明】
10:ハンドピース
12:把持部
14:ヘッド部
16:軸部
18:ハウジング
20:アウターハウジング
22:インナーハウジング
24:下部開口部
32:注水孔
40:カバー部
42:切削工具挿入口
44:空気放出孔
46:切削工具
58:ロータ
60:回転筒
62:翼車

Claims (5)

  1. ヘッド部のハウジング内に、上記ハウジングの工具挿入口を介して挿入された柱状切削工具を保持する回転筒と、上記回転筒に外装されて固定された翼車とを収容し、上記翼車に高圧の空気を当てて上記翼車・回転筒・切削工具に回転を与える歯科用切削装置において、
    上記ハウジングは、上記切削工具の先端に向けて水を噴射する注水孔を有し、
    上記ハウジングは、上記工具挿入口側に上記回転筒の周囲を覆う環状部と、上記工具挿入口の近傍で上記回転筒の回転軸に向かって伸びて上記工具挿入口を形成するとともに上記工具挿入口の近傍にある上記回転筒端部の一部を覆う環状フランジからなるカバー部を有し、
    上記環状部は、上記回転筒の中心軸から径方向外側に向かって伸び、上記環状部の内側と外側を連通する空気放出孔を有し、
    上記空気放出孔は、上記注水孔から上記切削工具の先端に向けて噴射される水の注水を妨げることがない位置に配置されていることを特徴とする歯科用切削装置。
  2. 上記ハウジングは、アウターハウジングと、上記アウターハウジングの内部に着脱可能に収容されたインナーハウジングとを有し、上記アウターハウジングは上記工具挿入口を囲む開口部を有し、上記インナーハウジングは上記開口部に内装された環状部を有し、上記カバー部が上記環状部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の歯科用切削装置。
  3. 上記空気放出孔が、上記工具挿入口の近くにある上記回転筒端部よりも、上記切削工具の先端側に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯科用切削装置
  4. 上記空気放出孔は、上記切削工具の先端側に向かって且つ上記切削工具から離れる方向に上記空気を放出するように形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の歯科用切削装置。
  5. 上記空気放出孔は、上記中心軸方向に関して上記翼車側に近いところにある空気案内部が上記翼車よりも遠いところにある空気案内部よりも上記回転筒の中心軸から外側に伸びていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の歯科用切削装置
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