JP4121101B2 - 木材用補強材及び強化木材 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は木材を強化するための木材用補強材及び該木材用補強材で補強された強化木材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、単一木材や、繊維方向に長く切削加工したひき板あるいは小角材を、その繊維方向を互いに平行にして接着剤を用いて張り合わせたいわゆる集成材は、主に建築における柱、梁のような骨組材として、また、最近では木橋や大型のドームに使われている。
【0003】
特に、集成材は、ひき板、小角材を集成するため寸法、形状の自由度が高く、製品強度のばらつきや干割れ、狂いなどが小さい上に、曲がり材を容易に製造できるなどの優れた特性を持っている。
【0004】
ところが、これらの集成材を大型建築物や構造物に用いる場合、集成材の剛性や強度を高くする必要があるため集成材の厚みを大きくする必要があり、その結果、建築物や構造物の天井が低くなったり、必要以上に屋根が高くなる等の問題がある。
【0005】
このため、集成材や単一木材に高い剛性や強度を付与し、且つ木材の建築物や構造物として必要とされる充分なる耐水性、耐腐食性、耐火性、耐熱性、接着性を付与するために、フェノール系樹脂、レゾルシノール系樹脂などの接着剤により炭素繊維を接着して、炭素繊維強化単一木材や炭素繊維強化集成材等の強化木材を得ることが提案されている。
【0006】
このような強化木材の製造法の一つとして、例えば、特開平3−230904号公報には、接着剤を木材面に塗布し、その上に炭素繊維を配置して接着剤を繊維間に含浸させると共に木材とも接着させる方法が示されている(従来例1)。
炭素繊維強化単一木材や炭素繊維強化集成材の上記とは別の製造法として、例えば、特開昭53−108182号公報には、炭素繊維に接着剤を予め十分に含浸させた、いわゆるプリプレグを使用し木材に接着する方法が提案されている(従来例2)。該方法は他場所での作業が可能であり、また加工性などの面から好適であり多く用いられている。
【0007】
本発明者等は特開平9−254319号公報に、木材強化用炭素繊維プリプレグと木質シートとを貼合せた木材用補強材を提案している(従来例3)。該発明では、離型紙等を必要とすることがなく、得られた木材用補強材は高い強度と剛性を有すると共に木質シートと木材との接着性能あるいは木質シートと炭素繊維との接着性能に関して、安定した高い物性が得られている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来例1及び2において、炭素繊維プリプレグと木材を接着する場合、木材が生育環境によって性質が異なってくる天然物であるために接着性が変動する問題があった。また、接着性を確保するためにプリプレグに用いる樹脂の状態、すなわち、固形、半固形、液状などの状態やその量を選択し適正化するなどの頻繁な調整が必要であり、経済性や品質上の多くの課題があった。
【0009】
前記従来例2において、一般的に炭素繊維プリプレグはロ−ル状に巻いたり、シート状に重ねて運搬したり保管するため、互いが接着しないようにプリプレグの片面または両面に離型紙を配置しているが、木材と接着する場合にその離型紙を取り除くなどの煩雑で時間がかかる加工作業が必要である上、除いた離型紙が廃棄物となり、プリプレグの使用は環境汚染などを惹起していた。
【0010】
前記従来例3において、曲げ破壊試験において、木質シート自身がせん断破壊を起こし、必ずしも充分な補強効果を得ることが出来なかった。
【0011】
本発明者等はかかる従来技術の問題点を解決することができる木材や集成材に適用して強化するための木材用補強材及び該木材用補強材を木材表面に適用した強化木材を提供することを目的とする。
【0012】
具体的には、本発明は、木材との接着性と取扱性に優れ、離型紙等の廃棄物を生じるような環境汚染を起こさない、且つ木材に対して十分な補強強化を有する木材用補強材及び強化木材を提供することを目的とする。
【0013】
更に具体的には、本発明は、木材の天然物としてのばらつきに起因する接着性能、強度、剛性等の変動を低減させ、かつ作業上の煩雑さや廃棄物を最小限に抑え、同時に高い接着性、強度、剛性を有する木材用補強材及び該木材用補強材を適用した強化木材を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記した問題点を解決するための本発明は、次の構成からなる。
本発明の木材用補強材は、多孔質シートにフェノール樹脂を含浸してなる硬化度が55%以上80%以下のフェノール樹脂含浸シートを、炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートの表面に配してなることを特徴とする。
また、本発明の強化木材は、前記木材用補強材が木材表面においてフェノール樹脂含浸シートを介して一体硬化していることを特徴とする。
【0015】
本発明の木材用補強材は、硬化度が55%以上80%以下のフェノール樹脂含浸シートが配されているので、被補強木材に対して優れた接着性を示すと共にべとつきの無い成形体となるので、剥離紙を必要としない。したがって、本発明の木材用補強材を木材表面に適用して補強してなる本発明の強化木材は、高強度、剛性が高く、しかもせん断強さが高い特徴を有する。
【0016】
炭素繊維強化熱硬化性樹脂シート
本発明の木材用補強材の構成要素としての炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートは、熱硬化性樹脂シート中に炭素繊維が補強繊維として強化されたものである。
【0017】
該炭素繊維は特に制限されないが、ポリアクリロニトリル系繊維から得られる窒素含有量が0.1〜15重量%、引張り強度が2500〜7000MPa、弾性率が150〜700GPaである炭素繊維が好ましく、特に、窒素含有量3〜10重量%を有する3500MPa以上の引張強度と200〜350GPaの弾性率を有する直径5〜9ミクロンの炭素繊維が接着性の点で好ましい。
【0018】
また、本発明における炭素繊維の表面におけるESCA表面分析装置(島津製作所製)による表面の酸素/炭素比が0.01/1〜0.3/1、特に0.01/1〜0.25/1である場合に接着強度を高くできるので好ましい。
【0019】
炭素繊維の繊維直径は5〜9ミクロン、構成本数は1,000〜300,000本からなる繊維束(ストランド)を所望分だけ集束し、または、シート状に拡幅して使用することが望ましいが、特にこれに限定されない。
【0020】
炭素繊維の形態は、織物、不織布のような多方向シート、又は一方向配向シート又はロービング等の線状材であってもよい。
【0021】
炭素繊維で強化される熱硬化性樹脂の種類は、特に制限はないが、建築物に使用されることを考慮すると、イソシアネート系樹脂又はレゾルシノール系樹脂、レゾール型フェノール系樹脂の中から選ばれた1種以上が望ましく、該熱硬化性樹脂の硬化剤としてホルムアルデヒド類が望ましく、硬化触媒として無機酸あるいは有機酸が望ましい。
【0022】
更に具体的に熱硬化性樹脂を挙げれば、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノールの如きフェノール水酸基を1個有するフェノール類あるいはオリゴマーおよびレゾルシン、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノールなどフェノール性水酸基を2個以上有するフェノール類と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、トリオキサン、テトラオキサンの如きアルデヒド類とをフェノール類/アルデヒド類=2/1〜1/3、好ましくは5/4〜2/5のモル比で、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムの如きアルカリ触媒の存在下でメチロール化して得られる公知のレゾール型フェノール樹脂(フェノールホルムアルデヒド類初期付加縮合樹脂)およびレゾルシノール樹脂が使用できる。
【0023】
より好ましくは、高速液体クロマトグラフ(HPLC)によるポリスチレン換算の平均分子量が120〜2000のもので、特に150〜500のものが好ましく、25℃における粘度が3〜150ポイズに調整した樹脂が好ましい。
【0024】
硬化剤はレゾルシノール系樹脂、レゾール型フェノール系樹脂などの硬化剤として用いられている公知のもののうち、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール、トリオキサンの如く当該樹脂と混合しペースト状あるいは液状なるものが好ましい。
【0025】
硬化触媒としてパラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸、フェノールスルホン酸などの当該樹脂と混合して液状に溶解するものが好ましい。
【0026】
炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートの製造過程を考慮するならば、プリプレグを均一に硬化させるために、混合樹脂としたときに通常のプリプレグ製造時の温度である35℃以下において、均一な液状となる硬化剤または硬化触媒が特に好ましい。
【0027】
本発明の木材用補強材において、構成要素としての炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートは、プリプレグシートでもよく、また完全硬化したものでもよい。炭素繊維強化樹脂複合材自身の強度を高める目的のためには、完全硬化させることが好ましい。
【0028】
フェノール樹脂含浸シート
本発明の木材用補強材の構成要素としてのフェノール樹脂含浸シートは、多孔質シートにフェノール樹脂を含浸させたシートであり、木材用補強材が木材表面において接着剤により接着される場合に接着強度を高めるためのものである。したがって、薄く、均一厚みであることが重要である。
【0029】
該フェノール樹脂含浸シートの厚みは、0.01mm以上0.5mm以下のものが望ましい。該厚みが0.01mm未満であるとフェノール樹脂含浸シートの形態に凹凸が生じたり、場合によっては幅方向でカール(丸まる)したりすることにより、シート性能が損なわれ、さらに加えてシートの強度も低下して外力で簡単に引き裂かれたりして、取扱い性に困難を生じることがある。一方、該厚みが0.5mm超では耐水性やせん断強さが低下することがある。
【0030】
前記多孔質シートは、形態としては、例えば、不織布、紙、織物等が挙げられ、また、材質としては、パルプ、ガラス繊維、炭素繊維、合成繊維等が挙げられる。
【0031】
本発明に用いられるフェノール樹脂含浸シートに含浸している樹脂は、フェノール系樹脂、フェノール/メラミン混合樹脂等の高粘度あるいは固体状の樹脂で、硬化剤の有無は問題としないが、硬化度を調整し得る低反応性の樹脂を用いることが本発明の目的を達成するために好ましい。
【0032】
フェノール樹脂を用いる理由は、耐火・耐熱性能に優れ、さらに耐水性、耐腐食性、接着性に優れており、建築材料に好適に使用できるからである。
【0033】
このようなフェノール樹脂の具体例としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノールの如きフェノール性水酸基を1個有するフェノール類あるいはオリゴマーおよびレゾルシン、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノールなどフェノール性水酸基を2個以上有するフェノール類、さらにこれらの樹脂にメラミン、エポキシ、不飽和エステル等の1種類以上の樹脂を混合した樹脂等である。
【0034】
本発明の木材用補強材において、構成要素としてのフェノール樹脂含浸シート中のフェノール樹脂の硬化度を55%以上80%以下、より好ましくは60%以上75%以下に調整しておくのがよいが、これは良好な接着性とせん断強さを保持するためである。すなわち、当該樹脂の硬化度が55%未満であるとフェノール樹脂の硬化度が低いためにフェノール樹脂含浸シート内部での剥離が発生し、一方、80%を超えると硬化が進みすぎ、接着剤との反応性が低下し木材との界面での剥離をもたらすからである。
【0035】
また、フェノール樹脂含浸シートにおける当該樹脂の硬化度を55%以上80%以下に調整することにより、本発明の木材用補強材は、べとつきの無い成形体となり、保管や移送時に通常のプリプレグに必須な離型紙は不要となる。
【0036】
ここで硬化度は次のようにして測定したものと定義する。
▲1▼ フェノール含浸シートの未処理のフェノール樹脂の硬化反応に伴う発熱量Q1 を測定する。測定は示差走査熱量計(以下DSC)を用いて行う。
▲2▼ 木材用補強材(炭素繊維強化樹脂複合材)の成形時と、全く同様の熱履歴をフェノール樹脂含浸シートのフェノール樹脂に与え、熱処理後の硬化反応に伴う発熱量Q2 を測定する。
▲3▼ 上記▲1▼▲2▼から硬化度を次式1に従って算出する。
【0037】
【数1】
【0038】
木材用補強材の複合構造
炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートとフェノール樹脂含浸シートとは、次の複合構造(1)、(2)を採ることが出来る。
【0039】
複合構造(1):炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートとフェノール樹脂含浸シートとが、全面的に接着し一体化している複合構造。
【0040】
複合構造(2):炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートとフェノール樹脂含浸シートとが、ポイント接着し、一体化している複合構造。
【0041】
このような複合構造(1)、(2)は、次のような製造法によって得られる。製造法: 炭素繊維に木材補強用の熱硬化樹脂を含浸させた、いわゆるプリプレグシートの片面あるいは両面にフェノール樹脂含浸シートを貼り合わせ、このフェノール樹脂含浸シートの硬化度が55%以上80%以下になるよう熱プレス等を用いて一体化する。この時の炭素繊維の熱硬化性樹脂は、完全に硬化していてもいなくても良い。
【0042】
被補強木材
本発明における被補強木材には、単一木材や集成材が挙げられ、従来用いられている木材であれば特に限定されるものではなく、通常、スギ、ヒノキ、カラマツ、ベイマツ、トウヒ等の建築物に用いられる木材やナラ、キリ、ケヤキ、カエデ、トチ、ホオ、サクラ、チーク、ラワン、スピナールなどの合板等に用いられる木材が使用できる。
【0043】
木材の補強
本発明の木材用補強材(炭素繊維強化樹脂複合材)は次の様にして木材の補強に使用される。
本発明の木材用補強材を単一木材の表面、または複数の板あるいは単板からなる集成材のいずれかの板あるいは単板間または表面に貼付し、必要ならば接着剤を介在し、さらに必要ならば加熱、加圧して一体硬化した強化木材とする。
【0044】
【発明の実施の形態】
本発明の木材用補強材の実施の形態を図面に基づいてさらに具体的に説明する。
【0045】
図1は、本発明の木材用補強材の一例を示し、構成要素毎に分解して示したものである。図1において本発明の木材用補強材(炭素繊維強化樹脂複合材)は、炭素繊維強化熱硬化性樹脂シート2の両面にフェノール樹脂含浸シート1を配したものである。
【0046】
図2は、本発明の強化木材の一例を示し、構成要素毎に分解して示したものである。図2の強化木材は、単一木材3の両面に本発明の木材用補強材4が配されて補強されている。図2において特に図示していないが、単一木材3と木材用補強材4の間には、通常、接着剤層が介在する。
【0047】
図3は、本発明の木材用補強材を使用し、集成材を補強した状態の強化木材の一例の断面図である。図3の強化木材は、複数層に積層された集成材5上に複数層からなる木材用補強材4が配され、さらに該木材用補強材4上に単一木材3が配されている。図3において特に図示していないが、単一木材3と木材用補強材4の間、或いは木材用補強材4と木材用補強材4の間、或いは木材用補強材4と集成材5の間、或いは集成材5と集成材5の間には、通常、接着剤層が介在している。
【0048】
本発明の木材用補強材は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0049】
熱硬化性樹脂の1種以上と、硬化剤または硬化触媒と、必要ならば無機充填剤などを混合した液状混合樹脂中に炭素繊維のストランドを連続的にディップして炭素繊維に対して当該混合樹脂が30〜80重量%になるように含浸させ、必要ならば揮発分を乾燥した後、予めドラムに巻き付けたフェノール樹脂含浸シートの上に、繊維を互いに平行になるように巻き付けた後、必要ならば乾燥し、ついでドラムの幅方向に切断することによって作製するか、または、予め当該樹脂を表面に塗布したフェノール樹脂含浸シートの上に炭素繊維ストランドを平行にロールで圧しながら配置しつつ樹脂を繊維に浸透させるなどの方法によって作製する。
【0050】
当該混合樹脂は均一な溶液であることが炭素繊維に均一に含浸させて均一な硬化を行うために好ましい。均一でない場合、得られる炭素繊維強化熱硬化性樹脂シート(プリプレグ)が硬化不良になったり、接着性が低くなるので好ましくない。
【0051】
また、混合樹脂を含浸してなる炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートの混合樹脂量が30重量%以下の場合は、樹脂量の不足により強度特性が発現しないばかりか、フェノール樹脂含浸シートとの接着性に劣る。一方、炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートの混合樹脂量が80重量%以上の場合は、樹脂量が多すぎるため成形時の樹脂フローに伴って炭素繊維が乱れるなど強度特性が発現しないばかりか、炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートから樹脂が落下するなど取扱性が難しくなるので好ましくない。
【0052】
特に炭素繊維強化熱硬化性樹脂シート中の混合樹脂量が40〜60重量%にある時、強度特性やフェノール樹脂含浸シートとの接着性、あるいは炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートの取扱性が良好であり好ましい。
【0053】
さらに、混合樹脂は25℃における粘度が3〜150ポイズが好ましく、粘度が3ポイズ以下の場合はプリプレグから樹脂が落下し易く、また150ポイズ以上の場合は炭素繊維への樹脂の含浸性が劣るので好ましくない。
【0054】
粘度の調整は水やアルコール等を添加して行うことも出来る。
【0055】
本発明の木材用補強材は、炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートにフェノール樹脂含浸シートを貼付し、これを加圧し、さらに必要であれば加熱することにより一体化して作製出来る。この時フェノール樹脂含浸シートの硬化度を55%以上80%以下に調整するが、作製時の1回の加熱において調整しても良いし、2回以上の加熱、あるいは常温での養生等によって調節しても良い。
【0056】
本発明の木材用補強材と単一木材および集成材との接着は次のように行い一体化する。
【0057】
すなわち、単一木材、集成材の表面および集成材用薄板の表面に、既存の木材用接着剤を、必要ならば本発明で用いる樹脂および硬化剤あるいは硬化触媒として無機酸あるいは有機酸とを混合した樹脂、炭素繊維プリプレグに用いた混合樹脂を用いてもよく、当該樹脂を木材表面に塗布した後、当該木材用補強材を炭素繊維の方向を木材の繊維方向と平行になるように貼付し、被補強木材が集成材用薄板の場合はこの木材用補強材と他の数枚の集成材用薄板とを公知の方法で接着剤を介して積層したのち1〜15kg/cm2 の圧力下で常温〜120℃の温度にて5〜24時間加熱することで本発明の強化木材が得られる。
【0058】
【実施例】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り下記実施例に限定されるものではない。
【0059】
尚、炭素繊維樹脂複合材料用の樹脂の粘度はレオロジー物性試験機(レオロジ社製)を用いて測定し求めた。
【0060】
さらに、木材および集成材および炭素繊維強化木材およびその集成材の曲げ試験及び接着性の試験(浸漬剥離試験、煮沸剥離試験、ブロックせん断試験)は、構造用集成材の日本農林規格に準じて実施した。なお、浸漬剥離試験及び煮沸剥離試験は使用環境1にて実施した。
【0061】
〔実施例1〕
繊維特性が単繊維直径7ミクロン、繊維本数12000本、引張強度3890MPa、引張弾性率236GPaである炭素繊維“ベスファイト(登録商標)HTA12K”(東邦レーヨン(株)製)のストランドを、20℃における粘度が35ポイズであるレゾール型フェノール樹脂“AHー343”(リグナイト(株)製)82部とパラトルエンスルホン酸を主成分とする有機系硬化剤“D−5”(リグナイト(株)製)18部とを室温で均一に混合溶解して得た混合樹脂を入れた樹脂浴中を5m/分、浸漬時間0.5分として通過させスクイズロールで含有樹脂量を55重量%となるように調整しながら、直径127cmのドラムにストランドを平行になるように幅100cmまで巻き付け、幅100cm、長さ約4.0mである炭素繊維重量150g/m2 の炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートとした。
【0062】
上記炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートを幅100mm、長さ250mmの短冊型に切断し、これを2層積層後、両面に厚さ0.25mmのフェノール樹脂含浸シート(商品名:フェノール樹脂含浸シートPFP 2、リグナイト(株)製)を貼付し、圧力5kg/cm2 下、温度100℃、保持時間3時間にて加熱硬化し一体化させて、炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートとフェノール樹脂含浸シートからなる本実施例1の木材用補強材(炭素繊維強化樹脂複合材)の平板とした。この木材用補強材の中の炭素繊維含有率は50体積%であり、フェノール樹脂含浸シートの硬化度は65%である。
【0063】
この平板状の木材用補強材から切り出した幅60mm、長さ75mmの木材用補強材の平板の両面に、幅60mm、長さ75mm、厚さ10mmのスギ単板を、大鹿振興(株)製のレゾルシノール樹脂であるD300(商品名)を85部と、その硬化剤であるパラホルムアルデヒトH30M(商品名)を15部混合した樹脂で接着することによって本実施例1の強化木材を作製した。
【0064】
得られた強化木材を試験体として浸漬剥離試験、煮沸剥離試験、ブロック剪断試験を実施した。
【0065】
また、前記方法と同様にして幅30mm、長さ500mm及び幅45mm、長さ2mの短冊状の木材用補強材の平板を作製した。これらを前記D300とH30Mとからなる樹脂を用いて、幅30mm、長さ500mm、厚さ25mmのスギ、及び幅45mm、長さ2m、厚さ25mmのスギ4層を積層した集成材にそれぞれ接着し、曲げ強度を測定した。
【0066】
この結果を下記の表1に示す。本実施例1の木材用補強材と木材とを一体化してなる強化木材は、日本農林規格に適合する優れた接着性能と強度特性を持つものであった。
【0067】
〔比較例1〕
前記実施例1と同様に作製した炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートを使用し、該シートを2層積層し、これにフェノール樹脂含浸シートの貼付をしないこと以外は全く前記実施例1と同様にして木材用補強材(FRP)を作製した。これを前記実施例1と同様にして木材(スギ)と接着一体化することよって比較例1の強化木材を得、これについて、接着性能試験、曲げ試験を実施した。その結果を下記の表1に示す。これは日本農林規格の接着性能試験に適合せず、曲げ強さも向上しているものの十分な値ではなかった。
【0068】
〔比較例2〕
前記実施例1と同様に作製した炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートを使用し、該シートを2層積層し、これにフェノール樹脂含浸シートの替わりに木質シート(スプルース)を貼付した以外は全く前記実施例1と同様にして木材用補強材を作製した。これを前記実施例1と同様にして木材(スギ)と接着一体化することによって強化木材を作成し、接着性能試験、曲げ試験を実施した。その結果を下記の表1に示す。これは日本農林規格の接着性能試験には適合したものの、曲げ試験においてはスプルース内部でのせん断破壊が生じ、曲げ強さの向上は十分な値ではなかった。
【0069】
【表1】
【0070】
〔実施例2〕
前記実施例1で木材用補強材の作製時の加工温度を90℃にしたことを除いて、前記実施例1で実施したのと同様にして試験体を作製し、接着性能試験を行った。その結果を下記の表2に示す。
【0071】
本実施例2の木材用補強材のフェノール樹脂含浸シートの硬化度は60%であり、日本農林規格に適合する接着性能を示した。
【0072】
〔実施例3〕
前記実施例1で木材用補強材の作製時の加工温度を110℃にしたことを除いて、前記実施例1で実施したのと同様にして試験体を作製し、接着性能試験を行った。結果を下記の表2に示す。
【0073】
本実施例3の木材用補強材のフェノール樹脂含浸シートの硬化度は75%であり、日本農林規格に適合する接着性能を示した。
【0074】
〔比較例3〕
前記実施例1で炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートの作製時の加工温度を80℃にしたことを除いて、前記実施例1で実施したのと同様にして試験体を作製し、接着性能試験を行った。その結果を下記の表2に示す。
【0075】
比較例3の木材用補強材のフェノール樹脂含浸シートの硬化度は30%であり、日本農林規格の接着性能試験に適合しなかった。
【0076】
〔比較例4〕
前記実施例1で炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートの作製時の加工温度を150℃にしたことを除いて、前記実施例1で実施したのと同様にして試験体を作製し、接着性能試験を行った。その結果を下記の表2に示す。
【0077】
比較例4の木材用補強材のフェノール樹脂含浸シートの硬化度は99%以上であり、日本農林規格の接着性能試験に適合しなかった。
【0078】
【表2】
【0079】
【発明の効果】
本発明の木材用補強材は、硬化度が55%以上80%以下のフェノール樹脂含浸シートを、炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートの表面に配して形成されているので、従来の炭素繊維プリプレグにおいて発生する離型紙による廃棄物問題を解消できると共に、木材に対して優れた接着性を有する。
【0080】
本発明の木材用補強材を用いて作製された強化木材は、高い強度、特に曲げ破壊試験における高い強度、接着性能と剛性を有し、充分な耐水性、耐腐食性、耐火性、耐熱性、長期保存性を有するため、軽量化や長大化した木材および集成材などを効率よく作製することができる。
【0081】
本発明の強化木材(強化単一材および集成材)は通常の木材および集成材として使用される用途に適用できるが、特に、学校、体育館、講堂、各種室内球技場やドームなどの大型建築物、3階以上の住宅、木橋の骨材として好適である。また、従来低強度や低剛性のため使えない木材でも使用が可能になり貴重な天然資源を有効に活用でき且つ環境保護にも有益である。
【0082】
さらに、これまでできなかった大型建築物や構造物への木材の用途を拡大するだけでなく、天然木材の使用量を低減できる。
【0083】
本発明の強化木材は、木材の天然物としてのばらつきに起因する接着性能、強度、剛性等の変動を低減させる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の木材用補強材の一例を示し、構成要素毎に分解して示す。
【図2】本発明の強化木材の一例を示し、構成要素毎に分解して示す。
【図3】本発明の木材用補強材を使用し、集成材を補強した状態の強化木材の一例の断面図である。
【符号の説明】
1 フェノール樹脂含浸シート
2 炭素繊維強化熱硬化性樹脂シート
3 単一木材
4 木材用補強材
5 集成材
【発明の属する技術分野】
本発明は木材を強化するための木材用補強材及び該木材用補強材で補強された強化木材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、単一木材や、繊維方向に長く切削加工したひき板あるいは小角材を、その繊維方向を互いに平行にして接着剤を用いて張り合わせたいわゆる集成材は、主に建築における柱、梁のような骨組材として、また、最近では木橋や大型のドームに使われている。
【0003】
特に、集成材は、ひき板、小角材を集成するため寸法、形状の自由度が高く、製品強度のばらつきや干割れ、狂いなどが小さい上に、曲がり材を容易に製造できるなどの優れた特性を持っている。
【0004】
ところが、これらの集成材を大型建築物や構造物に用いる場合、集成材の剛性や強度を高くする必要があるため集成材の厚みを大きくする必要があり、その結果、建築物や構造物の天井が低くなったり、必要以上に屋根が高くなる等の問題がある。
【0005】
このため、集成材や単一木材に高い剛性や強度を付与し、且つ木材の建築物や構造物として必要とされる充分なる耐水性、耐腐食性、耐火性、耐熱性、接着性を付与するために、フェノール系樹脂、レゾルシノール系樹脂などの接着剤により炭素繊維を接着して、炭素繊維強化単一木材や炭素繊維強化集成材等の強化木材を得ることが提案されている。
【0006】
このような強化木材の製造法の一つとして、例えば、特開平3−230904号公報には、接着剤を木材面に塗布し、その上に炭素繊維を配置して接着剤を繊維間に含浸させると共に木材とも接着させる方法が示されている(従来例1)。
炭素繊維強化単一木材や炭素繊維強化集成材の上記とは別の製造法として、例えば、特開昭53−108182号公報には、炭素繊維に接着剤を予め十分に含浸させた、いわゆるプリプレグを使用し木材に接着する方法が提案されている(従来例2)。該方法は他場所での作業が可能であり、また加工性などの面から好適であり多く用いられている。
【0007】
本発明者等は特開平9−254319号公報に、木材強化用炭素繊維プリプレグと木質シートとを貼合せた木材用補強材を提案している(従来例3)。該発明では、離型紙等を必要とすることがなく、得られた木材用補強材は高い強度と剛性を有すると共に木質シートと木材との接着性能あるいは木質シートと炭素繊維との接着性能に関して、安定した高い物性が得られている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来例1及び2において、炭素繊維プリプレグと木材を接着する場合、木材が生育環境によって性質が異なってくる天然物であるために接着性が変動する問題があった。また、接着性を確保するためにプリプレグに用いる樹脂の状態、すなわち、固形、半固形、液状などの状態やその量を選択し適正化するなどの頻繁な調整が必要であり、経済性や品質上の多くの課題があった。
【0009】
前記従来例2において、一般的に炭素繊維プリプレグはロ−ル状に巻いたり、シート状に重ねて運搬したり保管するため、互いが接着しないようにプリプレグの片面または両面に離型紙を配置しているが、木材と接着する場合にその離型紙を取り除くなどの煩雑で時間がかかる加工作業が必要である上、除いた離型紙が廃棄物となり、プリプレグの使用は環境汚染などを惹起していた。
【0010】
前記従来例3において、曲げ破壊試験において、木質シート自身がせん断破壊を起こし、必ずしも充分な補強効果を得ることが出来なかった。
【0011】
本発明者等はかかる従来技術の問題点を解決することができる木材や集成材に適用して強化するための木材用補強材及び該木材用補強材を木材表面に適用した強化木材を提供することを目的とする。
【0012】
具体的には、本発明は、木材との接着性と取扱性に優れ、離型紙等の廃棄物を生じるような環境汚染を起こさない、且つ木材に対して十分な補強強化を有する木材用補強材及び強化木材を提供することを目的とする。
【0013】
更に具体的には、本発明は、木材の天然物としてのばらつきに起因する接着性能、強度、剛性等の変動を低減させ、かつ作業上の煩雑さや廃棄物を最小限に抑え、同時に高い接着性、強度、剛性を有する木材用補強材及び該木材用補強材を適用した強化木材を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記した問題点を解決するための本発明は、次の構成からなる。
本発明の木材用補強材は、多孔質シートにフェノール樹脂を含浸してなる硬化度が55%以上80%以下のフェノール樹脂含浸シートを、炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートの表面に配してなることを特徴とする。
また、本発明の強化木材は、前記木材用補強材が木材表面においてフェノール樹脂含浸シートを介して一体硬化していることを特徴とする。
【0015】
本発明の木材用補強材は、硬化度が55%以上80%以下のフェノール樹脂含浸シートが配されているので、被補強木材に対して優れた接着性を示すと共にべとつきの無い成形体となるので、剥離紙を必要としない。したがって、本発明の木材用補強材を木材表面に適用して補強してなる本発明の強化木材は、高強度、剛性が高く、しかもせん断強さが高い特徴を有する。
【0016】
炭素繊維強化熱硬化性樹脂シート
本発明の木材用補強材の構成要素としての炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートは、熱硬化性樹脂シート中に炭素繊維が補強繊維として強化されたものである。
【0017】
該炭素繊維は特に制限されないが、ポリアクリロニトリル系繊維から得られる窒素含有量が0.1〜15重量%、引張り強度が2500〜7000MPa、弾性率が150〜700GPaである炭素繊維が好ましく、特に、窒素含有量3〜10重量%を有する3500MPa以上の引張強度と200〜350GPaの弾性率を有する直径5〜9ミクロンの炭素繊維が接着性の点で好ましい。
【0018】
また、本発明における炭素繊維の表面におけるESCA表面分析装置(島津製作所製)による表面の酸素/炭素比が0.01/1〜0.3/1、特に0.01/1〜0.25/1である場合に接着強度を高くできるので好ましい。
【0019】
炭素繊維の繊維直径は5〜9ミクロン、構成本数は1,000〜300,000本からなる繊維束(ストランド)を所望分だけ集束し、または、シート状に拡幅して使用することが望ましいが、特にこれに限定されない。
【0020】
炭素繊維の形態は、織物、不織布のような多方向シート、又は一方向配向シート又はロービング等の線状材であってもよい。
【0021】
炭素繊維で強化される熱硬化性樹脂の種類は、特に制限はないが、建築物に使用されることを考慮すると、イソシアネート系樹脂又はレゾルシノール系樹脂、レゾール型フェノール系樹脂の中から選ばれた1種以上が望ましく、該熱硬化性樹脂の硬化剤としてホルムアルデヒド類が望ましく、硬化触媒として無機酸あるいは有機酸が望ましい。
【0022】
更に具体的に熱硬化性樹脂を挙げれば、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノールの如きフェノール水酸基を1個有するフェノール類あるいはオリゴマーおよびレゾルシン、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノールなどフェノール性水酸基を2個以上有するフェノール類と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、トリオキサン、テトラオキサンの如きアルデヒド類とをフェノール類/アルデヒド類=2/1〜1/3、好ましくは5/4〜2/5のモル比で、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムの如きアルカリ触媒の存在下でメチロール化して得られる公知のレゾール型フェノール樹脂(フェノールホルムアルデヒド類初期付加縮合樹脂)およびレゾルシノール樹脂が使用できる。
【0023】
より好ましくは、高速液体クロマトグラフ(HPLC)によるポリスチレン換算の平均分子量が120〜2000のもので、特に150〜500のものが好ましく、25℃における粘度が3〜150ポイズに調整した樹脂が好ましい。
【0024】
硬化剤はレゾルシノール系樹脂、レゾール型フェノール系樹脂などの硬化剤として用いられている公知のもののうち、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール、トリオキサンの如く当該樹脂と混合しペースト状あるいは液状なるものが好ましい。
【0025】
硬化触媒としてパラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸、フェノールスルホン酸などの当該樹脂と混合して液状に溶解するものが好ましい。
【0026】
炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートの製造過程を考慮するならば、プリプレグを均一に硬化させるために、混合樹脂としたときに通常のプリプレグ製造時の温度である35℃以下において、均一な液状となる硬化剤または硬化触媒が特に好ましい。
【0027】
本発明の木材用補強材において、構成要素としての炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートは、プリプレグシートでもよく、また完全硬化したものでもよい。炭素繊維強化樹脂複合材自身の強度を高める目的のためには、完全硬化させることが好ましい。
【0028】
フェノール樹脂含浸シート
本発明の木材用補強材の構成要素としてのフェノール樹脂含浸シートは、多孔質シートにフェノール樹脂を含浸させたシートであり、木材用補強材が木材表面において接着剤により接着される場合に接着強度を高めるためのものである。したがって、薄く、均一厚みであることが重要である。
【0029】
該フェノール樹脂含浸シートの厚みは、0.01mm以上0.5mm以下のものが望ましい。該厚みが0.01mm未満であるとフェノール樹脂含浸シートの形態に凹凸が生じたり、場合によっては幅方向でカール(丸まる)したりすることにより、シート性能が損なわれ、さらに加えてシートの強度も低下して外力で簡単に引き裂かれたりして、取扱い性に困難を生じることがある。一方、該厚みが0.5mm超では耐水性やせん断強さが低下することがある。
【0030】
前記多孔質シートは、形態としては、例えば、不織布、紙、織物等が挙げられ、また、材質としては、パルプ、ガラス繊維、炭素繊維、合成繊維等が挙げられる。
【0031】
本発明に用いられるフェノール樹脂含浸シートに含浸している樹脂は、フェノール系樹脂、フェノール/メラミン混合樹脂等の高粘度あるいは固体状の樹脂で、硬化剤の有無は問題としないが、硬化度を調整し得る低反応性の樹脂を用いることが本発明の目的を達成するために好ましい。
【0032】
フェノール樹脂を用いる理由は、耐火・耐熱性能に優れ、さらに耐水性、耐腐食性、接着性に優れており、建築材料に好適に使用できるからである。
【0033】
このようなフェノール樹脂の具体例としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノールの如きフェノール性水酸基を1個有するフェノール類あるいはオリゴマーおよびレゾルシン、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノールなどフェノール性水酸基を2個以上有するフェノール類、さらにこれらの樹脂にメラミン、エポキシ、不飽和エステル等の1種類以上の樹脂を混合した樹脂等である。
【0034】
本発明の木材用補強材において、構成要素としてのフェノール樹脂含浸シート中のフェノール樹脂の硬化度を55%以上80%以下、より好ましくは60%以上75%以下に調整しておくのがよいが、これは良好な接着性とせん断強さを保持するためである。すなわち、当該樹脂の硬化度が55%未満であるとフェノール樹脂の硬化度が低いためにフェノール樹脂含浸シート内部での剥離が発生し、一方、80%を超えると硬化が進みすぎ、接着剤との反応性が低下し木材との界面での剥離をもたらすからである。
【0035】
また、フェノール樹脂含浸シートにおける当該樹脂の硬化度を55%以上80%以下に調整することにより、本発明の木材用補強材は、べとつきの無い成形体となり、保管や移送時に通常のプリプレグに必須な離型紙は不要となる。
【0036】
ここで硬化度は次のようにして測定したものと定義する。
▲1▼ フェノール含浸シートの未処理のフェノール樹脂の硬化反応に伴う発熱量Q1 を測定する。測定は示差走査熱量計(以下DSC)を用いて行う。
▲2▼ 木材用補強材(炭素繊維強化樹脂複合材)の成形時と、全く同様の熱履歴をフェノール樹脂含浸シートのフェノール樹脂に与え、熱処理後の硬化反応に伴う発熱量Q2 を測定する。
▲3▼ 上記▲1▼▲2▼から硬化度を次式1に従って算出する。
【0037】
【数1】
【0038】
木材用補強材の複合構造
炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートとフェノール樹脂含浸シートとは、次の複合構造(1)、(2)を採ることが出来る。
【0039】
複合構造(1):炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートとフェノール樹脂含浸シートとが、全面的に接着し一体化している複合構造。
【0040】
複合構造(2):炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートとフェノール樹脂含浸シートとが、ポイント接着し、一体化している複合構造。
【0041】
このような複合構造(1)、(2)は、次のような製造法によって得られる。製造法: 炭素繊維に木材補強用の熱硬化樹脂を含浸させた、いわゆるプリプレグシートの片面あるいは両面にフェノール樹脂含浸シートを貼り合わせ、このフェノール樹脂含浸シートの硬化度が55%以上80%以下になるよう熱プレス等を用いて一体化する。この時の炭素繊維の熱硬化性樹脂は、完全に硬化していてもいなくても良い。
【0042】
被補強木材
本発明における被補強木材には、単一木材や集成材が挙げられ、従来用いられている木材であれば特に限定されるものではなく、通常、スギ、ヒノキ、カラマツ、ベイマツ、トウヒ等の建築物に用いられる木材やナラ、キリ、ケヤキ、カエデ、トチ、ホオ、サクラ、チーク、ラワン、スピナールなどの合板等に用いられる木材が使用できる。
【0043】
木材の補強
本発明の木材用補強材(炭素繊維強化樹脂複合材)は次の様にして木材の補強に使用される。
本発明の木材用補強材を単一木材の表面、または複数の板あるいは単板からなる集成材のいずれかの板あるいは単板間または表面に貼付し、必要ならば接着剤を介在し、さらに必要ならば加熱、加圧して一体硬化した強化木材とする。
【0044】
【発明の実施の形態】
本発明の木材用補強材の実施の形態を図面に基づいてさらに具体的に説明する。
【0045】
図1は、本発明の木材用補強材の一例を示し、構成要素毎に分解して示したものである。図1において本発明の木材用補強材(炭素繊維強化樹脂複合材)は、炭素繊維強化熱硬化性樹脂シート2の両面にフェノール樹脂含浸シート1を配したものである。
【0046】
図2は、本発明の強化木材の一例を示し、構成要素毎に分解して示したものである。図2の強化木材は、単一木材3の両面に本発明の木材用補強材4が配されて補強されている。図2において特に図示していないが、単一木材3と木材用補強材4の間には、通常、接着剤層が介在する。
【0047】
図3は、本発明の木材用補強材を使用し、集成材を補強した状態の強化木材の一例の断面図である。図3の強化木材は、複数層に積層された集成材5上に複数層からなる木材用補強材4が配され、さらに該木材用補強材4上に単一木材3が配されている。図3において特に図示していないが、単一木材3と木材用補強材4の間、或いは木材用補強材4と木材用補強材4の間、或いは木材用補強材4と集成材5の間、或いは集成材5と集成材5の間には、通常、接着剤層が介在している。
【0048】
本発明の木材用補強材は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0049】
熱硬化性樹脂の1種以上と、硬化剤または硬化触媒と、必要ならば無機充填剤などを混合した液状混合樹脂中に炭素繊維のストランドを連続的にディップして炭素繊維に対して当該混合樹脂が30〜80重量%になるように含浸させ、必要ならば揮発分を乾燥した後、予めドラムに巻き付けたフェノール樹脂含浸シートの上に、繊維を互いに平行になるように巻き付けた後、必要ならば乾燥し、ついでドラムの幅方向に切断することによって作製するか、または、予め当該樹脂を表面に塗布したフェノール樹脂含浸シートの上に炭素繊維ストランドを平行にロールで圧しながら配置しつつ樹脂を繊維に浸透させるなどの方法によって作製する。
【0050】
当該混合樹脂は均一な溶液であることが炭素繊維に均一に含浸させて均一な硬化を行うために好ましい。均一でない場合、得られる炭素繊維強化熱硬化性樹脂シート(プリプレグ)が硬化不良になったり、接着性が低くなるので好ましくない。
【0051】
また、混合樹脂を含浸してなる炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートの混合樹脂量が30重量%以下の場合は、樹脂量の不足により強度特性が発現しないばかりか、フェノール樹脂含浸シートとの接着性に劣る。一方、炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートの混合樹脂量が80重量%以上の場合は、樹脂量が多すぎるため成形時の樹脂フローに伴って炭素繊維が乱れるなど強度特性が発現しないばかりか、炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートから樹脂が落下するなど取扱性が難しくなるので好ましくない。
【0052】
特に炭素繊維強化熱硬化性樹脂シート中の混合樹脂量が40〜60重量%にある時、強度特性やフェノール樹脂含浸シートとの接着性、あるいは炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートの取扱性が良好であり好ましい。
【0053】
さらに、混合樹脂は25℃における粘度が3〜150ポイズが好ましく、粘度が3ポイズ以下の場合はプリプレグから樹脂が落下し易く、また150ポイズ以上の場合は炭素繊維への樹脂の含浸性が劣るので好ましくない。
【0054】
粘度の調整は水やアルコール等を添加して行うことも出来る。
【0055】
本発明の木材用補強材は、炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートにフェノール樹脂含浸シートを貼付し、これを加圧し、さらに必要であれば加熱することにより一体化して作製出来る。この時フェノール樹脂含浸シートの硬化度を55%以上80%以下に調整するが、作製時の1回の加熱において調整しても良いし、2回以上の加熱、あるいは常温での養生等によって調節しても良い。
【0056】
本発明の木材用補強材と単一木材および集成材との接着は次のように行い一体化する。
【0057】
すなわち、単一木材、集成材の表面および集成材用薄板の表面に、既存の木材用接着剤を、必要ならば本発明で用いる樹脂および硬化剤あるいは硬化触媒として無機酸あるいは有機酸とを混合した樹脂、炭素繊維プリプレグに用いた混合樹脂を用いてもよく、当該樹脂を木材表面に塗布した後、当該木材用補強材を炭素繊維の方向を木材の繊維方向と平行になるように貼付し、被補強木材が集成材用薄板の場合はこの木材用補強材と他の数枚の集成材用薄板とを公知の方法で接着剤を介して積層したのち1〜15kg/cm2 の圧力下で常温〜120℃の温度にて5〜24時間加熱することで本発明の強化木材が得られる。
【0058】
【実施例】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り下記実施例に限定されるものではない。
【0059】
尚、炭素繊維樹脂複合材料用の樹脂の粘度はレオロジー物性試験機(レオロジ社製)を用いて測定し求めた。
【0060】
さらに、木材および集成材および炭素繊維強化木材およびその集成材の曲げ試験及び接着性の試験(浸漬剥離試験、煮沸剥離試験、ブロックせん断試験)は、構造用集成材の日本農林規格に準じて実施した。なお、浸漬剥離試験及び煮沸剥離試験は使用環境1にて実施した。
【0061】
〔実施例1〕
繊維特性が単繊維直径7ミクロン、繊維本数12000本、引張強度3890MPa、引張弾性率236GPaである炭素繊維“ベスファイト(登録商標)HTA12K”(東邦レーヨン(株)製)のストランドを、20℃における粘度が35ポイズであるレゾール型フェノール樹脂“AHー343”(リグナイト(株)製)82部とパラトルエンスルホン酸を主成分とする有機系硬化剤“D−5”(リグナイト(株)製)18部とを室温で均一に混合溶解して得た混合樹脂を入れた樹脂浴中を5m/分、浸漬時間0.5分として通過させスクイズロールで含有樹脂量を55重量%となるように調整しながら、直径127cmのドラムにストランドを平行になるように幅100cmまで巻き付け、幅100cm、長さ約4.0mである炭素繊維重量150g/m2 の炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートとした。
【0062】
上記炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートを幅100mm、長さ250mmの短冊型に切断し、これを2層積層後、両面に厚さ0.25mmのフェノール樹脂含浸シート(商品名:フェノール樹脂含浸シートPFP 2、リグナイト(株)製)を貼付し、圧力5kg/cm2 下、温度100℃、保持時間3時間にて加熱硬化し一体化させて、炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートとフェノール樹脂含浸シートからなる本実施例1の木材用補強材(炭素繊維強化樹脂複合材)の平板とした。この木材用補強材の中の炭素繊維含有率は50体積%であり、フェノール樹脂含浸シートの硬化度は65%である。
【0063】
この平板状の木材用補強材から切り出した幅60mm、長さ75mmの木材用補強材の平板の両面に、幅60mm、長さ75mm、厚さ10mmのスギ単板を、大鹿振興(株)製のレゾルシノール樹脂であるD300(商品名)を85部と、その硬化剤であるパラホルムアルデヒトH30M(商品名)を15部混合した樹脂で接着することによって本実施例1の強化木材を作製した。
【0064】
得られた強化木材を試験体として浸漬剥離試験、煮沸剥離試験、ブロック剪断試験を実施した。
【0065】
また、前記方法と同様にして幅30mm、長さ500mm及び幅45mm、長さ2mの短冊状の木材用補強材の平板を作製した。これらを前記D300とH30Mとからなる樹脂を用いて、幅30mm、長さ500mm、厚さ25mmのスギ、及び幅45mm、長さ2m、厚さ25mmのスギ4層を積層した集成材にそれぞれ接着し、曲げ強度を測定した。
【0066】
この結果を下記の表1に示す。本実施例1の木材用補強材と木材とを一体化してなる強化木材は、日本農林規格に適合する優れた接着性能と強度特性を持つものであった。
【0067】
〔比較例1〕
前記実施例1と同様に作製した炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートを使用し、該シートを2層積層し、これにフェノール樹脂含浸シートの貼付をしないこと以外は全く前記実施例1と同様にして木材用補強材(FRP)を作製した。これを前記実施例1と同様にして木材(スギ)と接着一体化することよって比較例1の強化木材を得、これについて、接着性能試験、曲げ試験を実施した。その結果を下記の表1に示す。これは日本農林規格の接着性能試験に適合せず、曲げ強さも向上しているものの十分な値ではなかった。
【0068】
〔比較例2〕
前記実施例1と同様に作製した炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートを使用し、該シートを2層積層し、これにフェノール樹脂含浸シートの替わりに木質シート(スプルース)を貼付した以外は全く前記実施例1と同様にして木材用補強材を作製した。これを前記実施例1と同様にして木材(スギ)と接着一体化することによって強化木材を作成し、接着性能試験、曲げ試験を実施した。その結果を下記の表1に示す。これは日本農林規格の接着性能試験には適合したものの、曲げ試験においてはスプルース内部でのせん断破壊が生じ、曲げ強さの向上は十分な値ではなかった。
【0069】
【表1】
【0070】
〔実施例2〕
前記実施例1で木材用補強材の作製時の加工温度を90℃にしたことを除いて、前記実施例1で実施したのと同様にして試験体を作製し、接着性能試験を行った。その結果を下記の表2に示す。
【0071】
本実施例2の木材用補強材のフェノール樹脂含浸シートの硬化度は60%であり、日本農林規格に適合する接着性能を示した。
【0072】
〔実施例3〕
前記実施例1で木材用補強材の作製時の加工温度を110℃にしたことを除いて、前記実施例1で実施したのと同様にして試験体を作製し、接着性能試験を行った。結果を下記の表2に示す。
【0073】
本実施例3の木材用補強材のフェノール樹脂含浸シートの硬化度は75%であり、日本農林規格に適合する接着性能を示した。
【0074】
〔比較例3〕
前記実施例1で炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートの作製時の加工温度を80℃にしたことを除いて、前記実施例1で実施したのと同様にして試験体を作製し、接着性能試験を行った。その結果を下記の表2に示す。
【0075】
比較例3の木材用補強材のフェノール樹脂含浸シートの硬化度は30%であり、日本農林規格の接着性能試験に適合しなかった。
【0076】
〔比較例4〕
前記実施例1で炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートの作製時の加工温度を150℃にしたことを除いて、前記実施例1で実施したのと同様にして試験体を作製し、接着性能試験を行った。その結果を下記の表2に示す。
【0077】
比較例4の木材用補強材のフェノール樹脂含浸シートの硬化度は99%以上であり、日本農林規格の接着性能試験に適合しなかった。
【0078】
【表2】
【0079】
【発明の効果】
本発明の木材用補強材は、硬化度が55%以上80%以下のフェノール樹脂含浸シートを、炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートの表面に配して形成されているので、従来の炭素繊維プリプレグにおいて発生する離型紙による廃棄物問題を解消できると共に、木材に対して優れた接着性を有する。
【0080】
本発明の木材用補強材を用いて作製された強化木材は、高い強度、特に曲げ破壊試験における高い強度、接着性能と剛性を有し、充分な耐水性、耐腐食性、耐火性、耐熱性、長期保存性を有するため、軽量化や長大化した木材および集成材などを効率よく作製することができる。
【0081】
本発明の強化木材(強化単一材および集成材)は通常の木材および集成材として使用される用途に適用できるが、特に、学校、体育館、講堂、各種室内球技場やドームなどの大型建築物、3階以上の住宅、木橋の骨材として好適である。また、従来低強度や低剛性のため使えない木材でも使用が可能になり貴重な天然資源を有効に活用でき且つ環境保護にも有益である。
【0082】
さらに、これまでできなかった大型建築物や構造物への木材の用途を拡大するだけでなく、天然木材の使用量を低減できる。
【0083】
本発明の強化木材は、木材の天然物としてのばらつきに起因する接着性能、強度、剛性等の変動を低減させる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の木材用補強材の一例を示し、構成要素毎に分解して示す。
【図2】本発明の強化木材の一例を示し、構成要素毎に分解して示す。
【図3】本発明の木材用補強材を使用し、集成材を補強した状態の強化木材の一例の断面図である。
【符号の説明】
1 フェノール樹脂含浸シート
2 炭素繊維強化熱硬化性樹脂シート
3 単一木材
4 木材用補強材
5 集成材
Claims (7)
- 多孔質シートにフェノール樹脂を含浸してなる硬化度が55%以上80%以下のフェノール樹脂含浸シートを、炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートの表面に配してなることを特徴とする木材用補強材。
- 前記フェノール樹脂含浸シートの硬化度が60%以上75%以下であることを特徴とする請求項1記載の木材用補強材。
- 前記フェノール樹脂含浸シートの厚みが0.01mm以上0.5mm以下である請求項1記載の木材用補強材。
- 前記炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートのマトリックス樹脂が硬化してフェノール樹脂含浸シートと接着され一体化している請求項1記載の木材用補強材。
- 前記炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートのマトリックス樹脂がフェノール系樹脂である請求項1記載の木材用補強材。
- 請求項1記載の木材用補強材が被補強木材の表面においてフェノール樹脂含浸シートを介して一体硬化していることを特徴とする強化木材。
- 前記被補強木材が単板又は集成材である請求項6記載の強化木材。
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