JP4085582B2 - 繊維板の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ケナフ、油ヤシ、ココヤシのいずれか一つから得られる長繊維を原料とした繊維板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
合板、パーティクルボード、MDF(中質繊維板)などの木質系ボードは、床材・壁材・天井材等の建築部材、扉部材、巾木・廻り縁等の造作部材、家具用材料などの幅広い分野で使用されている。
【0003】
これら木質系ボードは、主に針葉樹或いは広葉樹の木材を加工して得られる単板、木材小片(パーティクル)、木材繊維を接着して板状に成形したものである。そのため、原木を製材して得られる挽板などに比べ、品質が安定しており、異方性が少なく加工性に優れるなどの特徴を有している。
【0004】
一方、近年の地球環境問題から、森林保護を目的として森林伐採の規制が強化され始めており、従来の針葉樹或いは広葉樹を原料とした木質系ボードに代わって、非木材資源を用いたボードへの要望が高まってきた。
【0005】
このような要望に対して、非木材資源を用いたボードの開発が進められており、ボード原料として、バガス、コーリャン、オイルパーム(油ヤシ)、ジュート、竹などの非木材リグノセルロース資源が注目され始めている。
【0006】
このような非木材資源を利用したボードに関しては、本発明者らは既に特開平11−333986号公報において、ケナフ(アオイ科の一年生草本類)、油ヤシ、ココヤシのいずれかから得られる長繊維を原料として用い、この長繊維を一方向或いは直交方向に配向させることにより、軽量で高強度、且つ長さ方向の寸法安定性が優れた繊維板を開示している。
【0007】
上記繊維板において、その接着性能と品質性能については相互に関連があり、繊維同士の十分な接着性能が得られた繊維板については高強度で高性能な繊維板が得られることが知られている。従って、繊維板に優れた性能を付与するためには、接着性能を向上させることが必須であった。すなわち、繊維方向性を有する長繊維集合体からなる長繊維マットへ接着剤を均一に付与する必要があった。そこで、より一層の高性能化及び低コスト化が要求されている中で、長繊維マットへ接着剤を均一に付与するための繊維板の製造方法の確立が不可欠とされている。
【0008】
繊維に接着剤を付与するための繊維板の製造方法として、一般的には、スプレー等を用いて接着剤溶液を噴霧する方法、接着剤溶液をロールで塗布する方法、接着剤溶液を入れた槽の中に繊維を浸漬(ディッピング)する方法などが挙げられる。このうち、長繊維集合体からなる長繊維マットへの接着剤の均一な付与の観点からは、ディッピングする方法が特に好ましく使用される。さらに、ディッピングする方法は、接着剤の飛散等の問題もないため、有効な方法として利用されている。ここで、上記方法に用いる接着剤溶液としては、接着剤水溶液が主に用いられる。これは、有機溶剤等の可燃性危険物を使用した場合と比較して簡易な設備での製造が可能であり、且つ希釈等の取扱いが容易であるためである。
【0009】
接着剤水溶液を用いた場合の具体的な製造工程としては、まず、ケナフ、油ヤシ、ココヤシの少なくとも一つから得られる長繊維集合体からなる長繊維マットを接着剤槽の中に浸漬して接着剤を付与させる浸漬工程(接着剤供給工程)、次に、得られた長繊維マットを送風・加熱等により乾燥して余分な水分を除去する乾燥工程、最後に、乾燥工程で得られた長繊維マットを所定量積層した後、加熱加圧して繊維板に成形する成形工程が用いられる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この方法では、より一層の高性能化や低コスト化を図るためには、以下に示すような問題があった。
【0011】
ディッピング方法では、繊維の表面に均一に接着剤が付着するので、接着剤が少量でも繊維同士が強固に接着し、繊維板への成形後において強度性能の向上に大きく寄与する。ところが、強度と並びに繊維板の重要な性能である吸水・吸湿時の寸法安定性の向上は小さい。
【0012】
ケナフ、油ヤシ、ココヤシの繊維自体は、木材繊維と同様に、セルロース、ヘミセルロースを主成分としており、親水基を多数持っているために、水分を吸収しやすく、それによって膨潤しやすい。また、繊維板は製造過程で加熱加圧して成形するために、繊維が圧縮されると共に接着剤が硬化して繊維の変形圧縮が固定される。このため、繊維板に水分が吸収されると、繊維自体の体積が膨張すると共に変形を回復しようとする力が働き、圧縮された厚さ方向に大きく寸法変化しやすい。
【0013】
このため、高強度を損なうことなく寸法安定性を向上することができる繊維板の新しい製造方法が望まれていた。
【0014】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、繊維への接着剤の付与を制御することによって、性能の優れた繊維板、すなわち、高強度で寸法安定性に優れた繊維板を得ることができる繊維板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る繊維板の製造方法は、ケナフ、油ヤシ、ココヤシの少なくとも一つから得られる長繊維集合体からなる長繊維マット1に熱硬化性樹脂水溶液2を供給する接着剤供給工程と、接着剤供給工程で得られた長繊維マット1を乾燥する乾燥工程と、乾燥工程で得られた長繊維マット1を熱圧により繊維板に成形する成形工程からなる繊維板の製造方法において、接着剤供給工程により、繊維3への浸透性の異なる複数種類の樹脂成分4、5を長繊維マット1に供給するにあたって、低重合度のフェノール樹脂成分を繊維3への浸透性の高い樹脂成分4とし、高重合度のフェノール樹脂成分を繊維3への浸透性の低い樹脂成分5として、両者を別々に又は混合して長繊維マット1に含浸することを特徴とするものである。この構成により、繊維3への浸透性の高い樹脂成分4は繊維3の細胞壁6中に浸透し、繊維3への浸透性の低い樹脂成分5は繊維3の表面に付着する。このため、細胞壁6中で硬化した樹脂成分4は繊維板への水分の吸収を抑制すると共に水分による繊維3の膨潤、変形を抑制する。また、繊維3の表面に付着した樹脂成分5は繊維3同士を強固に接着する。従って、高強度を確保したまま寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になる。
また、繊維3への浸透性の異なる複数種類の樹脂成分4、5は、重合度が異なる複数種類のフェノール樹脂成分であることを特徴とするものであり、この構成により、重合度の違いで樹脂成分4、5の繊維3への浸透性を容易に制御することが可能となる。すなわち、重合度の低い樹脂成分が繊維3への浸透性の高い樹脂成分4として繊維3の細胞壁6中に浸透し、重合度の高い樹脂成分が繊維3への浸透性の低い樹脂成分5として繊維3の表面に付着する。従って、高強度を確保したまま寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になる。
【0016】
また、本発明の請求項2に係る繊維板の製造方法は、請求項1の構成に加えて、長繊維マット1に供給する樹脂成分4、5のうち、繊維3への浸透性の高い樹脂成分4の占める割合が10〜80%であることを特徴とするものである。この構成により、高強度を確保したまま寸法安定性に優れた繊維板を安定して確実に製造することが可能になる。
【0018】
また、本発明の請求項に係る繊維板の製造方法は、請求項1又は2の構成に加えて、繊維3への浸透性の高い樹脂成分4は、重合度1のフェノール樹脂成分であることを特徴とするものである。重合度1すなわち一量体のフェノール樹脂成分は繊維3の細胞壁6中に浸透しやすく、細胞壁6を膨潤させたまま硬化することになり、かさ(バルキング)効果を持つと共に、繊維3中の親水基と結合するため、繊維3との密着性が高まり、さらに寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能となる。
【0019】
また、本発明の請求項に係る繊維板の製造方法は、請求項1乃至のいずれかの構成に加えて、上記接着剤供給工程において、繊維3への浸透性の異なる複数種類の樹脂成分4、5を含有する熱硬化性樹脂水溶液2aに長繊維マット1を浸漬することを特徴とするものである。この構成により、繊維3への樹脂成分4、5の浸透及び付着を同時に行うことができ、簡便な方法で高強度を確保したまま寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になる。
【0020】
また、本発明の請求項に係る繊維板の製造方法は、請求項1乃至のいずれかの構成に加えて、上記接着剤供給工程において、繊維3への浸透性の高い樹脂成分4を含有する熱硬化性樹脂水溶液2bに長繊維マット1を浸漬した後、繊維3への浸透性の低い樹脂成分5を含有する熱硬化性樹脂水溶液2cに長繊維マット1を浸漬することを特徴とするものである。この構成により、繊維3の種類や性状等に対応して繊維3への樹脂成分4、5の浸透及び付着をそれぞれ個別に制御することができるため、さらに強度や寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になる。
【0021】
また、本発明の請求項に係る繊維板の製造方法は、請求項1乃至のいずれかの構成に加えて、上記接着剤供給工程において、繊維3への浸透性の高い樹脂成分4を含有する熱硬化性樹脂水溶液2bに長繊維マット1を浸漬した後、繊維3への浸透性の低い樹脂成分5を含有する熱硬化性樹脂水溶液2cをスプレーにより長繊維マット1に噴霧し付着させることを特徴とするものである。この構成により、繊維3の種類や性状等に対応して繊維3への樹脂成分4、5の浸透及び付着をそれぞれ個別に制御することができるため、特に、繊維3への浸透性の低い樹脂成分5を含有する熱硬化性樹脂水溶液2cをスプレーで噴霧することにより、繊維3への樹脂成分5の付着を容易に制御することができるため、強度を向上させたうえで寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になる。
【0022】
また、本発明の請求項に係る繊維板の製造方法は、請求項5又は6に記載の繊維板の製造方法において、繊維3への浸透性の高い樹脂成分4を含有する熱硬化性樹脂水溶液2bに長繊維マット1を浸漬した後、長繊維マット1に供給された水分を乾燥し、次いで、繊維3への浸透性の低い樹脂成分5を長繊維マット1に供給することを特徴とするものである。この構成により、繊維3に浸透した樹脂成分4を繊維3の細胞壁6中に止めて流出しにくくしたうえで、繊維3の表面に樹脂成分5を付着させることができるため、高強度を確保したままさらに寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になる。
【0023】
また、本発明の請求項に係る繊維板の製造方法は、請求項1乃至のいずれかの構成に加えて、熱硬化性樹脂水溶液2は増粘剤を含有することを特徴とするものである。この構成により、増粘剤の含有で樹脂成分4、5の浸透性を低下させることによって、繊維3の種類や性状等に対応して繊維3への樹脂成分4、5の浸透及び付着を制御することができるため、強度を向上させたうえで寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になる。
【0024】
また、本発明の請求項に係る繊維板の製造方法は、請求項の構成に加えて、増粘剤が小麦粉であることを特徴とするものである。小麦粉は安価であり、増粘効果も大きいため、さらに強度を向上させたうえで、寸法安定性に優れた繊維板を低コストで製造することが可能になる。
【0025】
また、本発明の請求項10に係る繊維板の製造方法は、請求項1乃至のいずれかの構成に加えて、熱硬化性樹脂水溶液2は凝集剤を含有することを特徴とするものである。この構成により、凝集剤で樹脂成分4、5の分子を凝集させて繊維3の表面に沈着させることによって、繊維3の種類や性状等に対応して繊維3への樹脂成分4、5の浸透及び付着を制御することができるため、強度を向上させたうえで寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になる。
【0026】
また、本発明の請求項11に係る繊維板の製造方法は、請求項10の構成に加えて、凝集剤が硫酸アルミニウムであることを特徴とするものである。硫酸アルミニウムは硫酸バンドと呼ばれるもので、安価で凝集効果が大きいため、さらに強度を向上させたうえで寸法安定性に優れた繊維板を低コストで製造することが可能になる。
【0027】
また、本発明の請求項12に係る繊維板の製造方法は、請求項1乃至11のいずれかの構成に加えて、熱硬化性樹脂水溶液2は撥水剤を含有することを特徴とするものである。接着剤供給工程により、撥水剤を長繊維マット1に均一に分散させて含浸させることができ、繊維板への水分の吸収が抑制され、寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になる。
【0028】
また、本発明の請求項13に係る繊維板の製造方法は、請求項12の構成に加えて、撥水剤がワックスエマルジョンであることを特徴するものである。ワックスエマルジョンは安価で撥水効果が大きいため、寸法安定性に優れた繊維板を低コストで製造することが可能になる。
【0029】
また、本発明の請求項14に係る繊維板の製造方法は、請求項1乃至13のいずれかの構成に加えて、熱硬化性樹脂水溶液2はホルムアルデヒドを含有することを特徴とするものである。この構成により、ホルムアルデヒドで繊維3をホルマール化することができ、寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になる。
【0030】
また、本発明の請求項15に係る繊維板の製造方法は、請求項1乃至14のいずれかの構成に加えて、熱硬化性樹脂水溶液2はグリオキサールを含有することを特徴とするものである。この構成により、グリオキサールで繊維3をホルマール化することができ、寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になる。また、ホルムアルデヒドを使用しないかあるいはホルムアルデヒドの使用量を少なくすることができ、ホルムアルデヒドの放散を抑制することができる。
【0031】
また、本発明の請求項16に係る繊維板の製造方法は、請求項1乃至15のいずれかの構成に加えて、熱硬化性樹脂水溶液2は脂肪酸塩を含有することを特徴とするものである。この構成により、脂肪酸塩で繊維3をエステル化することができ、寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0033】
まず、繊維への樹脂成分の浸透及び付着について、ケナフを一例として説明する。図3(a)はケナフの繊維3の断面の模式図である。一本の繊維3は数個から数十個の細胞10から構成されており、その細胞10中に水分の通路である仮導管11とこれを取り囲むように細胞壁6が存在する。尚、本発明で用いる油ヤシやココヤシなどの他の繊維もほぼ同様の構造を有するものである。
【0034】
図3(b)は繊維3への浸透性の異なる複数種類の樹脂成分4、5を上記繊維3に供給した場合の断面の模式図である。繊維3に浸透性の異なる複数種類の樹脂成分4、5を供給することで、浸透性の高い樹脂成分4は繊維3の細胞壁6中に浸透するが、浸透性の低い樹脂成分5は細胞壁6中に浸透することができず、繊維3の表面に付着する。細胞壁6中に浸透した樹脂成分4は、成形工程において細胞壁6中で硬化するものであり、これにより、繊維板への水分の吸収を抑制することができると共に水分による繊維3の膨潤、変形を抑制することができるものである。また、繊維3の表面に付着した樹脂成分5は、成形工程において他の繊維3と密着しながら硬化するものであり、これにより、繊維3同士が強固に接着するため、高強度を確保したまま、寸法安定性に優れた繊維板の製造することが可能となるものである。
【0035】
本発明において、長繊維マット1はケナフ、油ヤシ、ココヤシから得られる長繊維集合体からなるものであるが、ケナフ、油ヤシ、ココヤシのいずれか一つから得られる一種類の長繊維集合体で長繊維マット1を形成しても良いし、ケナフ、油ヤシ、ココヤシから選ばれる二種以上の長繊維集合体を併用して長繊維マット1を形成しても良い。長繊維マット1を形成する方法については特に限定はない。例えば、
(1)長繊維集合体を長さ方向に切断し、これを複数積み重ねてマットを形成する方法。
(2)長繊維集合体を積層し、クロスレイヤーやニードルパンチ等の装置を用いてマットを形成する方法。
などを挙げることができる。
【0036】
本発明は、繊維3への浸透性の異なる複数種類の樹脂成分4、5の少なくとも一つを含有する熱硬化性樹脂水溶液2を上記長繊維マット1に供給して含浸する接着剤供給工程と、接着剤供給工程により熱硬化性樹脂水溶液2を含浸させた長繊維マット1を乾燥する乾燥工程と、乾燥工程で乾燥した長繊維マット1を熱圧することにより、長繊維マット1中に含浸させた樹脂成分4、5を硬化させて繊維板に成形する成形工程とを備えるものである。
【0037】
熱硬化性樹脂水溶液2としては、繊維3への浸透性の異なる複数種類の樹脂成分4、5の少なくとも一つを不揮発成分として含有する熱硬化性樹脂接着剤を用いることができる。また、繊維3への浸透性の異なる複数種類の樹脂成分4、5の少なくとも一つを不揮発成分として含有する熱硬化性樹脂接着剤の粘度が大きい場合などでは、この熱硬化性樹脂接着剤を必要に応じて水に希釈して熱硬化性樹脂水溶液2とすることができる。尚、熱硬化性樹脂水溶液2はこれらに限定されるものではない。また、本発明で用いる熱硬化性樹脂接着剤の揮発成分は水であることが好ましいが、これに限らず、揮発成分の一部又は全部が従来から接着剤に適用されている公知の有機溶剤であっても良い。
【0038】
本発明において、熱硬化性樹脂接着剤の熱硬化性樹脂の種類については特に限定されない。例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、ウレタン樹脂、フルフラール樹脂、イソシアネート樹脂のように加熱硬化する熱硬化性樹脂接着剤のうち、水との親和性が高いものを挙げることができる。本発明では上記の熱硬化性樹脂接着剤を単独で用いたり併用したりすることができる。
【0039】
本発明において、乾燥工程の方法については特に限定はなく、例えば、常温風あるいは熱風などの送風や加熱による乾燥を挙げることができる。また、送風や加熱による乾燥の前にローラ等で圧搾操作を行ってもよい。
【0040】
本発明の成形工程において、成形の際のプレス温度、プレス時間、プレス圧力などは、用いる熱硬化性樹脂接着剤の種類や成形しようとする繊維板の厚み等によって適宜設定されるものである。また、熱圧成形の際に用いるプレス方法としては、例えば、バッチ式の平板プレスと連続プレスとがあるが、特に限定はされない。
【0041】
本発明の接着剤供給工程において、長繊維マット1に樹脂成分4、5を供給して含浸させた場合、長繊維マット1の繊維重量に対する樹脂成分4、5の重量比は、熱硬化性樹脂水溶液2の希釈倍率、圧搾操作等で設定することができ、用いる熱硬化性樹脂接着剤の種類や成形しようとする繊維板に求められる強度等の物性によって、適宜設定することができる。また、繊維板の密度についても特に限定はされない。
【0042】
本発明において、長繊維マット1に供給する樹脂成分4、5のうち、繊維3への浸透性の高い樹脂成分4の占める割合は重量比(質量比)で10〜80%であることが好ましい。すなわち、長繊維マット1に供給する浸透性の高い樹脂成分4と浸透性の低い樹脂成分5との合計100部に対して、浸透性の高い樹脂成分4が10〜80部であることが好ましい。繊維3への浸透性の高い樹脂成分4の占める割合が10%を下回ると、繊維3への樹脂成分4の浸透割合が低くなり、寸法安定性が低下する恐れがあり、繊維3への浸透性の高い樹脂成分4の占める割合が80%を上回ると、相対的に繊維3への浸透性の低い樹脂成分5の占める割合が低くなって、繊維3の表面に付着する樹脂成分5が少なくなるため、強度が低下する恐れがある。
【0043】
繊維3への浸透性の異なる複数種類の樹脂成分4、5は、重合度が異なる複数種類のフェノール樹脂成分である。繊維3への熱硬化性樹脂接着剤の浸透性は、熱硬化性樹脂接着剤に含まれている樹脂成分の分子量、分子の大きさ、分子の形状、分子の極性及び熱硬化性樹脂水溶液の粘度などに依存する。熱硬化性樹脂接着剤は一量体(単量体)の樹脂原料に反応基を付加し、一量体から水に可溶な範囲での重合体を生成して一量体と重合体とを含む混合物として製造され、加熱により硬化し、三次元の構造を形成するものである。この熱硬化性樹脂接着剤の樹脂成分の重合度が異なることにより、分子量、分子の大きさ、粘度が大きく変化するため、重合度の低い樹脂成分4は繊維3の細胞壁6中に浸透し、重合度の高い樹脂成分5は細胞壁6中に浸透できず、繊維3の表面に付着する。この作用により、高強度を確保したまま寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になる。
【0044】
本発明において、繊維3への浸透性の最も高い樹脂成分4としては、重合度が1、すなわち一量体のフェノール樹脂成分を例示することができる。一量体のフェノール樹脂成分としては[化1]に示すフェノール、モノメチロールフェノール、ジメチロールフェノール、トリメチロールフェノールなどを用いることができる。また、上記の浸透性の最も高い樹脂成分4よりも浸透性の低い樹脂成分5としては[化2]に示す二量体のフェノール樹脂成分など、重合度が2以上のフェノール樹脂成分を例示することができる。
【0045】
フェノール樹脂接着剤に含有される一量体のフェノール樹脂成分は分子サイズが小さく、繊維3の細胞壁6中に浸透することを確認している。そして、細胞壁6中のフェノール樹脂成分は細胞壁6を膨潤させたまま硬化して、水が侵入してもこれ以上膨張しない(かさ(バルキング)効果)。さらに、フェノール樹脂成分は繊維中の親水基と結合するため、これにより、繊維板成形後の水の侵入を抑制することができ、さらに寸法安定性の優れた繊維板を製造することが可能になる。
【0046】
【化1】
Figure 0004085582
【0047】
【化2】
Figure 0004085582
【0048】
図1に本発明の実施の形態の一例を示す。この実施の形態では、図1(a)に示す接着剤供給工程において、熱硬化性樹脂水溶液2として、繊維3への浸透性の異なる複数種類の樹脂成分4、5を含有する熱硬化性樹脂水溶液2aを用い、浸漬槽20に貯留したこの熱硬化性樹脂水溶液2aに長繊維マット1を浸漬することによって、長繊維マット1に熱硬化性樹脂水溶液2aを供給して含浸させるようにしている。繊維3への浸透性の異なる複数種類の樹脂成分4、5を含有する熱硬化性樹脂水溶液2aは、樹脂成分として浸透性の高い樹脂成分4のみを含有する熱硬化性樹脂接着剤あるいは浸透性の高い樹脂成分4の含有割合が浸透性の低い樹脂成分5に比べて大きい熱硬化性樹脂接着剤と、樹脂成分として繊維3への浸透性の低い樹脂成分5のみを含有する熱硬化性樹脂接着剤あるいは繊維3への浸透性の低い樹脂成分5の含有割合が浸透性の高い樹脂成分4に比べて大きい熱硬化性樹脂接着剤とを混合し、この混合した熱硬化性樹脂接着剤を必要に応じて水に希釈することによって調製することができる。
【0049】
上記のような接着剤供給工程の後、図1(b)に示す乾燥工程により、矢印で示すように長繊維マット1に送風し、長繊維マット1に含浸させた熱硬化性樹脂水溶液2aの水分を除去して乾燥させる。この乾燥工程の後、図1(c)に示す成形工程により、乾燥した長繊維マット1を熱圧装置(ホットプレス)15の一対のプレス板12の間に配置し、長繊維マット1をプレス板12で挟んで加熱加圧することにより、長繊維マット1に含浸させた熱硬化性樹脂接着剤の樹脂成分4、5を重合させ、熱硬化性樹脂接着剤を硬化させることによって繊維板を成形することができる。
【0050】
この実施の形態では、繊維3への浸透性の異なる複数種類の樹脂成分4、5を含有する熱硬化性樹脂水溶液2aを用いるので、長繊維マット1の繊維3への樹脂成分4、5の浸透及び付着を一回の浸漬作業で同時に行うことができ、複数回の浸漬作業を行う場合に比べて簡便な方法で、高強度を確保したまま寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になるものである。
【0051】
尚、上記のように、長繊維マット1に供給する樹脂成分4、5のうち、繊維3への浸透性の高い樹脂成分4の占める割合は重量比(質量比)で10〜80%であることが好ましいので、熱硬化性樹脂水溶液2a中における浸透性の高い樹脂成分4の占める割合は重量比で10〜80%にするのが好ましい。すなわち、熱硬化性樹脂水溶液2aには、浸透性の高い樹脂成分4と浸透性の低い樹脂成分5との合計100部に対して、浸透性の高い樹脂成分4が10〜80部含有されているのが好ましい。
【0052】
図2に本発明の実施の形態の他例を示す。この実施の形態では接着剤供給工程において、熱硬化性樹脂水溶液2として、繊維3への浸透性の高い樹脂成分4を含有する熱硬化性樹脂水溶液2bと、繊維3への浸透性の低い樹脂成分5を含有する熱硬化性樹脂水溶液2cを用いたものである。
【0053】
すなわち、図2(a)に示すように繊維3への浸透性の高い樹脂成分4を含有する熱硬化性樹脂水溶液2bに長繊維マット1を浸漬した後、図2(b)に示すように繊維3への浸透性の低い樹脂成分5を含有する熱硬化性樹脂水溶液2cに長繊維マット1を浸漬することによって、長繊維マット1に熱硬化性樹脂水溶液2b、2cを供給して含浸させるようにしている。熱硬化性樹脂水溶液2b、2cはいずれも浸漬槽20に貯留されている。
【0054】
繊維3への浸透性の高い樹脂成分4を含有する熱硬化性樹脂水溶液2bは、浸透性の高い樹脂成分4を浸透性の低い樹脂成分5よりも多く含有するものであり、特に、浸透性の高い樹脂成分4と浸透性の低い樹脂成分5の合計100部に対して、浸透性の高い樹脂成分4を90部以上含有することが好ましい。このような熱硬化性樹脂水溶液2bは、樹脂成分として浸透性の高い樹脂成分4のみを含有する熱硬化性樹脂接着剤あるいは浸透性の高い樹脂成分4の含有割合が浸透性の低い樹脂成分5に比べて大きい熱硬化性樹脂接着剤を必要に応じて水に希釈することによって調製することができる。
【0055】
繊維3への浸透性の低い樹脂成分5を含有する熱硬化性樹脂水溶液2cは、浸透性の低い樹脂成分5を浸透性の高い樹脂成分4よりも多く含有するものであり、特に、浸透性の高い樹脂成分4と浸透性の低い樹脂成分5の合計100部に対して、浸透性の低い樹脂成分5を90部以上含有することが好ましい。このような熱硬化性樹脂水溶液2cは、樹脂成分として浸透性の低い樹脂成分5のみを含有する熱硬化性樹脂接着剤あるいは浸透性の低い樹脂成分5の含有割合が浸透性の高い樹脂成分4に比べて大きい熱硬化性樹脂接着剤を必要に応じて水に希釈することによって調製することができる。
【0056】
上記のような接着剤供給工程の後、図2(c)に示す乾燥工程と図2(d)に示す成形工程とを上記の実施の形態と同様に行うことによって、繊維板を成形することができる。
【0057】
この実施の形態では、繊維3への浸透性の高い樹脂成分4を含有する熱硬化性樹脂水溶液2bと、繊維3への浸透性の低い樹脂成分5を含有する熱硬化性樹脂水溶液2cとを別々に調製して用いるので、繊維3の種類や性状等に対応して繊維3への樹脂成分4、5の浸透及び付着をそれぞれ個別に制御することができるため、さらに強度や寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になるものである。すなわち、例えば、樹脂成分4が浸透しにくい繊維3の場合は、繊維3への浸透性の高い樹脂成分4を含有する熱硬化性樹脂水溶液2bに長時間浸漬したり、樹脂成分5が付着しにくい繊維3の場合は、繊維3への浸透性の低い樹脂成分5を含有する熱硬化性樹脂水溶液2cに長時間浸漬したりする、といったことが容易に行うことができるため、繊維3の種類や性状等に対応してさらに強度や寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になるものである。
【0058】
図2に示す実施の形態において、図2(b)に示す工程の代わりに、すなわち繊維3への浸透性の低い樹脂成分5を含有する熱硬化性樹脂水溶液2cに長繊維マット1を浸漬する代わりに、繊維3への浸透性の低い樹脂成分5を含有する熱硬化性樹脂水溶液2cを長繊維マット1にスプレーで噴霧し付着させることができる。このように繊維3への浸透性の低い樹脂成分5を含有する熱硬化性樹脂水溶液2cをスプレーで噴霧する場合、この熱硬化性樹脂接着剤を水で希釈しないでそのまま噴霧しても良いし、水で希釈した後噴霧するようにしてもよい。
【0059】
このように繊維3への浸透性の低い樹脂成分5を含有する熱硬化性樹脂接着剤をスプレーにより長繊維マット1に噴霧し付着させることによって、繊維3の種類や性状等に対応して繊維3への樹脂成分4、5の浸透及び付着をそれぞれ個別に制御することができ、特に、繊維3の表面への樹脂成分5の付着を容易に制御することができるものであり、これにより、強度を向上させたうえで寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になるものである。すなわち、樹脂成分5が付着しにくい繊維3の場合は、繊維3への浸透性の低い樹脂成分5を含有する熱硬化性樹脂接着剤を多量に供給する、といったことが容易に行うことができるため、繊維3の種類や性状等に対応してさらに強度や寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になるものである。
【0060】
図2に示す実施の形態及び図2(b)の工程でスプレーを用いた実施の形態において、繊維3への浸透性の高い樹脂成分4を含有する熱硬化性樹脂水溶液2bに長繊維マット1を浸漬した後、長繊維マット1に供給された水分を乾燥し、この後、繊維3への浸透性の低い樹脂成分5を含有する熱硬化性樹脂水溶液2cに、乾燥した長繊維マット1を浸漬したり、繊維3への浸透性の低い樹脂成分5を含有する熱硬化性樹脂水溶液(熱硬化性樹脂接着剤)2cを、乾燥した長繊維マット1にスプレーで噴霧し付着させるようにするのが好ましい。
【0061】
このように繊維3への浸透性の高い樹脂成分4を含有する熱硬化性樹脂水溶液2bに長繊維マット1を浸漬した後、長繊維マット1を乾燥するので、樹脂成分4を溶解する水分が除去されて樹脂成分4を繊維3から流出させにくくすることができ、繊維3に浸透した樹脂成分4を繊維3の細胞壁6中に止めたうえで、繊維3の表面に樹脂成分5を付着させることができるものであり、高強度を確保したままさらに寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になるものである。
【0062】
本発明において、熱硬化性樹脂水溶液2(2a〜2c)に増粘剤を含有させてもよい。熱硬化性樹脂接着剤を希釈して熱硬化性樹脂水溶液2を調製する場合は、増粘剤は水に希釈する前の熱硬化性樹脂接着剤に添加しても良いし、熱硬化性樹脂接着剤を水に希釈した後、この水溶液に増粘剤を添加するようにしても良い。
【0063】
このように熱硬化性樹脂水溶液2が増粘剤を含有することによって、樹脂成分4、5の浸透性を低下させることができ、繊維3の種類や性状等に対応して繊維3への樹脂成分4、5の浸透及び付着を制御することができるものであり、このため、強度を向上させたうえで寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になるものである。すなわち、例えば、樹脂成分4が浸透しやすい繊維3の場合は、繊維3への浸透性の高い樹脂成分4を含有する熱硬化性樹脂水溶液2a、2bに増粘剤を含有させて粘度を上昇させることにより、繊維3への浸透性の高い樹脂成分4の浸透性を低下させるようにするものであり、このようにして繊維3の種類や性状等に対応して強度を向上させたうえで寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になるものである。
【0064】
また、繊維3への浸透性の高い熱硬化性樹脂接着剤、すなわち、繊維3への浸透性の高い樹脂成分4の含有率が浸透性の低い樹脂成分5の含有率よりも極端に大きい熱硬化性樹脂接着剤(例えば、浸透性の高い樹脂成分4と浸透性の低い樹脂成分5の合計100部に対して、浸透性の高い樹脂成分4を90部以上含有する熱硬化性樹脂接着剤)を用いて熱硬化性樹脂水溶液2a、2bを調製した場合であっても、増粘剤により繊維3への樹脂成分4、5の浸透及び付着を制御することができるものである。
【0065】
上記の増粘剤としてはカルボキシメチルセルロースや小麦粉などを用いることができるが、小麦粉を用いるのが好ましい。小麦粉は安価であり、増粘効果も大きいため、さらに強度を向上させたうえで、寸法安定性に優れた繊維板を低コストで製造することが可能になるものである。
【0066】
また、本発明において、熱硬化性樹脂水溶液2(2a〜2c)に凝集剤を含有させてもよい。熱硬化性樹脂接着剤を希釈して熱硬化性樹脂水溶液2を調製する場合は、凝集剤は水に希釈する前の熱硬化性樹脂接着剤に添加しても良いし、熱硬化性樹脂接着剤を水に希釈した後、この水溶液に凝集剤を添加するようにしても良い。
【0067】
このように熱硬化性樹脂水溶液2が凝集剤を含有することによって、凝集剤で樹脂成分4、5の分子を凝集させて繊維3の表面に沈着させることができ、繊維3の種類や性状等に対応して繊維3への樹脂成分4、5の浸透及び付着を制御することができるため、強度を向上させたうえで寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になるものである。すなわち、例えば、樹脂成分4が浸透しやすい繊維3の場合は、繊維3への浸透性の高い樹脂成分4を含有する熱硬化性樹脂水溶液2a、2bに凝集剤を含有させることにより、繊維3への浸透性の高い樹脂成分4の浸透性を低下させるようにするものであり、このようにして繊維3の種類や性状等に対応して強度を向上させたうえで寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になるものである。
【0068】
また、繊維3への浸透性の高い熱硬化性樹脂接着剤、すなわち、繊維3への浸透性の高い樹脂成分4の含有率が浸透性の低い樹脂成分5の含有率よりも極端に大きい熱硬化性樹脂接着剤(例えば、浸透性の高い樹脂成分4と浸透性の低い樹脂成分5の合計100部に対して、浸透性の高い樹脂成分4を90部以上含有する熱硬化性樹脂接着剤)を用いて熱硬化性樹脂水溶液2a、2bを調製した場合であっても、凝集剤により繊維3への樹脂成分4、5の浸透及び付着を制御することができるものである。
【0069】
上記の凝集剤としては硫酸アルミニウムを用いるのが好ましい。硫酸アルミニウムは硫酸バンドとも呼ばれるものであって安価であり、凝集効果も大きいため、さらに強度を向上させたうえで、寸法安定性に優れた繊維板を低コストで製造することが可能になるものである。
【0070】
また、本発明において、熱硬化性樹脂水溶液2(2a〜2c)に撥水剤を含有させてもよい。熱硬化性樹脂接着剤を希釈して熱硬化性樹脂水溶液2を調製する場合は、撥水剤は水に希釈する前の熱硬化性樹脂接着剤に添加しても良いし、熱硬化性樹脂接着剤を水に希釈した後、この水溶液に凝集剤を添加するようにしても良い。
【0071】
このように熱硬化性樹脂水溶液2が撥水剤を含有することによって、接着剤供給工程により、撥水剤を長繊維マット1に均一に分散させて含浸させることができ、繊維板への水分の吸収が抑制され、寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になるものである。すなわち、例えば、吸水性の高い繊維3を用いる場合は撥水剤を含有させることにより、繊維板への水分の吸収を抑制することができるものであり、繊維3の種類や性状等に対応して、寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になるものである。
【0072】
上記の撥水剤としてはシリコンオイルエマルジョンやワックスエマルジョンなどを用いることができるが、ワックスエマルジョンを用いるのが好ましい。ワックスエマルジョンは安価で撥水効果が大きいため、寸法安定性に優れた繊維板を低コストで製造することが可能になるものである。
【0073】
また、本発明において、熱硬化性樹脂水溶液2(2a〜2c)にホルムアルデヒドとグリオキサールの少なくとも一方を含有させてもよい。熱硬化性樹脂接着剤を希釈して熱硬化性樹脂水溶液2を調製する場合は、ホルムアルデヒドやグリオキサールは水に希釈する前の熱硬化性樹脂接着剤に添加しても良いし、熱硬化性樹脂接着剤を水に希釈した後、この水溶液にホルムアルデヒドやグリオキサールを添加するようにしても良い。
【0074】
このように熱硬化性樹脂水溶液2にホルムアルデヒドやグリオキサールを含有させることによって、接着剤供給工程により、ホルムアルデヒドやグリオキサールを長繊維マット1に均一に分散させて含浸させることができ、この長繊維マット1を成形工程において熱圧することにより、ホルムアルデヒドやグリオキサールで繊維3をホルマール化することができるものである。繊維3のホルマール化は繊維3中の水酸基とホルムアルデヒドやグリオキサールが反応することで、水酸基間を架橋する反応であり、繊維3中の水酸基が減少するために、繊維板への水分の吸収が抑制されるものであり、これにより、寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になるものである。
【0075】
また、グリオキサールを用いた場合は、ホルムアルデヒドを使用しないかあるいはホルムアルデヒドの使用量を少なくすることができ、製造工程中のホルムアルデヒドの放散を抑制することができるものであり、これにより、作業環境が悪化しないようにするための対策が必要でなくなるものである。
【0076】
また、本発明において、熱硬化性樹脂水溶液2に脂肪酸塩を含有させてもよい。熱硬化性樹脂接着剤を希釈して熱硬化性樹脂水溶液2を調製する場合は、脂肪酸塩は水に希釈する前の熱硬化性樹脂接着剤に添加しても良いし、熱硬化性樹脂接着剤を水に希釈した後、この水溶液に脂肪酸塩を添加するようにしても良い。
【0077】
このように熱硬化性樹脂水溶液2が脂肪酸塩を含有することによって、接着剤供給工程により、脂肪酸塩を長繊維マット1に均一に分散させて含浸させることができ、この長繊維マット1を成形工程において熱圧することにより、脂肪酸塩で繊維3をエステル化することができるものである。繊維3のエステル化は繊維3中の水酸基と脂肪酸塩が反応することで、水酸基間を架橋する反応であり、繊維3中の水酸基が減少するために、繊維板への水分の吸収が抑制されるものであり、これにより、寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になるものである。脂肪酸塩の種類については特に限定はなく、例えば、石鹸の主成分であるステアリン酸ナトリウムなどを挙げることができる。
【0078】
尚、上記のように、繊維3への浸透性の高い樹脂成分4と繊維3への浸透性の低い樹脂成分5の二成分を長繊維マット1に供給する場合を説明したが、本発明では繊維3への浸透性の異なる三成分以上を長繊維マット1に供給することもできる。
【0079】
【実施例】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。尚、以下、特に断らない限り、「%」は「質量%(重量%)」を意味する。
(実施例1)
ケナフ靭皮部の長繊維集合体を積層し、クロスレイヤー装置を用いて得られたケナフ長繊維マット(繊維長:約0.2〜2m程度、繊維直径:約50〜600μm、マット面重量:0.24g/cm2)を用い、繊維板を以下の手順で作製した。長繊維マットのサイズは300×900mm、面重量は0.24g/cm2であった。熱硬化性樹脂接着剤としてはフェノール樹脂接着剤A(JIS K 6833で規定される不揮発分55%、不揮発分中のうち、重合度1の樹脂成分比率91%、重合度2以上の樹脂成分比率9%)と、フェノール樹脂接着剤B(不揮発分55%、不揮発分中のうち、重合度1の樹脂成分比率4%、重合度2以上の樹脂成分比率96%)を1:1で混合して用いた。接着剤供給工程としては、混合した接着剤を水で希釈し、これに長繊維マットを10秒間浸漬した後、搬送ローラーで圧搾を行って、繊維重量に対して付与(含浸)する樹脂不揮発分重量の割合が25%となるように調整を行った。これに続く乾燥工程では50℃の空気を長繊維マットに送り、繊維重量に対する水分の重量の割合が10%となるまで乾燥を行った。さらに成形工程では、成形温度160℃、成形圧力2.94MPa(30kgf/cm2)、成形時間5分の条件でプレスを行い、繊維板を成形した。得られた繊維板のサイズは300×900mm、厚さ4mm、ボード比重0.80となった。
(実施例2)
実施例1と同様にして得られたケナフ長繊維マットを用い、繊維板を作製した。接着剤としてはフェノール樹脂接着剤C(不揮発分48%、不揮発分中のうち、重合度1の樹脂成分比率21%、重合度2以上の樹脂成分比率79%)を用いた。接着剤供給工程・乾燥工程・成形工程は実施例1と同様の条件とした。
(実施例3)
実施例1と同様にして得られたケナフ長繊維マットを用い、繊維板を作製した。接着剤としてはフェノール樹脂接着剤Aとフェノール樹脂接着剤Bを用いた。接着剤供給工程としては、フェノール樹脂接着剤Aを水で希釈し、これに長繊維マットを10秒間浸漬した後、搬送ローラーで圧搾を行って、繊維重量に対して付与(含浸)する樹脂不揮発性分重量の割合が15%となるよう調整を行った。その後、この長繊維マットを水で希釈したフェノール樹脂接着剤Bの水溶液に10秒間浸漬した後、搬送ローラーで圧搾を行って、繊維重量に対して付与(含浸)する樹脂不揮発性分の合計重量の割合が25%となるよう調整を行った。乾燥・成形工程は実施例1と同様の条件とした。
(実施例4)
実施例1と同様にして得られたケナフ長繊維マットを用い、繊維板を作製した。接着剤としてはフェノール樹脂接着剤Aとフェノール樹脂接着剤Bを用いた。接着剤供給工程としては、フェノール樹脂接着剤Aを水で希釈し、これに長繊維マットを10秒間浸漬した後、搬送ローラーで圧搾を行って、繊維重量に対して付与(含浸)する樹脂不揮発性分重量の割合が15%となるよう調整を行った後、60℃乾燥器中で20分間乾燥を行った。その後、この長繊維マットを水で希釈したフェノール樹脂接着剤Bの水溶液に10秒間浸漬した後、搬送ローラーで圧搾を行って、繊維重量に対して付与(含浸)する樹脂不揮発性分の合計重量の割合が25%となるよう調整を行った。乾燥・成形工程は実施例1と同様の条件とした。
(実施例5)
実施例1と同様にして得られたケナフ長繊維マットを用い、繊維板を作製した。接着剤としてはフェノール樹脂接着剤Aとフェノール樹脂接着剤Bを用いた。接着剤供給工程としては、フェノール樹脂接着剤Aを水で希釈し、これに長繊維マットを10秒間浸漬した後、搬送ローラーで圧搾を行って、繊維重量に対して付与(含浸)する樹脂不揮発性分重量の割合が15%となるよう調整を行った。その後、この長繊維マットにフェノール樹脂接着剤Bを繊維重量に対して付与(含浸)する樹脂不揮発性分の合計重量の割合が25%となるようスプレーで噴霧を行った。乾燥・成形工程は実施例1と同様の条件とした。
(実施例6)
実施例1と同様にして得られたケナフ長繊維マットを用い、繊維板を作製した。接着剤としてはフェノール樹脂接着剤Aとメラミン樹脂接着剤を用いた。尚、このメラミン樹脂接着剤は、重合度1の樹脂成分と重合度2以上の樹脂成分とを上記フェノール樹脂接着剤Bと同程度含むものである。
【0080】
接着剤供給工程としては、フェノール樹脂接着剤Aを水で希釈し、これに長繊維マットを10秒間浸漬した後、搬送ローラーで圧搾を行って、繊維重量に対して付与(含浸)する樹脂不揮発性分重量の割合が15%となるよう調整を行った後、60℃乾燥器中で20分間乾燥を行った。その後、この長繊維マットを水で希釈したメラミン樹脂接着剤の水溶液に10秒間浸漬した後、搬送ローラーで圧搾を行って、繊維重量に対して付与(含浸)する樹脂不揮発性分の合計重量の割合が25%となるよう調整を行った。乾燥・成形工程は実施例1と同様の条件とした。
(実施例7)
実施例1と同様にして得られたケナフ長繊維マットを用い、繊維板を作製した。接着剤としてはフェノール樹脂接着剤Aとメラミン樹脂接着剤を用いた。尚、このメラミン樹脂接着剤は、重合度1の樹脂成分と重合度2以上の樹脂成分とを上記フェノール樹脂接着剤Bと同程度含むものである。
【0081】
接着剤供給工程としては、フェノール樹脂接着剤Aを水で希釈し、これに長繊維マットを10秒間浸漬した後、搬送ローラーで圧搾を行って、繊維重量に対して付与(含浸)する樹脂不揮発性分重量の割合が15%となるよう調整を行った。その後、この長繊維マットにメラミン樹脂接着剤を繊維重量に対して付与(含浸)する樹脂不揮発性分の合計重量の割合が25%となるようスプレーで噴霧を行った。乾燥・成形工程は実施例1と同様の条件とした。
(実施例8)
実施例1と同様にして得られたケナフ長繊維マットを用い、繊維板を作製した。接着剤としてはフェノール樹脂接着剤Cに増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを樹脂不揮発分に対して1%添加したものを用いた。接着剤供給工程・乾燥工程・成形工程は実施例1と同様の条件とした。
(実施例9)
実施例1と同様にして得られたケナフ長繊維マットを用い、繊維板を作製した。接着剤としてはフェノール樹脂接着剤Cに増粘剤として小麦粉を樹脂不揮発分に対して2%添加したものを用いた。接着剤供給工程・乾燥工程・成形工程は実施例1と同様の条件とした。
(実施例10)
実施例1と同様にして得られたケナフ長繊維マットを用い、繊維板を作製した。接着剤としてはフェノール樹脂接着剤Cに凝集剤として1%塩酸を樹脂不揮発分に対して1%添加したものを用いた。接着剤供給工程・乾燥工程・成形工程は実施例1と同様の条件とした。
(実施例11)
実施例1と同様にして得られたケナフ長繊維マットを用い、繊維板を作製した。接着剤としてはフェノール樹脂接着剤Cに凝集剤として硫酸アルミニウム1%水溶液を樹脂不揮発分に対して2%添加したものを用いた。接着剤供給工程・乾燥工程・成形工程は実施例1と同様の条件とした。
(実施例12)
実施例1と同様にして得られたケナフ長繊維マットを用い、繊維板を作製した。接着剤としてはフェノール樹脂接着剤Cに撥水剤としてシリコンオイルエマルジョンを樹脂不揮発分に対して1%添加したものを用いた。接着剤供給工程・乾燥工程・成形工程は実施例1と同様の条件とした。
(実施例13)
実施例1と同様にして得られたケナフ長繊維マットを用い、繊維板を作製した。接着剤としてはフェノール樹脂接着剤Cに撥水剤としてワックスエマルジョンを樹脂不揮発分に対して2%添加したものを用いた。接着剤供給工程・乾燥工程・成形工程は実施例1と同様の条件とした。
(実施例14)
実施例1と同様にして得られたケナフ長繊維マットを用い、繊維板を作製した。接着剤としてはフェノール樹脂接着剤Cに20%ホルムアルデヒド水溶液を樹脂不揮発分に対して10%添加したものを用いた。接着剤供給工程・乾燥工程・成形工程は実施例1と同様の条件とした。
(実施例15)
実施例1と同様にして得られたケナフ長繊維マットを用い、繊維板を作製した。接着剤としてはフェノール樹脂接着剤Cに40%グリオキサール水溶液を樹脂不揮発分に対して5%添加したものを用いた。接着剤供給工程・乾燥工程・成形工程は実施例1と同様の条件とした。
(実施例16)
実施例1と同様にして得られたケナフ長繊維マットを用い、繊維板を作製した。接着剤としてはフェノール樹脂接着剤Cにステアリン酸ナトリウムを樹脂不揮発分に対して2%添加したものを用いた。接着剤供給工程・乾燥工程・成形工程は実施例1と同様の条件とした。
(比較例1)
実施例1と同様にして得られたケナフ長繊維マットを用い、繊維板を作製した。接着剤としてはフェノール樹脂接着剤Aを用いた。接着剤供給工程・乾燥工程・成形工程は実施例1と同様の条件とした。
(比較例2)
実施例1と同様にして得られたケナフ長繊維マットを用い、繊維板を作製した。接着剤としてはフェノール樹脂接着剤Bを用いた。接着剤供給工程・乾燥工程・成形工程は実施例1と同様の条件とした。
【0082】
上記実施例1〜16及び比較例1、2で作成した繊維板について、JIS A5905(繊維板)で規定された剥離強さ及び吸水厚さ膨張率を試験し、その結果を表1に示す。
【0083】
【表1】
Figure 0004085582
【0084】
表1より、比較例1は剥離強さが非常に低い。比較例1で用いたフェノール樹脂接着剤Aは重合度1の成分が90%以上を占めており、フェノール樹脂接着剤A中の樹脂成分の大半が繊維3の細胞壁6中に浸透し、繊維3の表面に付着するフェノール樹脂接着剤A中の樹脂成分がわずかであるためと考えられる。また、比較例2は吸水厚さ膨張率が20%を超え、非常に大きく膨張する。比較例2で用いたフェノール樹脂接着剤Bは重合度2以上の成分が90%以上を占めており、フェノール樹脂接着剤B中の樹脂成分の大半が繊維3の細胞壁6中に浸透できないためと考えられる。比較例1、2と対比して、本発明の実施例1〜16は全て吸水厚さ膨張率が低下していることが確認された。また、比較例2と対比して、実施例1〜16は繊維板が同等以上の剥離強さを確保できることが確認された。
【0085】
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1の発明は、ケナフ、油ヤシ、ココヤシの少なくとも一つから得られる長繊維集合体からなる長繊維マットに熱硬化性樹脂水溶液2を供給する接着剤供給工程と、接着剤供給工程で得られた長繊維マットを乾燥する乾燥工程と、乾燥工程で得られた長繊維マットを熱圧により繊維板に成形する成形工程からなる繊維板の製造方法において、接着剤供給工程により、繊維への浸透性の異なる複数種類の樹脂成分を長繊維マットに供給するにあたって、低重合度のフェノール樹脂成分を繊維への浸透性の高い樹脂成分とし、高重合度のフェノール樹脂成分を繊維への浸透性の低い樹脂成分として、両者を別々に又は混合して長繊維マットに含浸するので、繊維への浸透性の高い樹脂成分は繊維の細胞壁中に浸透し、繊維への浸透性の低い樹脂成分は繊維の表面に付着する。このため、細胞壁中で硬化した樹脂成分は繊維板への水分の吸収を抑制すると共に水分による繊維の膨潤、変形を抑制するものであり、また、繊維の表面に付着した樹脂成分は繊維同士を強固に接着するものであり、従って、高強度を確保したまま寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になるものである。
また、繊維への浸透性の異なる複数種類の樹脂成分は、重合度が異なる複数種類のフェノール樹脂成分であるので、重合度の違いで樹脂成分の繊維への浸透性を容易に制御することが可能となり、繊維の細胞壁中と繊維の表面に接着剤を付与することができ、高強度を確保したまま寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になるものである。
【0086】
また、本発明の請求項2の発明は、長繊維マットに供給する樹脂成分のうち、繊維への浸透性の高い樹脂成分の占める割合が10〜80%であるので、高強度を確保したまま寸法安定性に優れた繊維板を安定して確実に製造することが可能になるものである。
【0088】
また、本発明の請求項の発明は、繊維への浸透性の高い樹脂成分は、重合度1のフェノール樹脂成分であるので、重合度1すなわち一量体のフェノール樹脂成分は繊維の細胞壁中に浸透しやすく、細胞壁を膨潤させたまま硬化することになり、かさ(バルキング)効果を持つと共に、繊維中の親水基と結合するため、繊維との密着性が高まり、さらに寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能となるものである。
【0089】
また、本発明の請求項の発明は、上記接着剤供給工程において、繊維への浸透性の異なる複数種類の樹脂成分を含有する熱硬化性樹脂水溶液に長繊維マットを浸漬するので、繊維への樹脂成分の浸透及び付着を同時に行うことができ、簡便な方法で高強度を確保したまま寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になるものである。
【0090】
また、本発明の請求項の発明は、上記接着剤供給工程において、繊維への浸透性の高い樹脂成分を含有する熱硬化性樹脂水溶液に長繊維マットを浸漬した後、繊維への浸透性の低い樹脂成分を含有する熱硬化性樹脂水溶液に長繊維マットを浸漬するので、繊維の種類や性状等に対応して繊維への樹脂成分の浸透及び付着をそれぞれ個別に制御することができ、さらに強度や寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になるものである。
【0091】
また、本発明の請求項の発明は、上記接着剤供給工程において、繊維への浸透性の高い樹脂成分を含有する熱硬化性樹脂水溶液に長繊維マットを浸漬した後、繊維への浸透性の低い樹脂成分を含有する熱硬化性樹脂水溶液をスプレーにより長繊維マットに噴霧し付着させるので、繊維の種類や性状等に対応して繊維への樹脂成分の浸透及び付着をそれぞれ個別に制御することができるため、特に、繊維への浸透性の低い樹脂成分を含有する熱硬化性樹脂水溶液をスプレーで噴霧することにより、繊維への浸透性の低い樹脂成分の付着を容易に制御することができ、強度を向上させたうえで寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になるものである。
【0092】
また、本発明の請求項の発明は、請求項5又は6に記載の繊維板の製造方法において、繊維への浸透性の高い樹脂成分を含有する熱硬化性樹脂水溶液に長繊維マットを浸漬した後、長繊維マットに供給された水分を乾燥し、次いで、繊維への浸透性の低い樹脂成分を長繊維マットに供給するので、繊維に浸透した樹脂成分を繊維の細胞壁中に止めて流出しにくくしたうえで、繊維の表面に樹脂成分を付着させることができ、高強度を確保したままさらに寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になるものである。
【0093】
また、本発明の請求項の発明は、熱硬化性樹脂水溶液は増粘剤を含有するので、浸透性の高い接着剤を用いた場合であっても、増粘剤の添加で樹脂成分の浸透性を低下させることによって、繊維の種類や性状等に対応して繊維への樹脂成分の浸透及び付着を制御することができ、強度を向上させたうえで寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になるものである。
【0094】
また、本発明の請求項の発明は、増粘剤が小麦粉であるので、小麦粉は安価であり、増粘効果も大きいため、さらに強度を向上させたうえで、寸法安定性に優れた繊維板を低コストで製造することが可能になるものである。
【0095】
また、本発明の請求項10の発明は、熱硬化性樹脂水溶液は凝集剤を含有するので、浸透性の高い接着剤を用いた場合であっても、凝集剤で樹脂成分の分子を凝集させて繊維の表面に沈着させることによって、繊維の種類や性状等に対応して繊維への樹脂成分の浸透及び付着を制御することができ、強度を向上させたうえで寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になるものである。
【0096】
また、本発明の請求項11の発明は、凝集剤が硫酸アルミニウムであるので、硫酸アルミニウムは安価で凝集効果が大きいため、さらに強度を向上させたうえで寸法安定性に優れた繊維板を低コストで製造することが可能になるものである。
【0097】
また、本発明の請求項12の発明は、熱硬化性樹脂水溶液は撥水剤を含有するので、接着剤供給工程により、撥水剤を長繊維マットに均一に分散させて含浸させることができ、繊維板への水分の吸収が抑制され、寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になるものである。
【0098】
また、本発明の請求項13の発明は、撥水剤がワックスエマルジョンであるので、ワックスエマルジョンは安価で撥水効果が大きいため、寸法安定性に優れた繊維板を低コストで製造することが可能になるものである。
【0099】
また、本発明の請求項14の発明は、熱硬化性樹脂水溶液はホルムアルデヒドを含有するので、ホルムアルデヒドで繊維をホルマール化することができ、寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になるものである。
【0100】
また、本発明の請求項15の発明は、熱硬化性樹脂水溶液はグリオキサールを含有するので、グリオキサールで繊維をホルマール化することができ、寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になるものであり、また、繊維をホルマール化することができるにもかかわらず、ホルムアルデヒドを使用しないかあるいはホルムアルデヒドの使用量を少なくすることができ、ホルムアルデヒドの放散を抑制することができるものである。
【0101】
また、本発明の請求項16の発明は、熱硬化性樹脂水溶液は脂肪酸塩を含有するので、脂肪酸塩で繊維をエステル化することができ、寸法安定性に優れた繊維板を製造することが可能になるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示し、(a)乃至(c)は概略図である。
【図2】同上の他の一例を示し、(a)乃至(d)は概略図である。
【図3】(a)はケナフ繊維を示す断面の模式図、(b)は浸透性の異なる複数種類の樹脂成分を供給したケナフ繊維を示す断面の模式図である。
【符号の説明】
1 長繊維マット
2 熱硬化性樹脂水溶液
2a 熱硬化性樹脂水溶液
2b 熱硬化性樹脂水溶液
2c 熱硬化性樹脂水溶液
3 繊維
4 樹脂成分
5 樹脂成分

Claims (16)

  1. ケナフ、油ヤシ、ココヤシの少なくとも一つから得られる長繊維集合体からなる長繊維マットに熱硬化性樹脂水溶液を供給する接着剤供給工程と、接着剤供給工程で得られた長繊維マットを乾燥する乾燥工程と、乾燥工程で得られた長繊維マットを熱圧により繊維板に成形する成形工程からなる繊維板の製造方法において、接着剤供給工程により、繊維への浸透性の異なる複数種類の樹脂成分を長繊維マットに供給するにあたって、低重合度のフェノール樹脂成分を繊維への浸透性の高い樹脂成分とし、高重合度のフェノール樹脂成分を繊維への浸透性の低い樹脂成分として、両者を別々に又は混合して長繊維マットに含浸することを特徴とする繊維板の製造方法。
  2. 長繊維マットに供給する樹脂成分のうち、繊維への浸透性の高い樹脂成分の占める割合が10〜80%であることを特徴とする請求項1に記載の繊維板の製造方法。
  3. 繊維への浸透性の高い樹脂成分は、重合度1のフェノール樹脂成分であることを特徴とする請求項1又は2に記載の繊維板の製造方法。
  4. 上記接着剤供給工程において、繊維への浸透性の異なる複数種類の樹脂成分を含有する熱硬化性樹脂水溶液に長繊維マットを浸漬することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の繊維板の製造方法。
  5. 上記接着剤供給工程において、繊維への浸透性の高い樹脂成分を含有する熱硬化性樹脂水溶液に長繊維マットを浸漬した後、繊維への浸透性の低い樹脂成分を含有する熱硬化性樹脂水溶液に長繊維マットを浸漬することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の繊維板の製造方法。
  6. 上記接着剤供給工程において、繊維への浸透性の高い樹脂成分を含有する熱硬化性樹脂水溶液に長繊維マットを浸漬した後、繊維への浸透性の低い樹脂成分を含有する熱硬化性樹脂水溶液をスプレーにより長繊維マットに噴霧し付着させることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の繊維板の製造方法。
  7. 請求項5又は6に記載の繊維板の製造方法において、繊維への浸透性の高い樹脂成分を含有する熱硬化性樹脂水溶液に長繊維マットを浸漬した後、長繊維マットに供給された水分を乾燥し、次いで、繊維への浸透性の低い樹脂成分を長繊維マットに供給することを特徴とする繊維板の製造方法。
  8. 熱硬化性樹脂水溶液は増粘剤を含有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の繊維板の製造方法。
  9. 増粘剤が小麦粉であることを特徴とする請求項8に記載の繊維板の製造方法。
  10. 熱硬化性樹脂水溶液は凝集剤を含有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の繊維板の製造方法。
  11. 凝集剤が硫酸アルミニウムであることを特徴とする請求項10に記載の繊維板の製造方法。
  12. 熱硬化性樹脂水溶液は撥水剤を含有することを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の繊維板の製造方法。
  13. 撥水剤がワックスエマルジョンであることを特徴する請求項12に記載の繊維板の製造方法。
  14. 熱硬化性樹脂水溶液はホルムアルデヒドを含有することを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の繊維板の製造方法。
  15. 熱硬化性樹脂水溶液はグリオキサールを含有することを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の繊維板の製造方法。
  16. 熱硬化性樹脂水溶液は脂肪酸塩を含有することを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載の繊維板の製造方法。
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