JP4119549B2 - 洗浄機用切替バルブ及びこれを用いた洗車装置 - Google Patents

洗浄機用切替バルブ及びこれを用いた洗車装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗浄機用切替バルブ及びこれを採用した洗浄装置、特に乗用車等の洗浄を行う洗車装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば洗車機には手持式のものや自動式のものがあるが、いずれも洗車の種類に応じて高圧スプレーや低圧スプレーあるいは中圧スプレーなど圧力を切り替えて洗車作業が行われる。例えば、洗剤やワックスの塗布には低圧スプレーとし、すすぎ用には高圧スプレーとするように切り替えている。このようなスプレー圧の切り替えは、例えばそれぞれの圧力に対応する複数のポンプを用いたり、電磁弁や逆止弁を用いて管路を切り替えたりすることによって行っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記したようにスプレー圧を切り替えて洗車を行う場合、例えば、すすぎ用高圧スプレーは洗浄面に対する打撃力を利用するため、狭い範囲に集中させるようなスプレーパターンとする必要がある。また、洗剤、ワックス用低圧スプレーは、車体の広い範囲に散布させるため、広範囲に拡がる形状のスプレーパターンとする必要がある。
【0004】
しかし、同一のノズルから圧力の異なるスプレーを噴射しても、そのノズルに適した圧力以外の噴射圧でのスプレーでは適切なスプレーパターンは得られないため、洗車の作業効率を悪くしていた。
【0005】
この問題に対応するため、高圧用と低圧用とで別々のノズルを装備する方法も採用されている。例えば単一のポンプにより、回転数を変えるなどの手段で供給圧力を切り替える場合、高圧、低圧で各々専用の配管を用いることになる。各々のノズルへの管路切り替えは電磁弁や逆止弁を用いて行っている。このため管路が複雑化しあるいは高圧用の電磁弁が高価であり、その上電磁弁の切り替えに電気的制御手段が必要であるなどにより製造コスト上昇の原因となっていた。
【0006】
そこで本発明の目的は、電気的制御手段が必要な電磁弁を用いずに、供給する流体の圧力の変化に対応して管路を容易に切り替え可能とする切替バルブによって洗車工程、すなわち噴射圧力ごとに適したスプレーパターンで効率のよい洗浄処理、ワックス処理を可能とする洗車装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明は、次の手段を採用してある。
【0008】
切替バルブは、高価な電磁弁等を用いずに供給ポンプから供給される流体の流量の変化に対応して流路を切り替え可能とすることにより、洗車目的に対応した圧力で流体を各ノズルへ供給可能としてあるところに特徴がある。
【0009】
流路切り替えのための具体的な手段は、チャンバーを構成するシリンダ内に往復移動自在に設けられたピストンの移動によって低圧管路用出口または高圧管路用出口のいずれか一方を開放するとともに他方を閉塞するようにしたものである。ピストンの往復移動は、上記チャンバー内の圧力によってピストンを一方の方向に変位させるように働く変位力とばねによる他の方向に作用する付勢力との差によって生じるようにしてある。
【0010】
なおこの変位力はチャンバーを貫通しているロッド部の断面積から高圧管路用出口面積を減じた差分と、チャンバー内の圧力との積により求められる。すなわち、低流量でチャンバー内の圧力が低い状態で、それにより生じる変位力がばねによる付勢力よりも小さい時には、ピストンがばねの付勢力によって高圧管路用出口に向かって付勢される。これにより第2の弁機構の作用で高圧管路用出口の閉塞が維持される。
【0011】
この時、第1の弁機構は第1の塞栓部が低圧管路用出口側の弁座から離れているため低圧管路用出口が開放されている。シリンダ室の内周部と接するピストンの外周部には間隙部が形成してあるので、低流量時における流体はこの間隙部を通り、さらに低圧管路用出口を通って低圧管路へ供給される。
【0012】
これに対し、供給される流体の流量の増加によってチャンバー内の圧力が高くなり、ピストンに作用する変位力がばねによる付勢力よりも大きくなると、ピストンはこの付勢力に抗して変位し、第2の弁機構により高圧管路用出口を開放するとともに第1の弁機構により低圧管路用出口への流路を閉塞する。したがって供給管路からシリンダ室内に供給された流体は、高圧管路用出口を通って高圧管路へ供給可能となる。
【0013】
こうして流量が設定値よりも小さい時には流体が低圧管路に流れ、流量が設定値よりも大きくなった時には流体が高圧管路に流れるように切り替えられる。低圧管路は、例えば洗剤塗布用のスプレーノズルやワックス用スプレーノズルに接続し、高圧管路は例えばすすぎ用高圧スプレーノズルに接続すれば、流体の種類ごとにポンプの回転数を切り替えるように設定することにより、任意の種類の流体を選択された圧力でそれぞれに対応したノズルから適切なスプレーパターンで洗車可能となる。
【0014】
この切替バルブの稼動中に小流量から大流量に切り替えられるとき、切り替えられた流量があまり大きくない時にはピストンの移動が緩慢となって、それだけ応答速度が低くなる。このため、低圧管路用出口が閉塞するまでに所定の時間を要し、その間低圧管路に高圧管路用の流体が流れ込むおそれがある。
【0015】
本発明では切り替え時における応答性を高くする手段として、小流量から大流量に切り替える際に、この大流量よりもさらに大きい流量で流体を供給してシリンダ内の圧力を高くすることによりピストンの移動速度を速くし、短時間で低圧管路用出口を閉塞可能としてある。
【0016】
また、前述のように移動中のピストンは、チャンバーを貫通しているロッド部の断面積から高圧間路用出口面積を減じた差分と、チャンバー内圧力との積により求められる値の変位力を受けている。
【0017】
ここで第1の弁機構が閉塞した後は、第2のチャンバーから低圧管路用出口に至る流体供給がなくなり、その結果として第1の弁機構の閉塞部から先の低圧管路内部は、概略チャンバー外の圧力、すなわち大気圧程度に緩和される。
【0018】
このため、第1の弁機構閉塞後のピストンの作用力は、第1の弁機構の閉塞部断面積から高圧管路用出口の面積を減じた差分と、チャンバー内圧力との積により求められる値となる。
【0019】
ゆえに、第1の弁機構の閉塞部断面積を、第2のチャンバーを貫通するロッド部断面積より大きくしておけば、同一のチャンバー内圧力下において上記弁機構の開放状態よりも閉塞状態でのピストンの作用力が大きくなる。
【0020】
したがって第1の弁機構は、チャンバー内圧力の上昇によっていったん閉塞してしまえば、チャンバー内圧力が閉塞時点と同一の圧力まで下降してきても弁は作動せず、閉塞時点より若干低い圧力まで下降した段階で開放するというヒステリシスを有した動作をする。この結果、本発明の切替バルブは、切り替え圧力近傍において若干の圧力変動があっても、安定的に切り替え状態を保持可能としてある。
【0021】
上記の切替バルブを備えた洗車装置は、流体の供給ポンプの回転数と洗剤等の流体用切替弁を制御することにより、各スプレーノズルへ所望の流体を所望の圧力で供給可能となる。ポンプ回転数の切り替えにともなう流路の切り替えについては、高価な電磁弁などを必要とせず、したがって電磁弁制御系も不要となるので構成が極めて簡単になり、洗車装置を安価に提供可能とするものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
初めに実施の形態の一例としての切替バルブについて説明する。
【0023】
図1(a)に示すように、バルブ本体1は円筒体の内部にシリンダ室2を有するシリンダ部材3と、このシリンダ部材の開口端を塞ぐ蓋部材4とからなる。シリンダ室2は図1右寄りの部分が大径部からなる第1のチャンバー2aとなっており、これに続く左寄りの部分が小径部からなる第2のチャンバー2bとなっている。第1のチャンバー2aと第2のチャンバー2bとの境界には第1の弁機構B1を構成する第1の弁座2cがすり鉢状に形成されている。
【0024】
第1のチャンバー2aの右端部近傍には、洗浄用流体の供給用入口2dが設けてある。また第2のチャンバー2bには低圧管路用出口2eが設けてある。蓋部材4の中心部には、高圧管路用出口4aが設けてあり、その内端部(図1左部)には第2の弁機構を構成する第2の弁座4bが設けてある。
【0025】
供給管路用入口2dには供給管を接続する供給管接続部5が設けてある。第2のチャンバー2bに設けられている低圧管路用出口2eには低圧管接続部6が設けてある。そしてまた、シリンダ室2の右端に設けられた蓋部材4に設けられた高圧管路用出口4aには高圧管接続部7が設けてある。
【0026】
シリンダ室2内には、所定の範囲内で往復移動可能なピストン8が挿着してある。ピストン8はロッド部8aの中間位置に実質的に円板状のフランジ部8b及び第1の弁機構を構成する第1の塞栓部8cが円錐形に形成してある。また、ピストン8の右端部には第2の弁機構B2を構成する第2の塞栓部8dが実質的な円錐形に形成してある。
【0027】
ロッド部8aの左端部は、シリンダ室2の左端部を貫通してシリンダ部材3の左端から外部に突出してピストン8の往復移動を可能としている。なお、上記した第1の弁機構B1は、閉塞部断面積がピストンのロッド部8aの断面積より大きくなるようにしてある。
【0028】
第1の弁機構B1の動作は、ピストン8が左方に移動すると、第1の塞栓部8cがすり鉢状に形成された第1の弁座2cと密着係合するため、流体が低圧管路用出口2eから流出することを防止可能としてある(同図(b)参照)。
【0029】
第2の弁機構B2の動作は、ピストン8が右に移動すると第2の塞栓部8dは、第2の弁座4bと密着係合することにより、流体が高圧管路用出口4aから流出することを防止可能としてある。
【0030】
シリンダ室2の第1のチャンバー2aの左端部とピストンのフランジ部8bとの間には、付勢手段としての圧縮コイルばね9が挿着されている。このコイルばね9は、右端部がピストンのフランジ部8bの一側部に弾接し、左端部が第1のチャンバー2aの左端に形成されている段差部に弾接することによりピストン8を右向きに付勢している。
【0031】
したがって流体が流れていない状態においては、図1(a)に示すように、ピストン8がばね9により右方に付勢され、第2の弁機構B2を構成する第2の塞栓部8dが第2の弁座4bに密着係合することにより高圧管路用出口4aが閉塞状態となっている。このとき、第1の弁機構B1は第1の弁座2cから第1の塞栓部8cが離脱しているため低圧管路用出口2eは開放状態となっている。
【0032】
ピストン8のフランジ部8bの形状は、図2に例示するように、外周部に第1のチャンバー2aの内周部との間に流体の通路となるべき間隙を作るための間隙部8eが形成してある。図2(a)では、第1のチャンバー2aの内周部に対応する円板の周囲に平坦な切欠部をそれぞれ90°間隔で形成したものを間隙部8e,…としてある。
【0033】
また、同図(b)では、第1のチャンバー2aの内周部より小さい直径の円板状フランジ部の外周部にシリンダ室の内周部に接する突起部を90°間隔に形成し、第1のチャンバーの内周部とフランジ部との間に間隙部8e,…を形成してある。
【0034】
ここで、流体がピストン8を左方に変位させようとする力すなわち変位力Fとばね9の付勢力Fs との関係について説明する。
【0035】
図1(a)において、流体が流量Q1にて供給される。この流体はフランジ部に形成された間隙部8eを通ってフランジ部の左側にも供給され、結果としてシリンダ室内はフランジ部左右各面側とも同じ圧力になる。このときのシリンダ室内圧力をP1とする。すなわち、シリンダ室内にあるピストン表面は全域にわたって等しく圧力P1を受けることになる。
【0036】
ここでピストン8は、閉塞中である右端部の第2の弁機構B2における高圧管路用出口4aの断面積分と、シリンダ室左側を貫通しているロッド部の断面積分が、大気圧下に開放されており、シリンダ内圧力P1を受けていない。
【0037】
このため、シリンダ室2a内におけるピストン表面に作用する圧力P1は、ロッド部8aの軸方向への分力のみがシリンダ室外に開放されていることになる。このとき、それぞれの方向へピストンを変位させようとする力(変位力)の大きさは、大気圧開放されている部分の断面積とシリンダ内圧力P1の積として算出可能である。
【0038】
すなわち、ロッド部側へのピストンの変位力F1は、ロッド部8aの断面積をA1とすると、
F1=A1・P1
である。
【0039】
また、高圧管路用出口4a側へのピストンの変位力F2は、高圧管路用出口の断面積をA2とすると、
F2=A2・P1
である。
ここで、ロッド部の断面積A1は高圧管路用出口4aの断面積A2より大きくしてあるので、A1>A2すなわちF1>F2となり、ピストンはシリンダ内圧力P1の作用によって、ロッド部を左側に突出させる方向に変位しようとする力を受けることになる。
【0040】
この状態におけるピストンの変位力Fは、
Figure 0004119549
となる。
【0041】
これに対し、このばね9の付勢力Fs がピストンを右方に変位させるように働いているので、この付勢力とピストンの変位力Fとの差によりピストンの位置が決まることになる。すなわち、F<Fs であればピストン8はばね9の付勢力Fsによって右方に変位して、第2の弁機構B2における第2の塞栓部8dを第2の弁座4bに密着係合して高圧管路用出口4aを閉塞する。
【0042】
この状態では第1の弁機構B1は、第1の塞栓部8cが第1の弁座2cから離脱しているため、低圧管路用出口2eは開いた状態となっている。したがってピストン8の位置はそのままの状態を維持しつつ、流体はフランジ部の外周部に形成された4か所の間隙部8e(図2参照)によって作られた通路を通ってフランジ部の反対側を経てさらに低圧管路用出口2eを通って低圧管接続部6へ供給可能となっている。
【0043】
次に、シリンダ室2に供給される流体の流量がQ2に切り替えられて、シリンダ室内の圧力がP2に上昇したとする。この時におけるピストン8に生じる変位力Fは、上記と同様の方法で求めることができる。この変位力Fがばね9の付勢力Fs よりも大きくなると、ピストン8はこの付勢力に抗して左方に変位し、図1(b)に示すような状態となる。
【0044】
このようにピストン8が左方に変位すると、第2の弁機構B2は、第2の塞栓部8dが第2の弁座8dから離れて、流体が高圧管路用出口4aを通過可能となる。これと同時に第1の弁機構B1は、第1の塞栓部8cが第1の弁座2cに密着係合し、低圧管路用出口2eが閉塞される。この結果流量Q2の流体は、高圧管路用出口4aを経て高圧管接続部7から高圧管路へ供給可能となる。
【0045】
ところで、流量Q1を低圧管路に供給している状態から流量Q2に切り替えられると、シリンダ室内の圧力はP1からP2に変わる。流量Q2の下では、F>Fs となることからピストン8が左方に変位するのであるが、流体によりピストンに働く変位力Fがばねの付勢力Fs よりもそれ程大きくない場合には、ピストンの変位に対する応答速度が遅いために、第1の塞栓部8cが第1の弁座2cに密着するまでにある程度の時間を要し、低圧管路用出口2eからも流体が流れ出す事態も生じることがある。
【0046】
これに対しては、Q1からQ2への流量切り替え時の初めの所定時間については、供給する流体の流量をQ2よりも大きくし、これに対応してシリンダ室2a内の圧力を通常の圧力よりも大きくする。
【0047】
このように、ピストンの変位力を大きくすることにより短時間でバルブの切り替えを行うようにすれば、高圧用流体が低圧管路へ流れ込むことがなくなる。したがってこれにより第1の塞栓部8cが第1の弁座2cに密着係合した後に本来の高圧用の流量Q2に切り替えれば圧力に応じたノズルから適切なスプレーパターンによる洗車が可能となる。
【0048】
なお、流量の切り替えは、流体供給ポンプの回転数を変化させることにより行うようにすればよい。具体的には図示しないポンプ駆動用モータの回転数をインバーターで切り替えるようにすればよい(図3,4参照)。
【0049】
また、上記のように流量の増加によってシリンダ室内圧力がP1からP2に上昇し、ピストンが左方に変位しはじめると第2の弁機構が開放され、高圧管路に流体が供給されるため、高圧管路内も圧力P2となる。
【0050】
第2の弁機構B2が閉塞中のときは、高圧管路用出口4aから大気圧下に開放されていたピストン8の右端部も、弁機構の開放によってその表面に圧力P2を受けることとなる。
【0051】
ゆえにシリンダ室内圧力により発生するピストンの変位力Fは右方向への作用力が消失し、大気圧下にあるロッド部により発生する左方向への作用力のみとなる。
【0052】
このため、同一のシリンダ室内圧力P2の下でも、第2の弁機構B2が閉塞中にあるときより開放時の方が、ピストンに作用する左方向への変位力Fは増大する。さらに、右側の第1の弁機構B1においては、閉塞部断面積がピストンのロッド部8aの断面積より大きくしてあるので、閉塞後に低圧管路が大気圧になることにより、ピストンの大気圧開放面積が、ロッド部の断面積分から第1の弁機構の閉塞部の断面積分に増大する。
【0053】
この結果、同一のシリンダ室内圧力P2の下であっても、低圧管路供給時に比べ高圧管路供給時の方が、ピストンに作用する変位力が2段階にわたって増大することになる。したがって、シリンダ室内圧力の上昇により、一旦流路が高圧側に切り替わってしまえば、シリンダ内圧力がバルブ作動時と同一程度の圧力まで下降してきても弁機構は作動せず、閉塞時点よりも若干低い圧力まで下降した段階で開放するというヒステリシス動作をする。このため、切り替え圧力近傍において多少の圧力変動があっても、安定的に圧力の切り替え状態を保持することが可能である。
【0054】
なお、この形態例においては、シリンダ室を円筒状とし、ピストンのフランジ部がシリンダ室の内周面を摺動する構成としてあるが、本発明はこのような構成に限定される趣旨ではなく、シリンダ室やピストンを実状に即した形状としてもよい。この場合には、第1の弁機構B1と第2の弁機構B2とを備え、ロッド部8aがシリンダ室から外部へ突出する構成は必須である。
【0055】
次に本発明に係る切替バルブを備えた洗車装置について説明する。
【0056】
図3は、本発明の切替バルブを採用した門型の自動洗車機の例の概略を示すものである。この自動洗車装置は、洗剤等の供給装置Sと門型洗車機W1とによって構成されている。
【0057】
供給装置Sは、箱体31内に給水タンク32、洗剤タンク33、ワックス剤タンク34及び供給ポンプ35を備えている。供給装置Sにはこれらの他、各種の機器を備えている(図示略)。なお、供給ポンプ35を駆動するモータ(図示略)にはインバータが付属しており、モータの回転数を制御可能としてある。各タンクから供給される水量等の調整はバルブ36及び給水ポンプ35の回転数の制御によって行われる。洗浄水やワックス剤は給水ポンプ35から供給管路37を介して門型洗車機W1へ供給可能である。
【0058】
門型洗車機W1は、走行手段(図示略)を備えた門型フレーム38の前側の天井部に上面処理装置39が設けてあり、フレーム脚部38a,38aの各内側部には側面処理装置40,40が設けてある。上面処理装置には、左右方向に移動可能な高圧トップノズル41が設けてあり、側面処理装置には、上下方向に移動可能な高圧サイドノズル42が設けてある。
【0059】
また、門型フレーム38の後側には天井部から脚部の各内側部にわたって低圧ノズルアーチ43が設けてある.
高圧トップノズル41および高圧サイドノズル42への洗浄水の供給は、前述の切替バルブの高圧管接続部に接続された高圧管路44を介して行われ、低圧ノズルアーチへの洗剤やワックスの供給は、前述の切替バルブの低圧管接続部に接続された低圧管路45を介して行われる。なお、切替バルブVへの流体の供給は供給管路37と供給接続部5(図1参照)を介して行われる。
【0060】
この自動洗車装置における洗車工程を、例えば洗剤の吹き付け、高圧すすぎ、ワックス塗りを順次行うものとして説明する。洗剤、ワックスの工程は、洗剤水またはワックス剤を車体全体にまんべんなく散布し、かつ薬剤自体を付着しやすくするため、低圧リンスアーチによる広域噴射とする。また、すすぎの工程は、噴射の打撃力により汚れや洗剤分を強力に洗い流すため、高圧トップノズル41および高圧サイドノズル42による各ノズルごとの集中噴射とする。
【0061】
この洗車工程における往路は、低圧ノズルアーチ43による低圧スプレーで車体の上面および側面に洗剤を吹き付ける。この時には低圧スプレーなので、ポンプ35の回転数を低速のN1とし、これに対応する流量をQ1とする。この時切替バルブVは第2の弁機構B2が閉塞し、第1の弁機構B1が開いた状態となっており(図1参照)、流体は低圧管路45を通って低圧ノズルアーチ43に供給される。このように低圧用ノズルから洗剤を広角のスプレーパターンで車体の広範囲に低圧散布して、車体の表面に付着した汚れ等を浮き上らせて落ちやすい状態を作る。
【0062】
続いて復路は、高圧トップノズル41及び高圧サイドノズル42からの高圧スプレーによりすすぎを行う。このすすぎにより前工程で浮き上がった汚れ等を洗い流す。この時の管路の切り替えは、ポンプ35の回転数を高速のN2とし、切替パルプVに流量Q2を供給する。これによりピストン8を左方に変位させようとする力(変位力)Fがばねの付勢力Fs よりも大きくなるので、ピストン8は左に移動し(図1(b)参照)、第1の弁機構B1が閉じ、第2の弁機構B2が開く。このため、高圧管接続部7、高圧管路44を介して各ノズル41,42に流体が供給されて各高圧ノズルから、集中したスプレーパターンにて高圧スプレーが行われる。
【0063】
なお、切替バルブVで低圧時の流量Q1から高圧時の流量Q2への切り替え時に、流量Q2によるピストンの変位力Fがばね9の付勢力Fs よりも僅かしか大きくないような場合には、第1の塞栓部8cが第1の弁座2cに密着するまでの時間が長くなる。すなわち、応答速度が遅くなる。このために、低圧管路用出口2eからも高圧用の流体が流出することがある。これを防止する手段として前述のように、切り替え時の初めの所定時間を流量Q2よりも大きい流量となるようにポンプ35の回転数を高くし、ピストンの変位力Fをばねの付勢力Fs よりもかなり大きくすることにより、第1の塞栓部8eが第1の弁座2cに短時間に密着して閉塞させるようにするとよい。
【0064】
2回目の往路及び復路は第1回目と同様に低圧リンスアーチ43からワックスの塗布を行う。切替バルブVにおける切り替え動作は、ポンプ35の回転数をN2から低流量用のN1に切り替えれば、付勢力によりピストン8が初期位置に復帰し、第2の弁機構B2が作動して高圧管路用出口4aを閉塞するとともに、第1の弁機構B1が作動して開き、低圧管路45からワックス剤である流体が各ノズルへ供給される。
【0065】
この自動洗車装置は、本発明に係る切替バルブを採用することにより、ポンプを駆動するモータの回転数を変化させるだけで、低圧スプレーと高圧スプレーとの切り替えが可能となるため、高価な電磁弁を使わずに済む上に、電磁弁を制御する回路も不要となる。また、切替バルブは自動洗車機本体の噴射ノズルの近くに設置可能であるので、ポンプから噴射ノズルの近くまでの配管は、単一の管路を接続するだけでよい。
【0066】
このように本発明に係わる切替バルブを備えた自動洗車装置は、極めて簡単な構成により、各工程に応じた適切なスプレーパターンにて効率的な洗車を行うことが可能となる。
【0067】
図4は、本発明に係る切替バルブVを手持スプレー式の洗車装置に採用した例を示すものである。なお、供給装置Sの構成は、図3と同様のものを採用してあるので、ここでは詳述しないこととする。
【0068】
手持式スプレー装置W2は、高圧、低圧の各ノズル及び切替バルブVを収納したガンハンドル形状のケース51とこれに供給装置Sを接続した構成となっている。このケース51には、供給装置Sに対する各洗車工程の始動及び停止の操作をするための操作ボタンが設けてある(図示略)。
【0069】
ケース51内には切替バルブVが内蔵されており、ハンドル51aの先端部に供給管路37が接続されている。供給管路37は、ケース51内で切替バルブVの供給管接続部5と接続されている。切替バルブVの低圧管接続部6には、低圧管路52を介して後に詳述する低圧ノズル53が取り付けてある。また高圧管接続部7には高圧管路54を介して高圧ノズル55が設けてある。
【0070】
この手持式スプレー装置W2は、低圧ノズル53によって洗剤を車体表面に広角のスプレーパターンで噴射し、表面の汚れ等を落ちやすくした後に、高圧ノズル55から集中させたスプレーパターンで高圧水を噴射し、この打撃力をもって汚れや洗剤を洗い流す機能を有するものである。
【0071】
図5は、手持式スプレー装置W2の要部の例を拡大して示したものである。このスプレー装置W2は、低圧ノズル53の上流側にオリフィス56が取り付けてあり、さらに低圧ノズルの内部にはメッシュ53aを内蔵している。低圧管路52内を流下して来た洗剤はオリフィス56で絞られて高速化することにより減圧されるが、オリフィスの絞り部56aの直下では大気圧以下になるようにしてある。この絞り部56aの直下には図面に表れていない通気孔が設けてある。したがって低圧管路52中を流下する洗剤は、この通気孔から空気を洗剤中に吸入して洗剤に気泡を発生可能としてある。
【0072】
こうして、気泡を含んだ洗剤は、低圧ノズル53内のメッシュ53aを通過することにより、さらに細かく分断かつ撹拌され、最終的にはノズル口53bから発泡状態で噴出可能となる。このように発泡状態の洗剤を車体の表面にスプレーすると、車体表面に対する付着力が高くなるため、車体全域にこれをスプレーすれば、車体全体を洩れなく泡で含むことができる。このため、車体の表面全体の汚れを浮き上らせて落ちやすくし、次の洗浄水の高圧スプレーに備えることができる。
【0073】
なお上記した洗車装置の構成はいずれも例示であり、洗車の種類に対応して種々の構成の採用が可能である。
【0074】
また本発明の適用対象は洗車目的に限られるものではなく一般の各種洗浄装置においても採用が可能である。
【0075】
【発明の効果】
本発明に係る洗浄機用切替バルブは、洗浄用流体の流量変化に対応して低圧管路と高圧管路とを切り替え可能としてあるので、ポンプから1本の供給管路により流体を供給するだけで、所望の圧力に応じたノズルへの供給切り替えが可能となる。
【0076】
また、切替バルブによる低圧から高圧への切り替えの際には、はじめの所定時間だけ高圧スプレー時よりもさらに高い圧力で切り替えするように設定して応答速度を速くすれば、低圧管路から高圧用流体が漏れるような不都合を避けることができる。
【0077】
さらに、弁機構とピストンの断面積との関係を工夫し、バルブの切り替え動作にヒステリシスを持たせることによって、切り替え圧付近の圧力変動における誤動作を防止し、高い信頼性を発揮することができる。
【0078】
この切替バルブを洗車装置に備え付ければ、洗剤等の供給装置と洗車機との間を単一の供給管路で接続するだけで、各流体の種類ごとに高圧または低圧にて適切なスプレーパターンによる効率的な洗車が可能になる。
【0079】
また、洗車機に供給する洗浄水等の流量を変化させるだけで、高圧と低圧の切り替えが可能となるので、高価かつ電気的制御系を必要とする電磁弁が不要となり、洗車装置の製造コストを低減できる。
【0080】
また、本発明に係わる洗浄機用切替バルブは小型化が可能かつ単一の供給管路で流体を供給するものであるため、軽量化により手持ち式のスプレー装置にも組み込み可能であり、また洗車以外の目的の各種洗浄装置にも採用可能となるので広範囲の用途に供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る切替バルブの要部の構成を示すものであり、(a)は小流量が供給されている時の状態を示す断面図、(b)は大流量が供給されている時の状態を示す断面図である。
【図2】ピストンのフランジ部の形状及び間隙部を例示するものであり、図1A−A線断面図である。
【図3】本発明に係る切替バルブを採用した門型の自動洗車装置の正面図である。
【図4】本発明に係る切替バルブを採用した手持スプレー式の洗車装置の正面図である。
【図5】手持式スプレー装置の内部構成を示す一部切欠断面図である。
【符号の説明】
V 切替バルブ
B1,B2 弁機構
1(3,4) バルブ本体
2 シリンダ室
2a,2b チャンバー
2d 供給管路用入口
2e 低圧管路用出口
4a 高圧管路用出口
8 ピストン
9 付勢手段(ばね)
37 供給管路
41,42,51 高圧スプレー用ノズル
53 低圧スプレー用ノズル

Claims (4)

  1. バルブ本体内に高圧管路用出口と洗剤等の流体を供給する供給管路用入口とを備えた第1のチャンバーと、上記流体の低圧管路用出口を有する第2のチャンバーとが隣接するように設けてあり、
    上記バルブ本体内には一端部が上記第1のチャンバーの端部に設けられた上記高圧管路用出口に対して進退し、他端部が上記第2のチャンバーの端部を貫通して外部に突出するロッド部を備えたピストンが進退可能に設けてあり、
    上記ロッド部は、上記高圧管路出口面積より大きい断面積とし、
    上記ピストンは、付勢手段により上記一端部が上記高圧管路用出口に接近する方向に付勢力が与えられており、
    上記高圧管路用出口及び上記両チャンバー間の境界には、上記ピストンの進退動作により開閉する弁機構がそれぞれ設けてあり、
    上記弁機構は、上記供給管路用入口から上記第1のチャンバー内に供給された上記流体が所定の圧力になったときに発生する上記ピストンの変位力が上記付勢力よりも小さい時には、上記高圧管路用出口を塞ぐとともに上記低圧管路用出口を開き、上記変位力が上記付勢力よりも大きい時にはその逆になるように切り替えられる
    ことを特徴とする洗浄機用切替バルブ。
  2. 請求項1において、上記両チャンバー間を開閉する弁機構の閉塞部断面積は、上記第2チャンバー端部を貫通するロッド部断面積より大きくしたことを特徴とする洗浄機用切替バルブ。
  3. 請求項1または2のいずれかに記載の洗浄機用切替バルブにより高圧スプレー用ノズルまたは低圧スプレー用ノズルに選択的に上記流体を供給可能としてある洗車装置であり、
    上記洗浄機用切替バルブは、供給される上記流体の圧力が予め設定してある設定値よりも低い時には上記高圧管路用出口を閉塞するとともに上記低圧管路用出口を開いて上記低圧スプレー用ノズルによるスプレーを行い、上記流体の圧力が上記設定値よりも高い時には上記低圧管路用出口を閉塞するとともに上記高圧管路用出口を開いて上記高圧スプレー用ノズルによるスプレーを行う
    ことを特徴とする洗車装置。
  4. 請求項3において、上記洗浄機用切替バルブに上記流体を供給する供給ポンプを備え、
    上記供給ポンプは、上記弁機構、上記低圧管路用出口が開いている状態から上記高圧管路用出口が開く状態に切り替わる際に、上記流体を所定時間だけ高圧スプレー時における通常の供給圧力よりも高い圧力で供給し、上記切り替え後に上記通常の供給圧力に戻すように設定してある
    ことを特徴とする洗車装置。
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