JP4117812B2 - 静電潜像用トナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、レーザープリンタ等で採用されている電子写真法、静電記録法、静電印刷法等の現像プロセスにおいて用いられる静電潜像用トナー(以下、単にトナーと称する場合がある。)に関する。より詳しくは、帯電レベルが高く、帯電量について立ち上がりが早く、耐久性、安定性に優れた正帯電特性を付与することができる静電潜像用トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
乾式電子写真法において、静電潜像を可視像とする際に用いられる磁性トナー(特に磁性一成分トナー)は、一般に熱可塑性結着樹脂(バインダー樹脂)、荷電制御剤、磁性粉体、及びその他の添加剤を予備混合後、溶融混練、粉砕、分級の工程を経て、所望の粒子径を有するトナーとして製造されている。このトナー粒子は、粒子表面に一定量の正または負の電荷が摩擦帯電により蓄積され、この帯電粒子が静電潜像の現像に利用されている。
【0003】
ここで、摩擦帯電によって、トナー粒子表面に蓄積される電荷は、静電潜像の形成に用いられる光導電性感光体の種類によって正または負のいずれかの電荷とすることが必要である。また、その場合の帯電量は、静電潜像をより正確に可視像化するのに十分な量とする必要がある。このため、荷電制御剤ないしは導電物質をバインダー樹脂中に混合分散し、トナー粒子表面の電荷及び帯電量を制御するのが一般的である。
【0004】
また、近年、静電潜像形成のための光導電性感光体として、セレン感光体や有機光導電性感光体にかえて、無公害でかつ高い高感度を有し、さらにビッカース強度が1500〜2000と非常に硬い等の特性を有する観点から、アモルファスシリコン感光体(以下、a-Si感光体と称する。)が使用されている。そのため、a-Si感光体上に形成される静電潜像を現像するには、帯電性や耐久性に優れた正帯電性のトナーを用いることが望まれている。
【0005】
そこで、正帯電性のトナーとして、磁性一成分トナー粒子が知られている。このトナーは、荷電制御剤として、ニグロシン等に代表される帯電量を一定範囲内に調整する機能を有する電荷調整剤(CCA)を単独で使用していた。
【0006】
しかしながら、かかる正帯電性の電荷調整剤(CCA)は、バインダー樹脂との相溶性に乏しく、特に、トナー中に磁性粉が含有されていると、電荷調整剤の分散性が著しく低下し、トナーにおける帯電特性が不安定になり、画像欠陥を生じたり、定着性が低下するなどの問題が見られた。
また、かかる正帯電性の電荷調整剤は、トナー粒子を製造する際の粉砕工程や、トナー粒子表面に電荷を蓄積する際の複写機内での流動摩擦工程において、粒子表面層に存在する荷電制御剤が離脱しやすい傾向がある。そのため、トナー粒子の帯電量に変化を生じさせたり、トナー粒子個々の帯電性にバラツキを生じさせる等の問題点が見られた。特に、複写回数が増大し、流動摩擦の時間が長くなるにつれて増大するので、長期にわたって安定した帯電状態を維持するのが困難であった。
【0007】
そこで、正帯電性電荷調整剤(CCA)の代わりに、高分子に4級アンモニウム塩の官能基を導入した電荷増強樹脂(CCR)が提案されている(特開昭62−210472号、特開昭63−60458号、特開平3−80259号)。
しかしながら、かかる電荷増強樹脂(CCR)を単独で使用しても、帯電量の立ち上がり性に乏しいという問題が見られた。特に、高温高湿環境下では、さらに立ち上がり性が低下し、帯電性を制御することが困難であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の発明者らは、従来の課題を鋭意検討した結果、帯電量を一定範囲内に調整する機能を有する電荷調整剤(CCA)と、帯電量を増化させる機能を有する電荷増強樹脂(CCR)とを併用することにより、高温高湿等の環境下においても、帯電量の立ち上がり性を素早くし、トナーが帯電しずらいことによるトナーの耐久性劣化を防止することができることを見出し本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明の目的は、帯電量の立ち上がり性が早く、帯電量の制御が容易で、しかも耐久性等に優れた静電潜像用トナーを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、バインダー樹脂と、荷電制御剤とを含有する静電潜像用トナーにおいて、荷電制御剤として、帯電量を一定範囲内に調整する機能を有する、アジン化合物、ナフテン酸、高級脂肪酸の金属塩類、アルコキシル化アミン、およびアルキルアミドからなる群から選択される少なくとも一種の電荷調整剤(CCA)と、帯電量を増化させる機能を有する電荷増強樹脂(CCR)としての4級アンモニウム塩を有する高分子またはオリゴマーと、を併用するとともに、静電潜像用トナーの全体量を100重量%としたときに、電荷調整剤および電荷増強樹脂の合計量を3〜7重量%の範囲内の値とし、さらに、バインダー樹脂が、スチレン及び(メタ)アクリル酸エステルからなるスチレン−アクリル系樹脂であることを特徴とする静電潜像用トナーに関する。
このように構成することにより、トナーが素早く帯電し、いわゆる帯電量について立ち上がりを早くすることができ、また、耐久性、安定性に優れた正帯電特性を付与することもできる。すなわち、電荷調整剤(CCA)および電荷増強樹脂(CCR)のいずれか一方のみを用いても、素早い立ち上がり性を得ることができず、しかも長時間の帯電動作のためにトナーが劣化する傾向があるものの、このように電荷調整剤(CCA)と電荷増強樹脂(CCR)を組み合わせることにより、帯電量についての立ち上がりを相乗的に早くすることができ、しかも帯電量の制御が容易となり、高い帯電量を得ることができる。
【0012】
また、本発明の静電潜像用トナーを構成するにあたり、電荷調整剤(CCA)がアジン化合物であり、電荷増強樹脂(CCR)が4級アンモニウム塩を有するアクリル−スチレン系樹脂共重合体であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の静電潜像用トナーを構成するにあたり、静電潜像用トナーの全体量を100重量%としたときに、電荷調整剤(CCA)の添加量を、0.5〜5重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
【0014】
また、本発明の静電潜像用トナーを構成するにあたり、静電潜像用トナーの全体量を100重量%としたときに、電荷増強樹脂(CCR)の添加量を、1〜5重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明における静電潜像用トナーの実施の形態を、静電潜像用トナー(以下、単にトナーと称する場合がある。)を例に採り、具体的に説明する。
【0018】
[バインダー樹脂]
(1)種類
本発明におけるトナーに使用するバインダー樹脂の種類は、スチレン及び(メタ)アクリル酸エステルからなるスチレン−アクリル系樹脂である。
【0019】
より具体的には、バインダー樹脂としてのスチレン−アクリル系樹脂を構成する(メタ)アクリル酸エステルが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル及びメタアクリル酸ブチルからなる群から選択される少なくとも一種の化合物であることが好ましい。
【0022】
また、バインダー樹脂は、定着性が良好な観点から熱可塑性樹脂が好ましいが、ソックスレー抽出器を用いて測定される架橋部分量(ゲル量)が10重量%以下の値、より好ましくは0.1〜10重量%の範囲内の値であれば、熱硬化性樹脂であっても良い。このように一部架橋構造を導入することにより、定着性を低下させることなく、トナーの保存安定性や形態保持性、あるいは耐久性をより向上させることができる。よって、トナーのバインダー樹脂として、熱可塑性樹脂を100重量%使用する必要はなく、架橋剤を添加したり、あるいは、熱硬化性樹脂を一部使用することも好ましい。
【0024】
(2)バインダー樹脂における官能基
また、このようなバインダー樹脂として、ヒドキロキシ(水酸)基、カルボキシル基、アミノ基およびグリシドキシ(エポキシ)基から選択される少なくとも一つの官能基を分子内に有する樹脂を使用することが好ましい。
なお、これらの官能基を有しているか否かは、FT−IR装置を用いて確認することができ、さらに滴定法を用いて定量することができる。
【0025】
(3)バインダー樹脂の分子量
また、バインダー樹脂において、二つの重量分子量ピーク(低分子量ピークと、高分子量ピークと称する。)を有することが好ましい。具体的に、低分子量ピークが3、000〜20、000の範囲内であり、もう一つの高分子量ピークが300、000〜1500、000の範囲内であることが好ましい。重量分子量ピークがこのような範囲内にあれば、トナーを容易に定着させることができ、また、耐オフセット性を向上させることもできる。なお、バインダー樹脂の重量分子量は、分子量測定装置(GPC)を用いて、カラムからの溶出時間を測定し、標準ポリスチレン樹脂を用いて予め作成しておいた検量線と照らし合わせることにより、求めることができる。
【0026】
(4)バインダー樹脂のガラス転移点
また、バインダー樹脂において、ガラス転移点(Tg)を55〜70℃の範囲内の値とするのが好ましい。バインダー樹脂のガラス転移点が、55℃未満では、得られたトナー同士が融着し、保存安定性が低下する傾向がある。一方、バインダー樹脂のガラス転移点が、70℃を超えると、トナーの定着性が乏しくなる傾向がある。なお、バインダー樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、比熱の変化点から求めることができる。
【0027】
[荷電制御剤]
本発明のトナーにおいて、帯電レベルや帯電立ち上がり性(短時間で、一定の電荷レベルに帯電するかの指標)が著しく向上し、耐久性や安定性に優れ、さらには優れた流動性等が得られる観点から、電荷制御剤を添加する必要がある。
ここで、電荷制御剤には、電荷(帯電量)を一定範囲内に調整する機能を有する電荷調整剤(CCA)と、電荷(帯電量)を増化させる機能を有する電荷増強樹脂(CCR)とがある。そして、本発明のトナーにおいて、電荷調整剤および電荷増強樹脂を併用して添加する必要がある。
【0028】
(1)電荷調整剤(CCA)
本発明に使用する電荷調整剤(CCA)としては、具体的に、アジン化合物としてのピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1、2、3−トリアジン、1、2、4−トリアジン、1、3、5−トリアジン、1、2、4−オキサジアジン、1、3、4−オキサジアジン、1、2、6−オキサジアジン、1、3、4−チアジアジン、1、3、5−チアジアジン、1、2、3、4−テトラジン、1、2、4、5−テトラジン、1、2、3、5−テトラジン、1、2、4、6−オキサトリアジン、1、3、4、5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、ニグロシン化合物としてのニグロシン、ニグロシン塩、ニグロシン誘導体、ニグロシン化合物からなる染料としての、ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZ、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩類、アルコキシル化アミン、アルキルアミド等の1種または2種以上が挙げられる。特に、ニグロシン化合物は、より迅速な立ち上がり性が得られる観点から、本発明における使用に最適である。
【0029】
本発明に使用する電荷増強樹脂(CCR)としては、4級アンモニウム塩を有する樹脂またはオリゴマーが挙げられ、より具体的には、4級アンモニウム塩を有するスチレン - アクリル系樹脂が挙げられる。
【0030】
特に、4級アンモニウム塩を有するスチレン - アクリル系樹脂(スチレン - アクリル系共重合体)は、帯電量を所望の範囲内の値に容易に調節することができる観点から、本発明における使用に最適である。また、上述したスチレン-アクリル系樹脂あるいはアクリル系樹脂自体における好ましいアクリル系樹脂として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso −プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso −ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸iso −ブチルなどが挙げられる。
【0031】
また、4級アンモニウム塩としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートから第4級化の工程を経て誘導される単位が用いられる。誘導されるジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジ(低級アルキル)アミノエチル(メタ)アクリレート;ジメチルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドが好適である。
また、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基含有重合性モノマーを重合時に併用することもできる。
【0032】
(3)添加量
次に、電荷制御剤の添加量について説明する。すなわち、電荷制御剤の添加量は所望の電荷量から決定することが好ましいが、具体的に、電荷調整剤(CCA)の添加量を、0.5〜5重量%の範囲内の値とし、かつ電荷増強樹脂(CCR)の添加量を、1〜5重量%の範囲内の値するのが好ましい。それぞれこのような範囲内の値とすることにより、分散性も良好であり、また、有効に添加効果を発揮することができる。したがって、電荷調整剤の添加量を、0.5〜3重量%の範囲内の値とし、かつ電荷増強樹脂の添加量を、2〜5重量%の範囲内の値するのが好ましい。
【0033】
また、トナーの全体量を100重量%としたときに、電荷調整剤および電荷増強樹脂を合計した電荷制御剤の添加量を、3〜7重量%の範囲内の値とする。電荷制御剤の添加量が3重量%未満となると、トナーに対して、安定して帯電特性を付与することが困難となり、画像濃度が低くなったり、耐久性が低下する傾向がある。また、分散不良が起こりやすく、いわゆるカブリの原因となったり、感光体汚染が激しくなる等の傾向がある。一方、電荷制御剤の添加量が7重量%を超えると、耐環境性、特に高温高湿下での帯電不良、画像不良となり、感光体汚染等の欠点が生じやすくなる傾向がある。
【0034】
[添加剤]
(1)ワックス類
本発明のトナーにおいて、画像濃度を高め、読取ヘッドへのオフセットや像スミアリングを有効に防止することができる観点から、ワックス類を添加することが好ましい。
【0035】
ここで、添加するワックス類の種類としては、特に制限されるものではないが、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、テフロン系ワックス、フィッシャートロプッシュワックス等を使用することが好ましい。かかるワックスを添加することにより、読取ヘッドへのオフセットや像スミアリングをより効率的に防止することができる。
なお、フィッシャートロプッシュワックスは、一酸化炭素の接触水素化反応であるフィッシャートロプッシュ反応を利用して製造される、イソ(iso)構造分子や側鎖が少ない、直鎖炭化水素化合物である。
【0036】
また、フィッシャートロプッシュワックスの中でも、重量平均分子量が1000以上の値であり、かつ100〜120℃の範囲内にDSCによる吸熱ボトムピークを有するものがより好ましい。このようなフィッシャートロプッシュワックスとしては、サゾール社から入手できるサゾールワックスC1(H1の結晶化による高分子量グレード、吸熱ボトムピーク:106.5℃)、サゾールワックスC105(C1の分留法による精製品、吸熱ボトムピーク:102.1℃)、サゾールワックスSPRAY(C105の微粒子品、吸熱ボトムピーク:102.1℃)等が挙げられる。
【0037】
また、ワックス類の添加量についても特に制限されるものではないが、例えば、トナー全体量を100重量%としたときに、ワックス類の添加量を1〜5重量%の範囲内の値とするのが好ましい。ワックス類の添加量が1重量%未満となると、読取ヘッドへのオフセットや像スミアリング等を効率的に防止することができない傾向があり、一方、ワックス類の添加量が5重量%を超えると、トナー同士が融着してしまい、保存安定性が低下する傾向がある。
【0038】
(2)その他
本発明のトナーには、トナーの流動性を向上させたり、保存安定性を維持したり、あるいは多機能とする目的で、着色剤、染料、顔料、カップリング剤、シリカ粒子等を添加配合することも可能である。
特に、流動性、保存安定性を維持する目的で、平均粒径が5〜12μmの範囲内であるトナー中にコロイダルシリカ、疎水性シリカ等を使用するのが好ましい。
なお、シリカ粒子については、トナーの流動性をより制御できる観点から、トナーに対して外添することが好ましい。その場合、シリカ粒子として、シランカップリング剤を用いて正帯電極性基(アミノ基等)を導入し、シリコーンオイルにより疎水化処理した乾式シリカ微粉末を使用することが好ましい。
【0039】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、言うまでもないが、以下の説明は本発明を例示するものであり、特に理由なく、以下の説明に本発明の範囲は限定されるものではない。
【0040】
[実施例1]
(静電潜像用トナーの作製)
以下の配合比で静電潜像用トナーを作製した。
▲1▼スチレン−アクリル樹脂・・・・・・・・・・ 87.5重量部
▲2▼アジン化合物系(荷電調整剤)・・・・・・・・0.5重量部
▲3▼4級アンモニウム塩を官能基とする・・・・・・4.0重量部
スチレン系樹脂共重合体(荷電増強樹脂)
▲4▼ポリプロピレンワックス・・・・・・・・・・・3.0重量部
▲5▼カーボンブラック・・・・・・・・・・・・・・5.0重量部
【0041】
ただし、総添加量を100重量部とし、ポリプロピレンワックスを3重量部、カーボンブラックを5重量部にそれぞれ固定し、さらにスチレン−アクリル樹脂(共重合体)の添加量は、残重量部である87.5重量部を添加するものとする。
次いで、各成分を2軸押出機にて溶融混練した後、これを冷却し、粉砕、分級して平均粒径が7μmの粉体を得た。なお、荷電調整剤(CCA)と荷電増強樹脂(CCR)の配合比率は、表1に示したとおりであり、アジン化合物系(CCA)が0.5重量部、4級アンモニウム塩を官能基とするスチレン系樹脂共重合体(CCR)が1.0重量部の割合である。
得られた粉体に、シリカ(SiO2)微粉末を0.5重量%外添混合し、表面に付着させて本発明のトナーとし、以下の評価に供した。
【0042】
【表1】
【0043】
(静電潜像用トナーの評価)
得られたトナーを非磁性一成分現像剤として用い、a−Siドラム搭載京セラ製ページプリンタ(FS−3700)に収容し、画像評価パターン(ソリッドパターン)を出力させ定着性を評価した。また、併せて以下に示す方法で帯電特性、画像特性、および現像スリーブ汚れの評価をそれぞれ行った。得られた結果を表2に示す。
【0044】
(1)帯電特性
得られたトナー5重量部とフェライトキャリア100重量部とを混合し、通常環境条件(20℃、65%RH)にて、容器内で振動させて60分間摩擦帯電させた時の帯電量(μC/g)を初期の帯電量とした。結果を表2に示す。
【0045】
また、トナーを非磁性一成分現像剤として用い、上述した京セラ製ページプリンタ内に収容し、10万枚の連続印刷(通紙)を行った。その際のトナー帯電量を耐久後の帯電量とした。結果を表2に示す。なお、トナーの帯電量は、東芝ケミカル社製ブローオフ粉体帯電量測定装置を用いて測定した。
【0046】
また、本実施例では、トナーの帯電量を撹拌前(0分)、撹拌後3分、10分、20分、30分、40分後にもそれぞれ測定し、トナーにおける帯電の立ち上がり性も検討した。この結果を図1に示す。図1において、横軸に撹拌時間(分)を採ってあり、縦軸に帯電量(μC/g)を採って示してある。記号Aで示される曲線が本実施例を表している。なお、比較のため、比較例1についての同様のデータを記号Bで示す曲線で表しており、比較例2についての同様のデータを記号Cで示す曲線で表しており、さらに、記号Dで示される曲線は、実施例1において荷電調整剤(CCA)と荷電増強樹脂(CCR)をいずれも添加していない例を示している。
結果から理解されるように、荷電調整剤および荷電増強樹脂を添加した本実施例は、撹拌後3分程度で15μC/g以上の帯電量を示し、撹拌後10分程度で、30μC/gという高いレベルでもって飽和する。それに対して、荷電調整剤および荷電増強樹脂のいずれか一方を添加した系(曲線BおよびC)は、帯電量の立ち上がり性が明らかに遅く、しかも、飽和した帯電レベルの値も20〜24μC/gとかなり低いことがわかる。
【0047】
(2)画像特性
得られたトナーを非磁性一成分現像剤として用い、上述した京セラ製ページプリンタに収容し、画像特性の評価を行った。すなわち、通常環境(20℃、65%RH)にて得られた画像評価パターン(ソリッドパターン)を初期画像とし、その後、10万枚の連続印刷(通紙)を行い、画像パターンを印字して耐久画像とした。そして、マクベス反射濃度計を用いて、初期画像および耐久画像における画像濃度(印字濃度)をそれぞれ測定した。結果を表2に示す。
【0048】
また、同時に得られた初期画像および耐久画像のカブリ性を、以下の基準により、目視で行った。
○:カブリは全く観察されず、良好な状態である。
△:ややカブリの発生が観察される。
×:顕著なカブリが観察される。
【0049】
(3)定着性
定着温度を190℃に設定し、電源を切った状態で10分間冷却した後、電源を入れ(ON)、画像評価パターン(ソリッドパターン)を連続5枚印字して、測定用画像を得た。次いで、得られた画像上に、綿布で包んだ黄銅製分銅(1kg荷重)を10往復させた。この操作の前後の画像濃度をマクベス反射濃度計で測定し、その濃度の定着率(操作前濃度/操作後濃度)を求めて、以下の基準から定着性を評価した。結果を表2に示す。なお、評価紙は、クラシック・クレスト紙を用いた。
○:定着率が95以上の値である。
△:定着率が90%以上〜95%未満の値である。
×:定着率が90%未満の値である。
【0050】
(4)現像スリーブ付着性
得られたトナーを非磁性一成分現像剤として用い、上述した京セラ製ページプリンタに収容し、画像特性の評価を行った。すなわち、通常環境(20℃、65%RH)にて10万枚連続印刷し、得られた画像評価パターン(ソリッドパターン)を目視で観察し、以下の基準から現像スリーブ付着性を評価した。結果を表2に示す。
○:汚れは認められず、きれいで良好である。
△:少しの汚れが認められる。
×:かなりの汚れが認められる。
【0051】
【表2】
【0052】
[実施例2〜4、参考例5及び実施例6]
(静電潜像用トナーの作製)表1に示すように荷電調整剤(CCA)と荷電増強樹脂(CCR)の添加量をそれぞれ変えたほかは、実施例1と同様に、静電潜像用トナーを作製した。
【0053】
(静電潜像用トナーの評価)
得られた静電潜像用トナーについて、実施例1と同様に定着性および画像特性等の評価結果を行った。結果を表2に示す。
【0054】
[比較例1〜2]
(静電潜像用トナーの作製)
表1に示すように荷電調整剤(CCA)と荷電増強樹脂(CCR)のいずれか一方を添加したほかは、実施例1と同様に、静電潜像用トナーを作製した。
【0055】
(静電潜像用トナーの評価)
得られた静電潜像用トナーについて、実施例1と同様に定着性および画像特性等の評価結果を行った。結果を表2に示す。
【0056】
【発明の効果】
本発明により、バインダー樹脂と、荷電制御剤とを含有する静電潜像用トナーにおいて、荷電制御剤として、帯電量を一定範囲内に調整する機能を有する電荷調整剤(CCA)と、帯電量を増化させる機能を有する電荷増強樹脂(CCR)とを併用することにより、帯電レベルが高く、帯電量について立ち上がりが早く、しかも耐久性、安定性に優れた正帯電特性を付与することができる静電潜像用トナー(静電潜像用トナー)を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】静電潜像用トナーにおける、撹拌時間と、帯電量との関係を示す図である。
Claims (6)
- バインダー樹脂と、荷電制御剤とを含有する静電潜像用トナーにおいて、前記荷電制御剤として、
帯電量を一定範囲内に調整する機能を有する、アジン化合物、ナフテン酸、高級脂肪酸の金属塩類、アルコキシル化アミン、およびアルキルアミドからなる群から選択される少なくとも一種の電荷調整剤(CCA)と、
帯電量を増化させる機能を有する電荷増強樹脂(CCR)としての4級アンモニウム塩を有する高分子またはオリゴマーと、
を併用するとともに、
前記静電潜像用トナーの全体量を100重量%としたときに、前記電荷調整剤および前記電荷増強樹脂の合計量を3〜7重量%の範囲内の値とし、さらに、
前記バインダー樹脂が、スチレン及び(メタ)アクリル酸エステルからなるスチレン−アクリル系樹脂であることを特徴とする静電潜像用トナー。 - 前記バインダー樹脂としてのスチレン−アクリル系樹脂を構成する(メタ)アクリル酸エステルが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル及びメタアクリル酸ブチルからなる群から選択される少なくとも一種の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の静電潜像用トナー。
- 前記電荷調整剤(CCA)がアジン化合物であり、前記電荷増強樹脂(CCR)が4級アンモニウム塩を有するアクリル−スチレン系共重合体であることを特徴とする請求項1または2に記載の静電潜像用トナー。
- 前記アジン化合物が、ニグロシン、ニグロシン塩、およびニグロシン誘導体からなる群から選択される少なくとも一種のニグロシン化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の静電潜像用トナー。
- 前記静電潜像用トナーの全体量を100重量%としたときに、前記電荷調整剤の添加量を、0.5〜5重量%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の静電潜像用トナー。
- 前記静電潜像用トナーの全体量を100重量%としたときに、前記電荷増強樹脂の添加量を、1〜5重量%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の静電潜像用トナー。
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