JP3872436B2 - 静電潜像現像用トナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、レーザープリンタ等で採用されている電子写真法、静電記録法、静電印刷法等の現像プロセスにおいて用いられる静電潜像現像用トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
乾式電子写真法において、静電潜像を可視像とする際に用いられるトナーは、一般に熱可塑性結着樹脂(バインダー)、電荷制御剤、着色剤、場合によっては磁性粉体、及びその他の添加剤を予備混合後、溶融混練、粉砕、分級の工程を経て、所望の粒子径を有するトナーとして製造されている。これらトナー粒子は、該粒子表面に一定量の正または負の電荷が蓄積され、この帯電粒子が静電潜像の現像に供される。
【0003】
摩擦帯電によって、トナー粒子表面に蓄積される電荷は、静電潜像の形成に用いられる光導電性感光体の種類によって正または負のいずれかの電荷とすることが必要であり、またその時の帯電量は静電潜像をより正確に可視像化するのに十分な量とする必要がある。
【0004】
このため、電荷制御剤ないしは導電物質をトナーバインダー中に混合分散し、トナー粒子表面の電荷及び帯電量を制御するのが一般的である。このような正帯電性トナー用電荷制御剤としてはニグロシン染料が一般的に用いられている。一方、特許文献1乃至3に開示されているように、樹脂に四級アンモニウム塩等の官能基を付与した樹脂系電荷制御剤が報告されているが、帯電性のコントロールと定着性の面で必ずしも十分とは言えない。
【0005】
【特許文献1】
特開昭62−210472号公報
【特許文献2】
特開昭63−60458号公報
【特許文献3】
特開平3−80259号公報
【発明が解決しようとする課題】
近年、静電潜像形成のための光導電性感光体としてセレン感光体、有機光導電性感光体にかえて、無公害でかつ高い高感度を有し、さらにビッカース強度が1,500〜2,000と非常に硬い等、多くの優れた特性を有するアモルファスシリコン感光体(以下、a−Si感光体とする)の使用が実用化されてきており、このa−Si感光体上に形成される静電潜像の現像には、良好なる正帯電性のトナーを用いることが望まれている。さらにまた、特にカラープリンタへの対応には、着色剤以外のトナー成分は特定色を有せず、無色透明で濁り等がなく、任意の色調に着色可能な正帯電性のトナーであることが望まれている。
【0006】
しかし、上記した従来の技術は、正帯電性トナー用電荷制御剤としてニグロシン染料が一般的に用いられているため、この電荷制御剤は結着樹脂であるトナーバインダーとの相溶性が悪く、この結果、得られるトナーの分散性に悪影響を及ぼし、また、透明性に乏しく、カラープリンタに対応させて任意に着色しようとした場合、鮮明な色調のカラー印字が得られないという大きな問題点がある。また、正電荷制御剤はトナーバインダー中に、分散状態でしか存在しない為、トナー粒子製造の際の粉砕工程で、あるいは、トナー粒子表面に電荷を蓄積する際のプリンタ内での流動摩擦において、トナー粒子表面層に存在する電荷制御剤の分散粒子が離脱し、トナー粒子の帯電量に変化を生じさせたり、トナー粒子個々の帯電性にバラツキを生じさせる等の問題点がある。特にこの問題点は、プリント回数の増大、すなわち、流動摩擦の時間が長くなるにつれて増大するので、長期にわたって安定した帯電状態を維持するのが困難である。
【0007】
また、特許文献1乃至3にあるような樹脂系電荷制御剤が報告されているが、トナーバインダーとの関係が不明瞭であるがために、本来、樹脂系電荷制御剤の最も有効である相溶性が不充分であり、また定着性も向上しない。本発明は、前述の問題点を解決するためになされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記の問題点を解決するために、本発明の静電潜像現像用トナーは、ポリスチレン系樹脂を主トナーバインダーとし、四級アンモニウム塩を官能基とするスチレン系樹脂共重合体を電荷制御剤とし、該トナーバインダーの分子量分布の最大ピークの重量平均分子量が5,000〜10,000の範囲内、該電荷制御剤の分子量分布の最大ピークの重量平均分子量が10,000〜15,000の範囲内とし、前記電荷制御剤の分子量分布の最大ピークの重量平均分子量を前記トナーバインダーの分子量分布の最大ピークの重量平均分子量より大きくすることを特徴とする。
【0009】
本発明の静電潜像現像用トナーは、上記のようになっており、該電荷制御剤は結着樹脂であるトナーバインダーとの相溶性が良好であるため、得られるトナーの定着性は向上し、また、トナーバインダーに耐久性、安定性に優れた正帯電特性を付与し、同時にトナーバインダー中に透明ないし淡色透明な状態で相溶するので、カラープリンタにも好適に対応し得るものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のトナーは、ポリスチレン系樹脂を主トナーバインダー成分とする。ポリスチレン系樹脂としては、スチレンの単独重合体でも、スチレンと共重合可能な他のモノマーとの共重合体でもよい。共重合モノマーとしては、p−クロルスチレン;ビニルナフタレン;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンなどのエチレン不飽和モノオレフィン類;塩化ビニル、臭化ビニル、弗化ビニルなどのハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドテシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミドなどの他のアクリル酸誘導体;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリデンなどのN−ビニル化合物などがあり、これら1種または2種以上をスチレン単量体と共重合させることができる。また、架橋剤を用いて架橋系のバインダーとすることもできる。
【0011】
トナーバインダーは、少なくとも2つ以上の分子量分布ピークを示し、定着強度を左右する重量平均分子量が3,000〜15,000の幅でピークを有する分布と、重量平均分子量が3×105 〜15×105 の耐オフセット性の向上の目的で分布を有するピークとから主に構成されている。また、トナーバインダーの重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnが10以上のものがよい。10未満では、定着性、耐オフセット性の双方を十分に満足できない。また、トナーバインダー樹脂のガラス転移点は55〜70℃の範囲内にあるとよい。
【0012】
55℃未満では保存安定性が悪く、70℃を越えると定着性に悪影響を及ぼす。該トナーバインダーの分子量分布の最大ピークの重量平均分子量が3,000未満、または、該電荷制御剤の分子量分布の最大ピークの重量平均分子量が3,000未満では、定着時にオフセットが発生し易くなり、また、トナーの使用環境温度(5〜50℃)での保存安定性が悪く、ケーキングを生じる。逆に、該トナーバインダーの分子量分布の最大ピークの重量平均分子量が15,000より大きく、または、該電荷制御剤の分子量分布の最大ピークの重量平均分子量が20,000より大きくなると、トナーバインダーと電荷制御剤との相溶性が悪化し、均一な分散が得られないため、カブリ、感光体汚染、定着不良等が認められるようになる。さらに、本発明では、電荷制御剤の分子量分布の最大ピークの重量平均分子量が、トナーバインダーの分子量分布の最大ピークの重量平均分子量よりも大きいことが必要である。特に、後述する実施例1乃至4に示すように、トナーバインダーの分子量分布の最大ピークの重量平均分子量が5,000〜10,000の範囲内、該電荷制御剤の分子量分布の最大ピークの重量平均分子量が10,000〜15,000の範囲内とすることが好ましい。
【0013】
この条件が満たされないと、定着性を向上させる機能が見い出せない。また、粘度が低くなり、トナー製造時に均一に制御剤をトナー中に分散させることができなくなる。
【0014】
また、ポリスチレン系樹脂は他のトナーバインダー樹脂を併用することもできる。これら他のトナーバインダー樹脂としては、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラールなどが用いられる。トナーバインダー樹脂は、トナー中に50〜95重量%含有されるのが好適であり、より好ましくは60〜95重量%である。
【0015】
四級アンモニウム塩を官能基とするスチレン系樹脂共重合体正電荷制御剤のスチレン系樹脂としては、スチレンまたはα−メチルスチレンあるいはこれら両者の組み合わせから誘導される繰り返し単位が用いられ、また、上記繰り返し単位の一部を(メタ)アクリル酸アルキルエステルから誘導される繰り返し単位と代替することができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸iso−ブチルなどが挙げられる。また、四級アンモニウム塩としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートから第四級化の工程を経て誘導される単位が用いられる。誘導されるジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジ(低級アルキル)アミノエチル(メタ)アクリレート;ジメチルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドが好適である。
また、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基含有重合性モノマーを重合時に併用することもできる。
【0016】
電荷制御剤は、トナー中に1〜10重量%含有されるのが好適であり、より好ましくは2〜7重量%である。1重量%未満では、必要とする良好な正帯電性が得られ難く、トナー粒子間に帯電量のばらつきが生じ定着画像が不鮮明となり、また、感光体汚染が激しくなる等の欠点が生じ易い。逆に、10重量%より多くなると、耐環境性の低下、相溶性の低下、オフセット発生、感光体汚染等の欠点が生じ易くなる。また、他の電荷制御剤と組み合わせることによって、特定の機能を高めることも可能である。
【0017】
本発明のトナーには、以上に述べたトナーバインダー、電荷制御剤に加えて、必要に応じて便宜、特性改良剤として、耐オフセット性をさらに向上させる目的で、場合により離型性を有する物質、例えばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等の低分子量ポリオレフィンワックス、テフロン(R)系のワックス等が使用できる。本発明のトナーは、さらにトナーの流動性、保存安定性を維持する目的で、コロイダルシリカ、疎水性シリカ等でトナー粒子表面を処理することができる。
また、マグネタイト等の磁性粉体を分散させて磁性トナーとすることもできる。本発明のトナーは、フェライトキャリア等の現像剤キャリアと混合して二成分現像剤としてもよく、また、単独で一成分現像剤とするなど便宜の方法で使用できる。本発明のトナーは、平均粒径5〜12μm程度が好適である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1〜4,比較例1〜4
スチレン/アクリル樹脂 89重量部
電荷制御剤 3重量部
ポリプロピレンワックス 3重量部
カーボンブラック 5重量部
上記各成分を表1に示した性状および組成なる混合物を2軸押出機にて溶融混練した後、これを冷却し、粉砕、分級して平均粒径7μmの粉体を得た。この粉体にシリカ(SiO2)を0.5%外添、混合し表面に付着させて本発明の実施例および比較例のトナーを作製した。このトナー5重量部とフェライトキャリア100重量部を混合して二成分現像剤とし、a−Siドラム搭載京セラ製ページプリンタを用い、直径25mm、線速100mm/secの定着用熱ローラにより定着パターンソリッド画像を定着させ定着性を評価し、併せて、相溶性(分散性)、画像特性、帯電特性、および保存安定性の評価を行い、その結果を表2に示した。尚、トナーバインダーと四級アンモニウム塩を官能基とするスチレン系樹脂共重合体電荷制御剤、双方の最大ピークの重量平均分子量を数種類組み合わせ、また、正電荷制御剤として、ニグロシン染料を比較のために使用した。これらの評価方法は、以下の通りである。
【0019】
(1)定着性
定着温度を180℃に設定し、電源OFFの状態で10分間冷却した後、10℃−20%RHの低温低湿度環境に放置して電源ONし、定着パターンソリッド画像を連続5枚印字し、測定用画像を得る。この画像を、綿布で包んだ黄銅製分銅(1kg)の荷重をかけて、10往復擦る。この操作の前後の画像濃度をマクベス反射濃度計で測定し、その濃度の比率を求めて定着性とする。評価紙は、ギルバートボンド紙を用いる。
○:定着率が95%以上。
△:定着率が90%以上〜95%未満。
×:定着率が90%未満。
【0020】
(2)相溶性(分散性)
上記各成分を表1に示した性状および組成なる混合物を2軸押出機にて溶融混練、冷却したものをミクロトームでダイヤモンドナイフを用いて薄片を作製し、これを光学顕微鏡にて観察する。
○:凝集物が認められず、優れた相溶性(分散性)。
△:わずかに凝集物を認めるが、良好な相溶性(分散性)。
×:凝集状に存在し、相溶性(分散性)が悪い。
【0021】
(3)画像特性
上記トナー5重量部とフェライトキャリア100重量部を混合して二成分現像剤とし、a−Siドラム搭載京セラ製ページプリンタを用い、画像特性の評価を行った。通常環境(20℃、65%RH)にて初期時に画像評価パターンを印字して初期画像とし、その後、5万枚連続通紙を行い再度画像評価パターンを印字して耐久画像とし、ソリッド画像をマクベス反射濃度計を用いて測定し、同時にカブリを目視観察することにより画像特性評価を行った。
○:カブリは良好。
△:ややカブリを生じている。
×:カブリはひどい。
【0022】
(4)帯電特性
上記トナー5重量部とフェライトキャリア100重量部を混合して二成分現像剤とし、通常環境にて、60分間摩擦帯電させた時の帯電量(μC/g)を初期の帯電量、また、その後5万枚連続通紙を行った時の帯電量を耐久後の帯電量とし、それぞれを東芝ケミカル社製ブローオフ粉体帯電量測定装置を用いて測定する。
【0023】
(5)保存安定性
ガラス製容器にトナーを詰め、50℃で100時間放置保存後のケーキング発生状態を評価する。
○:ケーキングは認められない。
△:少しのソフトケーキングが認められる。
×:かなりのハードケーキングが認められる。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、上記特定の分子量分布を有する四級アンモニウム塩を官能基とするスチレン系樹脂共重合体電荷制御剤を用いることにより、上記特定の分子量分布を有するポリスチレン系樹脂トナーバインダーとの相溶性が良好であるため、得られるトナーの定着性は向上し、また、トナーバインダーに耐久性、安定性に優れた正帯電特性を付与することができるという効果を期待することが出来る。また、同時にトナーバインダー中に透明ないし淡色透明な状態で相溶することができるので、カラートナー化した場合には鮮明な色調の着色トナーが得られる等、極めて優れた効果がある。
Claims (1)
- ポリスチレン系樹脂を主トナーバインダーとし、四級アンモニウム塩を官能基とするスチレン系樹脂共重合体を電荷制御剤として添加したトナーにおいて、該トナーバインダーの分子量分布の最大ピークの重量平均分子量が5,000〜10,000の範囲内、該電荷制御剤の分子量分布の最大ピークの重量平均分子量が10,000〜15,000の範囲内とし、前記電荷制御剤の分子量分布の最大ピークの重量平均分子量を前記トナーバインダーの分子量分布の最大ピークの重量平均分子量より大きくすることを特徴とする静電潜像現像用トナー。
Priority Applications (1)
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JP2003002365A JP3872436B2 (ja) | 2003-01-08 | 2003-01-08 | 静電潜像現像用トナー |
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Family Applications (1)
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JP2003002365A Expired - Lifetime JP3872436B2 (ja) | 2003-01-08 | 2003-01-08 | 静電潜像現像用トナー |
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- 2003-01-08 JP JP2003002365A patent/JP3872436B2/ja not_active Expired - Lifetime
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