JP4114314B2 - リチウムマンガン複合酸化物、リチウム二次電池用正極材料、正極、及びリチウム二次電池、並びにリチウムマンガン複合酸化物の製造方法 - Google Patents
リチウムマンガン複合酸化物、リチウム二次電池用正極材料、正極、及びリチウム二次電池、並びにリチウムマンガン複合酸化物の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スピネル型リチウムマンガン複合酸化物に関するものである。特にサイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池の正極活物質として好適なリチウムマンガン複合酸化物に関する。
【0002】
【従来の技術】
正極及び負極が互いにリチウムイオンを吸蔵・放出することによって電池として機能するリチウムイオン二次電池は、高電圧・高エネルギー密度を有し、携帯電話、携帯用パソコン、ビデオカメラ、電気自動車等の用途に好適に用いることができる。
リチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、層状複合酸化物であるLi1-xCoO2(0≦x≦1)が4V級の高電圧を得ることができ、且つ高いエネルギー密度を有することから、既に広く実用化されている。一方で、原料であるCoは資源的に乏しく高価である。従って、リチウムイオン二次電池の需要が今後も大幅に拡大してゆく可能性を考えると、原料供給の面で不安があると共に、更に価格が高騰することも有り得る。そこで、Li1-xCoO2に変わり得る正極活物質として安価なMnの複合酸化物を正極活物質として利用することが考えられている。
【0003】
マンガンの複合酸化物の中でも、スピネル型立方晶リチウムマンガン複合酸化物は、M.M.Thackerayが、Liイオンが出し入れ可能であることを報告(Research Bulletin,Vol.18,pp461−462(1989))して以来、リチウム二次電池の正極材料として種々検討されてきた。スピネル型立方晶リチウムマンガン複合酸化物は一般にLiMn2O4の化学式で表され、スピネル型の結晶構造を有す。この複合酸化物を正極活物質としたリチウム二次電池は、Liの出入りによりLiMn2O4(放電状態)とλ−MnO2(充電状態)の間で組成が変化する。立方晶以外にこれが歪んだ正方晶及び斜方晶も存在する。
【0004】
しかしながら、リチウムマンガン複合酸化物は、特に50〜60℃といった高い温度で繰り返し充放電を行った際の容量劣化が前述のLi1-xCoO2と比較して大きい点で問題があった。この点に関しては、(1)リチウムマンガン複合酸化物の結晶性を改善する、(2)結晶構造を安定化するために、Mnの一部を他の金属元素で置換することにより容量劣化を抑制する等の改良が提案されている。
特に、前記(2)の方法による、他元素で置換したリチウムマンガン複合酸化物(以下、このようなリチウムマンガン複合酸化物を「置換リチウムマンガン複合酸化物」ということがある)は、単純なリチウムマンガンとの2種を含む複合酸化物(無置換)に比べ、結晶構造が安定化し、その結果充放電による容量劣化を抑制することができるので、極めて有効な方法である。しかしながら、近年の要求性能レベルの向上と相俟って、これらの方法においても、未だ決して充分とは言えないのが現状であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる事情を鑑みなされたもので、その目的は、リチウム二次電池に好適なリチウムマンガン複合酸化物、特に置換リチウムマンガン複合酸化物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、サイクル特性の優れたリチウム二次電池、及びこれに用いる正極を提供することにある。本発明のさらに他の目的はリチウム二次電池に好適な置換リチウムマンガン複合酸化物の製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、置換リチウムマンガン複合酸化物の場合、単純なリチウムとマンガンとの2種からなる無置換のリチウムマンガン複合酸化物とは異なり、その製法によって微妙にその構造が異なり、それによって性能差が生じることを見出した。即ち、本発明者らの知見によれば、従来の通常の製法である、空気中でリチウム源とマンガン源との含む原料を焼成する方法では十分ではなく、低酸素濃度雰囲気での焼成と高酸素濃度雰囲気での焼成との2段階で焼成を行うと、良好な性能を与える置換リチウムマンガン複合酸化物を得ることができる。また、本発明者らは、このような良好な性能を与えるリチウムマンガン複合酸化物は、 7Li−NMRにより特定できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明の要旨は、リチウムとマンガンと、リチウム及びマンガンとは異なる他金属元素とを含有するスピネル型リチウムマンガン複合酸化物であって、組成条件が次式(A)
【0008】
【数3】
(x−1)+y+z=2 …(A)
【0009】
(ただし、x、z及びyは、それぞれ順にリチウム、マンガン及び他金属元素のモル比であり、x=1〜1.5、y=0.005〜0.5、z=残部を表す。)を満足し、
且つ下記測定方法での 7Li−NMR測定で得られる5±40ppmのメインピーク強度と525±40ppmのメインピーク強度との比(I0ppm/I500ppm)が次式(B)
【0010】
【数4】
I0ppm/I500ppm≦0.65y+0.02 …(B)
【0011】
の範囲にあることを特徴とするリチウムマンガン複合酸化物に存する。
<測定方法>
4mm Magic Angle Spinning(MAS)プローブを利用する。また、測定パルスシーケンスとしてπパルスエコー法を用いる。
測定条件:
共鳴周波数;155.43MHz
観測範囲;1MHz
MAS回転数;15kHz
測定温度;25℃
化学シフト標準;LiCl0.1M水溶液(0ppm)
測定パルスシーケンス;πパルスエコー法 *1
測定パルス幅;1μs for 90、2μs for 180度
エコー待ち時間τ;67μs(MAS回転数15kHzの逆数)
繰り返し時間;64秒
*1 90度パルス−待ち時間τ−180度(π)パルス−待ち時間τ−観測得られたNMRスペクトルに対して以下の方法でピーク分割を行い、最終的なピーク強度を得る。
ピーク分割条件:
フィッティング関数;Lorentz型
ベースライン補正;オフセット
その他;5±40ppmと525±40ppmとのそれぞれに、一本メインピークがあると仮定し、その他をサイドバンドとしてフィッティングを行う。
なお、リチウムマンガン複合酸化物の製法については、例えば、下記のような公知文献がある。
【0012】
特開平7−245106号公報には、MnO2とLiNO3を窒素ガス下、低温(500℃前後)で焼成することにより2m2/g以上の比表面積の大きな結晶性スピネル構造のLixMn2O4を製造する方法を開示している。該公報には、比表面積の大きな結晶性スピネル構造のLixMn2O4の使用が、高い放電速度での放電容量及びサイクル特性を向上させると記載されている。
【0013】
また、特開平10−247497号公報には、リチウム塩、マンガン塩、ポリビニルブチラール(キレート化剤)溶液からゲルを製造し、200〜900℃で5〜30時間不活性気体または空気雰囲気下で焼成するリチウム二次電池用陽極活物質としてのLixMn2O4の製造方法を提案している。
しかしながら、上記いずれの先行技術も、本発明を示唆するものではない。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のリチウムマンガン複合酸化物は、リチウムとマンガンとリチウム及びマンガンとは異なる他金属元素とを含有するスピネル型リチウムマンガン複合酸化物である。ここで、x、z及びyをそれぞれ順にリチウム、マンガン及び他金属元素のモル比としたとき、下記の組成条件を満足する。
【0015】
【数5】
(x−1)+y+z=2 (即ち、x+y+z=3) …(A)
x=1〜1.5
y=0.005〜0.5
【0016】
スピネル型のリチウムマンガン複合酸化物は、その基本的な組成式として、LiMn2O4で表すことができる。これらにならって、上記組成条件を表現すれば、本発明のリチウムマンガン複合酸化物は、下記一般式(1)で表すことができる。
【0017】
【化2】
【0018】
上記一般式(1)中、αは0≦α≦0.5の範囲の数である。αは、一般にマンガンサイトに置換するリチウム原子の量に相当し、(1+α)が全体のリチウム原子の量に相当する。αは、前記(A)式のxの値とα=x−1の関係にある。αの値は、あまりに大きいと電池容量が低下しすぎるので、通常0.4以下、好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.08以下である。ただし、あまりに小さいのは現実的に得難く、また結晶構造が安定化しにくいので、通常0.001以上、好ましくは0.01以上である。
【0019】
上記一般式(1)中、yは、(A)式におけるyと同義であり、0.005≦y≦0.5の範囲の数である。yは、一般にマンガンサイトに置換する他金属元素Mの量に相当する。yの値は、あまりに大きいと電池容量が低下しすぎるので、通常0.4以下、好ましくは0.35以下、さらに好ましくは0.3以下である。ただし、あまりに小さいと充放電による容量低下が顕著になるので、通常0.01以上、好ましくは0.02以上、さらに好ましくは0.05以上、最も好ましくは0.07以上である。
【0020】
上記一般式(1)中、δは−0.1≦δ≦0.1、好ましくは−0.05≦δ≦0.05の範囲の数である。δは、リチウムマンガン結晶中のリチウムマンガン複合酸化物の不定比性に由来する酸素欠損量又は酸素過剰量に相当する。
上記一般式において、他金属元素M(置換元素とも称することがある)は、リチウム及びマンガン以外の金属元素を表す。このような他金属元素Mとしては、Al、Fe、Ga、Bi、Sn、V、Cr、Co、Ni、Cu、Zn、Mg、Ti、Ge、Nb、Ta、Zr、Li等の各種の金属元素を挙げることができる。置換元素Mは、好ましくは、Al、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga及びZrであり、さらに好ましくはAl、Fe、Ga、Cr、Co、Mg及びTiである。これらの置換元素を複数種併用することもできる。この中で、最も好ましいのはアルミニウムである。
【0021】
本発明のリチウムマンガン複合酸化物の平均1次粒径は、通常50μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、最も好ましくは4μm以下であり、また通常0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上である。1次粒径が小さすぎると表面での副反応等が起こりやすくなるためにサイクル特性等が低下する傾向にあり、大きすぎるとレート特性や容量が低下する傾向にある。平均1次粒径は、SEM観察によって測定することができる。また、リチウムマンガン複合酸化物の平均2次粒径は、通常100μm以下、好ましくは70μm以下、さらに好ましくは50μm以下、最も好ましくは20μm以下であり、また、通常0.1μm以上、好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上、最も好ましくは1μm以上である。2次粒径が小さすぎるとサイクル特性や安全性が低下する傾向にあり、大きすぎると内部抵抗が大きくなって十分な出力が出にくくなる傾向にある。平均2次粒径は粒度分布計で測定することができる、さらに、リチウムマンガン複合酸化物の窒素吸着による比表面積は、通常0.1m2/g以上、好ましくは0.3m2/g以上であり、また通常5m2/g以下、好ましくは3m2/g以下である。比表面積が大きすぎると表面での副反応等が起こりやすくなるためにサイクル特性等が低下する傾向にあり、小さすぎるとレート特性や容量が低下する傾向にある。
【0022】
本発明の大きな特徴は、上記のような置換リチウムマンガン複合酸化物が、特定の 7Li−NMRスペクトルを有する点にある。具体的には、7Li−NMR測定で得られる5±40ppmのメインピーク強度と525±40ppmのメインピーク強度との比(I0ppm/I500ppm)が
【0023】
【数6】
I0ppm/I500ppm≦0.65y+0.02
【0024】
好ましくは
【0025】
【数7】
I0ppm/I500ppm≦0.65y+0.01
【0026】
さらに好ましくは、
【0027】
【数8】
I0ppm/I500ppm≦0.65y
【0028】
の範囲にあるものである。
<測定方法>
4mm Magic Angle Spinning(MAS)プローブを利用する。また、測定パルスシーケンスとしてπパルスエコー法を用いる。
測定条件:
共鳴周波数;155.43MHz
観測範囲;1MHz
MAS回転数;15kHz
測定温度;25℃
化学シフト標準;LiCl0.1M水溶液(0ppm)
測定パルスシーケンス;πパルスエコー法 *1
測定パルス幅;1μs for 90、2μs for 180度
エコー待ち時間τ;67μs(MAS回転数15kHzの逆数)
繰り返し時間;64秒
*1 90度パルス−待ち時間τ−180度(π)パルス−待ち時間τ−観測得られたNMRスペクトルに対して以下の方法でピーク分割を行い、最終的なピーク強度を得る。
ピーク分割条件:
フィッティング関数;Lorentz型
ベースライン補正;オフセット
その他;5±40ppmと525±40ppmとのそれぞれに、一本メインピークがあると仮定し、その他をサイドバンドとしてフィッティングを行う。
【0029】
なお、上記ピーク強度比I0ppm/I500ppmは、置換元素Mの結晶構造内における不均一性に対応すると推定される。
このような特定のピーク強度比を有する置換リチウムマンガン複合酸化物は、これをリチウム二次電池の活物質として使用した場合に、優れた電池特性、特に高温でのサイクル特性を示す。
【0030】
このような特定のピーク強度比を有する置換リチウムマンガン複合酸化物は、原料を単に空気中で焼成する従来の方法では製造するのが困難であり、焼成方法として特定の方法を採用することにより容易に製造することができる。具体的には、本発明の特定のピーク強度比を有する置換リチウムマンガン複合酸化物は、リチウム源とマンガン源とリチウム及びマンガンと異なる他金属元素源とを含む原料を、低酸素濃度雰囲気での焼成の後、高酸素濃度雰囲気で焼成することによって得ることができる。
【0031】
また、上記特定のピーク強度比を有する置換リチウムマンガン複合酸化物を得るためには、上記焼成条件以外に、置換元素Mを結晶中によく均一化させるような製造条件を選択することも重要である。例えば、焼成に供する原料中の置換元素源を原料中にできるだけよく分散させておくことや、焼成に供する原料の粒径をできるだけ小さくすることが重要である。これらの具体的方法や具体的条件については後述する。
【0032】
原料として用いられるリチウム源としては、例えば、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム、ハロゲン化リチウム等のリチウムの無機塩や、酢酸リチウム、シュウ酸リチウム等のリチウムの有機酸塩を用いることができる。また、酸化リチウムを用いることもできる。これらは、水和物であってもよく、また、電離している状態で用いることもできる。好ましくは炭酸リチウム、水酸化リチウムである。無論、リチウム源として複数種を併用することもできる。
【0033】
もう1つの原料であるマンガン源としては、例えば、MnO2、Mn2O3、Mn3O4、MnO等のマンガン酸化物、マンガン水酸化物、オキシ水酸化マンガン、硝酸マンガン、炭酸マンガン等のマンガンの無機酸塩、酢酸マンガン等のマンガンの有機酸塩を用いることができる。これらは水和物であってもよく、また電離している状態で用いることもできる。好ましくはマンガン酸化物、オキシ水酸化マンガンである。また、マンガン源のマンガン価数は3価が好ましい。マンガン源として複数種を併用することができる。
リチウム源とマンガン源の反応を行う際のLi/Mn比率は、モル比で0.4〜0.6が好ましく、より好ましくは0.45〜0.55である。
【0034】
他金属元素Mを含む他金属元素源(置換元素源ということもある)をリチウム源とマンガン源と共存させる。置換元素源としては、置換元素Mの酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、有機酸塩、塩化物、硝酸塩、硫酸塩等の無機酸塩を用いることができる。これらは水和物であってもよく、また、電離した状態で使用することもできる。
これらの原料におけるLi/(Mn+置換元素M)のモル比は、通常0.4〜0.6、好ましくは0.45〜0.55、さらに好ましくは0.5〜0.55である。原料中のLiとMnと置換元素Mとのモル比は、概ね最終的なリチウムマンガン複合酸化物におけるLiとMnと置換元素Mとのモル比を決める。
【0035】
原料は通常焼成前に混合処理に供される。混合方法は特に限定されるものではなく、乾式でも湿式でも良く、例えばボールミル、振動ミル、ビーズミル等の装置を使用する方法が挙げられる。水酸化リチウム等の水溶性の原料は水溶液として他の固体の原料と混合しても良い。
【0036】
湿式による混合は、より均一な混合が可能であり、上記ピーク強度比を前記の範囲に制御しやすいので好ましい。この再、より均一に混合できる点でリチウム源、マンガン源及び置換元素源の少なくとも一種を水等の媒体中に溶解させるのがより好ましい。
混合の時間は、混合方法により異なるため一概には言えないが、原料が粒子レベルで均一に混合されていれば良く、例えばボールミル(乾式又は湿式)では通常1時間〜2日程度、ビーズミル(湿式連続法)では通常滞留時間0.1〜1時間程度である。
【0037】
原料の湿式混合を行なった場合、焼成前に通常これを乾燥する。乾燥方法としては、噴霧乾燥が好ましい。噴霧乾燥によってより均一な原料を得ることができるので、より容易に前記ピーク強度比を前記の範囲に制御することができる。
焼成処理前の原料は、できるだけ小さい粒径の粉末とするのが好ましい。具体的には、通常10μm以下、好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下とする。その結果、得られるリチウムマンガン複合酸化物の球状度を上げることができ、また焼成時間を短縮することができる。さらには、より容易に前記ピーク強度比を前記の範囲に制御することができる。ただし、あまりに小さい粒径を得るのは、工業的には困難なことが多いので、通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上とする。
【0038】
なお、前記のような噴霧乾燥を用いた原料調製においては、焼成前の原料の粒径は、噴霧乾燥に供されるスラリー中の未溶解固形物の粒径によって制御することができる。従って、噴霧乾燥に供されるスラリー中の未溶解固形物の平均粒子径は通常2μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下であり、また通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上とする。
【0039】
原料の焼成処理においては、まず低酸素濃度雰囲気で焼成される。低酸素濃度雰囲気とは、焼成時の原料近傍の気相中の酸素含有量が10容量%〜0%を意味し、好ましくは5容量%以下である。この様な低酸素濃度雰囲気は、具体的には、窒素、またはアルゴン、ヘリウム等の不活性ガス、水蒸気、一酸化炭素、二酸化炭素等を焼成炉内にガスとして流通させる方法や、上記のガスを発生する物質(例えば水、炭酸塩)や炭酸等の酸素と反応する物質を炉内に設置あるいは供給することにより形成することが出来る。
【0040】
低酸素濃度雰囲気で焼成された原料混合物は、次いで、高酸素濃度雰囲気で焼成される。高酸素濃度雰囲気とは、焼成時の原料近傍の気相中の酸素含有量が15容量%以上であることを意味し、好ましくは20容量%以上である。高酸素濃度雰囲気としては、具体的には大気(空気)或いは酸素もしくは酸素を含有する混合ガスを炉内に流通させるか、酸素を発生する物質(例えば硝酸塩)を炉内に設置あるいは供給することにより形成することが出来る。
【0041】
低酸素濃度雰囲気から、高酸素濃度雰囲気に切り替えるには、例えば、焼成中に炉内に流通させるガスを変更する方法、PSA等の手段により流通ガス中の酸素含有量を変化させる方法、低酸素濃度雰囲気の炉内で焼成した後、高酸素濃度雰囲気の炉内で焼成する方法等がある。
焼成には、例えば箱形炉、管状炉、トンネル炉、ロータリーキルン等を使用することができる。焼成温度は、通常500℃以上、好ましくは600℃以上、さらに好ましくは800℃以上であり、また通常1000℃以下、好ましくは950℃以下、さらに好ましくは920℃以下である。焼成温度が低すぎると、原料の反応速度が遅くあまり実用的ではない。一方、高すぎる温度では酸素を含有する雰囲気においてもスピネル型リチウムマンガン複合酸化物が不安定となり好ましくない。焼成は一定温度で行なってもよくまた、変化させながら行なってもよい。
【0042】
焼成をより均一に行う為には、常温から上記の焼成温度まで昇温する際に、例えば毎分5℃以下の昇温速度で徐々に昇温するか、或いは途中で一旦昇温を停止し、一定温度で保持した後、昇温することが望ましい。又焼成後も徐々に、例えば毎分5℃以下の冷却速度で常温まで冷却することが好ましい。
【0043】
焼成時間は、通常1時間以上100時間以下の広い範囲から選択される。焼成時間が短すぎると結晶性の良い複合酸化物を得ることが出来ず、又長すぎるのは実用的ではない。しかして焼成時間は原料粒子径、焼成温度等の条件により異なり、一概には決められないが、例えば原料平均粒子径1μmでは約5時間、10μmでは約1日である。
【0044】
本発明においては、低酸素濃度雰囲気での焼成によって、Mn3O4やLiMnO2のような、次に行われる高酸素濃度雰囲気での焼成条件下では不安定な物質を得るのが好ましい。換言すれば、焼成処理の際に、高酸素濃度雰囲気下においては不安定なMn3O4やLiMnO2のような不安定な化合物を経由するのが好ましい。
Mn3O4やLiMnO2は、高酸素濃度雰囲気下において、例えば下記のような反応により、スピネル型のリチウムマンガン複合酸化物を生成する。
【0045】
【化3】
Mn3O4+3LiMnO2+O2 → 3LiMn2O4
【0046】
このような不安定な中間相を経由して得られたスピネル型リチウムマンガン複合酸化物は、1次粒径が大きく、且つ1次粒子が密に焼結した2次粒子からなるためより低比表面積とすることができると考えられる。また、このような不安定な中間相を経由して得られたスピネル型リチウムマンガン複合酸化物は、結晶中の置換元素Mの結晶構造内における均一性が良好であり、その結果、高温でのサイクル特性等、優れた電池性能を発揮することができると考えられる。
【0047】
得られたリチウムマンガン複合酸化物を正極材料(活物質)として、電極さらには電池を作製することができる。例えば、電池の一例としては、正極、負極、電解質を有するリチウム二次電池が挙げられる。具体的には、正極と負極との間には電解質が存在し、かつ必要に応じてセパレーターが正極と負極が接触しないようにそれらの間に配置された二次電池を挙げることができる。
【0048】
正極は、本発明で得られたリチウムマンガン複合酸化物(正極材料)とバインダーとを含有する。これに必要に応じて導電剤を含有していてもよい。正極は、上記の材料を有する合剤に、これらを均一に分散させる為の溶媒を一定量で混合して塗料とした後、集電体上に塗布・乾燥することによって得ることができる。
【0049】
ここで用いられる導電剤としては、天然黒鉛、人造黒鉛、アセチレンブラック等を挙げることができる。また、バインダーとしてはポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロセルロース等を挙げることができる。さらにまた、分散用の溶媒としてはN−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。正極に用いられる集電体の材質としては、アルミニウム、ステンレス等が挙げられる。好ましくはアルミニウムである。正極は、通常、集電体上に正極合剤層を形成後、通常、ローラープレス、その他の手法により圧密する。
【0050】
一方、負極としては、天然黒鉛、熱分解炭素等の炭素材料をCu等の集電体上に塗布したもの、或いはリチウム金属箔、リチウム−アルミニウム合金等が使用できる。好ましくは、炭素材料を使用する。
リチウム二次電池に使用する電解質は通常非水電解液であり、電解塩を非水系溶媒に溶解してなる。電解塩としてはLiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiBr、LiCF3SO3等のリチウム塩が挙げられる。また、非水系溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。これら電解塩や非水系溶媒は単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
電解質は、上記電解液であってもよく、従来公知の各種の固体電解質やゲル状電解質を使用することもできる。
【0051】
リチウム二次電池に用いられるセパレーターとしては、テフロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の高分子、又はガラス繊維等の不織布フィルター、或いはガラス繊維と高分子繊維の複合不織布フィルター等を挙げることができる。
【0052】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
実施例1
[リチウムマンガン複合酸化物の製造]
Mn2O3及びAlOOHをMn:Alのモル比が1.88:0.12となるように秤量した。この原料粉100重量部に対して、純水233重量部とポリカルボン酸アンモニウム系分散剤2重量部を加えた後、ビーズミルにて湿式粉砕して、混合しスラリーを得た。得られたスラリー中に分散したMn2O3及びAlOOHの混合物の粒度分布を(株)堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910を使用して測定した結果、平均粒子径は0.48μm、篩下90%粒子径は0.65μmであった。
【0053】
このスラリーにLiOH・H2Oを添加して溶解させて、Li:Mn:Alのモル比が1.04:1.88:0.12(x=1.026、y=0.118、z=1.855)の原料スラリーを調製した。このスラリーを2流体ノズルによって噴霧乾燥し、ほぼ球状に造粒された原料粒子を得た。
この原料粒子5gを直径50mmのアルミナ製ルツボに仕込み、小型雰囲気炉に入れ、窒素を流通させ、炉の排気ガス中の酸素濃度を0.1%以下とした後、窒素気流中にて5℃/min.で900℃まで昇温した。炉内温度が900℃に到達して3時間後に流通ガスを窒素から空気に切り替え、さらに2時間温度を保持した後、1℃/min.で室温まで冷却し、平均粒子径(平均2次粒径)が8μmのほぼ球状の粒子を得た。
【0054】
この粒子は粉末X線回折パターンにより、スピネル構造のリチウムマンガン複合酸化物であることが確認された。また、この粒子の比表面積測定((株)大倉理研製AMS−1000を用いた、窒素吸着によるBET比表面積)を行なったところ、比表面積は0.95m2/gであった。
【0055】
[ 7Li−NMR測定]
得られたリチウムマンガン複合酸化物に対して、下記条件下にて7Li−NMR測定を行い、5±40ppmに現れるメインピーク強度と525±40ppmに現れるメインピーク強度との比(I0ppm/I500ppm)とをそれぞれ求めた。
使用した装置:バリアン社製固体NMR装置Chemagnetics Infinity 400
測定方法:
高速回転を得るため、4mm Magic Angle Spinning(MAS)プローブを利用した。また、観測範囲が広いことから、測定パルスシーケンスとしてπパルスエコー法を用いた。以下に測定条件を示す。
測定条件:
共鳴周波数;155.43MHz
観測範囲;1MHz
MAS回転数;15kHz
測定温度;25℃
化学シフト標準;LiCl0.1M水溶液(0ppm)
測定パルスシーケンス;πパルスエコー法 *1
測定パルス幅;1μs for 90、2μs for 180度
エコー待ち時間τ;67μs(MAS回転数15kHzの逆数)
繰り返し時間;64秒
*1 90度パルス−待ち時間τ−180度(π)パルス−待ち時間τ−観測得られたNMRスペクトルを図2に示す。
解析方法:
得られたNMRスペクトルはメインピークにMASによるサイドバンドが重畳したものになり、そのままではピーク強度を求めることができない。そのためメインピークとサイドバンドとについて以下の条件を用いてピーク分割を行い、最終的にピーク強度を得た。
【0056】
ピーク分割条件:
フィッティング関数;Lorentz型
ベースライン補正;オフセット
その他;5±40ppmと525±40ppmとのそれぞれに、一本メインピークがあると仮定し、その他をサイドバンドとしてフィッティングを行った。
解析の結果得られた5±40ppmのメインピーク強度I0ppmと525±40ppmのメインピーク強度I500ppmとの比(I0ppm/I500ppm)の値を表−1に示す。また、図1に、得られたリチウムマンガン複合酸化物Li1+xMn2-x-yMyO4-δのyの値とピーク強度比I0ppm/I500ppmとの関係を示した。
【0057】
[電池性能評価]
リチウムマンガン複合酸化物75重量部、導電剤としてのアセチレンブラック20重量部、結着剤としてのポリテトラフルオロエチレン5重量部を混合し、成形して正極ペレットを作製した。この正極ペレットを使用してコイン型電池を作製した。即ち。負極材にリチウム金属を、電解液にはエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比3:7の混合溶媒に1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解した溶液を使用した。この電池を用いて、25℃にて0.5mA/cm2の電流密度で充放電した際の正極材単位重量当たりの放電容量を測定し、初期放電容量とした。
また、負極活物質として炭素を使用した以外は初期放電容量測定の場合と同様にしてコイン型電池を作製し、50℃にて1Cの電流値で充放電した際の1サイクル目の容量に対する100サイクル目の容量の比(%)を求め、容量維持率とした。
以上の結果を表−1にまとめる。
【0058】
実施例2
Li:Mn:Alのモル比を1.04:1.92:0.08としたこと以外実施例1と同様の方法で、リチウムマンガン複合酸化物を製造し、評価した。結果を図1、図3及び表−1にまとめる。
【0059】
実施例3
Li:Mn:Alのモル比を1.04:1.84:0.08としたこと以外実施例1と同様の方法で、リチウムマンガン複合酸化物を製造し、評価した。結果を図1、図4及び表−1にまとめる。
【0060】
実施例4
Li:Mn:Alのモル比を1.04:1.80:0.20としたこと以外実施例1と同様の方法で、リチウムマンガン複合酸化物を製造し、評価した。結果を図1、図5及び表−1にまとめる。
【0061】
比較例1
実施例1において、焼成を全て大気雰囲気で行ったこと以外は同様の方法でリチウムマンガン複合酸化物を製造し、評価した。結果を図1、図6及び表−1に示す。
【0062】
比較例2
実施例1において、AlOOHを添加せず、Li:Mnのモル比を1.04:2.00とし、且つ焼成温度を850℃としたこと以外は同様の方法でリチウムマンガン複合酸化物を製造し、評価した。結果を表−1に示す。
【0063】
比較例3
比較例2において、焼成を全て大気雰囲気で行った以外は同様の方法でリチウムマンガン複合酸化物を製造し、評価した。結果を表−1に示す。
表−1から、特定のピーク強度比I0ppm/I500ppmがI0ppm/I500ppm≦0.65y+0.02の範囲にある時に、良好な容量維持率を得ることができることが分かる(実施例1〜4及び比較例1)。また、従来の単なる空気中での焼成のみでは、このような特定範囲のピーク強度比は得ることができず、その結果容量維持率も低いことが分かる(比較例1)。さらに、アルミニウム(置換元素M)が存在しない場合には、低酸素濃度雰囲気での焼成の後、高酸素濃度雰囲気での焼成するという2段階の焼成を行っても、従来の空気中での1段の焼成でも、性能差が生じないことも分かる(比較例2及び比較例3)
以上
【0064】
【表1】
【0065】
実施例5
Mn2O3及びALOOHをMn:Alのモル比が1.88:0.12となるように秤量した。この原料粉100重量部に対して、純水233重量部とポリカルボン酸アンモニウム系分散剤2重量部を加えた後、ビーズミルにて混合、粉砕し、固形分の平均粒径が0.5μmのスラリーとした。このスラリーにLiOH・H2Oを添加、溶解させて、Li:Mn:Alのモル比が1.04:1.88:0.12のスラリーを調製した。このスラリーを噴霧乾燥し、平均粒子径(平均2次粒径)が8μmのほぼ球状に造粒された粒子を得た。
【0066】
この粒子を小型雰囲気炉にて窒素気流中にて、900℃で26時間保持した。炉の排気ガス中の酸素濃度は0.1%以下であった。26時間後、流通ガスを窒素から空気に切り替え、0.2℃/min.で室温まで冷却した。
この粒子の粉末X線回折パターンを測定した結果、スピネル構造のリチウムマンガン複合酸化物であることが確認された。走査型電子顕微鏡による観察の結果、平均1次粒子径は約3μmであった。また、窒素吸着による比表面積測定の結果、比表面積は0.6m2/gであった。
【0067】
得られたリチウムマンガン複合酸化物75重量部、導電剤としてのアセチレンブラックを20重量部、結着剤としてのポリテトラフルオロエチレンを5重量部を混合し、成形して正極ペレットを作製した。この正極ペレットを使用してコイン型電池を作製した。負極材にリチウム金属を、電解液には、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比3:7混合溶媒に、1mol/lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解した溶液を使用した。この電池を用いて、25℃にて1mA/cm2の電流密度で充放電した際の正極材単位重量当たりの放電容量を測定したところ、109mAh/gであった。
また、負極材として炭素を使用した以外は上記と同様にしてコイン型電池を作製し、50℃にて1Cの電流値で充放電した際の100サイクル後の容量の1サイクル目の容量に対する容量維持率は77%であった。
【0068】
実施例6
実施例5において、窒素気流中、900℃での保持時間を5時間とし、900℃保持終了時に流通ガスを窒素から空気に切り替え、1℃/min.で冷却した以外は同様にしてリチウムマンガン複合酸化物を得た。
この粒子の平均一次粒子径は約2μm、比表面積は0.8m2/gであった。実施例1と同様の方法で測定した放電容量は112mAh/g、容量維持率は79%であった。
【0069】
実施例7
窒素の代わりに窒素と空気の混合ガスを使用し、排気ガス中の酸素濃度を1%とした以外は実施例6と同様にしてリチウムマンガン複合酸化物を得た。
この粒子の平均一次粒子径は約1μmであった。実施例5と同様の方法で測定した放電容量は112mAh/g、容量維持率は79%であった。
【0070】
実施例8
窒素の代わりに窒素と空気の混合ガスを使用し、排気ガス中の酸素濃度を2%とした以外は実施例6と同様にしてリチウムマンガン複合酸化物を得た。
この粒子の平均一次粒子径は約1μm、比表面積は1.0m2/gであった。実施例5と同様の方法で測定した放電容量は113mAh/g、容量維持率は77%であった。
【0071】
実施例9
窒素の代わりに窒素と空気の混合ガスを使用し、排気ガス中の酸素濃度を5%とした以外は実施例6と同様にしてリチウムマンガン複合酸化物を得た。
この粒子の平均一次粒子径は約0.5μm、比表面積は1.3m2/gであった。実施例5と同様の方法で測定した放電容量は113mAh/g、容量維持率は74%であった。
【0072】
実施例10
窒素ガス雰囲気での焼成温度を850℃とし、850℃保持終了時に流通ガスを窒素から空気に切り替えた以外は実施例6と同様にしてリチウムマンガン複合酸化物を得た。
この粒子の平均一次粒子径は約1μm、比表面積は1.3m2/gであった。実施例5と同様の方法で測定した放電容量は113mAh/g、容量維持率は77%であった。
【0073】
実施例11
窒素の代わりに水蒸気を用いた以外は実施例6と同様にしてリチウムマンガン複合酸化物を得た。
この粒子の平均一次粒子径は約1μm、比表面積は0.9m2/gであった。実施例5と同様の方法で測定した放電容量は113mAh/g、容量維持率は75%であった。
【0074】
比較例4
焼成時に最初から空気を流して焼成した以外は実施例6と同様にしてスピネル構造のリチウムマンガン複合酸化物を得た。
この粒子の平均一次粒子径は約0.5μm、比表面積は1.8m2/gであった。実施例5と同様の方法で測定した放電容量は112mAh/g、容量維持率は71%であった。
【0075】
参考例1
実施例5と同様にして得られた原料混合物スラリーの噴霧乾燥粒子を、窒素気流中にて900℃で1時間保持した後、同気流中にて30分で室温まで冷却した。この粒子の粉末X線回折パターンを測定した結果、LiMnO2とMn3O4の混合物であることが判明した。
【0076】
参考例2
実施例5と同様にして得られた原料混合物スラリーの噴霧乾燥粒子を、窒素気流中にて650℃で1時間保持した後、同気流中にて30分で室温まで冷却した。この粒子の粉末X線回折パターンを測定した結果、LiMnO2、Mn3O4およびLi2MnO3の混合物であることが判明した。
【0077】
参考例3
実施例5と同様にして得られた原料混合物スラリーの噴霧乾燥粒子を、空気気流中にて650℃で1時間保持した後、同気流中にて30分で室温まで冷却した。この粒子の粉末X線回折パターンを測定した結果、LiMn2O4単相であることが判明した。
【0078】
【発明の効果】
本発明によれば、リチウム二次電池の正極材料として優れた特性を有するリチウムマンガン複合酸化物を得ることができる。特に、本発明によれば、容量やレート特性、安全性や生産性に優れたリチウム二次電池に用いられるリチウムマンガン複合酸化物を得ることができる。さらに、本発明によれば、高温でのサイクル特性に特に優れたリチウム二次電池及びそれに用いるリチウムマンガン複合酸化物を得ることができる。
また、本発明の製造方法により、原料を、先ず低酸素濃度雰囲気中で、次いで高酸素濃度雰囲気中で焼成して得られたスピネル構造のリチウムマンガン複合酸化物は、これをリチウムイオン二次電池の正極活物質として使用した場合に高温での容量維持率が高く、高温サイクル特性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜4及び比較例1における置換元素量yとピーク強度比I0ppm/I500ppmとの関係を示すグラフである。
【図2】実施例1において使用したリチウムマンガン複合酸化物の7Li−NMRスペクトルである。
【図3】実施例2において使用したリチウムマンガン複合酸化物の7Li−NMRスペクトルである。
【図4】実施例3において使用したリチウムマンガン複合酸化物の7Li−NMRスペクトルである。
【図5】実施例4において使用したリチウムマンガン複合酸化物の7Li−NMRスペクトルである。
【図6】比較例1において使用したリチウムマンガン複合酸化物の7Li−NMRスペクトルである。
Claims (6)
- リチウム、マンガン及びアルミニウムを含有するスピネル型リチウムマンガン複合酸化物であって、
組成条件が次式(A)
を満足し、
下記測定方法での 7Li−NMR測定で得られる5±40ppmのメインピーク強度と525±40ppmのメインピーク強度との比(I0ppm/I500ppm)が次式(B)
<測定方法>
4mm Magic Angle Spinning(MAS)プローブを利用する。また、測定パルスシーケンスとしてπパルスエコー法を用いる。
測定条件:
共鳴周波数;155.43MHz
観測範囲;1MHz
MAS回転数;15kHz
測定温度;25℃
化学シフト標準;LiCl0.1M水溶液(0ppm)
測定パルスシーケンス;πパルスエコー法 *1
測定パルス幅;1μs for 90、2μs for 180度
エコー待ち時間τ;67μs(MAS回転数15kHzの逆数)
繰り返し時間;64秒
*1 90度パルス−待ち時間τ−180度(π)パルス−待ち時間τ−観測
得られたNMRスペクトルに対して以下の方法でピーク分割を行い、最終的なピーク強度を得る。
ピーク分割条件:
フィッティング関数;Lorentz型
ベースライン補正;オフセット
その他;5±40ppmと525±40ppmとのそれぞれに、一本メインピークがあると仮定し、その他をサイドバンドとしてフィッティングを行う。
かつ、下記一般式(1)
で表されることを特徴とするリチウムマンガン複合酸化物。 - リチウムマンガン複合酸化物の比表面積が、0.3〜3m2/gである請求項1に記載のリチウムマンガン複合酸化物。
- 請求項1または2に記載のリチウムマンガン複合酸化物を含有するリチウム二次電池用正極材料。
- 請求項3に記載のリチウム二次電池用正極材料とバインダーとを含有するリチウム二次電池用正極。
- 請求項4に記載の正極と負極とを有するリチウム二次電池。
- 請求項1または2に記載のリチウムマンガン複合酸化物を製造するに際し、リチウム源、マンガン源及びアルミニウム源を含む原料を低酸素濃度雰囲気にて850℃以上で焼成し、次いで高酸素濃度雰囲気にて850℃以上で焼成することを特徴とするリチウムマンガン複合酸化物の製造方法。
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