JP4774661B2 - リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム二次電池用正極材料、リチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池、並びにリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法 - Google Patents
リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム二次電池用正極材料、リチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池、並びにリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウム遷移金属複合酸化物、該リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法、並びに該リチウム遷移金属複合酸化物を用いたリチウム二次電池用正極材料、リチウム二次電池用正極及び二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
実使用可能なリチウム二次電池を提供する正極活物質として、リチウム遷移金属複合酸化物が有望視されている。これら化合物の中でも、遷移金属としてコバルト、ニッケル又はマンガンを使用する、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物を正極活物質とすると、高性能な電池特性を得られることが知られている。さらに、リチウム遷移金属複合酸化物の安定化や高容量化、安全性向上、高温での電池特性の改良のために、遷移金属サイトの一部を他の金属元素で置換したリチウム遷移金属複合酸化物を用いることも知られている。例えば、リチウム遷移金属複合酸化物の例としてスピネル型リチウムマンガン酸化物LiMn2O4の場合、Mn価数は形式上3.5価であり、3価と4価が半々ずつ混在している状態であるが、このMn価数より小さい価数の他の遷移金属でMnサイトを置換することにより、ヤーンテラー歪みのあるMn3価を減少させて結晶構造を安定化させ、最終的に電池特性が向上する。
【0003】
また、コバルトのような希少で高価な元素を用いる場合、製品としてのリチウム遷移金属複合酸化物の値段を抑えるために置換金属元素を導入することが考えられる。例えば、LiCo1-xNixO2(0<x<1)といったリチウム遷移金属複合酸化物が考えられ、高価なCoの比率を下げるためにxを大きくし、その方向でより性能を上げる研究がなされている。これと同様に、NiとMnを比べた場合、Niの方が高価なことから、LiNi1-xMnxO2(0<x<1)といったリチウム遷移金属複合酸化物が考えられる。Solid State Ionics 311−318(1992)や、J. Mater. Chem. 1149−1155(1996)や、J. Power Sources 629−633(1997)や、J. Power Sources 46−53(1998)では、0≦x≦0.5の範囲で目的とする複合酸化物の単相を合成している。また、第41回電池討論会2D20(2000)では、x=0.5に相当するNi:Mn=1:1の単一相を共沈法により合成している。このようなリチウムニッケルマンガン複合酸化物は、層状リチウムニッケル酸化物に対して、該酸化物中のニッケルの半分程度をマンガンで置換しているにも関わらず層状リチウムニッケル酸化物と大きな相違ない程度に電池特性が優れたものである、という点で近年注目されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者の知見によれば、このようなニッケルとマンガンとをほぼ同量有するリチウム遷移金属複合酸化物は、製造法の如何によらず嵩密度が低いという問題点があった。例えば、一般に、原料を分散媒に分散させたスラリーを噴霧乾燥させた後に焼成処理する方法(以下単に「湿式法」と称する場合がある)は、リチウム遷移金属複合酸化物を球状に造粒でき、嵩密度(充填密度)を高く(単位容積あたりのエネルギー密度を高く)することができる利点を有する。ところが、上記ニッケルとマンガンとの両者を有するリチウム遷移金属複合酸化物では、通常嵩密度が高くなる湿式法を用いても乾式法に比べて大きな向上効果が見られない。これは、噴霧乾燥によって造粒粒子を作製するときに、特にこの系のリチウム遷移金属複合酸化物では造粒粒子の中空部分が大きくなってしまい、主にこれが嵩密度低下問題の要因となっていると考えられる。上記造粒粒子の中空部分は、噴霧乾燥に供される際、噴霧により生成した液滴が蒸発乾燥するときに原料構成成分が粒子内部から表面に向かって移動して急激に蒸発するために発生するものであると考えられる。嵩密度が低いと、単位体積当たりの正極材量が稼げなくなり、これを用いた二次電池を作成しようとするときに、一定のエネルギー容量を確保するためには電池の容積が大きくなり、逆に電池を小型化しようとすると低いエネルギー容量しか得られなくなるという問題が生じる。
【0005】
一方、嵩密度の指標となるタップ密度D(g/cm3)と比表面積S(m2/g)との間には一般に負の相関があり、嵩密度を上げようとすると比表面積が低下するという問題がある。例えば、嵩密度を向上させる最も一般的な方法としては、原料をより高温にて焼成する方法がある。その結果、1次粒子結晶の成長が促進されて嵩密度は大きくなる反面、粒子径の肥大化により比表面積は低下してしまう。本発明者らの検討によれば、上記ニッケルとマンガンとの両者を有するリチウム遷移金属複合酸化物は、他のリチウム遷移金属複合酸化物とは異なり、特異的に比表面積を大きしないと、リチウムの拡散が不十分となり、レート特性や容量等の性能が不十分となりやすい性質を持っているため、嵩密度を向上させるために比表面積を低下させるのは問題となる。
【0006】
本発明者らの検討によれば、かかる状況下、ニッケルとマンガンとの両者を有するリチウム遷移金属複合酸化物のタップ密度D(g/cm3)と比表面積S(m2/g)との間は、D+0.03Sの値として1.3程度が限界であった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはかかる事情に鑑み鋭意検討した結果、特定の雰囲気ガス下にて焼成を行う等によって従来よりもはるかに大きいタップ密度のリチウム遷移金属複合酸化物、即ちより高嵩密度であるリチウム遷移金属複合酸化物を得ることができ、該リチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質として用いたリチウム二次電池が高性能な電池特性を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の要旨は、ニッケルとマンガンとの原子比が0.7≦Ni/Mn≦1.3を満たすリチウム遷移金属複合酸化物(以下、このようなリチウム遷移金属複合酸化物を単に「リチウムニッケルマンガン複合酸化物」と称する場合がある)であって、比表面積S(m2/g)とタップ密度D(g/cm3)とが下記関係式(1)を満足することを特徴とするリチウム遷移金属複合酸化物、並びにこれを用いたリチウム二次電池用正極材料、リチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池に存する。
【0009】
【数2】
D+0.03S≧1.5 (1)
また、本発明の他の要旨は、リチウム源とマンガン源とニッケル源とを含む原料を焼成するリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法において、前記焼成が、低酸素濃度雰囲気での第1焼成段階と、前記第1焼成段階の後に行われる高酸素濃度雰囲気での第2焼成段階とを有することを特徴とするリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法、に存する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のリチウム遷移金属複合酸化物は、層状の結晶構造を有しリチウムとニッケルとマンガンとを含む酸化物である。リチウム、ニッケル、マンガン及び酸素以外の他の元素を含有することも可能である。ニッケルとマンガンの原子比は、層状結晶構造が安定に存在し、また電池特性を悪化させない観点で、ほぼ同量、即ち0.7≦Ni/Mn≦1.3とするが、本発明の効果が顕著な点で、好ましくは0.8≦Ni/Mn≦1.2、さらに好ましくは0.9≦Ni/Mn≦1.1、最も好ましくは0.93≦Ni/Mn≦1.07とする。
【0011】
本発明のリチウムニッケルマンガン複合酸化物は、通常下記一般式(2)
で示される。
【0012】
【化2】
LiXNiaMnbQcO2 (2)
(ただし、a+b+c=1である)
ここで、一般式(2)中、Xは0<X≦1.2、好ましくは0<X≦1.1の範囲の数を表わす。Xが大きすぎると、結晶構造が不安定化したり、これを使用したリチウム二次電池の電池容量低下を招く恐れがある。a/bはNi/Mnのモル比であり、0.7≦a/b≦1.3を満たす数を表す。中でもaの値とbの値とを概ね同じ値とするのが好ましく、具体的には0.8≦a/b≦1.2、特に0.a/b≦1.1、さらには0.93≦a/b≦1.07とするのが好ましい。相対的にマンガンの割合が大きくなると単一相のリチウムニッケルマンガン複合酸化物が合成しにくくなり、逆に相対的にニッケルの割合が大きくなると、全体のコストが上がる。また、上記一般式(2)において、NiとMnのサイトの一部をこれら以外の金属元素Qで置換する(このような金属元素を以下「置換金属元素」と呼ぶことがある)ことも可能である。このような置換金属元素としては、Al、Fe、Ga、Bi、Sn、V、Cr、Co、Cu、Zn、Mg、Ti、Ge、Nb、Ta、Zr、Li等の1種又は2種以上の各種元素を挙げることができる。置換金属元素Qの含有量が多すぎると、電池用の電極として使用した場合の容量が低下したり、本発明の効果が顕著でなくなったりするので、上記一般式(2)におけるcの値は0.5以下、好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.3以下とする。本発明の効果が最も顕著である点で、最も好ましくはcの値は0とする。
【0013】
なお、上記一般式(2)の組成においては、酸素量に多少の不定比性があってもよい。
リチウムニッケルマンガン複合酸化物は、平均1次粒径としては、通常0.01μm以上、好ましくは0.02μm以上、更に好ましくは0.1μm以上、通常10μm以下、好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下である。平均1次粒径は、SEM観察によって測定することができる。また、平均2次粒径は通常1μm以上、好ましくは4μm以上、通常50μm以下、好ましくは40μm以下である。平均2次粒径は、公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定することができ、測定の際に用いる分散媒としては、例えば0.1重量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を挙げることができる。1次粒子の大きさは、焼成温度、焼成時間、焼成雰囲気等の製造条件等により制御することが可能である。また、2次粒子の粒子径は、例えば、後述する噴霧乾燥工程における気液比等の噴霧条件等の製造条件により制御することが可能である。1次粒径が小さすぎると表面での副反応等が起こりやすくなるためにサイクル特性等が低下する傾向にあり、大きすぎるとリチウム拡散の阻害や導電パス不足等によりレート特性や容量が低下する傾向にある。また、2次粒径が小さすぎるとサイクル特性や安全性が低下する傾向にあり、大きすぎると内部抵抗が大きくなって十分な出力が出にくくなる傾向がある。
【0014】
本発明におけるリチウム遷移金属複合酸化物は、該リチウム遷移金属複合酸化物の比表面積S(m2/g)とタップ密度D(g/cm3)とが下記関係式(1)を満足することを特徴とする。
【0015】
【数3】
D+0.03S≧1.5 (1)
ここで前記リチウム遷移金属複合酸化物の比表面積は、公知のBET式粉体比表面積測定装置によって測定される。この方法の測定原理は下記の通りである。すなわち、測定方式は連続流動法によるBET1点法測定であり、使用する吸着ガス及びキャリアガスはそれぞれ窒素及びヘリウムである。粉体試料を混合ガスにより450℃以下の温度で過熱脱気し、次いで液体窒素温度まで冷却して混合ガスを吸着させる。これを水により室温まで加温して吸着された窒素ガスを脱着させ、熱伝導度検出器によって検出し、脱着ピークとしてその量を求め、試料の比表面積として算出する。比表面積Sは通常0.3m2/g以上、好ましくは0.5m2/g以上、更に好ましくは1.0m2/g以上、更に好ましくは2.0m2/g以上、最も好ましくは3.0m2/g以上である。比表面積があまり小さすぎると、1次粒径が大きくなることを意味し、即ちレート特性や容量が低下する傾向にあるので好ましくないが、あまり大きすぎてもサイクル特性等が低下する傾向にあるので、現実的には10m2/g以下、通常は8m2/g以下である。また、前記リチウム遷移金属複合酸化物のタップ密度は、該リチウム遷移金属複合酸化物粉末約8gを10mlメスシリンダーに入れて200回タップして測定される。タップ密度Dは通常1.0g/cm3以上、好ましくは1.2g/cm3以上、更に好ましくは1.4g/cm3以上である。嵩密度が低いと、単位体積当たりの正極材量が稼げなくなり、これを用いた二次電池を作成しようとするときに、一定のエネルギー容量を確保するためには電池の容積が大きくなり、逆に電池を小型化しようとすると低いエネルギー容量しか得られなくなるので、大きければ大きいほど好ましいが、現実的には3.0g/cm3以下、通常は2.5g/cm3以下である。
【0016】
一般に、タップ密度D(g/cm3)と比表面積S(m2/g)との間には一般に負の相関があるが、本発明においては、D+0.03Sの値を1.5以上、好ましくは1.6以上とする。その結果、従来得られるリチウムニッケルマンガン複合酸化物と同レベルの比表面積を保持しつつもタップ密度が高くなる。特にリチウムニッケルマンガン複合酸化物は、電池としての性能をある程度高いレベルに保つためには他の種類のリチウム遷移金属複合酸化物よりも大きい比表面積が必要であり、その結果タップ密度も低いレベルに留まっていたが、同じ程度の比表面積を保持して高性能の電池特性を悪化させることなく、タップ密度、即ち電池作製の際に非常に重要となる要素である粉体充填密度が高くなる。粉体充填密度は高ければ高いほど単位体積当たりの正極材量が少なくて済み、これを用いた二次電池を作製する際の電池の容積が小さくなり、単位体積当たりのエネルギー容量が大きくなるので、一般式(1)におけるD+0.03Sの値は大きければ大きいほど好ましいが、現実的には3.0以下、通常は2.5以下である。
【0017】
上記一般式(1)を満足させるための具体的方法については後述する。
本発明のリチウム遷移金属複合酸化物は、通常、リチウム源とニッケル源とマンガン源と必要に応じて使用される置換金属元素源を含む原料を焼成することによって製造することができる。
原料として用いられるリチウム源としては、Liを含有する各種のリチウム化合物、リチウムイオン等を挙げることができる。例えば、Li2CO3、LiNO3、LiOH、LiOH・H2O、ジカルボン酸リチウム、クエン酸リチウム、脂肪酸リチウム、アルキルリチウム、リチウムハロゲン化物等のリチウムの無機塩や有機酸塩を挙げることができる。より具体的には、例えば、Li2CO3、LiNO3、LiOH、LiOH・H2O、LiCl、LiI、酢酸Li、Li2O等を挙げることができる。無論これらリチウム原料を複数種用いてもよい。また、これらリチウム原料は、湿式法により合成する際の分散媒中でLi+とアニオンに解離していてもよい。これらリチウム原料の中で好ましいのは、Li2CO3、LiNO3、LiOH・H2O、酢酸Liである。また、特に好ましいリチウム原料は、LiOH・H2Oである。この化合物は水溶性のリチウム化合物であるため、分散媒が水の場合に分散媒中の拡散効率や均一性が向上するだけでなく、N及びS等を含まない化合物なので、リチウムニッケルマンガン複合酸化物の焼成工程の際に、NOx及びSOx等の有害物質を発生させない利点をも有する。
【0018】
原料として用いられるニッケル源としては、Niを含有する各種のニッケル化合物、ニッケルイオン等を挙げることができる。ニッケル原料としては、Ni(OH)2、NiO、NiOOH、NiCO3・2Ni(OH)2・4H2O、NiC2O4・2H2O、Ni(NO3)2・6H2O、NiSO4、NiSO4・6H2O、脂肪酸ニッケル、及びニッケルハロゲン化物からなる群から選ばれた少なくとも一種を挙げることができるが、原料混合物はリチウム遷移金属複合酸化物を合成する過程で焼成工程に供されるため、Ni(OH)2、NiO、NiOOH、NiCO3・2Ni(OH)2・4H2O、NiC2O4・2H2OのようなN及びS等を含まない化合物を選定して、NOx及びSOx等の有害物質を発生させない方が好ましく、さらに工業原料として安価に入手できる観点、及び湿式粉砕を行う際に反応性が高いという観点から、特に好ましいのはNi(OH)2、NiO、NiOOHである。
【0019】
原料として用いられるマンガン源としては、Mnを含有する各種のマンガン化合物、マンガンイオン等を挙げることができる。マンガン原料としては、Mn3O4、Mn2O3、MnO2、MnOOH、MnCO3、Mn(NO3)2、MnSO4、酢酸マンガン、ジカルボン酸マンガン、クエン酸マンガン、脂肪酸マンガン、マンガン水酸化物、及びマンガンハロゲン化物からなる群から選ばれた少なくとも一種を挙げることができる。これらマンガン原料の中でも、Mn2O3、MnO2、Mn3O4は、最終目的物である複合酸化物のマンガン酸化数に近い価数を有しているため好ましい。さらに工業原料として安価に入手できる観点、及び湿式粉砕を行う際に反応性が高いという観点から、特に好ましいのはMn2O3である。
【0020】
原料中の各成分の構成比は、目的とするリチウム遷移金属複合酸化物の組成比に応じて適宜選択される。
原料は通常焼成前に混合処理に供される。混合方法は特に限定されるものではなく、湿式でも乾式でも良く、例えばボールミル、振動ミル、ビーズミル等の装置を使用する方法が挙げられる。水酸化リチウム等の水溶性の原料は水溶液として他の固体の原料と混合しても良い。
【0021】
湿式による混合はより均一な混合が可能であり、後に供される焼成工程において反応性を高めることができるため好ましい。この際、より均一に混合できる点でリチウム源、ニッケル源、マンガン源、或いは他の置換金属源を水等の分散媒中に分散又は溶解させるのがより好ましい。
混合の時間は、混合方法により異なるため一概には言えないが、原料が粒子レベルで均一に混合されていれば良く、例えばボールミル(湿式又は乾式)では通常1時間〜2日間程度、ビーズミル(湿式連続法)では通常対流時間0.1時間〜6時間程度である。粉砕の程度としては、原料粒子の粒径が指標となるが、これを通常2μm以下、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下とする。湿式混合における原料を含む分散媒(以下これをスラリーということがある)中の固形物の平均粒子径が大きすぎると、焼成工程における反応性が低下するだけでなく、後述する噴霧乾燥における乾燥粉体の球状度が低下し、最終的な粉体充填密度が低くなる傾向にある。この傾向は、平均粒子径で50μm以下の造粒粒子を製造しようとした場合に特に顕著になる。また、必要以上に小粒子化することは、粉砕のコストアップに繋がるので、スラリー中の固形物の平均粒子径は通常0.01μm以上、好ましくは0.02μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上とする。
【0022】
原料の湿式混合を行った場合、焼成前に通常これを乾燥する。乾燥方法としては噴霧乾燥が好ましい。噴霧乾燥によってより均一な球状原料粉体を得ることができるので、生成物の均一性や粉体流動性、粉体ハンドリング性能等の観点から好ましい。造粒粒子径としては、平均粒子径で好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下となるようにする。ただし、あまりに小さな粒径は得にくい傾向にあるので、通常は4μm以上、好ましくは5μm以上である。造粒粒子の粒子径は、噴霧形式、加圧気体流供給速度、スラリー供給速度、乾燥温度等を適宜選定することによって制御することができる。
【0023】
本発明においては、比表面積及びタップ密度を制御する上で、焼成条件が重要である。前記一般式(1)の関係を満足する比表面積及びタップ密度とするためには、焼成を、低酸素濃度雰囲気での第一段階と、高酸素濃度雰囲気での第二段階との少なくとも2段階にて行うのが好ましい。その結果、従来の製法で得られるリチウムニッケルマンガン複合酸化物に比べ、比表面積に対して相対的に高い嵩密度のリチウムニッケルマンガン複合酸化物とすることができる。ここで、低酸素濃度雰囲気としては、通常焼成炉内の原料粉体近傍の気相中の酸素含有量が10容量%〜0容量%を意味し、好ましくは5容量%以下である。ただし、酸素含有量を完全に0にするのは実用上困難なことがあるので、低酸素濃度雰囲気においても好ましくは酸素含有量は0.0001容量%以上、特に0.01容量%以下、さらには0.1容量%以上とする。このような低酸素濃度雰囲気は、具体的には窒素、アルゴン又はヘリウム等の不活性ガス、水蒸気、一酸化炭素、二酸化炭素等を焼成炉内にガスとして流通させる方法や、上記のガスを発生する物質、例えば水や炭酸塩、又は炭酸等の酸素と反応する物質を炉内に設置或いは供給することにより形成することができる。
【0024】
一方、高酸素濃度雰囲気は、通常焼成炉内の原料粉体近傍の気相中の酸素含有量が15容量%以上を意味し、好ましくは20容量%以上である。ただし、あまりに酸素濃度が高くても顕著な向上は見られず工業的には不利な方向となるので、酸素濃度は通常80容量%以下、好ましくは50容量%以下とする。高濃度酸素雰囲気としては、具体的には、大気(空気)又は酸素若しくは酸素を含有する混合ガスを炉内に流通させるか、酸素を発生させる物質(例えば硝酸塩)を炉内に設置又は供給することにより形成することができる。
【0025】
低酸素濃度雰囲気から高酸素濃度雰囲気に切り替えるには、例えば、焼成中に炉内に流通させるガスを空気や酸素等に変更する方法、PSA等の手段により流通ガス中の酸素含有量を変化させる方法、低酸素濃度雰囲気の炉内で焼成した後、高酸素濃度雰囲気の炉内で焼成する方法等がある。
焼成には、例えば箱形炉、管状炉、トンネル炉、ロータリーキルン等を使用することができる。焼成は、通常昇温・最高温度保持・降温の三部分に分けられる。昇温部分は、通常毎分1℃以上毎分5℃以下の昇温速度で炉内を昇温させる。あまり遅すぎても時間がかかって工業的に不利であるが、あまり早すぎても炉によっては炉内温度が設定温度に追従しなくなる。最高温度保持部分では、焼成温度は通常500℃以上、好ましくは600℃以上、より好ましくは800℃以上である。温度が低すぎると、結晶性の良いリチウム遷移金属複合酸化物を得るために長時間の焼成時間を要する傾向にある反面、温度が高すぎると目的とするリチウム遷移金属複合酸化物以外の結晶相が生成するか、あるいは欠陥が多いリチウム遷移金属複合酸化物を生成する結果となり、該リチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質として使用したリチウム二次電池の電池容量が低下あるいは充放電による結晶構造の崩壊による劣化を招くことがあることから、通常1050℃以下、好ましくは950℃以下である。保持時間は通常1時間以上100時間以下の広い範囲から選択される。焼成時間が短すぎると結晶性の良いリチウム遷移金属複合酸化物が得られにくく、また長すぎるのはあまり実用的でない。降温部分では、通常毎分0.1℃以上毎分5℃以下の降温速度で炉内を降温させる。あまり遅すぎても時間がかかって工業的に不利な方向であり、あまり早すぎても目的物の均一性に欠けたり、容器の劣化を早める傾向にある。
【0026】
上記低酸素濃度雰囲気焼成の第一段階から高酸素濃度雰囲気焼成の第二段階への切り替えのタイミングは、焼成開始から最高温度へ昇温させる途中であることが好ましい。即ち、低酸素濃度雰囲気で昇温させることにより、低温領域では目的とするリチウム遷移金属複合酸化物の生成を抑え、ある程度高温まで原料を昇温させた後に高酸素濃度雰囲気に切り替えることにより、高い反応性で急激にリチウム遷移金属複合酸化物を生成させるのである。かかる方法により、より高い嵩密度となる理由については明らかではないが、以下のように推定される。即ち、低酸素濃度雰囲気下では、目的とするリチウム遷移金属複合酸化物が生成しない一方で、高酸素濃度雰囲気下においては不安定であるような物質が生成し、それに伴って結晶成長が促進され、嵩密度が向上する。その後、高酸素濃度下に晒されることによりはじめて目的とするリチウム遷移金属複合酸化物が高嵩密度状態で生成する。
【0027】
上記製造方法においては、低酸素濃度雰囲気下における反応が進めば進むほど最終目的物として得られる嵩密度が大きくなる。換言すれば、昇温過程における低酸素濃度雰囲気焼成の第一段階から高酸素濃度雰囲気焼成の第二段階への切り替え温度を高くすればするほど得られるリチウム遷移金属複合酸化物の嵩密度は大きくなる。但し、あまり切り替え温度を高くすると焼結固着が激しく、解砕作業が現実的ではなくなるので、通常は900℃以下、好ましくは800℃以下に切り替え温度を設定する。
【0028】
なお、上記製造方法においては、低酸素濃度雰囲気での焼成と、その後に行われる高酸素濃度雰囲気での焼成とを行うが、これらの間や前後に粉砕等の他の工程を有していてもよい。
このようにして得られたリチウム遷移金属複合酸化物は、前記一般式(1)を満たすことが可能である。上記製造方法で得られたリチウム遷移金属複合酸化物は、通常、一般の焼成により得られたものよりも1次粒子同士が融着したように密に焼結した2次粒子からなるため、タップ密度が高い。一方で、1次粒径そのものは通常の焼成により得られたものに比べて極端に大きくなっているわけではないので、比表面積が大きく下がることはなく、電池性能を大きく損なうこともない。
【0029】
本発明のリチウム遷移金属複合酸化物は、正極材料(活物質)として用いることができる。即ち、本発明の正極材料は上記リチウム遷移金属複合酸化物を含有する。また、上記リチウム遷移金属複合酸化物を用いて、電極さらには電池を作製することができる。例えば電池の一例としては、正極、負極、電解質を有するリチウム二次電池が挙げられる。具体的には、正極と負極との間には電解質が存在し、かつ必要に応じてセパレーターが正極と負極が接触しないようにそれらの間に配置された二次電池を挙げることができる。
【0030】
正極は、通常前記リチウム遷移金属複合酸化物(正極材料)とバインダーとを含有する。これに必要に応じて導電材を含有していても良い。正極は、通常上記の材料を有する合剤層を集電体上に設けてなる。かかる正極は、上記合剤層を構成する成分に、これらを均一に分散させるための溶媒を一定量で混合して塗料とした後、集電体上に塗布・乾燥することによって得ることができる。
正極に用いられる導電剤としては、天然黒鉛、人造黒鉛、アセチレンブラック等を挙げることができる。また、バインダーとしてはポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロセルロース等を挙げることができる。更にまた、分散用の溶媒としては、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。正極に用いられる集電体の材質としては、アルミニウム、ステンレス等が挙げられる。好ましくはアルミニウムである。正極は、通常集電体上に正極合剤層を形成後、通常ローラープレス等の手法により圧密する。一方負極としては、天然黒鉛、熱分解炭素等の炭素材料を銅等の集電体上に塗布したもの、或いはリチウム金属箔、リチウム−アルミニウム合金等が使用できる。好ましくは炭素材料を使用する。
【0031】
リチウム二次電池に使用する電解質は通常非水電解液であり、電解塩を非水系溶媒に溶解してなる。電解塩としてはLiCiO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiBr、LiCF3SO3等のリチウム塩が挙げられる。また、非水系溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。これら電解塩や非水系溶媒は単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。電解質は上記電解液であってもよく、従来公知の各種の固体電解質やゲル状電解質を使用することもできる。
【0032】
リチウム二次電池に用いられるセパレーターとしては、テフロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の高分子、又はガラス繊維等の不繊布フィルター、或いはガラス繊維と高分子繊維の複合不繊布フィルター等を挙げることができる。
【0033】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
<実施例1>
LiOH・H2O、Ni(OH)2、Mn2O3をそれぞれ最終的な層状リチウムニッケルマンガン複合酸化物中の組成で、Li:Ni:Mn=1.05:0.50:0.50(モル比)となるように秤量し、これに純水を加えて固形分濃度12.5重量%のスラリーを調整した。このスラリーを攪拌しながら、循環式媒体攪拌型湿式粉砕機(シンマルエンタープライゼス社製:ダイノーミルKD−20B型)を用いて、スラリー中の固形分の平均粒子径が0.30μmになるまで粉砕した。16.5Lポットを用い、粉砕時間は6時間であった。
【0034】
次にこのスラリーを四流体ノズル型スプレードライヤー(藤崎電機社製スプレードライヤー)を用いて噴霧乾燥を行った。この時の乾燥ガスとして空気を用い、乾燥ガス導入量は1200L/min、乾燥ガス入り口温度は90℃とした。
噴霧乾燥により得られた造粒粒子粉体を先に詳細に説明した切り替え焼成により焼成した。造粒粒子粉体約8gを直径50mmのアルミナ製るつぼに仕込み、雰囲気焼成炉に入れて窒素を流通させ、炉の排気ガス中の酸素濃度を1%以下とした後、窒素気流中毎分5℃の昇温速度で昇温させ、途中700℃で流通気体を空気に切り替え、最高温度900℃まで毎分5℃で昇温させ、5時間保持した後毎分5℃の降温速度で降温させて焼成することにより、ほぼ仕込みのモル比組成のリチウムニッケルマンガン複合酸化物を得た。
【0035】
このリチウムニッケルマンガン複合酸化物は、図1のSEM写真(倍率3000倍)に示すようにほぼ球状の粒子であった。また、粉末X線回折パターンにより、層状構造の単相であることが確認された。
この粉末約5gを10mlのガラス製メスシリンダーに入れ、200回タップした後の粉体充填密度(タップ密度)を測定した結果、1.55g/cm 3 であった。また、この粉末のBET比表面積を測定した結果、5.06m2/gであった。比表面積の測定は、BET式粉体比表面積測定装置(大倉理研製:AMS8000型全自動粉体比表面積測定装置)を用いて求めた。
<実施例2>
噴霧乾燥により得られた造粒粒子粉体の焼成条件において、流通気体の窒素から空気への切り替え温度を700℃、最高温度900℃保持時間を20時間にした以外は、実施例1と同様にしてリチウムニッケルマンガン複合酸化物を得た。
【0036】
得られた粉末は、粉末X線回折パターンにより、層状構造の単相であることが確認された。
この粉末約5gを10mlのガラス製メスシリンダーに入れ、200回タップした後の粉体充填密度(タップ密度)を測定した結果、1.70g/cm 3 であった。また、この粉末のBET比表面積を測定した結果、3.31m2/gであった。比表面積の測定は、BET式粉体比表面積測定装置(大倉理研製:AMS8000型全自動粉体比表面積測定装置)を用いて求めた。以上の結果より、上記一般式(1)を満たすものであることが判った。
<比較例1>
噴霧乾燥により得られた造粒粒子粉体の焼成条件において、流通気体の窒素から空気への切り替えをせず、全工程を空気流通下において最高温度950℃で5時間保持した以外は、実施例1と同様にしてリチウムニッケルマンガン複合酸化物を得た。
【0037】
得られた粉末は、粉末X線回折パターンにより、層状構造の単相であることが確認された。
この粉末約5gを10mlのガラス製メスシリンダーに入れ、200回タップした後の粉体充填密度(タップ密度)を測定した結果、1.18g/cm 3 であった。また、この粉末のBET比表面積を測定した結果、3.38m2/gであった。比表面積の測定は、BET式粉体比表面積測定装置(大倉理研製:AMS8000型全自動粉体比表面積測定装置)を用いて求めた。
<比較例2>
噴霧乾燥により得られた造粒粒子粉体の焼成条件において、流通気体の窒素から空気への切り替えをせず、全工程を空気流通下において最高温度900℃で5時間保持した以外は、実施例1と同様にしてリチウムニッケルマンガン複合酸化物を得た。
【0038】
得られた粉末は、粉末X線回折パターンにより、層状構造の単相であることが確認された。
この粉末約5gを10mlのガラス製メスシリンダーに入れ、200回タップした後の粉体充填密度(タップ密度)を測定した結果、1.12g/cm 3 であった。また、この粉末のBET比表面積を測定した結果、6.14m2/gであった。比表面積の測定は、BET式粉体比表面積測定装置(大倉理研製:AMS8000型全自動粉体比表面積測定装置)を用いて求めた。
<比較例3>
噴霧乾燥により得られた造粒粒子粉体の焼成条件において、流通気体の窒素から空気への切り替えをせず、全工程を空気流通下において最高温度850℃で5時間保持した以外は、実施例1と同様にしてリチウムニッケルマンガン複合酸化物を得た。
【0039】
得られた粉末は、粉末X線回折パターンにより、層状構造の単相であることが確認された。
この粉末約5gを10mlのガラス製メスシリンダーに入れ、200回タップした後の粉体充填密度(タップ密度)を測定した結果、1.07g/cm 3 であった。また、この粉末のBET比表面積を測定した結果、8.13m2/gであった。比表面積の測定は、BET式粉体比表面積測定装置(大倉理研製:AMS8000型全自動粉体比表面積測定装置)を用いて求めた。
<電池評価試験例>
以下の方法で実施例1〜2及び比較例1〜3の電池評価を行った。
A.正極の作製と容量確認及びレート試験
実施例1〜2及び比較例1〜3で得られたリチウムマンガン複合酸化物を75重量%、アセチレンブラック20重量%、ポリテトラフルオロエチレンパウダー5重量%の割合で秤量したものを乳鉢で十分混合し、薄くシート状にしたものを9mmφ、12mmφのポンチを用いて打ち抜いた。この際、全体重量は各々約8mg、約18mgになるように調整した。これをAlのエキスパンドメタルに圧着して正極とした。
【0040】
9mmφに打ち抜いた前記正極を試験極とし、Li金属を対極としてコインセルを組んだ。これに、0.5mA/cm2の定電流充電、即ち正極からリチウムイオンを放出させる反応を上限4.3Vで行い、ついで0.5mA/cm2の定電流放電、即ち正極にリチウムイオンを吸蔵させる反応を下限3.0Vで行った際の正極活物質単位重量当たりの初期充電容量をQs(C)mAh/g、初期放電容量をQs(D)mAh/gとした。
B.負極の作製と容量確認
負極活物質としての平均粒径約8〜10μmの黒鉛粉末(d002=3.35Å)と、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデンとを重量比で92.5:7.5の割合で秤量し、これをN−メチルピロリドン溶液中で混合し、負極合剤スラリーとした。このスラリーを20μmの厚さの銅箔の片面に塗布し、乾燥して溶媒を蒸発させた後、12mmφに打ち抜き、0.5ton/cm2でプレス処理をしたものを負極とした。
【0041】
なお、この負極を試験極とし、Li金属を対極として電池セルを組み、0.5mA/cm2の定電流で負極にLiイオンを吸蔵させる試験を下限0Vで行った際の負極活物質単位重量当たりの初期吸蔵容量をQfmAh/gとした。
C.コインセルの組立
コイン型セルを使用して、電池性能を評価した。即ち、正極缶の上に正極を置き、その上にセパレータとして厚さ25μmの多孔性ポリエチレンフィルムを置き、ポリプロピレン製ガスケットで押さえた後、負極を置き、厚み調整用のスペーサーを置いた後、非水電解液溶液として、1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解させたエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の体積分率3:7の混合溶媒を電解液として用い、これを電池内に加えて十分しみ込ませた後、負極缶をのせ電池を封口した。なおこの時、正極活物質の重量と負極活物質重量のバランスは、ほぼ
【0042】
【数4】
正極活物質重量[g]/負極活物質重量[g]=(Qf/1.2)/Qs(C)
となるように設定した。
D.サイクル試験
このように得られた電池の高温特性を比較するため、電池の1時間率電流値、即ち1Cを
【0043】
【数5】
1C[mA]=Qs(D)×正極活物質重量[g]
と設定し、以下の試験を行った。
まず室温で定電流0.2C充放電2サイクル及び定電流1C充放電1サイクルを行い、次に50℃の高温で定電流0.2C充放電1サイクル、ついで定電流1C充放電100サイクルの試験を行った。なお充電上限は4.2V、下限電圧は3.0Vとした。
【0044】
この時50℃での1C充放電100サイクル試験部分の1サイクル目放電容量Qh(1)に対する、100サイクル目の放電容量Qh(100)の割合を高温サイクル容量維持率P、即ち
【0045】
【数6】
P[%]={Qh(100)/Qh(1)}×100
とし、この値で電池の高温特性を比較した。
表−1に、前記実施例及び比較例で得られたリチウムニッケルマンガン複合酸化物のタップ密度と比表面積、表−2に、前記実施例及び比較例で得られた正極材料を用いた電池の対極リチウム電流密度0.5mA/cm2初期放電容量Qs(D)mAh/gと11mA/cm2の放電容量Qa(D)mAh/g、表−3に、対極カーボン50℃サイクル試験における100サイクル時の放電容量Qh(100)mAh/gと容量維持率P[%]をそれぞれ示す。
【0046】
表−1及びこれらの関係をまとめた図2より、実施例で得られたリチウムニッケルマンガン複合酸化物は電池性能低下の直接原因となる極端な低比表面積化を伴うことなくタップ密度、即ち粉体充填密度(嵩密度)が向上しており、これを表す指標となる下記一般式(1)を満たすものであることが分かる。
【0047】
【数7】
D+0.03S>1.5 (1)
また、表−2と表−3の電池特性データ(容量維持率及び初期放電容量)より、実施例のリチウム二次電池の電池特性は、比較例のリチウム二次電池の電池特性に比べて大きく劣ることなく嵩密度が向上している分、単位体積当たりの電池容量が向上することが判る。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、リチウム二次電池の正極材料として好適な高性能(高容量、高サイクル特性、高レート特性、高保存特性等)のリチウム遷移金属複合酸化物を安価に提供することができる。特に、本発明によれば、従来よりもより嵩密度の高いリチウム遷移金属複合酸化物を提供することができる。さらに、本発明によれば、高性能(高容量、高サイクル特性、高レート特性、高保存特性等)なリチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたリチウムニッケルマンガン複合酸化物のSEM写真である。
【図2】実施例1〜2及び比較例1〜3における比表面積及びタップ密度の関係図である。
Claims (8)
- ニッケルとマンガンとの原子比が0.7≦Ni/Mn≦1.3を満たす層状リチウム遷移金属複合酸化物であって、比表面積S(m2/g)と、粉末5gを10mlのガラス製メスシリンダーに入れ、200回タップした後の粉体充填密度(タップ密度)を測定したタップ密度D(g/cm3)とが下記関係式(1)を満足することを特徴とする層状リチウム遷移金属複合酸化物(ただし、比表面積1m2/g以下、タップ密度1.6g/cm3以上、平均粒径5〜50μmであり、マンガン含有量が全遷移元素に対して10〜60モル%であるものを除く)。
[数1]
D+0.03S≧1.5 (1) - S≧0.3である請求項1に記載の層状リチウム遷移金属複合酸化物。
- D≧1.0である請求項1乃至2に記載の層状リチウム遷移金属複合酸化物。
- 下記一般式(2)で表される請求項1乃至3のいずれか1つに記載の層状リチウム遷移金属複合酸化物。
[化1]
LiXNiaMnbQcO2 (2)
(式中、Xは0<X≦1.2の範囲の数、a及びbは0.7≦a/b≦1.3の範囲の数、cは0≦c≦0.5の範囲の数を表し、a+b+c=1である。また、Qはニッケル及びマンガン以外の金属元素を表す。) - 請求項1乃至4のいずれか1つに記載の層状リチウム遷移金属複合酸化物を含有するリチウム二次電池用正極材料。
- 請求項1乃至4のいずれか1つに記載の層状リチウム遷移金属複合酸化物とバインダーとを含有することを特徴とするリチウム二次電池用正極。
- 請求項1乃至4のいずれか1つに記載の層状リチウム遷移金属複合酸化物を用いた正極と、負極と、電解質とを有することを特徴とするリチウム二次電池。
- ニッケルとマンガンとの原子比が0.7≦Ni/Mn≦1.3を満たし、リチウム源とマンガン源とニッケル源とを含む原料を焼成する層状リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法において、前記焼成が、低酸素濃度雰囲気での第1焼成段階と、前記第1焼成段階の後に行われる高酸素濃度雰囲気での第2焼成段階とを有することを特徴とする層状リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
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