JP4113123B2 - 優れた溶解性を有する書換可能型光記録材料 - Google Patents

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Description

本発明は、バイナリ及び/又はマルチビット及び/又はボリュームデータ記憶用の光記録材料、並びにその製造方法およびその記憶材料としての使用に関する。
古くから、アゾベンゼンは光の作用下で異性化プロセスを行うことが知られている[G.C. Hartly, Nature 140, 281 (1937)]。異性化状態及びシス状態とトランス状態との間での遷移反応の性質は、分散状態の又は側鎖としての又は主鎖と一体になったアゾベンゼンを有する種々のポリマーについて研究されてきた[C.S. Paik; H. Morawetz, Macromolecules 5, 171 (1972)]。
また、ポリマーに組み込まれたアゾベンゼンは、適当な波長の偏光に暴露された場合、化学(actinic)光場において方向付けられた配向を示すことも知られている。直線偏光への暴露は、例えば、偏光の方向に対して垂直に配向した過剰アゾベンゼンを生じる。この現象は、ポリマー中の光誘起複屈折を生じさせるのに利用し得る。アゾベンゼンの配向機構は、多くの文献に記載されている[M. Ecih; J.H. Wendorff; B Reck; H. Ringsdorf, Macromol. Chem. Rapid Commun. 8, 59 (1987)][Y.Q. Shen; H. Rau, Macromol. Chem. 192, 945 (1991)]。
このようなポリマーを可逆性光データ記憶(デジタルまたはホログラフ)に用いる可能性は、Todorov により最初に記載された[T. Todorov; L. Nikolava; N. Tomova, Appl. Opt. 23, 4309 (1984)]。入射光のアンテナとしてアゾベンゼンを含む、バイナリ及び/又はマルチビット及び/又はボリュームデータ記憶用材料は、従来技術で多数知られている[例えば、EP-A-1 171 877、EP-A-1 166 187、DE-A-10 027 153、EP-A-1 166 188 及びDE-A-100 271 529 参照]。種々の非晶質又は液晶ポリマー及びオリゴマーが合成され、光照射実験において研究された[J.J.A. Couture; R.A. Lessard, Appl. Opt. 27, 3368 (1988)][M. Eich; J. Wendorff, J. Opt. Soc. Am. B, 7, 1428 (1990)][A. Natansohn; P. Rochon; J. Gosselin; S. Xie, Macromolecules 25, 2268 (1992)]。
以下の3つの因子が、そのようなポリマーの高光誘起複屈折値の原因となっている:
1.分子側鎖の高形状異方性。
形状異方成分はメソゲンとも称される。メソゲンは、長くかつ剛直な分子の部分故に、典型的には棒状である。ファンデアワールス半径から計算された長さ/幅(太さ)比は少なくとも4でなければならず、好ましくは4〜6の間である。形状異方性は、分子偏光性の異方性をもたらす。この種の分子は、標準的な文献に記載されている[H. Kelker, R. Hatz, “Handbook of Liquid Crystals”, Verlag Chemie (1980)][L. Bergmann; C. Schaefer, “Lehrbuch der Experimentalphysik”, Verlag de Gruyter, Vol. 5, “Vielteilchensysteme” (1992)]。
トランス異性状態で存在するアゾ染料も、形状異方性についての条件を満足しているなら、メソゲン分子単位として挙動し得る。
2.形状異方性分子の高い数密度、即ち、ポリマー中での高いアゾベンゼン含有量及び/又は高いメソゲン含有量。
3.異方性分子の強い配向分布。これは、分子異方性(上記1参照)が巨視的に優勢であるための必須要件である。
異方性の程度は、標準化された直線吸収二色性Aから導くことができる:
Figure 0004113123
[ここで、
Figure 0004113123
はそれぞれ、化学光の偏光方向に平行なポリマー分子及び垂直なポリマー分子の吸収率を表し、Aは照射前の吸収率を表す。]
吸収率は、分光光度計(例えば、Varian CARY 4G, 紫外/可視光型分光光度計)を用いて測定できる。
分子配向のより一般的な記述は、オーダーパラメータP
Figure 0004113123
により、提供される。ここで、P=+1及びP=−0.5は、光の偏光方向に平行及び垂直である分子遷移双極子モーメントの完全配向についての限界値を示す。P=0は、等方性を示す。
特に、アゾベンゼンに加えて形状異方性成分を側鎖として利用する側鎖ポリマーは、上記3つの因子を満足し得るから、高光誘起性複屈折により特徴づけられる。
一般に、ポリマーがより溶解性の小さいものであると、上記因子1及び2がより良好に満足される。即ち、大きい複屈折値の可能性がより高くなる。双極子力、幾何的力及びエントロピー力が、微視的なスケールでの、その原因である。
従って、多くの溶媒、例えば、無毒性であるか又はごくわずかにしか毒性でないアルコールは、溶媒として適していない。しかしながら、そのようなポリマーの良溶媒は多くの場合、毒性であり、発癌性であり、及び/又は果物に損害を与える。多くの場合、それら溶媒の低い沸点ゆえに、揮発性も高い。1つの例はテトラヒドロフラン(THF)である。以下において、このような溶媒が、製造時の生態学上の特に厳格な要求を満足しなければならないデータ記憶物質の製造にとって不利である理由を説明する。
データ記憶材料の機能層としてポリマーを使用できるようにするために、ポリマーは均質フィルムとして製造しなければならない。薄フィルムを製造するために、幾つかのキャスティング、ドロップレットまたはコーティング方法を使用し得る。例えば追記型コンパクトディスク(CR−R)及びその後継フォーマットの大量生産において使用される標準的な方法は、スピンコーティングである。この方法では、染料を溶解し、溶液を、回転している基板(例えば、ポリカーボネートディスク)に、自動化法によりドリップさせる。溶媒を蒸発させると、記録材料の薄フィルムが残る。毒物学的に問題のある蒸発した溶媒をトラップして環境を保護するために、データ記憶材料の製造ラインは、複雑な方法により封じ込める必要があるが、それは、経済的に不利である。
さらに、THFはポリカーボネートを溶解することに注意しなければならない。従って、ポリカーボネート基板の刻印溝構造は、THFと接触すると破壊される。溝構造を保護するために、耐THF性カバー層をポリカーボネートに適用する必要がある。
複屈折値の可逆的書込み及び消去は、書換型データ記憶材料における機能層として光アドレス可能ポリマーを使用するために、基本的必須要件である。これまで記載されたポリマーは、可逆性を十分に保障しないという欠点を有していた。
従って、光誘起複屈折を示し、非毒性であるか又は少なくとも毒性が最小である単純な又は変性アルコールに溶解される記録材料に対する要求が存在している。
驚くべきことに、本明細書に記載した記録材料は上記要求を満足することが示された。
従って、本発明は、バイナリ及び/又はマルチビット及び/又はボリュームデータ記憶用に使用することができる光記録材料を提供する。この記録材料は、以下の特徴を有する:
・該記録材料は、少なくとも1つのアゾベンゼン染料(「アゾ染料」)を含む;
・該記録材料は、少なくとも1つの形状異方性基(「メソゲン」)を含む;
ただし、アゾ染料がメソゲン特性を有するなら、他のメソゲンを含む必要はない。
・該記録材料は、単純又は変性アルコールの1種又はそれ以上への溶解性を(分子基を含まない場合に比べて)改善する少なくとも1つの分子基を含む。この目的にとって優れている式(VI)又は(VIa)のモノマー若しくはヒドロキシエチル基含有モノマーが好ましい。
・該記録材料は、とりわけ染料含有量及び/又はメソゲン含有量を減少させるためにポリマーに組み込まれた、好ましくは式(V)の、モノマー単位を含む。
本発明の記録材料は、好ましくは有機無定形ポリマーまたはオリゴマー材料、特に好ましくは側鎖含有ポリマーである。
側鎖含有ポリマーの主鎖は、以下の基礎構造から誘導される:ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリシロキサン、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリスチレン又はセルロース。ポリアクリレート、ポリメタクリレート及びポリアクリルアミドが好ましい。
主鎖は、基礎構造とは異なるブロックを形成するモノマーを含んでいてよい。このようなモノマーは、本発明による式(VI)のモノマー単位である。
本発明のポリマーは、一般的に、透明化温度未満の温度では無定形である。
本発明のポリマー及びオリゴマーは、好ましくは、少なくとも40℃のガラス転移温度Tを有する。ガラス転移温度は、例えば、B. Vollmer, Grundriss der Makromolekularen Chemie, 406-410頁, Springe-Verlag, Heiderbelg 1962 に従って測定することができる。
本発明のポリマー及びオリゴマーは、ゲル浸透クロマトグラフィ(ポリスチレンにより較正)により測定して、5000〜2000000g/mol、好ましくは8000〜1500000g/molの分子量を有する。
本発明により好ましく使用されるポリマーにおいて、通常軟質スペーサにより分離されたアゾ染料は、ポリマー主鎖に側鎖として共有結合されている。アゾ染料は、電磁放射と相互作用し、それにより、その空間配向が変化し、その結果、光の作用下にあるポリマー中に複屈折が生じ、再消光され得る。
メソゲンは、通常、アゾ染料と同様に結合される。メソゲンは、不活性分子基として機能するので、必ずしも化学光を吸収する必要はない。従って、メソゲンは、上記の意味で光活性ではない。メソゲンの機能は、光誘起複屈折を増強し、光作用後に複屈折を安定化することである。
ポリマーの溶解性を向上させるために組み込まれる分子基は、3つの異なる方法により組み込まれ得る:
1.主鎖にランダムに取り込まれたモノマー単位として。このようなモノマー単位は、アゾベンゼン又はメソゲンによって官能化されない。
2.アゾベンゼンとスペーサとの間の結合サイトでの側鎖基として。
3.アゾ染料の遊離末端の末端基として。
本発明のポリマーは、上記2及び3に従って変性されたアゾベンゼンを同時に含んでいてよい。
本発明のポリマーは、上記2及び3に従って変性されたアゾベンゼンとは別に、上記1に従ったモノマー単位を含んでいてよい。
好ましくは、アゾ染料は、下記式(I)で示される構造を有する:
Figure 0004113123
[式中、R及びRは、相互に独立して、水素又は非イオン性置換基を表す。
mおよびnは、相互に独立して、0〜4、好ましくは0〜2である。
及びXは、-X1’-R又は-X2’-R(ここで、X1’及びX2’は、直接結合、-O-、-S-、-(N-R)-、-C(R)-、-(C=O)-、-(CO-O)-、-(CO-NR)-、-(SO)-、-(SO-O)-、-(SO-NR)-、-(C=NR)-又は-(CNR-NR)-〈ただし、R、R、R又はRは、相互に独立して、水素、C−C20-アルキル、C−C10-シクロアルキル、C−C20-アルケニル、C−C10-アリール、C−C20-アルキル-(C=O)-、C−C10-シクロアルキル-(C=O)-、C−C20-アルケニル-(C=O)-、C−C10-アリール-(C=O)-、C−C20-アルキル-(SO)-、C−C10-シクロアルキル-(SO)-、C−C20-アルケニル-(SO)-又はC−C10-アリール-(SO)-を表すか、若しくは-X1’-R又は-X2’-Rは、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF又はCClを表してもよい。R及びRは、相互に独立に、水素、ハロゲン、C−C20-アルキル、C−C20-アルコキシ、C−C10-シクロアルキル、C−C20-アルケニル又はC−C10-アリールを表す。〉である。)を表す。]
非イオン性置換基は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C−C20-アルキル、C−C20-アルコキシ、フェノキシ、C−C10-シクロアルキル、C−C20-アルケニル又はC−C10-アリール、C−C20-アルキル-(C=O)-、C−C10-アリール-(C=O)-、C−C20-アルキル-(SO)-、C−C20-アルキル-(C=O)-O-、C−C20-アルキル-(C=O)-NH-、C−C10-アリール-(C=O)-NH-、C−C20-アルキル-O-(C=O)-、C−C20-アルキル-NH-(C=O)-又はC−C10-アリール-NH-(C=O)-を包含するものと理解される。
アルキル、シクロアルキル、アルケニル及びアリール基は、以下の群から選択される3個までの置換基により置換されていてよい:ハロゲン、シアノ、ニトロ、C−C20-アルキル、C−C20-アルコキシ、C−C10-シクロアルキル、C−C20-アルケニル又はC−C10-アリール。アルキル及びアルケニル基は、直鎖又は分岐鎖であってよい。
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素及び沃素、とりわけフッ素及び塩素を意味するものと理解される。
本発明の意味において溶解性向上特性を有するアゾ染料は、RがC−C10-アルキル-OH、好ましくはC−C-アルキル-OH、又はCH-(CH-OH)-CH-OHである上記式(I)により同様に包含される。
(又はX)は、スペーサ基、特に
Figure 0004113123
[式中、X1’は上記と同意義である。
は、-O-、-S-、-(N-R)-、-C(R)-、-(C=O)-、-(CO-O)-、-(CO-NR)-、-(SO)-、-(SO-O)-、-(SO-NR)-、-(C=NR)-、-(CNR-NR)-、-(CH)-、p-又はm-C-、若しくは式:
Figure 0004113123
で示される2価基を表す。
iは、0〜4の整数であり、i>1の場合、Qは種々の意義を有してよい。
は、-(CH)-を表し、鎖は-O-、-NR-又は-OSiR10 O-により中断されていてよい。
は、単結合、-O-、-S-又は-NR-を表す。
pは、2〜12、好ましくは2〜8、特に2〜4の整数を表す。
は、水素、メチル、エチル又はプロピルを表す。
10は、メチル又はエチルを表す。
〜Rは、上記と同意義である。]
で示される2価基を表す。
スペーサを介して上記主鎖基礎構造のモノマーを式(I)のアゾ染料と共有結合すると、染料モノマーが生成する。ポリアクリレート又はポリメタクリレートに好ましい染料モノマーは、式(II):
Figure 0004113123
[式中、Rは水素又はメチルを表し、他の基は上記と同意義である。]
で示される。
特に好ましいのは、XがCN、ニトロ及び他の既知の電子吸引性基を表し、Rが好ましくはCNであり、R、S、T、Q、X1’及びR、並びにi、m及びnは前記と同意義である、式(II)の染料モノマーである。
適しているのは、式(IIa):
Figure 0004113123
[式中、Xは、水素、ハロゲン又はC−C-アルキル、好ましくは水素を表し、R、S、T、Q、X1’、R及びR、並びにi、m及びnは前記と同意義である。]
で示される染料モノマーである。
また、適しているのは、式(IIb):
Figure 0004113123
[式中、Xは、シアノ又はニトロを表し、R、S、T、Q、X1’、R及びR、並びにi、m及びnは前記と同意義である。]
で示される染料モノマーである。
溶解性向上成分をスペーサとの結合サイト及び/又は自由位置に有するアゾ染料に好ましいモノマー単位は、
Figure 0004113123
の構造を有する。
好ましくは、メソゲンは、式(III):
Figure 0004113123
[式中、Zは、式(IIIa):
Figure 0004113123
又は式(IIIb):
Figure 0004113123
を表す。
AはO、S又はN-C−C-アルキルを表す。
は、式:-X3’-(Q)-T-S-を表す。
は、X4’-R13を表す。
3’及びX4’は、相互に独立して、-O-、-S-、-(N-R)-、-C(R)-、-(C=O)-、-(CO-O)-、-(CO-NR)-、-(SO)-、-(SO-O)-、-(SO-NR)-、-(C=NR)-又は-(CNR-NR)-を表す。
、R及びR13は、相互に独立して、水素、C−C20-アルキル、C−C10-シクロアルキル、C−C20-アルケニル、C−C10-アリール、C−C20-アルキル-(C=O)-、C−C10-シクロアルキル-(C=O)-、C−C20-アルケニル-(C=O)-、C−C10-アリール-(C=O)-、C−C20-アルキル-(SO)-、C−C10-シクロアルキル-(SO)-、C−C20-アルケニル-(SO)-又はC−C10-アリール-(SO)-を表す。
あるいは、X4’-R13は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF又はCClを表してもよい。
及びRは、相互に独立して、水素、ハロゲン、C−C20-アルキル、C−C20-アルコキシ、C−C10-シクロアルキル、C−C20-アルケニル又はC−C10-アリールを表す。
Yは、単結合、-COO-、-OCO-、-COHN-、-NHCO-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-、-O-、-NH-又は-N(CH)-を表す。
11、R12及びR15は、相互に独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C−C20-アルキル、C−C20-アルコキシ、フェノキシ、C−C10-シクロアルキル、C−C20-アルケニル又はC−C10-アリール、C−C20-アルキル-(C=O)-、C−C10-アリール-(C=O)-、C−C20-アルキル-(SO)-、C−C20-アルキル-(C=O)-O-、C−C20-アルキル-(C=O)-NH-、C−C10-アリール-(C=O)-NH-、C−C20-アルキル-O-(C=O)-、C−C20-アルキル-NH-(C=O)-又はC−C10-アリール-NH-(C=O)-を表す。
q,r及びsは、相互に独立して、0〜4、好ましくは0〜2の整数を表す。
は、-O-、-S-、-(N-R)-、-C(R)-、-(C=O)-、-(CO-O)-、-(CO-NR)-、-(SO)-、-(SO-O)-、-(SO-NR)-、-(C=NR)-、-(CNR-NR)-、-(CH)p-、p-又はm-C-若しくは式:
Figure 0004113123
で示される2価基を表す。
jは、0〜4の整数を表し、j>1の場合、Qは種々の意義を有してよい。
は、-(CH)-を表し、鎖は-O-、-NR-又は-OSiR10 O-により中断されていてよい。
は、単結合、-O-、-S-又は-NR-を表す。
pは、2〜12、好ましくは2〜8、特に2〜4の整数を表す。
は、水素、メチル、エチル又はプロピルを表す。
10は、メチル又はエチルを表す。]
で示される構造を有する。
ポリアクリレート又はポリメタクリレートのための異方性基についての好ましいモノマーは、式(IV):
Figure 0004113123
[式中、Rは水素又はメチルを表し、他の基は上記と同意義である。]
で示される。
アルキル、シクロアルキル、アルケニル及びアリール基は、以下の群から選択される3個までの置換基により置換されていてよい:ハロゲン、シアノ、ニトロ、C−C20-アルキル、C−C20-アルコキシ、C−C10-シクロアルキル、C−C20-アルケニル又はC−C10-アリール。アルキル及びアルケニル基は、直鎖又は分岐鎖であってよい。
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素及び沃素、とりわけフッ素及び塩素を意味するものと理解される。
以下の文節において、「官能性構造ブロック」なる表現を使用する。官能性構造ブロックは、アゾ基を含むか又はメソゲン単位を含むモノマー構造ブロックである。すなわち、示された両分子は、対応するポリマーの光配向プロセスに関連する。このことは、これらが官能性基であることを意味する。官能性基又は構成ブロックと「希釈構成ブロック」とは区別されなければならない。「希釈構成ブロック」は、配向性側鎖を形成できないモノマー構成ブロックである。これは、単に、ポリマー骨格の部分であり、ポリマー中の官能性構造ブロックの割合を低下させる。
このような官能性構造ブロックに加え、本発明のポリマーは、官能性構造ブロック、特に染料構造ブロックの割合を低下させるように専ら機能する構造ブロックを含んでいてよい。この機能のほか、これらブロックは、ポリマーの他の性質、例えばガラス転移温度、液晶性、フィルム形成能などに寄与することもできる。
ポリアクリレート又はポリメタクリレートの場合、そのようなモノマーは、式(V):
Figure 0004113123
[式中、Rは水素又はメチルを表す。
14は、所望により分岐していてよいC−C20-アルキル又は少なくとも1つの更なるアクリル単位を含む基を表す。]
で示されるアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルである。
他のコポリマーも配合することができる。
溶解性を向上するモノマー単位は、以下の構造(VI)〜(VIa)を有する:
式(VI):
Figure 0004113123
[式中、R’及びR”は、相互に独立して、基C2n+1又はC2n-OH(ここで、nは1〜10、好ましくは1〜3である。)を表すか、若しくは両者が一緒になって架橋基-C2n-(ここで、nは2〜6、好ましくは4又は5である。)、-(C-O)-C-(ここで、nは1〜5、好ましくは1〜3である。)又は-C-N(C2n+1)-C-(ここで、nは1〜6、好ましくは1〜3である。)を表す。
Rは、水素またはメチルである。]、
式(VIa):
Figure 0004113123
[式中、R'''は、-(C-O)-H(ここで、nは2〜4、好ましくは2である。)または-C2n-C(=O)NR''''R'''''(ここで、nは2〜10、好ましくは2〜5、特に好ましくは2である。R''''及びR'''''は、相互に独立して、基C2n+1又はC2n-OH〈ここで、nは1〜10、好ましくは1〜3である。〉、若しくは両者が一緒になって架橋基-C2n-〈ここで、nは2〜6、好ましくは4又は5である。〉、-(C-O)-C-〈ここで、nは1〜5、好ましくは1〜3である。〉又は-C-N(C2n+1)-C-〈ここで、nは1〜6、好ましくは1〜3である。〉を表す。)を表す。
Rは、水素またはメチルである。]
従って、本発明のポリアクリレート、ポリメタクリレート及びポリ(メタ)アクリレート/ポリ(メタ)アクリルアミドは、繰返し単位として、好ましくは式(VII)の繰返し単位、より好ましくは式(VII)及び(VIII)の繰返し単位、又は式(VII)及び(IX)の繰返し単位、又は式(VII)、(VIII)及び(IX)の繰返し単位を含む:
Figure 0004113123
あるいは、それらポリマーは、式(VII)の繰返し単位の代わりに、式(VIIa)又は(VIIb)の繰返し単位を含む:
Figure 0004113123
これら式中、各基は、上記と同じ意義を有する。式(VII)の繰返し単位並びに/若しくは式(VIII)及び/又は(IX)の繰返し単位の幾つかも存在してよい。加えて、式(V)のモノマー単位も存在してよい。同様に、式(VI)のモノマー単位も存在してよい。
V、VI、VII、VIII及びIXの量比は任意である。好ましくは、VIIの濃度が、各組成物に基づき、1〜99%である。VIIとVIIIとの比は1:99〜99:1、好ましくは10:90〜90:10、最も好ましくは60:40〜40:60である。Vの割合は、各組成物に基づき、0〜90%、好ましくは20〜80%、特に好ましくは30〜70%である。VIの割合は、各組成物に基づき、0〜90%、好ましくは20〜80%、特に好ましくは30〜70%である。
ポリマー及びオリゴマーの構造を利用して、式(VII)の構造要素同士、又は式(VII)及び(VIII)の構造要素同士の相互作用は、液晶秩序状態の形成が抑制され、光学的等方性透明非散乱性フィルム、シート、パネル又はブロック、特にフィルム又はコーティングが製造できるように、調節される。一方、分子間相互作用はなお強く、光照射下及び/又は静電場の作用下では、光活性及び光不活性側鎖の、光化学誘起、協同性、整列再配向過程が起こる。
好ましくは、式(VII)の繰返し単位の側方基間並びに式(VII)及び(VIII)の繰返し単位の側方基間の相互作用の強さは、式(VII)の側方基の配向変化が、他の側方基((VII)及び/又は(VIII))の同様に方向付けられた−いわゆる共同性−再配列を生じるのに十分な程度である。
ポリマー及びオリゴマーの製造は、文献から既知の方法、例えばDD-A-276 297、DE-A-3 808 430、Makromolekulare Chemie 187, 1327-1334 (1984)、SU-A-887 574、Europ. Polym. 18, 561 (1982) 及びLiq. Cryst. 2, 195 (1987) に記載の方法により行うことができる。
本発明の記録材料又はポリマーの別の製法は、付加的な溶媒を用いることなく、少なくとも1つのモノマーを重合、好ましくはラジカル重合し、重合は、特に好ましくはラジカル開始剤及び/又は紫外線及び/又は熱により開始する方法を包含する。
重合は、20〜200℃、好ましくは40〜150℃、特に好ましくは50〜100℃、最も好ましくは約60℃の温度で行う。
好ましい態様では、AIBN(アゾイソブチロニトリル)をラジカル開始剤として使用する。
更なる、好ましくは液状のモノマーを一緒に用いることが、多くの場合有利であることが分かっている。そのようなモノマーは、反応温度で液体である、好ましくはオレフィン性不飽和モノマー、特に好ましくはアクリル酸及びメタクリル酸に基づくモノマー、最も好ましくはメタクリル酸メチルを包含するものと理解される。
実施例1
モノマーの合成
1.1
Figure 0004113123
2−アニリノエタノール200g、メタクリル酸580ml及びヒドロキノン115.6g並びにクロロホルム880mlを攪拌しながら還流する。濃硫酸148mlをゆっくり滴下する。反応水を共沸的に除去する。冷却後、反応混合物に水を加え、濃水酸化ナトリウム水溶液によりpHを6に調節する。有機層を分離し、溶媒を回転蒸発器により除去する。生成物をクロマトグラフィ(シリカゲル;塩化メチレン)により精製する。N-[2-(メタクリロイロキシ)エチル]アニリンの収量は112g(理論値の34%)である。
2−ブロモメタノール30gを、70℃で、アルゴン雰囲気中、反応容器に加える。N-[2-(メタクリロイロキシ)エチル]アニリン30gをゆっくり加える。次いで、反応混合物を100℃で24時間攪拌し、冷却した後、クロロホルムに注ぎ、水洗する。反応生成物を硫酸マグネシウムで乾燥した後、クロロホルムを除去し、生成物をクロマトグラフィ(酸化アルミニウム;ジオキサン)により精製する。N-(ヒドロキシエチル)-N-(2-メタクリロイロキシ)エチル]アニリンの収量は10.2g(28%)である。
元素分析:C1419NO(249.31)
計算値:C67.45;H7.68;N5.62
実測値:C67.30;H7.40;N5.60
4-アミノ-3-メチル-4'-シアノアゾベンゼン5.7gを、酢酸40ml及び塩酸13mlの混合物に5℃で加え、亜硝酸ナトリウム30%溶液8.6gをゆっくり加えてジアゾ化し、15℃でメタノール200ml中のN-(ヒドロキシエチル)-N-(2-メタクリロイロキシ)エチル]アニリン6gとカップリングさせる。酢酸ナトリウムを加えることにより、pHを2.0〜2.5に維持する。沈殿物を1時間攪拌し、濾過し、水及びメタノールで洗浄し、乾燥し、酸化アルミニウムの層を通してジオキサン中で濾過する。1.1の収量は6.2gである。融点148℃。
元素分析:C2828(496.57)
計算値:C67.73;H5.68;N16.92
実測値:C67.80;H5.70;N16.70
1.2
Figure 0004113123
1.1と同様の方法で、3-ブロモ-1,2-プロパンジオール及びN-[2-(メタクリロイロキシ)エチル]アニリンからN-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-N-[2-(メタクリロイロキシ)エチル]アニリンを製造した。生成物をクロマトグラフィ(酸化アルミニウム;最初トルエン/ジオキサン=1:1、次いでジオキサン)により精製する。収率は28%である。
1.1と同様の方法で、4-アミノ-3-メチル-4'-シアノアゾベンゼンのジアゾ化及びN-(2,3-ジヒドロキシプロピル-N-[2-(メタクリロイロキシ)エチル]アニリンとのカップリングにより、モノマー1.2を製造する。クロマトグラフィ精製を、シリカゲルによりトルエン/ジオキサン=1:1を用いて行う。収率は30%である。融点148℃。
1.3
Figure 0004113123
2,2'-[4-(4-アミノフェニルアゾ)フェニルイミノ]ジエタノール10.7gを、水60ml及び塩酸20mlの混合物に5℃で加え、亜硝酸ナトリウム30%溶液12.8gをゆっくり加えてジアゾ化し、15℃でメタノール300ml中のN-メチル-N-(2-メタクリロイロキシ)エチル]アニリン10gとカップリングさせる。酢酸ナトリウムを加えることにより、pHを2.7に維持する。沈殿物を1時間攪拌し、濾過し、水洗し、乾燥し、キシレンから再結晶化する。1.3の収量は7.2gである。融点149℃。
元素分析:C2934(530.63)
計算値:C65.64;H6.46;N15.84
実測値:C65.70;H6.40;N15.70
1.4
Figure 0004113123
2,2'-[4-(4-アミノフェニルアゾ)フェニルイミノ]ジエタノール12.8gを、水60ml及び塩酸20mlの混合物に5℃で加え、亜硝酸ナトリウム30%溶液15.2gをゆっくり加えてジアゾ化し、15℃でメタノール300ml中のN-(ヒドロキシエチル)-N-(2-メタクリロイロキシ)エチル]アニリン10.6gとカップリングさせる。酢酸ナトリウムを加えることにより、pHを2.7に維持する。沈殿物を1時間攪拌し、濾過し、水洗し、乾燥し、キシレンから再結晶化する。1.4の収量は15gである。融点105℃。
元素分析:C3036(560.66)
計算値:C64.27;H6.47;N14.99
実測値:C64.10;H6.40;N14.20
実施例2a:ジメチルアクリルアミドの組み込みによる溶解性の改良
以下、下記構造を有する本発明のコポリマーを説明する:
Figure 0004113123
x-モノマーをアゾベンゼン染料分子により官能化する。y-モノマーはジメチルアクリルアミド(DMAA)からなる。
モノマー比x:y(下記表参照;連続番号1〜5によりポリマーを表示)が異なる5種のコポリマーを調製した。コポリマーをホモポリマー(x=100%;表示:ポリマー6)と比較する。
ポリマーの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定した。GPCは、溶媒としてN,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)を用いて行った。シグナルの評価は、DMAC中60℃においてPMMAに有効な校正関係に基づいて行った。重量平均分子量は、10500〜13300g/モルの範囲であった。数平均分子量は5500〜6810g/モルの範囲であった。
ガラス転移温度は、熱流量測定法により測定した(装置:DSC-2熱量計(Perkin-Elmer製))。加熱速度20K/分で室温から300℃まで、2回加熱を行った。2回の加熱の間に、試料は、窒素でフラッシュ(30ml/分)しながら、320K/分で室温まで急速に冷却した。2回目の加熱におけるポリマー1〜6のガラス転移温度は92℃から104℃の間であった。
ポリマーの溶解性は、種々の単純アルコール又は変性アルコールについて調べた。結果を下記表に示す。「+」は適切な溶媒を意味し、「(+)」は完全には溶解しないことを意味し、「−」は不適切な溶媒を意味する。ポリマーの2%溶液を使用した。次の溶媒について調べた:メタノール、エタノール、ブタノール、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン(HMP)、2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール(TFP)及びテトラヒドロフラン(THF)。
Figure 0004113123
驚くべきことに、DMAAを配合することにより、TFPへの溶解性が顕著に改善された。ポリマー6とポリマー1〜5との比較を参照。後者のポリマーにとっては、TFEは適切な溶媒である。これらポリマーは、少なくとも50モル%又は少なくとも18質量%のDMAAを含んでいる。
実施例2b:本発明外の比較例
以下、下記構造を有するコポリマーを説明する:
Figure 0004113123
モノマー単位xはポリマー6に相当する(実施例2a参照)。この単位は、20、30、40及び50モル%の量で含まれる。これら一連のポリマーは、2b、3b、4b及び5bと表示する。モノマー単位yはアクリルアミドからなる。
実施例2aと同様にして、2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール(TFP)中のポリマーの溶解度を調べた(20%溶液)。結果を下記表に示す。
Figure 0004113123
モノマー単位yの溶解性向上作用は僅かである。ポリマーをTFP中に完全に溶解するには、少なくとも80モル%のモノマーyがポリマーに含まれなければならない。一方、本発明のポリマー(実施例2a)では、同じ効果を達成するために、たった50モル%のジメチリルアクリリアミド(DMAA)が必要なだけである。
実施例3:ヒドロキシエチル基を含む染料分子の使用による溶解性の改良
本発明において溶解性向上作用を担うアゾベンゼン染料を側鎖として含むポリマーを製造した。溶解性向上性ヒドロキシエチル基は、スペーサの結合サイトに及び/又は各アゾベンゼン染料の遊離位置に結合される。
製造されたポリマーには、7〜10の連続番号を付す。
ポリマー7:
Figure 0004113123
(実施例1.1からのモノマー)
ポリマー8:
Figure 0004113123
(実施例1.2からのモノマー)
ポリマー9:
Figure 0004113123
(実施例1.3からのモノマー)
ポリマー10:
Figure 0004113123
(実施例1.4からのモノマー)
これらポリマーをポリマー6(実施例2参照)と比較する。結果は以下の通りである:ポリマー7〜10は(ポリマー6と同様)THFに溶解することができるのみならず、(ポリマー6とは対照的に)HMPにも溶解することができる(2%濃度)。ポリマー中のOH基の割合が大きくなるほど、溶媒HMPのヒドロキシ基との相互作用力が大きくなり、HMPが溶媒としてより良好に作用する。詳細は以下の通りである:ポリマー7はHMPに不完全にしか溶解せず、ポリマー8及び9はほぼ完全に溶解し、ポリマー10はHMPに非常によく溶解する。
実施例4:光有機複屈折値の大きさ
薄フィルムとして高光誘起複屈折値を示す、数種の本発明のポリマーを製造した。本発明のポリマー1〜5(実施例2参照)及び7〜9(実施例3参照)を、光照射実験において調べた。元は等方性であるポリマーフィルムの光誘起複屈折値の大きさを測定した。
フィルム製造の説明:
厚さ1mmのガラス基板に、ポリマー薄フィルムを供給する。フィルムは、スピンコーティング法により被覆する。そのために、ポリマーを、適当なアルコールに20〜75g/lの典型的な濃度で溶解し、ポリマー溶液を、2000m−1の回転速度で回転している基板に滴下する。形成されるポリマーフィルムは、典型的には200nmの厚さを有する。被覆されたガラス基板を60℃の真空オーブン中で2時間保管することにより、フィルムから残留溶媒を除去する。
光照射実験の説明:
上記のようにして製造した各試料を、試料に対して垂直な方向から入射する偏光レーザ光によりポリマー側から照射する(書き込み工程)。波長514nmのアルゴンイオンレーザ(Continuum製)を光源として使用する。このいわゆる書き込みレーザの強度は100mW/cmである。トランス-シス-トランス異性化サイクルが、ポリマーのアゾベンゼン側方基分子に誘起され、レーザの偏光方向から離れた側方基の正味配向をもたらす。このような分子ダイナミクスは、巨視的にポリマーフィルムの面内での複屈折Δnにおいて明瞭である。ダイナミクスは、与えられた光照射パラメータでは、分単位で起こる。
誘起複屈折の時間挙動は、ヘリウム−ネオンレーザ(典型的な強度:1mW/cm)を用いて波長633nmで実験的に測定される。ポリマー層上へのこのいわゆる読み取りレーザの光は、層からの垂直線に対して15度の立体角をなす。読み取り光及び書き込み光は、ポリマー層上で重なる。読み取り光の偏光方向は、ポリマーフィルムの面で、書き込み光の偏光に対して45度の角度をなす。偏光方向は、ポリマー層が複屈折性であるかぎり、ポリマー層を通過する際に回転する。この回転に伴って、試料の後方でビームパス上に設置したアナライザーによれば、読み取り光の強度Iは増加し、元の偏光方向に垂直な光の透過が可能になる。強度Iは、Iが増加するにつれ、同じ割合で低下する。Iは、同様に配置されているが、読み取りレーザの元の偏光方向を選択する、アナライザーによる透過強度として定義される。実験的には、元の方向に対して平行および垂直である偏光方向の2つの成分は、偏光ビームスプリッタにより分離され、2つのSiフォトダイオードにより検出される。
複屈折Δnは、測定された強度から、下記式により計算される:
Figure 0004113123
ここで、dは、ポリマー層の厚さを示し、λ=633nmは、読み取りレーザの光波長を示す。
この式において、読み取りはポリマー層に垂直な方向で行われると近似的に仮定される。
各ポリマーは、以下の複屈折値を有する:
ポリマー1:Δn=0.06;ポリマー2:Δn=0.11;ポリマー3:Δn=0.17;ポリマー4:Δn=0.20;ポリマー5:Δn=0.21;ポリマー6:Δn=0.44;ポリマー7:Δn=0.39;ポリマー8:Δn=0.10;ポリマー9:Δn=0.23;ポリマー10:Δn=0.12。
実施例5:ジメチルアクリルアミドの配合による光誘起分子ダイナミクスの可逆性の改良
実施例2aに記載した本発明のポリマー1〜5のフィルムを、実施例4の手順に従って製造し、10分間光照射し、複屈折構造を読み取りレーザで調べた。複屈折Δnは、照射時間内で最大値に達し、その値を保持する。次いで、Δnは、書き込み光の偏光方向を90度回転させることにより、消失する。この消失過程は、Δn=0となると完了する。この第1の過程の直後に、同じパターンに従ってさらに4回の書き込み/消去過程を行う。結果は次のとおりである:時間曲線Δn(t)は、各サイクルでほとんど変化しない。達成できる最大複屈折値は、各サイクルで同じである(許容誤差:5%)。ポリマー1〜5の挙動は、このような書き込み/消去サイクルにおいて十分近似的に可逆的であると分類される。
図1は、例として、5回の書き込み/消去サイクルにおけるポリマー4の複屈折曲線を示す。
本発明の溶解性向上モノマーを含まないポリマー6について、予め同様の実験を行った。複屈折Δnは10分の照射後にも最大値に達しなかったので、5回の書き込み過程の照射時間は30分に延長した。複屈折曲線の形状は、新しい各サイクルにより変化することに注目すべきである。特に、到達可能最大複屈折値は、サイクル数が増すにつれて低下する。5回目の書き込み過程の終了後、複屈折は、第1回目の書き込み過程において到達する値の33%にすぎなかった(下記表も参照)。
図2は、5回の書き込み/消去サイクル中のポリマー6の複屈折曲線を示す。
ポリマー1〜5に比べてより長い照射時間が結果を質的に損なうことが無いように、ポリマー6については、書き込み/消去サイクルを、書き込み時間を100秒として実施した。複屈折曲線は、この短い書き込み時間では最大値に達しなかった。結果は以下の通りである:これらサイクルも可逆的には挙動しない。すなわち、100秒後に到達した値は、第5回目のサイクル後で、第1回目のサイクルで到達した値の71%でしかなかった。
図3は、この実験に関する複屈折曲線を示す。
結果のまとめ
Figure 0004113123
ジメタクリルアミドモノマー単位を少なくとも50モル%の量(上記表のモノマーy参照)を配合することにより、TFPへのポリマーの溶解性が達成されるのみならず、光ダイナミクスの可逆性も顕著に改良された。複屈折値の可逆的書き込み・消去は、光アドレス可能なポリマーを書換型データ記憶材料中の機能層として使用するための基本的必須要件である。
実施例6:青色書き込みレーザに対するポリマーの適合性
ポリマー4の例は、緑色書き込みレーザ(実施例4及び5)が適しているのみならず、例えば青色書き込みレーザも適していることを示している。レーザ照射を、実施例4に示した基本に従って実施した。書き込みレーザは、407nmの光波長及び100mW/cmの強度を有していた。結果は次の通りである:Δn=0.2の最大複屈折値が同様に誘起された(測定誤差:約10%)。
図1は、5回の書き込み/消去サイクルにおけるポリマー4の複屈折曲線である。 図2は、5回の書き込み/消去サイクルにおけるポリマー6の複屈折曲線である。 図3は、ポリマー6について書き込み時間を100秒として実施した書き込み/消去サイクルにおける複屈折曲線である。

Claims (6)

  1. a)ポリマー主鎖に側鎖として結合された少なくとも1つのアゾベンゼン染料、
    b)少なくとも1つの形状異方性基、
    c)式(VI):
    Figure 0004113123
    [式中、R’及びR”は、相互に独立して、基C2n+1又はC2n-OH(ここで、nは1〜10である。)を表すか、若しくは両者が一緒になって架橋基-C2n-(ここで、nは2〜6である。)、-(C-O)-C-(ここで、nは1〜5である。)又は-C-N(C2n+1)-C-(ここで、nは1〜6である。)を表す。
    Rは、水素またはメチルである。]、
    式(VIa):
    Figure 0004113123
    [式中、R'''は、-(C-O)-H(ここで、nは2〜4である。)または-C2n-C(=O)NR''''R'''''(ここで、nは2〜10である。R''''及びR'''''は、相互に独立して、基C2n+1又はC2n-OH〈ここで、nは1〜10である。〉、若しくは両者が一緒になって架橋基-C2n-〈ここで、nは2〜6である。〉、-(C-O)-C-〈ここで、nは1〜5である。〉又は-C-N(C2n+1)-C-〈ここで、nは1〜6である。〉を表す。)を表す。
    Rは、水素またはメチルである。]
    から選択される少なくとも1つの繰り返し単位、
    d)所望により、物質中の染料含有量および/またはメソゲン含有量の減少を達成するために組み込まれるさらなるモノマー
    を含んでなる、側鎖ポリマー。
  2. ポリマーは、式(I):
    Figure 0004113123
    [式中、R及びRは、相互に独立して、水素又は非イオン性置換基を表す。
    mおよびnは、相互に独立して、0〜4である。
    及びXは、-X1’-R又は-X2’-R(ここで、X1’及びX2’は、直接結合、-O-、-S-、-(N-R)-、-C(R)-、-(C=O)-、-(CO-O)-、-(CO-NR)-、-(SO)-、-(SO-O)-、-(SO-NR)-、-(C=NR)-又は-(CNR-NR)-〈ただし、R、R、R又はRは、相互に独立して、水素、C−C20-アルキル、C−C10-シクロアルキル、C−C20-アルケニル、C−C10-アリール、C−C20-アルキル-(C=O)-、C−C10-シクロアルキル-(C=O)-、C−C20-アルケニル-(C=O)-、C−C10-アリール-(C=O)-、C−C20-アルキル-(SO)-、C−C10-シクロアルキル-(SO)-、C−C20-アルケニル-(SO)-又はC−C10-アリール-(SO)-を表すか、若しくは-X1’-R又は-X2’-Rは、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF又はCClを表してもよい。R及びRは、相互に独立に、水素、ハロゲン、C−C20-アルキル、C−C20-アルコキシ、C−C10-シクロアルキル、C−C20-アルケニル又はC−C10-アリールを表す。〉である。)を表す。]
    で示される、化学的に結合されたアゾベンゼン染料を含む、請求項1に記載の側鎖ポリマー。
  3. 製造時に、式(II):
    Figure 0004113123
    [式中、Rは、水素又はメチルを表す。
    及びR は、相互に独立して、水素又は非イオン性置換基を表す。
    mおよびnは、相互に独立して、0〜4である。
    は、 - 1’ - 又は - 2’ - を表し、X 1’ 及びX 2’ は、直接結合、 - - - - -( - )- - ( )- -( C=O )- -( CO - )- -( CO - NR )- -( SO )- -( SO - )- -( SO - NR )- -( C=NR )- 又は -( CNR - NR )- 〈ただし、R 、R 、R 又はR は、相互に独立して、水素、C −C 20 - アルキル、C −C 10 - シクロアルキル、C −C 20 - アルケニル、C −C 10 - アリール、C −C 20 - アルキル -( C=O )- 、C −C 10 - シクロアルキル -( C=O )- 、C −C 20 - アルケニル -( C=O )- 、C −C 10 - アリール -( C=O )- 、C −C 20 - アルキル -( SO )- 、C −C 10 - シクロアルキル -( SO )- 、C −C 20 - アルケニル -( SO )- 又はC −C 10 - アリール -( SO )- を表すか、若しくは - 1’ - 又は - 2’ - は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、CF 又はCCl を表してもよい。R 及びR は、相互に独立に、水素、ハロゲン、C −C 20 - アルキル、C −C 20 - アルコキシ、C −C 10 - シクロアルキル、C −C 20 - アルケニル又はC −C 10 - アリールを表す。〉を表す。
    は、-O-、-S-、-(N-R)-、-C(R)-、-(C=O)-、-(CO-O)-、-(CO-NR)-、-(SO)-、-(SO-O)-、-(SO-NR)-、-(C=NR)-、-(CNR-NR)-、-(CH)-、p-又はm-C-、若しくは式:
    Figure 0004113123
    で示される2価基を表す。
    iは、0〜4の整数であり、i>1の場合、Qは種々の意義を有してよい。
    は、-(CH)-を表し、鎖は-O-、-NR-又は-OSiR10 O-により中断されていてよい。
    は、単結合、-O-、-S-又は-NR-を表す。
    pは、2〜12の整数を表す。
    は、水素、メチル、エチル又はプロピルを表す。
    10は、メチル又はエチルを表す。]
    で示されるモノマーの少なくとも1種が使用される、請求項1または2に記載の側鎖ポリマー。
  4. 製造時に、式(X)〜(XIII)で示されるモノマーの少なくとも1種が使用される、請求項1〜3のいずれかに記載の側鎖ポリマー:
    Figure 0004113123
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の側鎖ポリマーから製造された記録材料。
  6. 請求項5に記載の記録材料から製造されたデータ記憶材料。
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