JP4101737B2 - 永久磁石用合金粉末の製造装置及び製造方法 - Google Patents

永久磁石用合金粉末の製造装置及び製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、希土類焼結磁石等の永久磁石を製造する際に用いられる合金粉末の製造装置及び製造方法に関するものであり、特に、水素吸蔵による粉砕に際し、効率的且つ確実に脱水素を行うための技術に関する。
例えばNd−Fe−B磁石等のR−B−M系(Rは、Yを含む希土類元素の1種以上である。Mは、Feを必須とし、その他金属元素を含む。)焼結磁石は、磁気特性に優れていること、主成分であるNdが資源的に豊富で比較的安価であること等の利点を有することから、近年、その需要は益々拡大する傾向にある。このような状況から、R−B−M系焼結磁石の磁気特性を向上するための研究開発や、品質の高い希土類焼結磁石を製造するための製造方法の改良等が各方面において進められている。
希土類焼結磁石の製造方法としては、焼結法が一般的であり、溶解→鋳造→合金塊粗粉砕→微粉砕→プレス→焼結の各工程からなるプロセスが広く適用され、ある程度高い磁石特性が得られている(例えば、特許文献1等を参照)。ただし、前述のようなプロセスにより焼結磁石を製造する場合、合金塊粉砕に手間がかかるため生産性が低いという問題がある。
この問題を解決し、合金塊の粉砕を容易に行なうために、従来、水素吸蔵粉砕が利用されている。水素吸蔵粉砕では、水素を吸蔵した合金にクラックが生じて自己崩壊的に粉末化が進行する。また、水素吸蔵は、合金の耐酸化性を向上する上でも有効である。しかしながら、静止した容器中において原料合金塊に水素を吸蔵させ、次いで熱処理を施した場合、表面付近は粉末化するものの、中心部付近まで粉末化することは難しい。このため塊状の合金が残ってしまうという不都合がある。
また、特に複数の合金塊を同時に処理する場合、水素吸蔵工程及び熱処理工程において合金塊を均等に加熱することが難しく、合金の処理温度にばらつきが生じ易い。これら塊状の合金の残存や処理温度のばらつきは、焼結磁石を効率的に製造する上で大きな障害となり、得られる焼結磁石の特性を損なう原因ともなる。
さらに、従来の装置では、処理用の容器への合金塊の投入、合金粉末の払い出しが必要であるため、自動化ライン内へのこれらの処理の組み込みが難しいという問題もある。
そこで、これらの課題を解決する方法として、本願出願人は、容器に運動を加えることで効率的な水素吸蔵粉砕工程を実現することを既に提案している(特許文献2参照)。特許文献2記載の方法では、水素吸蔵工程及び熱処理工程において、合金塊が封入された容器に回転、揺動、振動等の運動を与えることにより、合金塊同士や合金塊の容器の内壁とを衝突させ、合金塊の破砕や粉砕を行うようにしている。
特開昭59−46008号公報 特開平4−147908号公報
ところで、先の特許文献2記載の技術では、水素吸蔵後の熱処理工程を、真空中、あるいは不活性雰囲気中で行うとある。ここで、例えば熱処理工程を真空中で行おうとすると、熱処理部内に周囲の空気が浸入する可能性が高く、合金粉末を酸化して特性を劣化する原因になる。また、放出される水素に空気が混入することは、安全性の観点からも好ましいものではない。一方、熱処理部内を不活性ガスで置換して脱水素を行う場合、放出される水素により、熱処理部内の水素濃度が次第に高くなり、効率的な脱水素の妨げとなる。
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、酸化による特性劣化を回避することができ、しかも効率的な脱水素を実現することが可能な永久磁石用合金粉末の製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するために、本発明の永久磁石用合金粉末の製造方法は、希土類元素、金属元素及びホウ素を含む原料合金塊に水素を吸蔵させ、これを粉砕して合金粉末とする永久磁石用合金粉末の製造方法において、中心軸に沿って、水素吸蔵部と、水素吸蔵した合金粉末を加熱し脱水素する熱処理部と、冷却部とが順次配置されるとともに、これら各部が回転運動する構造の一体容器を用い、前記一体容器の入口側に、内部に不活性ガスを導入するための不活性ガス導入管及び水素ガスを導入するための水素ガス導入管を設けるとともに、出口側に、内部のガスを排気する排気管を設け、前記水素ガス導入管より水素ガスを導入しながら水素吸蔵部において原料合金塊に水素を吸蔵させた後、水素吸蔵部から熱処理部へと合金粉末を移動させ、前記不活性ガス導入管から不活性ガスを大気圧以上の圧力で導入するとともに熱処理部内において水素吸蔵した合金粉末を加熱して脱水素を行い、導入される不活性ガスを合金粉末から放出された水素ガスとともに前記排気管より排気し、前記熱処理部で脱水素を行った合金粉末を冷却部で冷却することを特徴とする。
水素吸蔵による粗粉砕において、合金塊は、水素ガスと接触することにより表面付近にクラックを生じ、表面付近が次々に粉末化する。このとき、粉末化した部分が表面から次々に崩落し、合金塊の破砕ないし粉砕が進む。そして、水素吸蔵後には、合金粉末に含まれる水素を脱水素するための熱処理を行うが、この熱処理を真空中で行うと、空気の浸入による合金粉末の酸化や、水素に空気が混入することによる安全面での課題が問題となる。また、雰囲気を不活性ガスで置換しただけでは、効率的な脱水素は難しい。
本発明においては、熱処理部に不活性ガス供給機構を設け、熱処理部内に不活性ガスを流しながら熱処理を行うようにしているので、放出された水素は不活性ガスとともに速やかに排出され、効率的な脱水素が実現される。また、熱処理部には常に新たな不活性ガスが導入されるので、熱処理部内に空気が浸入することはない。
したがって、装置の大きさに対して処理能力が大幅に改善され、熱処理部を通過させることで、合金粉末の脱水素が円滑に進行し、合金粉末からほぼ完全に水素が除去される。連続処理を行う自動化ラインへの組み込みも容易である。
本発明によれば、効率的な脱水素を実現し得る永久磁石用合金粉末の製造装置及び製造方法を提供することが可能である。また、本発明によれば、合金粉末の酸化による特性劣化を抑えることができ、安全性の確保も可能である。さらに、装置の大きさに対して処理能力を大幅に向上させることが可能であり、自動化も容易である。
以下、本発明を適用した永久磁石用合金粉末の製造装置及び製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明の製造装置、製造方法において、製造対象となる永久磁石用合金粉末は、希土類焼結磁石の製造に用いられるものである。そこで、先ず、この希土類焼結磁石及びその製造方法について概略説明する。
希土類焼結磁石は、希土類元素、遷移金属元素及びホウ素を主成分とするものである。ここで、磁石組成(合金組成)は、目的に応じて任意に選択すればよい。例えば、R−T−B(Rは希土類元素の1種又は2種以上、但し希土類元素はYを含む概念である。TはFeまたはFe及びCoを必須とする遷移金属元素の1種または2種以上であり、Bはホウ素である。)系希土類焼結磁石とする場合、磁気特性に優れた希土類焼結磁石を得るためには、焼結後の磁石組成において、希土類元素Rが20〜40重量%、ホウ素Bが0.5〜4.5重量%、残部が遷移金属元素Tとなるような配合組成とすることが好ましい。ここで、Rは、希土類元素、すなわちY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb及びLuから選ばれる1種、または2種以上である。中でも、Ndは、資源的に豊富で比較的安価であることから、主成分をNdとすることが好ましい。また、Dyの含有は異方性磁界を増加させるため、保磁力Hcjを向上させる上で有効である。
あるいは、添加元素Mを加えて、R−T−B−M系希土類焼結磁石とすることも可能である。この場合、添加元素Mとしては、Al、Cr、Mn、Mg、Si、Cu、C、Nb、Sn、W、V、Zr、Ti、Mo、Bi、Ga等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を選択して添加することができる。これら添加元素Mの添加量は、残留磁束密度等の磁気特性を考慮して、3重量%以下とすることが好ましい。添加元素Mの添加量が多すぎると、磁気特性が劣化するおそれがある。
勿論、これら組成に限らず、希土類焼結磁石として従来公知の組成全般に適用可能であることは言うまでもない。
上述の希土類焼結磁石を製造するには、粉末冶金法が採用される。以下、希土類焼結磁石の粉末冶金法による製造方法について説明する。
図1は、粉末冶金法による希土類焼結磁石の製造プロセスの一例を示すものである。この製造プロセスは、基本的には、合金化工程1、粗粉砕工程2、微粉砕工程3、磁場中成形工程4、焼結工程5、時効工程6、加工工程7、及び表面処理工程8とにより構成される。なお、酸化防止のために、時効後までの各工程は、ほとんどの工程を真空中、あるいは不活性ガス雰囲気中(窒素雰囲気中、Ar雰囲気中等)で行う。
合金化工程1では、原料となる金属、あるいは合金を磁石組成に応じて配合し、真空あるいは不活性ガス、例えばAr雰囲気中で溶解し、鋳造することにより合金化する。鋳造法としては、溶融した高温の液体金属を回転ロール上に供給し、合金薄板を連続的に鋳造するストリップキャスト法(連続鋳造法)が生産性等の観点から好適であるが、本発明はそれに限ったものではない。原料金属(合金)としては、純希土類元素、希土類合金、純鉄、フェロボロン、さらにはこれらの合金等を使用することができる。凝固偏析を解消すること等を目的に、必要に応じて溶体化処理を行ってもよい。溶体化処理の条件としては、例えば真空またはAr雰囲気下、700〜1500℃領域で1時間以上保持する。
合金は、ほぼ最終磁石組成である単一の合金を用いても良いし、最終磁石組成になるように、組成の異なる複数種類の合金を混合しても良い。混合は、合金・原料粗粉・原料微粉のどの工程でもよいが、混合性を考慮すると合金での混合が望ましい。
粗粉砕工程2では、先ず、鋳造した原料合金の薄板、あるいはインゴット等をある程度粉砕して、合金塊とし、水素吸蔵に供する。合金塊の寸法、形状に特に制限はないが、5〜100mm角程度とすることが好ましい。この粉砕は、例えばジョークラッシャ等により行えばよい。
粗粉砕工程2では、前記合金塊に対して水素吸蔵させ、粉砕を行う。原料合金塊に水素を吸蔵させると、相によって水素吸蔵量が異なり、これにより表面から自己崩壊的に粉砕が進行する。粗粉砕工程2では、前記水素吸蔵処理の後、熱処理により合金粉末の脱水素を行い、脱水素後の合金粉末を冷却して取り出す。
前述の粗粉砕工程2が終了した後、通常、粗粉砕した原料合金粉末に粉砕助剤を添加する。粉砕助剤としては、例えば脂肪酸系化合物等を使用することができるが、特に、脂肪酸アミドを粉砕助剤として用いることで、良好な磁気特性を有する希土類焼結磁石を得ることができる。粉砕助剤の添加量としては、0.03〜0.4重量%とすることが好ましい。この範囲内で粉砕助剤を添加した場合、焼結後の残留炭素の量を低減することができ、希土類焼結磁石の磁気特性を向上させる上で有効である。
粗粉砕工程2の後、微粉砕工程3を行うが、この微粉砕工程3は、例えばジェットミルを使用して行われる。微粉砕の際の条件は、用いる気流式粉砕機に応じて適宜設定すればよく、原料合金粉末を平均粒径が1〜10μm程度、例えば3〜6μmとなるまで微粉砕する。ジェットミルは、高圧の不活性ガス(例えば窒素ガス)を狭いノズルより開放して高速のガス流を発生させ、この高速のガス流により粉体の粒子を加速し、粉体の粒子同士の衝突や、衝突板あるいは容器壁との衝突を発生させて粉砕する方法である。ジェットミルは、一般的に、流動層を利用するジェットミル、渦流を利用するジェットミル、衝突板を用いるジェットミル等に分類される。
微粉砕工程3の後、磁場中成形工程4において、原料合金微粉を磁場中にて成形する。具体的には、微粉砕工程3にて得られた原料合金微粉を電磁石を配置した金型内に充填し、磁場印加によって結晶軸を配向させた状態で磁場中成形する。磁場中成形は、縦磁場成形、横磁場成形のいずれであってもよい。この磁場中成形は、例えば800〜1500kA/mの磁場中で、130〜160MPa前後の圧力で行えばよい。
次に焼結工程5・時効工程6において、焼結及び時効処理を実施する。すなわち、焼結工程5として原料合金微粉を磁場中成形後、成形体を真空または不活性ガス雰囲気中で焼結する。焼結温度は、組成、粉砕方法、粒度と粒度分布の違い等、諸条件により調整する必要があるが、例えば1000〜1150℃で5時間程度焼結すればよく、焼結後、急冷することが好ましい。焼結後、得られた焼結体に時効処理を施すことが好ましい。時効工程6は、得られる希土類焼結磁石の保磁力Hcjを制御する上で重要な工程であり、例えば不活性ガス雰囲気中あるいは真空中で時効処理を施す。時効処理としては、2段時効処理が好ましく、1段目の時効処理工程では、800℃前後の温度で1〜3時間保持する。次いで、室温〜200℃の範囲内にまで急冷する第1急冷工程を設ける。2段目の時効処理工程では、550℃前後の温度で1〜3時間保持する。次いで、室温まで急冷する第2急冷工程を設ける。600℃近傍の熱処理で保磁力Hcjが大きく増加するため、時効処理を一段で行う場合には、600℃近傍の時効処理を施すとよい。
前記焼結工程5・時効工程6の後、加工工程7及び表面処理工程8を行う。加工工程7は、所望の形状に機械的に成形する工程である。表面処理工程8は、得られた希土類焼結磁石の酸化を抑えるために行う工程であり、例えばメッキ被膜や樹脂被膜を希土類焼結磁石の表面に形成する。
以上の希土類焼結磁石の製造プロセスにおいて、本発明では、次のような製造装置、製造方法を用いて粗粉砕(水素吸蔵粉砕)を行い、永久磁石用合金粉末を得る。以下、本発明を適用した永久磁石用合金粉末の製造装置及び製造方法の実施形態について説明する。
本実施形態の永久磁石用合金粉末の製造装置は、図2に示すように、合金塊に水素を吸蔵させ破砕もしくは粉砕し合金粉末とする水素吸蔵部11と、水素吸蔵した合金粉末を加熱し脱水素する熱処理部12と、脱水素した合金粉末を除熱する冷却部13とを備えている。そして、これら水素吸蔵部11、熱処理部12、冷却部13は、同一の容器の中心円筒軸に沿って配置されている。
これら水素吸蔵部11、熱処理部12及び冷却部13を一体化した容器は、その中心軸が概ね水平となるように架台(図示は省略する。)上に支持されている。そして、中心軸を軸とする回転運動する構造となっている。また、容器を支持する架台には、水素吸蔵部11側をジャッキアップする機構が取り付けられている。これにより、各部間(水素吸蔵部11から熱処理部12、熱処理部12から冷却部13)における合金粉末の移動補助をすることができる。
水素吸蔵部11、熱処理部12及び冷却部13を一体化した容器には、入口側にガス導入管14が接続され、水素導入管15及び不活性ガス導入機構となるAr導入管16が挿入されている。一方、出口側には、排気管17が接続されており、容器内の空気、水素ガス、不活性ガス(窒素ガス)等の排気を行うようにしてある。また、水素吸蔵部11、熱処理部12及び冷却部13を一体化した容器は、図3に示すように、モータ24及びチェーン25により正逆双方向に回転可能とされている。モータ24は、例えばインバータにより回転方向、回転数が制御される。
水素吸蔵部11は、合金塊に水素を吸蔵させる領域であり、その内周面に容器中心軸を軸とする溝状若しくはフィン状の螺旋部18が形成されている。したがって、回転方向により、螺旋部18の作用で合金塊を滞留させたり、払い出しすることが可能である。また、水素吸蔵部11には、水素吸蔵に伴う発熱を抑えることを目的に、上部に冷却水を散布するシャワー19が設けられていてもよい。
熱処理部12は、加熱により合金粉末の脱水素を行う領域であり、外側に電熱体21が複数配置されており、容器外側から合金粉末を加熱する構造となっている。本例では、電熱体21として、熱処理部12の両側面、並びに上面に加熱する手段としてパネル状の抵抗加熱ヒータが3組配置され、容器内が均一な温度になるように制御されている。
また、熱処理部12においては、容器内周面に容器の中心軸に向かい突出する複数の突出部20が形成されている。これら複数の突出部20は、任意の配置関係であってよく、例えば図4に示すように、それぞれが90度づつずらした関係にある4枚の突出部20を形成したり、図2のように中心軸方向に千鳥状に複数組配置しても良い。突出部20の形状も、棚状のもの等、合金粉末が撹拌されるような形状であれば任意形状でよい。
冷却部13は、脱水素後の合金粉末を冷却して払い出すための領域であり、先の水素吸蔵部11と同様、容器内周面に容器中心軸を軸とする溝状若しくはフィン状の螺旋部22が形成されている。ただし、この螺旋部22の螺旋の方向は、水素吸蔵部11の螺旋部18の螺旋の方向とは逆である。
今回使用した容器の冷却部13には、図示していないが中心軸の円周上に配置した中心軸を公転する(自転はしない。)6本の小円筒が設置されており、熱処理部12から合金粉末が分割供給されるように溝状若しくはフィン状の螺旋部22が形成されている。各々の小円筒内に設けられた溝状若しくはフィン状の螺旋部22によって、合金粉末は撹拌移動しながら冷却される。さらに、各小円筒の外周には放熱フィンが複数設けられるとともに、この部分の冷却部13上に冷却水を散布するシャワー23が設置されている。
次に、上述の製造装置を用いた合金粉末の粗粉砕工程について説明する。図5に、図2に示す装置を用いた一連の工程を示す。
粗粉砕に際しては、先ず、合金塊を円筒形状のステンレス製容器である水素吸蔵部11に封入する(原料投入工程:ステップS1)。ここでは、重量百分率でNd31.5%、Dy1.5%、B1.1%、Al0.3%、残部Feなる組成を有する合金塊を粉砕し、約30mm角の合金塊を作製した。
原料投入後、ほぼ真空にまで排気(真空引き工程:ステップS2)した後、次いで、水素ガスを導入する(水素導入工程:ステップS3)。このとき、水素吸蔵部11内の圧力は、大気圧より若干高めに設定する。
そして、この雰囲気を維持しながら容器の中心軸(円筒軸)を軸とする回転運動をさせ、合金塊に水素を吸蔵させながら破砕ないし粉砕を進める。水素吸蔵部11の内周面には、容器の中心軸を軸とする溝状若しくはフィン状の螺旋部18が形成されており、水素導入中は水素吸蔵部11に合金塊もしくは合金粉末を滞留(貯留)させるべく逆回転させる(ステップS4)。
なお、水素吸蔵工程における合金塊の保持温度は、0〜200℃とすることが好ましい。したがって、温度が上昇し過ぎた場合には、シャワー19から冷却水を散布する。また、水素吸蔵工程の処理時間は、特に限定されないが、通常、0.5〜5時間程度とすることが好ましい。
その後、水素吸蔵部11を正回転させることにより、水素吸蔵部11中の合金粉末Mを溝状若しくはフィン状の螺旋部18の作用により熱処理部12へ移動させる(ステップS5)。このとき、容器を支持する架台を傾斜させる(熱処理部12側の容器を下降させる)ことにより、合金粉末Mの移動補助をすると良い。
水素吸蔵の後、熱処理部12では、容器内の水素ガスを排気するようにAr(この他の不活性ガスでもよい。)を導入しつつ(ステップS6)、熱処理部12内の合金粉末Mの温度が600℃程度になるようにヒータ21で加熱して、この温度を維持しながら合金粉末から水素ガスを放出させる(ステップS7)。
前記Arガスの導入は、不活性ガス供給機構であるAr導入管16により行い、熱処理部12内に大気圧以上の圧力でArガスを流す。供給するArガスを大気圧以上とすることで、熱処理部12内に周囲の空気が浸入することを防止することができる。また、Arガスを流し、冷却部を介して排気管17から順次排気することで、合金粉末から放出される水素も順次排出され、効率的な脱水素が可能となる。
熱処理工程は、合金粉末Mから水素を放出させる工程であり、吸蔵した水素の50%〜90%程度を放出するような熱処理を行うことが好ましい。熱処理工程は、本実施形態のように、水素吸蔵工程に引き続いて連続的に行うことが好ましい。熱処理条件に特に制限はないが、合金粉末からの水素除去を効率的に行うためには、200〜800℃にて0.5〜5時間の熱処理を行うことが好ましい。
熱処理工程中は、水素吸蔵部11、熱処理部12及び冷却部13を一体化した容器を正回転させる。水素吸蔵部11の螺旋部18と冷却部13の螺旋部22の螺旋の方向が逆であるので、正回転させると、水素吸蔵部11の螺旋部18は、合金粉末を図2中左方向に移動させるように作用し、一方、冷却部13の螺旋部22は、合金粉末を図2中右方向に滞留させるように作用する。したがって、これらの作用によって、合金粉末は熱処理工程中は熱処理部12に滞留する。
ここで、本実施形態では、熱処理部12に棚板状の突出部20が形成されているので、粉砕が促進され、水素の放出が促進される。すなわち、熱処理部12に合金粉末が滞留している間、円筒形状の容器である熱処理部12は回転しており、熱処理部12内の合金粉末は複数の突出部20により破砕ないし粉砕させながら脱水素が行われる。このとき、残存する合金塊や崩落した合金粉末には突出部20により加速度が与えられるので、これらは熱処理部12内において頻繁に移動して相互に接触ないし衝突し、また熱処理部12の内壁とも接触ないし衝突する。その結果、熱処理部12内への合金粉末の投入量が多く、熱処理部12内における合金粉末の占める割合が高くても、合金粉末は均一に加熱される。このため、装置の大きさに対して処理能力を大幅に向上させることができる。また、熱処理部12においても合金粉末の破砕ないし粉砕はさらに進行し、合金塊をほぼ完全に粉末化することが可能である。その後、熱処理部12内の温度が100℃程度になるように冷却させる。このとき合金粉末Mは200℃程度まで冷却すればよい。
前記熱処理部12における熱処理後、最後に、水素吸蔵部11、熱処理部12及び冷却部13を一体化した容器を逆回転させ、脱水素を行った合金粉末を熱処理部12から冷却部13に移動させる(ステップS8)。冷却部13では、空冷、水冷、油冷、冷却ガスの何れか、もしくはこれらの組み合わせにより合金粉末を冷却して、次工程(微粉砕工程)へ移動させる(ステップS9)。合金粉末は、50℃以下まで冷却することにより安定化させることが好ましい。
冷却部13には、溝状若しくはフィン状の螺旋部22を水素吸蔵部11とは逆方向に形成してある。したがって、逆回転させることにより、冷却部12中の溝状若しくはフィン状の螺旋部22により、合金粉末は冷却部13を通過し、温度を下げられた後、排気管17側の排出部から払い出される。このとき、容器を支持する架台を傾斜させる(排気管17側へ容器を下降させる)ことにより、合金粉末の移動補助をすると良い。
以上の装置及び方法においては、同一の容器で各工程を処理することができるため、高収率、短時間で効率が良く、且つ合金粉末の発火等も無く安全に微粉砕工程へ供給することができる。冷却工程後の合金は、例えば粒径1〜500μm程度の粒子から構成される粉末となる。
以上、水素吸蔵による粗粉砕について説明したが、本発明がこの例に限られるものではなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。例えば、先の例では、水素吸蔵工程や熱処理工程において、回転運動を与えることで破砕や粉砕を促進するようにしているが、例えば各工程において、回転、揺動、振動の2種類以上を含む複合運動を運動付与手段によって与え、粉砕を促進するようにしてもよい。
揺動や振動を運動付与手段によって与える場合、加速度の向きはいずれの方向であってもよく、例えば、鉛直方向の加速度を有する運動や水平方向の加速度を有する運動、あるいはこれらが複合された運動等のいずれであってもよい。超音波により振動させる場合には、ホーンを容器(水素吸蔵部11や熱処理部12)に密着させて振動を与えればよい。
容器に与える運動が回転運動を含むとき、回転数は0.1〜10回転/分であることが好ましい。容器に与える運動が揺動運動や振動運動を含むとき、周期は0.05ミリ秒〜1分、振幅は10μm〜1mであることが好ましい。
希土類焼結磁石の製造プロセスの一例を示すフロー図である。 本発明を適用した永久磁石用合金粉末製造装置の一構成例を模式的に示す側面図である。 水素吸蔵部の内部構造を示す断面図である。 熱処理部の内部構造を示す断面図である。 本発明装置及び方法による粗粉砕工程を工程順に示すフロー図である。
符号の説明
11 水素吸蔵部、12 熱処理部、13 冷却部、15 水素導入管、16 Ar導入管、18 螺旋部、20 突出部、21 電熱体、22 螺旋部

Claims (3)

  1. 希土類元素、金属元素及びホウ素を含む原料合金塊に水素を吸蔵させ、これを粉砕して合金粉末とする永久磁石用合金粉末の製造方法において、
    中心軸に沿って、水素吸蔵部と、水素吸蔵した合金粉末を加熱し脱水素する熱処理部と、冷却部とが順次配置されるとともに、これら各部が回転運動する構造の一体容器を用い、
    前記一体容器の入口側に、内部に不活性ガスを導入するための不活性ガス導入管及び水素ガスを導入するための水素ガス導入管を設けるとともに、出口側に、内部のガスを排気する排気管を設け、
    前記水素ガス導入管より水素ガスを導入しながら水素吸蔵部において原料合金塊に水素を吸蔵させた後、水素吸蔵部から熱処理部へと合金粉末を移動させ、
    前記不活性ガス導入管から不活性ガスを大気圧以上の圧力で導入するとともに熱処理部内において水素吸蔵した合金粉末を加熱して脱水素を行い、導入される不活性ガスを合金粉末から放出された水素ガスとともに前記排気管より排気し、
    前記熱処理部で脱水素を行った合金粉末を冷却部で冷却することを特徴とする永久磁石用合金粉末の製造方法。
  2. 前記熱処理部において、合金粉末の温度を200℃〜800℃に保持することを特徴とする請求項1記載の永久磁石用合金粉末の製造方法。
  3. 前記熱処理部に揺動、振動から選択される少なくとも1種を与えることを特徴とする請求項1記載の永久磁石用合金粉末の製造方法。
JP2003400413A 2003-11-28 2003-11-28 永久磁石用合金粉末の製造装置及び製造方法 Expired - Lifetime JP4101737B2 (ja)

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