JP4095743B2 - 透過型電子顕微鏡 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は透過型電子顕微鏡に係り、特に、透過型電子顕微鏡における2つの試料透過像間の視野位置ずれの計測と視野位置ずれの自動補正,像回転角の計測と像回転角の自動補正,像回転角の出力に係る技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の透過型電子顕微鏡において、試料の観察,撮影を行った際、視野が時間の経過と共に徐々に移動する現象、いわゆる試料ドリフトが発生する。試料ドリフトの発生要因の主なものとして、レンズ電流による発熱による試料ステージの伸縮,電子線照射に伴う試料および試料支持膜の熱的伸縮,試料微動ステージの急激な移動と急停止などが挙げられる。試料ドリフトは、特に高倍率における写真撮影や微小領域におけるX線分析を行う際に、写真のぼけや分析精度低下といった問題を招く。
【0003】
そこで、このような試料ドリフトに起因した問題を解決するために、試料への予備電子線照射やカーボン蒸着による補強,帯電防止措置がとられたり、画像処理による方法として、特開平5−343020 号公報に記載された技術では、TVカメラで撮像した試料透過拡大像をテンプレートマッチング画像処理方式により補償する方法、特開平7−272665 号公報に記載された技術では、撮像した2つの試料透過拡大像のヒストグラムを算出し、ヒストグラムピークの移動量からドリフト量および変位方向を演算し視野ずれ補正をを行う方法が提案されている。
【0004】
試料への電子線予備照射やカーボン蒸着による試料ドリフトの補正は、上記のように煩雑かつ多大な時間を費やすものであった。また、画像処理によるドリフト補正では、正確な画像処理を行えるよう、あらかじめ理想的なコントラストを呈している必要があり、きわめて特徴の少ない試料や無染色生物試料を高倍率で観察する場合など、コントラストが不十分な箇所において、高精度なドリフト補正が困難である問題があった。
【0005】
また、従来の透過型電子顕微鏡では、2つの試料透過像の像回転角をリアルタイムで精密に計測,表示することは不可能であった。図2は、透過型電子顕微鏡による透過像の一例を示す図である。従来の透過型電子顕微鏡では、図2(a)に示すような、ある試料透過像58に対して電子レンズの励磁条件を変えて像回転を行い、図2(b)に示すような試料透過像を得る機能を備えていたが、基準となる試料透過像と励磁条件を変えた試料透過像の2つの試料透過像における像回転角を測定するためには、各々の像を写真撮影し、その後測定するという方法がとられていたので、2つの試料透過像の像回転角をリアルタイムで精密に計測,表示することは不可能であった。また、所望する像回転角の試料透過像を高精度に得ることも不可能であった。さらに、電子レンズ取り付けの機械的公差による光軸ずれにより、像回転させるために電子レンズの励磁条件を変えた際には、図2(a)に示す透過像の中心点56が、図2(b)に示すように、中心点59の位置になる像回転中心位置がずれる(視野がずれる)現象が生じ、試料パターン57が視野からはみ出してしまっていた。この視野ずれの精密な補正は、自動的に且つリアルタイムで行うことはできなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の透過型電子顕微鏡では、以上に述べたように、試料透過拡大像の試料ドリフトすなわち、視野の位置ずれを高精度に短時間で計測,補正することは不可能であった。また、試料透過像を電子レンズの励磁条件を変えて回転させた時の像回転角をリアルタイムで正確に計測,表示し、且つ所望する像回転角の試料透過像を高精度に得ることは不可能であり、さらに、励磁条件を変化させた際に生ずる視野ずれの補正を自動的に行うことはできなかった。
【0007】
本発明は上述のような問題を解決し、透過型電子顕微鏡における記録した試料透過像に対し、任意の設定時間後に記録した試料透過像の2つの画像間の視野ずれ量および方向をリアルタイムで高精度に計測,表示し、視野ずれを自動的に補正する透過型電子顕微鏡を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、記録した試料透過像に対し、電子レンズの励磁条件を変えて回転し記録した試料透過像の2つの画像間の像回転角をリアルタイムで正確に計測,表示し、所望の回転角に高精度に自動補正し、励磁条件を変化させた際に発生する視野ずれ量をリアルタイムで計測し、この視野ずれ補正を正確且つ自動的に行い、視野ずれのない試料透過拡大像を得る透過型電子顕微鏡を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、透過型電子顕微鏡において、複数の試料透過像間の視野ずれの量を計算する手段と、電子線を偏向させる偏向器に与える電流をかえて、または試料を移動させて視野ずれを自動的に補正する手段と、以上の手段の動作を繰り返して視野ずれを減少させる制御手段とを備えたものである。
【0010】
また、本発明は、複数の試料透過像のうち、基準となる画像に対して励磁条件を変えて像回転させる手段と、該回転された試料透過像と別の試料透過像とから像回転角を計算する手段と、電子レンズの励磁条件をかえて所望の像回転角を自動的に補正する手段と、2つの試料透過像の視野ずれ量を計算する手段と、電子線を偏向させる偏向器に与える電流をかえて、または試料を移動させて視野ずれを自動的に補正する手段とを備えるものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
上記した構成を有する透過型電子顕微鏡の動作を以下説明する。
【0012】
図3を用いて試料透過像61の試料の基準となる登録画像と、電子レンズ励磁条件を変えて試料透過像を像回転した参照画像の間の位置ずれ、すなわち視野ずれを計測する方法を示す。図3は試料透過拡大像を説明のために模擬的に示した図である。また、試料パターン60等の検出電子線強度の大きい領域は濃淡を濃くして表している。
【0013】
図3(a)に示す、基準となる試料透過拡大像である登録画像をM×Nの画素数で記憶装置にf1(m,n)として記録する。次に、図3(b)に示す、電子レンズ励磁条件を変えて像回転した試料透過拡大像を参照画像としてM×Nの画素数で記憶装置にf2(m,n)として記録する。このとき、どちらも自然画像とし、対物レンズの焦点は合っているものとする。また、ここで、m=0,1,2,…,M−1、n=0,1,2,…,N−1である。
【0014】
透過像f1(m,n),f2(m,n)の離散フーリエ画像F1(u,v),F2(u,v)はそれぞれ次の[数1],[数2]で定義される。ここで、u=0,1,2,…,M−1、v=0,1,2,…,N−1であり、A(u,v), B(u,v)は振幅スペクトル、a(u,v),b(u,v)は位相スペクトルである。
【0015】
【数1】
Figure 0004095743
【0016】
【数2】
Figure 0004095743
【0017】
位相相関では、2つの画像間で像の平行移動があった場合には相関ピークの位置が移動量だけずれる。以下に移動量の導出方法を説明する。まず、原画像 f2(m,n)がm方向にr′だけ移動したとしてf3(m,n)=f2(m+r′,n)とする。すると前記[数2]を[数3]のように変形する。
【0018】
【数3】
Figure 0004095743
【0019】
振幅スペクトルB(u,v)を定数と置くことにより、画像のコントラスト,明度に依存しない位相画像となる。f3の位相画像F3′(u,v)は次の[数4]になる。同様にf1の位相画像F1′(u,v)は、次の[数5]になる。
【0020】
【数4】
F3′(u,v)=ej( β +2 π r u/M)
【0021】
【数5】
F1′(u,v)=ej α (u,v)
位相画像F1′(u,v)にF3′(u,v)の複素共役を乗ずることによって、次の[数6]で表わされる合成位相画像H13(u,v)を得ることができる。図3(c)に合成位相画像62を示す。相関強度画像g13(r,s)は。合成画像H13(u,v)を逆フーリエ変換することによって次の[数7]になる。図3(d)に相関強度画像63を示す。
【0022】
【数6】
Figure 0004095743
【0023】
【数7】
Figure 0004095743
【0024】
上記[数7]より2つの画像間でm方向に位置ずれ量r′が存在する場合、図3(d)に示す相関強度画像63のピーク64の位置は−r′だけずれる。例えば、図3(a)に示す登録画像の試料パターン60と、図3(b)に示す参照画像の試料パターン60の2つの画像間でm方向に2[pixel ]のずれがあると、図3(c)に示す合成位相画像62には2周期の濃淡の波が現れる。これを逆フーリエ変換すると図3(d)に示す相関強度画像63となり、中心から2[pixel]ずれた位置にピーク64が発生する。
【0025】
2つの試料透過像間で、以上の[数1]から[数7]までの処理の結果、相関強度画像においてΔG[pixel ]ずれた位置にピークが発生した場合、この ΔG[pixel ]は検出器の受光面での移動量に相当し、ΔGを試料面上の移動量Δxに変換する。検出する受光面の径をL[m],受光面上での透過型電子顕微鏡の倍率をM,検出器の画素数をLm[pixel ]とすると、2つの画像間の試料面上での移動量Δxは次の[数8]で計算される。但し、[数8]の式には電子レンズの球面収差による像の移動量δが含まれており、視野ずれの真の移動量Δxtは、Δxからδを引いたものである。試料面上でのδは、球面収差Csと偏向角αにより[数9]のように表わされる。以上から、2つの試料透過拡大像間に生じた像の移動量Δxtは[数10]で表わされる。
【0026】
【数8】
Δx=(ΔG[pixel]/Lm[pixel])×L[m]/M
【0027】
【数9】
δ=Cs・α3
【0028】
【数10】
Figure 0004095743
さらに2つの透過像間の像回転角を計測する方法を示す。図4は、デカルト座標系と極座標系との関係図である。
【0029】
2つの透過像をそれぞれ透過像1,透過像2と呼ぶことにすると、上述したように、透過像1f1(m,n)と透過像2f2(m,n)のそれぞれの2次元離散フーリエ画像F1(u,v),F2(u.v)は[数1]および[数2]と同様に表わされる。像回転角を求めるために、デカルト座標系で表現されている[数1]および[数2]の2次元離散フーリエ変換画像を極座標系に座標変換する。デカルト座標系と極座標系との間には次の[数11]および[数12]で与えられる関係がある。そして、[数11]および[数12]を用いて、[数1]と[数2]を極座標表現すると、それぞれ[数13]および[数14]のように表わされる。
【0030】
【数11】
m=rcosθ
n=rsinθ
【0031】
【数12】
θ=tan-1(n/m)
【0032】
【数13】
Figure 0004095743
【0033】
【数14】
Figure 0004095743
【0034】
極座標変換した位相限定相関では、2つの画像間で角度θ′の回転があった際、相関ピークの位置は回転角度に相当する量だけずれる。原画像f2において、回転移動がθ′だけあった場合、[数14]を[数15]のように変形する。画像のコントラストや明度に依存しない位相情報のみとするために、[数13]の振幅スペクトルC(u,v)を定数で置き換えると[数16]で表わされる。同様に[数15]の振幅スペクトルD(u,v)を定数で置き換えて、[数17]で表わす。位相画像F1′(u,v)にF3′(u,v)の複素共役を乗じて合成位相画像は[数18]で表わされる。相関強度画像g13(r,θ)は合成画像 H13(u,v)を逆フーリエ変換して得られるので[数19]で表わされる。
【0035】
【数15】
Figure 0004095743
【0036】
【数16】
F1′(u,v)=ej λ (u,v)
【0037】
【数17】
F3′(u,v)=ej( μ +2 πθ′ v/N)
【0038】
【数18】
Figure 0004095743
【0039】
【数19】
Figure 0004095743
【0040】
ここで、2つの試料透過拡大像間に位置ずれが生じて且つ像回転角を計測する場合、像回転角の変化はθ軸方向に、位置ずれの大きさはr軸方向に現れる。
【0041】
次に像回転角を微調整し精度良く所望の像回転角度に合わせる方法を説明する。
【0042】
第1番目の方法として、第2投射レンズ単体の励磁条件を変化させることにより像回転角を調整する方法を、第2番目の方法として、あらかじめ設定した像回転レンズデータをもとに結像レンズ系の各レンズの励磁条件を変化させることにより像回転角を調整する方法を示す。
【0043】
磁界型電子レンズは、通常の光学レンズ同様の結像作用を持つと同時に、電子に対するローレンツ力により像回転作用を有する。対物,中間,投射の5段結像系機構を有した後述する本実施例の透過型電子顕微鏡において、像回転角度の補正のために使用するレンズとしては、結像レンズ系の最終段に位置するので、電子レンズの励磁を変化させた際に倍率の誤差の影響の少ない第二投射レンズを用いることが望ましい。但し、倍率の変化の影響を極力抑えるために、像回転の補正角度の大きさは限定される。電子レンズ単体での像回転角φは[数20]により与えられる。ここで、eは電子電荷量[C]、mは電子質量[kg]、Eは加速電圧[V]、B(z)は光軸上の磁束密度[T]を示している。B(z)の積分範囲は、電子レンズ磁場の有効範囲とする。これらの定数を[数20]に代入して数式を表わせば[数21]に示されるようになる。また、回転の極性すなわち方向はB(z)の方向により決定する。ここで、Iは第二投射レンズのコイル電流 [A]、Nは第二投射レンズコイルの巻き数である。この式から角度補正量を計算し、必要な補正電流の大きさを[数22]で決定する。
【0044】
【数20】
Figure 0004095743
【0045】
【数21】
Figure 0004095743
【0046】
【数22】
Figure 0004095743
【0047】
所望の像回転角度が得られていないと判断された場合、上式に従って補正角度量φを入力すれば、必要なレンズ電流ΔIの大きさが得られる。レンズ電流ΔIは像回転角度φに比例する。例えば、1[deg ]の像回転補正を行いたい場合でE=100[kV],N=1000であれば、上式から補正レンズ電流ΔIは296.4 [mA]となる。なお、電子レンズ焦点距離は[数23]により示される。
【0048】
【数23】
Figure 0004095743
【0049】
したがって、焦点距離fはAmpereの周回積分の法則を適用して、f∝1/I2で与えられる。
【0050】
以上に基づいて、電子レンズの励磁IN/√Eと焦点距離fとの関係を図5に示す。励磁が小さい場合には、領域(A)のように焦点距離の変化量は大きいが、領域(B)のように励磁が十分大きくなると、焦点距離の変化量は小さくなりほぼ一定値になる。計算による理想曲線では、さらに励磁が大きくなっても焦点距離は一定値を示すが、実際の現象は、領域(C)に示すように、焦点距離が大きく変化してしまう。そのために、励磁に対して焦点距離が変化しない領域は図5の領域(B)の範囲のみである。一般に、レンズの特性を表す数式によれば、焦点距離が一定であれば倍率の変化は生じないので、第二投射レンズ単体での像回転角補正は、図5の領域(B)のような励磁条件の下で行う必要がある。
【0051】
第2番目の像回転角調整法として、あらかじめ設定した像回転のレンズデータ(離散的な値)をもとに、結像レンズ系機構の各レンズの励磁条件を変化させ、任意の像回転角を設定する方法を示す。図6は、一例として、あらかじめ設定したある一定倍率の時の像回転レンズデータの像回転角と励磁電流との関係を示す関係図である。横軸に試料透過像(最終拡大像)の像回転角を示す。縦軸は電子レンズの励磁電流であり、IInt1は第一中間レンズ電流、IInt2は第二中間レンズ電流、IProj1は第一投射レンズ電流、IProj2は第二投射レンズ電流を示す。これらの像回転角に対して離散的な励磁電流の値を補間し、任意の像回転角を設定する。
【0052】
例えば試料透過像の像回転角として25°の像を得たい場合、図6に破線で示すように、補間データから第一中間レンズ電流IInt1 =0.69[A],第二中間レンズ電流IInt2=0.55[A],第一投射レンズ電流IProj1=−0.545[A],第二投射レンズ電流IProj2=−1.22[A]を得ることができる。このように図6に示すような倍率一定の像回転角と各レンズの励磁電流の離散的データの補間値から、倍率の変化を伴わずに試料透過像の任意の像回転角を得ることができる。
【0053】
〔実施例〕
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0054】
図1は、本発明による透過型電子顕微鏡の一例を示し、その機能を示すブロック図である。なお、電子線偏向コイルの段数は問わないが、本実施例においては、試料54の上部に2段,試料54の下部に2段の合計4段の電子線偏向コイルを用いた場合について述べる。
【0055】
電子銃1から放出されて加速された電子線55は第一照射レンズコイル2と第二照射レンズコイル3および対物レンズコイル6の前磁場により、試料ステージ53に保持された試料54に照射される。試料54を透過した電子線55は、第一中間レンズコイル9及び第二中間レンズコイル10によって拡大された後、第一投射レンズコイル11及び第二投射レンズコイル12でさらに拡大されて、シンチレータ50上に試料54の透過拡大像が形成される。
【0056】
シンチレータ50で光像に変換された試料54の透過拡大像は、撮像装置、例えばTVカメラ13によって撮像される。TVカメラ13からの映像信号は、
TVカメラ制御部52,画像取り込みインターフェース51を介して、マイクロプロセッサ38に取り込まれて処理された後、CRTコントローラ42で制御されるCRT41に画像が表示される。
【0057】
マイクロプロセッサ38は、DAC27,28,31,34,35,36,37を介して、電子顕微鏡の第一照射レンズコイル2,第二照射レンズコイル3,対物レンズコイル6,第一中間レンズコイル9,第二中間レンズコイル10,第一投射レンズコイル11,第二投射レンズコイル12に供給する励磁電源15,16,19,22,23,24,25を制御する。試料上部第一偏向コイル4,試料上部第二偏向コイル5,試料下部第一偏向コイル7,試料下部第二偏向コイル8も同様に、マイクロプロセッサ38よりDAC29,30,32,33を介し、励磁電源17,18,20,21を制御する。
【0058】
また、マイクロプロセッサ38には、バスを介してハードディスク等の記憶装置39,演算装置40,倍率切り替え用ロータリーエンコーダ46,像回転角入力用ロータリーエンコーダ47,キーボード45,RAM48,ROM49等が接続されている。倍率切り替え用ロータリーエンコーダ46はI/F43,像回転角入力用ロータリーエンコーダ47はI/F44を介してバスに接続されている。
【0059】
試料ステージ53は、マイクロプロセッサ38とステッピングモータ・ドライバ26を介して接続されたステージ駆動ステッピングモータ14により駆動されている。
【0060】
次に、図1に示した透過型電子顕微鏡を用いて、試料透過像の観察の際に生ずる試料ドリフトによる視野ずれ量を、任意のサンプリング時間で計測,表示し、さらに試料ドリフトによる視野ずれを補正する方法について説明する。図7は、視野ずれ補正の流れを示すフローチャートである。
【0061】
図7において、ステップS11で透過型電子顕微鏡を用いて任意の試料透過像を得るための拡大倍率の設定を行う。試料透過像の倍率を入力するために、図1に示した倍率切り替え用ロータリーエンコーダ46を回し、発生したパルス波をI/F43に入力してデジタル信号に変換する。マイクロプロセッサ38は、I/F43から入力されたデジタル信号を、ROM49にあらかじめ設定されている倍率表示データを参照し、該当する倍率をCRTコントローラ42を用いてCRT41上に表示させる。同時に、ROM49にあらかじめ記憶している第一照射レンズコイル2,第二照射レンズコイル3,対物レンズコイル6,第一中間レンズコイル9,第二中間レンズコイル10,第一投射レンズコイル11,第二投射レンズコイル12の各レンズのデータをDAC27,28,31,34,35,36,37に出力して、レンズ系機構のデータをアナログ信号に変換する。上記DAC27,28,31,34,35,36,37は励磁電源15,16,19,22,23,24,25にアナログ信号を出力して、各レンズ系機構のレンズコイルに電流を出力させる。このとき、すでに焦点は合っているものとする。
【0062】
次に、ステップS12でシンチレータ50に投射された試料透過像をTVカメラ13で撮像し、画像取り込みインターフェース51により記憶装置39に拡大像を登録する。この画像を透過像1とする。透過像1はCRTコントローラ42を介してCRT41上に画像表示される。また、試料透過像を撮像する任意の時間間隔(サンプリング時間)をキーボード45や倍率切り替え用ロータリーエンコーダ46などの入力手段を用いて設定し、RAM48に保存しておく。
【0063】
ステップS13では、ステップS12で透過像1の撮像から設定サンプリング時間経過後にシンチレータ50に投射された試料透過像をTVカメラ13で撮像し、画像取り込みインターフェース51により記憶装置39に拡大像を透過像2として登録する。透過像2はCRTコントローラ42を介してCRT41上に画像表示される。
【0064】
ここで、純粋に試料ドリフトによる視野ずれを測定するために、ステップS12からステップS13に移行する過程で、使用者が故意に試料透過像の視野を移動させないこととする。
【0065】
次に、ステップS14からステップS17によって、透過像1と透過像2の間の像移動量を計算し、視野ずれを補正する。視野ずれを補正する方法は、試料上下に配置した電子線偏向コイルを用いて行う電磁的方法と、試料ステージ微動機構を用いて行う機械的方法のいずれかで行われる。
【0066】
まず、ステップS14で透過像1と透過像2のそれぞれを記憶装置39から呼び出し、演算装置40により、図3で説明したように、それぞれの画像の2次元離散フーリエ変換データを作成し、上述した位相情報のみの相互相関によって透過像1と透過像2の2画像間の移動量を計算する。
【0067】
図8は試料透過像の一例を示す図、図9はドリフトの状態を説明するデカルト座標表示を示す図、図10はドリフト量の時間変化を示す関係図である。図8 (a)に示す試料透過像58の中心点56が、図8(b)に示すように中心点59に移動するような、試料ドリフトに伴う像移動が発生したとすれば、その像移動量はベクトル量として、図9に示すように表すことができる。座標系としてデカルト座標表示を用い、図9に示すように横軸をx軸,縦軸をy軸として定める。ここで、その像移動量の絶対値rは、[数24]で示され、角度φは、[数25]で示される。テレビカメラ13で取込まれた画像は一般に画素数として得られるので、SI単位(m)に単位変換を行う。また、一般にドリフト量の時間変化は、時間の経過とともに単調増加する傾向にある。図10(a)に示すx方向ドリフト量の時間変化も、図10(b)に示すy方向ドリフト量の時間変化も、同じように単調増加している。ドリフト量の時間変化は、演算装置40により計算され、単位時間当たりのxおよびy方向の像移動量を求める。これらの像移動量はそれぞれ[数26],[数27]で表わされる。ここで、Δx,Δyはそれぞれx,y方向の変化量、Δtは時間変化を表わす。求められた単位時間当たりの像移動量もRAM48に保存され、CRTコントローラ42を介してCRT41に表示され、または記憶装置39に保存される。
【0068】
【数24】
Figure 0004095743
【0069】
【数25】
Figure 0004095743
【0070】
【数26】
Figure 0004095743
【0071】
【数27】
Figure 0004095743
【0072】
ステップS15では、計算された像移動量をCRT41などの外部表示装置やプリンタ,チャートといった外部出力装置、あるいはデータとして記憶装置39に出力,保存する。例えば、CRT41に表示する場合には、計算された像移動量はRAM48に保存され、CRTコントローラ42を介してCRT41に像移動量が表示される。また、図10に示すようなドリフト量の時間変化データを得るためには、像移動量をチャートや記憶装置39に出力することができる。
【0073】
ステップS16では、像移動量の絶対値がゼロであるかどうか判定し、像移動量がゼロであると判定された場合にはステップS17へ進む。一方、像移動量がゼロでないと判定した場合には、ステップS18に進む。
【0074】
ステップS17では、一連の動作を終了させるか判断する。終了させない場合は、ステップS13へ戻り、設定されたサンプリング時間経過後に透過像2を撮像し、再びステップS16までの一連のルーチン動作を行う。
【0075】
ステップS18では、像移動量をゼロにする移動量(視野ずれ補正量)を演算装置40で計算し、試料の上下に配置した電子線偏向コイル、すなわち、試料上部第一偏向コイル4,試料上部第二偏向コイル5,試料下部第一偏向コイル7,試料下部第二偏向コイル8を用いて電磁的に、あるいは試料ステージ53を駆動して機械的に視野ずれ補正を行う。
【0076】
図11は視野ずれ補正の概念を説明する模式図であり、図11(a)に電子線偏向コイルを用いた電磁的な視野ずれ補正を、図11(b)に試料ステージの微動機構を用いた機械的な視野ずれ補正を示す。
【0077】
図11(a)において、電子線偏向を行わない観察条件の下では、試料54に対し電子線65を照射すると、試料54の中心部の視野70にある例えば五角形の試料透過像69がシンチレータ50(図示せず)上に得られる。この状態で、試料54上にある試料中心から距離dだけ離れた位置の視野71に存在する例えば星型の透過拡大像を得たい場合は、試料54の上部に配置した2個の電子線偏向コイル、すなわち、試料上部第一偏向コイル4,試料上部第二偏向コイル5により、電子線65を電子線光軸67から偏向時電子線66のように距離dだけ平行移動させ、試料54を透過後、試料54の下部に配置した電子線偏向コイル、すなわち、試料下部第一偏向コイル7,試料下部第二偏向コイル8を用いて電子線光軸67上に戻す。従って、シンチレータ50(図示せず)上には、試料54上の視野71に存在する星型の試料透過像68が得られる。
【0078】
一方、機械的な視野ずれ補正方法は、図11(b)において、試料ステージ53(図示せず)の微動機構を駆動していない観察状態では、試料54は点線で示す位置にあり、視野70は試料54の中心位置にあるので、電子線65の照射によって例えば五角形の試料透過像69がシンチレータ50(図示せず)上に得られる。ここで、試料54上の中心から距離dだけ離れた位置の視野71の試料透過拡大像を得たい場合には、試料ステージ53(図示せず)を矢印の方向に距離dだけ微動させて試料54を移動させれば、視野71の例えば星型の試料透過像68がシンチレータ50(図示せず)上に得られる。
【0079】
これらの補正の演算の流れを、図1を用いて以下説明する。
【0080】
電磁的な視野ずれ補正については、次のように行う。図7中のステップS18で計算した視野ずれ補正量に相当する偏向コイルデータをROM49から呼び出し、DAC29,30,32,33でアナログ信号に変換する。DAC29,30,32,33は励磁電源17,18,20,21にアナログ信号を出力し、試料54の上部と下部の電子線偏向コイル、すなわち、試料上部第一偏向コイル4,試料上部第二偏向コイル5,試料下部第一偏向コイル7,試料下部第二偏向コイル8に電流を出力し、図11(a)で説明したように、電子線65を偏向し、視野ずれの補正を行う。
【0081】
機械的な視野ずれ補正については、図7中のステップS18で計算した視野ずれ補正量に基づく信号を、ステッピングモータ・ドライバ26でステージ駆動ステッピングモータ14を動作させ、試料ステージ53の微動機構(図示せず)を駆動し、試料54を微動させて、視野ずれの補正を行う。
【0082】
これらのいずれかの視野ずれ補正を行った後、再びステップS13に戻り、ステップS17までの一連のルーチン動作を行う。
【0083】
図7のフローチャートに示した視野ずれ補正の精度をさらに向上させた例を、以下に説明する。図12は、試料ドリフトのサンプリング時間を変えて視野ずれ補正を行う手順を示すフローチャートである。この視野ずれ補正は、任意に設定したサンプリング時間で、試料透過拡大像の観察の際に生ずる試料ドリフトによる視野ずれ量を計測,表示し、視野ずれ補正を行い、単位時間当たりの視野ずれ量仕様値と上記計測した視野ずれ量の大きさとの比較判定を行い、仕様値を満足しないと判定された場合には、像移動量計測および補正のサンプリング時間を短くして、試料ドリフトによる単位時間あたりの視野ずれ量仕様値内に設定するものである。
【0084】
図12において、ステップS21の透過電子顕微鏡の倍率条件設定,ステップS22の透過像1の撮像、および、サンプリング時間設定,ステップS23のサンプリング時間経過後の透過像2の撮像,ステップS24の透過像1と透過像2の間の像移動量の計算、ステップS25の試料ドリフト量の出力,ステップS26の移動量の判定までの内容は、図7で説明したステップS11からステップS16までの過程の内容とほぼ同様であるので、ここでは、追加した点または変更した点について説明する。
【0085】
ステップS22では、透過像1を撮像,記録後、透過像2の撮像のサンプリング時間をt1として設定し、RAM48に保存する。ステップS23ではサンプリング時間t1経過後に透過像2を撮像,記録する。ステップS26では、透過像1と透過像2の像移動量がゼロでないかどうかを判定する。像移動量の絶対値がゼロであると判定された場合、ステップS29に進む。一方、像移動量の絶対値がゼロでないと判定された場合、ステップS27に進む。
【0086】
ステップS29では、一連の動作を終了させるかどうかを判断し、終了させない場合はステップS23へ戻り、ステップS23からステップS26までの一連の動作を繰り返す。
【0087】
ステップS27では、像移動量があらかじめ設定した単位時間当たりの視野ずれ量の仕様値を満足するかどうかを判定する。仕様値を満足しない場合、ステップS28に進む。仕様値を満足する場合はステップS30に進む。
【0088】
ステップS28では、RAM48に保存してあるサンプリング時間t1を、さらに短いサンプリング時間t2に再設定し、RAM48に保存する。一般に、試料ドリフトによる視野ずれは、図10に示したように、時間の経過とともに単調増加する傾向にあるので、単位時間当たりの視野ずれ量が仕様値の2倍を示している場合、サンプリング時間t2はt1の1/2に設定する。その後ステップS30に進む。
【0089】
ステップS30では、前述した図7のステップS18と同様に、試料54の上下に配置した電子線偏向コイルを用いて電磁的に、あるいは試料ステージの微動機構を用いて機械的に視野ずれ補正を行う。この視野ずれ補正方法は、図11に示した方法と同一であるので、ここでは割愛する。
【0090】
ステップS30において、透過像1に対して視野ずれ補正を行った試料透過拡大像は、ステップS23に戻り、設定されたサンプリング時間間隔t2で透過像2を撮像し、ステップS26までの一連の動作を繰り返し行い、試料ドリフトを補正する。
【0091】
試料の透過拡大像の写真撮影時や微小領域のX線分析を行う際には、視野ずれ量があると像のぼけが発生したり、得られるX線量が不安定になることがあるので、さらに精密に視野ずれ量を補正するために、試料ドリフトの予測計算をとりいれる。図13は、試料ドリフトを予測して視野ずれ補正を行う手順を示すフローチャートである。高倍率写真撮影時には微小な視野ずれが像のぼけを生ずる。また試料透過拡大像が暗い場合には、露光時間を長く設定するために、試料ドリフトがこの像のぼけの主な原因となる。X線分析を行う場合は、試料を照射する電子線を数ナノメートル以下に収束させてスポット状にし、計測時間は数十秒から数百秒の長い時間を必要とする。このように、写真撮影時や微小領域のX線分析などにおいても、試料ドリフトの補正は必要不可欠なものである。
【0092】
図13において、ステップS31では、図7のフローチャートのステップS11からステップS16で示した試料ドリフトに伴う視野ずれを補正する一連の動作を行い、単位時間当たりの視野ずれ量と方向、および、試料ドリフトの時間変化データを求め、記憶装置39に保存する。
【0093】
ステップS32では、図1に示したキーボード45や写真撮影スイッチなどのような入力手段を用いて、試料透過拡大像の写真撮影あるいは、微小領域のX線分析を実施する。
【0094】
ステップS33では、得られた試料透過拡大像またはX線分析結果により、一連の動作を継続するか終了するかを判断する。視野ずれがある場合は像のぼけが認められるので、以下のステップS34に進む。
【0095】
ステップS34では、ステップS31で計算され、保存された試料ドリフトに関する単位時間あたりの視野ずれ量,方向、および時間変化データに基づいて、ドリフト量を予測する。記憶装置39に保存された試料ドリフト量に関するこれらの各値を呼び出し、演算装置40によって写真撮影あるいは分析中に発生すると予想される単位時間当たりのドリフト量のベクトル値を計算し、RAM48に保存する。
【0096】
ステップS35では、ステップS34で計算された単位時間当たりのドリフト量をもとに、写真撮影あるいは分析中に生ずると予測される像移動量から、像移動量をゼロにする視野ずれ補正量を演算装置で計算し、図11で説明したように、試料上下に配置した電子線偏向を用いて電磁的に、あるいは試料ステージの微動機構を駆動して機械的に、図7中のステップS18と同様に、視野ずれ補正を行う。この視野ずれ補正は、写真撮影中あるいは分析中に、試料ドリフトによる影響が最小限に抑えられるよう最適化された時間間隔で、あるいはオペレータの指示で、ステップS32からステップS35を繰り返すことによって行われる。最適化された時間間隔で自動的に実行される場合は、ステップS33を省略した手順となる。
【0097】
図7,図12、および、図13に示した視野ずれ補正の手順の例は、図8に示したようにx方向とy方向への移動を想定したものであって、図2に示すような試料透過像の回転がある場合は、以下に示す手順を追加する。図14は像回転時に生じた視野ずれを補正する手順を示すフローチャートである。基準とする透過像1の像回転を行い、透過像1と透過像2の2つの画像間における像回転角度の計測,表示、及び、像回転時に生ずる視野ずれを自動補正する方法について、以下説明する。
【0098】
はじめに、ステップS41において、基準とする試料透過拡大像の倍率を入力するため、図1に示す倍率切り替え用ロータリーエンコーダ46を回し、発生したパルス波をI/F43に入力してデジタル信号に変換する。マイクロプロセッサ38は、I/F43から入力されたデジタル信号を、ROM49にあらかじめ設定されている倍率表示データを参照して、該当する倍率をCRTコントローラ42を用いてCRT41上に表示させる。同時に、ROM49にあらかじめ記憶されている第一照射レンズコイル2,第二照射レンズコイル3,対物レンズコイル6,第一中間レンズコイル9,第二中間レンズコイル10,第一投射レンズコイル11,第二投射レンズコイル12の各レンズデータを、DAC27,28,31,34,35,36,37に出力して、レンズ系のデータをアナログ信号に変換する。DAC27,28,31,34,35,36,37は、励磁電源15,16,19,22,23,24,25にアナログ信号を出力して、上記各レンズ系のレンズコイルに電流を出力させる。このとき、すでに焦点は合っているものとする。
【0099】
ステップS42では、図1に示すシンチレータ50に投射された試料透過拡大像をTVカメラ13で撮像し、画像取り込みインターフェース51により記憶装置39に試料透過拡大像を登録する。この画像を透過像1と呼ぶ。この透過像1はCRTコントローラ42を介してCRT41に画像表示される。
【0100】
次にステップS43で、透過像1を電子レンズの励磁条件を変えて、透過像1と等倍で所望の角度に像回転を行う。像回転角入力用ロータリーエンコーダ47を回し、発生したパルス波をI/F44に入力し、デジタル信号に変換する。マイクロプロセッサ38はROM49にあらかじめ設定されている第一照射レンズコイル2,第二照射レンズコイル3,対物レンズコイル6,第一中間レンズコイル9,第二中間レンズコイル10,第一投射レンズコイル11,第二投射レンズコイル12の各レンズデータをDAC27,28,31,34,35,36,37に出力し、基準とした透過像1に対して像回転した試料透過像を得る。
【0101】
ステップS44では、新たにシンチレータ50に投射された試料透過像をTVカメラ13で撮像し、画像取り込みインターフェース51によって記憶装置39に記録する。この画像を透過像2と呼ぶ。同時に、CRTコントローラ42に透過像2の画像データを出力し、CRT41に画像表示させる。
【0102】
透過型電子顕微鏡の電子光学系機構は、図1に示したように、電子銃1,第一照射レンズコイル2,第二照射レンズコイル3,対物レンズコイル6,第一中間レンズコイル9,第二中間レンズコイル10,第一投射レンズコイル11,第二投射レンズコイル12から構成され、これらの電子レンズ各々が持つ幾何公差により、電子線の光軸は完全に一致していない。従って、像回転を行うために電子レンズの励磁条件を変えた際に、前述の図2(b)に示すように、基準とした透過像1と透過像2の2つの試料透過像間で像回転中心位置が移動する現象(視野がずれる現象)が発生する。そこで、以下のステップS45からステップS47の処理の繰り返しによって、電子レンズの励磁条件変化時に発生する視野ずれを自動的に補正し、図2(c)に示すように、像回転中心を一致させる。なお、この視野ずれ補正は、図11で説明したように、試料上下に配置した電子線偏向コイルを用いて行う電磁的方法と、試料ステージの微動機構を用いて行う機械的方法のいずれかで行われる。
【0103】
ステップS45では、透過像1と透過像2のそれぞれを記憶装置39から呼び出し、演算装置40により、図3で説明したように、それぞれの画像の2次元離散フーリエ変換データを作成し、前述した位相情報のみの相互相関によって、透過像1と透過像2の2つの画像間の移動量を求める。
【0104】
ステップS46では、像移動量がゼロであるか判定し、像移動量がゼロでないと認められる場合にはステップS47に進む。
【0105】
ステップS47では、像移動量をゼロにする移動量(視野ずれ補正量)を演算装置40で計算し、図11で説明したように、電磁的に、あるいは機械的に視野ずれ補正を行う。視野ずれ補正を行った後、再びステップS44に戻り、再び像移動の判定および視野ずれ補正を行って、視野ずれがゼロと判定されればステップS48に進む。
【0106】
ステップS48では、視野ずれ補正された試料透過拡大像を図1に示したTVカメラ13で撮像し、記憶装置39に透過像3として登録する。同時にCRTコントローラ42を介し、CRT41上に透過像3が画像表示される。
【0107】
ステップS49では、記憶装置39に登録された透過像1と透過像3を呼び出し、演算装置40により、図3で説明したように、それぞれの画像の2次元離散フーリエ変換データを作成し、それらのデータから極座標に変換した位相情報のみの相互相関によって透過像1と透過像3との間の像回転角を求める。計算された像回転角の値は、RAM48に保存される。
【0108】
ステップS50では、CRTコントローラ42を介してCRT41に像回転角が表示される。
【0109】
次に、図2(b)に示したような試料透過像に回転と視野ずれがある場合の、他の視野ずれ補正の手順を説明する。図15は、図14と同じく像回転時に生じた視野ずれを補正する手順を示すフローチャートである。この手順は、基準とする試料透過拡大像に対して像回転を行い、別の試料透過拡大像の像回転角を精密に自動補正し、これら2つの画像間における像回転角の表示、及び、像回転時に生ずる視野ずれを自動補正するものである。
【0110】
図15において、はじめに、基準とする試料透過像を得るため、ステップS51で、図1に示す倍率切り替え用ロータリーエンコーダ47、あるいはキーボード45により倍率を入力し、透過型電子顕微鏡の各レンズ系機構のレンズコイルに流す電流をその倍率にあったように設定する。このとき、すでに焦点は合っているものとする。
【0111】
ステップS52では、シンチレータ50に投射された試料透過像をTVカメラ13で撮像し、画像取り込みインターフェース51により記憶装置39にこの試料透過像を登録する。この画像を透過像1とする。透過像1はCRTコントローラ42を介してCRT41上に画像表示される。
【0112】
次のステップS53では、各レンズ系機構の電子レンズの励磁条件を変えて、透過像1を等倍で所望の角度に像回転する。像回転角の入力は、像回転角入力用ロータリーエンコーダ47、あるいはキーボード45を用いる。入力された像回転角はRAM48に保存する。像回転角入力用ロータリーエンコーダ47から発生したパルス波はI/F44に入力し、デジタル信号に変換され、マイクロプロセッサ38に入力される。マイクロプロセッサ38はI/F44から入力されたデジタル信号を、ROM49にあらかじめ記憶している第一照射レンズコイル2,第二照射レンズコイル3,対物レンズコイル6,第一中間レンズコイル9,第二中間レンズコイル10,第一投射レンズコイル11,第二投射レンズコイル12の各レンズのデータを、DAC27,28,31,34,35,36,37に出力して、レンズのデータをアナログ信号に変換する。これらのDAC27,28,31,34,35,36,37は、励磁電源15,16,19,22,23,24,25にアナログ信号を出力して、上記各レンズのレンズコイルに電流を出力し、基準とした透過像1に対して像回転した試料透過拡大像を得る。
【0113】
さらにステップS54では、シンチレータ50に投射された回転した試料の透過拡大像をTVカメラ13で取り込み、画像取り込みインターフェース51を介して記憶装置39に透過像2として記憶させる。また、CRTコントローラ42に透過像2の画像データを出力して、CRT41に画像を表示する。
【0114】
ステップS55では、記憶装置39に登録されている透過像1と透過像2を呼び出し、図3で説明したように、それぞれの画像の2次元離散フーリエ変換データを作成し、それぞれのデータから極座標変換した位相情報のみの相互相関によって透過像1と透過像2の2画像間の像回転角を求める。計算された値は、RAM48に保存される。
【0115】
その後、ステップS56で、演算装置40を用いて、透過像1と透過像2の間の像回転角とステップS53でRAMに保存した所望の値とを比較判定する。ここで、所望の回転角と一致しないと判断されれば、ステップS57に進む。
【0116】
ステップS57からステップS58では、像回転角の補正を行う。像回転角の補正方法は、第二投射レンズコイル12の励磁条件を変化させる方法と、あらかじめ設定した離散的な像回転レンズデータをもとに任意の像回転角を設定する2つの方法が挙げられる。
【0117】
まず、第二投射レンズコイル12の励磁条件を変化させて像回転角を補正する方法は、ステップS57で、演算装置40により補正角を計算し、これに対応する第二投射レンズコイル12の電流値を計算する。ステップS58では、マイクロプロセッサ38によりROM49に設定された電流値をバスを介してDAC37により励磁電源25にアナログ信号を出力し、第二投射レンズコイル12に電流を出力する。その後、ステップS54に戻り、再び透過像1と透過像2の間で回転角度の比較判定を行い、所望の回転角度と一致していると判断されればステップS59に進む。
【0118】
既に設定してある離散的な像回転レンズデータを用いて補正する方法は、次のとおりである。ステップS57で演算装置40で補正角を計算し、対応する結像レンズ系機構の電流値を求める。ステップS58では、マイクロプロセッサ38によりROM49に設定された電流値をバスを介してDAC34,35,36,37により励磁電源22,23,24,25にアナログ信号を出力し、結像レンズ系機構の各レンズ、すなわち、第一中間レンズコイル9,第二中間レンズコイル10,第一投射レンズコイル11,第二投射レンズコイル12に電流を出力する。その後、ステップS54で回転角の比較,判定を行い、所望の回転角と一致していると判断されれば、ステップS59に進む。
【0119】
ステップS59では、像回転角の補正を行った試料透過拡大像をTVカメラ13で取り込み、記憶装置39に透過像3として保存する。また、CRTコントローラ42に透過像3の画像データを出力してCRT41上に画像を表示する。
基準とした透過像1と像回転させるため電子レンズの励磁条件を変えた透過像3の間では、電子線光軸の幾何公差により、視野ずれが生じる可能性がある。そこでステップS60からステップS62の手順に従って、視野ずれを補正する。
まず、ステップS60では、透過像1と透過像3のそれぞれを記憶装置39から呼び出し、図3で説明したように、それぞれの画像の2次元離散フーリエ変換データを作成し、それぞれのデータから、位相情報のみの相互相関によって、透過像1と透過像3の像移動量を求める。
【0120】
ステップS61では、演算装置40により像移動量がゼロであるか判定し、ゼロでなければステップS62に進む。
【0121】
ステップS62では、演算装置40で像移動量をゼロにする移動量(視野ずれ補正量)を計算し、図11に説明したように、試料上下に配置した電子線偏向コイルを用いて電磁的に、あるいは、試料ステージを移動することにより機械的に視野ずれ補正を行う。視野ずれ補正後、再びステップS59に戻り、像移動の判定、および、移動補正を行って、視野ずれがゼロと判定されれば、ステップS63に進む。
【0122】
ステップS63では、RAM48に保存された像回転角データを呼び出し、CRTコントローラ42を介して、CRT41に像回転角を表示し、すべての処理が終了する。
【0123】
次に、倍率が変化した場合の視野ずれ補正の手順について説明する。図16は、図14,図15と同じく像回転時に生じた視野ずれを補正する手順を示すフローチャートである。この手順は、透過型電子顕微鏡を用いて、基準となる試料透過拡大像に対し、倍率が異なる試料透過拡大像の像回転角を計算し、像回転角の高精度な自動補正をし、これらの画像間における像回転角の表示を行い、かつ、像回転時に生ずる視野ずれを自動補正するものである。
【0124】
図17は、倍率が変化した場合の像回転角を自動調整する手順を示す試料透過像の一例を示す図である。像の回転角の計測と位置ずれの計測に用いる位相情報に限定した相互相関法では、測定する2画像のそれぞれの倍率が異なると計算が不可能となる。したがって、図17(a)に示す、倍率M1,像回転角θである基準となる試料透過拡大像を透過像1として登録する。次に、倍率M1で像回転角が0°となるレンズデータを呼び出し、図17(b)に示す、この試料透過拡大像を透過像2として登録する。これら透過像1と透過像2の間での像回転角を計算し、記憶装置39に記録しておく。次のステップは、希望の倍率M2で像回転角0°のレンズデータを呼び出し、図17(c)に示すように、この試料透過拡大像を透過像3として登録する。最後に、記憶装置39に記録しておいた像回転角θと倍率M2のレンズデータに変更し、図17(d)に示すように、この試料透過拡大像を透過像4として登録する。そして、透過像3と透過像4の間で像回転角を計算し、回転角θとなるよう精密に自動調整を行うものである。
【0125】
図16において、ステップS71では、基準となる試料拡大像の倍率M1、および像回転角θを入力し、前述のように透過型電子顕微鏡の各レンズ系機構のレンズコイルに流す電流をその倍率および像回転角を得られるように設定する。このとき、すでに焦点は合っているものとする。
【0126】
次に、ステップS72において、図1に示すシンチレータ50に投射された倍率M1,像回転角θの試料透過拡大像をTVカメラ13で撮像し、画像取り込みインターフェース52により記憶装置39にこの試料透過拡大像を透過像1として記憶させ、基準画像とする。そして、この透過像1を、CRTコントローラ
42を介してCRT41上に画像表示させる。
【0127】
ステップS73では、希望する拡大倍率M2をキーボード45、または、倍率切り替え用ロータリーエンコーダ46により入力し、RAM48に記憶させておく。
【0128】
ステップS74からステップS76までの手順に従い、最初にステップS71で設定した透過像の像回転角を測定する。まず、ステップS74では、基準となる試料透過像の倍率M1で、像回転角度が0°となるレンズデータをROM49から呼び出し、第一照射レンズコイル2,第二照射レンズコイル3,対物レンズコイル6,第一中間レンズコイル9,第二中間レンズコイル10,第一投射レンズコイル11,第二投射レンズコイル12の各レンズのデータを、DAC27,28,31,34,35,36,37に出力して、各レンズのデータをアナログ信号に変換する。これらのDAC27,28,31,34,35,36,37は、励磁電源15,16,19,22,23,24,25にアナログ信号を出力して、上記各レンズのレンズコイルに電流を出力し、倍率M1,像回転角0°にする。
【0129】
ステップS75では、試料の透過電子像をTVカメラ13で取り込み、記憶装置39に透過像2と名前を付けて保存する。また、CRTコントローラ42に透過像2の画像データを出力してCRT41上に画像を表示する。
【0130】
ステップS76では、記憶装置39に登録されている透過像1と透過像2を呼び出し、図3で説明したように、それぞれの画像の2次元離散フーリエ変換データを作成し、それぞれのデータから極座標変換した位相情報のみの相互相関によって透過像1と透過像2の2画像間の像回転角度を求める。計算された像回転角の値は、RAM48に保存される。
【0131】
ステップS77以降では、倍率M2に変更し、像回転角補正,視野ずれの補正を行う。はじめに、ステップS77では、ステップS73で設定した倍率M2で、像回転角度が0°となるレンズデータをROM49から呼び出し、第一照射レンズコイル2,第二照射レンズコイル3,対物レンズコイル6,第一中間レンズコイル9,第二中間レンズコイル10,第一投射レンズコイル11,第二投射レンズコイル12の各レンズデータをDAC27,28,31,34,35,36,37に出力して、各レンズのデータをアナログ信号に変換する。これらのDAC27,28,31,34,35,36,37は励磁電源15,16,19,22,23,24,25にアナログ信号を出力し、各レンズコイルに電流を出力し、所望の倍率M2で回転角度が0°の透過電子像を得る。
【0132】
ステップS78では、この試料の透過拡大像をTVカメラ13で取り込み、記憶装置39に透過像3と名前を付けて保存する。
【0133】
次に、ステップS79では、設定した倍率M2でかつ像回転角がRAM48に登録された像回転角θとなるレンズデータをROM49から呼び出し、レンズ電流を与える。
【0134】
ステップS80では、この透過拡大像をTVカメラ13で撮像し、記憶装置39に透過像4として保存する。
【0135】
ステップS81では、透過像3と透過像4を記憶装置39から呼び出し、図3で説明したように、それぞれの画像の2次元離散フーリエ変換データを作成し、それぞれのデータから極座標変換した位相情報のみの相互相関により、透過像3と透過像4の2つの画像間の像回転角を計算する。計算された像回転角の値はRAM48に保存される。
【0136】
その後、ステップS82では、演算装置40により、透過像3と透過像4の間の像回転角と、ステップS76でRAM48に保存された透過像1と透過像2の間の像回転角の値と比較判定する。ここで、透過像1と透過像2との間の回転角と透過像3と透過像4との間の回転角とが一致しなければ、ステップS83に進む。
【0137】
ステップS83では、演算装置40により補正角、および、対応する第二投射レンズコイル12の電流値を計算する。
【0138】
ステップS84では、レンズデータとして第二投射レンズコイル12に電流を出力するか、あるいは、あらかじめ設定した像回転レンズデータをもとに補正角に相当する結像レンズ系機構の第一中間レンズコイル9,第二中間レンズコイル10,第一投射レンズコイル11,第二投射レンズコイル12へ電流を出力する。
【0139】
その後、ステップS80に戻り、再び回転角の比較判定を行い、透過像1と透過像2との間の像回転角と、透過像3と透過像4との間の像回転角とが一致していると判断できれば、ステップS85に進む。
【0140】
ステップS85では、試料54の透過拡大像をTVカメラ13で撮像し、記憶装置39に透過像5と名付けて保存する。さらに、CRT41上に透過像5の画像データを表示させる。
【0141】
像回転するために、電子レンズの励磁条件変化に伴う視野ずれの補正を、ステップS86からステップS88の手順に従って補正する。はじめに、ステップS86では、透過像3と透過像5のそれぞれを記憶装置39から呼び出し、図3で説明したように、それぞれの画像の2次元離散フーリエ変換データを作成し、それぞれのデータから位相情報のみの相互相関によって、透過像3と透過像5の2画像間の像移動量を求める。
【0142】
ステップS87では、演算装置40により像移動量がゼロであるかどうか判定し、ゼロでなければステップS88に進む。
【0143】
ステップS88では、像移動量をゼロにする移動量(視野ずれ補正量)を計算し、図11で説明したように、電磁的に、あるいは機械的に視野ずれ補正を行う。
【0144】
この視野ずれ補正後、再びステップS85に戻り、像移動の判定、および、移動量の補正を行って、視野ずれがゼロと判定できれば、ステップS89に進む。ステップS89では、RAM48に保存された像回転角の値を呼び出し、CRTコントローラ42を介して、CRT41に像回転角が表示され、処理が終了する。
【0145】
透過型電子顕微鏡において、以上述べた視野ずれ補正によって、次に挙げるような効果を得ることができる。
【0146】
(1)試料ドリフトに伴う視野ずれ量と方向をリアルタイムで計測,表示できる。
【0147】
(2)試料ドリフトに伴う視野ずれをリアルタイムで自動補正できる。
【0148】
(3)試料ドリフトに伴う視野ずれ量が仕様値以上の場合、視野ずれ補正の時間間隔を短縮して自動補正できる。
【0149】
(4)試料ドリフトに伴う視野ずれ量をあらかじめ予測して視野ずれ補正できる。
【0150】
(5)2つの試料透過拡大像間の像回転角をリアルタイムで検出,表示できる。
(6)2つの試料透過拡大像間の像回転時に生ずる視野ずれをリアルタイムで自動補正できる。
【0151】
(7)2つの試料透過拡大像間の像回転角をリアルタイムで精度良く自動補正できる。
【0152】
(8)倍率の異なる2つの試料透過拡大像間で像回転角をリアルタイムで精度良く自動補正できる。
【0153】
以上のように、透過型電子顕微鏡で試料ドリフトに伴う視野ずれ量と方向の計測,表示,自動補正,試料ドリフトを予測しての自動補正,2つの試料透過拡大像間での試料透過拡大像の回転角の計測ならびに表示,像回転角の高精度な自動補正,倍率の異なる試料透過拡大像の高精度な像回転角の自動補正が可能となり、透過型電子顕微鏡における観察性,操作性の向上に大いなる効果を期待できる。
【0154】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、透過型電子顕微鏡における記録した登録画像に対し、任意の設定時間後に記録した参照画像の2つの画像間の視野ずれ量および方向をリアルタイムで高精度に計測,表示し、視野ずれを自動的に補正する透過型電子顕微鏡を得ることができる。
【0155】
また、本発明によれば、記録した登録画像に対し、電子レンズの励磁条件を変えて回転し記録した参照画像の2つの画像間の像回転角をリアルタイムで正確に計測,表示し、所望の回転角に高精度に自動補正し、励磁条件を変化させた際に発生する視野ずれ量をリアルタイムで計測し、この視野ずれ補正を正確且つ自動的に行い、視野ずれのない試料透過拡大像を得る透過型電子顕微鏡を得ることができる。
【0156】
付記
(請求項6)
請求項3の記載において、前記登録画像と前記参照画像の2つの画像間の視野ずれの位相情報のみの相互相関を計算し、該相互相関から前記登録画像に対する前記参照画像の視野ずれの補正量を計算する第三の演算装置と、該第三の演算装置で求められた前記視野ずれの補正量に基づいて前記電子線を偏向させる偏向器とを備えたことを特徴とする透過型電子顕微鏡。
【0157】
(請求項7)
請求項3の記載において、前記登録画像と前記参照画像の2つの画像間の視野ずれの位相情報のみの相互相関を計算し、該相互相関から前記登録画像に対する前記参照画像の視野ずれの補正量を計算する第三の演算装置と、前記試料の上部に配置され、前記第三の演算装置で求められた前記視野ずれの補正量に基づいて前記電子線をその光軸から平行に移動させる試料上部偏向器と、前記試料の下部に配置され、前記試料上部偏向器により偏向された電子線を前記電子線の光軸上に戻す試料下部偏向器とを備えたことを特徴とする透過型電子顕微鏡。
【0158】
(請求項8)
請求項3の記載において、前記登録画像と前記参照画像の2つの画像間の視野ずれの位相情報のみの相互相関を計算し、該相互相関から前記登録画像に対する前記参照画像の視野ずれの補正量を計算する第三の演算装置と、該第三の演算装置で求められた前記視野ずれの補正量に基づいて前記試料を移動させる移動装置とを備えたことを特徴とする透過型電子顕微鏡。
【0159】
(請求項9)
請求項3または4のいずれかの記載において、前記登録画像と前記参照画像の間の視野ずれ量を計算する演算装置と、該演算装置で計算された前記視野ずれ量に基づいて前記視野ずれを補正する補正装置と、あらかじめ決められた時間間隔で前記演算装置による計算と前記補正装置による前記視野ずれの補正とを繰り返すとともに、前記演算手段で計算された視野ずれ量があらかじめ決められた値より大きいとき、前記時間間隔を短くする制御手段とを備えたことを特徴とする透過型電子顕微鏡。
【0160】
(請求項10)
請求項3の記載において、前記第二の演算装置での前記視野ずれ量の計算の後、前記撮像装置で第三の試料像を撮像し、該第三の試料像から視野ずれ量を予測する予測装置と、該予測装置で予測された視野ずれ量の予測値に基づいて、前記視野ずれ量を補正する補正装置とを備えたことを特徴とする透過型電子顕微鏡。
(請求項11)
電子銃から放出された電子線を試料に照射して該試料の分析,試料像の観察を行う透過型電子顕微鏡において、前記試料の試料透過像を撮像する撮像装置と、該撮像装置で得られた第一の試料透過像を記録する第一の記憶装置と、前記第一の試料透過像を回転させる電子レンズと、前記回転された第一の試料透過像を記録する第二の記憶装置と、前記撮像装置で撮像された第二の試料透過像を記録する第三の記憶装置と、前記第二の記憶装置に記録された前記回転された第一の試料透過像を読み出し2次元離散フーリエ変換データを作成する第一の演算装置と、前記第三の記憶装置に記録された前記第二の試料透過像を読み出し2次元離散フーリエ変換データを作成する第二の演算装置と、前記登録画像の2次元離散フーリエ変換データと前記参照画像の2次元離散フーリエ変換データとから位相情報のみの相互相関を計算して前記回転された第一の試料透過像と前記第二の試料透過像の間の視野ずれ量を求める視野ずれ量演算装置と、前記視野ずれ量の補正量を計算する補正量演算装置と、該補正量演算装置で計算された視野ずれ量の補正量に基づいて前記試料の試料透過像を補正する補正装置と、前記撮像装置により撮像された第三の試料透過像と前記回転された第一の試料透過像とから、両試料透過像間の回転角を計算する第三の演算装置とを備えたことを特徴とする透過型電子顕微鏡。
【0161】
(請求項12)
請求項11の記載において、前記補正装置は、前記試料の上部に配置され前記視野ずれ量の補正量に相当するだけ前記電子線をその光軸から平行移動させる第一の偏向器と、前記試料の下部に配置され前記電子線の光軸から平行移動した電子線を前記電子線の光軸上に戻す第二の偏向器とを備えたことを特徴とする透過型電子顕微鏡。
【0162】
(請求項13)
請求項11の記載において、前記補正装置は、前記試料を移動させる試料移動装置を備えたことを特徴とする透過型電子顕微鏡。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による透過型電子顕微鏡の一例を示し、その機能を示すブロック図。
【図2】透過型電子顕微鏡による透過像の一例を示す図。
【図3】試料透過拡大像を説明のために模擬的に示した図。
【図4】デカルト座標系と極座標系との関係図。
【図5】電子レンズの励磁と焦点距離との関係を示す関係図。
【図6】あらかじめ設定したある一定倍率の時の像回転レンズデータの像回転角と励磁電流との関係を示す関係図。
【図7】視野ずれ補正の流れを示すフローチャート。
【図8】試料透過像の一例を示す図。
【図9】ドリフトの状態を説明するデカルト座標表示を示す図。
【図10】ドリフト量の時間変化を示す関係図である。試料ドリフトの経時変化を示す図。
【図11】視野ずれ補正の概念を説明する模式図。
【図12】試料ドリフトのサンプリング時間を変えて視野ずれ補正を行う手順を示すフローチャート。
【図13】試料ドリフトを予測して視野ずれ補正を行う手順を示すフローチャート。
【図14】像回転時に生じた視野ずれを補正する手順を示すフローチャート。
【図15】像回転時に生じた視野ずれを補正する手順を示すフローチャート。
【図16】像回転時に生じた視野ずれを補正する手順を示すフローチャート。
【図17】倍率が変化した場合の像回転角を自動調整する手順を示す試料透過像の一例を示す図。
【符号の説明】
1…電子銃、2…第一照射レンズコイル、3…第二照射レンズコイル、4…試料上部第一偏向コイル、5…試料上部第二偏向コイル、6…対物レンズコイル、7…試料下部第一偏向コイル、8…試料下部第二偏向コイル、9…第一中間レンズコイル、10…第二中間レンズコイル、11…第一投射レンズコイル、12…第二投射レンズコイル、13…TVカメラ、38…マイクロプロセッサ、39…記憶装置、40…演算装置、41…CRT、42…CRTコントローラ、46…倍率切り替え用ロータリーエンコーダ、47…像回転角入力用ロータリーエンコーダ、48…RAM、49…ROM、50…シンチレータ、53…試料ステージ、54…試料、55,65…電子線、58,61,68,69…試料透過像、62…合成位相画像、63…相関強度画像、66…偏向時電子線、67…電子線光軸。

Claims (1)

  1. 電子線を発生させる電子源と、
    前記電子線を偏向する偏向器と、
    前記電子線を絞って照射する照射レンズと、
    前記試料を透過した電子を結像する結像レンズ系と、
    当該結像レンズ系によって結像された試料透過像を検出する検出器とからなる透過型電子顕微鏡において、
    前記検出器によって検出された試料透過像の像回転前後の像ずれ及び像回転量を、当該像回転前後の2つの試料透過像の二次元離散フーリエ変換データの作成に基づく、合成位相データの相関強度データから演算する演算装置を備え、
    当該演算装置は、基準となる試料透過像を像回転させ、像回転させた後の試料透過像を取得し、当該像回転させた後の試料透過像の取得後、前記基準となる試料透過像との回転角誤差を、前記相関強度データに基づいて演算し、当該回転角誤差を補正するように、前記結像レンズ系の励磁条件を変化させた後、当該回転角誤差補正が行われた試料透過像を取得し、前記基準となる試料透過像取得後、或る時間が経過した当該回転角誤差補正が行われた試料透過像と、前記基準となる試料透過像との間の像ずれを、前記相関強度データに基づいて演算し、当該像ずれを補正するように前記偏向器、或いは前記試料を移動させる試料ステージを駆動させ、当該像ずれ補正が行われた試料透過像を取得することを特徴とする透過型電子顕微鏡。
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