JP4094958B2 - N−(1(s)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−l−アラニンの精製方法 - Google Patents

N−(1(s)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−l−アラニンの精製方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、下記式(1)
【0002】
【化8】
Figure 0004094958
【0003】
で表されるN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンの精製方法に関する。 N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンは、医薬品の製造中間体、特に、エナラプリル、ラミプリル等の種々の血圧降下剤(アンジオテンシン変換酵素阻害剤)の製造中間体として極めて有用な化合物である。
【0004】
【従来の技術】
従来、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンの合成方法としては、
(a)β−ベンゾイルアクリル酸エチルにL−アラニンをマイケル付加反応させた後、接触還元してベンゾイル部のカルボニル基をメチレン基に変換する方法(特公平3−22867号公報等)、
(b)β−ベンゾイルアクリル酸エチルにL−アラニンベンジルエステルをマイケル付加反応させた後、接触還元してベンゾイル部のカルボニル基をメチレン基に変換するとともにベンジルエステルを開裂する方法(特開昭58−103364号公報等)、
(c)(S)−ホモフェニルアラニンエチルエステルとα位に脱離基(ハロゲン原子、スルホニルオキシ基等)を有する(S)−又は(RS)−プロピオン酸を反応させる方法(特開昭63−174956号公報等)、
(d)(S)−ホモフェニルアラニンエチルエステルとα位に脱離基(ハロゲン原子、スルホニルオキシ基等)を有する(S)−又は(RS)−プロピオン酸ベンジルエステルを反応させた後、接触還元してベンジルエステルを開裂する方法(特開昭59−181247号公報等)、
(e)α位に脱離基(ハロゲン原子、スルホニルオキシ基等)を有する(R)−又は(RS)−フェニル酪酸エチルとL−アラニンのベンジルエステル又はt−ブチルエステルとを反応させた後、接触還元又は酸処理して上記ベンジルエステル又はt−ブチルエステルを開裂する方法(Chem.Pharm.Bull.37(2)280(1989)等)、
(f)2−オキソ−4−フェニル酪酸エチルとL−アラニン又はL−アラニンベンジルエステルを還元アミノ化する方法(特開平5−201882号公報等)、等が知られている。
【0005】
上記合成法においては、目的物であるN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン以外に、構造の類似した各種不純物が副生又は残存する。
不純物としては、光学異性体類、即ち、下記式(2)
【0006】
【化9】
Figure 0004094958
【0007】
で表されるN−(1(R)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン、下記式(3)
【0008】
【化10】
Figure 0004094958
【0009】
で表されるN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−D−アラニン、或いは、下記式(4)
【0010】
【化11】
Figure 0004094958
【0011】
で表されるN−(1(R)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−D−アラニン;
シクロヘキシル誘導体、即ち、下記式(5)
【0012】
【化12】
Figure 0004094958
【0013】
で表されるN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−シクロヘキシルプロピル)−L−アラニン;
カルボキシ誘導体、即ち、下記式(6)
【0014】
【化13】
Figure 0004094958
【0015】
で表されるN−(1(S)−カルボキシ−3−フェニルプロピル)−L−アラニン;
エステル誘導体、即ち、下記一般式(7)
【0016】
【化14】
Figure 0004094958
【0017】
(式中、Rはアルキル基またはアラルキル基を表す)で表されるN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンエステル;
及び、フェニル酪酸エチル等が挙げられる。
【0018】
光学異性体類は、光学純度の低い原料を使用した場合や、反応の立体選択性が不十分な場合、あるいは原料や中間体のラセミ化により生じる。合成法にもよるが、一般に、前記式(2)のN−(1(R)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンや前記式(3)のN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−D−アラニンの副生量が多い。
【0019】
シクロヘキシル誘導体は、接触還元時のベンゼン環の水素化により生じる。カルボキシ誘導体は、加水分解又は接触還元時のエステル部の開裂により生じる。また、エステル誘導体は目的物の末端カルボキシル基がエステルに変換された化合物であり、反応未完による原料の残存や副反応等により生じる。式(7)において、Rはエチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜8のアルキル基(特に炭素数1〜4のアルキル基)、またはベンジル基等の炭素数7〜10のアラルキル基を表す。また、フェニル酪酸エチルはβ−ベンゾイルアクリル酸エチルの還元によって生じる。
【0020】
言うまでもなく、このような構造類似不純物等の、製品(N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン)への混入は極力避けるべきであり、そのためには、優れた精製方法が必要となる。
【0021】
従来、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンの精製方法としては、例えば、
(1)酢酸エチルから結晶化することにより、上記光学異性体、特に、ジアステレオマーを除去する方法(1S/1R比=95/5→1S/1R比=99/1)(特公平3−22867号公報等)、
(2)沸騰水から結晶化することにより、上記カルボキシ誘導体を除去する方法(AT402639B)、
等が知られている。
【0022】
又、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンの単離方法としては、例えば、特開平5−201882号公報には、抽出した有機相の蒸発残留物を用い、エタノール又はアセトンから冷時に結晶化する方法が記載されているが、不純物の除去効果については何ら述べられていない。
【0023】
本発明者らが検討した結果、上記結晶化方法は、過去報告されているように、不純物の除去効果が十分でなく(AT402639B、特開平9−301938号公報等)、例えば、酢酸エチルからの結晶化では上記カルボキシ誘導体の除去が難しく、又、水からの結晶化ではシクロヘキシル誘導体やエステル誘導体の除去、低極性のフェニル酪酸エチルの除去が難しいことが分かった。
又、従来の精製方法では、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンは水やエタノール等の溶媒に対する溶解性が低いために、高濃度での結晶化が行いにくく、工業的規模での生産性にも問題があった。
更に、得られる晶析スラリーの物性(液性状)や得られる結晶の物性(粉体特性)が必ずしも良いとは言えず、晶析缶から払い出しにくい、乾燥しにくい、乾燥時にダマが形成しやすい、嵩比重が小さいため梱包時に大きな容量の容器を必要とする等の問題点もあることが分かった。
このように、従来の精製方法は、製品純度、粉体特性、収率、生産性等の観点から、必ずしも好ましいものではなかった。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記に鑑み、高品質、即ち、高純度で良好な粉体特性を有するN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンを、高い収率、高い生産性で取得するための、工業的規模での実施に適した精製方法を提供することを目的とする。
【0025】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、アルコールと水の混合溶媒を用いて晶析を行うことにより、溶解度、不純物の除去効果、スラリー性状、粉体特性等の収率、品質、操作性や生産性を左右する条件を著しく改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0026】
即ち、本発明は、式(1)
【0027】
【化15】
Figure 0004094958
【0028】
で表されるN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンの精製方法であって、不純物が混入しているN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンを、アルコール/水の容量比が1〜20であるアルコールと水の混合溶媒から晶析することにより、混入している不純物を母液に除去してN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンの結晶を晶出させることを特徴とする、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンの精製方法に関する。
【0029】
また、本発明は、混入している不純物が、N−(1(R)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−D−アラニン、N−(1(R)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−D−アラニン、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−シクロヘキシルプロピル)−L−アラニン、N−(1(S)−カルボキシ−3−フェニルプロピル)−L−アラニン、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンエステル、及び、フェニル酪酸エチルからなる群より選択される少なくとも一つの化合物である上記精製方法に関する。
【0030】
さらに、本発明は、晶析を0.1kW/m以上の強制流動条件下で行う上記精製方法;晶析を20℃以上の温度で行う上記精製方法;晶析を全晶出量の50%量/時間以下の晶出速度で行う上記精製方法;晶析をpH3〜6で行う上記精製方法;晶析は、冷却晶析及び濃縮晶析のうち少なくとも一方を用いて行われるものである上記精製方法;晶析は、冷却晶析を用いて行われるものである上記精製方法;冷却晶析時の冷却速度は40℃/時間以下である上記精製方法に関する。
【0031】
また、本発明は、アルコールが炭素数1〜8の1価アルコールである上記精製方法;アルコールが炭素数1〜4の1価アルコールである上記精製方法;アルコールがエタノールである上記精製方法;エタノールとして、アルコール類以外の変性剤によって変性されたエタノールを用いる上記精製方法;晶析に際し、予め、吸着剤により処理を行う上記精製方法;吸着剤が活性炭である上記精製方法に関する。
【0032】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においては、不純物が混入しているN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンから、高品質、即ち、高純度で良好な粉体特性を有するN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンを高い収率、高い生産性で取得するために、アルコールと水の混合溶媒から晶析を行う。
【0033】
上記アルコールとしては特に制限されず、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、t−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、3,3,5−トリメチル−1−ヘキサノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、シクロヘキサノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール等の炭素数1〜12の1価アルコール等を挙げることができる。
【0034】
好ましくは炭素数1〜8の1価アルコールであり、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、t−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、シクロヘキサノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0035】
得られる製品の品質、収率、生産性の観点からは、炭素数1〜6の1価アルコールがより好ましく、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、t−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、シクロヘキサノール等が挙げられる。
【0036】
また、溶解度を高めるための適度な加温ができる、湿結晶からの溶媒除去や晶析濾液からの溶剤回収が容易に行える、室温以下に冷却した時も固化しにくい、粘性が低く取り扱いが容易である、溶剤コストが安価で入手が容易であるといった点から、炭素数1〜4の1価アルコールがさらに好ましい。例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、アリルアルコール、プロパルギルアルコール等が挙げられる。
【0037】
エタノール以外を用いる場合には、条件によっては、除去しにくいN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンのエステル交換生成物(例えば、N−(1(S)−メトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンやN−(1(S)−メトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンメチルエステル)等が副生する可能性があるため、エタノールを用いるのがもっとも好ましい。
【0038】
エタノールを用いる場合、そのエタノールは変性剤によって変性されていても良い。変性剤としては、例えば、イソプロパノール、メタノール、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、ヘプタン)、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、ベンゼン)等が用いられる。なかでもアルコール類以外の変性剤を用いるのが好ましく、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素がより好ましく、トルエンが特に好ましい。変性剤の添加量は、エタノールの容量に対して、10%以下であることが好ましい。
【0039】
本発明においては、上記アルコールと共に補助的な溶剤として水を用いる。水を併用することにより、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンの溶解度が適度に高まり、収率や生産性が向上するほか、不純物の除去効果も向上し、またスラリー性状や結晶物性(粉体特性)も改善される。
【0040】
晶析時のアルコールと水との容量比は、用いるアルコールの種類によって異なるが、アルコール/水の容量比が1〜20であることが必要である。上限としては、好ましくは18、より好ましくは16、さらに好ましくは14、特に好ましくは10であるが、高品質化の観点から、さらに5、なかでも4、とりわけ3であることがより好ましい。また、下限としては、高品質化の観点から、好ましくは1.5であり、より好ましくは2である。範囲として好ましくは1.5〜10、より好ましくは2〜5、なかでも2〜4、とりわけ2〜3で、好適に実施できる。また、収率が約70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上となるように設定するのが好ましい。
【0041】
本発明において、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンの晶析は、収率、品質(不純物の副生抑制も含む)等の観点から、当該結晶と上記混合溶媒からなる溶液のpHが3〜6で実施することが好ましく、より好ましくはpH4〜5である。不純物の共存等により、当該溶液pHが低すぎる場合や高すぎる場合には、例えば、塩酸や硫酸等の酸や、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物等のアルカリを使用して、pHを調整することができる。
【0042】
本発明において、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンの晶析は、強制流動下に実施するのが好ましい。高品質化の観点から、単位容積当たりの撹拌所要動力として、好ましくは約0.1kW/m以上、より好ましくは約0.2kW/m以上、さらに好ましくは約0.3kW/m以上の流動である。上限としては、特に制限されないが、好ましくは約20kW/m以下、より好ましくは約10kW/m以下である。上記の強制流動は、通常、撹拌翼の回転により与えられるが、上記流動が得られれば必ずしも撹拌翼を用いる必要はなく、例えば、液の循環による方法等を利用しても良い。
【0043】
N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンの晶析は、品質(製品純度、粉体特性)の観点から、加温条件下に行うのが好ましい。好ましくは約20℃以上、より好ましくは約30℃以上である。上限としては、好ましくは約80℃以下、より好ましくは約70℃以下である。好適には約20〜80℃で実施できる。
【0044】
本発明における晶析は、一般に用いられる晶析法、即ち、冷却晶析、中和晶析、濃縮晶析(溶媒置換による晶析も含む)等のうちの少なくとも一つを用いて実施することができる。冷却晶析及び濃縮晶析のうちの少なくとも一方を用いて行うのが好ましく、冷却晶析を用いるのが特に好ましい。
【0045】
本発明の効果を最大に高めるためには、結晶の晶出速度、即ち、単位時間当たりの晶出量を制御して、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン結晶中への各種不純物の混入を最小化するのが好ましい。晶出速度は、好ましくは全晶出量の約50%量/時間以下であり、より好ましくは全晶出量の約25%量/時間以下である。下限としては、好ましくは全晶出量の1%量/時間以上、より好ましくは全晶出量の2%量/時間以上である。
【0046】
冷却晶析の場合、高品質化の観点から、冷却速度は、好ましくは約40℃/時間以下であり、より好ましくは約20℃/時間以下であり、さらに好ましくは約10℃/時間以下であり、特に好ましくは5℃/時間以下である。下限としては、好ましくは約1℃/時間以上、より好ましくは約2℃/時間以上である。この場合、形成した大きな過飽和が崩れて急激な晶出が起こると品質上好ましくないので、必要に応じ、種晶を添加してスムースに核化を生じさせることも好ましく行われる。
【0047】
晶析終了時の晶析濃度は、特に制限はなく、用いるアルコールの種類にもより異なるが、溶媒の容量に対するN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンの重量割合として、好ましくは約5〜40w/v%であり、より好ましくは約10〜35w/v%であり、さらに好ましくは20〜30w/v%である。
【0048】
本発明の精製方法は、高い不純物除去効果を示し、特に、光学異性体類(N−(1(R)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−D−アラニン、N−(1(R)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−D−アラニン)、シクロヘキシル誘導体(N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−シクロヘキシルプロピル)−L−アラニン)、カルボキシ誘導体(N−(1(S)−カルボキシ−3−フェニルプロピル)−L−アラニン)、エステル誘導体(N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンエステル)、及び、フェニル酪酸エチルを効果的に除去できる。特に、極めて除去しにくいシクロヘキシル誘導体の除去にすぐれた効果を発揮する。また、鉄分等の無機成分の除去にも効果を発揮する。
不純物除去を助成するために、予め、吸着剤、好ましくは活性炭で処理した後に、晶析するのも有効である。
【0049】
本発明の精製方法で得られるN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン結晶は、通常の固液分離・ケーキ洗浄(遠心分離、加圧濾過、減圧濾過等)により湿体として取得することができ、又、更に、通常の乾燥(例えば、気流乾燥、減圧乾燥、真空乾燥等)により乾体として取得することができる。尚、固液分離に際しては、更に、約20℃以下、好ましくは0〜10℃に冷却して、収量を最大化することができる。
【0050】
本発明の精製方法は、特に制限されないが、例えば、前記の従来から知られている製法により合成されたN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン、特に、上記背景技術に記載の(a)又は(b)のマイケル付加反応を用いる方法により合成されたN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンを、結晶として取得するための、単離方法や再結晶方法等として好適に使用できる。
【0051】
本発明の効果は、アルコールと水の混合溶媒からN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンを結晶化した場合には、アルコールから結晶化した場合と比べ、結晶の含水率が高いことに起因すると思われる。
【0052】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0053】
(製造例)N−(1−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンの製造
トランス−β−ベンゾイルアクリル酸エチル25.9gをエタノール770mlに溶かした溶液に、L−アラニンのリチウム塩6.03gをエタノール426mlに溶かした溶液を室温で30分間かけて添加した。添加終了後、更に5分間撹拌した後、濃塩酸5.29mlを加え、氷水で冷却し、種晶としてN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−オキソ−3−フェニルプロピル)−L−アラニンを679mg添加して4時間撹拌した。析出した結晶を濾取し、エタノールで洗浄し、乾燥後、 N−(1−エトキシカルボニル−3−オキソ−3−フェニルプロピル)−L−アラニン(1S/1R比=95/5)12.7gを得た。
得られたN−(1−エトキシカルボニル−3−オキソ−3−フェニルプロピル)−L−アラニン(1S/1R比=95/5)の2.0gを110mlの1%(v/v)硫酸−エタノールに溶解し、これに0.5gの10%Pd/Cを加えて、室温、常圧下で接触還元を実施した。反応後、触媒を吸引濾過し、エタノールで洗浄後、得られた溶液を濃縮した。水及び水酸化ナトリウムを加えて中和した後、析出している結晶を濾取し、水で洗浄し、乾燥後、 N−(1−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン(1S/1R比=99/1)1.5gを得た。この結晶の平均粒径(Dp50)は30μm、粗充填嵩比重は約0.3、結晶の流動性は良好とは言い難かった。
【0054】
(実施例1)
N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン5g(純度96.7%、不純物として、N−(1(R)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン0.8%、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−シクロヘキシルプロピル)−L−アラニン0.84%、N−(1(S)−カルボキシ−3−フェニルプロピル)−L−アラニン0.2%、 N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンエチルエステル0.5%、フェニル酪酸エチル0.15%を含有)を、エタノールと水の混合溶媒(エタノール/水の容量比7)20mlに加温溶解(約65℃)した。2時間かけて撹拌下、20℃まで冷却晶析した(晶析時pH4〜5)。更に撹拌下、10℃まで冷却して結晶を濾過し、冷却したエタノールと水の混合溶媒(エタノール/水の容量比7)で洗浄後、真空乾燥(40〜60℃、一晩)し、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンの乾燥結晶を得た。収率84%、純度100.0%、 N−(1(R)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン、N−(1(S)−カルボキシ−3−フェニルプロピル)−L−アラニン、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンエチルエステル、フェニル酪酸エチルはいずれも不検出であり、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−シクロヘキシルプロピル)−L−アラニンの含量は0.40%(除去率52%)であった。この結晶の平均粒径(Dp50)は170μm、粗充填嵩比重は約0.5、結晶の流動性は良好であった。
【0055】
(実施例2)
実施例1で用いたのと同じN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン5gを、イソブタノールと水の混合溶媒(イソブタノール/水の容量比10)28mlに加温溶解(約65℃)した。2時間かけて撹拌下、20℃まで冷却晶析した(晶析時pH4〜5)。結晶を濾過し、冷却したイソブタノールと水の混合溶媒(イソブタノール/水の容量比10)で洗浄後、真空乾燥(40〜60℃、一晩)し、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンの乾燥結晶を得た。収率81%、純度99.9%、N−(1(R)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン、N−(1(S)−カルボキシ−3−フェニルプロピル)−L−アラニン、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンエチルエステル、フェニル酪酸エチルはいずれも不検出であり、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−シクロヘキシルプロピル)−L−アラニンの含量は0.27%(除去率68%)であった。この結晶の平均粒径(Dp50)は130μm、粗充填嵩比重は約0.5、結晶の流動性は良好であった。
【0056】
(実施例3)
実施例1で用いたのと同じN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン5gを、1−プロパノールと水の混合溶媒(1−プロパノール/水の容量比10)20mlに加温溶解(約65℃)した。2時間かけて撹拌下、20℃まで冷却晶析した(晶析時pH4〜5)。結晶を濾過し、冷却した1−プロパノールと水の混合溶媒(1−プロパノール/水の容量比10)で洗浄後、真空乾燥(40〜60℃、一晩)し、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンの乾燥結晶を得た。収率85%、純度99.7%、N−(1(R)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン、N−(1(S)−カルボキシ−3−フェニルプロピル)−L−アラニン、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンエチルエステル、フェニル酪酸エチルはいずれも不検出であり、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−シクロヘキシルプロピル)−L−アラニンの含量は0.38%(除去率55%)であった。この結晶の平均粒径(Dp50)は120μm、粗充填嵩比重は約0.5、結晶の流動性は良好であった。
【0057】
(比較例1)
N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン5g(不純物として、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−シクロヘキシルプロピル)−L−アラニン0.84%を含有)を、イソブタノール50mlに加温溶解(約65℃)した。2時間かけて撹拌下、20℃まで冷却晶析したところ、ケーキ状に固化した。結晶を濾過し、冷却したイソブタノールで洗浄後、真空乾燥(40〜60℃、一晩)し、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンの乾燥結晶を得た。収率63%、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−シクロヘキシルプロピル)−L−アラニンの含量は0.40%(除去率52%)であった。
【0058】
(比較例2)
N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン5g(不純物として、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−シクロヘキシルプロピル)−L−アラニン0.84%を含有)を、エタノール30mlに加温溶解(約65℃)した。2時間かけて撹拌下、20℃まで冷却晶析したところ、ケーキ状に固化した。結晶を濾過し、冷却したエタノールで洗浄後、真空乾燥(40〜60℃、一晩)し、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンの乾燥結晶を得た。収率67%、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−シクロヘキシルプロピル)−L−アラニンの含量は0.47%(除去率44%)であった。
【0059】
(比較例3)
N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン5g(不純物として、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−シクロヘキシルプロピル)−L−アラニン0.84%を含有)を、エタノールとシクロヘキサンの混合溶媒(エタノール/シクロヘキサンの容量比2)32mlに加温溶解(約65℃)した。2時間かけて撹拌下、20℃まで冷却晶析した。結晶を濾過し、冷却したエタノールとシクロヘキサンの混合溶媒(エタノール/シクロヘキサンの容量比2)で洗浄後、真空乾燥(40〜60℃、一晩)し、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンの乾燥結晶を得た。収率70%、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−シクロヘキシルプロピル)−L−アラニンの含量は0.48%(除去率43%)であった。
【0060】
(実施例4)
N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン30g(純度96.4%、不純物として、N−(1(R)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン0.10%、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−シクロヘキシルプロピル)−L−アラニン0.11%を含有)を、エタノールと水の混合溶媒(エタノール/水の容量比2.96)100mlに加温溶解(約65℃)した。50%含水活性炭3gを加えて1時間処理した後、熱時濾過し、エタノールと水の混合溶媒(エタノール/水の容量比16.9)10mlで洗浄した。得られた溶液を、強撹拌(0.3kW/m)下、20℃まで急冷(40℃/時間の冷却速度)し、更に2時間撹拌を続けた(晶析時pH4〜5)。結晶を濾過し、冷却したエタノールと水の混合溶媒(エタノール/水の容量比16.9)で洗浄後、真空乾燥し、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンの乾燥結晶を得た。収率85%、N−(1(R)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンは不検出であり、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−シクロヘキシルプロピル)−L−アラニンの含量は0.050%(除去率55%)であった。
【0061】
(実施例5)
10℃/時間の冷却速度で晶析を行った以外は、実施例4と同様にした。収率85%、N−(1(R)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンは不検出であり、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−シクロヘキシルプロピル)−L−アラニンの含量は0.044%(除去率60%)であった。
【0062】
(実施例6)
5℃/時間の冷却速度で晶析を行った以外は、実施例4と同様にした。収率85%、N−(1(R)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンは不検出であり、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−シクロヘキシルプロピル)−L−アラニンの含量は0.035%(除去率68%)であった。
【0063】
(実施例7)
N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン5g(純度96.7%、不純物として、N−(1(R)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン0.8%、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−シクロヘキシルプロピル)−L−アラニン0.84%、N−(1(S)−カルボキシ−3−フェニルプロピル)−L−アラニン0.2%、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンエチルエステル0.5%、フェニル酪酸エチル0.15%を含有)を、エタノールと水の混合溶媒(エタノール/水の容量比2.3)17mlに加温溶解(約65℃)した。50%含水活性炭1gを加えて10分間処理した後、熱時濾過し、エタノールと水の混合溶媒(エタノール/水の容量比2.3)3mlで洗浄した。得られた濾液を2時間かけて撹拌(0.2kW/m)下、20℃まで冷却晶析した(晶析時pH4〜5)。更に撹拌(0.2kW/m)下、10℃まで冷却して結晶を濾過し、冷却したエタノールと水の混合溶媒(エタノール/水の容量比16.9)で洗浄後、真空乾燥(40〜60℃、一晩)し、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンの乾燥結晶を得た。収率83%、純度99.9%、 N−(1(R)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン、N−(1(S)−カルボキシ−3−フェニルプロピル)−L−アラニン、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンエチルエステル、フェニル酪酸エチルはいずれも不検出であり、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−シクロヘキシルプロピル)−L−アラニンの含量は0.40%(除去率52%)、鉄分0.5ppmであった。この結晶の平均粒径(Dp50)は160μm、粗充填嵩比重は約0.5、結晶の流動性は良好であった。
【0064】
(比較例4)
実施例7で用いたのと同じN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン5gを水55mlに加え、濃塩酸1.9mlを添加して溶解した。50%含水活性炭1gを加えて10分間処理した後、濾過し、水5mlで洗浄した。得られた濾液に、撹拌(0.2kW/m)下、25〜28℃で、1時間かけて30%水酸化ナトリウム水溶液1mlを加えて、pH4.7に調整した。22℃で1時間撹拌した後、結晶を濾過し、水5mlで洗浄後、真空乾燥(40〜60℃、一晩)し、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンの乾燥結晶を得た。収率86%、純度99.1%、N−(1(S)−カルボキシ−3−フェニルプロピル)−L−アラニン及びフェニル酪酸エチルは不検出であり、N−(1(R)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンの含量0.1%、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンエチルエステルの含量0.2%、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−シクロヘキシルプロピル)−L−アラニンの含量は0.84%(除去率0%)、鉄分30ppmであった。この結晶の平均粒径(Dp50)は70μm、粗充填嵩比重は約0.3、結晶の流動性は良好とは言い難かった。
【0065】
以上のように、実施例の精製方法においては、高品質、即ち、高純度で、良好な粉体特性(特に、平均粒径が100〜1000μmの好ましい範囲で、粗充填嵩比重が0.4〜0.7の好ましい範囲で、結晶の流動性は良好であった)を有するN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンを、高い収率、高い生産性で精製取得することができた。
【0066】
(参考例1)
実施例7と同様にして得られた結晶の粉体特性を、細川ミクロンのパウダーテスターを用いて調べた。その結果を以下に示した。
見かけ比重 ゆるみ:0.47
見かけ比重 かため:0.55
圧縮度 %:15
圧縮度 指数:20
安息角 度:43
安息角 指数:16
スパチュラ角 度:46
スパチュラ角 指数:17
均一度 単位:2.1
均一度 指数:23
流動性指数:76
流動性の程度:かなり良好
以上より、上記結晶の粉体特性が優れていることがわかる。
【0067】
(参考例2)
比較例4と同様にして得られた結晶の粉体特性を、細川ミクロンのパウダーテスターを用いて調べた。その結果を以下に示した。
見かけ比重 ゆるみ:0.24
見かけ比重 かため:0.39
圧縮度 %:39
圧縮度 指数:2
安息角 度:50
安息角 指数:12
スパチュラ角 度:66
スパチュラ角 指数:12
均一度 単位:1.6
均一度 指数:24
流動性指数:50
流動性の程度:あまり良くない
以上より、上記結晶の粉体特性は、参考例1に比較して明らかに劣っていることがわかる。
【0068】
(参考例3)
所定のエタノール/水の容量比での混合溶媒100mlを所定の温度に調整し、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンの純品を溶解しなくなるところまで加えて、30分間保持した後、上澄みを採取し、濃縮乾固後の重量/溶液重量に基づき、溶解度(重量%)を求めた結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
Figure 0004094958
【0070】
以上より、エタノール/水の容量比が1〜20の場合においては、溶解度の温度依存性が大きく、晶析溶剤として用いた場合、収率や生産性(晶析濃度)の向上が期待できる。
【0071】
【発明の効果】
本発明の精製方法により、高品質、即ち、高純度で良好な粉体特性を有するN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンを、高い収率、高い生産性で精製取得することができる。

Claims (15)

  1. 式(1)
    Figure 0004094958
    で表されるN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンの精製方法であって、不純物が混入しているN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンを、アルコール/水の容量比が1〜20であるアルコールと水の混合溶媒から晶析することにより、混入している不純物を母液に除去してN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンの結晶を晶出させることを特徴とする、N−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンの精製方法。
  2. 混入している不純物が、下記式(2)
    Figure 0004094958
    で表されるN−(1(R)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニン、下記式(3)
    Figure 0004094958
    で表されるN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−D−アラニン、下記式(4)
    Figure 0004094958
    で表されるN−(1(R)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−D−アラニン、下記式(5)
    Figure 0004094958
    で表されるN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−シクロヘキシルプロピル)−L−アラニン、下記式(6)
    Figure 0004094958
    で表されるN−(1(S)−カルボキシ−3−フェニルプロピル)−L−アラニン、下記一般式(7)
    Figure 0004094958
    (式中、Rはアルキル基またはアラルキル基を表す)で表されるN−(1(S)−エトキシカルボニル−3−フェニルプロピル)−L−アラニンエステル、及び、フェニル酪酸エチルからなる群より選択される少なくとも一つの化合物である請求項1記載の精製方法。
  3. 晶析を0.1kW/m以上の強制流動条件下で行う請求項1又は2記載の精製方法。
  4. 晶析を20℃以上の温度で行う請求項1、2又は3記載の精製方法。
  5. 晶析を、全晶出量の50%量/時間以下の晶出速度で行う請求項1、2、3又は4記載の精製方法。
  6. 晶析をpH3〜6で行う請求項1、2、3、4又は5記載の精製方法。
  7. 晶析は、冷却晶析及び濃縮晶析のうち少なくとも一方を用いて行われるものである請求項1、2、3、4、5又は6記載の精製方法。
  8. 晶析は、冷却晶析を用いて行われるものである請求項7記載の精製方法。
  9. 冷却晶析時の冷却速度は、40℃/時間以下である請求項8記載の精製方法。
  10. アルコールが炭素数1〜8の1価アルコールである請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の精製方法。
  11. アルコールが炭素数1〜4の1価アルコールである請求項10記載の精製方法。
  12. アルコールがエタノールである請求項11記載の精製方法。
  13. エタノールとして、アルコール類以外の変性剤によって変性されたエタノールを用いる請求項12記載の精製方法。
  14. 晶析に際し、予め、吸着剤により処理を行う請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13記載の精製方法。
  15. 吸着剤が活性炭である請求項14記載の精製方法。
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