JP4094878B2 - Iii族窒化物結晶製造方法およびiii族窒化物結晶製造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ディスク用青紫色光源,紫外光源(LDやLED),電子写真用青紫色光源,III族窒化物電子デバイスなどに利用可能なIII族窒化物結晶製造装置およびIII族窒化物結晶製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、紫〜青〜緑色光源として用いられているInGaAlN系(III族窒化物)デバイスは、その殆どがサファイア基板あるいはSiC基板上に、MO−CVD法(有機金属化学気相成長法)やMBE法(分子線結晶成長法)等を用いた結晶成長により作製されている。サファイアやSiCを基板として用いる場合には、III族窒化物との熱膨張係数差や格子定数差が大きいことに起因する結晶欠陥が多くなる。このために、デバイス特性が悪く、例えば発光デバイスの寿命を長くすることが困難であったり、動作電力が大きくなったりするという問題がある。
【0003】
更に、サファイア基板の場合には絶縁性であるために、従来の発光デバイスのように基板側からの電極取り出しが不可能であり、結晶成長したIII族窒化物半導体表面側からの電極取り出しが必要となる。その結果、デバイス面積が大きくなり、高コストにつながるという問題がある。また、サファイア基板上に作製したIII族窒化物半導体デバイスは、劈開によるチップ分離が困難であり、レーザダイオード(LD)で必要とされる共振器端面を劈開で得ることが容易ではない。このため、現在はドライエッチングによる共振器端面形成や、あるいはサファイア基板を100μm以下の厚さまで研磨した後に、劈開に近い形での共振器端面形成を行っているが、この場合にも、従来のLDのような共振器端面とチップ分離を単一工程で容易に行うことが不可能であり、工程の複雑化ひいてはコスト高につながる。
【0004】
これらの問題を解決するために、サファイア基板上にIII族窒化物半導体膜を選択横方向成長やその他の工夫を行うことで、結晶欠陥を低減させることが提案されている。この手法では、サファイア基板上にGaN膜を選択横方向成長しない場合に比較して、結晶欠陥を低減させることが可能となるが、サファイア基板を用いることによる、絶縁性と劈開に関する前述の問題は依然として残っている。更には、工程が複雑化すること、及びサファイア基板とGaN薄膜という異種材料の組み合わせに伴う基板の反りという問題が生じる。これらは高コスト化につながっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述したような問題を解決するためには、基板としては、基板上に結晶成長するIII族窒化物材料(ここでは、GaNとする)と同一であるGaN基板が最も適切である。そのため、気相成長,融液成長等によりバルクGaNの結晶成長の研究がなされている。しかし、未だ高品質で且つ実用的な大きさを有するGaN基板は実現していない。
【0006】
GaN基板を実現する一つの手法として、文献「Chemistry of Materials Vol.9 (1997) p.413-416」(以下、従来技術という)には、Naをフラックスとして用いたGaN結晶成長方法が提案されている。この方法はアジ化ナトリウム(NaN3)と金属Gaを原料として、ステンレス製の反応容器(容器内寸法;内径=7.5mm、長さ=100mm)に窒素雰囲気で封入し、その反応容器を600〜800℃の温度で24〜100時間保持することにより、GaN結晶を成長させるものである。
【0007】
この従来技術の場合には、600〜800℃と比較的低温での結晶成長が可能であり、容器内圧力も高々100kg/cm2程度と比較的圧力が低く、実用的な成長条件であることが特徴である。しかし、この従来技術の方法では、得られる結晶の大きさが1mmに満たない程度に小さいという問題がある。
【0008】
上述の従来技術の問題を解決するために、本願出願人は、III族原料および/またはV族原料を外部より反応容器内に供給する発明を数多く案出し、特許出願している。
【0009】
しかしながら、いずれのIII族窒化物結晶成長方法およびIII族窒化物結晶成長装置でも、III族金属とアルカリ金属との混合融液を保持する混合融液保持領域とIII族窒化物が結晶成長する結晶成長領域とが同一のものとなっており、この場合、混合融液保持領域でIII族窒化物の多数の核発生,結晶成長が起こり、核発生制御が困難であった。このように、従来では、核発生制御が困難であるために、結晶サイズが大きくならず、また、1つの結晶の中でマルチドメインが生じ、結晶品質が低下するという問題があった。
【0010】
本発明は、III族窒化物を結晶成長させるときに、III族窒化物の多数の核発生を抑制し、核発生制御を容易にすることができて、これにより、結晶品質を高め、実用的な結晶サイズのIII族窒化物結晶を結晶成長させることの可能なIII族窒化物結晶製造方法およびIII族窒化物結晶製造装置を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、アルカリ金属と少なくともIII族金属を含む物質との混合融液と、少なくとも窒素を含む物質とから、III族金属と窒素とから構成されるIII族窒化物を結晶成長させるIII族窒化物結晶の製造方法であって、前記混合融液を保持する混合融液保持領域と前記III族窒化物が結晶成長する結晶成長領域とが分離されており、前記混合融液を前記混合融液保持領域に保持する工程と、前記混合融液を前記混合融液保持領域から前記結晶成長領域へ輸送する工程と、前記少なくとも窒素を含む物質を前記結晶成長領域へ供給する工程と、前記結晶成長領域で、輸送された前記混合融液のみと前記少なくとも窒素を含む物質とからIII族窒化物結晶を成長させる工程と、を含む特徴としている。
【0012】
また、請求項4記載の発明は、アルカリ金属と少なくともIII族金属を含む物質との混合融液と、少なくとも窒素を含む物質とから、III族金属と窒素とから構成されるIII族窒化物を結晶成長させるIII族窒化物結晶成長させる結晶製造装置であって、前記混合融液を保持する混合融液保持領域と前記III族窒化物が結晶成長する結晶成長領域とが分離されており、前記混合融液保持領域に保持されている混合融液を前記結晶成長領域に輸送するための混合融液輸送手段を備え、前記結晶成長領域で、輸送された前記混合融液のみと前記少なくとも窒素を含む物質とから III 族窒化物結晶を成長させることを特徴としている。
【0014】
また、請求項5記載の発明は、請求項4記載のIII族窒化物結晶製造装置において、前記混合融液輸送手段は、混合融液の濡れ現象を利用して、前記混合融液保持領域から前記結晶成長領域へ混合融液を輸送するようになっていることを特徴としている。
【0015】
また、請求項6記載の発明は、請求項4記載のIII族窒化物結晶製造装置において、前記混合融液輸送手段は、毛管現象を利用して、前記混合融液保持領域から前記結晶成長領域へ混合融液を輸送するようになっていることを特徴としている。
【0016】
また、請求項7記載の発明は、請求項4記載のIII族窒化物結晶製造装置において、前記混合融液輸送手段は、前記混合融液保持領域を加圧することで、前記混合融液保持領域から前記結晶成長領域へ混合融液を輸送するようになっていることを特徴としている。
【0017】
また、請求項8記載の発明は、請求項4乃至請求項7のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶製造装置において、前記混合融液保持領域と前記結晶成長領域との温度は、それぞれ独立に制御可能となっていることを特徴としている。
【0018】
また、請求項9記載の発明は、請求項4乃至請求項8のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶製造装置において、混合融液保持領域および/または混合融液輸送手段は、表面でIII族窒化物が結晶成長しない材質で構成されていることを特徴としている。
【0019】
また、請求項10記載の発明は、請求項9記載のIII族窒化物結晶製造装置において、前記混合融液輸送手段は、タングステン(W)の輸送管で構成されていることを特徴としている。
【0020】
また、請求項11記載の発明は、請求項4乃至請求項10のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶製造装置において、混合融液保持領域は、不活性気体が主な雰囲気となっていることを特徴としている。
【0022】
また、請求項12記載の発明は、請求項4乃至請求項10のいずれか一項に記載の III 族窒化物結晶製造装置において、 III 族窒化物結晶の結晶成長を進展させるため、前記結晶成長領域で成長した III 族窒化物結晶の位置を移動させる移動機構を有していることを特徴としている。さらに、請求項13記載の発明は請求項12記載のIII族窒化物結晶製造装置において、混合融液輸送手段による混合融液の輸送速度に応じて、前記移動機構の移動速度を制御する移動速度制御機構を有していることを特徴としている。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は本発明に係るIII族窒化物結晶成長装置の一例を示す図である。図1を参照すると、反応容器101内は、仕切り板150によって、上室151と、下室152とに仕切られている。
【0025】
ここで、反応容器101内の下室152には、アルカリ金属(以下の例では、Naとする)と少なくともIII族金属を含む物質(以下の例では、Gaとする)との混合融液103を保持する混合融液保持容器102が設置されている。
【0026】
なお、アルカリ金属(Na)は、外部から供給されても良いし、あるいは、最初から反応容器101内に存在していても良い。
【0027】
また、混合融液保持容器102の上には蓋109があり、混合融液保持容器102と蓋109との間には、気体が出入できる程度の僅かな隙間がある。
【0028】
また、反応容器101は、例えばステンレスで形成されている。
【0029】
また、図1のIII族窒化物結晶成長装置では、混合融液103を保持する混合融液保持容器102とは分離して、反応容器101内の上室151に、III族窒化物が結晶成長する結晶成長用容器111が設けられている。
【0030】
ここで、混合融液保持容器102を含めてその近傍は、混合融液保持領域として機能し、また、結晶成長用容器111を含めてその近傍は、結晶成長領域として機能するようになっている。すなわち、本発明は、より広義には、混合融液を保持する混合融液保持領域とIII族窒化物が結晶成長する結晶成長領域とが分離していることを特徴としている。
【0031】
この場合、混合融液保持領域においてはIII族窒化物の成長が起こらないようにするために、下記の(1)(2)(3)の少なくとも一つの項目を適用する。
(1)混合融液保持容器102は、表面でIII族窒化物が結晶成長しない材質(例えば、タングステン(W))で構成されている。
(2)下室152の主な雰囲気を、混合融液保持容器102内でIII族窒化物が結晶成長しない雰囲気(例えば、アルゴン(Ar)のような不活性ガス雰囲気)とする。
(3)混合融液保持容器102の温度を、混合融液保持容器102内でIII族窒化物が結晶成長しない温度とする。
【0032】
混合融液保持容器102の材質は、前述のようにIII族窒化物が結晶成長しない材質の一つであるタングステン(W)であっても良いし、あるいは、(2)や(3)を用いる場合には、III族窒化物が結晶成長する材質であるBN(窒化硼素)、AlN、パイロリティックBN、ステンレススチール(SUS)等であっても良い。
【0033】
これに対し、結晶成長用容器111は、III族窒化物が結晶成長する材質,例えば、BN(窒化ホウ素)、あるいは、AlN、あるいは、パイロリティックBNやSUSで構成されているのが良い。なお、図1の例では、混合融液保持容器102の蓋109については、これを、例えば、BN(窒化ホウ素)、あるいは、AlN、あるいは、パイロリティックBNで構成することができる。
【0034】
但し、後述する冶具130の先端部が、III族窒化物が結晶成長する材質の場合には、結晶成長用容器111の材質は、タングステン(W)のようなIII族窒化物が結晶成長しない材質であっても良い。
【0035】
また、図1のIII族窒化物結晶製造装置では、混合融液保持容器102(混合融液保持領域)に保持されている混合融液を結晶成長用容器111(結晶成長領域)に輸送するための混合融液輸送手段105が設けられている。ここで、混合融液輸送手段105は、表面がWやSUSやニッケル(Ni)あるいはBN等で構成されている。
【0036】
材質がその表面でIII族窒化物が結晶成長しないタングステン(W)の場合には、混合融液輸送手段105の内部には、III族窒化物が析出し、詰まることが無く、安定的に混合融液を輸送することが可能となり、最も良い。また、III族窒化物が結晶成長するSUSやNi等の材質の場合でも、混合融液輸送手段105の内部が全て、III族窒化物で詰まらない程度の析出であれば用いることが可能となる。この場合は前述した混合融液保持容器102と同様に、雰囲気,温度との関係が影響する。
【0037】
混合融液輸送手段105を前述の金属等の濡れが大きい材質で構成した場合、混合融液輸送手段105は、混合融液の濡れ現象を利用して、混合融液保持容器102(混合融液保持領域)から結晶成長用容器111(結晶成長領域)へ混合融液を輸送することができる。
【0038】
上述の混合融液輸送手段105の材質と混合融液との濡れが大きい材質でも、あるいは、BNのように濡れが大きくない材質の場合でも、いずれの場合でも、混合融液輸送手段105は、毛管現象を利用して、混合融液保持容器102(混合融液保持領域)から結晶成長用容器111(結晶成長領域)へ混合融液を輸送することができる。
【0039】
あるいは、混合融液輸送手段は、混合融液保持容器102(混合融液保持領域)を加圧することで、混合融液保持容器102(混合融液保持領域)から結晶成長用容器111(結晶成長領域)へ混合融液を輸送するように構成することもできる。この場合、図1の管105は、単なる輸送管として機能する。
【0040】
また、図1のIII族窒化物結晶成長装置では、III族窒化物結晶の原料の1つとして、結晶成長領域(結晶成長用容器111を含む領域)内(上室151内)には、少なくとも窒素を含む物質(例えば、窒素ガス,アンモニアガスまたはアジ化ナトリウム)が供給されるようになっている。なお、ここで言う窒素とは、窒素分子あるいは窒素を含む化合物から生成された窒素分子や原子状窒素、および窒素を含む原子団および分子団のことであり、本発明において、窒素とは、このようなものであるとする。以下では、便宜上、少なくとも窒素を含む物質は、窒素ガス(N2)であるとして説明する。
【0041】
これに対し、混合融液保持容器102(混合融液保持領域)においてIII族窒化物の核が発生するのを防止するため、混合融液保持容器102(混合融液保持領域),すなわち下室152は、不活性気体(例えばAr)が主な雰囲気となっているのが良い。
【0042】
また、図1のIII族窒化物結晶製造装置では、複数の(図1の例では2つの)加熱装置120,121が設けられている。ここで、加熱装置120は、主に混合融液保持容器102を含めてその近傍,すなわち混合融液保持領域を加熱するように配置され、また、加熱装置121は、主に結晶成長用容器111を含めてその近傍,すなわち結晶成長領域を加熱するように配置され、各加熱装置120,121は、それぞれ独立に温度制御可能となっている。これにより、混合融液保持領域と結晶成長領域との温度を、それぞれ独立に制御可能となっている。具体的には、加熱装置120によって、混合融液保持容器102に保持されている混合融液の温度を、混合融液保持容器102に保持されている混合融液でIII族窒化物が結晶成長しないような温度(例えば600℃程度の温度)に制御し、一方、加熱装置121によって、結晶成長用容器111(結晶成長領域)における混合融液の温度を、結晶成長用容器111(結晶成長領域)でIII族窒化物が結晶成長可能な温度(例えば800℃程度の温度)に制御することが可能になっている。
【0043】
ここで、混合融液保持容器102に保持されている混合融液の温度は、必ずしもIII族窒化物が全く結晶成長しない温度である必要はなく、混合融液保持容器102内でのIII族窒化物の結晶成長の進展により、混合融液が混合融液輸送手段105を介して輸送されなくならない程度であれば良い。従って、前述したように下室152の雰囲気にも関係する。但し、混合融液として液体状態で存在出来る温度(融点以上)である必要はある。
【0044】
また、図1のIII族窒化物結晶成長装置には、III族窒化物結晶の結晶成長を進展させるため、結晶成長領域で成長したIII族窒化物結晶112の位置を移動させる移動機構(図1の例では、III族窒化物結晶112を符号112’に示すように上方に移動させる(引き上げる)治具130)が設けられている。
【0045】
なお、ここで、移動機構(治具130)は、結晶成長領域で成長したIII族窒化物結晶112の位置を手動によって移動させるものであっても良いが、本発明のIII族窒化物結晶成長装置において、混合融液輸送手段105による混合融液の輸送速度に応じて、結晶成長領域で成長したIII族窒化物結晶112の位置の移動速度を制御する移動速度制御機構が設けられていても良い。
【0046】
図1のIII族窒化物結晶成長装置を用いることで、次のようにして、III族窒化物(例えばGaN)112,112’の結晶を成長させることができる。
【0047】
すなわち、上述したように、図1の装置では、アルカリ金属(例えばナトリウム(Na))と少なくともIII族金属を含む物質(例えばGa)との混合融液を保持する混合融液保持容器102とIII族窒化物(例えばGaN)が結晶成長する結晶成長用容器111とが分離しており、混合融液保持容器102に保持されている混合融液を結晶成長用容器111に混合融液輸送手段105によって輸送して、結晶成長用容器111においてIII族窒化物結晶(例えばGaN結晶)を成長させることができる。
【0048】
このとき、混合融液保持容器102の雰囲気は、III族窒化物の核発生を防止するため、不活性気体(例えばAr)が主な雰囲気となっている。
【0049】
また、混合融液保持容器102の材質はBNで構成されている。また、III族窒化物結晶が混合融液輸送手段105で成長しないようにするため、混合融液輸送手段105は、表面でIII族窒化物が結晶成長しない材質,例えばタングステン(W)で構成されている。
【0050】
そして、混合融液輸送手段105がタングステン(W)で構成されている場合には、混合融液輸送手段105は、混合融液の濡れ現象を利用して、混合融液保持容器102から結晶成長用容器111へ混合融液を輸送することができる。
【0051】
また、結晶成長用容器111においてだけIII族窒化物結晶112を成長させるため、混合融液保持容器102を含めてその近傍(混合融液保持領域)と結晶成長用容器111を含めてその近傍(結晶成長領域)との温度を、それぞれ独立に制御する。具体的には、加熱装置120によって、混合融液保持容器102に保持されている混合融液の温度を、混合融液でIII族窒化物が結晶成長しないような温度(例えば600℃程度の温度)に制御し、一方、加熱装置121によって、結晶成長用容器111(結晶成長領域)における混合融液の温度を、結晶成長用容器111(結晶成長領域)でIII族窒化物を結晶成長可能な温度(例えば800℃程度の温度)に制御する。
【0052】
このような場合、混合融液保持領域(混合融液保持容器102)においては、III族窒化物結晶は成長せず、混合融液保持領域(混合融液保持容器102)に保持されている混合融液103が輸送手段105によって結晶成長領域(結晶成長用容器111)に輸送され、結晶成長領域(結晶成長用容器111)においてのみ、III族窒化物結晶112を成長させることができる。
【0053】
そして、結晶成長領域で成長したIII族窒化物結晶112の位置を移動機構(治具130)によって符号112’のように移動させる(図1の例では、矢印Rの方向に引き上げる)ことによって、結晶品質を高め、実用的な結晶サイズのIII族窒化物結晶(112,112’)を結晶成長させることができる。
【0054】
なお、上述の例では、冶具130を矢印Rの方向に引き上げるとしたが、冶具130を固定して、装置全体を引き下げるようにすることも可能である。
【0055】
なお、混合融液輸送手段105による混合融液の輸送速度に応じて、結晶成長領域で成長したIII族窒化物結晶の位置の移動速度を制御する移動速度制御機構を有している場合には、高い結晶品質かつ実用的な結晶サイズのIII族窒化物結晶112,112’の結晶成長を、より一層安定させて行なうことができる。
【0056】
また、上述の例では、成長したIII族窒化物を引き上げるかあるいは引き下げることにより結晶成長を進行させることを述べたが、本発明は、III族窒化物結晶が成長する領域と混合融液保持領域を分離し、結晶成長を進行させることを特徴としている。従って、引き上げや引き下げが無くとも、結晶成長用容器内で結晶が大きくなることも本発明の範囲内である。
【0057】
【発明の効果】
以上に説明したように、請求項1乃至請求項13記載の発明によれば、アルカリ金属と少なくともIII族金属を含む物質との混合溶液と、少なくとも窒素を含む物質とから、III族金属と窒素とから構成されるIII族窒化物を結晶成長させるときに、混合融液を保持する混合融液保持領域とIII族窒化物が結晶成長する結晶成長領域とを分離して、III族窒化物結晶を結晶成長させるので、結晶品質を高め、実用的な結晶サイズのIII族窒化物結晶を結晶成長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るIII族窒化物結晶製造装置の構成例を示す図である。
【符号の説明】
101 反応容器
102 混合融液保持容器
103 混合融液
109 蓋
111 結晶成長用容器
112,112’ III族窒化物結晶
105 混合融液輸送手段
150 仕切り板
120,121 加熱装置
130 治具
Claims (13)
- アルカリ金属と少なくともIII族金属を含む物質との混合融液と、少なくとも窒素を含む物質とから、III族金属と窒素とから構成されるIII族窒化物を結晶成長させるIII族窒化物結晶の製造方法であって、前記混合融液を保持する混合融液保持領域と前記III族窒化物が結晶成長する結晶成長領域とが分離されており、前記混合融液を前記混合融液保持領域に保持する工程と、前記混合融液を前記混合融液保持領域から前記結晶成長領域へ輸送する工程と、前記少なくとも窒素を含む物質を前記結晶成長領域へ供給する工程と、前記結晶成長領域で、輸送された前記混合融液のみと前記少なくとも窒素を含む物質とからIII族窒化物結晶を成長させる工程と、を含むIII族窒化物結晶の製造方法。
- 請求項1に記載のIII族窒化物結晶の製造方法において、前記混合融液保持領域の温度をIII族窒化物が結晶成長しない温度に制御し、前記結晶成長領域の温度をIII族窒化物が結晶成長可能な温度に制御する工程をさらに含むIII族窒化物結晶の製造方法。
- 請求項1に記載の製造方法において、前記混合融液保持領域を、III族窒化物の核が発生するのを防止するため、前記少なくとも窒素を含む物質とは異なる雰囲気とする工程をさらに含むIII族窒化物結晶の製造方法。
- アルカリ金属と少なくともIII族金属を含む物質との混合融液と、少なくとも窒素を含む物質とから、III族金属と窒素とから構成されるIII族窒化物を結晶成長させるIII族窒化物結晶成長させる結晶製造装置であって、前記混合融液を保持する混合融液保持領域と前記III族窒化物が結晶成長する結晶成長領域とが分離されており、前記混合融液保持領域に保持されている混合融液を前記結晶成長領域に輸送するための混合融液輸送手段を備え、前記結晶成長領域で、輸送された前記混合融液のみと前記少なくとも窒素を含む物質とから III 族窒化物結晶を成長させることを特徴とするIII族窒化物結晶製造装置。
- 請求項4記載のIII族窒化物結晶製造装置において、前記混合融液輸送手段は、混合融液の濡れ現象を利用して、前記混合融液保持領域から前記結晶成長領域へ混合融液を輸送するようになっていることを特徴とするIII族窒化物結晶製造装置。
- 請求項4記載のIII族窒化物結晶製造装置において、前記混合融液輸送手段は、毛管現象を利用して、前記混合融液保持領域から前記結晶成長領域へ混合融液を輸送するようになっていることを特徴とするIII族窒化物結晶製造装置。
- 請求項4記載のIII族窒化物結晶製造装置において、前記混合融液輸送手段は、前記混合融液保持領域を加圧することで、前記混合融液保持領域から前記結晶成長領域へ混合融液を輸送するようになっていることを特徴とするIII族窒化物結晶製造装置。
- 請求項4乃至請求項7のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶製造装置において、前記混合融液保持領域と前記結晶成長領域との温度は、それぞれ独立に制御可能となっていることを特徴とするIII族窒化物結晶製造装置。
- 請求項4乃至請求項8のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶製造装置において、前記混合融液保持領域および/または前記混合融液輸送手段は、表面でIII族窒化物が結晶成長しない材質で構成されていることを特徴とするIII族窒化物結晶製造装置。
- 請求項9記載のIII族窒化物結晶製造装置において、前記混合融液輸送手段は、タングステン(W)の輸送管で構成されていることを特徴とするIII族窒化物結晶製造装置。
- 請求項4乃至請求項10のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶製造装置において、前記混合融液保持領域は、不活性気体が主な雰囲気となっていることを特徴とするIII族窒化物結晶製造装置。
- 請求項4乃至請求項10のいずれか一項に記載の III 族窒化物結晶製造装置において、 III 族窒化物結晶の結晶成長を進展させるため、前記結晶成長領域で成長した III 族窒化物結晶の位置を移動させる移動機構を有していることを特徴とする III 族窒化物結晶製造装置。
- 請求項12記載のIII族窒化物結晶製造装置において、前記混合融液輸送手段による混合融液の輸送速度に応じて、前記移動機構の移動速度を制御する移動速度制御機構を有していることを特徴とするIII族窒化物結晶製造装置。
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