JP4093708B2 - 清掃用ウエットシート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多量の水性液を保持でき、該水性液が徐放されて広面積の清掃対象面を拭くことができる清掃用ウエットシートに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
特開平5−15481号公報には、超極細繊維や分割繊維等からなる除汚性繊維層と吸液性繊維層とを有する清拭布に、溶剤を含有する清拭剤を含浸させてなる平滑面クリーナーが記載されている。しかしながら、この平滑面クリーナーでは、含浸された清拭布の徐放性が考慮されていないので、一回の洗浄で必要量以上の清拭剤が被洗浄面に放出されてしまい、広面積を洗浄することが困難である。また、この平滑面クリーナーは、使用時まで密封しておかないと溶剤等が蒸発してしまうので、保管や取り扱いに注意を払う必要がある。
【0003】
従って、本発明は、多量の水性液を保持でき、該水性液を均一に徐放し得る清掃用ウエットシートを提供することを目的とする。
また本発明は、液の蒸発に大きな注意を払う必要がなく、保管や取り扱いが容易な清掃用ウエットシートを提供することを目的とする。
更に本発明は、別途水や洗浄液を使うことなく広面積の清掃対象面を清掃し得る清掃用ウエットシートを提供することを目的とする。
また更に本発明は、広面積の床の清掃やつや出し(ワックスがけ)ができる清掃用ウエットシートを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、イオン性物質によって水溶性高分子が架橋されて形成された水性液含有ゲルを有するゲル保持層と、イオン性物質捕捉剤の含有層とを備えた清掃用ウエットシートであって、
前記清掃用ウエットシート内において前記ゲル保持層及び前記イオン性物質捕捉剤の含有層はそれぞれ、無荷重下では前記水性液含有ゲルと前記イオン性物質捕捉剤とが実質的に接触せず、且つ所定の荷重下において前記水性液含有ゲルと前記イオン性物質捕捉剤とが接触し、該イオン性物質捕捉剤の作用によって該水性液含有ゲルから前記イオン性物質が引き抜かれて該水性液含有ゲルに含まれる水性液が徐放されるような状態に形成及び/又は配置されている清掃用ウエットシートを提供することにより前記目的を達成したものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1(a)及び図1(b)には、本発明の清掃用ウエットシートの一実施形態の構造が模式的に示されている。尚、図1(b)においては、便宜上図1(a)と上下面が逆になっている。
【0006】
図1(a)及び図1(b)に示す清掃用ウエットシート(以下、単にウエットシートという)1は、水性液を保持したウエットタイプのシート材であり、第1の外層2及び第2の外層3を有している。第1の外層2と第2の外層3との間には、ゲル保持層4が介在配置されている。ゲル保持層4と第1の外層2との間には通液性の隔離層5が介在配置されている。
【0007】
第1の外層2はウエットシート1における清掃面となる部分であり、イオン性物質捕捉剤の含有層となっている。この層は、イオン性物質捕捉剤が担持シート6に保持されて構成されている。担持シート6は、ウエットシート1の内部に保持されている水性液を徐々に放出し得る材料から形成されていることが好ましい。
【0008】
担持シート6としては、紙、湿式及び乾式不織布、織布及び編布などの繊維集合体、並びに多数の開孔部を有するフィルム等を用いることができる。特に紙及び不織布を用いることが清掃性及び経済性の点から好ましい。担持シート6が繊維集合体からなる場合、該繊維集合体を構成する繊維は適度に親水性を有していることが、土ボコリや汚れの捕集性の点から好ましい。そのような親水性繊維としては、セルロース系繊維、例えば木材系パルプや綿、麻等の天然繊維、及びビスコースレーヨン、テンセルやアセテート等のセルロース系化学繊維が挙げられる。また、疎水性の合成繊維の表面を親水化処理して親水性となした繊維を用いることもできる。
【0009】
担持シート6として、繊維集合体の一種である親水性繊維を主体として形成された不織布を用いる場合は、コットン、レーヨン、パルプ等のセルロース繊維を単独又は混合して製造された様々な不織布(湿式不織布の他、サーマルボンド、ケミカルボンド、ニードルパンチ、スパンレース等の乾式不織布)を使用することができる。一方、担持シート6として、繊維集合体の一種である親水性繊維を主体として形成された紙を用いる場合は、パルプから抄紙方式で製造される湿式パルプシートの他、抄紙後、バインダーを用いて湿潤強度を高めた湿式バインダーシートや、解繊・積層されたパルプ繊維をバインダーで接着し、シート状に形成した乾式パルプシート等、いずれのものも使用できる。
【0010】
本発明のウエットシートの清掃時における髪の毛や綿ボコリの絡み取り性を向上させたい場合には、担持シート6として、繊維長20mm以上、特に30〜100mm、とりわけ35〜65mmの繊維から構成される低交絡不織布を使用することが好ましい。そのような低交絡不織布としては、スパンレース不織布、エアースルー等のサーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、立体起毛不織布等が挙げられる。この場合、繊維長20mm以上の繊維から構成される低交絡不織布は、そのすべての構成繊維の繊維長が20mm以上であることを要せず、該不織布の原料中に及び/又は製造工程にて不可避的に混入及び/又は発生する繊維長20mm未満の繊維が含まれることは許容される。担持シート6に、熱エンボス加工によって、その表面に多数の凹凸を形成することも、清掃時の操作性を向上(摩擦抵抗を低減)させる点で好ましい。
【0011】
担持シート6は、清掃に十分な量の水性液を徐々に放出させる点から、その密度(嵩密度)が3.0gf/cm2 荷重下で0.01〜1.0g/cm3 であることが好ましく、0.05〜0.5g/cm3 であることが更に好ましく、0.1〜0.3g/cm3 であることが一層好ましい。
【0012】
担持シート6は、清掃時において清掃対象面に対して十分な強度を確保する点、及び清掃に十分な量の水性液を徐々に放出させる点から、その坪量が5〜150g/m2 であることが好ましく、10〜100g/m2 であることが更に好ましく、20〜70g/m2 であることが一層好ましい。
【0013】
担持シート6に保持されるイオン性物質捕捉剤の量は、その種類及び後述するゲル保持層4に含まれている水性液含有ゲルの量にもよるが、1〜100g/m2 、特に5〜60g/m2 であることが、水性液の徐放性と、清掃面の仕上り性とを両立させる点から好ましい。
【0014】
イオン性物質捕捉剤としては、後述するゲル保持層4に含まれている水性液含有ゲルからイオン性物質を引き抜く作用を有するものが用いられる。イオン性物質捕捉剤は、水性液含有ゲルを構成する水溶性高分子と架橋するイオン性物質の種類によって適切なものが選択される。例えばイオン性物質が金属イオン等のカチオン性物質の場合には、イオン性物質捕捉剤として、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)塩、ニトリロ三酢酸(NTA)塩、イミノ二酢酸(IDA)塩、クエン酸塩、トリポリリン酸塩等のキレート剤が用いられる。一方、イオン性物質がホウ酸イオン等のアニオン性物質の場合は、マグネシウムイオン、スカンジウムイオン等の金属イオンや各種カチオン等が用いられる。特に安全性等の点から、EDTA塩、クエン酸塩を用いることが好ましい。
【0015】
担持シート6にイオン性物質捕捉剤を保持させる方法としては、例えば、イオン性物質捕捉剤の粉末を散布する、或いはイオン性物質捕捉剤を水に一度溶解させ、その後、その水溶液をスプレー若しくは塗工するか又はその水溶液に担持シート6を浸漬する方法等が挙げられる。何れの方法を用いる場合においても、添加後に乾燥させて担持シート6を得ることが好ましい。
【0016】
第2の外層3はウエットシート1における清掃面とは反対側に位置する面であり、シート材(以下、裏面シートという)7によって構成されている。裏面シート7は、ウエットシート1の使用時に、使用者の手や清掃具と当接する部材であり、液不透過性となっている。裏面シート7を構成するシート材としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンのような熱可塑性樹脂のフィルム等が好適に用いられる。裏面シート7は、その坪量が、10〜100g/m2 、特に20〜50g/m2 であることが、経済性、使用時の強度の確保、及び十分な液不透過性の発現などの点から好ましい。
【0017】
ゲル保持層4は、イオン性物質によって水溶性高分子が架橋されて形成された水性液含有ゲルを有する層である。ゲル保持層4は、水性液含有ゲルそのものから構成されていてもよく、或いは水性液含有ゲルが所定の担体に保持されて構成されていてもよい。水性液含有ゲルが所定の担体に保持されてゲル保持層4が構成されている場合、該担体としては、不織布、織布、編物等の繊維集合体、スポンジ等の多孔質体などを用いることができる。
【0018】
ゲル保持層4における水性液含有ゲルの量は、それを構成する水溶性高分子の種類等にもよるが、ウエットシート1の1枚あたり10〜200g、特に20〜100gであることが、広面積の清掃対象面の清掃性と、清掃時の操作性とを両立する点から好ましい。
【0019】
前述の通り、水性液含有ゲルはイオン性物質によって水溶性高分子が架橋されて形成されている。水溶性高分子としては、イオン性物質によって架橋された場合に、多量の水性液を取り込んで保持し得るものが好ましく用いられる。そのような水溶性高分子の例としては、ポリアクリル酸系高分子、ポリメタクリル酸系高分子、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等のカルボン酸系高分子、ポリビニルアルコール、天然多糖類などが挙げられ、特に清掃に十分な量の水性液を徐々に放出できる点から天然多糖類を用いることが好ましい。
【0020】
天然多糖類としては、κ−カラギーナンやι−カラギーナンのようなカラギーナン類、アルギン酸ナトリウム、ジェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガムなどが挙げられ、特に水性液の徐放性の点から、カラギーナン類を用いることが好ましい。
【0021】
水溶性高分子を架橋させるために用いられるイオン性物質としては、水溶性高分子の性質に応じてカチオン性物質とアニオン性物質とが用いられる。カチオン性のイオン性物質としては、カルシウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、亜鉛イオン、鉄イオン、銅イオン、アルミニウムイオン、ニッケルイオン、コバルトイオン等の金属イオンが用いられる。アニオン性のイオン性物質としては、ポリビニルアルコールと架橋結合するホウ酸イオン等が用いられる。
【0022】
イオン性物質は、該イオン性物質を含む電解質の状態で用いられる。該電解質としては、例えば、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、ホウ酸、四ホウ酸ナトリウム等が用いられる。
【0023】
イオン性物質と水溶性高分子とから水性液含有ゲルを得るには、先ずイオン性物質を含む電解質を、水又は水性洗浄剤に溶解させ水溶液を得る。この水性液と、水溶性高分子又は水溶性高分子を溶解した水溶液とを混合撹拌することで、電解質の解離によって生成したイオン性物質が水溶性高分子を架橋させる。この架橋に伴い、前記の水や水性洗浄剤が水溶性高分子に多量に取り込まれて水性液含有ゲルが生成する。別法として、水溶性高分子を溶解した水溶液にイオン性物質を含む電解質を添加し溶解させ、更に水性洗浄剤を添加し溶解させることで、水性液含有ゲルを得ることもできる。
【0024】
イオン性物質を含む電解質の水溶液を得る場合に、水性洗浄剤を用いるときには、該水性洗浄剤として、水を媒体とし、界面活性剤、水溶性溶剤、アルカリ剤、酸、つや出し剤、ワックス剤、除菌剤、防腐剤、金属塩、香料、色素等が配合されたものが例示される。水の配合率は60重量%以上であることが、良好な清掃性と仕上がり性の点で好ましく、70〜95重量%が更に好ましい。
【0025】
界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の何れも用いられ、特に洗浄性と仕上がり性との両立の点から、ポリオキシアルキレン(アルキレンオキサイド付加モル数1〜20)アルキル(炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖)エーテル、アルキル(炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖)グリコシド(平均糖縮合度1〜5)ソルビタン脂肪酸(炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖)エステル、及びアルキル(炭素数6〜22の直鎖又は分岐鎖)グリセリルエーテル等の非イオン活性剤ならびにアルキルカルボキシベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドカルボキシベタイン、アルキルアミドスルホベタイン、アルキルアミドヒドロキシスルホベタイン等のアルキル炭素数8〜24の両性界面活性剤が好適に用いられる。界面活性剤は、水性洗浄剤中に0.01〜5.0重量%、特に0.05〜2.0重量%含有されることが、洗浄性及び仕上がり性の点から好ましい。
【0026】
水溶性溶剤としては、1価アルコール、多価アルコール及びその誘導体から選ばれる1種以上のものが好適であり、特に仕上がり性の点から蒸気圧2mmHg以上のものが好ましい。例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が好ましい。水溶性溶剤は水性洗浄剤中に、1〜40重量%、特に1〜20重量%含有されることが、臭い及び皮膚刺激性の低減の点から好ましい。
【0027】
アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム等の水酸化物、炭酸ナトリウム等の炭酸塩、硫酸水素ナトリウム等のアルカリ性の硫酸塩、第1リン酸ナトリウム等のリン酸塩、酢酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム等の有機アルカリ金属塩、アンモニア、モノ、ジ又はトリエタノールアミン等のアルカノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等のβ−アミノアルカノール並びにモルホリン等が挙げられる。特に感触とpHの緩衝性の点で、モノ、ジ又はトリエターノルアミン等のアルカノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等のβ−アミノアルカノール並びにモルホリンが好ましい。アルカリ剤は0.01〜5重量%、特に0.05〜1重量%含有されることが洗浄性及び感触の面で好ましい。
【0028】
隔離層5は、水性液含有ゲル中の水性液を清掃面に徐々に放出させるために、ゲル保持層4と第1の外層2との間に配設されるものである。
【0029】
隔離層5は、通液性を有するシート材(以下、隔離シートという)8から構成されている。隔離シート8は、ウエットシート1の使用前まではイオン性物質捕捉剤の含有層である第1の外層2とゲル保持層4とを隔離させておき、且つウエットシート1の使用時にはイオン性物質捕捉剤の含有層である第1の外層2に含まれているイオン性物質捕捉剤とゲル保持層4に含まれている水性液含有ゲルとを徐々に接触させて、水性液含有ゲルから水性液(水、水性洗浄剤)を放出させるために用いられる。
【0030】
隔離シート8としては、前述した担持シート6と同様のものを用いることができる。隔離シート8の坪量は、第1の外層2とゲル保持層4との隔離を十分なものとし、また第1の外層2に含まれているイオン性物質捕捉剤とゲル保持層4に含まれている水性液含有ゲルとの接触速度を制御する点から、5〜200g/m2 、特に20〜100g/m2 であることが好ましい。同様の点から、その厚みは0.1〜10mm、特に0.2〜5mmであることが好ましい。
【0031】
隔離シート8は、100〜4000Pa、特に200〜2000Paの荷重下で初めて、第1の外層2に含まれているイオン性物質捕捉剤とゲル保持層4に含まれている水性液含有ゲルとが接触する程度の隔離性を有していることが、ゲル保持層4から一定量ずつ水性液を放出させて、広範囲の清掃面を清掃可能とする点から好ましい。
【0032】
図1(b)に示すように、第1の外層2、第2の外層3、ゲル保持層4及び隔離層5は、略同幅となっている。またゲル保持層4及び隔離層5は略同じ長さとなっている。これらの前後端から第1の外層2及び第2の外層3が延出しており、当該延出部分においてこれら二層(第1の外層2及び第2の外層3)は、所定の接合手段によって一体的に接合固定されている。接合固定の手段としては、圧着、融着、接着又はこれらの任意の組み合わせ等が用いられる。
【0033】
以上の構成を有する本実施形態のウエットシート1においては、ゲル保持層4における水性液含有ゲルが多量の水性液(水あるいは水性洗浄液)を保持できるので、水性液の保持容量が極めて高いものとなる。
【0034】
本実施形態のウエットシート1においては、その使用前の無荷重下においては、イオン性物質捕捉剤の含有層である第1の外層2とゲル保持層4とが隔離シート8によって隔離されており、第1の外層2に含まれているイオン性物質捕捉剤とゲル保持層4に含まれている水性液含有ゲルとが実質的に接触しない状態となっている。実質的に接触しないとは、イオン性物質捕捉剤と水性液含有ゲルとが全く接触しないこと、及びイオン性物質捕捉剤と水性液含有ゲルとが不可避的に接触して微量の水性液が放出することは許容されることを意味する。一方、ウエットシート1の使用時における所定加重下においては、隔離シート8を通じて第1の外層2に含まれているイオン性物質捕捉剤とゲル保持層4に含まれている水性液含有ゲルとが接触するようになされている。この接触でイオン性物質捕捉剤の作用により水性液含有ゲルからイオン性物質が引き抜かれる。即ち、イオン性物質捕捉剤とイオン性物質とでコンプレックスが形成される。その結果、水溶性高分子の架橋構造が破壊され、水溶性高分子に取り込まれていた水性液が放出される。放出された水性液は、それぞれ通水性を有する隔離シート8及び担持シート6を経て、清掃対象面に施される。放出される水性液は、前記の如く水あるいは水性洗浄剤からなる。水性液には、水性液含有ゲルの調製時に添加されている各種成分が少量含まれている。
【0035】
所定加重下におけるイオン性物質捕捉剤と水性液含有ゲルとの接触は、隔離シート8を介しての間接的なものなので、該接触に起因する水溶性高分子の架橋構造の破壊は徐々に起こる。その結果、水溶性高分子によって大量に保持されている水性液が徐々に放出され、広面積の清掃対象面を清掃することができる。また、別途水や洗浄液を用いることなく清掃対象面を清掃できるので、清掃が至極簡便である。更に、ウエットシート1はその使用前までは水性液がその表面に滲出していないので、水性液の蒸発等に大きな注意を払う必要がなく、保管や取り扱いが容易である。
【0036】
このように、本実施形態のウエットシート1は、自から水性液を放出するものであり、各種硬質表面、例えばフローリング、ビニル(クッションフロア)やタイル等からなる床、壁、天井、リビング家具、浴槽、洗面台等の清掃に好適に用いられる。また水性液は少量が徐々に放出されるので、従来かたく絞った濡れ雑巾等で清掃せざるを得なかった畳なども容易に清掃できる。
【0037】
本実施形態のウエットシート1は、これを手で拭くこともでき、また所定の清掃具に装着させて拭くこともできる。例えば、平坦面を有する扁平形状のヘッド部、及び該ヘッド部と自在継手を介して連結した棒状の柄から構成された清掃具における該ヘッド部の平坦面に、第2の外層3が当接するようにウエットシート1を装着させれば、フローリング等の広面積の清掃対象面も容易に清掃できる。この場合、ウエットシート1における一方の外層である第2の外層3が液不透過性の材料から構成されているので、第2の外層3側に手を当てて清掃すれば手が濡れることがない。同様に、第2の外層3側に清掃具を装着すれば清掃具に水性液が付着することもない。
【0038】
本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、前記実施形態においては第1の外層2がイオン性物質捕捉剤の含有層を兼ねていたが、これに代えて、図2(a)及び図2(b)に示す構成とすることもできる。即ち、第1の外層2を親水性不織布等の通液性のシート材から構成し、これとは別にイオン性物質捕捉剤を担持シート6に保持させてイオン性物質捕捉剤の含有層9を構成して、図2(a)に示すように、イオン性物質捕捉剤の含有層9を、第1の外層2とゲル保持層4との間に介在配置させたり、或いは図2(b)に示すように、イオン性物質捕捉剤の含有層9を第2の外層3とゲル保持層4との間に介在配置させてもよい。この場合、図2(a)及び図2(b)に示すように、イオン性物質捕捉剤の含有層9とゲル保持層4との間に、隔離シート8からなる隔離層5を介在配置させることも好ましい。
【0039】
また、図1並びに図2(a)及び図2(b)に示す実施形態において、隔離シート8として液不透過性のシートを用い、ウエットシート1の使用前までは隔離シート8によってイオン性物質捕捉剤の含有層2,9とゲル保持層4とを隔離しておき、使用に際して隔離シート8を引き抜くことでイオン性物質捕捉剤の含有層9とゲル保持層4とが接触するような構成としてもよい。
【0040】
また前記実施形態においては、第2の外層3は液不透過性のシート材であったが、これに代えて第2の外層3として、第1の外層2と同様のものを用い、ウエットシート1の両面を清掃可能とさせることも好ましい。
【0041】
また前記実施形態においては、界面活性剤等の洗浄成分を、水性液含有ゲル中に保持させたが、これに代えて隔離シート8や担持シート6に保持させることもできる。
【0042】
また前記実施形態においては、イオン性物質捕捉剤と水性液含有ゲルとを隔離層5によって隔離したが、これに代えて、イオン性物質捕捉剤を、所定荷重下で破裂するマイクロカプセルに封入することで両者を隔離してもよい。
【0043】
【実施例】
以下の実施例中、特に断らない限り「%」は「重量%」を意味する。
【0044】
〔実施例1〜3〕
(1)水性液含有ゲルの調製
水溶性高分子であるκ−カラギーナンを1%溶解させた水溶液に塩化カルシウムを0.1%になるように添加し、温度を80℃まで上げて撹拌溶解させた。その溶液に予め70℃に温めておいたドデシルグルコシド(縮合度1.4)水溶液(40%)を0.1%になるように加えよく撹拌した後、室温になるまで放置して下記組成の水性液含有ゲルを調製した。
【0045】
水性液含有ゲルの組成:水/ドデシルグルコシド/κ−カラギーナン/塩化カルシウム=98.8/0.1/1/0.1
【0046】
実施例2では、上記と同様の調製法にて、ι−カラギーナン及び塩化カルシウムを用いて下記組成の水性液含有ゲルを調製した。
【0047】
水性液含有ゲルの組成:水/ドデシルグルコシド/ι−カラギーナン/塩化カルシウム=98.8/0.1/1/0.1
【0048】
実施例3では、水溶性高分子であるアルギン酸ナトリウムの水溶液にドデシルグルコシドを加え、アルギン酸ナトリウムの濃度を2%とする。この水溶液1kgに0.25%の第2リン酸カルシウム懸濁液500mlを加えた。続いて調製直後のクエン酸2.5%水溶液500mlを加え、1分間良く撹拌し、そのまま放置して下記組成の水性液含有ゲルを調製した。
【0049】
水性液含有ゲルの組成:水/ドデシルグルコシド/アルギン酸ナトリウム/第2リン酸カルシウム/クエン酸=97.525/0.1/1/0.125/1.25
【0050】
(2)第1、2の外層の製造
レーヨン繊維(1.7dtex×40mm)と、アクリル繊維(0.9dtex×51mm)と、芯がポリプロピレンで鞘がポリエチレンからなる芯鞘繊維(1.0dtex×38mm)とを重量比で50/25/25の比率で混合した坪量40g/m2 の繊維ウエブを常法のカード機で作製した。この繊維ウエブに低エネルギー条件でウォーターニードリング処理を施してスパンレース不織布を作製した。このスパンレース不織布に、ヒートエンボス(ロール温度130℃)加工を施して格子状のパターン形成した。このようにして得られた不織布(22cm×28cm、3.0gf/cm2 荷重下の嵩密度0.15g/cm3 )の全面に、イオン性物質捕捉剤であるエチレンジアミン四酢酸の10%水溶液20gをスプレーした後乾燥させて、第1の外層としてのイオン性物質捕捉剤含有シートを製造した(エチレンジアミン四酢酸の添加量0.0032g/cm2 )。また、第2の外層として坪量40g/m2 の液不透過性ポリエチレンフィルム(22cm×28cm)を準備した。
【0051】
(3)隔離層の製造
芯がポリエステルで鞘がポリエチレンからなる芯鞘構造でクリンプ形状をもつ低融点繊維(6.6dtex×51mm、鞘成分の融点110℃)と、レーヨン繊維(5.5dtex×51mm)とを重量比70/30で混合した坪量40g/m2 の繊維ウエブを常法のカード機で作製した。この繊維ウエブを130℃で乾燥させ、隔離層としてのエアースルー不織布(坪量40g/m2 )を作製した。
【0052】
(4)ウエットシートの製造
第1の外層(22cm×28cm)中央上に隔離層(10cm×28cm)を重ね、隔離層上に水性液含有ゲルを塗布して、隔離層と同形のゲル保持層を形成した。水性液含有ゲルの塗布量は40gとした。ゲル保持層上に第2の外層を重ねて、隔離層及びゲル保持層の前後端から延出する第1の外層と第2の外層とをヒートシールして図1(a)及び図1(b)に示す構造のウエットシートを製造した。
【0053】
〔比較例1〕
塩化カルシウムを添加せず、ι−カラギーナンをゲル化させない状態とした以外は、実施例2と同様にしてウェットシートを製造した。
水性液組成:水/ドデシルグルコシド/ι−カラギーナン=98.9/0.1/1
【0054】
〔比較例2〕
第1の外層にエチレンジアミン四酢酸(イオン性物質捕捉剤)を添加しない以外は、実施例2と同様にしてウェットシートを製造した。
【0055】
〔比較例3〕
水溶性高分子、電解質、イオン性物質捕捉剤を全て用いず、下記組成の水性液を20g隔離層に塗布する以外は、実施例1と同様にしてウェットシートを製造した。
水性液組成:水/ドデシルグルコシド=99.9/0.1
【0056】
〔性能評価〕
実施例及び比較例で得られたウエットシートについて、以下の方法で水性液の平均放出量及び放出性、並びに水性液の徐放性を評価した。結果を表1に示す。
【0057】
〔水性液の平均放出量及び放出性〕
実施例及び比較例で得られたウェットシートを、花王(株)製のクイックルワイパーに装着させてフローリングを10畳拭き続けた時の1畳あたりに放出される水性液量を測定した。1畳拭くごとにウェットシートを清掃部ヘッドから外し、その重量を測定することで、放出される水性液量を算出した。約90cmの距離を1往復を拭く動作を1ストロークとし、この動作を1畳の長手方向(180cm)に2列、短手方向(90cm)に4列行い1畳の清掃を完結した。その後、1畳あたりの平均放出量を算出した。その結果に基づき、下記の基準で水性液の放出性を評価した。
◎;1畳目から10畳目までの各水性液の放出量が1畳あたり0.5g以上であるもの
○;1畳目から8畳目までの各水性液の放出量が1畳あたり0.5g以上であるもの
△〜○;1畳目から6畳目までの各水性液の放出量が1畳あたり0.5g以上であるもの
△;1畳目から4畳目までの各水性液の放出量が1畳あたり0.5g以上であるもの
×;1畳目から4畳目までの各水性液の放出量が1畳あたり0.5g以上にないもの
【0058】
〔水性液の徐放性〕
前記の水性液の平均放出量の測定結果に基づき以下の基準で水性液の徐放性を評価した。
◎;1畳目から10畳目までの各水性液の放出量がその平均値の±50%の範囲に入るもの
○;1畳目から8畳目までの各水性液の放出量がその平均値の±50%の範囲に入るもの
△〜○;1畳目から6畳目までの各水性液の放出量がその平均値の±50%の範囲に入るもの
△;1畳目から4畳目までの各水性液の放出量がその平均値の±50%の範囲に入るもの
×;1畳目から4畳目までの各水性液の放出量がその平均値の±50%の範囲に入らないもの
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示す結果から明らかなように、各実施例(本発明品)のウエットシートは、水性液の放出量が一定量以上で、かつ水性液が徐々に放出されて広面積の清掃対象面を清掃できることが判る。また、表には示していないが、各実施例におけるウエットシートの隔離層は、約500Paの荷重下で初めて、イオン性物質捕捉剤と水性液含有ゲルとが接触する程度の隔離性を有していた。
【0061】
【発明の効果】
本発明の清掃用ウエットシートによれば、多量の水性液を保持でき、該水性液を均一に徐放させることができる。
また本発明の清掃用ウエットシートによれば、別途水や洗浄液を使うことなく広面積の清掃対象面を清掃することができる。
更に本発明の清掃用ウエットシートによれば、その使用前までは水性液がその表面に滲出していないので、水性液の蒸発等に大きな注意を払う必要がなく、保管や取り扱いが容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は本発明の清掃用ウエットシートの一実施形態の構造を示す模式図であり、図1(b)は図1に示す清掃用ウエットシートの斜視図である。
【図2】図2(a)及び図2(b)はそれぞれ本発明の清掃用ウエットシートの別の実施形態の構造を示す模式図である。
【符号の説明】
1 清掃用ウエットシート
2 第1の外層
3 第2の外層
4 ゲル保持層
5 隔離層
6 担持シート
7 裏面シート
8 隔離シート
9 イオン性物質捕捉剤の含有層
Claims (5)
- イオン性物質によって水溶性高分子が架橋されて形成された水性液含有ゲルを有するゲル保持層と、イオン性物質捕捉剤の含有層とを備えた清掃用ウエットシートであって、
前記清掃用ウエットシート内において前記ゲル保持層及び前記イオン性物質捕捉剤の含有層はそれぞれ、無荷重下では前記水性液含有ゲルと前記イオン性物質捕捉剤とが実質的に接触せず、且つ所定の荷重下において前記水性液含有ゲルと前記イオン性物質捕捉剤とが接触し、該イオン性物質捕捉剤の作用によって該水性液含有ゲルから前記イオン性物質が引き抜かれて該水性液含有ゲルに含まれる水性液が徐放されるような状態に形成及び/又は配置されている清掃用ウエットシート。 - 前記ゲル保持層と前記イオン性物質捕捉剤の含有層との間に通液性の隔離層が介在配置されている請求項1記載の清掃用ウエットシート。
- 前記イオン性物質捕捉剤の含有層は、前記イオン性物質捕捉剤が担持シートに保持されて構成されており、
前記イオン性物質捕捉剤の含有層が前記清掃用ウエットシートにおける一方の外層を構成し、他方の外層が液不透過性の裏面シートから構成されており、
前記イオン性物質捕捉剤の含有層と前記裏面シートとの間に前記ゲル保持層が配置されている請求項1又は2記載の清掃用ウエットシート。 - 前記水溶性高分子が、カルボン酸系高分子、ポリビニルアルコール又は天然多糖類からなり、前記イオン性物質が金属イオン又はホウ酸イオンからなる請求項1〜3の何れかに記載の清掃用ウエットシート。
- 前記天然多糖類がカラギーナン類又はアルギン酸である請求項4記載の清掃用ウエットシート。
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