JP4334263B2 - 身体用清拭シート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、湿式の身体用清拭シートに関する。本発明の清拭シートは所定温度に加温して使用される。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
水性液が含浸された身体用の清拭シートが知られている。斯かる清拭シートで身体を清拭する場合、シートからの水性液の放出量が多いと、身体表面に水性液が残留し、その液が気化するときに発生する気化熱によって体温が奪われてしまい冷刺激となる。この冷刺激によって、特に冬場の寒い時期には、身体を拭いた高齢者や乳児が体調を崩すおそれがある。そこで、清拭シートの使用に際して、該清拭シートを電子レンジで加温したり、専用の加温器具で加温することが行われている。しかし、該清拭シートを温めても、そこから放出される液量が多く、結局のところ、気化熱により体温が奪われ冷刺激となってしまう。
【0003】
また、加温された清拭シートを用いて身体を洗浄すると、シートを保温する機能がないことから時間の経過と共にシートの温度が低下していき、清拭が終わる頃には室温近くまで温度が低下してしまい、結局冷刺激を受けてしまう。特に、成人の身体全体を清拭する場合など、清拭面積が広く清拭に時間がかかる場合には、清拭終了時でのシートの温度低下が著しい。
【0004】
清拭シートとは別に、吸水性ポリマーを含む蒸しタオルが知られている(特許文献1及び2参照)。斯かる蒸しタオルは、これを沸騰した湯水に浸したり、或いは予め水分を含ませておき、電子レンジで加熱して用いられる。しかしこの蒸しタオルは、そもそも、身体の一部分における血管の運動性刺激を活発化させるために用いられるものであり、液を放出させて使用することを目的としていない。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−252994号公報
【特許文献2】
実開平2−52689号公報
【0006】
従って本発明は、所定温度に加熱して、身体を清拭するときに、含浸された液の気化や温度低下に起因する冷刺激を与えることが防止された身体用清拭シートを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、水性洗浄剤の含浸保持が可能な内層と、該内層の両面に配された表面層との少なくとも3層構造の積層シートからなり、水性洗浄剤が所定量含浸されている身体用清拭シートであって、
前記積層シートの周縁部において、前記内層を除く各層どうしが接合されていると共に、前記積層シートの周縁部よりも内側の位置においても、前記内層を除く各層どうしが接合されて、それぞれ接合部を形成しており、
2000g/45cm2荷重下での前記清拭シートからの前記水性洗浄剤の放出量が0.04〜0.8g/500cm2であり、
加温して使用される身体用清拭シートを提供することにより前記目的を達成したものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には本発明の身体用清拭シート(以下、清拭シートともいう)の一実施形態の斜視図が示されており、図2には図1におけるII−II線断面図が示されている。
【0009】
図1及び図2に示すように、本実施形態の清拭シート1は矩形状のものであり、内層2と、該内層2の両面に配された2枚の表面層3,3との3層構造の積層シートから構成されている。表面層3は内層2よりも大きな寸法を有しており、内層2の周縁から外方に延出している。内層2及び表面層3の何れも繊維シートから構成されている。
【0010】
清拭シート1は、身体の洗浄のための水性洗浄剤が含浸されている湿式シートである。そして清拭シート1は、2000g/45cm2の荷重下において、水性洗浄剤の放出量が0.04〜0.8g/500cm2、好ましくは0.1〜0.7g/500cm2、更に好ましくは0.2〜0.6g/500cm2となっている。本発明者らは、水性洗浄剤が含浸されている湿式シートを用いて身体を清拭したときの冷刺激(いわゆるひんやり感)について種々の検討を行ったところ、シートから放出される水性洗浄剤の量が0.8g/500cm2以下であれば、身体表面に残留する水性洗浄剤の気化に起因する冷刺激を抑制できることを知見した。従って、冬場の寒い時期などに高齢者や乳児の身体を清拭しても、冷刺激を与えることを防止でき、体調の崩れなどを防止できる。一方、放出量が0.04g/500cm2未満では十分な量の洗浄剤が放出されず、所期の洗浄効果が得られない。洗浄剤の放出量の単位を500cm2に基づき規定する理由は、この面積が、成人の腕を5回清拭したときの面積にほぼ相当することによるものである(1回あたり、20cm×5cm=100cm2)。また、水性洗浄剤の放出時の荷重を2000g/45cm2とした理由は、身体を清拭するときのシートの面積は通常45cm2程度(実際に手の力がかかるシートの大きさは、9cm×5cm=45cm2程度である)であること、及びその時に加わる力が2000g程度であることによるものである。
【0011】
水性洗浄剤の放出量の具体的な測定方法は次の通りである。
▲1▼2000gの直方体形の重りの下面に、9cm×5cm(×高さ2cm)に切り取ったスポンジ〔株式会社ブリジストン製のPH−20(SFフェルト)〕を固定する。このスポンジの使用目的は、清拭対象面(後述するイノアック・コーポレーション社製「高機能フォーム(1)TT−4101」)とシートとが常に一定面積で接触するようにするためである。
▲2▼シートを9cm×15cmに切り取り、洗浄剤を一定量含浸させる。
▲3▼前記スポンジを覆うように、前記シートを巻き付ける(前記スポンジと前記シートが接する大きさは、9cm×5cmである)。
▲4▼清拭対象面としてイノアック・コーポレーション社製「高機能フォーム(1)TT−4101」を用いる。この清拭対象面における長さ20cmの距離を、重り及びスポンジを巻き付けた状態のシートによって5回(2往復半)清拭し(清拭面積は100cm2×5回=500cm2)、その前後の重量変化から洗浄剤放出量を算出する。尚、清拭対象面としてイノアック・コーポレーション社製「高機能フォーム(1)TT−4101」を採用した理由は、このフォームを清拭対象面とした場合と、成人男子の腕を清拭対象面とした場合とで、洗浄剤の放出量に相関が認められたことによる。
【0012】
水性洗浄剤の放出量を前記範囲内にコントロールするためには、例えば水性洗浄剤の含浸量やシートの材質をコントロールすることが効果的である。シートの材質をコントロールすること、例えば親水性繊維と非親水性繊維(例えばポリエチレン/ポリプロピレンの組み合わせからなる芯鞘型複合繊維等)との混抄率を変化させることで、表面層3を構成するシートの親水性の度合いを変えることができる。具体的には、親水性繊維を多く混抄すると、表面層3は水性洗浄剤を保持しやすくなり、且つ圧力によって水性洗浄剤が容易に放出されることから、放出量は多くなる。逆に、親水性繊維の混抄率を低下させることで、表面層3は、水性洗浄剤を保持しにくくなり、内層2に保持される水性洗浄剤の量が増えるので、圧力を加えても水性洗浄剤は放出されにくくなる。よって放出量は少なくなる。
【0013】
一方、水性洗浄剤の含浸量をコントロールするには、清拭シート1の吸水性をコントロールすればよい。この目的のために、清拭シート1における内層2を構成するシートには、吸水性ポリマーが含まれていることが好ましい。詳細には、内層2は、吸水性ポリマーの粒子及び繊維材料を含む繊維シートから構成されていることが好ましい。そして、吸水性ポリマーの含有量をコントロールすることで、水性洗浄剤の含浸量、ひいてはその放出量をコントロールできる。更に、吸水性ポリマーが、水性洗浄剤中の水を吸収することで、清拭シート1全体としての熱容量が高くなり、清拭シート1を所定温度に加熱したときの短時間での温度低下を防止できる。このことによっても、冷刺激を与えることが防止される。
【0014】
このように、本発明においては、清拭シートに吸水性ポリマーを含有させることで、(1)水性洗浄剤の放出量がコントロールされて冷刺激が抑制される、及び(2)清拭シート1の保温性が高められて冷刺激が抑制される、という2つの面からの効果が奏される。
【0015】
清拭シート1の保温性を高めることで冷刺激を効果的に抑制するためには、清拭シート1に含まれる吸水性ポリマーの量及び含浸される水性洗浄剤の量、並びに両者の重量比が重要となる。吸水性ポリマー及び水性洗浄剤は、清拭シート1を60℃に加熱した後、23℃・65%RHの環境下に3分間保存した後の温度を30℃以上に維持し得る量含まれていることが好ましい。保存時間を3分間とした理由は、水性洗浄液の全放出量との関係で、1枚の清拭シート1による清拭時間は3分間程度であることによる。清拭シート1全体の重量(水性洗浄剤が含浸された状態での重量)に占める吸水性ポリマーの重量比は、吸水性ポリマーの種類にもよるが、0.002〜0.15、特に0.004〜0.11であることが好ましい。また、水性洗浄剤が含浸される前の状態における清拭シート1の重量に対する水性洗浄剤の含浸重量の比は2〜15、特に4〜10であることが好ましい。また、吸水性ポリマーと水性洗浄剤との重量比(前者/後者)は0.002〜0.15、特に0.007〜0.11であることが好ましい。
【0016】
内層2は細長い短冊形をしている。短冊形の内層2は、その幅に対する長さの比が1〜100、特に5〜40程度のものである。内層2の幅は2〜30mm、特に5〜30mm、とりわけ10〜30mmであることが、水性洗浄剤の保持性と徐放性とのバランスの点好ましい。内層2の長さは、表面層3,3の長さよりも短くなっており、内層2の前後端縁から表面層3,3が延出している。内層2は複数本用いられており、各内層2は、所定間隔を置いて一方向に配列されている。その間隔は1〜30mm、特に2〜20mm、とりわけ3〜11mm程度であることが、表面層3,3同士の接合が容易になる点、及び内層2の面積を十分に確保する点から好ましい。
【0017】
各内層2の周縁は、2枚の表面層3,3同士が接合することによって囲繞されて連続に封止されている。これによって、膨潤した吸水性ポリマーの清拭シート1からの脱落が防止される。この脱落防止の観点から、2枚の表面層3,3による封止面積は、清拭シート1の面積の2〜95%、特に5〜80%、とりわけ10〜65%であることが好ましい。表面層3,3同士の接合には、例えばヒートシールによる熱融着、接着剤による接着などが用いられる。また、必要に応じ、本実施形態の清拭シートにエンボス加工を施して、内層2と表面層3とを部分的に接合してもよい。
【0018】
清拭シート1は、その表面に、一方向へ延び且つ該清拭用シートの周縁にまで達する複数本の直線状の凹条部4,4,・・を有している。各凹条部4はその長手方向が、ウエットシート1の長手方向と一致している。また各凹条部4は内層2の長手方向と同方向に延びている。凹条部4は、積層シートにおける内層2を除く各層どうし、具体的には2枚の表面層3,3どうしが直接接合して形成された接合部5の位置に存している。各内層2は、2枚の表面層3,3どうしの直接接合で形成された接合部5によって連続に囲繞されている。これによって、隣り合う内層2,2間において凹条部4が形成されていると共に清拭シートの周縁にも凹条部4が形成されている。隣り合う内層2,2間に形成された凹条部4は、その両端が清拭シート1における周縁にまで達している。凹条部4が形成されていることによって、清拭の操作性及びヨレ防止性が向上する。
【0019】
凹条部4は、積層シートにおける内層2と2枚の表面層3とからなる3層部分と、2枚の表面層3からなる2層部分との段差で形成されるものである。従って、凹条部4の深さは、内層2の厚さによって適宜増減できる。特に、後述するように、内層2が吸水性ポリマーを含む場合には、水性洗浄剤の吸収によって膨潤した吸水性ポリマーに起因して内層2の厚みを極めて大きくでき、その結果凹条部4の深さを容易に大きくできる。
【0020】
先に述べた通り、内層2は、2枚の表面層3,3どうしの直接接合で形成された接合部5によって連続に囲繞されている。つまり、各内層2は、2枚の表面層3,3によって形成されたスリーブ状の空間内に個々独立にフリーな状態で保持されている。これによって、清拭シート1を用いて身体を強く拭いても、内層2がヨレたり破れるという不具合が起こりにくくなる。また十分な量の水性洗浄剤を含浸保持できることから、清拭シート1が早く冷えることを防止でき、更には徐放性が良好になり適度なウエット感が持続される。内層2を前記空間内に保持することに代えて、内層2と表面層3とを熱エンボス等で接着することで、内層2に力が加わってもヨレや破れが生じないようにすることも考えられる。しかしながらその場合には、内層2に吸水性ポリマーが含有されていると熱エンボス部位から吸水性ポリマーが外部へ漏れ出てしまったり、熱エンボス部位において吸水性ポリマーが固定されてしまい吸収阻害を起こすという不都合がある。 従って、内層2は表面層3と接合されておらず、本実施形態のように表面層3によって形成された空間内にフリーな状態で保持されていることが好ましい。
【0021】
内層2のヨレや破れを一層効果的に防止して清拭を安定して行う観点から、水性洗浄剤が含浸される前の状態における積層シート(内層2及び表面層3からなるシート)の乾燥重量に対して800重量%の水を該積層シートに含浸した状態での内層2の破断強度を好ましくは400cN/20mm以上とし、更に好ましくは500cN/20mm以上とする。この破断強度は、内層2の長手方向、即ち凹条部4の延びる方向と同方向において測定された値が前記の値以上であることが特に好ましい。破断強度は次の方法で測定される。前記含浸状態の清拭シート1から内層2を取り出し、これから幅20mm×長さ80mmの試験片を切り出す。試験片を引張試験機のチャックにチャック間距離50mmで取り付ける。試験片を300mm/minの速度で引っ張り、これが破断するまでの最大荷重を求め、その値を破断強度とする。
【0022】
先に述べた通り、内層2は吸水性ポリマーの粒子及び繊維材料を含む繊維シートから構成されていることが好ましい。内層2は典型的には不織布又は紙から構成される。吸水性ポリマーとしては、自重の20倍以上の液体を吸収・保持でき且つゲル化し得るものが好ましい。形状は特に問わず、球状、塊状、ブドウ状、粉末状又は繊維状であり、大きさが1〜1000μm、特に10〜500μmであることが好ましい。具体例としては、デンプンや架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体を挙げることができる。繊維材料としては親水性繊維を用いることが好ましい。具体例としては、針葉樹クラフトパルプや広葉樹クラフトパルプのような木材パルプ、木綿パルプ及びワラパルプ等の天然セルロース繊維、レーヨン及びキュプラ等の再生セルロース繊維、ポリビニルアルコール繊維及びポリアクリロニトリル繊維等の親水性合成繊維、並びにポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維及びポリエステル繊維等の合成繊維を界面活性剤により親水化処理したものなどが挙げられる。繊維材料は1種又は2種以上を用いることができる。
【0023】
特に、内層2の破断強度を前述した値以上とするために、内層2に熱融着性繊維が含まれていることが好ましい。この場合、内層2の繊維組成における熱融着性繊維の配合量は20〜70重量%、特に20〜50重量%、とりわけ20〜40重量%であり、残部が親水性繊維からなることが、内層2の強度向上と水性洗浄剤の含浸性向上とのバランスの点から好ましい。
【0024】
熱融着性繊維としては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフイン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂等からなる繊維が用いられる。また、前記の各種原料のうち、2種の樹脂の組み合わせからなる複合繊維(芯鞘型複合繊維やサイド・バイ・サイド型複合繊維)を用いることもできる。特に、低融点樹脂と高融点樹脂とからなり且つ該低融点樹脂が繊維表面の少なくとも一部を形成している熱融着性複合繊維を用いることが好適である。低融点樹脂/高融点樹脂の組み合わせとしては、高密度ポリエチレン/ポリプロピレン、低密度ポリエチレン/ポリプロピレン、ポリプロピレン/エチレン・ブテン−1結晶性共重合体、高密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、ナイロン−6/ナイロン−66、低融点ポリエステル/ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレート等が例示できる。
【0025】
熱融着性複合繊維の形態は、並列型、芯鞘型、偏心鞘芯型、三層以上の多層型、中空並列型、中鞘芯型、異形鞘芯型、海島型等で且つ低融点樹脂が繊維表面の少なくとも一部を形成した構造であれば良い。熱融着性複合繊維のうち好ましいものは、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン・ブテン−1結晶性共重合体、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンイソフタレートとの共重合ポリエステルなどの低融点ポリエステルから選ばれる何れか1種の熱可塑性樹脂を低融点樹脂とし、ポリプロピレン又はポリエチレンテレフタレートを高融点樹脂とする、並列型、鞘芯型、偏心鞘芯型の複合繊維である。特に熱接着性の点から、低密度ポリエチレンとポリエチレンテレフタレートとの複合繊維や低密度ポリエチレンとポリプロピレンとの複合繊稚を用いることが好ましい。
【0026】
内層2を構成する繊維シートは、前述の材料を原料として湿式抄造法や、エアレイド法、エアスルー法及びスパンレース法などの各種不織布製造法によって製造することができる。また該繊維シートとして、特開平8−246395号公報や国際公開WO99/63923に記載の吸収性シートを用いることもできる。
【0027】
内層2を構成する繊維シートにおける吸水性ポリマーの粒子と繊維材料との重量比(前者/後者)は、0.05〜1.0、特に0.1〜0.5であることが、吸水性ポリマーによる温熱保持性能の点から好ましい。同様の理由により、吸水性ポリマー自体の坪量は、5〜100g/m2、特に10〜80g/m2であることが好ましい。内層2を構成する繊維シートの坪量は、清拭シート1全体の坪量にもよるが、30〜500g/m2、特に60〜150g/m2であることが好ましい。
【0028】
表面層3はその長さが内層2の長さより若干大きく、その幅が内層2の幅の数倍〜十数倍である矩形のものである。表面層3は清拭シート1の外形をなしている。表面層3は親水性セルロース繊維等の親水性繊維を含んでいる繊維シートから構成されていることが好ましい。表面層3は典型的には不織布から構成される。親水性セルロース繊維としては、レーヨン及びキュプラ等の再生セルロース繊維、針葉樹クラフトパルプや広葉樹クラフトパルプのような木材パルプ、木綿パルプ及びワラパルプ等の天然セルロース繊維などが挙げられる。表面層3を構成する繊維シートは、親水性セルロース繊維のみから構成されていても良く、或いは他の繊維材料を含んでいてもよい。他の繊維材料としては、例えば内層2に含まれる熱融着性繊維と同様のものを用いることができる。
【0029】
表面層3を構成する繊維シートが親水性セルロース繊維以外の他の繊維を含む場合、該他の繊維は、表面層3の重量(乾燥基準)当たり、2〜70重量%、特に30〜60重量%含まれることが好ましい。また親水性セルロール繊維は表面層3の重量(乾燥基準)当たり、30〜98重量%、特に40〜70重量%含まれることが好ましい。表面層3を構成する繊維シートは、例えば湿式抄造法や、スパンレース法及びエアレイド法などの各種不織布製造法によって製造することができる。表面層3を構成する繊維シートの坪量は、清拭シート1全体の坪量にもよるが、それぞれ20〜100g/m2、特に30〜70g/m2であることが好ましい。尚、2枚の表面層3は、同一のものでも良く或いは異なる種類のものでもよい。
【0030】
内層2及び表面層3が積層一体化された積層シート(水性洗浄剤が含浸される前の積層シート)は、その坪量が40〜500g/m2、特に70〜400g/m2、とりわけ120〜290g/m2であることが、シートを手に持った時の感触と、清拭のし易さの点から好ましい。また、積層シートに洗浄剤が含浸された後の清拭シート1の坪量は300〜4000g/m2、特に500〜3000g/m2、とりわけ1000〜1500g/m2であることが好ましい。更に、水性洗浄剤が含浸される前のシートの重量に対する水性洗浄剤の含浸率は200〜1500重量%、特に400〜1000重量%であることが好ましい。
【0031】
次に、水性洗浄剤について説明する。水性洗浄剤は水を媒体とし洗浄成分を含有するものである。洗浄成分としては各種界面活性剤を用いることができる。
【0032】
界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の何れもが用いられ、特に洗浄性と仕上がり性の両立の面から、ポリオキシアルキレン(アルキレンオキサイド付加モル数1〜20)アルキル(炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖)エーテル、アルキル(炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖)グリコシド(平均糖縮合度1〜5)、ソルビタン脂肪酸(炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖)エステル、及びアルキル(炭素数6〜22の直鎖又は分岐鎖)グリセリルエーテル等の非イオン活性剤並びにアルキルカルボキシベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドカルボキシベタイン、アルキルアミドスルホベタイン、アルキルアミドヒドロキシスルホベタイン等のアルキル炭素数8〜24の両性界面活性剤が好適に用いられる。界面活性剤は、水性洗浄剤中に、0.01〜30重量%、特に0.05〜2重量%含有されることが、十分な洗浄効果の発現の点から好ましい。
【0033】
水性洗浄剤には、沸点が100℃以上である水溶性溶剤、特にアルコールが含有されていることが好ましい。これによって、清拭シート1から放出された水性洗浄剤が急速に気化することが抑制されて、一層冷刺激が抑制される。沸点が100℃以上である水溶性溶剤としては、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのアルコール類を用いることができる。特に好ましい水溶性溶剤はジプロピレングリコールである。またジプロピレングリコールを用いると、ベタつきも防止できる。水溶性溶剤は、水性洗浄剤中に2〜70重量%、特に3〜50重量%、とりわけ5〜30重量%含有されていることが、より一層の冷刺激抑制の点、及び清拭シート1の保温性、更には肌への保湿性の観点から好ましい。
【0034】
水性洗浄剤には、前述した各種成分に加えて、ミリスチン酸、ミツロウ、モンモリナイト等の粘度調整剤;リモネン等の香料成分(芳香性物質);メチルパラベンなどの抗菌剤;除菌剤;防腐剤;ワセリン、マツエキス、モモ葉エキス、ハマメリスエキス等の天然エキスや保湿剤などを含有させることもできる。またサラっと感やしっとり感の付与のために、シリコーンオイルやシリコーンパウダー等のシリコーン類;及びその他の無機物質などを含有させることもできる。これらの成分は、水性洗浄剤中に好ましくはそれぞれ0.0001〜20重量%含有させることができる。
【0035】
水性洗浄剤における媒体としての水は、水性洗浄剤中に好ましくは30〜99.9重量%、更に好ましくは50〜95重量%、一層好ましくは60〜95重量%含まれる。
【0036】
本実施形態の清拭シート1は各種加熱手段によって所定温度に加熱された後に使用される。加熱手段としては電子レンジを用いることが簡便である。加熱温度は35〜85℃、好ましくは40〜70℃、特に50〜60℃であることが、取り扱い性及び冷刺激の十分な抑制の点から好ましい。
【0037】
本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においては、積層シートの周縁部よりも内側の位置において、一方向に延び且つその両端が該周縁部にまで達している接合部5が複数箇所に形成されていたが、これに代えて図3に示すように、一枚のシートからなる内層2に複数の開孔6を形成し、該開孔6の位置において内層2を除く各層どうしを接合して複数の接合部5を形成してもよい。
【0038】
また前記実施形態の清拭シートは、内層と2枚の表面層の3層構造であったが、これに代えて、内層と表面層との間や、表面層の外側に更に別の層を配して4層以上の多層構造となしてもよい。この場合、接合部5は、内層を除く各層どうしが接合されて形成される。
【0039】
また、内層として、繊維シートに代えてスポンジなどの発泡シートを用いてもよい。
【0040】
また、前記実施形態においては、2枚の表面層が接合して形成された接合部によって内層が連続的に囲繞されていたが、吸水性ポリマーの脱落を防止できる範囲において、内層は該接合部によって不連続に囲繞されていてもよい。
【0041】
【実施例】
以下の例中、特に断らない限り、「%」は「重量%」を意味する。
【0042】
〔実施例1〜5及び比較例1〕
(1)表面層の製造
レーヨン繊維(1.7dtex×40mm)60%、及びポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンの芯鞘型複合繊維(2.2dtex×51mm)40%からなる坪量40g/m2のスパンレース不織布を製造し、これを表面層として用いた。表面層の大きさは、長さ200mm×幅150mmとした。
【0043】
(2)内層の製造
吸水性ポリマー含有シートを内層として用いた。このシートはエアレイド法によって製造されたものであり、坪量は120g/m2であった。このシートに含まれる吸水性ポリマーは架橋されたポリアクリル酸ナトリウム塩であり、その坪量は30g/m2であった。このシートの繊維組成は、木材パルプからなる天然セルロース繊維(親水性繊維)が60%、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンの芯鞘型複合繊維(熱融着性繊維)が40%であった。内層の大きさは、長さ160mm×幅20mmとし、5本用いた。
【0044】
(3)積層シートの製造
2枚の表面層間に内層を等間隔で配し、表面層どうしをヒートシールして接合部を形成し積層シートを得た。具体的な寸法は図4に示す通りである。得られた積層シートの坪量は、144g/m2であり、接合面積率は21%であった。
【0045】
(4)清拭シートの製造
以下の表1に示す組成からなる水性洗浄剤を積層シートに含浸させて清拭シートを得た。含浸量は同表に示す通りである。
【0046】
〔実施例6〕
内層を構成する繊維の組成において、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンの芯鞘型複合繊維(熱融着性繊維)の割合を30%とする以外は実施例1と同様にして清拭シートを得た。
【0047】
〔実施例7及び8〕
内層を構成する繊維の組成において、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンの芯鞘型複合繊維(熱融着性繊維)に代えて、ポリプロピレン/ポリエチレンの芯鞘型複合繊維(熱融着性繊維)を用い、該熱融着性繊維の割合を27%(実施例7〉及び38%(実施例8)とする以外は実施例1と同様にして清拭シートを得た。
【0048】
〔比較例2及び3〕
坪量230g/m2の綿製のタオルに、表1に示す組成からなる水性洗浄剤を、同表に示す含浸量となるように含浸させて清拭シートを得た。
【0049】
〔比較例4〕
レーヨンを80%、芯鞘型複合繊維(芯がポリエチレンテレフタレートで、鞘がポリエチレン)を20%含み、坪量が60g/m2の不織布に、以下の組成からなる水性洗浄剤Aを表1に示す含浸量となるように含浸させて清拭シートを得た。
水性洗浄剤Aの組成
・プロピレングリコール 3%
・パラベン 0.1%
・塩化セチルピリジニウム(除菌剤) 0.1%
・香料 0.01%
・水 96.79%
【0050】
〔性能評価〕
実施例及び比較例で得られた清拭シートについて、前述の方法で水性洗浄剤の放出量及び内層の破断強度を測定し、また次の方法で清拭シートの保温性及び皮脂汚れの洗浄率を測定した。更に、清拭直後の皮膚の感覚、水性洗浄剤が乾燥した後の皮膚のサラサラ感、及び内層のヨレ防止性を評価した。結果を表1に示す。
【0051】
〔清拭シートの保温性〕
電子レンジを用いて清拭シートを60℃に加熱した。次いで23℃・65%RHの環境下に3分間保存した。3分後、清拭シートの温度を蛍光式光ファイバー温度計〔安立計器(株)製のFX9020〕を用いて測定した。
【0052】
〔皮脂汚れ洗浄率〕
▲1▼2000gの直方体形の重りの下面に、9cm×5cm(×高さ2cm)に切り取ったスポンジ〔株式会社ブリジストン製のPH−20(SFフェルト)〕を固定する。
▲2▼清拭シートを9cm×15cmに切り取る。
▲3▼スポンジを覆うように、清拭シートを巻き付ける(スポンジと清拭シートとが接する大きさは、9cm×5cmである)。
▲4▼白色ホーローバット(Top製硬質ホーローバット)の上に、ミンクオイル(ARAKAWA SANGYO CO.,LTD製)と、油溶性青色系色素(オリエント化学工業株式会社製OIL BRACK 860)をアセトンで溶解させた液体(重量比:ミンクオイル2%、色素0.2%、アセトン97.8%)とを一定量4cm3塗り付ける(アセトンは直ぐに揮発するので、ホーロー面上には、青く染まったミンクオイルが膜状に塗布された状態になる。またミンクオイルは、人体の皮脂成分に極めて近いことから、人体皮脂モデル汚れとして選定したものである)。
▲5▼当該汚れのL値を、色差計(ミノルタカメラ株式会社製:色彩色差計CR−210)にて測定をする。この値をL1とする。また、汚れを塗りつける前に、白色ホーローバットのL値を測定しておく。この値をL0とする。
▲6▼重り及びスポンジに巻き付けた状態の清拭シートを、当該汚れの上で滑らせる。
▲7▼先にL1値を測定した部分についてL値を再度測定する。この値をL2とする。
▲8▼皮脂汚れ洗浄率(%)は、得られたL0、L1及びL2の値を用い次式で定義される。
皮脂汚れ洗浄率(%)=(L2-L1)/(L0-L1)
【0053】
〔清拭直後の皮膚の感覚及び水性洗浄剤が乾燥した後の皮膚のサラサラ感〕電子レンジを用いて清拭シートを60℃に加熱した。この清拭シートを10cm×15cmの大きさにして、成人男性の腕を、そこに汚れがあると想定して、その汚れを落とすように力を入れて5回(2往復半)拭く。その直後に、シートを腕から素早く離し、拭いた部分の肌の感じ方を以下の基準で判断させた。また、水性洗浄剤が乾燥した後に、拭いた部分を手で触らせてサラサラ感の有無を判断させた。
○:冷たく感じなかった(腕がヒヤッとしなかった)。
×:冷たく感じた(腕がヒヤッとした)。
【0054】
〔内層のヨレ防止性〕
電子レンジを用いて清拭シートを60℃に加熱した。成人男性の腕を、そこに汚れがあると想定して、その汚れを落とすように清拭シートに力を入れ20cmの距離を20往復清拭した。清拭の方向は、内層の長手方向と直交する方向とした。清拭後の内層の状態を目視観察し、ヨレが小さく、清拭前の形状をほぼ保っていれば「○」とし、ヨレが大きく、清拭前の形状と明らかに異なる場合は「×」とした。
【0055】
【表1】
Figure 0004334263
【0056】
表1に示す結果から明らかなように、実施例の清拭シートは適正な量の水性洗浄剤が放出され、またシートの保温性も良好であることから、冷刺激が抑制されたものであることが判る。更に実施例の清拭シートは、強い力で清拭を行っても内層にヨレが発生することが効果的に防止されることが判る。その上、皮脂汚れの洗浄性に優れ、洗浄剤の乾燥後にはサラサラ感を呈するることが判る。これに対して比較例1の清拭シートは水性洗浄剤の放出量が少なく、皮脂汚れの洗浄性に劣り、かつシートの保湿性も良くないことが判る。また、比較例2〜4の清拭シートは、水性洗浄剤の放出量が多く、しかもシートの保温性も良好でなく、冷刺激を与えるものであることが判る。
【0057】
【発明の効果】
本発明の身体用清拭シートによれば、所定温度に加熱して、身体を清拭するときに、含浸された液の気化や温度低下に起因する冷刺激を与えることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の清拭シートの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1におけるII−II線断面図である。
【図3】本発明の清拭シートの別の実施形態を示す斜視図である。
【図4】各実施例における清拭シートを示す模式図である。
【符号の説明】
1 清拭シート
2 内層
3 表面層
4 凹条部
5 接合部

Claims (12)

  1. 水性洗浄剤の含浸保持が可能な内層と、該内層の両面に配された表面層との少なくとも3層構造の積層シートからなり、水性洗浄剤が所定量含浸されている身体用清拭シートであって、
    前記積層シートの周縁部において、前記内層を除く各層どうしが接合されていると共に、前記積層シートの周縁部よりも内側の位置においても、前記内層を除く各層どうしが接合されて、それぞれ接合部を形成しており、
    2000g/45cm2荷重下での前記清拭シートからの前記水性洗浄剤の放出量が0.04〜0.8g/500cm2であり、
    加温して使用される身体用清拭シート。
  2. 前記清拭シートはその表面に、一方向へ延び且つ該清拭シートの周縁にまで達する一本又は複数本の凹状部を有し、
    前記凹状部は前記接合部の位置に存している請求項1記載の身体用清拭シート。
  3. 前記水性洗浄剤が含浸される前の状態における前記積層シートの乾燥重量に対して800重量%の水を該積層シートに含浸した状態での前記内層の破断強度が400cN/20mm以上である請求項1又は2記載の身体用清拭シート。
  4. 前記内層が吸水性ポリマーを含み、前記水性洗浄剤が含浸される前の状態における前記積層シートの乾燥重量に対する該水性洗浄剤の含浸重量の比(後者/前者)が2〜15である請求項1〜3の何れかに記載の身体用清拭シート。
  5. 60℃に加熱した後、23℃・65%RHの環境下に3分間保存した後の温度を30℃以上に維持し得る量の前記吸水性ポリマー及び前記水性洗浄剤が含まれている請求項4記載の身体用清拭シート。
  6. 前記接合部の面積が前記清拭シートの面積の2〜95%である請求項4又は5記載の身体用清拭シート。
  7. 前記吸水性ポリマーと前記水性洗浄剤との重量比(前者/後者)が0.002〜0.15である請求項4〜6の何れかに記載の身体用清拭シート。
  8. 前記内層における前記吸水性ポリマーの坪量が5〜100g/m2である請求項4〜7の何れかに記載の身体用清拭シート。
  9. 前記水性洗浄剤中に界面活性剤が0.01〜30重量%含有されている請求項1〜8の何れかに記載の身体用清拭シート。
  10. 前記内層は、前記凹部の延びる方向と同方向へ延びる細長形状をしており且つ複数本が所定間隔をおいて前記表面層間に配されており、 隣り合う前記内層間において、前記表面層どうしが直接接合されて前記接合部が形成されている請求項1〜9の何れかに記載の身体用清拭シート。
  11. 前記表面層がその乾燥重量当り親水性セルロース繊維30〜98重量%及び熱融着性繊維2〜70重量%を含んでいる請求項1〜10の何れかに記載の身体用清拭シート。
  12. 前記水性洗浄剤中にシリコーンオイル及び/又はシリコーンパウダーが0.0001〜20重量%含有されている請求項1〜11の何れかに記載の身体用清拭シート。
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