JP2004073529A - 温熱拭き取り用具 - Google Patents
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Abstract
【課題】長時間高温を維持した状態で清拭や清掃などの拭き取り操作を行ない得る温熱拭き取り用具を提供すること。
【解決手段】本発明の温熱拭き取り用具1は、拭き取り具2と収納体3とを備える。拭き取り具2は、吸水性ポリマーが含まれ且つ加熱によって蒸発する水性洗浄剤が含浸されている。収納体3は、拭き取り具2がほぼ密閉状態で収納され、耐熱性を有する。温熱拭き取り用具1は、拭き取り具2が収納体3内にほぼ密閉状態で収納された状態で所定温度に加熱される。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明の温熱拭き取り用具1は、拭き取り具2と収納体3とを備える。拭き取り具2は、吸水性ポリマーが含まれ且つ加熱によって蒸発する水性洗浄剤が含浸されている。収納体3は、拭き取り具2がほぼ密閉状態で収納され、耐熱性を有する。温熱拭き取り用具1は、拭き取り具2が収納体3内にほぼ密閉状態で収納された状態で所定温度に加熱される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、所定温度に加熱された湿式の拭き取り具を用いて拭き取り対象面の拭き取りを行う温熱拭き取り用具に関する。また本発明は該温熱拭き取り用具を用いた温熱拭き取り方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
水性液が含浸された身体用の清拭シートが知られている。斯かる清拭シートで身体を清拭する場合、シートからの水性液の放出量が多いと、身体表面に水性液が残留し、その液が気化するときに発生する気化熱によって体温が奪われてしまい冷刺激となる。この冷刺激によって、特に冬場の寒い時期には、身体を拭いた高齢者や乳児が体調を崩すおそれがある。そこで、清拭シートの使用に際して、該清拭シートを電子レンジで加温したり、専用の加温器具で加温することが行われている。しかし、該清拭シートを温めても、そこから放出される液量が多く、結局のところ、気化熱により体温が奪われ冷刺激となってしまう。また、加温された清拭シートを用いて身体を洗浄すると、シートを保温する機能がないことから時間の経過と共にシートの温度が低下していき、清拭が終わる頃には室温近くまで温度が低下してしまい、結局冷刺激を受けてしまう。特に、成人の身体全体を清拭する場合など、清拭面積が広く清拭に時間がかかる場合には、清拭終了時でのシートの温度低下が著しい。
【0003】
特開平9−252994号公報や実開平2−52689号公報には、吸水性ポリマーを含む蒸しタオルが記載されている。斯かる蒸しタオルは、これを沸騰した湯水に浸したり、或いは予め水分を含ませておき、電子レンジで加熱して用いられる。しかしこの蒸しタオルは、そもそも、身体の一部分における血管の運動性刺激を活発化させるために用いられるものであり、液を放出させて使用することを目的としていない。
【0004】
身体用の清拭シートとは別に、水性液が含浸された湿式のシートとして、床のしみ、キッチン回りの油汚れ、水回りの皮脂汚れ等の除去に用いられる清掃用シートが知られている。油汚れや皮脂汚れは、温度によって落ち具合が変化し、室温で拭き取るよりも、これらを温めて拭き取る方が汚れが一層落ちることが知られている。しかし、該清掃用シートを温めて清掃しても、その温度が持続されず直ぐに冷えてしまい、結局汚れを十分に落とすことは容易でない。
【0005】
特開平10−314092号公報には、電子レンジ内の清拭具及び清拭方法が記載されている。この清拭具は清拭具材の加熱によって蒸発する液体洗浄剤を保持させてなり、これを電子レンジの加熱庫内に入れて加熱し液体洗浄剤を蒸発させ、その後、該清拭具を用いて加熱庫内を清掃するために用いられる。しかしこの清拭具は、加熱庫内だけの清掃が可能であり、この清拭具を電子レンジから取り出してキッチン回りや床等を清掃しようとしても、直ぐに冷えてしまい温熱清掃に適さない。特開2000−82580にも、電子レンジ内の清掃具が記載されている。この清掃具は、加熱作用によって蒸発する液体を拭き取り材に含浸させ、該拭き取り材を包材に密封収納してなる。この清掃具は、電子レンジの加熱庫内で加熱され、加熱による液体の蒸発で内圧を上昇させ、包材を破裂開口させて液体を加熱庫内に飛散させるものである。従って、この清掃具には、前述した特開平10−314092号公報に記載の清拭具と同様の課題がある。
【0006】
従って、本発明は、長時間高温を維持した状態で清拭や清掃などの拭き取り操作を行ない得る温熱拭き取り用具及び温熱拭き取り方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、吸水性ポリマーが含まれ且つ加熱によって蒸発する水性洗浄剤が含浸された拭き取り具と、該拭き取り具がほぼ密閉状態で収納される耐熱性を有する収納体とを備え、該拭き取り具が該収納体内にほぼ密閉状態で収納された状態で所定温度に加熱される温熱拭き取り用具を提供することにより前記目的を達成したものである。
【0008】
また本発明は、吸水性ポリマーが含まれ且つ加熱によって蒸発する水性洗浄剤が含浸された拭き取り具を、耐熱性を有する収納体内にほぼ密閉状態で収納し、該拭き取り具を該収納体内に収納された状態下に所定温度に加熱し、加熱された該拭き取り具を該収納体から取り出し、拭き取り対象物を拭き取る温熱拭き取り方法を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の温熱拭き取り用具の第1の実施形態の斜視図が示されており、図2には、拭き取り具の斜視図が示されている。図3は図2におけるIII−III線断面図である。
【0010】
図1に示す温熱拭き取り用具1は、拭き取り具2と収納体3とを備えている。拭き取り具2は、複数枚が重ねられて収納体3内に収納されている。収納体3は、拭き取り具2の収容が可能な空間を有し且つ上部が開口した直方体状の収納部31を備えている。収納部31の背面部の開口端にはヒンジ32が設けられている。ヒンジ32には、収納部31の開口部を塞ぐ蓋部33が取り付けられている。蓋部33はヒンジ32によって開閉可能になっている。蓋部33が収納部31の開口部を閉塞した場合には、該収納部31内の空間はほぼ密閉状態となる。蓋部33のほぼ中央部には、該蓋部33を貫通する小孔34が設けられている。後述するように小孔34は蒸気排気手段として機能する。
【0011】
図2及び図3に示すように、本実施形態の拭き取り具2はシート状であり(以下、拭き取りシートともいう)、身体の清拭に用いられる。拭き取りシート2は矩形状のものであり、内層21と、該内層21の両面に配された2枚の表面層22,22との3層構造の積層シートから構成されている。内層21及び表面層22の何れも繊維シートから構成されている。
【0012】
拭き取りシート2は、身体の洗浄のための水性洗浄剤が含浸されている湿式シートである。水性洗浄剤の放出量を前記範囲内にコントロールするためには、例えば水性洗浄剤の含浸量やシートの材質をコントロールすることが効果的である。シートの材質をコントロールすること、例えば親水性繊維と非親水性繊維(例えばポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維等)との混抄率を変化させることで、表面層22を構成するシートの親水性の度合いを変えることができる。具体的には、親水性繊維を多く混抄すると、表面層22は水性洗浄剤を保持しやすくなり、且つ圧力によって水性洗浄剤が容易に放出されることから、放出量は多くなる。逆に、親水性繊維の混抄率を低下させることで、表面層22は、水性洗浄剤を保持しにくくなり、内層21に保持される水性洗浄剤の量が増えるので、圧力を加えても水性洗浄剤は放出されにくくなる。よって放出量は少なくなる。
【0013】
一方、水性洗浄剤の含浸量をコントロールするには、拭き取りシート2の吸水性をコントロールすればよい。この目的のために、拭き取りシート2における内層21を構成するシートには、吸水性ポリマーが含まれている。詳細には、内層21は、吸水性ポリマーの粒子及び繊維材料を含む繊維シートから構成されている。そして、吸水性ポリマーの含有量をコントロールすることで、水性洗浄剤の含浸量、ひいてはその放出量をコントロールできる。更に、吸水性ポリマーが、水性洗浄剤中の水を吸収することで、拭き取りシート2全体としての比熱が高くなり、拭き取りシート2を所定温度に加熱したときの短時間での温度低下を防止できる。このことによっても、冷刺激を与えることが防止される。
【0014】
このように、本実施形態においては、拭き取りシート2に吸水性ポリマーを含有させることで、(1)水性洗浄剤の放出量がコントロールされて冷刺激が抑制される、及び(2)拭き取りシート2の保温性が高められて冷刺激が抑制される、という2つの面からの効果が奏される。
【0015】
拭き取りシート2の保温性を高めることで冷刺激を効果的に抑制するためには、拭き取りシート2に含まれる吸水性ポリマーの量及び含浸される水性洗浄剤の量、並びに両者の重量比が重要となる。吸水性ポリマー及び水性洗浄剤は、拭き取りシート2を60℃に加熱した後、23℃・65%RHの環境下に3分間保存した後の温度を30℃以上に維持し得る量含まれていることが好ましい。保存時間を3分間とした理由は、水性洗浄液の全放出量との関係で、1枚の拭き取りシート2による清拭時間は3分間程度であることによる。拭き取りシート2全体の重量(水性洗浄剤が含浸された状態での重量)に占める吸水性ポリマーの重量比は、吸水性ポリマーの種類にもよるが、0.002〜0.15、特に0.004〜0.11であることが好ましい。また、水性洗浄剤が含浸される前の状態における拭き取りシート2の重量に対する水性洗浄剤の含浸重量の比は2〜15、特に4〜10であることが好ましい。また、吸水性ポリマーと水性洗浄剤との重量比(前者/後者)は0.002〜0.15、特に0.007〜0.11であることが好ましい。
【0016】
拭き取りシート2を構成する各層の詳細について説明すると、内層21は前述の通り吸水性ポリマーの粒子及び繊維材料を含む繊維シートから構成されていることが好ましい。内層21は典型的には不織布又は紙から構成される。吸水性ポリマーとしては、自重の20倍以上の液体を吸収・保持でき且つゲル化し得るものが好ましい。形状は特に問わず、球状、塊状、ブドウ状、粉末状又は繊維状であり、大きさが1〜1000μm、特に10〜500μmであることが好ましい。具体例としては、デンプンや架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体を挙げることができる。繊維材料としては親水性繊維を用いることが好ましい。具体例としては、針葉樹クラフトパルプや広葉樹クラフトパルプのような木材パルプ、木綿パルプ及びワラパルプ等の天然セルロース繊維、レーヨン及びキュプラ等の再生セルロース繊維、ポリビニルアルコール繊維及びポリアクリロニトリル繊維等の親水性合成繊維、並びにポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維及びポリエステル繊維等の合成繊維を界面活性剤により親水化処理したものなどが挙げられる。繊維材料は1種又は2種以上を用いることができる。
【0017】
内層21は、前述の材料を原料として湿式抄造法やエアレイド法、エアスルー法、スパンレース法によって製造することができる。また該繊維シートとして、特開平8−246395号公報や国際公開WO99/63923に記載の吸収性シートを用いることもできる。
【0018】
内層21を構成する繊維シートにおける吸水性ポリマーの粒子と繊維材料との重量比(前者/後者)は、0.05〜1.0、特に0.1〜0.5であることが、吸水性ポリマーによる温熱保持性能の点から好ましい。同様の理由により、吸水性ポリマー自体の坪量は、5〜100g/m2、特に10〜80g/m2であることが好ましい。内層21を構成する繊維シートの坪量は、拭き取りシート2全体の坪量にもよるが、30〜500g/m2、特に60〜150g/m2であることが好ましい。
【0019】
内層21は短冊形をしている。短冊形の内層21は、その幅に対する長さの比が1〜30、特に5〜20、とりわけ6〜15程度のものである。内層21の長さは、表面層22,22の長さよりも短くなっており、内層21の前後端縁から表面層22,22が延出している。内層21は複数用いられており、各内層21は、所定間隔を置いて一方向に配列されている。その間隔は2〜20mm、特に3〜15mm、とりわけ3〜11mmであることが、表面層22,22同士の接合が容易になる点、及び内層21の面積を十分に確保する点から好ましい。
【0020】
各内層21の周縁は、2枚の表面層22,22同士が接合することによって囲繞されて連続に封止されている。これによって、膨潤した吸水性ポリマーの拭き取りシート2からの脱落が防止される。この脱落防止の観点から、2枚の表面層22,22による封止面積は、拭き取りシート2の見かけの面積の2〜95%、特に10〜65%であることが好ましい。表面層22,22同士の接合には、例えばヒートシールによる熱融着、接着剤による接着などが用いられる。また、必要に応じ、拭き取りシート2にエンボス加工を施して、内層21と表面層22とを部分的に接合してもよい。
【0021】
表面層22は前述の通り親水性セルロース繊維を含んでいる繊維シートから構成されていることが好ましい。表面層22は典型的には不織布から構成される。親水性セルロース繊維としては、レーヨン及びキュプラ等の再生セルロース繊維、針葉樹クラフトパルプや広葉樹クラフトパルプのような木材パルプ、木綿パルプ及びワラパルプ等の天然セルロース繊維などが挙げられる。表面層22を構成する繊維シートは、親水性セルロース繊維のみから構成されていても良く、或いは他の繊維材料を含んでいてもよい。他の繊維材料としては、例えばポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維などの熱融着性繊維を用いることができる。熱融着性繊維は、前述したように、エンボス加工によって表面層22を内層21と積層一体化させる場合に用いられる。
【0022】
表面層22を構成する繊維シートが親水性セルロース繊維以外の他の繊維を含む場合、該他の繊維は、表面層22の重量(乾燥基準)当たり、2〜70重量%、特に30〜60重量%含まれることが好ましい。また親水性セルロール繊維は表面層22の重量(乾燥基準)当たり、30〜98重量%、特に40〜70重量%含まれることが好ましい。表面層22を構成する繊維シートは、例えば湿式抄造法、エアレイド法、スパンレース法などの各種不織布製造方法によって製造することができる。表面層22を構成する繊維シートの坪量は、拭き取りシート2全体の坪量にもよるが、それぞれ20〜100g/m2、特に30〜70g/m2であることが好ましい。尚、2枚の表面層22は、同一のものでも良く或いは異なる種類のものでもよい。
【0023】
内層21及び表面層22が積層一体化されたシート(水性洗浄剤が含浸される前のシート)は、その坪量が40〜500g/m2、特に70〜400g/m2、とりわけ120〜290g/m2であることが、シートを手に持った時の感触と、その清拭のし易さの点から好ましい。また、このシートに洗浄剤が含浸された後の拭き取りシート2の坪量は300〜4000g/m2、特に500〜3000g/m2、とりわけ1000〜1500g/m2であることが好ましい。
【0024】
次に、水性洗浄剤について説明する。水性洗浄剤は水を媒体とし洗浄成分を含有するものであり、加熱によって蒸発する。洗浄成分としては各種界面活性剤を用いることができる。特に食品添加物系界面活性剤を用いることが好ましい。この理由は次の通りである。拭き取りシート2を、後述するように電子レンジで加熱した場合、水性洗浄剤がその内部に残留する可能性があり、それにより水性洗浄剤が食品と間接的に接する可能性がある。その場合の安全性の点から、水性洗浄剤に含まれる成分である界面活性剤は食品添加物系のものであることが好ましい。界面活性剤は、水性洗浄剤中に0.01〜30重量%、特に0.05〜2重量%含有されていることが、十分な洗浄効果の発現の点から好ましい。
【0025】
水性洗浄剤には、沸点が100℃以上である水溶性溶剤、特にアルコールが含有されていることが好ましい。これによって、拭き取りシート2から放出された水性洗浄剤が急速に気化することが抑制されて、一層冷刺激が抑制される。沸点が100℃以上である水溶性溶剤としては、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコールなどのアルコール類を用いることができ、特にプロピレングリコールを用いることがベタつき防止性の点、及びこれが食品添加物である点から好ましい。水溶性溶剤は、水性洗浄剤中に2〜70重量%、特に5〜50重量%、とりわけ10〜30重量%含有されていることが、より一層の冷刺激抑制の点、及び拭き取りシート2の保温性、更には肌への保湿性の観点から好ましい。
【0026】
水性洗浄剤には、前述した各種成分に加えて、ミリスチン酸、ミツロウ、モンモリナイト等の粘度調整剤;リモネン等の香料成分(芳香性物質);メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンなどの抗菌剤;除菌剤;防腐剤;天然緑茶抽出物(フラボノイド等)等の消臭成分;化粧品等で使用されているシリコーン類等;ワセリン、マツエキス、モモ葉エキス等の天然エキスや保湿剤;及びその他の無機物質などを含有させることもできる。これらの成分は、水性洗浄剤中に好ましくはそれぞれ0.0001〜20重量%含有させることができる。
【0027】
水性洗浄剤における媒体としての水は、水性洗浄剤中に好ましくは30〜99.9重量%、更に好ましくは50〜95重量%、一層好ましくは60〜90重量%含まれる。
【0028】
拭き取りシート2は、一枚又は複数枚が収納体3内にほぼ密封状態で収納され、この状態下に所定の加熱手段によって所定温度に加熱された後に、収納体3から取り出されて身体の清拭に使用される。拭き取りシート2の加熱手段としては、収納体の材質に応じて適切な手段が用いられる。例えば収納体3が電磁波透過性の材料、例えば各種合成樹脂から構成されている場合には、拭き取りシート2を収納体3内に収納した後、収納体3を電子レンジの加熱庫内に入れ電磁波を照射することで拭き取りシート2を加熱することができる。収納体が電磁波透過性でない材料、例えば金属から構成されている場合には、拭き取りシート2を収納体3内に収納した後、収納体3を熱水に浸漬することで拭き取りシート2を加熱することができる。何れの加熱手段を用いる場合にも、収納体3は耐熱性である必要がある。拭き取りシート2の加熱温度は35〜85℃、好ましくは40〜70℃、特に50〜60℃であることが、取り扱い性及び冷刺激の十分な抑制の点から好ましい。
【0029】
収納体3内にほぼ密封した状態下に拭き取りシート2を加熱すると、それに含浸されている水性洗浄剤から蒸気が発生し、収納体3内が加圧状態となる。収納体3の内圧が高まると、収納体3の破裂のおそれや拭き取りシート2の過熱のおそれがある。そこで、発生する蒸気の一部が放出されることが好ましい。この観点から、拭き取りシート2が60℃になるまで加熱した後、収納体3を23℃・65%RHの環境下に4分間保存した後の、収納体3内における水性洗浄剤の蒸発減少量を1〜10重量%、特に2〜8重量%、とりわけ3〜6重量%にし得る蒸気排気手段が収納体3に備えられていることが好ましい。本実施形態においては、先に述べた通り、収納体3における蓋部33に小孔34が設けられており、該小孔34を通じて発生した蒸気の一部が外部へ放出されるようになっている。小孔34の径は0.3〜5mm程度、特に0.5〜2mm程度、とりわけ0.8〜1.5mm程度であることが、水性洗浄剤の蒸発減少量を容易に前記範囲内とし得る点から好ましい。なお蒸気排気手段は小孔に限られず、例えば耐熱性の透湿フィルムシートでも良い。
【0030】
このようにして加熱された拭き取りシート2は、実際の清拭操作が行われるまで収納体3内に収納され、その高温状態が長時間維持される。そして、清拭操作を行うときに初めて収納体3から取り出され、拭き取り対象である身体の拭き取りが行われる。この観点から、拭き取りシートが60℃になるまで加熱した後、収納体3を23℃・65%RHの環境下に4分間保存した後の、収納体3内における拭き取りシート2の温度を40℃以上、特に50℃以上に維持し得る保温性を収納体3が有していることが好ましい。収納体3の保温性を高めるためには、例えば収納体3自体を断熱性の高い材料、例えばグラスファイバー、セラミックグラスウール、発泡スチロール、発泡ウレタンから構成したり、収納体3の内面に断熱材、例えばサーモウール(羊毛断熱材)、発泡スチロール、発泡ウレタンを貼り付ければよい。なお、拭き取りシート2を収納体3内に収納せず直接加熱した場合には、収納体3内に収納して加熱した場合に比べて高温状態の維持時間が相対的に短くなる。
【0031】
次に、本発明の第2の実施形態について図4及び図5を参照しながら説明する。第2の実施形態については、第1の実施形態と異なる点についてのみ説明し、特に説明しない点については、第1の実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、図4及び図5において、図1〜図3同じ部材に同じ符号を付してある。
【0032】
本実施形態では収納体3は第1の実施形態と同様であるが、拭き取りシートの形態が第1の実施形態と相違する。図4に示す拭き取りシート2’は、家庭用及び業務用として、床、壁、リビング用品、キッチン周り、浴室や洗面台等の水周りの汚れの清掃に用いられる。図4に示すように、拭き取りシート2’は扁平な矩形状であり、シート材の積層体から構成されている。拭き取りシート2’は、その一面に清掃面Cを有している。また拭き取りシート2’は、シート本体4及び吸水性ポリマー保持シート(以下、ポリマーシートともいう)51を備えている。シート本体4は、掻き取りシート41並びに第1及び第2のポリマー脱落防止シート(以下、脱落防止シートともいう)42,43の合計3枚のシート材がこの順で積層されて構成されている。ポリマーシート51は、シート本体4における第1及び第2の脱落防止シート42,43の間に配されている。つまり、本実施形態の拭き取りシート2’は、4枚のシート材、即ち掻き取りシート41、第1及び第2の脱落防止シート42,43、ポリマーシート51がこの順で積層されて構成されている。そして、各シートの四辺が熱エンボスによるヒートシールSによって接合されていると共に、四辺の内部が菱形格子状のパターンで熱エンボスによるヒートシールSによって接合されている。これによって4枚のシートが部分的に接合され一体化されて拭き取りシート2’が構成されている。各シートを部分的に接合することで、吸水性ポリマーの膨潤が阻害されなくなるという利点がある。また部分的に接合することで、清掃面Cに凹凸形状が付与され清掃効果が一層高まる。この場合、凸部の面積の総和は、清掃面Cの見掛けの面積に対して5〜98%、特に35〜90%であることが、前記清掃効果の点から好ましい。
【0033】
シート本体4における掻き取りシート41の外面は前述した清掃面Cとなっている。また第2の脱落防止シート43の外面は、拭き取りシート2’の使用時における掃除具や手との当接面となっている。
【0034】
シート本体4には水性洗浄剤が含浸されている。この場合、水性洗浄剤は、ポリマーシート51中に主に存在しておりシート本体4における掻き取りシート41及び脱落防止シート42,43にも存在している。
【0035】
拭き取りシート2’におけるポリマーシート51は、吸水性ポリマーの粒子を保持した繊維材料を含む繊維シートから構成されている。吸水性ポリマーの粒子は、交絡した繊維間に保持されている。また、含水した吸水性ポリマーは粘着性を発現しているので、該粘着性によって繊維に結合して保持されている。吸水性ポリマーに吸収される水分としては、シート本体4に含浸される水性洗浄剤の一部が用いられる。
【0036】
拭き取りシート2’は、該拭き取りシート2’を収納体3に収納した状態下に加熱して該拭き取りシート2’を60℃に到達させた後、収納体を23℃・65%RHの環境下に4分間保存した後の該拭き取りシート2’の温度を40℃以上、特に50℃以上に維持し得る熱容量を有していることが好ましい。換言すれば、拭き取りシート2’を収納体3に収納した状態下に加熱して該拭き取りシート2’を60℃に到達させた後、収納体を23℃・65%RHの環境下に4分間保存した後の該拭き取りシート2’の温度を40℃以上、特に50℃以上に維持し得る量の吸水性ポリマー及び水性洗浄剤が、拭き取りシート2’に含まれていることが好ましい。これによって、長時間高温を維持した状態で清掃を行うことができる。拭き取りシート2’全体の重量(水性洗浄剤が含浸された状態での重量)に占める吸水性ポリマーの重量比は、第1の実施形態と同様とすることができる。また、水性洗浄剤が含浸される前の状態における拭き取りシート2’の重量に対する水性洗浄剤の含浸重量の比も、第1の実施形態と同様とすることができる。
【0037】
ポリマーシート51は前述の通り、熱媒体を保持した繊維材料を含む繊維シートから構成されている。ポリマーシート51としては、第1の実施形態における内層と同様のものを用いることができる。
【0038】
拭き取りシート2’におけるシート本体4の一部をなす掻き取りシート41は、シート本体4の表面層を構成している。該表面層は、拭き取りシート2’における清掃面Cを含んでいる。掻き取りシート41は、シート本体4やポリマーシート51に含浸されている水性洗浄剤を放出させ且つ清掃対象面に存する汚れに対する研磨性ないし掻き取る作用を有している。掻き取りシート41は熱可塑性繊維を含む繊維シートから構成されている。
【0039】
掻き取りシート41を拡大した模式図が図5に示されている。掻き取りシート41は、その表面、つまり拭き取りシート2’における清掃面に、前記熱可塑性繊維の先端部が多数存在して、該清掃面が、清掃対象面に存する汚れに対する研磨性ないし掻き取り性を有することが好ましい。これによって、汚れの除去性が高まる。この目的のために、熱可塑性繊維として、繊維長が2〜15mmで且つ繊度が10〜150dtexのものを用いることが好ましい(以下、この熱可塑性繊維を、太径熱可塑性繊維という)。太径熱可塑性繊維を用いることで、掻き取りシート41の表面に多数の先端部が存在することになり、清掃対象面に存する汚れに対する研摩性ないし掻き取り性が高くなる。
【0040】
図5において太径熱可塑性繊維の繊維長を前記範囲内とすることで、掻き取りシート41からの繊維の脱落が防止され、また繊維を均一に分散させることができる。特に、太径熱可塑性繊維の繊維長が好ましくは3〜8mm、更に好ましくは4〜6mmであると、掻き取りシート41からの太径熱可塑性繊維の脱落等が一層防止され、また一層均一で、汚れの掻き取り性に優れた掻き取りシート41を形成することができる。また、前記範囲内の繊維長は、掻き取りシート41をエアレイ法で形成する場合に、ウエブ形成の点から好適な繊維長である。
【0041】
太径熱可塑性繊維の繊度を前記範囲内とすることで、こびりついた汚れ(変性油、焦げつき、水垢等)の掻き取り性が良好となり、また繊維を均一に分散させることができる。特に、太径熱可塑性繊維2の繊度が好ましくは20〜130dtex、更に好ましくは30〜120dtex、一層好ましくは40〜110dtexであると、例えば鍋やフライパンにこびりついた汚れの掻き取り性に一層優れたものとなる。
【0042】
太径熱可塑性繊維としては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、ナイロンなどのポリアミド系樹脂、各種金属、ガラスなどを原料とする繊維が用いられる。樹脂製の太径熱可塑性繊維を用いる場合、その樹脂硬度は、ロックウェル硬さでR40〜R150の範囲が好ましい。特に、汚れの掻き取り性を向上させる点からは、R80〜R150の樹脂を用いることが好ましい。前記の各種原料のうち、2種の樹脂の組み合わせからなる複合繊維(芯鞘型複合繊維やサイド・バイ・サイド型複合繊維)を用いることもできる。太径熱可塑性繊維として、捲縮性を有しているものを用いることもできる。これによって、掻き取りシート41の厚み感(嵩高性)を向上させることができ、良好な拭き心地が得られる。捲縮形態としては、スパイラル型、ジグザグ型、U字型などがあり、これの何れもが好適に用いられる。太径熱可塑性繊維は1種又は2種以上を用いることができる。
【0043】
掻き取りシート41をエアレイ法で製造すると、太径熱可塑性繊維をランダムに三次元配向させることが可能であることから、掻き取りシート41の表面に、太径熱可塑性繊維の先端部を多数存在させることができる。特に、太径熱可塑性繊維として前記繊維長のものを用いることで、該太径熱可塑性繊維が掻き取りシート41の厚み方向に配向し易くなり、汚れの掻き取り性が高くなる。その上、太径熱可塑性繊維として前記繊度のものを用いることで、該太径熱可塑性繊維の剛性が高くなり、汚れに対する研摩性ないし掻き取り性が一層高くなる。
【0044】
図5に示すように、掻き取りシート41の清掃面Cとなる面においては、太径熱可塑性繊維の先端部が多数存在している。先端部の本数は、清掃対象面に存する汚れに対する十分な研磨性ないし掻き取り性が発現するのに十分な数とする。
【0045】
掻き取りシート41には、太径熱可塑性繊維に加えて、0.5〜5dtex程度の繊度を有する、太径熱可塑性繊維よりも相対的に細い熱融着性繊維(細径熱可塑性繊維)が含有されていることが、太径熱可塑性繊維の脱落が防止される点及びこびりつき汚れの掻き取り性が向上する点から好ましい。この点から、斯かる繊維は、該繊維同士、及び該繊維と太径熱可塑性繊維とが、それらの交点で融着されていることが好ましい。斯かる繊維は、掻き取りシート41中に1〜50重量%、特に2〜30重量%含まれていることが好ましい。
【0046】
拭き取りシート2’における第1及び第2の脱落防止シート42,43は、拭き取りシート2’の使用中に、吸水性ポリマーが外部へ漏れ出てしまうことを防止するために使用される。脱落防止シート42,43は、吸水性ポリマーの粒子よりも目開きの小さなシートから構成される。また、脱落防止シート42,43は、水性洗浄剤を透過させ得るものであることも必要である。これらの点から、脱落防止シートは、繊維が密に詰まった繊維シートであることが好ましい。更に、2枚の脱落防止シートのうち第2の脱落防止シート43は、拭き取りシート2’のもう一方の外面を構成するものであるから、水等の含浸性を考慮すると、親水性セルロース繊維を含んでいる繊維シートから構成されていることが好ましい。以上のことを考慮すると、各脱落防止シート42,43は典型的には不織布から構成される。親水性セルロース繊維としては、レーヨン及びキュプラ等の再生セルロース繊維、針葉樹クラフトパルプや広葉樹クラフトパルプのような木材パルプ、木綿パルプ及びワラパルプ等の天然セルロース繊維などが挙げられる。脱落防止シート42,43を構成する繊維シートは、親水性セルロース繊維のみから構成されていても良く、或いは他の繊維材料を含んでいてもよい。他の繊維材料としては、例えばポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維などの熱融着性繊維(熱可塑性繊維)を用いることができる。熱融着性繊維が含まれていると、拭き取りシート2’を構成する各層のヒートシール性が良好になる。
【0047】
脱落防止シート42,43を構成する繊維シートは、例えばスパンレース法などの各種不織布製造方法によって製造することができる。脱落防止シート42,43を構成する繊維シートの坪量は、拭き取りシート2’全体の坪量にもよるが、20〜100g/m2、特に30〜70g/m2であることが好ましい。シート42,43は同種でもよく、或いは異種でもよい。
【0048】
掻き取りシート41と第2の脱落防止シート43とからなる拭き取りシート2’の表面層は、該表面層の重量(乾燥基準)当たり熱可塑性繊維を2〜90重量%、特に2〜70重量%含むことが好ましい。また、該表面層の重量(乾燥基準)当たり親水性セルロース系繊維を、10〜98重量%、特に30〜98重量%含むことが好ましい。
【0049】
水性洗浄剤が含浸される前の状態の拭き取りシート2’は、その坪量が40〜500g/m2、特に70〜400g/m2、とりわけ120〜290g/m2であることが、拭き取りシート2’を手に持ったときの感触と、その清掃のし易さの点から好ましい。一方、水性洗浄剤が含浸された状態の拭き取りシート2’は、その坪量が300〜4000g/m2、特に500〜3000g/m2、とりわけ1000〜2500g/m2であることが、温熱持続性及び洗浄性の点から好ましい。同様の理由により、水性洗浄剤が含浸される前の状態の拭き取りシート2’に対する水性洗浄剤の含浸重量比は2〜15、特に4〜10であることが好ましい。
【0050】
本実施形態の拭き取りシート2’は、第1の実施形態と同様に、収納体内に収納された状態で加熱される。加熱温度は第1の実施形態と同様とすることが、取り扱い性及び汚れの除去性の点から好ましい。このようにして加熱された拭き取りシート2’を用いて清掃を行う場合には、拭き取りシート2’における清掃面C、即ち掻き取りシート41の面を清掃対象面に押し当てて擦りつける。これによって、拭き取りシート2’に含浸されている加熱された水性洗浄剤が清掃対象面に放出され、熱の作用によって清掃対象面に存する汚れを可塑化させる。また水性洗浄剤がそれ自体有する洗浄性能によって汚れを膨潤させ、溶解ないし浮き上がらせる。これと共に、拭き取りシート2’の清掃表面に多数存在している太径熱可塑性繊維の先端部が、清掃対象面に存する汚れを研摩ないし掻き取る。これらの機械的及び化学的作用によって、汚れが清掃対象面から除去される。除去された汚れは、水等の中に溶け込むか或いは分散して、水等と共に拭き取りシート2’に吸収される。このようにして、清掃対象面が清浄な状態となる。このような温熱清掃を行うと、拭き取りシート2’を加熱しないで清掃した場合に比べて清掃対象面を擦る回数が少なくて済み、清掃対象面を傷つけることが防止される。また1回擦った時の汚れの除去率が高くなる。その上、拭き取りシート2’は、その使用時までは収納体内に収納されて高温が維持されているから、清掃作業期間に亘って所定の高温が維持される。
【0051】
本実施形態の拭き取りシート2’は、その清掃面Cと反対側の面に手を当てて清掃したり、該面に掃除具を装着させて清掃を行うことができる。掃除具としては、清掃部と該清掃部に連結された棒状の把手とを具備した掃除具が好ましく用いられる。拭き取りシート2’は、該清掃部に装着されて用いられる。この掃除具における把手を長くしてモップ状にすれば、立ったままの姿勢で楽に清掃を行える。
【0052】
本発明は前記実施形態に制限されない。例えば第1の実施形態においては、拭き取りシート2は3層構造であったが、これに代えて内層21と1枚の表面層22とからなる2層構造としてもよい。また、吸水性ポリマーを保持でき且つその脱落のおそれがない限り、単層構造としてもよい。また第1の実施形態においては、内層21及び表面層22として繊維シートを用いたがこれに代えてスポンジなどの発泡シートを用いることもできる。
【0053】
また第2の実施形態においては、掻き取りシートを用いずに、シート本体4を2枚の脱落防止シート42,43から構成してもよい。この場合には、2枚の脱落防止シート42,43間にポリマーシート51が配される。更に第2の実施形態においては、熱エンボスによるヒートシールSが形成されている部位には、ポリマーシート51が存在していないことが、吸水性ポリマーの脱落防止の点、及び各シートの接合性の点から好ましい。
【0054】
また、収納体3の形状は図1に示す形状に限られず、拭き取りシートをほぼ密封状態に収容し得る形状であれば、いかなる形状でも良い。
【0055】
【実施例】
以下の例中、特に断らない限り、「%」は「重量%」を意味する。
【0056】
〔実施例1(第1の実施形態の実施例)〕
(1)表面層の製造
レーヨン80%及び芯がポリエチレンテレフタレートで鞘がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維20%からなるスパンレース不織布を表面層として用いた。この不織布の坪量は40g/m2であった。
(2)内層の製造
米国バッカイ社製の吸水性ポリマー含有シートを内層として用いた。このシートは短冊状であり、国際公開WO99/63923に記載の方法に準じ、エアレイド法によって製造されたものであり、坪量は105g/m2であった。このシートに含まれる吸水性ポリマーは架橋されたポリアクリル酸ナトリウム塩であり、その坪量は26.3g/m2であった。
(3)積層シートの製造
内層の両面に210×150mmの表面層を重ね合わせ、熱エンボス加工によって三者を部分的に一体化し、図2及び図3に示す形態の坪量140g/m2の積層シートを得た。内層シートは6枚用い、その幅は15mm、長さは200mmであった。
(4)拭き取りシートの製造
プロピレングリコール20%、ショ糖ラウリン酸エステル(第一工業製薬製の「DK−エステル L−160A」(商品名)、食品添加物である界面活性剤)0.5%、エチルパラベン0.2%、残部水からなる水性洗浄剤を、乾燥状態にある積層シートの重量に対して800%含浸させて拭き取りシートを得た。
(5)拭き取りシートの加熱
拭き取りシートを図1に示すポリエチレン製の収納体内に2枚重ねて収納し、収納体ごと電子レンジの加熱庫内に入れて加熱した。収納体の外部には直径1mmの小孔が設けられていた。加熱は拭き取りシートの温度が60℃となるようにした。拭き取りシートを60℃になるまで加熱した後、収納体から取り出して23℃・65%RHの環境下に4分間保存した。保存後の水性洗浄剤の蒸発減少量を測定したところ4.0%であった。また、拭き取りシートを60℃になるまで加熱した後、収納体を23℃・65%RHの環境下に4分間保存した。保存後の収納体内における拭き取りシートの温度を測定したところ58℃であった。
【0057】
〔実施例2(第2の実施形態の実施例)〕
(1)脱落防止シートの製造
レーヨン80%及び芯がポリエチレンテレフタレートで鞘がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維20%からなるスパンレース不織布を脱落防止シートとして用いた。この不織布の坪量は40g/m2であった。
【0058】
(2)ポリマーシートの製造
実施例1と同様とした。
【0059】
(3)掻き取りシートの製造
芯がポリエチレンテレフタレートで鞘が低融点ポリエステルからなる繊度56dtex、繊維長5mmの捲縮タイプ芯鞘型複合繊維(太径熱可塑性繊維、鞘成分の融点110℃)と、芯がポリエチレンテレフタレートで鞘が低融点ポリエステルからなる繊度2.2dtex、繊維長5mmの捲縮タイプ芯鞘型複合繊維(細径熱可塑性繊維、鞘成分の融点110℃)とが75/25の重量比で混合されたものを使用した。この繊維原料からエアレイ法により、坪量80g/m2のウェブを形成した。このウェブにおける構成繊維同士の交点を熱融着によって接着し、掻き取りシートを得た。このシートにおいては、その表面に太径熱可塑性繊維の先端部が多数存在していた。
【0060】
(4)拭き取りシートの製造
ポリマーシートを2枚の脱落防止シートで挟持した。更に、一方の脱落防止シートの表面に掻き取りシートを重ね合わせた。そして、これら4枚のシートを熱エンボス加工によって部分的に接合して一体化させ、図4に示す坪量265g/m2の積層シートを得た。エンボスパターンは菱形格子模様であった。この積層シートにおける掻き取りシート側の表面には、菱形の凸部が多数形成されていた。凸部の面積の総和は、清掃面の見かけの面積に対して45%であった。ドデシルグリコシド(界面活性剤)0.2%、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド(除菌剤)0.01%、プロピレングリコール(水溶性溶剤)5%、炭酸カリウム0.5%、クエン酸3ナトリウム(電解質)0.3%、及び残部水からなる水性洗浄剤を、シートの乾燥重量に対し800%含浸させて拭き取りシートを得た。
【0061】
(5)拭き取りシートの加熱
拭き取りシートを実施例1と同様の収納体内に2枚重ねて収納し、収納体ごと電子レンジの加熱庫内に入れて加熱した。加熱は拭き取りシートの温度が60℃となるようにした。拭き取りシートを60℃になるまで加熱した後、収納体から取り出して23℃・65%RHの環境下に4分間保存した。保存後の水性洗浄剤の蒸発減少量を測定したところ4.0%であった。また、拭き取りシートを60℃になるまで加熱した後、収納体を23℃・65%RHの環境下に4分間保存した。保存後の収納体内における拭き取りシートの温度を測定したところ58℃であった。
【0062】
〔実施例3(第1の実施形態の実施例)〕
(1)表面層、内層及び積層シートの製造
実施例1と同様とした。
(2)拭き取りシートの製造
シリコーンSH−245(東レダウコーニング・シリコーン社製)5%、ジプロピレングリコール5%、エタノール5%、エチルパラベン0.07%、プロピルパラベン0.02%、残部水からなる洗浄剤を、乾燥状態にある積層シートの重量に対して800%含浸させて拭き取りシートを得た。
(3)拭き取りシートの加熱
拭き取リシートを図1に示すポリエチレン製の収納体内に2枚重ねて収納し、収納体ごと電子レンジの加熱庫内に入れて加熱した。収納体の外部には、直径1mmの小孔が設けられていた。加熱は、拭き取りシートの温度が60℃となるようにした。拭き取りシートを60℃になるまで加熱した後、収納体から取り出して、23℃、65%RHの環境下に4分間保存した。保存後の洗浄剤の蒸発量を測定したところ4.1%であった。また、拭き取りシートを60℃になるまで加熱した後、収納体を23℃・65%RHの環境下に4分間保存した。保存後の収納体内における拭き取りシートの温度を測定したところ58℃であった。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、長時間高温を維持した状態で、身体の清拭や汚れの清掃などの拭き取り操作を行ない得る温熱拭き取り用具及び温熱拭き取り方法を提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の温熱拭き取り用具の第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】拭き取り具の一実施形態を示す斜視図である。
【図3】図2におけるIII−III線断面図である。
【図4】拭き取り具の第2の実施形態を示す斜視図である。
【図5】掻き取りシートの表面を拡大して示す模式図である。
【符号の説明】
1 温熱拭き取り用具
2 拭き取り具
3 収納体
【発明の属する技術分野】
本発明は、所定温度に加熱された湿式の拭き取り具を用いて拭き取り対象面の拭き取りを行う温熱拭き取り用具に関する。また本発明は該温熱拭き取り用具を用いた温熱拭き取り方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
水性液が含浸された身体用の清拭シートが知られている。斯かる清拭シートで身体を清拭する場合、シートからの水性液の放出量が多いと、身体表面に水性液が残留し、その液が気化するときに発生する気化熱によって体温が奪われてしまい冷刺激となる。この冷刺激によって、特に冬場の寒い時期には、身体を拭いた高齢者や乳児が体調を崩すおそれがある。そこで、清拭シートの使用に際して、該清拭シートを電子レンジで加温したり、専用の加温器具で加温することが行われている。しかし、該清拭シートを温めても、そこから放出される液量が多く、結局のところ、気化熱により体温が奪われ冷刺激となってしまう。また、加温された清拭シートを用いて身体を洗浄すると、シートを保温する機能がないことから時間の経過と共にシートの温度が低下していき、清拭が終わる頃には室温近くまで温度が低下してしまい、結局冷刺激を受けてしまう。特に、成人の身体全体を清拭する場合など、清拭面積が広く清拭に時間がかかる場合には、清拭終了時でのシートの温度低下が著しい。
【0003】
特開平9−252994号公報や実開平2−52689号公報には、吸水性ポリマーを含む蒸しタオルが記載されている。斯かる蒸しタオルは、これを沸騰した湯水に浸したり、或いは予め水分を含ませておき、電子レンジで加熱して用いられる。しかしこの蒸しタオルは、そもそも、身体の一部分における血管の運動性刺激を活発化させるために用いられるものであり、液を放出させて使用することを目的としていない。
【0004】
身体用の清拭シートとは別に、水性液が含浸された湿式のシートとして、床のしみ、キッチン回りの油汚れ、水回りの皮脂汚れ等の除去に用いられる清掃用シートが知られている。油汚れや皮脂汚れは、温度によって落ち具合が変化し、室温で拭き取るよりも、これらを温めて拭き取る方が汚れが一層落ちることが知られている。しかし、該清掃用シートを温めて清掃しても、その温度が持続されず直ぐに冷えてしまい、結局汚れを十分に落とすことは容易でない。
【0005】
特開平10−314092号公報には、電子レンジ内の清拭具及び清拭方法が記載されている。この清拭具は清拭具材の加熱によって蒸発する液体洗浄剤を保持させてなり、これを電子レンジの加熱庫内に入れて加熱し液体洗浄剤を蒸発させ、その後、該清拭具を用いて加熱庫内を清掃するために用いられる。しかしこの清拭具は、加熱庫内だけの清掃が可能であり、この清拭具を電子レンジから取り出してキッチン回りや床等を清掃しようとしても、直ぐに冷えてしまい温熱清掃に適さない。特開2000−82580にも、電子レンジ内の清掃具が記載されている。この清掃具は、加熱作用によって蒸発する液体を拭き取り材に含浸させ、該拭き取り材を包材に密封収納してなる。この清掃具は、電子レンジの加熱庫内で加熱され、加熱による液体の蒸発で内圧を上昇させ、包材を破裂開口させて液体を加熱庫内に飛散させるものである。従って、この清掃具には、前述した特開平10−314092号公報に記載の清拭具と同様の課題がある。
【0006】
従って、本発明は、長時間高温を維持した状態で清拭や清掃などの拭き取り操作を行ない得る温熱拭き取り用具及び温熱拭き取り方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、吸水性ポリマーが含まれ且つ加熱によって蒸発する水性洗浄剤が含浸された拭き取り具と、該拭き取り具がほぼ密閉状態で収納される耐熱性を有する収納体とを備え、該拭き取り具が該収納体内にほぼ密閉状態で収納された状態で所定温度に加熱される温熱拭き取り用具を提供することにより前記目的を達成したものである。
【0008】
また本発明は、吸水性ポリマーが含まれ且つ加熱によって蒸発する水性洗浄剤が含浸された拭き取り具を、耐熱性を有する収納体内にほぼ密閉状態で収納し、該拭き取り具を該収納体内に収納された状態下に所定温度に加熱し、加熱された該拭き取り具を該収納体から取り出し、拭き取り対象物を拭き取る温熱拭き取り方法を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の温熱拭き取り用具の第1の実施形態の斜視図が示されており、図2には、拭き取り具の斜視図が示されている。図3は図2におけるIII−III線断面図である。
【0010】
図1に示す温熱拭き取り用具1は、拭き取り具2と収納体3とを備えている。拭き取り具2は、複数枚が重ねられて収納体3内に収納されている。収納体3は、拭き取り具2の収容が可能な空間を有し且つ上部が開口した直方体状の収納部31を備えている。収納部31の背面部の開口端にはヒンジ32が設けられている。ヒンジ32には、収納部31の開口部を塞ぐ蓋部33が取り付けられている。蓋部33はヒンジ32によって開閉可能になっている。蓋部33が収納部31の開口部を閉塞した場合には、該収納部31内の空間はほぼ密閉状態となる。蓋部33のほぼ中央部には、該蓋部33を貫通する小孔34が設けられている。後述するように小孔34は蒸気排気手段として機能する。
【0011】
図2及び図3に示すように、本実施形態の拭き取り具2はシート状であり(以下、拭き取りシートともいう)、身体の清拭に用いられる。拭き取りシート2は矩形状のものであり、内層21と、該内層21の両面に配された2枚の表面層22,22との3層構造の積層シートから構成されている。内層21及び表面層22の何れも繊維シートから構成されている。
【0012】
拭き取りシート2は、身体の洗浄のための水性洗浄剤が含浸されている湿式シートである。水性洗浄剤の放出量を前記範囲内にコントロールするためには、例えば水性洗浄剤の含浸量やシートの材質をコントロールすることが効果的である。シートの材質をコントロールすること、例えば親水性繊維と非親水性繊維(例えばポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維等)との混抄率を変化させることで、表面層22を構成するシートの親水性の度合いを変えることができる。具体的には、親水性繊維を多く混抄すると、表面層22は水性洗浄剤を保持しやすくなり、且つ圧力によって水性洗浄剤が容易に放出されることから、放出量は多くなる。逆に、親水性繊維の混抄率を低下させることで、表面層22は、水性洗浄剤を保持しにくくなり、内層21に保持される水性洗浄剤の量が増えるので、圧力を加えても水性洗浄剤は放出されにくくなる。よって放出量は少なくなる。
【0013】
一方、水性洗浄剤の含浸量をコントロールするには、拭き取りシート2の吸水性をコントロールすればよい。この目的のために、拭き取りシート2における内層21を構成するシートには、吸水性ポリマーが含まれている。詳細には、内層21は、吸水性ポリマーの粒子及び繊維材料を含む繊維シートから構成されている。そして、吸水性ポリマーの含有量をコントロールすることで、水性洗浄剤の含浸量、ひいてはその放出量をコントロールできる。更に、吸水性ポリマーが、水性洗浄剤中の水を吸収することで、拭き取りシート2全体としての比熱が高くなり、拭き取りシート2を所定温度に加熱したときの短時間での温度低下を防止できる。このことによっても、冷刺激を与えることが防止される。
【0014】
このように、本実施形態においては、拭き取りシート2に吸水性ポリマーを含有させることで、(1)水性洗浄剤の放出量がコントロールされて冷刺激が抑制される、及び(2)拭き取りシート2の保温性が高められて冷刺激が抑制される、という2つの面からの効果が奏される。
【0015】
拭き取りシート2の保温性を高めることで冷刺激を効果的に抑制するためには、拭き取りシート2に含まれる吸水性ポリマーの量及び含浸される水性洗浄剤の量、並びに両者の重量比が重要となる。吸水性ポリマー及び水性洗浄剤は、拭き取りシート2を60℃に加熱した後、23℃・65%RHの環境下に3分間保存した後の温度を30℃以上に維持し得る量含まれていることが好ましい。保存時間を3分間とした理由は、水性洗浄液の全放出量との関係で、1枚の拭き取りシート2による清拭時間は3分間程度であることによる。拭き取りシート2全体の重量(水性洗浄剤が含浸された状態での重量)に占める吸水性ポリマーの重量比は、吸水性ポリマーの種類にもよるが、0.002〜0.15、特に0.004〜0.11であることが好ましい。また、水性洗浄剤が含浸される前の状態における拭き取りシート2の重量に対する水性洗浄剤の含浸重量の比は2〜15、特に4〜10であることが好ましい。また、吸水性ポリマーと水性洗浄剤との重量比(前者/後者)は0.002〜0.15、特に0.007〜0.11であることが好ましい。
【0016】
拭き取りシート2を構成する各層の詳細について説明すると、内層21は前述の通り吸水性ポリマーの粒子及び繊維材料を含む繊維シートから構成されていることが好ましい。内層21は典型的には不織布又は紙から構成される。吸水性ポリマーとしては、自重の20倍以上の液体を吸収・保持でき且つゲル化し得るものが好ましい。形状は特に問わず、球状、塊状、ブドウ状、粉末状又は繊維状であり、大きさが1〜1000μm、特に10〜500μmであることが好ましい。具体例としては、デンプンや架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体を挙げることができる。繊維材料としては親水性繊維を用いることが好ましい。具体例としては、針葉樹クラフトパルプや広葉樹クラフトパルプのような木材パルプ、木綿パルプ及びワラパルプ等の天然セルロース繊維、レーヨン及びキュプラ等の再生セルロース繊維、ポリビニルアルコール繊維及びポリアクリロニトリル繊維等の親水性合成繊維、並びにポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維及びポリエステル繊維等の合成繊維を界面活性剤により親水化処理したものなどが挙げられる。繊維材料は1種又は2種以上を用いることができる。
【0017】
内層21は、前述の材料を原料として湿式抄造法やエアレイド法、エアスルー法、スパンレース法によって製造することができる。また該繊維シートとして、特開平8−246395号公報や国際公開WO99/63923に記載の吸収性シートを用いることもできる。
【0018】
内層21を構成する繊維シートにおける吸水性ポリマーの粒子と繊維材料との重量比(前者/後者)は、0.05〜1.0、特に0.1〜0.5であることが、吸水性ポリマーによる温熱保持性能の点から好ましい。同様の理由により、吸水性ポリマー自体の坪量は、5〜100g/m2、特に10〜80g/m2であることが好ましい。内層21を構成する繊維シートの坪量は、拭き取りシート2全体の坪量にもよるが、30〜500g/m2、特に60〜150g/m2であることが好ましい。
【0019】
内層21は短冊形をしている。短冊形の内層21は、その幅に対する長さの比が1〜30、特に5〜20、とりわけ6〜15程度のものである。内層21の長さは、表面層22,22の長さよりも短くなっており、内層21の前後端縁から表面層22,22が延出している。内層21は複数用いられており、各内層21は、所定間隔を置いて一方向に配列されている。その間隔は2〜20mm、特に3〜15mm、とりわけ3〜11mmであることが、表面層22,22同士の接合が容易になる点、及び内層21の面積を十分に確保する点から好ましい。
【0020】
各内層21の周縁は、2枚の表面層22,22同士が接合することによって囲繞されて連続に封止されている。これによって、膨潤した吸水性ポリマーの拭き取りシート2からの脱落が防止される。この脱落防止の観点から、2枚の表面層22,22による封止面積は、拭き取りシート2の見かけの面積の2〜95%、特に10〜65%であることが好ましい。表面層22,22同士の接合には、例えばヒートシールによる熱融着、接着剤による接着などが用いられる。また、必要に応じ、拭き取りシート2にエンボス加工を施して、内層21と表面層22とを部分的に接合してもよい。
【0021】
表面層22は前述の通り親水性セルロース繊維を含んでいる繊維シートから構成されていることが好ましい。表面層22は典型的には不織布から構成される。親水性セルロース繊維としては、レーヨン及びキュプラ等の再生セルロース繊維、針葉樹クラフトパルプや広葉樹クラフトパルプのような木材パルプ、木綿パルプ及びワラパルプ等の天然セルロース繊維などが挙げられる。表面層22を構成する繊維シートは、親水性セルロース繊維のみから構成されていても良く、或いは他の繊維材料を含んでいてもよい。他の繊維材料としては、例えばポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維などの熱融着性繊維を用いることができる。熱融着性繊維は、前述したように、エンボス加工によって表面層22を内層21と積層一体化させる場合に用いられる。
【0022】
表面層22を構成する繊維シートが親水性セルロース繊維以外の他の繊維を含む場合、該他の繊維は、表面層22の重量(乾燥基準)当たり、2〜70重量%、特に30〜60重量%含まれることが好ましい。また親水性セルロール繊維は表面層22の重量(乾燥基準)当たり、30〜98重量%、特に40〜70重量%含まれることが好ましい。表面層22を構成する繊維シートは、例えば湿式抄造法、エアレイド法、スパンレース法などの各種不織布製造方法によって製造することができる。表面層22を構成する繊維シートの坪量は、拭き取りシート2全体の坪量にもよるが、それぞれ20〜100g/m2、特に30〜70g/m2であることが好ましい。尚、2枚の表面層22は、同一のものでも良く或いは異なる種類のものでもよい。
【0023】
内層21及び表面層22が積層一体化されたシート(水性洗浄剤が含浸される前のシート)は、その坪量が40〜500g/m2、特に70〜400g/m2、とりわけ120〜290g/m2であることが、シートを手に持った時の感触と、その清拭のし易さの点から好ましい。また、このシートに洗浄剤が含浸された後の拭き取りシート2の坪量は300〜4000g/m2、特に500〜3000g/m2、とりわけ1000〜1500g/m2であることが好ましい。
【0024】
次に、水性洗浄剤について説明する。水性洗浄剤は水を媒体とし洗浄成分を含有するものであり、加熱によって蒸発する。洗浄成分としては各種界面活性剤を用いることができる。特に食品添加物系界面活性剤を用いることが好ましい。この理由は次の通りである。拭き取りシート2を、後述するように電子レンジで加熱した場合、水性洗浄剤がその内部に残留する可能性があり、それにより水性洗浄剤が食品と間接的に接する可能性がある。その場合の安全性の点から、水性洗浄剤に含まれる成分である界面活性剤は食品添加物系のものであることが好ましい。界面活性剤は、水性洗浄剤中に0.01〜30重量%、特に0.05〜2重量%含有されていることが、十分な洗浄効果の発現の点から好ましい。
【0025】
水性洗浄剤には、沸点が100℃以上である水溶性溶剤、特にアルコールが含有されていることが好ましい。これによって、拭き取りシート2から放出された水性洗浄剤が急速に気化することが抑制されて、一層冷刺激が抑制される。沸点が100℃以上である水溶性溶剤としては、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコールなどのアルコール類を用いることができ、特にプロピレングリコールを用いることがベタつき防止性の点、及びこれが食品添加物である点から好ましい。水溶性溶剤は、水性洗浄剤中に2〜70重量%、特に5〜50重量%、とりわけ10〜30重量%含有されていることが、より一層の冷刺激抑制の点、及び拭き取りシート2の保温性、更には肌への保湿性の観点から好ましい。
【0026】
水性洗浄剤には、前述した各種成分に加えて、ミリスチン酸、ミツロウ、モンモリナイト等の粘度調整剤;リモネン等の香料成分(芳香性物質);メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンなどの抗菌剤;除菌剤;防腐剤;天然緑茶抽出物(フラボノイド等)等の消臭成分;化粧品等で使用されているシリコーン類等;ワセリン、マツエキス、モモ葉エキス等の天然エキスや保湿剤;及びその他の無機物質などを含有させることもできる。これらの成分は、水性洗浄剤中に好ましくはそれぞれ0.0001〜20重量%含有させることができる。
【0027】
水性洗浄剤における媒体としての水は、水性洗浄剤中に好ましくは30〜99.9重量%、更に好ましくは50〜95重量%、一層好ましくは60〜90重量%含まれる。
【0028】
拭き取りシート2は、一枚又は複数枚が収納体3内にほぼ密封状態で収納され、この状態下に所定の加熱手段によって所定温度に加熱された後に、収納体3から取り出されて身体の清拭に使用される。拭き取りシート2の加熱手段としては、収納体の材質に応じて適切な手段が用いられる。例えば収納体3が電磁波透過性の材料、例えば各種合成樹脂から構成されている場合には、拭き取りシート2を収納体3内に収納した後、収納体3を電子レンジの加熱庫内に入れ電磁波を照射することで拭き取りシート2を加熱することができる。収納体が電磁波透過性でない材料、例えば金属から構成されている場合には、拭き取りシート2を収納体3内に収納した後、収納体3を熱水に浸漬することで拭き取りシート2を加熱することができる。何れの加熱手段を用いる場合にも、収納体3は耐熱性である必要がある。拭き取りシート2の加熱温度は35〜85℃、好ましくは40〜70℃、特に50〜60℃であることが、取り扱い性及び冷刺激の十分な抑制の点から好ましい。
【0029】
収納体3内にほぼ密封した状態下に拭き取りシート2を加熱すると、それに含浸されている水性洗浄剤から蒸気が発生し、収納体3内が加圧状態となる。収納体3の内圧が高まると、収納体3の破裂のおそれや拭き取りシート2の過熱のおそれがある。そこで、発生する蒸気の一部が放出されることが好ましい。この観点から、拭き取りシート2が60℃になるまで加熱した後、収納体3を23℃・65%RHの環境下に4分間保存した後の、収納体3内における水性洗浄剤の蒸発減少量を1〜10重量%、特に2〜8重量%、とりわけ3〜6重量%にし得る蒸気排気手段が収納体3に備えられていることが好ましい。本実施形態においては、先に述べた通り、収納体3における蓋部33に小孔34が設けられており、該小孔34を通じて発生した蒸気の一部が外部へ放出されるようになっている。小孔34の径は0.3〜5mm程度、特に0.5〜2mm程度、とりわけ0.8〜1.5mm程度であることが、水性洗浄剤の蒸発減少量を容易に前記範囲内とし得る点から好ましい。なお蒸気排気手段は小孔に限られず、例えば耐熱性の透湿フィルムシートでも良い。
【0030】
このようにして加熱された拭き取りシート2は、実際の清拭操作が行われるまで収納体3内に収納され、その高温状態が長時間維持される。そして、清拭操作を行うときに初めて収納体3から取り出され、拭き取り対象である身体の拭き取りが行われる。この観点から、拭き取りシートが60℃になるまで加熱した後、収納体3を23℃・65%RHの環境下に4分間保存した後の、収納体3内における拭き取りシート2の温度を40℃以上、特に50℃以上に維持し得る保温性を収納体3が有していることが好ましい。収納体3の保温性を高めるためには、例えば収納体3自体を断熱性の高い材料、例えばグラスファイバー、セラミックグラスウール、発泡スチロール、発泡ウレタンから構成したり、収納体3の内面に断熱材、例えばサーモウール(羊毛断熱材)、発泡スチロール、発泡ウレタンを貼り付ければよい。なお、拭き取りシート2を収納体3内に収納せず直接加熱した場合には、収納体3内に収納して加熱した場合に比べて高温状態の維持時間が相対的に短くなる。
【0031】
次に、本発明の第2の実施形態について図4及び図5を参照しながら説明する。第2の実施形態については、第1の実施形態と異なる点についてのみ説明し、特に説明しない点については、第1の実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、図4及び図5において、図1〜図3同じ部材に同じ符号を付してある。
【0032】
本実施形態では収納体3は第1の実施形態と同様であるが、拭き取りシートの形態が第1の実施形態と相違する。図4に示す拭き取りシート2’は、家庭用及び業務用として、床、壁、リビング用品、キッチン周り、浴室や洗面台等の水周りの汚れの清掃に用いられる。図4に示すように、拭き取りシート2’は扁平な矩形状であり、シート材の積層体から構成されている。拭き取りシート2’は、その一面に清掃面Cを有している。また拭き取りシート2’は、シート本体4及び吸水性ポリマー保持シート(以下、ポリマーシートともいう)51を備えている。シート本体4は、掻き取りシート41並びに第1及び第2のポリマー脱落防止シート(以下、脱落防止シートともいう)42,43の合計3枚のシート材がこの順で積層されて構成されている。ポリマーシート51は、シート本体4における第1及び第2の脱落防止シート42,43の間に配されている。つまり、本実施形態の拭き取りシート2’は、4枚のシート材、即ち掻き取りシート41、第1及び第2の脱落防止シート42,43、ポリマーシート51がこの順で積層されて構成されている。そして、各シートの四辺が熱エンボスによるヒートシールSによって接合されていると共に、四辺の内部が菱形格子状のパターンで熱エンボスによるヒートシールSによって接合されている。これによって4枚のシートが部分的に接合され一体化されて拭き取りシート2’が構成されている。各シートを部分的に接合することで、吸水性ポリマーの膨潤が阻害されなくなるという利点がある。また部分的に接合することで、清掃面Cに凹凸形状が付与され清掃効果が一層高まる。この場合、凸部の面積の総和は、清掃面Cの見掛けの面積に対して5〜98%、特に35〜90%であることが、前記清掃効果の点から好ましい。
【0033】
シート本体4における掻き取りシート41の外面は前述した清掃面Cとなっている。また第2の脱落防止シート43の外面は、拭き取りシート2’の使用時における掃除具や手との当接面となっている。
【0034】
シート本体4には水性洗浄剤が含浸されている。この場合、水性洗浄剤は、ポリマーシート51中に主に存在しておりシート本体4における掻き取りシート41及び脱落防止シート42,43にも存在している。
【0035】
拭き取りシート2’におけるポリマーシート51は、吸水性ポリマーの粒子を保持した繊維材料を含む繊維シートから構成されている。吸水性ポリマーの粒子は、交絡した繊維間に保持されている。また、含水した吸水性ポリマーは粘着性を発現しているので、該粘着性によって繊維に結合して保持されている。吸水性ポリマーに吸収される水分としては、シート本体4に含浸される水性洗浄剤の一部が用いられる。
【0036】
拭き取りシート2’は、該拭き取りシート2’を収納体3に収納した状態下に加熱して該拭き取りシート2’を60℃に到達させた後、収納体を23℃・65%RHの環境下に4分間保存した後の該拭き取りシート2’の温度を40℃以上、特に50℃以上に維持し得る熱容量を有していることが好ましい。換言すれば、拭き取りシート2’を収納体3に収納した状態下に加熱して該拭き取りシート2’を60℃に到達させた後、収納体を23℃・65%RHの環境下に4分間保存した後の該拭き取りシート2’の温度を40℃以上、特に50℃以上に維持し得る量の吸水性ポリマー及び水性洗浄剤が、拭き取りシート2’に含まれていることが好ましい。これによって、長時間高温を維持した状態で清掃を行うことができる。拭き取りシート2’全体の重量(水性洗浄剤が含浸された状態での重量)に占める吸水性ポリマーの重量比は、第1の実施形態と同様とすることができる。また、水性洗浄剤が含浸される前の状態における拭き取りシート2’の重量に対する水性洗浄剤の含浸重量の比も、第1の実施形態と同様とすることができる。
【0037】
ポリマーシート51は前述の通り、熱媒体を保持した繊維材料を含む繊維シートから構成されている。ポリマーシート51としては、第1の実施形態における内層と同様のものを用いることができる。
【0038】
拭き取りシート2’におけるシート本体4の一部をなす掻き取りシート41は、シート本体4の表面層を構成している。該表面層は、拭き取りシート2’における清掃面Cを含んでいる。掻き取りシート41は、シート本体4やポリマーシート51に含浸されている水性洗浄剤を放出させ且つ清掃対象面に存する汚れに対する研磨性ないし掻き取る作用を有している。掻き取りシート41は熱可塑性繊維を含む繊維シートから構成されている。
【0039】
掻き取りシート41を拡大した模式図が図5に示されている。掻き取りシート41は、その表面、つまり拭き取りシート2’における清掃面に、前記熱可塑性繊維の先端部が多数存在して、該清掃面が、清掃対象面に存する汚れに対する研磨性ないし掻き取り性を有することが好ましい。これによって、汚れの除去性が高まる。この目的のために、熱可塑性繊維として、繊維長が2〜15mmで且つ繊度が10〜150dtexのものを用いることが好ましい(以下、この熱可塑性繊維を、太径熱可塑性繊維という)。太径熱可塑性繊維を用いることで、掻き取りシート41の表面に多数の先端部が存在することになり、清掃対象面に存する汚れに対する研摩性ないし掻き取り性が高くなる。
【0040】
図5において太径熱可塑性繊維の繊維長を前記範囲内とすることで、掻き取りシート41からの繊維の脱落が防止され、また繊維を均一に分散させることができる。特に、太径熱可塑性繊維の繊維長が好ましくは3〜8mm、更に好ましくは4〜6mmであると、掻き取りシート41からの太径熱可塑性繊維の脱落等が一層防止され、また一層均一で、汚れの掻き取り性に優れた掻き取りシート41を形成することができる。また、前記範囲内の繊維長は、掻き取りシート41をエアレイ法で形成する場合に、ウエブ形成の点から好適な繊維長である。
【0041】
太径熱可塑性繊維の繊度を前記範囲内とすることで、こびりついた汚れ(変性油、焦げつき、水垢等)の掻き取り性が良好となり、また繊維を均一に分散させることができる。特に、太径熱可塑性繊維2の繊度が好ましくは20〜130dtex、更に好ましくは30〜120dtex、一層好ましくは40〜110dtexであると、例えば鍋やフライパンにこびりついた汚れの掻き取り性に一層優れたものとなる。
【0042】
太径熱可塑性繊維としては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、ナイロンなどのポリアミド系樹脂、各種金属、ガラスなどを原料とする繊維が用いられる。樹脂製の太径熱可塑性繊維を用いる場合、その樹脂硬度は、ロックウェル硬さでR40〜R150の範囲が好ましい。特に、汚れの掻き取り性を向上させる点からは、R80〜R150の樹脂を用いることが好ましい。前記の各種原料のうち、2種の樹脂の組み合わせからなる複合繊維(芯鞘型複合繊維やサイド・バイ・サイド型複合繊維)を用いることもできる。太径熱可塑性繊維として、捲縮性を有しているものを用いることもできる。これによって、掻き取りシート41の厚み感(嵩高性)を向上させることができ、良好な拭き心地が得られる。捲縮形態としては、スパイラル型、ジグザグ型、U字型などがあり、これの何れもが好適に用いられる。太径熱可塑性繊維は1種又は2種以上を用いることができる。
【0043】
掻き取りシート41をエアレイ法で製造すると、太径熱可塑性繊維をランダムに三次元配向させることが可能であることから、掻き取りシート41の表面に、太径熱可塑性繊維の先端部を多数存在させることができる。特に、太径熱可塑性繊維として前記繊維長のものを用いることで、該太径熱可塑性繊維が掻き取りシート41の厚み方向に配向し易くなり、汚れの掻き取り性が高くなる。その上、太径熱可塑性繊維として前記繊度のものを用いることで、該太径熱可塑性繊維の剛性が高くなり、汚れに対する研摩性ないし掻き取り性が一層高くなる。
【0044】
図5に示すように、掻き取りシート41の清掃面Cとなる面においては、太径熱可塑性繊維の先端部が多数存在している。先端部の本数は、清掃対象面に存する汚れに対する十分な研磨性ないし掻き取り性が発現するのに十分な数とする。
【0045】
掻き取りシート41には、太径熱可塑性繊維に加えて、0.5〜5dtex程度の繊度を有する、太径熱可塑性繊維よりも相対的に細い熱融着性繊維(細径熱可塑性繊維)が含有されていることが、太径熱可塑性繊維の脱落が防止される点及びこびりつき汚れの掻き取り性が向上する点から好ましい。この点から、斯かる繊維は、該繊維同士、及び該繊維と太径熱可塑性繊維とが、それらの交点で融着されていることが好ましい。斯かる繊維は、掻き取りシート41中に1〜50重量%、特に2〜30重量%含まれていることが好ましい。
【0046】
拭き取りシート2’における第1及び第2の脱落防止シート42,43は、拭き取りシート2’の使用中に、吸水性ポリマーが外部へ漏れ出てしまうことを防止するために使用される。脱落防止シート42,43は、吸水性ポリマーの粒子よりも目開きの小さなシートから構成される。また、脱落防止シート42,43は、水性洗浄剤を透過させ得るものであることも必要である。これらの点から、脱落防止シートは、繊維が密に詰まった繊維シートであることが好ましい。更に、2枚の脱落防止シートのうち第2の脱落防止シート43は、拭き取りシート2’のもう一方の外面を構成するものであるから、水等の含浸性を考慮すると、親水性セルロース繊維を含んでいる繊維シートから構成されていることが好ましい。以上のことを考慮すると、各脱落防止シート42,43は典型的には不織布から構成される。親水性セルロース繊維としては、レーヨン及びキュプラ等の再生セルロース繊維、針葉樹クラフトパルプや広葉樹クラフトパルプのような木材パルプ、木綿パルプ及びワラパルプ等の天然セルロース繊維などが挙げられる。脱落防止シート42,43を構成する繊維シートは、親水性セルロース繊維のみから構成されていても良く、或いは他の繊維材料を含んでいてもよい。他の繊維材料としては、例えばポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維などの熱融着性繊維(熱可塑性繊維)を用いることができる。熱融着性繊維が含まれていると、拭き取りシート2’を構成する各層のヒートシール性が良好になる。
【0047】
脱落防止シート42,43を構成する繊維シートは、例えばスパンレース法などの各種不織布製造方法によって製造することができる。脱落防止シート42,43を構成する繊維シートの坪量は、拭き取りシート2’全体の坪量にもよるが、20〜100g/m2、特に30〜70g/m2であることが好ましい。シート42,43は同種でもよく、或いは異種でもよい。
【0048】
掻き取りシート41と第2の脱落防止シート43とからなる拭き取りシート2’の表面層は、該表面層の重量(乾燥基準)当たり熱可塑性繊維を2〜90重量%、特に2〜70重量%含むことが好ましい。また、該表面層の重量(乾燥基準)当たり親水性セルロース系繊維を、10〜98重量%、特に30〜98重量%含むことが好ましい。
【0049】
水性洗浄剤が含浸される前の状態の拭き取りシート2’は、その坪量が40〜500g/m2、特に70〜400g/m2、とりわけ120〜290g/m2であることが、拭き取りシート2’を手に持ったときの感触と、その清掃のし易さの点から好ましい。一方、水性洗浄剤が含浸された状態の拭き取りシート2’は、その坪量が300〜4000g/m2、特に500〜3000g/m2、とりわけ1000〜2500g/m2であることが、温熱持続性及び洗浄性の点から好ましい。同様の理由により、水性洗浄剤が含浸される前の状態の拭き取りシート2’に対する水性洗浄剤の含浸重量比は2〜15、特に4〜10であることが好ましい。
【0050】
本実施形態の拭き取りシート2’は、第1の実施形態と同様に、収納体内に収納された状態で加熱される。加熱温度は第1の実施形態と同様とすることが、取り扱い性及び汚れの除去性の点から好ましい。このようにして加熱された拭き取りシート2’を用いて清掃を行う場合には、拭き取りシート2’における清掃面C、即ち掻き取りシート41の面を清掃対象面に押し当てて擦りつける。これによって、拭き取りシート2’に含浸されている加熱された水性洗浄剤が清掃対象面に放出され、熱の作用によって清掃対象面に存する汚れを可塑化させる。また水性洗浄剤がそれ自体有する洗浄性能によって汚れを膨潤させ、溶解ないし浮き上がらせる。これと共に、拭き取りシート2’の清掃表面に多数存在している太径熱可塑性繊維の先端部が、清掃対象面に存する汚れを研摩ないし掻き取る。これらの機械的及び化学的作用によって、汚れが清掃対象面から除去される。除去された汚れは、水等の中に溶け込むか或いは分散して、水等と共に拭き取りシート2’に吸収される。このようにして、清掃対象面が清浄な状態となる。このような温熱清掃を行うと、拭き取りシート2’を加熱しないで清掃した場合に比べて清掃対象面を擦る回数が少なくて済み、清掃対象面を傷つけることが防止される。また1回擦った時の汚れの除去率が高くなる。その上、拭き取りシート2’は、その使用時までは収納体内に収納されて高温が維持されているから、清掃作業期間に亘って所定の高温が維持される。
【0051】
本実施形態の拭き取りシート2’は、その清掃面Cと反対側の面に手を当てて清掃したり、該面に掃除具を装着させて清掃を行うことができる。掃除具としては、清掃部と該清掃部に連結された棒状の把手とを具備した掃除具が好ましく用いられる。拭き取りシート2’は、該清掃部に装着されて用いられる。この掃除具における把手を長くしてモップ状にすれば、立ったままの姿勢で楽に清掃を行える。
【0052】
本発明は前記実施形態に制限されない。例えば第1の実施形態においては、拭き取りシート2は3層構造であったが、これに代えて内層21と1枚の表面層22とからなる2層構造としてもよい。また、吸水性ポリマーを保持でき且つその脱落のおそれがない限り、単層構造としてもよい。また第1の実施形態においては、内層21及び表面層22として繊維シートを用いたがこれに代えてスポンジなどの発泡シートを用いることもできる。
【0053】
また第2の実施形態においては、掻き取りシートを用いずに、シート本体4を2枚の脱落防止シート42,43から構成してもよい。この場合には、2枚の脱落防止シート42,43間にポリマーシート51が配される。更に第2の実施形態においては、熱エンボスによるヒートシールSが形成されている部位には、ポリマーシート51が存在していないことが、吸水性ポリマーの脱落防止の点、及び各シートの接合性の点から好ましい。
【0054】
また、収納体3の形状は図1に示す形状に限られず、拭き取りシートをほぼ密封状態に収容し得る形状であれば、いかなる形状でも良い。
【0055】
【実施例】
以下の例中、特に断らない限り、「%」は「重量%」を意味する。
【0056】
〔実施例1(第1の実施形態の実施例)〕
(1)表面層の製造
レーヨン80%及び芯がポリエチレンテレフタレートで鞘がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維20%からなるスパンレース不織布を表面層として用いた。この不織布の坪量は40g/m2であった。
(2)内層の製造
米国バッカイ社製の吸水性ポリマー含有シートを内層として用いた。このシートは短冊状であり、国際公開WO99/63923に記載の方法に準じ、エアレイド法によって製造されたものであり、坪量は105g/m2であった。このシートに含まれる吸水性ポリマーは架橋されたポリアクリル酸ナトリウム塩であり、その坪量は26.3g/m2であった。
(3)積層シートの製造
内層の両面に210×150mmの表面層を重ね合わせ、熱エンボス加工によって三者を部分的に一体化し、図2及び図3に示す形態の坪量140g/m2の積層シートを得た。内層シートは6枚用い、その幅は15mm、長さは200mmであった。
(4)拭き取りシートの製造
プロピレングリコール20%、ショ糖ラウリン酸エステル(第一工業製薬製の「DK−エステル L−160A」(商品名)、食品添加物である界面活性剤)0.5%、エチルパラベン0.2%、残部水からなる水性洗浄剤を、乾燥状態にある積層シートの重量に対して800%含浸させて拭き取りシートを得た。
(5)拭き取りシートの加熱
拭き取りシートを図1に示すポリエチレン製の収納体内に2枚重ねて収納し、収納体ごと電子レンジの加熱庫内に入れて加熱した。収納体の外部には直径1mmの小孔が設けられていた。加熱は拭き取りシートの温度が60℃となるようにした。拭き取りシートを60℃になるまで加熱した後、収納体から取り出して23℃・65%RHの環境下に4分間保存した。保存後の水性洗浄剤の蒸発減少量を測定したところ4.0%であった。また、拭き取りシートを60℃になるまで加熱した後、収納体を23℃・65%RHの環境下に4分間保存した。保存後の収納体内における拭き取りシートの温度を測定したところ58℃であった。
【0057】
〔実施例2(第2の実施形態の実施例)〕
(1)脱落防止シートの製造
レーヨン80%及び芯がポリエチレンテレフタレートで鞘がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維20%からなるスパンレース不織布を脱落防止シートとして用いた。この不織布の坪量は40g/m2であった。
【0058】
(2)ポリマーシートの製造
実施例1と同様とした。
【0059】
(3)掻き取りシートの製造
芯がポリエチレンテレフタレートで鞘が低融点ポリエステルからなる繊度56dtex、繊維長5mmの捲縮タイプ芯鞘型複合繊維(太径熱可塑性繊維、鞘成分の融点110℃)と、芯がポリエチレンテレフタレートで鞘が低融点ポリエステルからなる繊度2.2dtex、繊維長5mmの捲縮タイプ芯鞘型複合繊維(細径熱可塑性繊維、鞘成分の融点110℃)とが75/25の重量比で混合されたものを使用した。この繊維原料からエアレイ法により、坪量80g/m2のウェブを形成した。このウェブにおける構成繊維同士の交点を熱融着によって接着し、掻き取りシートを得た。このシートにおいては、その表面に太径熱可塑性繊維の先端部が多数存在していた。
【0060】
(4)拭き取りシートの製造
ポリマーシートを2枚の脱落防止シートで挟持した。更に、一方の脱落防止シートの表面に掻き取りシートを重ね合わせた。そして、これら4枚のシートを熱エンボス加工によって部分的に接合して一体化させ、図4に示す坪量265g/m2の積層シートを得た。エンボスパターンは菱形格子模様であった。この積層シートにおける掻き取りシート側の表面には、菱形の凸部が多数形成されていた。凸部の面積の総和は、清掃面の見かけの面積に対して45%であった。ドデシルグリコシド(界面活性剤)0.2%、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド(除菌剤)0.01%、プロピレングリコール(水溶性溶剤)5%、炭酸カリウム0.5%、クエン酸3ナトリウム(電解質)0.3%、及び残部水からなる水性洗浄剤を、シートの乾燥重量に対し800%含浸させて拭き取りシートを得た。
【0061】
(5)拭き取りシートの加熱
拭き取りシートを実施例1と同様の収納体内に2枚重ねて収納し、収納体ごと電子レンジの加熱庫内に入れて加熱した。加熱は拭き取りシートの温度が60℃となるようにした。拭き取りシートを60℃になるまで加熱した後、収納体から取り出して23℃・65%RHの環境下に4分間保存した。保存後の水性洗浄剤の蒸発減少量を測定したところ4.0%であった。また、拭き取りシートを60℃になるまで加熱した後、収納体を23℃・65%RHの環境下に4分間保存した。保存後の収納体内における拭き取りシートの温度を測定したところ58℃であった。
【0062】
〔実施例3(第1の実施形態の実施例)〕
(1)表面層、内層及び積層シートの製造
実施例1と同様とした。
(2)拭き取りシートの製造
シリコーンSH−245(東レダウコーニング・シリコーン社製)5%、ジプロピレングリコール5%、エタノール5%、エチルパラベン0.07%、プロピルパラベン0.02%、残部水からなる洗浄剤を、乾燥状態にある積層シートの重量に対して800%含浸させて拭き取りシートを得た。
(3)拭き取りシートの加熱
拭き取リシートを図1に示すポリエチレン製の収納体内に2枚重ねて収納し、収納体ごと電子レンジの加熱庫内に入れて加熱した。収納体の外部には、直径1mmの小孔が設けられていた。加熱は、拭き取りシートの温度が60℃となるようにした。拭き取りシートを60℃になるまで加熱した後、収納体から取り出して、23℃、65%RHの環境下に4分間保存した。保存後の洗浄剤の蒸発量を測定したところ4.1%であった。また、拭き取りシートを60℃になるまで加熱した後、収納体を23℃・65%RHの環境下に4分間保存した。保存後の収納体内における拭き取りシートの温度を測定したところ58℃であった。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、長時間高温を維持した状態で、身体の清拭や汚れの清掃などの拭き取り操作を行ない得る温熱拭き取り用具及び温熱拭き取り方法を提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の温熱拭き取り用具の第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】拭き取り具の一実施形態を示す斜視図である。
【図3】図2におけるIII−III線断面図である。
【図4】拭き取り具の第2の実施形態を示す斜視図である。
【図5】掻き取りシートの表面を拡大して示す模式図である。
【符号の説明】
1 温熱拭き取り用具
2 拭き取り具
3 収納体
Claims (9)
- 吸水性ポリマーが含まれ且つ加熱によって蒸発する水性洗浄剤が含浸された拭き取り具と、該拭き取り具がほぼ密閉状態で収納される耐熱性を有する収納体とを備え、該拭き取り具が該収納体内にほぼ密閉状態で収納された状態で所定温度に加熱される温熱拭き取り用具。
- 前記拭き取り具における吸水性ポリマーと水性洗浄剤との重量比(前者/後者)が0.002〜0.15である請求項1記載の温熱拭き取り用具。
- 前記拭き取り具が2層以上の積層シートからなり、その1層が吸水性ポリマーを含み、その層中における吸水性ポリマーの坪量が5〜100g/m2である請求項1又は2記載の温熱拭き取り用具。
- 前記拭き取り具が3層以上の積層シートからなり、最外層どうしが所定箇所において互いに接合しており、その接合面積が該積層シートの見かけの面積の2〜95%である請求項1〜3の何れかに記載の温熱拭き取り用具。
- 前記拭き取り具が60℃になるまで加熱した後、該収納体を23℃・65%RHの環境下に4分間保存した後の、該収納体内における前記水性洗浄剤の蒸発減少量を1〜10重量%にし得る蒸気排気手段が前記収納体に備えられている請求項1〜4の何れかに記載の温熱拭き取り用具。
- 前記拭き取り具が60℃になるまで加熱した後、該収納体を23℃・65%RHの環境下に4分間保存した後の、該収納体内における該拭き取り具の温度を40℃以上に維持し得る保温性を該収納体が有している請求項1〜5の何れかに記載の温熱拭き取り用具。
- 前記水性洗浄剤中に界面活性剤が0.01〜30重量%含有されている請求項1〜6の何れかに記載の温熱拭き取り用具。
- 前記水性洗浄剤が含浸される前の状態における前記拭き取り具重量に対する該水性洗浄剤の含浸重量の比が、2〜15である請求項1〜7の何れかに記載の温熱拭き取り用具。
- 吸水性ポリマーが含まれ且つ加熱によって蒸発する水性洗浄剤が含浸された拭き取り具を、耐熱性を有する収納体内にほぼ密閉状態で収納し、該拭き取り具を該収納体内に収納された状態下に所定温度に加熱し、加熱された該拭き取り具を該収納体から取り出し、拭き取り対象物を拭き取る温熱拭き取り方法。
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