JP4092764B2 - ZnO系焼結体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スパッタリング法によって透明導電性膜を形成する際に用いられるスパッタリング用ターゲットに関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶ディスプレイや太陽電池の電極材として用いられる透明導電性膜には、比抵抗値の低いIn23−SnO2(ITO)膜や ZnO−Al23(AZO)膜が使われるようになってきている。これらの膜は、スパッタリング用ターゲットを原料としたスパッタリング法によって形成され、加熱した基板上に成膜することにより、2×10-4Ω・cm程度の比抵抗値を達成させることができる。
【0003】
しかし、液晶ディスプレイや太陽電池の低コスト化傾向にある現在では、ITOは、その主成分であるIn23が高価であるため、コスト面で問題があり、一方、AZOは、その原料粉末が安価であるのでコスト面では問題ないが、低抵抗な膜を得るための最適な成膜条件の範囲が狭いため、安定して良好な膜特性が得られないなどの問題を抱えている。また、最近の傾向として、基板温度が低めに設定されるために低温域で低抵抗を得ることも重要な問題である。
【0004】
これらの問題を解決するために、コスト面、生産性に問題なく低抵抗かつ高透過率を有するZnO−B23(BZO)膜が、ITOやAZOに代わって、注目されつつある。BZO膜を得るために用いられるターゲット材には、結晶平均粒径を2μm以下とするために850〜1100℃にてホットプレスを行うBZO焼結体が特開平6−2130号公報に開示されている。
【0005】
しかし、このようにして得られたBZO焼結体をターゲットとして用いてDCスパッタリング成膜を行うと、基板温度を室温にして得た膜は、透過率(550nm)が80%と高いが、膜比抵抗は1×10-3Ω・cm程度に達することができない。特に液晶ディスプレイや結晶系太陽電池の透明電極に用いる際には、抵抗値をさらに低くする必要がある。また、BZO膜のターゲットはスパッタリング時に異常放電が多発する。異常放電が頻繁に起こると、プラズマ放電状態が不安定となって、安定した成膜が行われない。このため、膜特性が悪化するという問題が生じている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来の問題点を解決し、透過率が高くて抵抗値が低く、DCスパッタリング中の異常放電の発生が長期にわたって少なく、特性の優れた膜を効率よく成膜することが可能であり、かつ、生産性に優れていて安価なスパッタリングターゲット用ZnO系焼結体を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本願発明のZnO系焼結体は、Inを3〜6原子%、そして、Al、B、Ga、Ge、Si、SnおよびTiからなる群より選ばれた1種以上の第3元素を0.3〜3原子%含有し、実質的に亜鉛とインジウムと前記第3元素の複合酸化物からなる。このZnO系焼結体は、焼結密度が4.8g/cm3 以上であり、かつ、前記複合酸化物の結晶平均粒径が4〜15μmであることが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のZnO系焼結体は、従来公知の製法によって作製したBZO焼結体を用いて異常放電発生原因について本発明者が検討を行った結果、得たものである。すなわち、特開平6−2130号公報によれば、850〜1100℃の焼結温度でホットプレスすることより、容易にBZO焼結体を得ることができる。しかし、得られたBZO焼結体をターゲット材として用いてDCスパッタリングにて成膜を行うと、異常放電が多発し、長期的に安定な成膜ができないことがわかった。
【0009】
さらに、本発明者は、ZnO焼結体について解析を行い、その結果、異常放電を抑制するには以下のことが有効であることが分かった。
【0010】
(1)焼結密度が4.8g/cm3 以上であって、亜鉛とインジウムと他の第3元素の複合酸化物の結晶平均粒径が4〜15μmであること。
【0011】
(2)硼素が存在するときは、その偏析径が10μm以下であること。
【0012】
(3)焼結体内部に存在する空孔の最大径が5μm以下であること。
【0013】
これらを達成することによって、異常放電の発生が長期にわたって少ない焼結体を得ることできる。しかし、このような焼結体を作製するためには、以下のことを留意して製造しなければならない。
【0014】
なお、本発明において、結晶平均粒径、平均一次粒子径および空孔径は、焼結体破断面を鏡面研磨した後、熱腐食によって粒界を析出させ、SEM観察にて測定する。また、抵抗値は、焼結体破断面を鏡面研磨した後、焼結体中心付近の表面を四探針法によって測定する。硼素の偏析径は、焼結体の断面を鏡面研磨したあと、EMPA線分析によって一定の長さを測定し、硼素濃度の分布を見ることで判断される。
【0015】
本願発明のZnO系焼結体に影響する各因子について以下に説明する。
【0016】
「焼結密度」
ZnO粉末にB23粉末を添加して焼成を行う場合の問題点として、B23の溶融による欠陥の生成が挙げられる。Bは、融点が低いので、焼結途中で液相を生成する。従って、Bがない場合は、固相同士の反応で焼結が行われるが、Bが存在すると固相と液相の間の反応で焼結が行われる。このため、B23が含まれると、主相との濡れ性に劣り、焼結途中で揮発する問題がある。例えば、常圧焼成法の場合、HP法に比べて高温域で焼成を行うために、B23の溶融による焼結体内の欠陥は増加しやすい。つまり、B23は600℃近傍で溶融を開始し、B23同士による融着、粗大化が行われ、焼結体内に偏析が生じる。そして1000℃近傍から偏析は液相となる。液相の焼成による急激な焼結収縮が行われて、体積は収縮する。一方、液相となったB23は、焼結途中で蒸発しやすい。また、B23相とZnO相は濡れ性が悪い。そのために、液相部もしくは液相の周囲には空孔が生成し、焼結の進行と共に空孔は粗大化を起こす。これが原因で異常放電が多発するので、空孔を消滅させなければならない。また空孔を制御しなければ4.8/cm3 以上の焼結密度を達成することができない。
【0017】
一方HP法の場合、圧力を掛けながら焼結しているのでB23が液相になっても流動機構によってその周囲に空孔は発生しないが、やはり、硼素の偏析径は増加する。偏析径が大きいとスパッタリング時に問題が生じる。つまり、硼素濃度の高い偏析部は抵抗が高いため、偏析部で異常放電が発生し、その結果、局部的な加熱によって偏析部は溶融して空洞化するなどの問題が生じる。このためBZO膜の比抵抗は悪化する。
【0018】
よって本発明では、上記問題点を解決するためにB23を使用するときは、B23をZnOやAl23、Ga23、In23、GeO2、SiO2、TiO2、 SnO2 と複合化させて融点を高める方法を用いる。その結果B23の焼結挙動は改善され、焼結中に偏析、空孔が生じないため、スパッタリング時の異常放電を制御することができる。B23を原料粉末の段階でZnOなどと複合化させておくとB23の融点が高くなり、焼結におけるB23の溶融が防止され、ZnOなどとの濡れ性が改善されるため、空孔発生は制御される。また、複合化以外の焼結密度増大方法として、焼結中に酸素導入を行う方法が有効である。
【0019】
「表面抵抗値」
硼素を含有するZnO系焼結体(BZO焼結体)がスパッタリング成膜に必要な導電性を示すのは、主成分であるZnOの酸素欠損によるものといわれている。In23やB23などの酸化物を微量添加し、高温中で焼結することによって、In23やB23などの酸化物はZnO相中に固溶され、Zn原子との一部置換が行われたり、Zn原子の格子間への侵入が行われたりする。これにより酸素空孔が増加する。従って、酸素欠損を生じ、焼結体の体積抵抗率を低減できる。
【0020】
体積抵抗率が低くなると、スパッタリング時の投入電力が抑えられるために、ZnO膜へのダメージが少なくなって、良好な比抵抗値のZnO膜が得られる。
【0021】
一方、後述のように、焼結中もしくは焼結終了後に無酸素処理を加えることによって、酸素欠損を促進させ、一層の低抵抗化を図ることも可能である。
【0022】
「結晶平均粒径」
結晶平均粒径が大きいと焼結体の抗折力が弱いために、成膜時に急激なパワーをかけると割れが発生したり、結晶粒の脱落が生じたりする。この結果、局所的な異常放電が多発する。よって、亜鉛とインジウムと第3元素の複合酸化物の結晶粒子(化合物相、固溶相などを含む)の結晶平均粒径を4〜15μmの範囲内にする。
【0023】
「原料粉末」
本願発明のZnO系焼結体を得るための原料であるZnOやIn23などの酸化物は、単体粉末、もしくは下記に示す複合化粉末として用いる。単体で用いる際には平均一次粒子径が1μm以下の粉末を用いる。前述したようにB23相は、融点が低く、焼結途中で蒸発してしまうため、あらかじめB23粉末をZnOやIn23などの粉末と複合化する。
【0024】
「複合化方法」
ZnOやIn23と第3元素(Al23など)の酸化物との粉末を所望の組成となるように配合し、混合を行った後、仮焼を1100℃以下にて行い、必要あればさらに粉砕を行えば平均一次粒子径が5μm以下の複合化粉末が得られる。あるいは、後述の共沈法等によって作製された水酸化物粉末を1000℃以下にて仮焼すれば複合化粉末が容易に得られる。ただし、上記複合化粉末を用いて常圧焼結法にて焼結体を得る場合には、複合化のための仮焼温度は500〜800℃の範囲内が好ましい。800℃以上で行うと複合化粉末は粗大化され、平均一次粒子径が5μmより大きくなって焼結性が失われて、本発明で目的とする焼結密度を達成することができなくなる。
【0025】
この複合化粉末は、そのまま焼結原料とするか、あるいは、さらにZnOなどの粉末単体と合わせて所望の組成となるように配合し、混合を行って焼結原料とすることもできる。
【0026】
「水酸化物粉末の作製」
多く用いられる共沈法での水酸化物粉末の作製方法を以下に示す。まず、硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を水に溶かして水溶液化するか、もしくは硫酸、塩酸にて金属亜鉛を溶かした溶液を水で希釈して水溶液化する。その後、水溶液中に硼酸塩、硼酸、硼酸ナトリウム等を添加し、さらにpHを制御するためのアンモニア等のアルカリ類からなる沈殿剤を投入して中和を行う。次に、固液分離を行い、得られた沈殿物を濾過後、水洗、粉砕した後に乾燥して複合水酸化物とする。
【0027】
「混合」
混合は湿式、または乾式によるボールミル、振動ミル等を用いることができるが、均一微細な結晶粒および空孔を得るには、凝集体の解砕効率が高く、添加物の分散状態も良好となる湿式ボールミル混合法が最も好ましい。ただしホットプレスを用いる場合には、粉末への吸湿を避けるために、乾式ボールミル、Vブレンダー等が適用される。湿式ボールミル混合時間は12〜72時間、乾式ボールミル混合時間は8〜24時間の範囲が好ましい。湿式混合時間が12時間未満であると、均一微細な結晶粒および空孔を得ることができない。また、湿式混合時間が72時間を越えるのは、混合粉末中に不純物が多く混入するため好ましくない。乾式混合の場合も同様な理由から混合時間が規制される。
【0028】
また、混合する際にはバインダーを任意量だけ添加し、同時に混合を行う。バインダー種には、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル等が用いられる。
【0029】
「成形」
上記湿式混合によって得られたスラリーは、乾燥造粒後、金型または冷間静水圧プレスにて1ton/cm2 以上の圧力で成形を行う。乾式混合によって得られた混合粉末は、そのまま、金型または冷間静水圧プレスにて1ton/cm2 以上の圧力で成形を行う。
【0030】
「焼結方法」
本願発明のZnO系焼結体を得る方法には、ホツトプレス・酸素加圧・熱間静水圧等の焼結方法を用いることができるが、焼結法には常圧焼結法を用いることが好ましい。なぜなら、常圧焼結法には、製造コストを低減しやすいうえ、容易に大型焼結体を製造しやすいなどの利点があるからである。
【0031】
「焼結雰囲気」
常圧焼結法では、通常は、成形体を大気中にて焼結を行う。
【0032】
密度を一層高くしたい場合には、昇温過程で酸素を導入して焼結を行うことも可能である。しかし、酸素の導入により酸素欠損が抑制され、抵抗値が低下する恐れがある。酸素を導入する場合の酸素流量としては、2〜20リットル/分が好ましい。2リットル/分未満であると、ZnOの蒸発抑制(密度増大)効果は薄れ、20リットル/分を超えると、その流量によって焼結炉内が冷却され、均熱性が低下してしまう。
【0033】
また、逆に、焼結体内の酸素欠損を促進し、表面抵抗を一層低下させたい場合には、焼結中に無酸素処理を施すことも可能である。
【0034】
焼結中の無酸素処理は、昇温中において水素などの還元ガスやアルゴン、ヘリウム、窒素などの不活性ガスを導入して達成される。しかし、無酸素雰囲気にすると、ZnOの蒸発が活発化し、これらの蒸発で、焼結密度が低下する。従って、1300℃より高い温度での焼結中の無酸素処理は行えない。
【0035】
「焼結温度」
焼結温度は1000〜1500℃、好ましくは1000〜1300℃が良い。この際の焼結時間は15時間以下とする。1000℃未満であると、4.8g/cm3 以上の焼結密度を得ることができない。一方、1500℃を超えるか、または焼結時間が15時間を超えると、ZnOの蒸発の活発化により焼結密度が低下したり、著しい結晶粒成長により結晶粒径、空孔の粗大化を来たし、異常放電発生の原因になる。
【0036】
そして、焼結中の昇温速度においては、600〜1300℃の温度範囲の昇温速度を1〜10℃/分にする必要がある。つまり、600〜1300℃間は、特にZnOの焼結が最も活発化する温度範囲であり、この温度範囲での昇温速度が1℃/分より遅いと、結晶粒成長が著しくなって、本発明の目的を達成することができない。また、昇温速度が10℃/分より速いと、焼結炉内の均熱性が低下し、その結果、焼結中の収縮量に分布が生じて、焼結体は割れてしまう。
【0037】
ホットプレスを用いる場合の焼結温度は真空中またはAr雰囲気中で900〜1300℃の範囲内、その際のプレス圧は200〜400kg/cm2 が好ましい。
【0038】
「焼結終了後の無酸素処理」
表面抵抗を一層低下させたい場合には、焼結終了後に無酸素処理を施すことでも目的は達成される。
【0039】
焼結終了後に無酸素処理を施す場合、焼結終了後、冷却したあとに、あるいは降温中に真空中にて800℃以上の温度に加熱すれば目的を達成できる。具体的には、以下の方法にて行うことができる。まず、焼結終了後、そのまま炉内で900〜1300℃まで5〜20℃/分にて降温し、該所定温度に30分〜5時間保持しつつ、不活性ガスや還元ガスを2〜20リットル/分の割合で導入する。1300℃以上で無酸素処理を行うと、ZnOの蒸発が活発化して、焼結密度の低下、または組成ずれを来すばかりか、炉材やヒータの寿命を縮めて生産性を悪化させる。900℃以下であると、無酸素処理の効果が薄れ、表面抵抗値を大幅に低下させることができない。また導入ガス量が2リットル/分未満であると、無酸素処理の効果は薄れ、その導入量が多いほど該効果が高いが、20リットル/分を超えると、その流量によって焼結炉内が冷却され、均熱性が低下する。
【0040】
【実施例】
本発明に関するZnO系焼結体の製造方法を以下に説明する。
【0041】
[実施例1]
共沈法によって作製されたZnO−40重量%B23水酸化物を700℃3時間にて仮焼して得た平均一次粒子径が0.5μmの複合化粉末を、平均一次粒子径が0.1μmのZnO粉末中に、0.5重量%添加し、さらに平均一次粒子径が0.1μmのIn23粉末を9.8重量%添加して原料粉末とした。
【0042】
この原料粉末を樹脂製ポットに入れ、硬質ZrO2 ボールを用いて湿式ボールミル混合を18時間行った。なお、混合を行う際、バインダーとしてポリビニルアルコールを1重量%添加した。
【0043】
その後、スラリーを取り出して乾燥し造粒した後、造粒粉を冷間静水圧プレスにて3トン/cm2 の圧力で成形し、直径100mm、厚さ8mmの円盤状の成形体を得た。さらに得られた成形体を大気中にて800℃まで1℃/分にて昇温し、800〜1300℃まで3℃/分にて昇温した。その後1300℃にて5時間保持を行った。
【0044】
得られた焼結体の密度をアルキメデス法で測定した。また、同試料を用いて熱腐食し、SEM観察によって平均結晶粒径、空孔径を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0045】
また、得られた焼結体を直径75mm、厚さ6mmの円盤状に加工してスパッタリング用ターゲットを作製し、このターゲットを用いてDCマグネトロンスパッタリング法によって膜厚5000オングストロームの成膜を行った。スパッタリング条件は投入電力200W、Arガス圧0.7Paに固定した。そして実験開始から10時間経過後の10分間あたりに発生する異常放電回数、さらに成膜初期における基板温度が室温時の比抵抗値と、550、1000nm波長域における透過率を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0046】
[実施例2]
共沈法によって作製されたZnO−40重量%B23水酸化物を700℃3時間にて仮焼して得た平均一次粒子径が0.5μmの複合化粉末を1重量%、平均一次粒子径が0.1μmのZnO粉末中に添加し、さらに平均一次粒子径が0.1μmのIn23粉末を5重量%添加して原料粉末とした。
【0047】
この原料粉末を樹脂製ポットに入れ、硬質ZrO2 ボールを用いて湿式ボールミル混合を18時間行った。なお、混合を行う際、バインダーとしてポリビニルアルコールを1重量%添加した。
【0048】
その後、スラリーを取り出して乾燥し造粒した後、造粒粉を冷間静水圧プレスにて3トン/cm2 の圧力で成形し、直径100mm、厚さ8mmの円盤状の成形体を得た。さらに得られた成形体を大気中にて800℃まで1℃/分にて昇温し、800〜1300℃まで3℃/分にて昇温した。その後1300℃にて5時間保持を行った。
【0049】
得られた焼結体について実施例1と同様の測定および試験を行い、その結果を表1に示した。
【0050】
[実施例3]
共沈法によって作製されたZnO−40重量%B23水酸化物を700℃3時間にて仮焼して得た平均一次粒子径が0.5μmの複合化粉末を2重量%、平均一次粒子径が0.1μmのZnO粉末中に添加し、平均一次粒子径が0.1μmのIn23粉末を5重量%添加して原料粉末とした。
【0051】
この原料粉末を樹脂製ポットに入れ、硬質ZrO2 ボールを用いて湿式ボールミル混合を18時間行った。なお、混合を行う際、バインダーとしてポリビニルアルコールを1重量%添加した。
【0052】
その後、スラリーを取り出して乾燥し造粒した後、造粒粉を冷間静水圧プレスにて3トン/cm2 の圧力で成形し、直径100mm、厚さ8mmの円盤状の成形体を得た。さらに得られた成形体を大気中にて800℃まで1℃/分にて昇温し、800〜1300℃まで3℃/分にて昇温した。その後、1300℃にて5時間の保持を行った。
【0053】
得られた焼結体について実施例1と同様の測定および試験を行い、その結果を表1に示した。
【0054】
[実施例4]
平均一次粒子径0.1μmからなるZnO粉末中に平均一次粒子径0.1μmからなるIn23粉末を5重量%、そして平均一次粒子径0.1μmからなるGeO2 粉末を1.1重量%添加して原料粉末とした。この原料粉末を樹脂製ポットに入れ、硬質ZrO2 ボールを用いて湿式ボールミル混合を18時間行った。また混合を行う際、バインダーとしてポリビニルアルコールを1重量%添加した。その後、スラリーを取り出して、乾燥し造粒した後、造粒粉を冷間静水圧プレスにて3トン/cm2 の圧力で成形し、直径100mm厚さ8mmの円盤状の成形体を得た。さらに得られた成形体を大気中にて800℃まで1℃/分にて昇温し、800〜1300℃まで3℃/分にて昇温した。その後1300℃にて5時間の保持を行った。
【0055】
得られた焼結体について実施例1と同様の測定および試験を行い、その結果を表1に示した。
【0056】
[実施例5]
平均一次粒子径0.1μmからなるZnO粉末中に平均一次粒子径0.1μmからなるIn23粉末を5重量%、そして平均粒径0.1μmからなるGa23粉末を1.1重量%添加して原料粉末とした。この原料粉末を樹脂製ポットに入れ、硬質ZrO2 ボールを用いて湿式ボールミル混合を18時間行った。また混合を行う際、バインダーとしてポリビニルアルコールを1重量%添加した。その後、スラリーを取り出して、乾燥し造粒した後、造粒粉を冷間静水圧プレスにて3トン/cm2 の圧力で成形し、直径100mm厚さ8mmの円盤状の成形体を得た。さらに得られた成形体を大気中にて800℃まで1℃/分にて昇温し、800〜1300℃まで3℃/分にて昇温した。その後1300℃にて5時間の保持を行った。
【0057】
得られた焼結体について実施例1と同様の測定および試験を行い、その結果を表1に示した。
【0058】
[実施例6]
平均一次粒子径0.1μmからなるZnO粉末中に平均一次粒子径0.1μmからなるIn23粉末を5重量%、そして平均一次粒子径が0.1μmのAl23を0.6重量%添加して原料粉末とした。この原料粉末を樹脂製ポットに入れ、硬質ZrO2 ボールを用いて湿式ボールミル混合を18時間行った。また混合を行う際、バインダーとしてポリビニルアルコールを1重量%添加した。その後、スラリーを取り出して、乾燥し造粒した後、造粒粉を冷間静水圧プレスにて3トン/cm2 の圧力で成形し、直径100mm厚さ8mmの円盤状の成形体を得た。さらに得られた成形体を大気中にて800℃まで1℃/分にて昇温し、800〜1300℃まで3℃/分にて昇温した。その後1300℃にて5時間の保持を行った。得られた焼結体について実施例1と同様の測定および試験を行い、その結果を表1に示した。
【0059】
[実施例7]
平均一次粒子径0.1μmからなるZnO粉末中に平均一次粒子径0.1μmからなるIn23粉末を5重量%、そして平均一次粒子径が0.1μmのSiO2 を0.6重量%添加して原料粉末とした。この原料粉末を樹脂製ポットに入れ、硬質ZrO2 ボールを用いて湿式ボールミル混合を18時間行った。また混合を行う際、バインダーとしてポリビニルアルコールを1重量%添加した。その後、スラリーを取り出して、乾燥し造粒した後、造粒粉を冷間静水圧プレスにて3トン/cm2 の圧力で成形し、直径100mm厚さ8mmの円盤状の成形体を得た。さらに得られた成形体を大気中にて800℃まで1℃/分にて昇温し、800〜1300℃まで3℃/分にて昇温した。その後1300℃にて5時間の保持を行った。得られた焼結体について実施例1と同様の測定および試験を行い、その結果を表1に示した。
【0060】
[実施例8]
平均一次粒子径0.1μmからなるZnO粉末中に平均一次粒子径0.1μmからなるIn23粉末を5重量%、そして平均一次粒子径が0.1μmのTiO2 を1.0重量%添加して原料粉末とした。この原料粉末を樹脂製ポットに入れ、硬質ZrO2 ボールを用いて湿式ボールミル混合を18時間行った。また混合を行う際、バインダーとしてポリビニルアルコールを1重量%添加した。その後、スラリーを取り出して、乾燥し造粒した後、造粒粉を冷間静水圧プレスにて3トン/cm2 の圧力で成形し、直径100mm厚さ8mmの円盤状の成形体を得た。さらに得られた成形体を大気中にて800℃まで1℃/分にて昇温し、800〜1300℃まで3℃/分にて昇温した。その後1300℃にて5時間の保持を行った。得られた焼結体について実施例1と同様の測定および試験を行い、その結果を表1に示した。
【0061】
[実施例9]
平均一次粒子径0.1μmからなるZnO粉末中に平均一次粒子径0.1μmからなるIn23粉末を5重量%、そして平均一次粒子径が0.1μmのSnO2 を1.8重量%添加して原料粉末とした。この原料粉末を樹脂製ポットに入れ、硬質ZrO2 ボールを用いて湿式ボールミル混合を18時間行った。混合を行う際に、バインダーとしてポリビニルアルコールを1重量%添加した。その後、スラリーを取り出して、乾燥し造粒した後、造粒粉を冷間静水圧プレスにて3トン・cm2 の圧力で成形し、直径100mm、厚さ8mmの円盤状の成形体を得た。さらに、得られた成形体を大気中にて800℃まで1℃/分にして昇温し、800〜1300℃まで3℃/分にて昇温した。その後、1300℃にて5時間の保持を行った。得られた焼結体について実施例1と同様の測定および試験を行い、その結果を表1に示した。
【0062】
【表1】
Figure 0004092764
【0063】
【発明の効果】
本発明のZnO系焼結体は、以上のように構成されているので、DCスパッタリング中の異常放電の発生が長期にわたって少なく、特性のすぐれた透明導電性膜を効率よく安価に成膜できる。

Claims (6)

  1. 平均粒径1μm以下の原料酸化物粉末を混合し、成形し、得られた成形体を、600〜1300℃の温度範囲における昇温速度を1〜10℃/分、焼結温度を1000〜1500℃とする条件で、焼結させることにより得られ、Inを3〜6原子%、および、Al、B、Ga、Ge、Si、SnおよびTiからなる群より選ばれた1種以上の第3元素を0.3〜3原子%含有し、亜鉛とインジウムと前記第3元素の複合酸化物からなり、焼結密度が4.8g/cm 3 以上であり、かつ、複合酸化物の結晶平均粒径が4〜15μmであることを特徴とするZnO系焼結体。
  2. 内部に存在する空孔の最大径が5μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のZnO系焼結体。
  3. Inを3〜6原子%、および、Al、B、Ga、Ge、Si、SnおよびTiからなる群より選ばれた1種以上の第3元素を0.3〜3原子%含有し、亜鉛とインジウムと前記第3元素の複合酸化物からなるZnO系焼結体を得るための製造方法であって、平均粒径1μm以下の原料酸化物粉末を混合し、成形し、得られた成形体を、600〜1300℃の温度範囲における昇温速度を1〜10℃/分、焼結温度を1000〜1500℃とする条件で、焼結させる工程を含むことを特徴とするZnO系焼結体の製造方法。
  4. 前記昇温工程において、2〜20リットル/分の酸素流量で、酸素を導入することを特徴とする請求項3に記載のZnO系焼結体の製造方法。
  5. 前記昇温工程後の焼結工程において、不活性ガスを導入することを特徴とする請求項3に記載のZnO系焼結体の製造方法。
  6. 前記混合工程を、混合時間を12〜72時間とする湿式ボールミルもしくは混合時間を8〜24時間とする乾式ボールミルにより行うことを特徴とする請求項3に記載のZnO系焼結体の製造方法。
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