JP4086439B2 - アミン系触媒の回収方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アミン系触媒の回収方法に関し、さらに詳しくは回収率に優れ、回収したアミン系触媒の純度も良好な回収方法および回収したアミン系触媒を用いた色相、耐熱性の良好なポリカーボネート樹脂を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は光学的特性、機械的特性、電気的特性等各種特性に優れているため、電気分野、自動車分野、食品分野、マルチメディア記録媒体等の光学分野等に幅広く使用され、その需要は年々増加する傾向にある。その需要に対応するためにポリカーボネート樹脂の生産量も増加している。
【0003】
ポリカーボネート樹脂の製造方法としては、縮重合反応が主として採用されており、また、ポリカーボネート樹脂の縮重合反応にアミン系触媒を用いることが多い。この際、使用したアミン系触媒は重合反応終了後のポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液に溶解残存しており、このアミン系触媒が有機溶媒溶液中に残存すると、ポリカーボネート樹脂の色相や耐熱性が悪化するため、通常有機溶媒溶液中に酸性水溶液を加えて混合して、有機溶媒溶液中のアミン系触媒を酸性水溶液で抽出して、該有機溶媒溶液中のアミン系触媒を除去し、アミン系触媒を抽出した酸性水溶液はアルカリで中和し、工場排水として河川や海に廃棄する方法が行われている。
【0004】
しかしながら、その工場排水中に残存する使用済みアミン系触媒の廃棄量は、ポリカーボネート樹脂の生産量の増大とともに比例的に増大しており、環境保全の点からも経済的な点からも好ましくない。従って、ポリカーボネート樹脂の製造に用いたアミン系触媒を再利用可能な純度で効率良く回収する方法の開発が望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ポリカーボネート樹脂の製造に用いたアミン系触媒を、効率良く回収する方法及び回収したアミン系触媒を用いて品質の良好なポリカーボネート樹脂を製造する方法を提供することである。
【0006】
本発明者は、上記目的を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、アミン系触媒を含有する重合終了後のポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液を、酸抽出工程、アルカリ添加工程および蒸留工程の順に処理することによって、驚くべきことに高純度のアミン系触媒を効率良く回収することができ、さらに、回収したアミン系触媒を用いて製造したポリカーボネート樹脂は市販の高純度のアミン系触媒を用いて製造したポリカーボネート樹脂と同等の品質であることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明によれば、第三級アミン触媒を用いてポリカーボネート樹脂を製造し、重合終了後のポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液から第三級アミン触媒を回収するにあたり、下記工程
(1)重合終了後のポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液から、第三級アミン触媒をpH6以下の酸性水溶液により酸抽出する工程(A工程)、
(2)酸抽出した水溶液にアルカリを加え、水溶液をpH7.5〜13.8にする工程(B工程)および
(3)得られたpH7.5〜13.8の水溶液を蒸留し、第三級アミン触媒を回収する工程(C工程)
からなることを特徴とする第三級アミン触媒の回収方法が提供される。
【0008】
本発明の回収方法において、対象とするアミン系触媒は、その常圧沸点がポリカーボネート樹脂の重合の際の反応温度を越え98℃以下が好ましく、30℃〜98℃の範囲のものがより好ましい。具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の第三級アミンが好ましく、特にトリエチルアミン(常圧沸点89.4℃)が好ましく用いられる。アミン系触媒の常圧沸点が上記範囲内である場合には、重合反応中に触媒が蒸発せず、また、アミン系触媒を蒸留して回収する際に、設備が簡単で高純度のアミン系触媒が効率良く回収し易くなり好ましい。
【0009】
本発明は、アミン系触媒を用いてポリカーボネート樹脂を製造し、重合終了後のアミン系触媒を含有するポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液を、下記A工程〜C工程によってアミン系触媒を効率良く回収することができる。以下、各工程について説明する。
【0010】
A工程;この工程は、重合終了後のポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液から、アミン系触媒を酸性水溶液により酸抽出する工程である。重合終了後のポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液に酸性水溶液を加えて、攪拌混合した後、有機溶媒溶液と酸性水溶液とを静置してあるいは遠心分離機等により分離することで、有機溶媒溶液中のアミン系触媒が酸性水溶液へ抽出される。ここで酸抽出に使用される酸としては無機酸および有機酸のどちらも使用され、例えば燐酸、酢酸、硫酸、塩酸等が好ましく、硫酸、塩酸が特に好ましく用いられる。
【0011】
酸抽出に使用される酸性水溶液のpHは6以下が好ましく、pH1.2〜6がより好ましく、pH2〜4がさらに好ましい。かかる範囲内の酸性水溶液を使用すると、次のB工程で使用するアルカリ量が適量となり、また、ポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液中から十分にアミン系触媒が抽出され、得られるポリカーボネート樹脂の色相及び耐熱性が良好となり好ましい。
【0012】
酸抽出に使用される酸性水溶液の量は、ポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液1容量部に対して0.1〜20容量部が好ましく、0.2〜10容量部がより好ましく、0.2〜5.0容量部が更に好ましく、0.2〜4.0容量部が特に好ましい。酸性水溶液の水量が、ポリカーボネート樹脂有機溶媒溶液1容量部に対して0.1〜20容量部の範囲で使用する場合は、有機溶媒溶液中から十分にアミン系触媒が抽出され、得られるポリカーボネート樹脂の色相及び耐熱性が良好となり好ましく、また、B工程で使用するアルカリ量が適量であり、C工程において蒸留する際の熱エネルギーが多量でなく特別な装置を必要とせず操作が簡便となり好ましい。
【0013】
B工程;この工程は、前記A工程で得られた酸抽出した水溶液に、アルカリを加え水溶液をpH7.5〜13.8にする工程である。このB工程においては、酸に溶解しているアミン系触媒を、アルカリを加えることにより遊離させる。
【0014】
使用されるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物等が挙げられ、特に水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。これらはそのままあるいは水溶液として使用することができる。アルカリを加えた後の水溶液のpHは7.5〜13.8であり、pH9〜13.5が好ましく、pH10〜13.5がより好ましい。アルカリを加えた後の水溶液のpHが7.5未満の場合はアミン系触媒の回収率が低下するので好ましくなく、13.8を越えるとC工程で蒸留した水溶液を中和して排水する際に用いる酸の使用量が多量となり工業的に好ましくない。
【0015】
C工程;この工程は、前記B工程で得られたpH7.5〜13.8の水溶液を蒸留し、アミン系触媒を回収する工程である。このC工程においては、かかる水溶液から蒸留によりアミン系触媒を回収する。使用される蒸留装置としては、充填塔や棚段塔等の精留塔が好ましく用いられる。蒸留における還流比は0.2〜5が好ましく、1〜4がより好ましい。かかる範囲の還流比で蒸留する場合は、純度の高いアミン系触媒が得られ易く、また、多量の熱エネルギーを必要とせず、操作が簡便で工業的に好ましい。
【0016】
本発明によって回収されたアミン系触媒は、高純度であり、ポリカーボネート樹脂の製造の際の触媒として再利用できる。かかる回収したアミン系触媒を用いて製造したポリカーボネート樹脂は、市販の高純度のアミン系触媒を用いて製造したポリカーボネート樹脂と同等の品質となる。
【0017】
本発明の対象とするポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを界面縮重合法で反応させて得られるものである。ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4′−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4′−ジヒドロキシジフェニルエステル等があげられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。
【0018】
なかでもビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選ばれた少なくとも1種のビスフェノールより得られる単独重合体または共重合体が好ましく、特に、ビスフェノールAの単独重合体および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンとビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパンまたはα,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンとの共重合体が好ましく使用される。
【0019】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライドまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲンまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0020】
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重縮合法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、通常触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止剤等が使用される。また、ポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよく、また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0021】
界面重縮合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤、触媒および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、ブロモエタン、ブチルクロライド、クロロプロパンおよびクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられ、特に塩化メチレンが好ましく用いられる。これらの溶媒は単独もしくは2種以上混合して使用される。また、反応促進のために用いるアミン系触媒としては、例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒が挙げられる。なかでも、その常圧沸点が反応温度を越え98℃以下のものが好ましく、常圧沸点30℃〜98℃のものがより好ましく、特にトリエチルアミンが好ましく用いられる。界面重縮合法による反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つことが好ましい。
【0022】
また、かかる重合反応において、通常末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られたポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。かかる単官能フェノール類としては、一般にはフェノール又は低級アルキル置換フェノールであって、下記式(1)で表される単官能フェノール類を示すことができる。
【0023】
【化1】
【0024】
[式中、Aは水素原子、炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基あるいはアリールアルキル基であり、rは1〜5、好ましくは1〜3の整数である。]
上記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。
【0025】
また、他の単官能フェノール類としては、長鎖のアルキル基あるいは脂肪族ポリエステル基を置換基として有するフェノール類または安息香酸クロライド類、もしくは長鎖のアルキルカルボン酸クロライド類を使用することができ、これらを用いてポリカーボネート共重合体の末端を封鎖すると、これらは末端停止剤または分子量調節剤として機能するのみならず、樹脂の溶融流動性が改良され、成形加工が容易になるばかりでなく、殊に光学ディスク基板としての物性、特に樹脂の吸水率を低くする効果があり、また、基板の複屈折が低減される効果もあり好ましく使用される。なかでも、下記式(2)および(3)で表される長鎖のアルキル基を置換基として有するフェノール類が好ましく使用される。
【0026】
【化2】
【0027】
【化3】
【0028】
[式中、Xは−R−O−、−R−CO−O−または−R−O−CO−である、ここでRは単結合または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、nは10〜50の整数を示す。]
かかる式(2)の置換フェノール類としてはnが10〜30、特に10〜26のものが好ましく、その具体例としては例えばデシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノール及びトリアコンチルフェノール等を挙げることができる。
【0029】
また、式(3)の置換フェノール類としてはXが−R−CO−O−であり、Rが単結合である化合物が適当であり、nが10〜30、特に10〜26のものが好適であって、その具体例としては例えばヒドロキシ安息香酸デシル、ヒドロキシ安息香酸ドデシル、ヒドロキシ安息香酸テトラデシル、ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、ヒドロキシ安息香酸エイコシル、ヒドロキシ安息香酸ドコシル及びヒドロキシ安息香酸トリアコンチルが挙げられる。
【0030】
これらの末端停止剤は、得られたポリカーボネート樹脂の全末端に対して少くとも5モル%、好ましくは少くとも10モル%末端に導入されることが望ましく、また、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
【0031】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、粘度平均分子量(M)で10,000〜100,000が好ましく、12,000〜50,000がより好ましく、13,000〜30,000が特に好ましい。かかる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂は、十分な強度が得られ、また、成形時の溶融流動性も良好であり成形歪みが発生せず好ましい。かかる粘度平均分子量は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4M0.83
c=0.7
【0032】
前記製造方法により得られたポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液は、前記A工程の酸抽出処理を行うことにより、アミン系触媒が酸性水溶液へ抽出される。
【0033】
かかる酸抽出処理されたポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液は、通常水洗浄が施される。有機溶媒溶液の水洗浄は、好ましくはイオン交換水等の電気伝導度10μS/cm以下、より好ましくは1μS/cm以下の水により行われ、かかる有機溶媒溶液と水とを混合、攪拌した後、静置してあるいは遠心分離機等を用いて、有機溶媒溶液相と水相とを分液させ、有機溶媒溶液相を取り出すことを繰り返し行い、水溶性不純物を除去する。水洗浄を行うことにより水溶性不純物が除去され、得られるポリカーボネート樹脂の色相は良好なものとなる。
【0034】
また、上記有機溶媒溶液は不溶性不純物である異物を除去することが好ましく行われる。この異物を除去する方法は、濾過する方法あるいは遠心分離機で処理する方法が好ましく採用される。
【0035】
有機溶媒溶液を濾過する方法において、濾過に用いるフィルターは、有機溶媒溶液に耐えうる材質であり、例えばセルロース製、セラミック製、ポリオレフィン系樹脂製および銅・ステンレス等の金属製等の材質のものが挙げられる。また、フィルターの濾過精度は0.3〜5μmが好ましく、0.3〜2μmがより好ましく、0.3〜1.5μmがさらに好ましく、0.3〜1μmが特に好ましい。濾過精度が上記範囲のフィルターは、濾過効率が適度であり、また、ポリカーボネート樹脂中の異物量が十分に低減され好ましく使用される。
【0036】
また、有機溶媒溶液を遠心分離機で処理する方法において、その遠心効果は500〜15000Gの範囲が好ましい。かかる範囲内であると有機溶媒溶液中の異物を極めて少なくでき、また機械強度面からの材質選定が容易であり好ましい。
【0037】
前記有機溶媒溶液は、溶媒を除去して、粉粒体の固形物とし、この固形物を乾燥して、ポリカーボネート樹脂粉粒体を得ることができ、さらに好ましくはこの固形物を溶融押し出しして、ペレット化させる。このペレットは成形用に好ましく供される。
【0038】
本発明により得られるポリカーボネート樹脂は、難燃剤、熱安定剤(リン酸エステル、亜リン酸エステル等)、離型剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、染顔料等の着色剤、抗菌剤、ガラス繊維、炭素繊維等の強化剤、他の樹脂等を適宜添加して用いることができる。
【0039】
また、本発明の回収方法により回収されたアミン系触媒を用いて得られるポリカーボネート樹脂は、通常のポリカーボネート樹脂と色相や熱安定性等の品質において差がなく、通常のポリカーボネート樹脂と同等の分野、例えば光学分野、精密機器分野、自動車分野及び食品分野等多くの分野に好適に使用できる。
【0040】
【実施例】
以下、実施例にしたがって、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、評価は次に示す方法で行った。(1)ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量
ポリカーボネート樹脂0.7gを塩化メチレン100mlに溶解し、20℃で測定した比粘度より求めた。
(2)触媒回収率
触媒回収率は下記式より算出した。
触媒回収率(重量%)=(蒸留後に得られたトリエチルアミン量)/(重合反応に使用したトリエチルアミン量)×100
(3)触媒純度
トリエチルアミンをGC(日立263-70、カラム:PEG-20M)を用いて分析し、ガスクロチャートから算出した。
(4)色相(b値)
得られたポリカーボネート樹脂ペレットを射出成形機(日本製鋼所(株)製:日鋼アンカー V−17−65型)を用い、シリンダー温度340℃で可塑化後、厚さ2mmの50mm角板を成形した。その成形板を色差計(日本電色(株)製)を用いてb値を測定した。
(5)熱安定性(△E)
得られたポリカーボネート樹脂ペレットを射出成形機(日本製鋼所(株)製:日鋼アンカー V−17−65型)を用い、シリンダー温度340℃で10分間滞留させたものとさせないものの試験片(厚さ2mmの50mm角板)をそれぞれ作成し、その色相の変化(△E)を測定した。色相の変化は、色差計(日本電色(株)製)でそれぞれのL、a、b値を測定し、下記式を用いて算出した。
ΔE=[(L′−L)2+(a′−a)2+(b′−b)2]1/2
(L、a、bは滞留させないもの、L′、a′、b′は10分間滞留させたもの)
【0041】
[参照例1]
温度計、攪拌機及び還流冷却器付き反応器にイオン交換水219.4部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液40.2部を仕込み、これに2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン57.5部およびハイドロサルファイト0.12部を溶解した後、塩化メチレン181部を加え、攪拌下15〜25℃でホスゲン28.3部を40分要して吹込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、48重量%水酸化ナトリウム水溶液7.2部およびp−tert−ブチルフェノール2.42部を加え、攪拌を始め、乳化後市販の純度99.9%のトリエチルアミン0.06部を加え、さらに28〜33℃で1時間攪拌して反応を終了した。反応終了後の生成物に塩化メチレン400部を加えて希釈した。
【0042】
この塩化メチレン溶液495容量部にpH3.0の塩酸水溶液150容量部を加えて、トリエチルアミンを酸抽出し、次いで、塩化メチレン溶液をイオン交換水で洗浄し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで、塩化メチレン溶液をSUS304製の濾過精度1μmフィルターで濾過した。
【0043】
次に、このポリカーボネート樹脂塩化メチレン溶液を、軸受け部に異物取出口を有する隔離室を設けたニーダー中の75℃の温水に滴下し、塩化メチレンを留去しながらポリカーボネート樹脂をフレーク化した。次にこの含液したポリカーボネート樹脂を粉砕、145℃で4時間乾燥し、粘度平均分子量15,000のパウダーを得た。このパウダーにトリスノニルフェニルホスファイトを0.01重量%、トリメチルホスフェートを0.01重量%、ステアリン酸モノグリセリドを0.1重量%加え混合した。次に、かかるパウダーをベント式二軸押出機[神戸製鋼(株)製KTX-46]によりシリンダー温度260℃、真空度0.67kPa(5mmHg)で脱気しながら溶融混練しペレットを得た。このペレットを用いて評価した結果を表1に示した。
【0044】
[参照例2]
参照例1において、p−tert−ブチルフェノールの量を1.55部に変更し、ベント式二軸押出機のシリンダー温度を280℃に変更した以外は参照例1と同様の方法でペレットを得た。このペレットを用いて評価した結果を表1に示した。
【0045】
[実施例1]
参照例1で得られた反応終了後の生成物に塩化メチレン400部を加えて希釈した塩化メチレン溶液495容量部に、pH3.0の塩酸水溶液150容量部を加え、攪拌混合し、塩化メチレン溶液中のトリエチルアミンを酸抽出させた。混合後、溶液を静置して塩化メチレン溶液と塩酸水溶液とを分離し、塩酸水溶液を取り出した(A工程)。次に、この塩酸水溶液に48重量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて、水溶液のpHを13とした(B工程)。この水溶液を段数9段の精留塔を用いて、還流比3で蒸留して留出物を得た。さらにこの留出物を9段の精留塔を用い、還流比3で蒸留し、純度99.0%のトリエチルアミンを得た(C工程)。トリエチルアミンの回収率は92重量%であった。さらに、得られたトリエチルアミン0.061部を用いて、参照例1と同様の方法でポリカーボネート樹脂を製造し、ペレットを得た。このペレットを用いて評価した結果を表1に示した。
【0046】
[実施例2]
実施例1のB工程において、48重量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて、水溶液のpHを10とした以外は、実施例1と同様の方法でトリエチルアミンを得た。このトリエチルアミンは純度99.0%であり、その回収率は92重量%であった。さらに、得られたトリエチルアミン0.061部を用いて、参照例1と同様の方法でポリカーボネート樹脂を製造し、ペレットを得た。このペレットを用いて評価した結果を表1に示した。
【0047】
[実施例3]
参照例1で得られた反応終了後の生成物に塩化メチレン400部を加えて希釈した塩化メチレン溶液495容量部に、pH5.5の塩酸水溶液150容量部を加え、攪拌混合し、塩化メチレン溶液中のトリエチルアミンを酸抽出させた。混合後、溶液を静置して塩化メチレン溶液と塩酸水溶液とを分離し、塩酸水溶液を取り出した(A工程)。次に、この塩酸水溶液に48重量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて、水溶液のpHを13とした(B工程)。この水溶液を段数9段の精留塔を用いて、還流比3で蒸留して留出物を得た。さらにこの留出物を9段の精留塔を用い、還流比3で蒸留し、純度99.0%のトリエチルアミンを得た(C工程)。トリエチルアミンの回収率は90重量%であった。さらに、得られたトリエチルアミン0.061部を用いて、参照例1と同様の方法でポリカーボネート樹脂を製造し、ペレットを得た。このペレットを用いて評価した結果を表1に示した。
【0048】
[実施例4]
参照例2で得られた反応終了後の生成物に塩化メチレン400部を加えて希釈した塩化メチレン溶液495容量部に、pH3.0の塩酸水溶液150容量部を加え、攪拌混合し、塩化メチレン溶液中のトリエチルアミンを酸抽出させた。混合後、溶液を静置して塩化メチレン溶液と塩酸水溶液とを分離し、塩酸水溶液を取り出した(A工程)。次に、この塩酸水溶液に48重量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて、水溶液のpHを13とした(B工程)。この水溶液を段数9段の精留塔を用いて、還流比3で蒸留して留出物を得た。さらにこの留出物を9段の精留塔を用い、還流比3で蒸留し、純度99.0%のトリエチルアミンを得た(C工程)。トリエチルアミンの回収率は92重量%であった。さらに、得られたトリエチルアミン0.061部を用いて、参照例2と同様の方法でポリカーボネート樹脂を製造し、ペレットを得た。このペレットを用いて評価した結果を表1に示した。
【0049】
[実施例5]
参照例1で得られた反応終了後の生成物に塩化メチレン400部を加えて希釈した塩化メチレン溶液495容量部に、pH5.5の塩酸水溶液150容量部を加え、攪拌混合し、塩化メチレン溶液中のトリエチルアミンを酸抽出させた。混合後、溶液を静置して塩化メチレン溶液と塩酸水溶液とを分離し、塩酸水溶液を取り出した(A工程)。次に、この塩酸水溶液に48重量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて、水溶液のpHを10とした(B工程)。この水溶液を段数9段の精留塔を用いて、還流比3で蒸留して留出物を得た。さらにこの留出物を9段の精留塔を用い、還流比3で蒸留し、純度99.0%のトリエチルアミンを得た(C工程)。トリエチルアミンの回収率は89重量%であった。さらに、得られたトリエチルアミン0.061部を用いて、参照例2と同様の方法でポリカーボネート樹脂を製造し、ペレットを得た。このペレットを用いて評価した結果を表1に示した。
【0050】
[比較例1]
参照例1で得られた反応終了後の生成物に塩化メチレン400部を加えて希釈した塩化メチレン溶液495容量部に、pH3.0の塩酸水溶液150容量部を加え、攪拌混合し、塩化メチレン溶液中のトリエチルアミンを酸抽出させた。混合後、溶液を静置して塩化メチレン溶液と塩酸水溶液とを分離し、塩酸水溶液を取り出した(A工程)。次に、この塩酸水溶液に48重量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて、水溶液のpHを7.0とした。この水溶液を段数9段の精留塔を用いて、還流比3で蒸留して留出物を得た。さらにこの留出物を9段の精留塔を用い、還流比3で蒸留し、純度99.0%のトリエチルアミンを得た(C工程)。トリエチルアミンの回収率は50重量%以下であった。また、得られたトリエチルアミン0.061部を用いて、参照例1と同様の方法でポリカーボネート樹脂を製造し、ペレットを得た。このペレットを用いて評価した結果を表1に示した。
【0051】
[比較例2]
参照例1で得られた反応終了後の生成物に塩化メチレン400部を加えて希釈した塩化メチレン溶液495容量部に、pH6.5の塩酸水溶液150容量部を加え、攪拌混合した。混合後、溶液を静置して塩化メチレン溶液と塩酸水溶液とを分離し、塩酸水溶液を取り出した。次に、この塩酸水溶液に48重量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて、水溶液のpHを10とした(B工程)。この水溶液を段数9段の精留塔を用いて、還流比3で蒸留して留出物を得た。さらにこの留出物を9段の精留塔を用い、還流比3で蒸留し、純度99.0%のトリエチルアミンを得た(C工程)。トリエチルアミンの回収率は50重量%以下であった。また、上記静置分離後の塩化メチレン溶液を、参照例1と同様の方法で処理し、ペレットを得た。このペレットは焼けがひどく、b値およびΔEの測定はできなかった。
【0052】
[比較例3]
参照例2で得られた反応終了後の生成物に塩化メチレン400部を加えて希釈した塩化メチレン溶液495容量部に、pH3.0の塩酸水溶液150容量部を加え、攪拌混合し、塩化メチレン溶液中のトリエチルアミンを酸抽出させた。混合後、溶液を静置して塩化メチレン溶液と塩酸水溶液とを分離し、塩酸水溶液を取り出した(A工程)。次に、この塩酸水溶液に48重量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて、水溶液のpHを7.0とした。この水溶液を段数9段の精留塔を用いて、還流比3で蒸留して留出物を得た。さらにこの留出物を9段の精留塔を用い、還流比3で蒸留し、純度99.0%のトリエチルアミンを得た(C工程)。トリエチルアミンの回収率は50重量%以下であった。また、得られたトリエチルアミン0.061部を用いて、参照例2と同様の方法でポリカーボネート樹脂を製造し、ペレットを得た。このペレットを用いて評価した結果を表1に示した。
【0053】
【表1】
【0054】
【発明の効果】
本発明のアミン系触媒の回収方法は、高純度のアミン系触媒を効率良く回収でき、環境保全の点からあるいは経済的な点から優れた方法であり、また、回収されたアミン系触媒を用いて得られたポリカーボネート樹脂は、色相、熱安定性等の品質面で良好であり、その奏する工業的効果は格別である。
Claims (2)
- 第三級アミン触媒を用いてポリカーボネート樹脂を製造し、重合終了後のポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液から第三級アミン触媒を回収するにあたり、下記工程(1)重合終了後のポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液から、第三級アミン触媒をpH6以下の酸性水溶液により酸抽出する工程(A工程)、(2)酸抽出した水溶液にアルカリを加え、水溶液をpH7.5〜13.8にする工程(B工程)および(3)得られたpH7.5〜13.8の水溶液を蒸留し、第三級アミン触媒を回収する工程(C工程)からなることを特徴とする第三級アミン触媒の回収方法。
- 請求項1に記載された回収方法により回収した第三級アミン触媒を、ポリカーボネート樹脂の製造における触媒として用いることを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
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