JP4083972B2 - ドライブ装置収納ケース - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気ディスク装置等のドライブ装置を携帯又は搬送する際に外部衝撃及び振動からドライブ装置を保護するドライブ装置収納ケースに関し、特に、ドライブ装置をドライブ装置収納ケースに収納したまま外部機器に接続して動作させる場合において、ドライブ装置収納ケースの外部に漏洩するドライブ装置の動作音を低減させ静音運転を可能にする吸音型のドライブ装置収納ケースに関する。
【0002】
【従来の技術】
大容量化及び低コスト化が進む磁気ディスク装置は、近時、その適用範囲を家電分野にまで広げており、例えば高精細デジタル放送に対応したハイビジョン用録画再生装置の記録メディアとしての利用方法等が提案されている。
【0003】
これは高精細デジタル放送の長時間録画を行うために、大容量の記録メディアが必要になるためであり、またデジタル放送特有の多チャンネル同時記録、特殊再生、タイムシフト視聴及びタイムフリー視聴等の利用法を可能にするためには、磁気ディスク装置の高速スループット性能が不可欠となるためである。
【0004】
図11(a)は、従来の磁気ディスク装置の構成を示す斜視図である。磁気ディスク装置1には、筐体34及びドライブカバー2が設けられ、ドライブカバー2にはフッ素ゴムからなるガスケット(図示せず)が設けられている。筐体34内には、磁気情報を記憶する1又は複数枚の記録媒体15が設けられ、記録媒体15を回転させるスピンドルモータ14が筐体34に固定されている。スピンドルモータ14の回転軸は記録媒体15に連結されている。また、筐体34内には、記録媒体15に対して情報の記録及び再生を行う磁気ヘッド17、磁気ヘッド17を搭載する浮上型のスライダ(図示せず)及び前記スライダに連結しこれを記録媒体15の記録面に対向するように保持するアクチュエータ機構16が設けられている。磁気ディスク装置1において、記録媒体15に対して情報の記録又は再生を行う場合は、スピンドルモータ14が記録媒体15を毎分数千〜1万回転の回転数で高速回転させ、アクチュエータ機構16がスライダを介して磁気ヘッド17を記録媒体15の記録面上の任意のトラックへ位置決めし、磁気ヘッド17が記録媒体15に対して情報を記録又は再生する。
【0005】
コンピュータ分野で利用される磁気ディスク装置は、殆どの場合、コンピュータ機器に内蔵されるか又はコンピュータ機器の外部に固定的に設置されこのコンピュータ機器に接続されて使用されているが、映像用録画再生装置の記録メディアとして利用する場合には、録画したデジタル映像のライブラリ化を実現するためにドライブの可換性が要求されるようになる。図11(b)は、映像用録画再生装置18に記録メディアとして磁気ディスク装置1をローディングしている状態を示す斜視図である。
【0006】
また、可換性を有する磁気ディスクドライブとしては、例えば、Castlewood Systems,Inc.社製ORBのように、記録媒体のみを脱着させるタイプが既に市販されているが、記録媒体の挿抜に伴う埃の混入に起因する信頼性の低下及び媒体のチャッキング時のヘッド位置決め精度の限界から記憶容量が数GB〜10GB程度に制限される等の問題点がある。デジタル映像の大容量メディアは数十GB〜数百GB以上の容量が要求されるが、記録媒体のみを脱着させるタイプの磁気ディスクドライブはこの要求を十分満足するとはいえない。このため、映像用録画再生装置の記録メディアとして利用される磁気ディスク装置としては、図11(a)に示すようなドライブカバー2によって密閉された大容量磁気ディスク装置1の使用を前提としている。
【0007】
映像用録画再生装置の記録メディアとして磁気ディスク装置を使用する場合、次の4点が重要な設計課題として挙げられる。第1の課題は家庭内の深夜運転を考慮した静音性の向上、第2の課題はドライブの携帯及び搬送に耐えうる耐衝撃性能の確保、第3の課題は長時間の連続記録再生動作を可能にする放熱性の実現、第4の課題はライブラリ使用に対応できる小型化及び低コスト化の実現である。特に、静音性及び耐衝撃性については、映像用録画再生装置の記録メディア用の磁気ディスク装置は、従来のコンピュータ用の磁気ディスク装置に比べて格段に要求が厳しくなる。
【0008】
図12(a)及び(b)は従来の耐衝撃性を付与した磁気ディスク装置の構成を示す斜視図であり、図13は従来の耐衝撃性を付与した磁気ディスク装置の構成を示す断面図である。磁気ディスク装置は、その構造上、外部からの衝撃に弱く、床上落下等の取り扱いミスにより、ディスクシフト(媒体ずれ)、スピンドルモータの嵌合部分の破損、スライダの跳躍による媒体スラップ(Slap)及びHGA(Head Gimbal Assembly)の変形等の障害によって容易に起動不能に陥る。そのため、従来、図12(a)に示すようにドライブ装置(本従来例ではフロッピーディスク媒体19で例示)の下部に緩衝用弾性部材20a乃至20dを貼付する方法及び図12(b)に示すようにフロッピーディスク媒体19の角部に緩衝用弾性部材21a乃至21dを貼付する方法が考案されている。また、図13に示すように、コネクタ25を備えた搬送用の収納ケース22を設け、収納ケース22の内部に磁気ディスク装置1及び基板部23を設け、収納ケース22と磁気ディスク装置1との間にスポンジ等からなる緩衝材26a乃至26gを充填し、磁気ディスク装置1を衝撃から守る方法等が考案されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の技術には以下に示すような問題点がある。図12(a)及び(b)並びに図13に示す方法においては、ドライブ装置の作動時に発生する騒音を低減することが殆どできないという問題点がある。また、これらの方法では外部からの衝撃エネルギを緩衝材の変形により吸収する構造になるため、十分な緩衝効果を得るためには緩衝材のスペースを大きく取る必要があり、従って外形寸法が大きくなってドライブ装置の携帯性が犠牲になると共に保管スペースが大きくなる等の問題点がある。更に、緩衝材で梱包されたドライブ装置にドライブ装置自体が発生する熱が蓄積されエラーレートの増加等の高温障害を引き起こすという問題点がある。
【0010】
従来、ドライブ装置が内蔵又は接続されたパーソナルコンピュータをオフィス環境又はホームユースで利用する場合には、使用者が直接作業を行うため、ドライブ騒音はあまり問題視されていなかった。しかし、録画用の情報家電機器として磁気ディスク装置を使用する場合には、生活空間のバックグランドで運転を行うため、静音設計が商品価値を高める上で重要な課題となっている。
【0011】
特に、磁気ディスク装置に高速スループット性能を活用した多チャンネル録画及びタイムシフト視聴等の機能が付与されることにより、家庭内における磁気ディスク装置の動作時間は飛躍的に増大すると見られ、例えば深夜の長時間録画を行う場合でも、その動作音により居住者の睡眠が阻害されないように考慮した静音設計が望まれている。
【0012】
しかしながら、従来のパーソナルコンピュータ用ドライブユニットの騒音対策としては、DE(Disk Enclosure)の外壁に吸音材又は遮音材を直接貼付したり、制振鋼板をカバー及びDEの一部に利用したり、パーソナルコンピュータにおいて本体とドライブとの固定方法に除振効果を考慮するといった程度であり、こういった対策を施した場合でも、騒音低減の効果は数dB程度に留まっており十分な静音設計がなされていないのが現状である。
【0013】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、可換記録メディアとしての使用を前提とした磁気ディスク装置等のドライブ装置を収納するドライブ装置収納ケースであって、ドライブ騒音を抑制することができ、耐衝撃性及び放熱性が優れ、携帯性を考慮して小型に設計でき、且つ安価である吸音型のドライブ装置収納ケースを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るドライブ装置収納ケースは、ドライブ装置を収納するドライブ装置収納ケースにおいて、前記ドライブ装置を支持する枠体と、この枠体に連結され前記枠体と共に前記ドライブ装置を囲むハウジング部を構成する板状のパネルと、を有し、前記ドライブ装置を収納した際に前記ドライブ装置と前記パネルとの間に気体が充填された密閉空間が設けられることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、パネルを設け、このパネルとドライブ装置との間に気体が充填された密閉空間を形成することにより、パネルを質点、密閉空間に充填される気体を剛性とする質点−剛性系を形成し、ドライブ装置から発生する騒音の一部をこの質点−剛性系の振動に変換することにより、ドライブ装置から発生する騒音を吸音することができる。また、前記ドライブ装置収納ケースは、携帯及び搬送時に前記ドライブ装置収納ケースが外部から衝撃を受けた場合には、密閉空間の気体が緩衝材(ばね材)として作用して収納したドライブ装置を保護するため、耐衝撃性が優れている。更に、前記ドライブ装置収納ケースは構成が単純であるため安価で小型化が可能で、小型であるため放熱性が優れている。なお、前記気体は例えば空気であってもよい。
【0016】
また、前記気体と前記パネルとからなる系の共振周波数は、前記ドライブ装置が発生する騒音の周波数のうち少なくとも1つと一致していることが好ましい。
【0017】
前述の質点−剛性系において、音のエネルギ吸収が最大となるのは、その音の周波数が質点−剛性系の共振周波数と一致するときである。このとき、パネル自体が慣性を有し、ドライブ装置から発生する音響エネルギ、即ち騒音が効率良くパネルの運動エネルギに変換され、この運動エネルギが摩擦により熱エネルギに変換されて振動が減衰し、前記熱エネルギが散逸することにより、効率良く吸音することができる。前記共振周波数は、前記パネルの質量及び前記密閉空間における前記ドライブ装置と前記パネルとの間の距離を選択することにより、任意に選択することができる。
【0018】
本発明に係る他のドライブ装置収納ケースは、ドライブ装置を収納するドライブ装置収納ケースにおいて、前記ドライブ装置を支持する枠体と、この枠体に連結され前記枠体と共に前記ドライブ装置を囲むハウジング部を構成し貫通孔が設けられた板状のパネルと、を有し、前記ドライブ装置を収納した際に前記ドライブ装置と前記パネルとの間に空間が設けられることを特徴とする。
【0019】
これにより、ドライブ装置を前記ドライブ装置収納ケースに収納したとき、前記貫通孔と前記空間によりヘルムホルツ共鳴器が形成される。即ち、前記貫通孔がヘルムホルム共鳴器の首部として機能し、ドライブ装置とパネルとの間の空間に形成される媒質層(空気層)がヘルムホルム共鳴器の空洞部として機能し、これらが組み合わされてヘルムホルツ形の多孔吸音材を構成する。このため、磁気ディスク装置等のドライブ装置を前記ドライブ装置収納ケースに収納したまま外部機器に接続して動作させる場合において、前記ドライブ装置が発生する音響エネルギ(騒音)が、ドライブ装置とパネルとの間の空気を振動させ、パネルの貫通孔(首部)を通って出入りする媒質(空気)の運動エネルギに変換されることにより騒音の音響エネルギが散逸し、騒音を抑制することができる。また、前記ドライブ装置収納ケースは、携帯及び搬送時に前記ドライブ装置収納ケースが外部から衝撃を受けたときには、前記空間の空気が緩衝材(ばね材)として作用して収納したドライブ装置を保護するため、耐衝撃性が優れている。更に、前記ドライブ装置収納ケースは、前記パネルの媒質運動、即ち、空間内の空気が貫通孔を介して外部と出入する運動によりドライブ装置が発生する熱をケース内に蓄積することを回避することができるため放熱性が優れ、ドライブ装置をドライブ装置収納ケースに収納したままの連続運転にも十分対応することが可能になる。更にまた、前記ドライブ装置収納ケースは構成が単純であるため安価で小型化が可能である。
【0020】
また、前記貫通孔と前記空間からなる系の共振周波数は、前記ドライブ装置が発生する騒音の周波数のうち少なくとも1つと一致していることが好ましい。ヘルムホルム共鳴器はその共振周波数と同じ周波数の音を最も効果的に吸収することができるため、この共鳴周波数を騒音の周波数のうち少なくとも1つと一致させることにより、より効率良く騒音を吸音することができる。ヘルムホルム共鳴器の共振周波数は、前記貫通孔の直径と配列周期(以下、ピッチという)を選択することにより選択することができる。
【0021】
また、前記ドライブ装置は前記枠体と前記ドライブ装置との間に設けられた弾性部材により支持することができる。これにより、パネルとドライブ装置との間に形成される空間の密閉がより容易になると共に、前記弾性部材が緩衝材として機能するため、耐衝撃性がより向上する。
【0022】
更に、前記パネルと前記ドライブ装置との間に振動の減衰材を設けることができる。これにより、吸音効果がより増大する。前記減衰材は例えば多孔質材料から構成され、ドライブ装置側に貼付することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について添付の図面を参照して具体的に説明する。以下の説明では、衝撃及び振動から保護し動作騒音を抑制すべきドライブ装置の例として磁気ディスク装置を使用しているが、本発明の収納ケースに収納する対象物は、搬送又は携帯が要求され、且つ耐衝撃性の確保が命題となり、騒音抑制が要求される精密機器であれば特に限定されるものではない。
【0024】
先ず、本発明の第1の実施例について説明する。図1は、本実施例に係るドライブ装置収納ケースの構成を示す斜視図である。また、図2(a)は本実施例に係るドライブ装置収納ケースの組立て方法を示す斜視図であり、(b)はドライブ装置収納ケースの構成を示す断面図である。
【0025】
図1及び図2(a)に示すように、本実施例に係るドライブ装置収納ケース501は、ボトム側収納ケース301及びカバー側収納ケース401から構成され、ボトム側収納ケース301とカバー側収納ケース401との間に、ドライブカバー2によって密閉された磁気ディスク装置1を収納している。磁気ディスク装置1の構成は、図11(a)に示す従来の磁気ディスク装置1と同一である。なお、磁気ディスク装置1において主として騒音を発生する面(以下、騒音面という)は、図11(a)に示すドライブカバー2が配置されている面(以下、上面という)及びその反対面(以下、下面という)である。また、ボトム側収納ケース301は、収納ケース枠体701、薄い板状のパネル601及びフッ素ゴム等の弾性部材で構成されたガスケット801から構成されている。カバー側収納ケース401は、収納ケース枠体702、薄い板状のパネル602及びフッ素ゴム等の弾性部材で構成された802から構成されている。収納ケース枠体701及び702並びにパネル601及び602により、磁気ディスク装置1を囲むハウジング部が構成されている。
【0026】
収納ケース枠体701及び702は、図1に示すように、収納する磁気ディスク装置1の周囲を囲うような形で成形され、且つ、図2(a)に示すように、磁気ディスク装置1の上面及び下面に対向するように取り付けるパネル601及び602を固定し易いようにL字形に折り曲げられている。収納ケース枠体701及び702を構成する材料は、軽量なアルミ材又は板厚2mm以上のABS樹脂等が使用されるが、要はドライブ装置(磁気ディスク装置1)の騒音面、即ち、磁気ディスク装置1の上面及び下面に対向するように配置されるパネル601及び602の側部に接合され、パネル601及び602をしっかりと支持し固定できるような剛性を確保できるものであればなんでもよい。
【0027】
前述のように、ドライブ装置収納ケース501においては、収納した磁気ディスク装置1の騒音面、即ち上面及び下面に対向するように薄い板状のパネル602及び601が配置され、その側部は夫々収納ケース枠体702及び701に固定されている。パネル601及び602を構成する材料は、弾性を有する多孔質材料であればその細空隙を粘性及び熱伝導により伝播音響エネルギの消耗に利用できて理想的であるが、一般に多孔質材料は固い材料(骨材)が多いため、発泡塩化ビニール又はABS等の樹脂系の薄い弾性板材料を使用する。また、パネル601及び602を固定した収納ケース枠体701及び702の内枠には、図1及び図2(b)に示すように、収納する磁気ディスク装置1の外形を象るように成形されたガスケット801及び802が各々連結されている。ガスケット801及び802を構成する材料には、伸縮性のある弾性部材を使用することが望ましく、本実施例においてはドライブカバー2(図11(a)参照)のガスケット材(図示せず)として使用されるフッ素ゴムを使用しており、ボトム側収納ケース301にカバー側収納ケース401を接合して磁気ディスク装置1を収納する際に、ガスケット801及び802を磁気ディスク装置1に圧着させることにより、空間1301及び1302の気密を確保している。
【0028】
図2(a)及び(b)に示すように、収納ケース枠体701、パネル601及びガスケット801から構成されるボトム側収納ケース301と、収納ケース枠体702、パネル602及びガスケット802から構成されるカバー側収納ケース401とを相互に当接させて接合し、ドライブ装置収納ケース501を形成する。ドライブ装置収納ケース501に磁気ディスク装置1を収納したとき、磁気ディスク装置1の上面及び下面に夫々対向するパネル602及び601と磁気ディスク装置1との間には一定の空間1302及び1301が形成され、且つ、ドライブ装置収納ケース枠体701及び702の内枠に各々固定されたガスケット801及び802により、空間1301及び1302がパネル601及び602と磁気ディスク装置1との間で密閉される。
【0029】
一般に、ある音源からの騒音を抑制する手段としては、遮音及び吸音が考えられる。遮音は音波を跳ね返す機構で透過損失は質量則に従う。即ち、遮音壁が高密度であるほど遮音性能が向上するが、逆に十分な静音効果を得るためには音響系(遮音システム)が大きく重くなる。一方、吸音は音波を吸収する機構であり、透過損失は遮音と比較して劣るが吸音材料は一般に密度が小さいため軽量な音響系を構成することができる。
【0030】
吸音機構は多孔質材料による吸音が一般的であるが、この他にも振動吸音方式及び共鳴吸音方式がある。これらは音のエネルギを板又は空気等の媒質の振動の摩擦熱エネルギに転換して消費するものである。
【0031】
振動吸音方式の原理について説明する。振動吸音方式の例として、パネル状の物体を剛体壁の前に空気層を介して配置し、パネルを質点、空気層を剛性体として作用させる質点−剛性系が挙げられる。図3は質点−剛性系による吸音の原理を示す模式図である。図3においては、剛体壁27が設けられ、剛体壁27に対向するように孔なしパネル29が設けられ、剛体壁27と孔なしパネル29との間には支柱2801が設けられ、孔なしパネル29は支柱2801により剛体壁27から一定の距離隔てられている。また、剛体壁27と孔なしパネル29との間、且つ支柱2801の間には空間1311が設けられており、空間1311には空気層が形成されている。このとき、剛体壁27から発生する騒音のエネルギを、空間1311の空気層を剛性体、孔なしパネル29を質点として、孔なしパネル29を振動させることにより吸収する。
【0032】
前述の質点−剛性系において、音のエネルギ吸収が最大となる場合は、その音の周波数が質点−剛性系の共振周波数と一致するときである。このとき、パネル自体が慣性を有し、その振動は摩擦により減衰するため、ドライブ装置から発生する騒音の音響エネルギが効率良くパネルの運動エネルギに変換され、この運動エネルギが摩擦により熱エネルギに変換され、この熱エネルギが散逸することにより効率良く吸音することができる。前記共振周波数は、前記パネルの質量及び前記空間における前記ドライブ装置と前記パネルとの間の距離を選択することにより、適宜選択することができる。
【0033】
本実施例に係るドライブ装置収納ケース501は、前記振動吸音の原理をドライブ装置収納ケースに応用したものである。即ち、図2(b)に示すように、携帯及び搬送時の外部衝撃からドライブ装置(磁気ディスク装置1)を保護するためのドライブ装置収納ケース501において、ケースを構成する収納ケース枠体701及び702を剛性が高い部材で構成し、その間を薄い板状のパネル601及び602で構成する。これにより、ドライブ装置収納ケース501は、周囲を剛性の高い部材で囲まれたパネルによって上面及び下面が構成される。
【0034】
また、騒音源となる磁気ディスク装置1をドライブ装置収納ケース501に収納したとき、磁気ディスク装置1の外面とドライブ装置収納ケース501のパネル601及び602の表面との間に空間1301及び1302が生じるように構成する。また、ドライブ装置収納ケース501の収納ケース枠体701及び702と磁気ディスク装置1との間に弾性部材で構成されるガスケット801及び802を介在させることによりドライブ装置収納ケース501内部で密着するようにして、磁気ディスク装置1とパネル601及び602との間の空間1301及び1302が密閉されるように構成する。
【0035】
このとき、パネル601及び602を質点、空間1301及び1302に形成される空気層を剛性として働く質点−剛性系の共振周波数が、前記ドライブ装置の動作騒音のうち最も音響レベルの高い周波数帯域、即ち、最も抑制したい騒音の周波数と一致するように、パネルの質量及び空間の体積を設定する。空間の体積の設定は、例えばドライブ装置とパネルとの間の距離を設定することにより行うことができる。
【0036】
これにより、磁気ディスク装置1等のドライブ装置をドライブ装置収納ケース501に収納したまま、外部機器に接続して動作させるような場合において、前記ドライブ装置が発生する音響エネルギ(騒音)が、慣性を有するパネル601及び602の振動により運動エネルギに変換されて、この振動が摩擦により減衰することにより、前記運動エネルギを熱として散逸させることにより、ドライブ装置収納ケース501は吸音効果を得ている。
【0037】
図4(a)及び(b)は、本実施例に係るドライブ装置収納ケースの騒音抑制動作を示す断面図である。図4(a)は、磁気ディスク装置1を収納したドライブ装置収納ケース501を外部機器に接続するとき、ドライブ装置収納ケース501を遮音が十分になされている例えば床等の設置面901に固定して動作させる場合を例示しており、一方、図4(b)はドライブ装置収納ケース501を外部機器に接続するとき、ローディング機構等によりドライブ装置収納ケース501を側壁の設置面902で支持し、ドライブ装置収納ケース501を空中固定して動作させる状態を例示している。前者の場合、ドライブ装置収納ケース501の騒音は上面からの発生が主となり、後者の場合は上面及び下面の双方からの騒音を考慮する必要がある。
【0038】
磁気ディスク装置1を、ドライブ装置収納ケース501に収納したまま外部機器(例えば図11(b)に示す映像用録画再生装置18等)に接続して動作させるとき、磁気ディスク装置1のスピンドルモータ14(図11(a)参照)の動作音、記録媒体15(図11(a)参照)の高速回転に伴う風切り音及び記録再生ヘッド17(図11(a)参照)の高速位置決め動作に伴うアクチュエータ機構16(図11(a)参照)の駆動音等に起因する騒音が発生する。このような騒音を発生する構成要素を、以下まとめて音源1001という。
【0039】
図4(a)に示すように、音源1001から発生する音響エネルギ(騒音)は、ドライブ装置収納ケース501の密閉された空間1302の媒質(空気)を伝播してパネル面602を振動させる。パネル面602が振動することにより前記音響エネルギが運動エネルギに変換され、この振動が減衰することにより前記運動エネルギが消費され音響エネルギを散逸し、その結果、ドライブ装置の動作音(騒音)を低減させることが可能になる。
【0040】
パネル602と空間1302の空気層とによって構成されるドライブ装置収納ケース501の振動系は、パネル602の質量が系の質量として、空間1302の空気層の体積弾性が系の剛性として作用する。このとき一般に、パネル602の剛性は空気層の剛性に対して無視してよい。また、パネル602の振動に対する減衰抵抗としては、パネル602周辺の内部摩擦及び放射抵抗等がある。上述したドライブ装置の騒音の吸音作用は、前記振動系の共振周波数帯域で最も著しく効果を発揮するため、収納する磁気ディスク装置1の騒音周波数特性に合わせてパネル質量及び空気層の剛性、即ち空間の体積を決定することが望ましい。
【0041】
なお、図4(b)に示すように、ドライブ装置収納ケース501を外部機器内に空中固定して動作させるような場合には、前記動作原理に基づいてドライブ装置の上下面に対向する双方のパネル601及び602で吸音作用が働き、磁気ディスク装置1の音源1001から発生する騒音を低減させる。これにより、本実施例に係るドライブ装置収納ケース501は、優れた吸音性を有することができる。
【0042】
また、本実施例に係るドライブ装置収納ケース501においては、ガスケット801及び802並びに空間1301及び1302に密閉された空気層が緩衝材として作用するため、耐衝撃性が優れている。このため、携帯又は搬送時に外部衝撃を受けた場合でも内部のドライブ装置を保護することができる。更に、ドライブ装置収納ケース501はその構成が単純であるため低価格化及び小型化することが可能である。更にまた、ドライブ装置収納ケース501は小型であるため、放熱性が優れている。
【0043】
図5(a)は、本実施例における変形例に係るドライブ装置収納ケースの構成を示す斜視図であり、図5(b)はその断面図である。前記第1の実施例で示したパネルによる振動吸音システムは、低中周波数域の騒音対策には有効であるが、その振動系の共振周波数を超えると吸音率が急速に低下する。本変形例は、前記振動吸音システムが有効に作用する周波数帯を広げたい場合に適用される。本変形例に係るドライブ装置収納ケース502においては、図5(a)及び(b)に示すように、ボトム側収納ケース302及びカバー側収納ケース402により構成され、ボトム側収納ケース302は収納ケース枠体703、ガスケット803及びパネル603から構成され、カバー側収納ケース402は収納ケース枠体704、ガスケット804及びパネル604から構成されている。また、磁気ディスク装置1の騒音面とパネル603及び604との間の空間1303及び1304には、ブチル系ゴム、低反発シリコン又はポリウレタン系シート等の高い減衰効果を有する振動の減衰材1101及び1102が設けられている。ドライブ装置収納ケース502における減衰材1101及び1102以外の構成は、前記第1の実施例で示したドライブ装置収納ケース501の構成と同一である。
【0044】
本変形例に係るドライブ装置収納ケース502においては、減衰材1101及び1102を設けることにより、振動吸音システムが有効に作用する周波数帯域が拡大する。また、減衰材1101及び1102が緩衝材としても機能し、パネル面とドライブ装置外壁との間で密閉された空気層も剛性として作用するため、耐衝撃性が良好であり、携帯及び搬送時に外部から衝撃を受けた場合でも、内部のドライブ装置を保護することができる。
【0045】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。図6(a)は、本実施例に係るドライブ装置収納ケースの構成を示す斜視図であり、(b)はその断面図である。本実施例に係るドライブ装置収納ケース503は、前記第1の実施例と同様に、ボトム側収納ケース303及びカバー側収納ケース403から構成され、ボトム側収納ケース303及びカバー側収納ケース403が分割することにより、ドライブカバー2によって密閉された磁気ディスク装置1を収納している。また、ボトム側収納ケース303は収納ケース枠体705、薄い板状のパネル605及びガスケット805から構成されている。また、カバー側収納ケース403は収納ケース枠体706、薄い板状のパネル606及びガスケット806から構成されている。収納ケース705及び706並びにパネル605及び606により、磁気ディスク装置1を囲むハウジング部が構成されている。収納ケース枠体705及び706並びにガスケット805及び806は、夫々前記第1の実施例における収納ケース枠体701及び702並びにガスケット801及び802と同一である。
【0046】
一方、収納する磁気ディスク装置1の騒音面、即ち、磁気ディスク装置1の上面及び下面に夫々対向するパネル606及び605には、図6(a)及び(b)に示すように、前記第1の実施例において例示した薄板状の弾性板材に、複数の貫通孔1202及び1201を周期的に配列するように設けられている。なお、図6(a)及び(b)においては、理解しやすいように貫通孔の直径を実際よりも大きく描いているが、実際の開口率は数%〜30%程度が好ましい。
【0047】
また、図6(b)に示すように、ドライブ装置収納ケース503のパネル605及び606と前記磁気ディスク装置1との間には、夫々空間1305及び1306が形成されている。空間1305及び1306における貫通孔1201及び1202以外の部分は、ガスケット805及び806により密閉されている。これにより、磁気ディスク装置1をドライブ装置収納ケース503に収納したとき、貫通孔を有する多孔パネルによるヘルムホルツ形の共鳴吸音構造体が形成される。
【0048】
ヘルムホルツ共鳴器の原理について説明する。図7(a)はヘルムホルツ共鳴器の構成を示す模式図である。ヘルムホルツ共鳴器とは、図7(a)に示すように、容積Vの空洞1313が外部の媒質(空気)と断面積S、長さlの首部3102を介して通じている構造のことであり、首部3102の空気が系の質量要素として作用し、空洞1313内の空気が剛性要素として作用する。ヘルムホルツ共鳴器においては、外部から印加される音響エネルギにより空洞1313内の空気の圧力が変動し、この圧力の変動により首部3102の空気が首部3102を通って出入りし、この首部3102の空気の運動が周囲との摩擦により減衰する。即ち、音響エネルギが首部3102の空気の運動エネルギに変換され、この運動エネルギが摩擦により熱エネルギに変換され、首部3102において周囲の媒質(空気)への音の放射が起こり、熱エネルギが散逸することにより、音を吸収する。
【0049】
図7(b)はヘルムホルム共鳴器を利用したドライブ装置収納ケースの吸音の原理を示す模式図である。図7(b)においては、剛体壁27が設けられ、剛体壁27に対向するように複数の貫通孔3101を有する多孔パネル30が設けられ、剛体壁27と多孔パネル30との間には支柱2802が設けられ、多孔パネル30は支柱2802により剛体壁27から距離dだけ隔てられている。また、剛体壁27と多孔パネル30との間で且つ支柱2802の間には空間1312が設けられており、空間1312には空気層が形成されている。
【0050】
図7(b)に示すように、空間1312を各貫通孔3101に対応する微小な空洞の連続体とみなし、貫通孔3101を首部とみなしたときに、空間1312及び多孔パネル30は、ヘルムホルツ共鳴器32が連続的に配列しているものとみなすことができる。ヘルムホルツ共鳴器32においては、貫通孔3101の直径及びピッチを選択することにより、共鳴周波数を選択することができ、任意の複数の周波数で吸音することが可能になる。
【0051】
本実施例に係る吸音型ドライブ装置収納ケース503は、前記共鳴吸音の原理をドライブ装置収納ケースに応用したものである。図8は、本実施例に係るドライブ装置収納ケースの構成を示す一部拡大断面図である。図8に示すように、ドライブ装置収納ケース503のカバー側収納ケース403に形成される空間1306のうち、パネル606に形成される1個の貫通孔1202当たりの空気層体積をv1、貫通孔1202の断面積をs1、首部(貫通孔1202)の首長、即ちパネル606の板厚l1に管端補正を行った値をleff1、1個の貫通孔1202の伝導率をG1(=s1/leff1)、空気の密度をρo、大気圧をPo、空気の比熱の比をχとすると、吸音型ドライブ装置収納ケース503に形成されるヘルムホルツ共鳴器の共鳴周波数fres1は下式1で与えられる。
【0052】
【数1】
【0053】
このとき、パネル606の貫通孔1202、即ち、ヘルムホルツ共鳴器の首部における空気は一体となって激しくピストン運動し、空間1306の空気は貫通孔1202(首部)の空気の出入りに対してバネの作用をする。従って、騒音の音響エネルギは、貫通孔1202における空気の摩擦抵抗により消耗し散逸するため、ドライブ騒音を抑制することができる。
【0054】
なお、数式1においては、空気層体積v1は磁気ディスク装置1とパネル606との間の距離d1と貫通孔1202のピッチを選択することにより調整することができる。また、伝導率G1は貫通孔1202の直径及びパネル606の板厚を選択することにより調整することができる。
【0055】
ドライブ装置収納ケース503のボトム側収納ケース303についても同様に、パネル605に形成される1個の貫通孔1201当たりの空気層体積をv2、貫通孔1201の断面積をs2、首部(貫通孔1201)の首長、即ちパネル605の板厚l2に管端補正を行った値をleff2、1個の貫通孔1202の伝導率をG2(=s1/leff2)、空気の密度をρo、大気圧をPo、空気の比熱の比をχとすると、吸音型ドライブ装置収納ケース503に形成されるヘルムホルツ共鳴器の共鳴周波数fres2は下式2で与えられる。
【0056】
【数2】
【0057】
数式2においては、空気層体積v2は磁気ディスク装置1とパネル605との間の距離d2と貫通孔1201のピッチを選択することにより調整することができる。また、伝導率G2は貫通孔1201の直径及びパネル605の板厚を選択することにより調整することができる。ボトム側収納ケース303に形成されたヘルムホルツ共鳴器は、fres2の周波数で共鳴し、磁気ディスク装置1のボトム側の動作騒音を抑制することができる。
【0058】
上述の如く、本実施例に係るドライブ装置収納ケース503は、空間1305及び1306にヘルムホルツ共鳴器を形成することにより、磁気ディスク装置1から発生する騒音を効率良く吸収することができる。
【0059】
また、本実施例に係るドライブ装置収納ケース503は、図6(b)に示すように、ガスケット805及び806並びに空間1305及び1306に形成された空気層が緩衝材として作用するため、耐衝撃性が優れている。このため、携帯又は搬送時に外部衝撃を受けた場合でも、内部のドライブ装置を保護することができる。更に、ドライブ装置収納ケース503においては、ヘルムホルツ共鳴器が共鳴する際に、空間1305及び1306に形成された空気層が貫通孔1201及び1202を介して外部と激しく出入するために、動作中の磁気ディスク装置1の放熱を効率よく行うことができ、ドライブ装置収納ケース503内に熱が籠もりにくくすることもできる。更にまた、ドライブ装置収納ケース503はその構成が単純であるため低価格化及び小型化することが可能である。
【0060】
次に、本実施例の変形例について説明する。図9は本変形例に係るドライブ装置収納ケース504の構成を示す断面図である。
【0061】
本変形例に係るドライブ装置収納ケース504においては、図9に示すように、ボトム側収納ケース304及びカバー側収納ケース404により構成され、ボトム側収納ケース304は収納ケース枠体707、ガスケット807及びパネル607から構成され、カバー側収納ケース404は収納ケース枠体708、ガスケット808及びパネル608から構成され、パネル607及び608には夫々貫通孔1203及び1204が形成されている。また、磁気ディスク装置1の騒音面とパネル607及び608との間の空間1307及び1308に、グラス繊維を層状に加工した多孔質材料からなる減衰材1103及び1104が設けられている。ドライブ装置収納ケース504における減衰材1103及び1104以外の構成は前記第2の実施例に係るドライブ装置収納ケース503の構成と同一である。なお、減衰材1103及び1104は磁気ディスク装置1に貼付することもできる。
【0062】
ドライブ装置収納ケース504においては、減衰材1103及び1104を設けることにより、前記数式1及び数式2で表されるヘルムホルツ共鳴器の共鳴周波数fres1及びfres2よりも高い周波数帯及び低い周波数帯における吸音効果が増大する。この場合、吸音率は低音域より中高音域になるに従って増加するが、挿入する減衰材1102及び1103の厚みを増せば吸音率が大きな周波数範囲を低音域の方向に移動させることができる。また、ドライブ装置収納ケース504においては、減衰材1103及び1104が緩衝材として機能するため、耐衝撃性をより向上させることができる。
【0063】
次に、本実施例の他の変形例について説明する。図10は本変形例に係るドライブ装置収納ケース505の構成を示す一部拡大断面図である。本変形例に係るドライブ装置収納ケース505においては、図10に示すように、ボトム側収納ケース305及びカバー側収納ケース405により構成され、ボトム側収納ケース305は収納ケース枠体709、ガスケット809及びパネル609から構成され、カバー側収納ケース405は収納ケース枠体710、ガスケット810及びパネル610から構成されている。
【0064】
また、本変形例に係るドライブ装置収納ケース505においては、前記第2の実施例で示したような多孔パネル形の吸音構造において、ボトム側収納ケース305のパネル609には複数の貫通孔1205が形成されており、カバー側収納ケース405のパネル610には複数の貫通孔1206が形成されている。そして、貫通孔1205の直径(h2)及びピッチ(p2)と、貫通孔1206の直径(h1)及びピッチ(p1)を、ドライブ装置の各騒音面の周波数特性に合わせて相互に異なるように設定している。また、パネル609及び610と磁気ディスク装置1との間の空間1309及び1310の体積、即ち、空間距離d3及びd4も相互に異なるように設定している。ドライブ装置収納ケース505における貫通孔1205及び1206の直径、ピッチ並びに空間1309及び1310の体積以外の構成は、前記第2の実施例に係るドライブ装置収納ケース503の構成と同一である。
【0065】
一般に、磁気ディスク装置等のドライブ装置においては、ドライブカバー側とモータ設置面側(ボトム側)とでは動作騒音の周波数特性が異なる。このため、前記第1の実施例においては、カバー側収納ケース401の振動系とボトム側収納ケース301の振動系とを各騒音面の周波数特性に最適化して設計することにより、即ち、パネルの質量及び空気層の体積等の値を最適化することにより、より効果的な吸音効果を示すドライブ装置収納ケースを提供することができる。
【0066】
本変形例においては、ドライブ装置収納ケース505における貫通孔1205及び1206の直径、ピッチ並びに空間1309及び1310の体積を、磁気ディスク装置の上面及び下面の騒音特性に合わせて最適に設計することにより、前記数式1及び数式2で表される共鳴周波数をドライブ騒音に合わせて最適に選択することができる。これにより、より優れた吸音効果を得ることができる。
【0067】
なお、前記第1及び第2の実施例においては、ドライブ装置(磁気ディスクドライブ1)の上面及び下面にのみパネルを配置しているが、収納するドライブ装置の騒音特性によっては、必要に応じて他の収納ケース面、即ち側壁面にも同様な構造、即ち、前記第1の実施例で示したパネル振動吸音構造、又は前記第2の実施例で示した多孔パネル共鳴吸音構造を構築することが可能である。
【0068】
【発明の効果】
以上、詳述したように、本発明のドライブ装置収納ケースは振動吸音の原理を応用したものであり、携帯及び搬送時の外部衝撃からドライブ装置を保護するためのドライブ装置収納ケースにおいて、剛性が高い部材で枠体を構成し、その間を薄いパネルで構成し、収納したドライブ装置と前記パネルとの間に気体が充填された密閉空間を形成することにより、パネルを質点、空気層を剛性として働く質点−剛性系の振動系が構成することができ、ドライブ装置の騒音の音響エネルギを、前記パネルの振動により運動エネルギに変換して、熱として散逸させることにより、優れた吸音効果を得ることができる。また、密閉された空気層が緩衝材として機能するため、良好な耐衝撃性を得ることができる。更に、構成が単純であるため低コスト化及び小型化が可能で、小型化が可能であるため放熱性を向上させることができる。
【0069】
また、パネル質量及び空間体積を選択して前記振動系の共振周波数をドライブ騒音の周波数特性に応じて調整することにより、吸音効果を更に高めることができる。
【0070】
本発明の他のドライブ装置収納ケースは共鳴吸音の原理を応用したものであり、ドライブ装置収納ケースのパネルに貫通孔を形成し、ヘルムホルツ形の多孔パネル共鳴構造を構築することにより、ドライブ装置の騒音の音響エネルギを、パネルの貫通孔を通って出入りする空気の振動の運動エネルギに変換し、これを摩擦抵抗により消耗させることにより、ドライブ騒音を抑制し、優れた吸音性を実現することができる。また、空気層が緩衝材として機能するため、良好な耐衝撃性を得ることができる。更に、構成が単純であるため低コスト化及び小型化が可能で、共鳴運動を放熱に利用することで優れた放熱性が実現でき、ケース内の温度管理を可能にしている。
【0071】
また、貫通孔の直径及びピッチをドライブ装置の騒音の周波数特性に合わせて選択することにより、吸音効果を更に向上させることができる。更に、空間に減衰材を挿入することにより、より効率的な吸音効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例に係るドライブ装置収納ケースの構成を示す斜視図である。
【図2】(a)は本実施例に係るドライブ装置収納ケースの組立て方法を示す斜視図であり、(b)はドライブ装置収納ケースの構成を示す断面図である。
【図3】質点−剛性系による吸音の原理を示す模式図である。
【図4】(a)及び(b)は、本実施例に係るドライブ装置収納ケースの騒音抑制動作を示す断面図である。
【図5】(a)は本実施例の変形例に係るドライブ装置収納ケースの構成を示す斜視図であり、(b)はその断面図である。
【図6】(a)は本発明の第2の実施例に係るドライブ装置収納ケースの構成を示す斜視図であり、(b)はその断面図である。
【図7】(a)はヘルムホルツ共鳴器の構成を示す模式図であり、(b)はヘルムホルム共鳴器を利用したドライブ装置収納ケースの吸音の原理を示す模式図である。
【図8】本実施例に係るドライブ装置収納ケースの構成を示す一部拡大断面図である。
【図9】本実施例の変形例に係るドライブ装置収納ケースの構成を示す断面図である。
【図10】本実施例の他の変形例に係るドライブ装置収納ケースの構成を示す一部拡大断面図である。
【図11】(a)は従来の磁気ディスク装置の構成を示す斜視図であり、(b)は映像用録画再生装置に記録メディアとして磁気ディスク装置をローディングしている状態を示す斜視図である。
【図12】(a)及び(b)は、従来の耐衝撃性を付与した磁気ディスク装置の構成を示す斜視図である。
【図13】従来の耐衝撃性を付与した磁気ディスク装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1;磁気ディスク装置(ドライブ装置)
2;ドライブカバー
301乃至305;ボトム側収納ケース
401乃至405;カバー側収納ケース
501乃至505;ドライブ装置収納ケース
601乃至610;パネル
701乃至710;収納ケース枠体
801乃至810;ガスケット
901、902;設置面
1001、1003;音源
1101乃至1104;減衰材
1201乃至1206;貫通孔
1301乃至1312;空間
1313;空洞
14;スピンドルモータ
15;記録媒体
16;アクチュエータ機構
17;磁気ヘッド
18;映像用録画再生装置
19;フロッピーディスク媒体
20a乃至20d;緩衝用弾性部材
21a乃至21d;保護用弾性部材
22;収納ケース
23;基板部
25;コネクタ
26a乃至26g;緩衝材
27;剛体壁
2801、2802;支柱
29;孔なしパネル
30;多孔パネル
3101、3102;首部
32;ヘルムホルツ共鳴器
33;剛体壁
34;筐体
d、d1乃至d4;空間距離
h1、h2;貫通孔の直径
l1、l2;パネルの板厚
p1、p2;貫通孔のピッチ(ピッチ)
s、s1、s2;貫通孔の断面積
v、v1、v2;空気層体積
Claims (7)
- ドライブ装置を収納するドライブ装置収納ケースにおいて、前記ドライブ装置を支持する枠体と、この枠体に連結され前記枠体と共に前記ドライブ装置を囲むハウジング部を構成する板状のパネルと、を有し、前記ドライブ装置を収納した際に前記ドライブ装置と前記パネルとの間に気体が充填された密閉空間が設けられることを特徴とするドライブ装置収納ケース。
- 前記気体と前記パネルとからなる系の共振周波数が、前記ドライブ装置が発生する騒音の周波数のうち少なくとも1つと一致していることを特徴とする請求項1に記載のドライブ装置収納ケース。
- ドライブ装置を収納するドライブ装置収納ケースにおいて、前記ドライブ装置を支持する枠体と、この枠体に連結され前記枠体と共に前記ドライブ装置を囲むハウジング部を構成し貫通孔が設けられた板状のパネルと、を有し、前記ドライブ装置を収納した際に前記ドライブ装置と前記パネルとの間に空間が設けられることを特徴とするドライブ装置収納ケース。
- 前記貫通孔と前記空間とからなる系の共振周波数が、前記ドライブ装置が発生する騒音の周波数のうち少なくとも1つと一致していることを特徴とする請求項3に記載のドライブ装置収納ケース。
- 前記貫通孔は複数個設けられ、周期的に配列していることを特徴とする請求項3又は4に記載のドライブ装置収納ケース。
- 前記ドライブ装置は前記枠体と前記ドライブ装置との間に設けられた弾性部材により支持されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のドライブ装置収納ケース。
- 前記パネルと前記ドライブ装置との間に振動の減衰材が配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のドライブ装置収納ケース。
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