JP4082883B2 - アジリジン誘導体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、アジリジン誘導体製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、医薬、農薬、香料等の前駆物質、もしくは合成中間体として有用な、その構造において3位に芳香族基を有するアジリジン誘導体製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
従来より、アジリジン誘導体は、医薬や農薬の前駆物質あるいは合成中間体として有用であることが知られており、特に、アジリジン−2−カルボン酸誘導体についてはこれまでにも活発に検討が進められてきている。たとえば、N−(トリフェニル)メチル−アジリジン−2−カルボン酸誘導体について数多くの報告がなされてきている(米国特許4,622,418、同4,603,011等として)。
【0003】
また、2位にカルボン酸誘導基を有し、3位にアルキル基を有するアジリジン誘導体についてもすでに報告されている(特開平6−9549号公報)。
【0004】
しかしながら、各種有用物質の合成中間体等として期待されているものの、アジリジン誘導体については、3位に芳香族基を有する化合物は知られていないのが実情である。このことは、アジリジン誘導体の合成反応への利用を制約する大きな要因ともなっていた。
【0005】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの従来技術の問題点を解消し、3位に芳香族基を有するアジリジン誘導体製造方法を提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記のとおりの課題を解決するものとして、第1には、次式(1)
【0007】
【化4】
Figure 0004082883
【0008】
(式中のArは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示し、R1は、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、R2は、カルボキシル基の保護基を示す。)で表わされるアジリジン誘導体の製造方法であって、次式(2)
【0009】
【化5】
Figure 0004082883
【0010】
(式中のR 1 およびR 2 は前記と同義であり、R 3 ,R 4 ,R 5 およびR 6 は各々同一または別異に、水素原子もしくは炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)で表わされるグアニジウム塩を、次式(3)
【0011】
【化6】
Figure 0004082883
【0012】
(式中のArは前記と同義である。)で表わされる芳香族アルデヒド化合物と反応させることを特徴とするアジリジン誘導体の製造方法を提供する。
【0013】
また、この出願の発明は、第2には、キラル体グアニジウム塩を芳香族アルデヒドと反応させてキラル体アジリジン誘導体を得ることを特徴とするアジリジン誘導体の製造方法を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0015】
この出願の発明により製造されるアジリジン誘導体は、前記のとおりの式(1)により表わされるものであって、その特徴は3位に芳香族基(Ar)を持つ構造を有していることである。
【0016】
すなわち、式(1)において符号Arは、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基であって、たとえばフェニル、ベンジン、ナフチル、ビフュニル等の単環あるいは多環の芳香族基、もしくは複素芳香族基、またはこれらが許容される各種の置換基を有していてもよいものである。
【0017】
この場合の置換基としては、脂肪族や脂環式の炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、スルフィド基、ニトロ基、シアノ基等の1種以上であってよく、また、炭化水素基は、直接的に、もしくは異種原子を介して環を形成して置換基を構成していてもよい。
【0018】
なかでも、これらの置換基を有しているか、または有していないフェニル基が、符号Arの代表的なものとして例示される。これらは、合成が容易であり、かつ合成中間体等の利用性においても良好なものである。
【0019】
また、式(1)においては、R1は、上記同様の各種の置換基を有していてもよい炭化水素基である。炭化水素基そのものは鎖状または環状の、脂肪族、脂環式、あるいは芳香族や芳香脂肪族の各種のものであってよい。代表的なものとしては、たとえばベンジル基やジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基等が例示される。
【0020】
2はカルボキシル基の保護基であって、代表例としてはアルキル基、たとえばメチル基、エチル基等が、また、ベンジル基、フェニル基等が例示される。
【0021】
そして、この出願の発明においては、以上のとおりの式(1)で表わされるアジリジン誘導体として、キラル体をも製造することができる。このキラル体は、たとえば次式
【0022】
【化7】
Figure 0004082883
【0023】
のものとして例示することができる。
【0024】
前記の式(1)で表わされるアジリジン誘導体は、この出願の発明がはじめて提供することになる、グアニジウム塩とアルデヒドとの反応によって製造することができる。
【0025】
すなわち、前記のとおりの式(2)のグアニジウム塩化合物を、式(3)で表わされるAr−CHOの芳香族アルデヒドと反応させることである。
【0026】
このグアニジウム塩とアルデヒドとの反応においてはアルドール生成物が得られるものと当初は予想されていたが、この予想とは異ってアジリジン骨格が形成されることになる。注目すべき反応である。
【0027】
式(2)で表わされるグアニジウム塩においては、符号R1およびR2は前記のとおりのものであり、また、R3およびR4は、各々、炭化水素基であってよい。より単純な構造のものとして反応に用いることが可能となる。そして、式(2)のグアニジウム塩において、R5およびR6は、水素原子であってもよいし、炭化水素基であってもよい。R5およびR6が炭化水素基である場合には、たとえば次式
【0028】
【化8】
Figure 0004082883
【0029】
のようなキラル体のグアニジウム塩を用いることができ、このような場合には、キラル体のアジリジン誘導体を製造することが可能となる。
【0030】
また、符号Xは、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子である。そして、式(3)のアルデヒドでは、Arは、前記のとおりの置換基を有していてもよい芳香族基である。
【0031】
グアニジウム塩と芳香族アルデヒドとの反応によるアジリジン誘導体の合成反応には、塩基を用いることが有効である。この場合の塩基として好適なものを挙げると、金属水素化物、金属炭酸塩、アルキル金属等の有機金属化合物が例示される。金属としては、たとえばアルカリ金属、あるいはアルカリ土類金属が好ましい。
【0032】
たとえば具体的には、NaH、KH、Cs2 CO3 、Ag2 CO3 、SrCO3 、n−BuLi等である。
【0033】
また、反応には溶媒を用いることができる。溶媒は極性溶媒とすること、たとえばDMF、DMSO,THF等を用いることがより適当である。
【0034】
反応においては、原料として使用するグアニジウム塩と芳香族アルデヒドとのモル比は、一般的に0.1/10〜10/0.1の広い範囲とすることができ、また塩基を使用する場合には、一般的に、グアニジウム塩に対してモル比0.1〜1程度の割合とすることが考慮される。
【0035】
反応温度は、使用する原料化合物や塩基の種類、そしてそれらの割合によっても相違するが、通常は室温以下とするのが適当である。たとえば−25℃〜30℃程度の範囲である。
【0036】
なお、出発原料化合物としてのグアニジウム塩については、たとえば、IsobeT., et al., J.Org, Chem., 64, 5852, 6984, 6989(1999) に従って合成することが可能である。
【0037】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しくこの出願の発明について説明する。
【0038】
【実施例】
<実施例1>
次の反応式
【0039】
【化9】
Figure 0004082883
【0040】
に沿って、グアニジウム塩(m.p.68−71℃)を各種の芳香族アルデヒド(Ar−CHO)と反応させて、アジリジン誘導体を合成した。
【0041】
グアニジウム塩と芳香族アルデヒドとは等モルとした。NaHはグアニジウム塩に対してモル比0.5〜1.0の範囲とした。反応の結果を表1に示した。
【0042】
【表1】
Figure 0004082883
【0043】
主としてトランス体が生成されることが確認された。o−メトキシベンズアルデヒドを用いる場合(run2)には、トランス体のみが、8時間の反応によって収率53.5%で得られている。また、ピペロナールを用いる場合(run1)では、合計収率が70%、p−クロルベンズアルデヒドを用いる場合(run4)には合計収率54%の高い収率でアジリジン誘導体が得られている。
【0044】
表2は、生成されたアジリジン誘導体の同定分析値として、p−クロルベンズアルデヒドを用いたrun4の生成物についての値を例示したものである。
【0045】
【表2】
Figure 0004082883
【0046】
<実施例2>
前記実施例1の反応条件のうちの反応温度を室温に変更して、Ar−CHOの芳香族基Arが次式
【0047】
【化10】
Figure 0004082883
【0048】
で表わされる桂皮アルデヒドを用いて反応させた。その結果、4時間の反応で、シス体18.8%、トランス体27.9%の収率で、対応するアジリジン誘導体を得た。
【0049】
なお、比較のために、各種の脂肪族アルデヒドを用いて反応を試みたが、反応は進行せず、グアニジウム塩が未反応でそのまま回収されるか、あるいはグアニジウム塩の分解が確認された。
<実施例3>
ピペロナールを用いる前記実施例1のrun1において、NaH以外の塩基を用いて、反応濃度、反応時間を変更してアジリジン誘導体の合成反応を行った。
【0050】
その結果を表3に示した。
【0051】
【表3】
Figure 0004082883
【0052】
<実施例4>
次の反応式
【0053】
【化11】
Figure 0004082883
【0054】
に従って、アジリシン誘導体を製造した。グアニジウム塩3は、R=Etであり、グアニジウム塩4は、R=tBuである。芳香族アルデヒド(ArCHO):5については、符号Arは次の表3のものを示している。
【0055】
【表4】
Figure 0004082883
【0056】
反応の結果を表4に示した。
【0057】
【表5】
Figure 0004082883
【0058】
<実施例5>
次の反応式に従って、キラルグアニジウム塩と芳香族アルデヒドとを反応させてキラルアジリジン誘導体:6を製造した。
【0059】
その結果を表6に示した。
【0060】
【化12】
Figure 0004082883
【0061】
【表6】
Figure 0004082883
【0062】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、医薬、農薬等の有用物質合成のための前駆体や反応合成中間体として有益な、3位に芳香族基を有するアジリジン誘導体の製造方法を提供することができる。また、この出願の発明の製造方法によれば、簡便な操作で、高い収率でのアジリジン誘導体の合成が可能になる。

Claims (2)

  1. 次式(1)
    Figure 0004082883
    (式中のArは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示し、R1は、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、R2は、カルボキシル基の保護基を示す。)で表わされるアジリジン誘導体の製造方法であって、次式(2)
    Figure 0004082883
    (式中のR 1 およびR 2 は前記と同義であり、R 3 ,R 4 ,R 5 およびR 6 は各々同一または別異に、水素原子もしくは炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)で表わされるグアニジウム塩を、次式(3)
    Figure 0004082883
    (式中のArは前記と同義である。)で表わされる芳香族アルデヒド化合物と反応させることを特徴とするアジリジン誘導体の製造方法。
  2. キラル体グアニジウム塩を芳香族アルデヒドと反応させてキラル体アジリジン誘導体を得ることを特徴とする請求項1のアジリジン誘導体の製造方法。
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