JP4078868B2 - 真空紫外光照射装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、キセノンランプより放射される真空紫外光を被処理物に照射するための真空紫外光照射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、ウエハーまたは半導体などの被処理物における表面の洗浄処理、極薄酸化膜の生成処理などの種々のプロセスにおいては、例えば波長が200nm未満の真空紫外光を照射することが行われており、このような真空紫外光を照射するための真空紫外光照射装置においては、光源ランプとして、例えばキセノンのエキシマ分子発光による、波長172nmに放射ピークを有する真空紫外光を高い強度で放射するキセノンランプが利用されている(図3参照)。
【0003】
このような真空紫外光照射装置においては、通常、被処理物に照射される真空紫外光の強度が常に一定であることが要求されるが、実際には種々の原因によって変動する。このような事情により、キセノンランプから放射される真空紫外光の強度を求め、その変動に応じて当該キセノンランプに対する入力電力を調節することにより、当該キセノンランプから放射される真空紫外光の強度を一定に維持することが提案されている。
【0004】
従来、真空紫外光の強度を求める方法としては、例えば特許第3043564号公報において、セシウム−テルリウムよりなる光電面を備えた光電子倍増管を用いて、波長160〜320nmの真空紫外光の強度を直接的に測定する方法が開示されている。
しかしながら、この方法においては、セシウム−テルリウムよりなる光電面を備えた光電子倍増管が高価であると共に、経時的な劣化が激しくてその寿命が短く、実用性が低い、という問題がある。
【0005】
また、特許第3043564号公報においては、蛍光体を用いて真空紫外光を可視光に変換し、この可視光の強度をシリコンフォトダイオードを用いて測定することにより、間接的に当該真空紫外光の強度を求める方法も開示されている。しかしながら、この測定方法においては、蛍光体が経時劣化の大きいものであるため、経時的に真空紫外光の変換レベルに誤差が生じることとなり、長期間にわたって正確な測定を行うことが困難である。
【0006】
更に、蛍光体の経時劣化に伴う上記の問題を解決するために、特許第3170989号公報においては、キセノンランプの放電容器内に微量の酸素を混入させ、これにより生成される酸化キセノンから放射される緑色光線の強度を、シリコンフォトダイオードなどの半導体受光素子を用いて測定し、当該緑色光線の強度と真空紫外光の強度との間の相関関係に基づいて演算処理を行うことにより、真空紫外光の強度を測定する方法が開示されている。この測定方法によれば、蛍光体を用いる必要がないため、長期間にわたって安定した結果を得ることが可能である点では有利である。
しかしながら、この方法においては、放電空間内において酸化キセノンが生成されるために、当該空間内に封入されたキセノンの一部が犠牲とされて、発光に利用されないため、真空紫外光の発光効率が低いものとなる、という問題がある。
【0007】
また、特許第2789557号公報および特許第2836058号公報においては、キセノンランプから放射される可視光の強度を、シリコンフォトダイオードなどの半導体受光素子を用いて測定し、当該可視光の強度と真空紫外光の強度との間の相関関係に基づいて演算処理を行うことにより、間接的に真空紫外光の強度を測定する方法が開示されているが、キセノンランプから放射される可視光の強度は非常に小さいものであるために真空紫外光の強度を高い精度で求めることができない、という問題がある。
【0008】
一方、特開2001−228018号公報においては、キセノンランプから放射される800〜1000nmの波長域の近赤外線の強度を、フォトダイオードなどの半導体受光素子を用いて測定し、当該波長域の近赤外線の強度と真空紫外光の強度との間の相関関係に基づいて演算処理を行うことにより、間接的に真空紫外光の強度を求める方法が開示されている。
【0009】
しかしながら、例えば高い真空紫外光の放射強度を得るためにキセノンランプを大きな入力電力で点灯させた場合には、真空紫外光の強度を正確に求めることができないことが判明した。
具体的に説明すると、図6は、キセノンランプを種々の大きさの入力電力で点灯させた場合におけるランプ電力密度と放射強度との関係を示す特性曲線図であって、曲線ハは波長172nmの真空紫外光、曲線ニは波長800〜1000nmの近赤外線に係るものである。この図から理解されるように、キセノンランプにおけるランプ電力密度が或る程度以上に大きくなると、真空紫外光の強度は次第に上昇していく特性を示すが、近赤外線の強度はピークP3を経由してそれ以降は下降する特性を示す。このように、当該近赤外線の強度と真空紫外光の強度との間には、一義的な相関関係がなく、従って、この測定方法においては、真空紫外光の強度を正確に求めることができない。
ここで、ランプ電力密度とは、キセノンランプの放電空間における単位容積当たりの電力である。
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、キセノンランプから放射される真空紫外光の強度を正確に求めることができ、これにより、当該キセノンランプから放射される真空紫外光の強度の制御を確実に行うことができる真空紫外光照射装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の真空紫外光照射装置は、放電容器内にキセノンガスが封入され、キセノンのエキシマ分子発光による真空紫外光を放射し、波長200〜400nmの光の強度がランプ電力密度が大きくなるに従って次第に大きくなる特性を示し、波長200〜400nmの光の強度と波長200nm未満の真空紫外光の強度との間に一義的な相関関係を有するキセノンランプを具えてなる真空紫外光照射装置において、
キセノンランプから放射される波長200〜400nmの被測定光の強度を測定する光測定手段と、この光測定手段における測定結果に基づいて、200nm未満の波長域に放射ピークを有する真空紫外光の強度を求める演算手段と、この演算手段における演算結果に応じて、当該キセノンランプから放射される当該真空紫外光の強度を制御する制御手段とを備えてなることを特徴とする。
【0012】
以上において、キセノンランプは、ランプ電力密度が2.8W/cm3 以上の大きさとなる入力電力で点灯されることが好ましい。
また、光測定手段は、ガリウム・リンフォトダイオードまたはシリコンフォトダイオードよりなる半導体受光素子を有してなることが好ましく、更に、光測定手段は、波長400nmを超える光を遮断するフィルターを備えていることが好ましい。
【0013】
【作用】
本発明の真空紫外光照射装置によれば、キセノンランプにおいて、波長200nm未満の真空紫外光との間に相関した強度で波長200〜400nmの光が放射されるので、この光を被測定光として利用することにより、当該キセノンランプから放射される真空紫外光の強度を正確に求めることができ、従って、当該キセノンランプから放射される当該真空紫外光の強度の制御を確実に行うことができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る真空紫外光照射装置の構成を示す説明用断面図、図2は、キセノンランプの一例における構成を管軸に沿った断面で示す説明用断面図である。
図1において、10はランプハウスであって、その下面に例えば石英ガラスよりなる光照射窓11が設けられており、当該ランプハウス10の内部には、例えばアルミニウムよりなる冷却ブロック12が設けられている。この冷却ブロック12の下面には、それぞれ断面が半円形の複数(図1においては4つ)の溝121が、紙面に垂直な方向に伸びるよう互いに平行に並んで形成されており、これらの溝121の各々において、当該溝121の内径と適合する外径を有する棒状のキセノンランプ1が配設されて収納されている。また、ランプハウス10の内部には、例えば窒素ガスなどの不活性ガスが充填されている。
【0015】
冷却ブロック12には、下端開口が1本のキセノンランプ1の外周壁面と対向し、上方に伸びてランプハウス10の外部に貫通する貫通孔13が形成されており、この貫通孔13の上端開口を塞ぐようフィルター143が配設されると共に、このフィルター143の外面側に、半導体受光素子141を備えた光測定手段14が配設されている。この半導体受光素子141は、波長200〜400nmの被測定光を測定するものであって、その受光部142が、フィルター143および貫通孔13を介して、キセノンランプ1の外周壁面に対向する状態とされている。
【0016】
そして、光測定手段14には、当該光測定手段14の測定結果に基づいて、一定の演算処理を行う演算手段15が接続されていると共に、この演算手段15には、得られた演算結果に基づいて高周波電源17からキセノンランプ1に対して供給される入力電力を調節し、これにより当該キセノンランプ1から放射される真空紫外光の強度を制御する制御手段16が接続されている。
【0017】
以上において、キセノンランプ1は、例えば図2に示すように、例えば石英ガラスなどの誘電体よりなる円筒状の外側管2と、この外側管2内にその管軸に沿って配置された、当該外側管2の内径より小さい外径を有する、例えば石英ガラスなどの誘電体よりなる円筒状の内側管3と、この外側管2および内側管3により形成された円筒状の空間の両端部を気密に閉塞する端壁5、6とよりなる二重管構造の密閉型の放電容器4を有し、この放電容器4により形成される円筒状の放電空間Sにキセノンガスが封入されたものである。
【0018】
そして、放電容器4を形成する外側管2には、その外周面に密接した状態で、例えば金網などの導電性材料よりなる網状の一方の電極7が設けられていると共に、内側管3には、その内周面に密接した状態で、例えばアルミニウム板よりなる他方の電極8が設けられた構成とされており、この一方の電極7および他方の電極8は、高周波電源17に接続される。
【0019】
また、光測定手段14を構成する半導体受光素子141としては、200〜400nmの波長域の範囲における任意の波長の被測定光を検知するものが用いられ、例えば190〜550nmの波長を有する光線を検知するガリウム・リンフォトダイオード、または、190〜1100nmの波長を有する光線を検知するシリコンフォトダイオードなどを用いることができる。
【0020】
フィルター143としては、波長400nmを超える光を遮断するものが用いられ、特に波長200〜400nmの紫外光を透過する波長選択特性を有するものが用いられることが望ましい。
【0021】
演算手段15は、光測定手段14において検出された波長200〜400nmの被測定光の強度に基づいて、波長172nmに放射ピークを有する真空紫外光(以下、「特定の真空紫外光」ともいう。)の強度を求める演算処理を実行するものである。
また、制御手段16は、演算手段15において得られた当該真空紫外光の強度に応じて、高周波電源17からキセノンランプ1に対して供給される入力電力を調節し、キセノンランプ1から放射される真空紫外光の強度を制御するものである。
ここで、高周波電源としては、その周波数は特に制限されるものではなく、例えば数kHzから数GHzの周波数域における適宜の周波数であればよい。
【0022】
以上のキセノンランプとしては、放電容器、電極の形態、放電空間内にキセノンガスと共に封入されるガスの種類、放電空間における当該ガスの封入圧力などは特に制限されるものではないが、その寸法例を挙げると、外側管2における全長が250.0mm、外径が26.5mm、肉厚が1.0mmであり、内側管3における全長が250.0mm、内径が16.0mm、肉厚が1.0mmのものであって、放電容器4の内部に、キセノンガスが33kPaの圧力で封入され、入力電力が190Wのときにランプ電力密度が2.8W/cm3 となるものである。
【0023】
本発明の真空紫外光照射装置によれば、高周波電源17から適宜の大きさの入力電力が供給されることによりキセノンランプ1が点灯状態とされて、特定の真空紫外光が被処理物に照射されて光照射処理が行われる。
【0024】
而して、光測定手段14の半導体受光素子141には、キセノンランプ1から放射され、貫通孔13を介してフィルター143を透過した波長200〜400nmの光が被測定光として照射され、これにより、当該被測定光の強度が測定される。
【0025】
図3は、キセノンランプから放射される光のスペクトル図であって、この図から明らかなように、キセノンランプ1からは、キセノンのエキシマ分子発光により、波長172nmに放射ピークP1を有する特定の真空紫外光が放射されるが、同時に、図4に示すように波長200〜400nmの領域に複数の放射ピークよりなるピーク群P2を有する光が放射される。ここで、図4は、図3をログスケールで示すスペクトル図である。
【0026】
そして、この波長200〜400nmの光の強度は、図5に曲線ロで示すように、ランプ電力密度が大きくなるに従って次第に大きくなる特性を示し、同様の傾向を示す曲線イで示す特定の真空紫外光の強度との間に一義的な相関関係を有する。ここで図5は、キセノンランプを種々の大きさの入力電力で点灯させた場合におけるランプ電力密度と放射強度との関係を示す特性曲線図である。
【0027】
すなわち、図5から理解されるように、キセノンランプ1におけるランプ電力密度が大きくなるに従って真空紫外光の強度が上昇し、同様に波長200〜400nmの光の強度も上昇する現象は、キセノンランプ1におけるランプ電力密度が2.8W/cm3 以上の領域においても維持される。
【0028】
然るに、上記の構成によれば、波長200〜400nmの光を被測定光としてその強度を測定するので、これに基づいて、特定の真空紫外光の強度を一義的に求めることができる。
【0029】
そして、演算手段15において、光測定手段14において測定された波長200〜400nmの被測定光の強度に基づいて、上記の相関関係を利用した演算処理を行うことにより、特定の真空紫外光の強度を正確に求めることができ、この演算手段15において得られた特定の真空紫外光の強度に応じて、制御手段16により、高周波電源17からキセノンランプ1に対して供給される入力電力が調節されることにより、実際にキセノンランプ1から放射される特定の真空紫外光の強度を、例えば一定のレベルに制御することができる。
【0030】
そして、以上の説明から理解されるように、本発明は、キセノンランプ1が、ランプ電力密度が2.8W/cm3 以上の大きさとなる入力電力で点灯状態とされる場合においても有効に実施することができ、この点で実用上大きな利点が得られる。
【0031】
以上、本発明を具体的な形態に基づいて説明したが、本発明は、上述の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば光測定手段を複数のキセノンランプの各々について配設し、入力電力の調節を各キセノンランプ毎に行う構成とすることができる。
また、キセノンランプは、電極が配設されておらず、例えば数GHzの電磁波を放電容器に直接照射することにより点灯される構成のものであってもよく、このような構成においては、放電容器は円筒状の外側管のみにより形成されていてもよい。
【0032】
【発明の効果】
本発明の真空紫外光照射装置によれば、キセノンランプにおいて、波長200nm未満の真空紫外光との間に相関した強度で波長200〜400nmの光が放射されるので、この光を被測定光として利用することにより、当該キセノンランプから放射される真空紫外光の強度を正確に求めることができ、従って、当該キセノンランプから放射される当該真空紫外光の強度の制御を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る真空紫外光照射装置の構成を示す説明用断面図である。
【図2】キセノンランプの一例における構成を管軸に沿った断面で示す説明用断面図である。
【図3】キセノンランプから放射される光のスペクトル図である。
【図4】図3をログスケールで示すスペクトル図である。
【図5】キセノンランプを種々の大きさの入力電力で点灯させた場合におけるランプ電力密度と放射強度との関係を示す特性曲線図である。
【図6】キセノンランプを種々の大きさの入力電力で点灯させた場合におけるランプ電力密度と放射強度との関係を示す特性曲線図である。
【符号の説明】
1 キセノンランプ
2 外側管
3 内側管
4 放電容器
5 端壁
6 端壁
7 電極
8 電極
10ランプハウス
11 光照射窓
12 冷却ブロック
121 溝
13 貫通孔
14 光測定手段
141 半導体受光素子
142 受光部
143 フィルター
15 演算手段
16 制御手段
17 高周波電源
P1 放射ピーク
P2 ピーク群
P3 ピーク
S 放電空間
Claims (4)
- 放電容器内にキセノンガスが封入され、キセノンのエキシマ分子発光による真空紫外光を放射し、波長200〜400nmの光の強度がランプ電力密度が大きくなるに従って次第に大きくなる特性を示し、波長200〜400nmの光の強度と波長200nm未満の真空紫外光の強度との間に一義的な相関関係を有するキセノンランプを具えてなる真空紫外光照射装置において、
キセノンランプから放射される波長200〜400nmの被測定光の強度を測定する光測定手段と、この光測定手段における測定結果に基づいて、200nm未満の波長域に放射ピークを有する真空紫外光の強度を求める演算手段と、この演算手段における演算結果に応じて、当該キセノンランプから放射される当該真空紫外光の強度を制御する制御手段とを備えてなることを特徴とする真空紫外光照射装置。 - キセノンランプは、ランプ電力密度が2.8W/cm3 以上の大きさとなる入力電力で点灯されることを特徴とする請求項1に記載の真空紫外光照射装置。
- 光測定手段は、ガリウム・リンフォトダイオードまたはシリコンフォトダイオードよりなる半導体受光素子を有してなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空紫外光照射装置。
- 光測定手段は、波長400nmを超える光を遮断するフィルターを備えていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の真空紫外光照射装置。
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