JP4077204B2 - 吸水性複合体の製造方法および吸水性複合体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸水性複合体に関し、より詳細には、例えば生理用品や紙おむつ、保鮮シート等といった体液や水分の吸収材として利用される吸水性複合体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水分吸収性の素材として、自重の数十倍から数百倍の水を吸収する吸収性樹脂(または高吸収性樹脂、SAP:Super Absorbent Polymer)が開発されており、生理用品や紙おむつ(使い捨て紙おむつ)等の衛生材料をはじめとして、農園芸用分野、鮮度保持等の食品分野、結露防止剤等の産業分野において幅広く利用されている。このような水分吸収性素材は、シート状の基材に吸収性樹脂を固着して製造した吸水性複合体として多く利用されている。
【0003】
このような吸水性複合体は、紙、パルプ、多孔性フィルムあるいは不織布等の基材シート上に、架橋されたポリアクリル酸等からなる吸収性樹脂粉末を均一に分散させ固着させるという方法で製造されることが一般的に行われている。基材シートに対する吸収性樹脂の固着方法としては、例えば吸収性樹脂をティッシュ、綿等でサンドイッチにする方法や、パルプと吸収性樹脂粉末を混合した後にエンボス加工等の圧着処理を行う方法等が採用されている。
しかし、これらの製造方法においては、樹脂粉末を基材上に均一に分散させる必要があるが、基材上に安定性よく固定することが困難であり、分散後も一部局所に集合化することが多く、また基材から粉末が漏れやすい上、吸水後の膨潤ゲルが流動して使用感を悪化させることがあった。このような樹脂の移動を防ぐために、吸収性樹脂を接着剤等で基材に接着させることも考えられたが、この場合接着剤によって樹脂が吸水膨潤してしまい、吸水性能が発揮できなくなってしまう。さらに、樹脂を粉末として用いるため、製造時の取り扱いが煩雑で、また基材上への均一な分散を効率よく行うプロセスは製造コストも割高であった。
【0004】
そこで、このような問題を改善した吸水性複合体の製造方法として、第1に、例えば特公平3−67712号公報、特開昭62−22810号公報、また特許第316439号公報で開示されているように、アクリル酸およびアクリル酸塩からなる単量体混合物の水溶液を基材シート上に塗布し、加熱処理あるいは電磁放射線の照射によって単量体を重合させ、吸収性ポリマーを形成させる方法が知られている。
【0005】
また、第2に、例えば特許第2516221号公報に開示されているように、アクリル酸またはアクリル酸塩等の単量体とそれらの重合体との混合物を含んだ水溶液を、繊維状基材上に塗布し、その後に、前記第1の製造方法と同様の方法により、単量体を重合させ、吸収性ポリマーを形成させる製造方法が知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した第1の製造方法で吸水性複合体を製造すると、重合される前に単量体が基材内部に含浸してしまい、製造された吸水性複合体に残存する単量体の量が多くなり、また基材の柔軟性は損われる上、使用の際、水分は基材表面の吸収性ポリマーに吸収されるにとどまるため吸収力が乏しいという問題があった。また、電子線照射による重合では自己架橋が進みやすいため吸収性能がさらに低下し、また製造コストも高くなるという問題があった。
【0007】
一方、第2の製造方法においては、単量体と、それらの重合体との混合物水溶液(この水溶液は、本発明におけるプレポリマーと概念的に同様であるため、以下プレポリマーと称する)は、該重合体によって適度に増粘される。それによって、当該混合物水溶液が基材上に塗布された際に、基材内部に含浸することが抑えられ、基材の柔軟性を低下させることを防止しながら吸水性複合体を製造することが可能となる。しかし、この方法で重合後に得られる樹脂は、ゲル強度が弱いため吸水性に劣り、また、吸水後のゲルがべたつき感などの不快感を与えることがあるという問題があった。
【0008】
本発明の課題は、基材の柔軟性が損われず、また基材上で樹脂が流動することもなく、吸収性能のよい吸水性複合体を好適に製造できる吸水性複合体の製造方法、および吸水性複合体を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための、本発明による第1の手段は、アクリル酸および/またはアクリル酸塩を主体とする水溶性単量体と、光重合開始剤と、を含む組成物に、紫外線を照射することにより、前記水溶性単量体の一部を重合させてプレポリマーを形成させる第1の工程と、繊維質基材上に、少なくとも架橋剤を溶解させた前記プレポリマーを、点状部と、前記点状部の直径より幅の小さい線からなる線状部と、が交互に連結するパターンに塗工する第2の工程と、前記プレポリマーが塗工された繊維質基材に紫外線を照射することにより、当該プレポリマーに含まれる前記水溶性単量体を重合させて当該プレポリマーを硬化させる第3の工程と、を有することを特徴とする吸水性複合体の製造方法である。
【0010】
また本発明による第2の手段は、アクリル酸および/またはその塩を主成分とする水溶性単量体と、前記水溶性単量体に対して0.01〜15重量%(w/w%)の量の親水性増粘剤と、水と、光重合開始剤と、架橋剤と、を混合して製した組成物を、点状部と、前記点状部の直径より幅の小さい線からなる線状部と、が交互に連結するパターンに、繊維質基材上に塗工し、さらに当該組成物が塗工された繊維質基材に紫外線を照射することにより、当該組成物に含まれる水溶性単量体を重合させて当該組成物を硬化させることを特徴とする吸水性複合体の製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
〔第1の実施の形態〕
本発明の第1の実施の形態において、吸水性複合体は、主に、アクリル酸および/またはアクリル酸塩(以下、アクリル酸系単量体という)を主体とする水溶性単量体と、光重合開始剤と、架橋剤と、繊維質基材シート(以下、基材という。)とを用いて、図1にフローチャートで示した製造工程を経て製造される。
即ち、水溶性単量体と光重合開始剤との混合水溶液を調製し(ステップS1)、当該水溶液に紫外線を照射することにより、水溶性単量体の一部を重合させたプレポリマーAを作製する(ステップS2)。その後、プレポリマーAに架橋剤、および光重合開始剤を添加して(ステップS3)、基材上に塗工し(ステップS4)、さらにプレポリマーAに紫外線を照射して(ステップS5)、重合・架橋させて硬化させることにより、基材上に固着された状態の吸収性樹脂を形成させる。その結果、基材と吸収性樹脂とで構成される吸水性複合体が製造される。
【0012】
まず、本実施の形態における吸水性複合体の製造に用いられる各物質について説明する。
【0013】
水溶性モノマーとして使用されるアクリル酸系単量体は、架橋性単量体の共存下に重合することにより、吸収性樹脂を与える物質である。アクリル酸系単量体としては、アクリル酸の20〜90モル%を塩基で部分中和して得られるアクリル酸およびアクリル酸塩(例えば、ナトリウム塩・カリウム塩のようなアルカリ金属塩、アンモニウム塩等)の単量体混合物とすると、吸水性能の優れたポリマーが得られるので好ましい。
【0014】
アクリル酸系単量体とともに併用し得る単量体(以下、その他の単量体という)としては、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のアニオン性モノマーやその塩;(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、4-メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、等のノニオン性親水性基含有モノマー;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアリールジメチルアンモニウムクロライド等のアミノ基含有不飽和モノマーやそれらの4級化合物等が挙げられる。
【0015】
上記のその他の単量体のうち、好ましい単量体は、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、4-メトキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートおよびメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる単量体である。
【0016】
アクリル酸系単量体だけでは得られる重合体と単量体水溶液とが分離し易いのに対して、その他の単量体を使用する場合には、得られる重合体と単量体水溶液との相溶性が向上し、相分離が起こり難い。従って、アクリル酸系単量体とその他の単量体とを併用することが好ましい。
その他の単量体の好ましい使用割合は、その他の単量体とアクリル酸系単量体の合計量を基準にして、1〜30重量%である。その他の単量体の使用割合が全単量体中の30重量%を超えた場合のプレポリマーAから形成される吸収性樹脂は、吸収性能が不足し易いためである。
また、水溶性単量体と、それを溶解する水性媒体の使用割合は、水溶性単量体の濃度として20〜60重量%が好ましい。水溶性単量体濃度を20重量%以下として吸収性樹脂に加工した場合、水分除去に多大な労力が必要となるからである。また水溶性単量体濃度を60重量%以上とすると、単量体水溶液中の単量体が析出して系全体がスラリーとなりやすく、取り扱いが困難となるからである。
【0017】
本実施の形態において光重合開始剤は、アゾ系、ベンゾイル系等の公知のものが使用できる。光重合開始剤の好ましい使用量は、単量体と重合体の合計の100質量部あたり0.001〜0.1質量部である。光重合開始剤の量が0.001質量部未満であると、プレポリマーAを得るのに長時間を要し、一方、光重合開始剤の量が0.1重量部を超えると、重合のプロセスにおいてプレポリマーA中のポリマー含有量を制御することが難しくなる。
【0018】
ベンゾイル基を有するラジカル系光重合開始剤の具体例としては、ベンゾイン、ベンジル、アセトフェノン、ベンゾフェノン、およびこれらの誘導体が挙げられる。
該誘導体の例としては、ベンゾイン系のものとして、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン系のものとして、ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-メチル-1-(4-(メイチルチオ)フェニル)-2-モンフォリノプロパン-1,2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン-1,2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル)-2-ヒドロキシジー2-メチルー1-プロパンー1-オン等が挙げられる。
【0019】
またベンゾフェノン系のものとして、Oーベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4'-メチルジフェニルサルファイド、3,3',4,4'-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキシ-2-プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミウムブロミド、(4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド、4,4'-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4'-ジエチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
【0020】
アゾ系光重合開始剤の具体例としては、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)ジハイドレート、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)塩酸塩、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、および2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]が好ましい。
【0021】
光重合に際して、単量体水溶液中に次亜燐酸ソーダ、メルカプトエタノール、イソプロパノール等の連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動材の好ましい使用量は、全単量体に対して0.0001〜0.5重量%であり、さらに好ましくは0.0001〜0.1重量%である。連鎖移動材の使用量が全単量体に対して0.5重量%を超えて使用されると、プレポリマーの成分となる重合体の重合度が低くなるため好ましくない。
また本実施の形態においては、プレポリマーをさらに重合させて硬化させる際に、所望により、熱によりラジカルを発生する過酸化物、過流酸塩化合物を加えてもよい。過酸化物の例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、クメンヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシドおよびジクミルペルオキシド等が挙げられる。過硫酸塩化合物の例としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムおよび過硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0022】
また、プレポリマーAに加えられる架橋剤としては、メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン、トリアリルシアヌレート等の、1分子中にラジカル重合性基を複数個有する架橋性単量体(以下、ラジカル重合型架橋性単量体という)や、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等の、1分子中に反応性官能基を複数個有する架橋性単量体(以下、官能基型架橋性単量体という)が挙げられる。
本発明においては、ラジカル重合型架橋性単量体および官能基型架橋性単量体を併用することが好ましい。架橋性単量体の好ましい使用量は、全単量体に対して0.001〜1.0重量%である。架橋性単量体の使用量が全単量体に対して1.0重量%を超えて使用されると、ゲル強度は高くなるが、吸水性の乏しい吸収性樹脂となるため好ましくない。
【0023】
基材(繊維質基材)としては、紙、不織布、織布等の繊維組成物を用いることができ、素材としては、天然繊維、合成繊維、のいずれを用いてもよい。
天然繊維の例としては、綿、セルロース(木材パルプ)、羊毛、絹等が挙げられる。また合成繊維としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエステル(PET等)、アクリル等が挙げられ、PE /PP、PE /PETなどのバイコンポーネント繊維も用いられる。
しかし、親水性の高い基材の場合、水溶性単量体やプレポリマーを塗布した際に滲みや染み込みが大きく、水溶性単量体やプレポリマーが基材中に浸透しすぎてしまうため、疎水性、または撥水性の高い基材を用いると好ましい。従って、上記の中では、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PET等)、ポリエチレン(PE)、PE /PP、PE /PETが好ましい。また、PPセルロース系混合繊維や、PP等に部分親水化処理を施した不織布などを用いてもよい。
【0024】
好適な基材の目付け(秤量)は、8〜80g/m2(gsm)であり、特に10〜50 g/m2のものが好ましい。8 g/m2未満では裏抜けしやすく、80 g/m2以上では吸水性複合体の厚みがでてくること、またSAP(高吸収性樹脂)の含有割合が少なくなるため好ましくない。
不織布の繊維径は、1〜6dtx(デシテックス)のものが好ましい。6dtx以上では、繊維質基材が疎になりすぎるため、十分な量のSAPを固定することができないからである。また1dtx以下では、吸水性複合体中の液の拡散が不十分となるからである。
また以上のほか、スポンジ、多孔性フィルム等を基材として使用してもよい。
【0025】
尚、製造される吸収性樹脂を多孔質な構造にして吸収速度の高い吸水性複合体を得る目的で、プレポリマーAに発泡剤を配合した上で、重合・硬化させることもできる。発泡剤としては、従来公知の無機系、有機系発泡剤から任意に選択して使用することが可能である。
中でも無機系炭酸塩が好適であり、その例としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等、およびこれらの水和物等が挙げられ、それらの1種または2種以上を用いる。特に、本実施の形態において好ましい炭酸塩は、1価カチオン、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウムの炭酸塩または炭酸水素塩である。
【0026】
炭酸塩系発泡剤のプレポリマーA溶液に対する添加量は、プレポリマーA固形分に対し、0.01〜10.0重量%であるのが好ましく、より好ましくは0.1〜5.0重量%である。炭酸塩発泡剤の添加量が0.01重量%より少ない場合は、得られる吸収性樹脂を多孔質構造にすることができないため、吸収速度の高い吸水性複合体を得ることができない。また、発泡剤を10重量%以上添加しても、それ以上の多孔質化が困難であるばかりか、未発泡の炭酸塩発泡剤が吸水性複合体中に存在するため吸収性樹脂と基材との密着性に影響を与えることとなる。
【0027】
また、アゾ系化合物が有機系発泡剤として有効である。アゾ系化合物は、低温でプレポリマーAを重合・硬化させることができ、しかも重合・硬化時に分解して窒素ガスを発生するので、発泡剤として好適である。このようなアゾ系化合物としては、アゾニトリル化合物、アゾアミジン化合物、アゾアミド化合物、アルキルアゾ化合物等が好ましい。10時間半減期温度が100℃以下のものが特に好ましく、具体的には、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2'-アゾビスイソブチルアミド二水和物などが挙げられる。
【0028】
アゾ系化合物を有機発泡剤として使用する場合には、プレポリマーAの固形分に対して0.001〜1重量%であるのが好ましく、より好ましくは0.01〜0.5重量%である。添加量が0.001重量%より少ない場合は、得られる吸収性樹脂を多孔質構造にすることができないため、吸収速度の高い吸水性複合体を得ることができない。また、発泡剤を1重量%以上添加しても、それ以上の多孔質化が困難であるばかりか、重合して得られる吸収性樹脂の分子量が低下するため、ゲル強度が低く吸水ゲルにぬめりが生じるため、使用感の悪い吸水性複合体となる。
また発泡剤は、紫外線照射前に添加することが好ましく、添加方法としては、発泡剤をそのまま添加するか、或いは任意の溶媒中に溶かし込み、発泡剤溶液として添加してもよい。
【0029】
発泡剤添加の際には、気泡径および発泡時期をコントロールする目的で、任意の消泡剤を併用することも可能である。消泡剤としては特に限定されるものではなく、一般的に破泡剤、抑泡剤、整泡剤等として知られているものを任意に選択することができ、1種または2種以上組み合わせて用いることもできる。
消泡剤の具体的な成分としては、油脂類、脂肪酸類、低級アルコール類、高級アルコール類、金属石鹸類、シリコーン類、疎水性シリカ・シリコーンコンパウンド類、脂肪酸エステル類、ポリグリコール類、ポリグリコールエステル類、ポリエーテル類、変成シリコーン類、油溶系ポリマー類、有機リン系化合物、硫酸化脂肪酸類、ポリエーテル誘導体、シリカ・変成シリコーンコンパウンド類、等が挙げられる。
【0030】
消泡剤のプレポリマーA溶液に対する添加量は、プレポリマーA固形分に対し、0.0001〜0.1重量%であるのが好ましい。消泡剤の添加量が0.0001重量%未満であると、十分な気泡径、発泡時期のコントロールが不可能となる。また、0.1重量%以上添加しても、添加量に見合うだけの効果は期待できず、またコスト的にも好ましくないと思われるので、なるべく少量の消泡剤を使用すべきである。
消泡剤は、発泡添加前にプレポリマーA水溶液に添加することが好ましく、添加方法としては、消泡剤をそのまま添加するか、或いは任意の溶媒中に溶解または分散させ、消泡剤溶液または消泡剤分散液として添加してもよい。
【0031】
次に、本実施の形態における吸水性複合体の製造方法を詳細に説明する。
まず、前述のアクリル酸系単量体等の水溶性単量体と、光重合開始剤とを、前述のような割合で水に混合する(図1、ステップS1)。この混合水溶液に紫外線を照射して、単量体の一部を重合させる(ステップS2)。
【0032】
ここで、この混合水溶液中の水溶性単量体を重合させる手段としては、紫外線以外にも電子線やガンマ線等を用いる方法もあるが、紫外線はそれらに比して装置が安価であり、また重合転換率の制御が容易であって、さらに重合に要する時間も短いため、好ましい。
【0033】
ステップS2において、混合水溶液に照射させる紫外線の好ましい照度は、0.1〜10mW/cm2である。照度が10mW/cm2を超えると、重合反応と同時に架橋反応が併発し、ゲル化が起こり易いからである。
照射光量すなわち照射エネルギーは、上記照度に時間を乗ずることにより得られるが、好ましい照射光量は、10〜10,000mj/cm2である。この照射光量は、照度0.1〜10mW/cm2の光であれば、1〜120分照射することにより得られる。
紫外線の光源としては、例えば、蛍光ケミカルランプ、蛍光青色ランプ、メタルハライドランプまたは高圧水銀ランプ等を使用することができる。
【0034】
ステップS2の工程においては、紫外線が照射される混合水溶液を、反応中攪拌することが好ましい。この攪拌方法は特に限定されず、例えば攪拌羽根を用いることができる。この攪拌により、効率よく重合反応を進行させることができる。反応液を覆う雰囲気としては、窒素ガス、二酸化炭素ガス等のいずれでもよいが、好ましくは窒素ガスである。
【0035】
ステップ2の光重合によって、単量体と、ポリマーとが水性媒体に溶解したプレポリマーAが得られる。
プレポリマーAに含まれるポリマーは、水溶性単量体(前述のアクリル酸系単量体もしくはその他の単量体)を重合して得られるものであって、重量平均分子量は50万以上、より好ましくは100万以上である。ポリマーの重量平均分子量が50万未満であると、プレポリマーAを重合・硬化して得られる吸収性樹脂の吸水性が劣るからである。
また、プレポリマーAに含まれるポリマーの量は、上記単量体とポリマーとの合計量を基準にして、0.01〜50重量%であり、好ましくは0.1〜25重量%である。ポリマーの割合が0.01重量%未満であると、プレポリマーAの粘度が低すぎて、プレポリマーAの使用に制約が生じる。一方、ポリマーの割合が50重量%を超えると、プレポリマーAから得られる吸収性樹脂の吸水性が劣るからである。
プレポリマーAの好ましい粘度は、繊維状基材に塗布された場合に基材に含浸する程度が大きくなく、且つ取り扱いが容易である点を鑑み、1,000〜50,000mPa・S(B型粘度計、25℃で測定)とし、より好ましくは1,500〜30,000 mPa・Sである。
【0036】
ステップ2において作製されたプレポリマーAに、架橋剤、光重合開始剤、また所望により発泡剤・消泡剤を添加して溶解させる(ステップS3)。さらに、この架橋剤等が加えられたプレポリマーA水溶液を、前述の基材上に塗工する(ステップS4)。
プレポリマーAを基材に塗工する(塗布する)方法としては、スクリーン印刷、グラビア印刷等の公知の印刷方法や、スプレーを用いて吹き付ける方法、ノズルを介して流しかける方法、キス塗布、等のいずれの方法を用いてもよい。
【0037】
ここで、プレポリマーAを基材上に塗工するパターンについて説明する。
プレポリマーAを基材上に全面塗工すると、基材の柔軟性が損われ、またプレポリマーAの表面積が小さくなり、十分な吸収力を発揮できない。一方、基材上にプレポリマーAを所定の間隔を設けて不連続な点状に塗工した場合、基材の柔軟性は維持され吸収力に優れるものの、基材と樹脂との固着面積が乏しくなるため吸水膨潤後のゲル粒子は基材から脱落してしまう。従って、基材上にはプレポリマーAを連続的な線状に塗布するか、あるいは所定の間隔を設けた所定の大きさの不連続な点(点状部)の間を線で繋いだ連続的な模様状、即ち、点状部と、当該点状部の直径より幅の小さい線からなる線状部と、が交互に連結するパターンとなるように塗布することが好ましい。
【0038】
基材に塗布されるプレポリマーAの塗工パターンの一例を、図2に示す。図2では、規則的な略円形の点状のプレポリマーA(点状部1)を、直線状のプレポリマーA(線状部2)が連結するように、プレポリマーAが基材3に塗布された様子を示している。
このように連続的に塗布する場合、点状部1の直径aは、0.1<直径a(mm)<5とするのが好ましい。点状部1の直径aが5mmより大きいと、吸収性樹脂が吸水膨潤した際に、吸水性複合体の感触に違和感が生じたり、柔軟性が低下する等の不具合を生じるだけでなく、吸収性樹脂の表面積も不十分となり吸水性も劣るためである。また、直径aが0.1mmより小さいと、吸収性樹脂の量が少なく十分な吸収力を発揮できないからである。
【0039】
点状部1の直径aを上記範囲とした場合、点状部1と点状部1とのを間隔bとして、0.05<間隔b(mm)<2となるようにプレポリマーAを塗布するか、或いは基材の単位面積1m2当たりの点状部1の数をc個として、4<c(個/ cm2)<4,000となるようにプレポリマーAを塗布することが好ましい。
図2においては、左右に隣接する点状部1と点状部1との間隔をb1、上下に隣接する点状部1と点状部1との間隔をb2、として示す。このb1,b2ともに、上記の間隔bの範囲を満たすように(即ち、隣り合う点状部同士の間隔全てが、上記の範囲を満たすように)、プレポリマーAを塗工する。
間隔bが2mm以上、或いは1cm2当たりの点状部1の数が4個以下となると、基材上の樹脂の固着面積の割合が小さくなり、吸収力が低下するからである。一方、間隔bが0.05mm以下、或いは1cm2当たりの点状部1の数が4,000個以上となると、プレポリマーAを基材に塗布する工程において、隣接する液滴(プレポリマーA)同士が接触しやすくなるため、塗工パターンの再現が困難になるばかりか、吸水膨潤時に、隣接する含水ゲル同士が互いに接触して(接近しすぎて)吸収性が妨げられるためである。
【0040】
点状部1と点状部1とを繋ぐ線状部2の線幅cは、0.05<線幅c(mm)<直径a(点状部1の直径a)、とする。線幅cが直径a以上となると、吸収性樹脂が吸水膨潤した際に、吸水性複合体の感触に違和感が生じたり、柔軟性が低下する等の不具合が生じるだけでなく、吸収性樹脂の表面積も不十分となり、吸水性が低下するためである。
また、線幅cが0.05mmより小さいと、吸収性樹脂の量が少なくなり十分な吸収力を発揮できないばかりでなく、基材と樹脂との固着面積が乏しくなるため、吸水膨潤後のゲル粒子は基材から脱落してしまうからである。
加えて、点状部1と線状部2との大きさが上記範囲より小さいと、塗工パターンの再現が難しく、基材3上に一様に塗工することが困難となるからである。
【0041】
尚、塗工パターンについては、図2に限定されることはなく、様々なパターンが可能である。例えば、線状部は直線でも曲線でもよく、図3(a)のように縦横に線状部を施したり、点状部を格子状に連結してもよい。また、図3(b)のように斜め方向の格子状に施してもよく、図3(c)のように縦横方向と、斜め方向の両方の線状部を施してもよい。また、図3(d)のように屈曲させたり、図3(e),(f)のように蛇行する線状部としてもよい。また、これらの規則的な直線あるいは曲線の他、図3(g)のように、基材3上に不規則に曲線や直線を施してもよい。加えて線状部は、互いに隣接する点状部同士を連結するほか、図3(h)のように、離れた点状部同士を繋ぐようにしてもよい。さらに図3(i),(j)のように、一部の線状部を枝状にしてもよい。
また、点状部は図2或いは図3のような円形に限定されず、三角形、四辺形等、任意の形状でよい。その場合上記の直径aとしては、当該点状部の面積に略相当する円の直径とすればよい。
プレポリマーAは、点状部が複数個の他の点状部と、線状部によって連結されるように、基材上に塗布されることにより、吸水膨潤後のゲル粒子が基材から脱落することが防止される。
【0042】
続いて、繊維状基材に塗布されたプレポリマーAに紫外線を照射し、プレポリマーを重合・架橋させて硬化させ、吸収性樹脂を形成させる(ステップS5)。このように基材上でプレポリマーAを硬化させることにより、基材の表面上に吸収性樹脂が固着された吸水性複合体が形成される。吸水性複合体の形成後、必要に応じて乾燥を行う。
【0043】
このステップS5において、基材上に塗布されたプレポリマーAに対する紫外線の照度は、プレポリマーを構成する単量体の種類やプレポリマーAの粘度等を考慮して決定されるが、好ましくは1〜10,000mW/cmである。
また、重合反応を進行させる際、酸素が存在すると、酸素が重合反応の仮定で発生するラジカルと反応するため、プレポリマーAの雰囲気は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
さらに、重合時のプレポリマーAの温度は5〜95℃が好ましい。
【0044】
以上のように、本実施の形態の吸水性複合体の製造方法によれば、水溶性単量体の一部を重合させて作製したプレポリマーAを基材上に塗布し、然る後にプレポリマーAを重合・架橋させて吸収性樹脂を形成させることにより、基材上に吸収性樹脂が好適に固着された吸水性複合体を形成できる。
従って、粉末の樹脂を使用する場合と異なり、吸収性樹脂が基材上からはがれたり流動したりすることがなく、好適に使用できるほか、製造時においても粉末樹脂を用いる場合に比べ、取り扱いが容易である。
また、単量体が基材内部に含浸することを防止できるので、単量体に紫外線を適切に照射させ重合反応を進行させることができ、製造された吸水性複合体に残存する単量体の量を低減させることができる。さらに、単量体が基材内部で重合・架橋することを防止できるので、基材の柔軟性を損うことなく吸水性複合体を形成でき、また基材表面に吸収性樹脂が固着されることにより、吸水性複合体に吸収力を十分に発揮させることができる。
加えて、疎水性または撥水性の基材を用いることにより、プレポリマーが基材中に含浸することがより一層防止され、上記のような効果により、基材の柔軟性が損われずに吸収性のよい吸水性複合体を形成できる。
【0045】
また、単量体を重合させる手段として紫外線を照射しているので、電子線やガンマ線等の照射に比べてコストを抑えることができ、また重合転換率の制御が容易であって、重合に要する時間も短いため好適である。
【0046】
さらに、本実施の形態において、プレポリマーAを、連続的な線状か、または所定の間隔を設けた所定の大きさの不連続な点(点状部)の間を線(線状部)で連結させたパターンとなるように基材上に塗布すれば、吸収性樹脂が基材状から脱落し難くなる。またこの場合、点状部と線状部とを前述の範囲の大きさにすれば、基材状に固着される吸収性樹脂の表面積や量などが適切となるので、吸水膨潤時に隣接する含水ゲル同士が互いに接触して吸水が妨げられることが防止でき、十分な吸収力を発揮することができる。加えて、このような塗工パターンにより、吸収性樹脂によって基材の柔軟性が損われることなく、さらに吸水膨潤時に吸水性複合体の感触に違和感が生じることも低減され、好適に使用することができる。
【0047】
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態では、吸水性複合体を、主に、アクリル酸および/またはアクリル酸塩(以下、アクリル酸系単量体という)を主体とする水溶性単量体と、親水性増粘剤と、光重合開始剤と、架橋剤と、基材とを用いて、図4にフローチャートで示す製造工程で製造する方法を説明する。
即ち、水溶性単量体と、親水性増粘剤との混合水溶液を調製し(ステップS11)、適度に粘性を有するプレポリマーB(プレポリマーBの粘度については後述する)を作製する。その後、プレポリマーBに架橋剤、および光重合開始剤を添加して(ステップS12)、基材上に塗工する(ステップS13)。さらに基材に塗工したプレポリマーBに紫外線を照射して(ステップS14)重合・架橋させて硬化させることにより、基材上に固着された状態の吸収性樹脂を形成させる。その結果、基材と吸収性樹脂とで構成される吸水性複合体が製造される。
【0048】
第2の実施の形態において、吸水性複合体の製造に用いる親水性増粘剤について説明する。尚、製造に用いるその他の物質、即ち、アクリル酸系単量体を主体とする水溶性単量体、光重合開始剤、架橋剤、繊維質基材、および必用に応じて加えられる発泡剤、過酸化物、過流酸塩化合物等は、第1の実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0049】
本実施の形態で用いられる親水性増粘剤は、アクリル酸および/またはその塩を主成分とする水溶性単量体に対して0.01〜15重量%添加して、後述する適度な粘度のプレポリマーを調整することができる親水性高分子である。添加量が15%以上となると、重合後に得られる樹脂はゲル強度が弱く、また吸水後のゲルがべたつき感などの不快感を与えることとなるからである。また、添加量が0.01%より少ないと、単量体水溶液全体の粘度が低くなるため、塗布された単量体水溶液は重合前に基材内部に含浸してしまう。すると、単量体の重合が十分に行われず、製造された吸水性複合体に残存する単量体の量が多くなり、また基材の柔軟性は損われる上、使用の際、水分は基材表面の吸収性樹脂には吸収されるが、基材内部に含浸した樹脂には極めて吸収され難いため、吸収力が乏しくなるからである。
【0050】
本発明に使用される親水性増粘剤としては、前記アクリル系単量体水溶液に上記範囲の量を添加した際、溶解もしくは膨潤して後述する適度な粘度を与えるものであれば、無機系、有機系の制限なく使用できる。これら親水性増粘剤の具体例としては、ベントナイト、バーミキュライト、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、粉末シリカ、等に代表される無機物質、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、等に代表されるセルロース誘導体、キサンタンガム、ジェランガム、グアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ペクチン、等、およびそれらの誘導体に代表される天然高分子化合物、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ヒドロキシアルキルアクリレート重合体、アルコキシアルキルアクリレート重合体、等、非イオン性合成高分子化合物、アクリル酸、メタクリル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、およびそれらのアルカリ金属塩、およびアンモニウム塩等を重合して得られるアニオン性合成高分子化合物が挙げられる。
【0051】
プレポリマーBの好ましい粘度は、繊維状基材に塗布された場合に、基材に含浸する程度が大きくなく、且つ取り扱いが容易である点を鑑み、500〜100,000mPa・S(B型粘度計、25℃で測定)とし、より好ましくは1,500〜30,000mPa・Sである。
【0052】
本実施の形態における吸水性複合体の製造方法は、水溶性単量体と親水性増粘剤の混合水溶液を調製する(ステップS11)ことにより、前述の範囲の粘度を有するプレポリマーBを調製する。
その後の工程については、第1の実施の形態のステップ3以後の工程と同様であって、プレポリマーBに、架橋剤と、光重合開始剤とを第1の実施の形態に記載の範囲と同様の量で添加し、また所望により発泡剤を添加した後(ステップS12)、基材上にプレポリマーを塗工する(ステップS13)。尚、プレポリマーBを塗布する塗工パターンについては、第1の実施の形態と同様である。
【0053】
そして、塗布されたプレポリマーBに、第1の実施の形態のステップS5と同様の照度で紫外線を照射して(ステップS14)、プレポリマーBを重合・架橋させて硬化させることにより、基材上に吸収性樹脂が固着された吸水性複合体を形成させる。吸水性複合体形成後、必要に応じて乾燥を施す。
【0054】
以上の吸水性複合体の製造方法によれば、水溶性単量体と親水性増粘剤とを水に混合させて作製したプレポリマーBを基材上に塗工し、その後にプレポリマーBを重合・架橋させて吸収性樹脂を形成させることにより、基材上に吸収性樹脂が好適に固着された吸水性複合体を形成できる。
従って、吸収性樹脂が基材上からはがれたり流動したりすることがなく、好適に使用できる。また、単量体が基材内部に含浸することを防止でき、単量体に紫外線を好適に照射できるので、吸水性複合体に残存する単量体量を低減させることができる。さらに、基材内部で樹脂が形成されることを防止できるので、基材の柔軟性を損うことがなく吸水性複合体を形成できる。加えて、基材表面に吸収性樹脂が固着されることにより、吸収性を十分に発揮させることができる。
また、単量体を重合させる手段として紫外線を照射しているので、コストを抑えることができ、重合に要する時間も短いため好適である。
さらに、プレポリマーを重合・硬化させる際、発泡剤を添加することにより、吸水性複合体の吸水速度等の吸収性能を向上させることができる。
加えて基材として疎水性あるいは撥水性のものを用いれば、プレポリマーの塗工の際に滲みや染み込みを防ぐことができ、基材上に吸収性樹脂が好適に固着した吸水性複合体を得ることができる。
【0055】
また、本実施の形態の製造方法では、上記範囲の量で親水性増粘剤を添加してプレポリマーを調整することにより、適度なゲル強度が得られ、製造される吸収性樹脂の吸収性能もよく、また吸収性樹脂が吸水膨潤した際のべたつき感も低減でき、好適に使用できる。
さらにプレポリマーBを、前記第1の実施の形態と同様の塗工パターンで基材に塗布することにより、吸収性樹脂が基材状から脱落し難くなる。また、吸収性樹脂の表面積や、基材に施される吸収性樹脂の量も適切となり、且つ、吸水膨潤時に隣接する含水ゲル同士が互いに接触して吸水が妨げられることも防止できるので、十分な吸収力を発揮することができる。加えて、このような塗工パターンによって、基材の柔軟性が損われることなく樹脂を基材上に施すことができ、また吸水膨潤時に吸水性複合体の感触に違和感を生じることもなく、好適に使用することができる。
【0056】
尚、上記第1および第2の実施の形態で製造される吸水性複合体は、使い捨て紙おむつや生理用品の吸収体として利用できるほか、土壌の保水剤等の農園芸用品や、食品(例えば魚・肉類等)の保鮮シート、結露防止剤、乾燥剤、調湿剤等の用途に利用することができる。
【0057】
【実施例】
以下に、実施例および具体例を挙げることにより、本発明をさらに具体的に説明する。
【0058】
<実施例1>
本発明における第1の実施の形態で説明した製造方法に従って、吸水性複合体を形成した。
ガラス製ビーカーに、36%アクリル酸ナトリウム水溶液347.6g、アクリル酸41.1g、2-メトキシエチルアクリレート8.8g、水102.5gからなる単量体水溶液を入れ、25℃に調整した。
次いで、光重合開始剤として、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン 0.005重量%(対単量体成分)を添加した後、ガラスビーカー側面から6Wブラックライトを用いて、5分間紫外線を照射した。そして反応液の入ったビーカーを氷浴中で冷却し、液状物を得た。得られた液状物は、増粘成分としてポリマー成分を1.4重量%、モノマー成分を33.6重量%含有し、粘度11,000mPa・s(B型粘度、25℃)の、均質な溶液であった。この溶液を、プレポリマー1とする。
【0059】
プレポリマー1に、架橋性単量体としてジエチレングリコールジグリシジルエーテルと、ジエチレングリコールジアクリレート、また過酸化剤として過硫酸ナトリウムを、それぞれプレポリマー1中の単量体と重合体の合計量に対して0.05重量%添加した。さらに、光重合開始剤である2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンを、プレポリマー1に0.01重量%添加して得た混合液を、ポリプロピレン不織布(秤量25g/m2)上に、図2に示す塗工パターンで塗布した。尚、点状部の直径(図2のa)は0.6mm、間隔(図2のb1,b2;本実施例においては、間隔b1=間隔b2とする)は0.6mm、また線幅(図2のc)を0.2mm(この塗工パターンを、パターンAとする)とした。
この塗工物に、400w高圧水銀灯を用いて紫外線を3分間照射し、その後120℃で10分間乾燥を行って、吸水性複合体を得た。得られた吸水性複合体において塗工された樹脂の量(塗工量)は55(g/m2)であった。
【0060】
得られた吸水性複合体について、吸水量および残存モノマー量の測定を行った。
▲1▼吸水量の測定方法
5×5cmに切り取った吸水性複合体を、200meshナイロン製袋に封入し、生理食塩水に30分間浸漬後、5分間水切りした。水切り後、ナイロン製袋ごと重量を測定し、得られた測定値から袋の重量を引き、吸水性複合体のサンプル重量で割ることにより、単位重量当たりの吸水量(g/g)を算出した。
また同様にして、生理食塩水に3時間浸漬した場合の吸水量を測定した。
▲2▼残存モノマーの測定方法
5×5cmに切り取った吸水性複合体を更に細かく細断して、200mlの生理食塩水に入れて攪拌し、分散させた。3時間攪拌後、当該分散液をメンブランフィルターで濾過し、濾液中の残存モノマーをHPLC(:高速液体クロマトグラフィー)で測定した。
【0061】
測定の結果、本実施例1で得られた吸水性複合体の性能は、吸水量は30分で28(g/g)、3時間で41(g/g)、また残存モノマー160ppmであった。
【0062】
<実施例2>
実施例2では、前記実施例1におけるプレポリマー1を、ポリプロピレン不織布上に直径a1.0mm、間隔b1.0mm、線幅c0.2mm(この塗工パターンを、パターンBとする)で塗工し、他は実施例1と同一条件で吸水性複合体を製造した。得られた吸水性複合体では塗工量60(g/m2)であった。
この吸水性複合体の性能を実施例1と同様の方法で測定したところ、吸水量は30分で26(g/g)、3時間で41(g/g)、残存モノマー90ppmであった。
【0063】
<実施例3>
実施例3では、前記実施例1におけるプレポリマー1を、ポリプロピレン不織布上に直径a2.0mm、間隔b1.5mm、線幅c0.2mm(この塗工パターンを、パターンCとする)で塗工し、他は実施例1と同一条件で吸水性複合体を製造した。得られた吸水性複合体では塗工量58(g/m2)であった。
この吸水性複合体の性能を実施例1と同様の方法で測定したところ、吸水量は 30分で26(g/g)、3時間で38(g/g)、残存モノマー110ppmであった。
【0064】
<実施例4>
実施例4では、前記実施例1におけるプレポリマー1を、ポリプロピレン不織布上に直径a6.0mm、間隔b3.0mm、線幅c0.5mmで塗工し、他は実施例1と同一条件で吸水性複合体を製造した。得られた吸水性複合体は、塗工量70(g/m2)であった。
この吸水性複合体の性能を実施例1と同様の方法で測定したところ、吸水量は30分で4(g/g)、3時間で23(g/g)、残存モノマー200ppmであった。
【0065】
<実施例5>
実施例5では、前記実施例1におけるプレポリマー1を、ポリプロピレン不織布上に直径a1.0mm、間隔b3.0mm、線幅c0.2mmで塗工し、他は実施例1と同一条件で吸水性複合体を製造した。得られた吸水性複合体は、塗工量16(g/m2)であった。
この吸水性複合体の性能を実施例1と同様の方法で測定したところ、吸水量は30分で22(g/g)、3時間で37(g/g)、残存モノマー320ppmであった。
【0066】
<実施例6>
実施例6では、前記実施例1におけるプレポリマー1を、ポリプロピレン不織布上に直径a1.0mm、間隔b1.0mm、線幅c2.0mmで塗工し、他は実施例1と同一条件で吸水性複合体を製造した。得られた吸水性複合体は、塗工量68(g/m2)であった。
この吸水性複合体の性能を実施例1と同様の方法で測定したところ、吸水量は30分で11(g/g)、3時間で22(g/g)、残存モノマー290ppmであった。
【0067】
<実施例7>
実施例7では、前記実施例1におけるプレポリマー1に、架橋性単量体としてとしてジエチレングリコールジグリシジルエーテルと、ジエチレングリコールジアクリレート、過酸化剤として過硫酸ナトリウムを、それぞれプレポリマー1中の単量体と重合体の合計量に対して0.05重量%添加し、また、光重合開始剤である2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンを、プレポリマー1に0.01重量%添加した。さらに、シリコーン系消泡剤(ダウ・コーニング社製DC−193)をプレポリマー1中の単量体と重合体の合計量に対して1重量%混合し、得られた混合液を、ポリプロピレン不織布(秤量25g/m2)上に、パターンAで塗工した。この塗工物に、400w高圧水銀灯を用いて紫外線を3分間照射し、その後120℃で10分間乾燥を行って、吸水性複合体を得た。得られた吸水性複合体は、塗工量54(g/m2)であった。
【0068】
得られた吸水性複合体の性能を実施例1と同様にして測定したところ、吸水量は30分で39(g/g)、3時間で39(g/g)、残存モノマー210ppmであった。即ち、30分で飽和吸水量に達し、吸水力に優れていた。
【0069】
<実施例8>
本実施例では、本発明における第2の実施の形態で説明した製造方法に従って、吸水性複合体を製造した。
36%アクリル酸ナトリウム水溶液365.9g、アクリル酸43.3g、水90.8gからなる単量体水溶液を調整した。そして、当該水溶液に親水性増粘剤であるポリエチレンオキサイド7.0g(対モノマー成分4重量%)を添加した。得られた液状物(プレポリマー2とする)の粘度は、7,000mPa・s(B型粘度、25℃)であった。
プレポリマー2に、実施例1のプレポリマー1と同様の条件で、架橋性単量体と、光重合開始剤とを添加し、さらにパターンAでポリプロピレン不織布上に塗工し、紫外線照射および乾燥を行って吸水性複合体を得た。得られた吸水性複合体では塗工量52(g/m2)であった。
この吸水性複合体の性能を実施例1と同様の方法で測定したところ、吸水量は30分で27(g/g)、3時間で39(g/g)、残存モノマー180ppmであった。
【0070】
<実施例9>
本実施例では、前記実施例8と同様にして、36%アクリル酸ナトリウム水溶液365.9g、アクリル酸43.3g、水90.8gからなる単量体水溶液を調整した。そして当該水溶液に、親水性増粘剤としてカルボキシメチルセルロース7.0g(対モノマー成分4重量%)を添加した。得られた液状物(プレポリマー3とする)の粘度は、13,000mPa・s(B型粘度、25℃)であった。
プレポリマー3に、実施例1のプレポリマー1と同様の条件で、架橋性単量体と、光重合開始剤とを添加し、パターンAでポリプロピレン不織布上に塗工し、紫外線照射および乾燥を行って吸水性複合体を得た。得られた吸水性複合体では塗工量55(g/m2)であった。
この吸水性複合体の性能を実施例1と同様の方法で測定したところ、吸水量は30分で25(g/g)、3時間で39(g/g)、残存モノマー190ppmであった。また、吸水後の吸水性複合体は、べたつき等の不快な感触が生じなかった。
【0071】
<実施例10>
本実施例では、前記実施例8と同様にして、36%アクリル酸ナトリウム水溶液365.9g、アクリル酸43.3g、水90.8gからなる単量体水溶液を調整した。そして当該水溶液に、親水性増粘剤としてポリビニルアルコール 5.25g (対モノマー成分4重量%)を添加した。得られた液状物(プレポリマー4とする)の粘度は、9,000mPa・s(B型粘度、25℃)であった。
プレポリマー4に、実施例1のプレポリマー1と同様の条件で、架橋性単量体と、光重合開始剤とを添加し、パターンAでポリプロピレン不織布上に塗工し、紫外線照射および乾燥を行って吸水性複合体を得た。得られた吸水性複合体は塗工量54(g/m2)であった。
この吸水性複合体の性能を実施例1と同様の方法で測定したところ、吸水量は30分で26(g/g)、3時間で40(g/g)、残存モノマー100ppmであった。また、吸水後の吸水性複合体は、べたつき等の不快な感触が生じなかった。
【0072】
<比較例1>
比較例1においては、アクリル酸8.2重量%、アクリル酸ナトリウム25重量%、2-メトキシエチルアクリレート1.8重量%、水65重量%からなる単量体水溶液を調製した。
得られた水溶液に、実施例1のプレポリマー1と同様の条件で、架橋性単量体と、光重合開始剤とを添加し、パターンAでポリプロピレン不織布上に塗工し、紫外線照射および乾燥を行って吸水性複合体を得た。吸水性複合体の塗工量は59(g/m2)であった。
得られた吸水性複合体は、単量体水溶液が不織布全体に含浸した状態で重合し、柔軟性に欠けるものであった。またこの吸水性複合体の性能を実施例1と同様の方法で測定したところ、吸水量は30分で8(g/g)、3時間で24(g/g)、残存モノマー11,000ppmであった。
【0073】
<比較例2>
比較例2においては、36%アクリル酸ナトリウム水溶液347.6g、アクリル酸41.1g、2-メトキシエチルアクリレート8.8g、水102.5gからなる単量体水溶液を調製した。そして当該水溶液に、親水性増粘剤として20wt%ポリアクリル酸ソーダ水溶液500g(対モノマー成分25重量%)を添加した。得られた液状物(プレポリマー5とする)の粘度は、5,500mPa・s(B型粘度、25℃)であった。
プレポリマー5に、実施例1のプレポリマー1と同様の条件で、架橋性単量体と、光重合開始剤とを添加し、パターンAでポリプロピレン不織布上に塗工し、紫外線照射および乾燥を行って吸水性複合体を得た。吸水性複合体の塗工量は51(g/m2)であった。
得られた吸水性複合体の性能を実施例1と同様の方法で測定したところ、吸水量は30分で11(g/g)、3時間で25(g/g)、残存モノマー880ppmであった。また、吸水後の吸水性複合体はゲル強度が弱く、べたつき感があった。
【0074】
以上の実施例1〜10および比較例1,2の結果を、以下の表1に示す。
【表1】
【0075】
実施例1〜10と、比較例1との比較において、比較例1のように親水性増粘剤を加えずに単量体水溶液を基材に塗工して製造した吸水性複合体は、柔軟性が損われる上、吸水量も小さく、また残存モノマーも非常に多い。吸水性複合体では、基材に付された吸収性樹脂に含まれる残存モノマー量の基準値は、1000ppm以下であって、良好な吸収特性を発揮するためには、実質的に200ppm以下であることが望ましいと考えられている。
従って、比較例1の製造方法では、良質な吸水性複合体を得ることができないが、実施例1〜10のように、プレポリマーを作製するか、或いは親水性増粘剤を加えた単量体水溶液を作製して、基材に塗工する方法で吸水性複合体を製造すれば、吸水性、残存モノマーの量ともに良好な吸水性複合体を得ることができる。
【0076】
また実施例8〜10と、比較例2との比較においては、25重量%の親水性増粘剤を加えた比較例2では吸水性が悪く、吸水後べたつき感があり、また残存モノマー量も多い。
従って、実施例8〜10のように、水溶性単量体に対して0.01〜15重量%でプレポリマーを得ることができる親水性増粘剤を使用すれば、吸水性が良好で、残存モノマー量が小さく、また吸水時のべたつき感等のない使用感の良好な吸水性複合体を得ることができる。
【0077】
実施例1〜3と、実施例4との比較より、プレポリマーの基材への塗工において、点状部の直径を6mmと大きくすると、吸水性複合体の吸水速度が小さく、また残存モノマーがやや多くなる。また、実施例5より、点状部の間隔が大きくなると、塗工量が少なくなる。さらに実施例6では、線状部の線幅cが点状部の直径aより大きく塗工量は十分であるが、吸水速度がやや小さくなる。
従って、プレポリマーを基材上に、点状部と、複数の点状部を繋ぐ線状部による模様状に塗布し、且つ、点状部および線状部の各サイズを0.1<直径a(mm)<5.0、0.05<間隔b(mm)<2、0.05<線幅c(mm)<直径、とすれば、吸水量、吸収速度がより良好で、残存モノマー量が非常に小さく、基材の柔軟性を損なわず感触が良好な吸水性複合体を得ることができるので、より好ましい。
また、実施例7の結果を、実施例1と比較すると、30分で飽和吸収量に達していることから、発泡剤の添加により吸収性能が向上することが分かる。
【0078】
<実施例11>
本実施例では、種々の繊維質基材に、プレポリマーを実施例1におけるパターンAで塗工した。
▲1▼不織布として、疎水性のPE/PETエアスルー(秤量25 g/m2)を使用して、実施例1のプレポリマー1をパターンAで塗布した。
得られたプレポリマー塗工物について、塗工の均一性を評価したところ良好であった。
▲2▼不織布として、疎水性のPPスパンボンド(秤量40 g/m2)を使用して、実施例1のプレポリマー1をパターンAで塗布した。
得られたプレポリマー塗工物について、塗工の均一性を評価したところ良好であった。
▲3▼不織布として、疎水性のPP/PETエアスルー(秤量40 g/m2)を使用して、実施例1のプレポリマー1をパターンAで塗布した。
得られたプレポリマー塗工物について、塗工の均一性を評価したところ良好であった。
【0079】
<実施例12>
本実施例では、種々の親水性繊維質基材に、プレポリマーを実施例1におけるパターンAで塗工した。
▲1▼本実施例では、不織布として、親水性のPP SMS(秤量8 g/m2)を使用して、実施例1のプレポリマー1をパターンAで塗布した。
得られたプレポリマー塗工物について、塗工の均一性を評価したところ、プレポリマーが基材に含浸するなどにより不良であった。
▲2▼本実施例では、不織布として、親水性のレーヨンスパンレース(秤量40 g/m2)を使用して、実施例1のプレポリマー1をパターンAで塗布した。
得られたプレポリマー塗工物について、塗工の均一性を評価したところ、プレポリマーが基材に含浸するなどにより不良であった。
▲3▼本実施例では、不織布として、親水性のコットンスパンレース(秤量40 g/m2)を使用して、実施例1のプレポリマー1をパターンAで塗布した。
得られたプレポリマー塗工物について、塗工の均一性を評価したところ、プレポリマーが基材に含浸するなどにより、均一性は実施例11に比較してやや劣っていた。
従ってプレポリマーを塗布する基材としては、疎水性または撥水性のものを用いると、親水性繊維質基材を用いる場合に比べて塗工の均一性がより良好となるので好ましい。
【0080】
【発明の効果】
本発明の第1の手段によれば、水溶性単量体の一部を重合させて作製したプレポリマーを、点状部と、前記点状部の直径より幅の小さい線からなる線状部と、が交互に連結するパターンに、基材上に塗工し、然る後にプレポリマーを重合・架橋させて吸収性樹脂を形成させることにより、単量体が基材内部に含浸することを防止でき、また単量体に紫外線を適切に照射して重合反応を進行させることができるので、基材上に吸収性樹脂が好適に固着された吸水性複合体を製造することができる。
従って、得られた吸水性複合体は、吸収性樹脂が基材上からはがれたり流動したりすることがなく、好適に使用できる。また、吸水性複合体に残存する単量体の量が低減される。さらに、単量体が基材内部に含浸して重合・架橋することが防止されるので、基材の柔軟性が損われることを防止できる。加えて、基材表面に吸収性樹脂が固着されるので、吸収力を十分に発揮させることができる。
また本発明の第2の手段によれば、上記第1の手段と同様の効果が得られ、また製造される吸収性樹脂は、適度なゲル強度を有し、吸収性能もよく、また吸収性樹脂が吸水膨潤した際のべたつき感も低減されるので、好適に使用できる吸水性複合体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した第1の実施の形態による吸水性複合体の製造方法の製造工程を示すフローチャートである。
【図2】プレポリマーを、所定の間隔の点状部と、複数の点状部を線状部で連結するパターンで塗工した場合の一例を示す平面図である。
【図3】プレポリマーを、所定の間隔の点状部と、複数の点状部を線状部で連結するパターンで塗工した場合の、他の例を示す平面図である。
【図4】本発明を適用した第2の実施の形態による吸水性複合体の製造方法の製造工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 点状部
2 線状部
3 基材(繊維質基材)
Claims (10)
- アクリル酸および/またはアクリル酸塩を主体とする水溶性単量体と、光重合開始剤と、を含む組成物に、紫外線を照射することにより、前記水溶性単量体の一部を重合させてプレポリマーを形成させる第1の工程と、
繊維質基材上に、少なくとも架橋剤を溶解させた前記プレポリマーを、点状部と、前記点状部の直径より幅の小さい線からなる線状部と、が交互に連結するパターンに塗工する第2の工程と、
前記プレポリマーが塗工された繊維質基材に紫外線を照射することにより、当該プレポリマーに含まれる前記水溶性単量体を重合させて当該プレポリマーを硬化させる第3の工程と、
を有することを特徴とする吸水性複合体の製造方法。 - 前記第2の工程において、
前記プレポリマーを、0.1<直径(mm)<5.0、0.05<間隔(mm)<2、の前記点状部と、0.05<線幅(mm)<〔前記点状部の直径〕、の前記線状部と、を形成するように、前記繊維質基材上に塗工することを特徴とする請求項1に記載の吸水性複合体の製造方法。 - 前記第2の工程において、
前記塗工前に、前記プレポリマーに、発泡剤を添加することを特徴とする請求項1又は2に記載の吸水性複合体の製造方法。 - 前記第2の工程において、
前記塗工前に、前記プレポリマーに、消泡剤を添加することを特徴とする請求項3に記載の吸水性複合体の製造方法。 - アクリル酸および/またはその塩を主成分とする水溶性単量体と、前記水溶性単量体に対して0.01〜15重量%の量の親水性増粘剤と、水と、光重合開始剤と、架橋剤と、を混合して製した組成物を、点状部と、前記点状部の直径より幅の小さい線からなる線状部と、が交互に連結するパターンに、繊維質基材上に塗工し、さらに当該組成物が塗工された繊維質基材に紫外線を照射することにより、当該組成物に含まれる水溶性単量体を重合させて当該組成物を硬化させることを特徴とする吸水性複合体の製造方法。
- 前記組成物を、0.1<直径(mm)<5.0、0.05<間隔(mm)<2、の前記点状部と、0.05<線幅(mm)<〔前記点状部の直径〕、の前記線状部と、を形成するように、前記繊維質基材上に塗工することを特徴とする請求項5に記載の吸水性複合体の製造方法。
- 前記組成物に、発泡剤を添加することを特徴とする請求項5又は6に記載の吸水性複合体の製造方法。
- 前記組成物に、消泡剤を添加することを特徴とする請求項7に記載の吸水性複合体の製造方法。
- 繊維質基材上に、アクリル酸および/またはアクリル酸塩を主体とする水溶性単量体を重合して得られる吸収性樹脂が固着された吸水性複合体において、
点状部と、前記点状部より幅の小さい線状部と、が交互に連続して形成されるように、前記吸収性樹脂が前記繊維質基材上に固着されていることを特徴とする吸水性複合体。 - 繊維質基材上に、アクリル酸および/またはアクリル酸塩を主体とする水溶性単量体を重合して得られる吸収性樹脂が固着された吸水性複合体において、
0.1<直径(mm)<5.0、0.05<間隔(mm)<2.0、の前記点状部と、0.05<線幅(mm)<〔前記点状部の直径〕、の前記線状部と、が形成されるように、前記吸収性樹脂が前記繊維質基材上に固着されていることを特徴とする請求項9に記載の吸水性複合体。
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