JP4069698B2 - オイルシール構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車用ブレーキアクチュエータに使用されるオイルポンプ、ショックアブソーバなどにおけるオイルシール構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、自動車用ブレーキアクチュエータに使用されるオイルポンプとして、特開2000−9058号公報、特開2001−80498号公報などに開示され、その開示されたギヤポンプを、この発明の一実施形態を示す図1及び図2を参照して説明すると、自動車用ブレーキアクチュエータのハウジングH内に組み込まれ、吸入ポート1からオイルaを吸引し、吐出ポート2からオイルaを吐出する。そのオイルaの吸入・吐出作用は、モータMにより回転する軸3に固定のインナーロータ4と、そのインナーロータ4に偏心してケーシング7d、7e内に回転自在なアウターロータ5との噛み合いにより行い、そのインナーロータ4等から成るポンプ部10を回転軸3の軸方向に複数設けている。
【0003】
このギヤポンプPにおいて、高圧となるポンプ部10からのブレーキオイルaの洩れを防ぐため、回転軸3とポンプシリンダ7a、7cの間に高圧シール8を介設するとともに、その高圧シール8が破損した場合に、その洩れを防ぐために、さらに外側の回転軸3とポンプシリンダ7cの間に低圧シール9を介設している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記ギヤポンプPにおいて、ポンプ部10は、その吸入・吐出作用につれてその内部が負圧又は正圧となり、その負圧時、高圧シール8を介して空気がポンプ部10に入り込む恐れがある。空気の流入はブレーキアクチュエータの作用に悪影響を及ぼす。
【0005】
この発明は、上記ギアポンプなどにおいて、負圧による上記空気流入を、高圧シールのみに頼らず、別の手段でもっても防止することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために、この発明は、ケーシング内にオイルが充填され、そのオイル圧が負圧と正圧を繰り返し、そのケーシング内から外部に向かって、そのケーシング内からのオイル洩れを防止する高圧シールと低圧シールを設けたオイルシール構造において、その高圧シールと低圧シールの間にオイルシール室を形成し、そのオイルシール室に前記オイルと同質の液状オイルを充填し、その室内の液状オイルで空気流入を阻止することとしたのである。
【0007】
液状オイルは、シール性が高く、かつ、正圧と負圧を繰り返すオイルと同質のものを使用すれば、仮に、そのオイルシール室内のオイルがケーシング内に流れ込んで混合しても支障がないからである。このため、同質とは、混合しても支障がない程度をいう。
【0008】
このとき、上記オイルシール室はオイルが満杯とされずに空気層が形成されているものとすれば、ケーシング内が高圧となって、高圧シールからオイルが洩れ出ても、空気層の収縮により、オイルシール室の急激な圧力変化を防ぎ、低圧シールの破損を防止できる。
【0009】
具体的な構成としては、ポンプシリンダにそのポンプ駆動機を取付け、その駆動機からポンプシリンダ内に駆動軸が挿し込まれて、その駆動軸によりポンプ部を動かしてオイルを吸入・吐出するオイルポンプにおいて、前記ポンプ部と前記駆動機間のケーシング内駆動軸周りにオイルシール室を形成し、そのオイルシール室と前記ポンプ部間の駆動軸周りに高圧シールを介設するとともに、前記オイルシール室と前記駆動機間のケーシング内駆動軸周りに低圧シールを設け、前記オイルシール室には、前記駆動軸周りを埋没させる量の前記吸入・吐出するオイルと同質のオイルを充填した構成を採用し得る。
【0010】
上記オイルシール室へのオイル注入は、ポンプシリンダなどのケーシング外面からの注入孔を形成し、その注入孔を介して行うようにしてもよいが、前記オイルシール室周りのケーシング外面にリセス室を形成し、このリセス室と前記オイルシール室との間に連通孔を形成するとともに、リセス室にはオイルの注入口を形成したものとし得る。リセス室を形成すれば、そのリセス室にもオイルシール部のオイルが流出入するため、全体のオイル量が多くなって、その量制御も容易になるとともに、注入口がリセス室に存在することにより、オイルの注入も容易である。
【0011】
このとき、上記連通孔は、上記オイルシール室のオイル層内に常時没する位置に形成されれば、リセス室とオイルシール室の油面(オイル面)が同一となるため、リセス室のオイル面の確認で、オイルシール室のオイル面を確認できる。また、リセス室とオイルシール室間のオイルの流出入も常時行われ、オイル量制御も確実となる。なお、一般には、オイルシール室のオイル面高さは、注入量によって決定する。
【0012】
さらに、上記リセス室とオイルシール室のオイル層内に没する部分と、リセス室とオイルシール室の空気層を形成した部分とに、それぞれ連通孔を形成すれば、一方の連通孔が空気抜きとなって、オイルシール室へのオイル流入がスムースとなる。
【0013】
【実施の形態】
図1乃至図3に、一実施形態をオイルギヤポンプPに採用した例を示し、上記公開公報記載のものと同様に、自動車用ブレーキアクチュエータのハウジングH内にギヤポンプPが組み込まれ、そのシリンダ7cのフランジ部にポンプ駆動用のモータMがねじ止めされている。このギヤポンプPは、2つのポンプ部10が設けられている。
【0014】
ポンプ部10は、モータMにより回転される回転軸3にキー11を介して固定されたインナーロータ4と、そのインナーロータ4に偏心して嵌められるとともにケーシング7d、7eに回転自在に嵌められたアウターロータ5とから成る。その両ロータ4、5の噛み合い部の一側に吸入ポート1からの流路1aが、他側に吐出ポート2への流路2aがそれぞれ臨んでおり、モータMによるインナーロータ4の回転につれてアウターロータ5も回転し、インナーロータ4とアウターロータ5の噛み合い量の変化によって、オイルaを吸入し、吐出する。
【0015】
各ポンプ部10は、その両側に中間シリンダ7aとサイドシリンダ7b又は7cが位置し、上記ポンプケーシング7dが中間シリンダ7aとサイドシリンダ7cに、ポンプケーシング7eが中間シリンダ7aとサイドシリンダ7bにそれぞれ外周縁全周を溶接することによって一体化されている。両サイドシリンダ7b、7cには、それぞれ吸入ポート1、吐出ポート2及びそれらからポンプ部10へのオイル流路1a、2aが形成されているとともに、ポンプ部10の吸入側と吐出側を区画するシール部材12用の環状穴13が形成されている。
【0016】
回転軸3は、各シリンダ7a、7b、7c(総称符号7)に各種のベアリング14を介して回転自在に支持され、シリンダ7bの先端に板バネ15が嵌められ、サイドシリンダ7cにナット16がねじ込まれることにより、ハウジングH内にポンプPが固定されている。
【0017】
中間シリンダ7aには両ポンプ部10、10を区画する高圧シール8が回転軸3周りに設けられ、一方のシリンダ7cには、ポンプ部10とモータM側を区画する高圧シール8が同じく回転軸3周りに設けられている。そのモータ側の高圧シール8より外側のシリンダ7c内には、回転軸3の周りにオイルシール室20が形成され、そのオイルシール室20の外側部位に低圧シール9が嵌められている。図中、8aは高圧シール8の回り止めである。
【0018】
オイルシール室20の周りのシリンダ7cの外面全周にはリセス室21が形成され、そのリセス室21の下部がハウジングHの注入口22に連通している。リセス室21はその上下部でオイルシール室20に連通孔23a、23bを介して連通し、前記注入口22から、ポンプ部10で吸入・吐出するブレーキオイルaと同質の液状オイルaが注入されると、図3に示すように、その連通孔23a、23bを介してリセス室21及びオイルシール室20にオイルaが注入される。その注入量は、同図に示すように、回転軸3の全周が確実に埋没する状態とする。埋没すれば、オイルシール室20内のオイルaにより、回転軸3とシリンダ7c間のシールが確実に行われて、ポンプ部10への空気流入が阻止される。
【0019】
また、オイルシール室20内はオイル層上に空気層24を形成し、ポンプ部10からオイルaがオイルシール室20に洩れても、その空気層24の収縮により洩れ量を吸収するとともに、ポンプ部10からの高圧シール8を介したオイル圧力を減圧する。所要量のオイルaが注入されれば、注入口22にはボールスチール22aの圧入などで閉栓する。図中、18はOリングである。
【0020】
オイルシール室20の構造としては、図4(a)に示すように、リセス室21を周囲部分的としてもよく、空気の収縮性から、図4(a)及び図3の上側の連通孔23aは省略できる。この場合、下側の連通孔23bによってオイルシール室20内はオイルaと空気が置換されることとなる。また、図4(b)に示すように、上側からオイルを注入し得る。
【0021】
リセス部21は必ずしも設ける必要はなく、例えば、図5に示すように、シリンダ7cにその外面からオイルシール室20への注入口22を形成し、その口22からオイルaをオイルシール室20に注入するようにし得る。このとき、ボールスチール22aは、注入口22がハウジングHで封止されるため、省略してもよい。
【0022】
この発明は、ギアポンプPに限らず、ケーシング内にオイルが充填され、そのオイル圧が負圧と正圧を繰り返し、そのケーシングから外部に向かって、高圧シールと低圧シールを設けたダブルシールを行う種々のオイルシール構造のものに採用でき、例えば、上述のギヤポンプPと同様に、自動車用ブレーキアクチュエータに使用されるプランジャ式ポンプ、ショックアブソーバP’などにおいても採用し得る。すなわち、ショックアブソーバP’にあっては、図6に示すように、シリンダ31内と外部を高圧シール8と低圧シール9でシールする際、その両シール8、9間に上述と同様のオイルシール室20を形成する。このとき、上記実施形態と同様に、リセス室及び連通孔を形成することもできる。図中、32はピストン、33はピストンロッドである。また、35はポンプ、36は圧力センサ、37はアキュームレータ、38、39は電磁弁であり、これらは、ショックアブソーバP’内の高圧を形成している。
【0023】
因みに、オイルシール室20にオイルaを満杯にした場合、高圧シール8からオイルaがオイルシール室20に洩れると、オイルaは収縮できないため、低圧シール9を圧縮して破損させる恐れがある。このため、一般的には、それを回避すべく、例えば、図6鎖線のごとく、オイルシール室20をサービスタンク34に接続して、その洩れオイル量を吸収する。しかし、この発明にあっては、上記空気層24によって、そのサービスタンク34の作用がなされる。オイルaの膨張に対しても、同様な作用によって吸収するため、鎖線で示した配管を省略することができ、装置を小型化することができる。
【0024】
【発明の効果】
この発明は、以上のようにして、正圧と負圧を繰り返すオイルと同質のオイルによって、高圧シールを介したポンプ部などのケーシング内への空気流入を阻止したので、コンパクトにしてシール性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態の要部切断正面図
【図2】同実施形態の要部切断側面図
【図3】同実施形態の要部切断側面図
【図4】他の実施形態の要部切断側面図
【図5】他の実施形態の要部切断正面図
【図6】他の実施形態の要部切断正面図
【符号の説明】
1 オイル吸入ポート
2 オイル吐出ポート
3 回転軸
4 インナーロータ
5 アウターロータ
7a、7b、7c ポンプシリンダ
7d、7e ポンプケーシング
8 高圧シール
9 低圧シール
10 ポンプ部
20 オイルシール室
21 リセス室
23、23a、23b 連通孔
24 空気層
P ギヤポンプ
M モータ

Claims (4)

  1. ポンプシリンダにそのポンプ駆動機(M)を取付け、その駆動機(M)からポンプシリンダ内に駆動軸(3)が挿し込まれて、その駆動軸(3)によりギヤポンプ部(10)を動かし、そのギヤポンプ部(10)と前記駆動機(M)間のポンプシリンダ内駆動軸(3)周りにその駆動機(M)に向かって前記ギヤポンプ部(10)からのオイル洩れを防止する高圧シール(8)と低圧シール(9)を順々に設け、前記ギヤポンプ部(10)内のオイル圧が負圧と正圧を繰り返してオイル(a)を吸入・吐出し、その吐出によるギヤポンプ部(10)からのオイル洩れを前記高圧シール(8)及び低圧シール(9)で防止する自動車のブレーキアクチュエータ用オイルポンプ(P)において、
    上記ギヤポンプ部(10)と上記駆動機(M)間のポンプシリンダ内駆動軸(3)周りの上記高圧シール(8)と低圧シール(9)の間をオイルシール室(20)とし、そのオイルシール室(20)には、前記駆動軸(3)周りを埋没させるとともに、満杯とされずに、前記ポンプ部(10)からのオイル(a)の洩れ量を吸収し、かつそのオイル圧力を減圧するように収縮する空気層(24)が形成される量の上記吸入・吐出するオイル(a)と同質のオイル(a)をポンプシリンダ外から注入して充填し、その注入口(22)を閉栓したことを特徴とする自動車のブレーキアクチュエータ用オイルポンプのオイルシール構造。
  2. 上記オイルシール室(20)周りのポンプシリンダ外面にリセス室(21)を形成し、このリセス室(21)と前記オイルシール室(20)との間に連通孔を形成するとともに、リセス室(21)には上記オイル(a)の上記注入口(22)を形成したことを特徴とする請求項1に記載の自動車のブレーキアクチュエータ用オイルポンプのオイルシール構造。
  3. 上記連通孔は、上記オイルシール室(20)のオイル層内に常時没する位置に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の自動車のブレーキアクチュエータ用オイルポンプのオイルシール構造。
  4. 上記オイルシール室(20)とリセス室(21)には上記空気層(24)が形成され、そのリセス室(21)とオイルシール室(20)のオイル層内に没する部分と、リセス室(21)とオイルシール室(20)の空気層(24)を形成した部分とに、それぞれ連通孔(23a、23b)を形成したことを特徴とする請求項2に記載の自動車のブレーキアクチュエータ用オイルポンプのオイルシール構造。
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