JP4069622B2 - 積層型圧電セラミック素子の製造方法 - Google Patents

積層型圧電セラミック素子の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電共振子、圧電アクチュエータ、圧電フィルタ、圧電ブザー、圧電トランス等に使用される圧電セラミック素子の製造方法に関する。特に、Agを主成分とする合金を内部電極とする圧電セラミック素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、圧電共振子、圧電アクチュエータ、圧電フィルタ、圧電ブザー、圧電トランス等に使用される圧電セラミック素子において、それぞれの用途に応じて、構造欠陥がなく、信頼性の高い優れた部品特性を有するためには、最適な条件で焼成することが必要不可欠であることはよく知られており、これまでにも種々の取り組みがなされている。
【0003】
たとえば、特開平2−74566号公報では、焼成温度までの昇温過程で、炉内雰囲気を酸素濃度50体積%以上に保ち、かつ焼成温度における保持過程では、炉内雰囲気を酸素濃度が昇温過程の場合の1/2ないし10体積%の条件下で焼成するプロセスを示している。これにより、酸素濃度50体積%以上となる高酸素雰囲気条件下の昇温過程で、この時期に形成されるセラミックの閉気孔内の酸素濃度を高め、次いで焼成温度における保持過程で、酸素濃度を昇温過程の場合の1/2ないし10体積%にすると、前述のセラミックの閉気孔内と外気の酸素濃度差が大きくなり、よって酸素の拡散速度が大きくなるので、酸化物で構成される圧電セラミックスを量産性よく緻密に焼結させることができると提案されている。
【0004】
また、特開平4−357164号公報や特開平10−95665号公報などでは、全焼成プロファイルにおいて、酸素濃度80体積%以上となる雰囲気条件下で焼成するプロセスを示している。これにより、セラミック焼結体の空孔や構造欠陥を抑制した緻密で高信頼性の圧電セラミック素子、特に圧電共振子を得ることができるとされている。
【0005】
さらに、内部電極の種類に依らず、全焼成プロファイルにおいて、大気中、すなわち酸素濃度が約21体積%の雰囲気中で焼成するプロセスも知られており、種々の圧電セラミック部品において一般的に適用されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記に示したような圧電セラミック素子において用いられてきた従来の焼成プロセスの場合では、内部電極がAgを主成分とする合金からなる未焼成の積層体を焼成すると、内部電極に含まれるAgが圧電セラミック層中のセラミック粒内に取り込まれて、圧電特性を劣化させるという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、圧電特性がさらに優れ、高い信頼性を示す積層型圧電セラミック素子の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の積層型圧電セラミック素子の製造方法は、Pb元素の化合物を含有している圧電セラミック材料のセラミックグリーンシート上に、Agを主成分とする合金を含む導電性ペーストを塗布し、該セラミックグリーンシートを積み重ねて積層体とする工程と、該積層体を焼成時の昇温過程と保持過程での酸素分圧0.21気圧以上で、かつ降温過程での酸素分圧0.0005気圧以上0.03気圧以下となる雰囲気中で焼成する工程とを備えることを特徴とする。
【0009】
ここで、焼成時の降温過程における酸素分圧0.0005気圧以上0.03気圧以下と限定したのは、以下の理由による。
【0010】
0.0005気圧以上0.03気圧以下の酸素雰囲気下で焼成した場合では、酸素濃度が低くなることによって、昇温過程や保持過程においてセラミック粒内に固溶していたAgが、降温過程において粒界に析出し、固溶前の圧電セラミックに近い状態となるので、圧電特性や信頼性を阻害させない方向に働くため、圧電特性、および信頼性を向上させている。
【0011】
しかし、0.03気圧を越える場合では、前述に見られたような、セラミック粒内に取り込まれているAgが、セラミックの粒界に析出する効果が十分に発揮されないため、圧電特性および信頼性が向上しないからである。
【0012】
また、0.0005気圧未満の場合では、圧電セラミックの表面に異相の析出が認められ、この異相の存在が圧電特性や信頼性を阻害させるため、圧電特性および信頼性が向上しないからである。
【0013】
また、焼成時の昇温過程および保持過程における酸素分圧を0.21気圧以上と限定したのは、以下の理由による。
【0014】
0.21気圧未満では、十分な焼結性が得られないため、特性の低下を引き起こすからである。
【0015】
昇温過程と保持過程では、たとえば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系の化合物では、酸素濃度が約21体積%の大気雰囲気、もしくは酸素濃度が約21体積%以上の雰囲気条件下で焼成される。最高温度域の焼成温度は前記雰囲気条件下で、積層体の焼結が完了する温度、すなわち具体的には積層焼成体の充填密度が理論密度に対して99%以上となる温度に設定される。なお、最高温度域での保持時間も前記の焼成温度の場合と同様な思想で設定される。
【0016】
なお、昇温速度および降温速度は、たとえば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系の化合物では、いずれも、毎分1〜10℃の範囲で設定されており、最高温度域における保持時間は1〜10時間の範囲で設定される。
【0017】
ただし、焼成条件は、上記の条件に限定されるものではなく、Pb元素の化合物を含有する圧電セラミック材料の種類(組成系)によって、最適な焼成温度、昇温速度、保持時間、および降温速度を選択すればよい。
【0018】
なお、前記セラミックグリーンシート中の圧電セラミック材料としては、上記に示したチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系の化合物のほか、チタン酸鉛(PbTiO3)系の化合物、メタニオブ酸鉛(PbNb26)系の化合物、およびメタタンタル酸鉛(PbTa26)系化合物等を含有しているものからなる。
【0019】
また、内部電極用導電性ペーストに含まれる導体は、Agを主成分とするもので構成され、Agが100重量%、もしくはPdが50重量%以下を含有しているものからなる。
【0020】
このように、本発明の積層型圧電セラミック素子の製造方法において、Agを主成分とする合金を含む内部電極とセラミック層を、焼成時の昇温過程と保持過程での酸素分圧0.21気圧以上で、かつ降温過程での酸素分圧0.0005気圧〜0.03気圧となる雰囲気中で同時焼成することにより、焼成時の昇温過程と保持過程で粒内に取り込まれていたAgが、降温過程で粒界に析出し、Agを取り込むことで低下していた圧電特性が改善されるため、圧電特性、特に圧電歪定数(d)を向上させ、高信頼性を十分確保することができる。
【0021】
したがって、圧電特性および信頼性のさらに優れた積層型圧電セラミック素子を得ることが可能となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の積層型圧電セラミック素子の一例である積層型圧電アクチュエータの製造方法について、実施例を用いて、実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
[実施例1]
まず、出発原料として、Pb34、TiO2、ZrO2、SrCO3を用意した。次いで、Pb0.98Sr0.02(Zr0.45Ti0.55)O3となる圧電セラミック組成物が得られるように、上記原料を秤量し、ボールミルにて湿式混合した。さらに、上述の混合物を脱水、乾燥して、800℃の温度で2時間仮焼し、粉砕することにより、仮焼粉末を得た。
【0024】
次いで、この仮焼粉末に、アクリル系有機バインダー、有機溶剤、および可塑剤などの添加物を加えて、ボールミルにて湿式混合して、スラリーを得た。
【0025】
このスラリーをドクターブレード法にて成形し、約40μmの厚さのセラミックグリーンシートを作製した。
【0026】
このセラミックグリーンシート上に、Ag/Pd=80重量%/20重量%の割合となる導体を含有する導電性ペーストを、スクリーン印刷法により、焼成後の厚みが1.0〜3.0μmとなるように塗布し、乾燥させて、内部電極用の層が形成されたセラミックグリーンシートを得た。
【0027】
その後、このセラミックグリーンシートを積み重ね、熱プレスにより圧着させて、一体化させた積層体を得た。
【0028】
次いで、この積層体をあらかじめ、約500℃の温度でバインダー成分を十分に除去させ、表1に示す焼成プロファイルおよび焼成雰囲気を用いて焼成を行った。
【0029】
なお、昇温速度は毎分3℃、保持過程の保持時間は2時間、および降温速度は毎分4℃とした。
【0030】
また、表1において、*印を付したものは、本発明の範囲外のものであり、それ以外はすべて本発明の範囲内ものである。
【0031】
【表1】
Figure 0004069622
【0032】
この焼成後の積層体を、所定の大きさにカットした後、外部電極を塗布、焼成にて形成して、内部電極と電気的に接続させた、圧電セラミック素子を得た。
【0033】
次に、60℃の絶縁オイル中で、4.0kV/mmの直流電界を60分間印加して、分極処理を施した。その後、120〜200℃の空気中で、30〜60分間、エージングして、図1、図2に示すような目的とする積層型圧電アクチュエータ10を得た。なお、図1、図2において、11は内部電極、12は外部電極、13は圧電セラミックをそれぞれ示す。
【0034】
これらの積層型圧電アクチュエータの圧電歪定数|d31|、および圧電セラミックの電気抵抗率ρを求めた。その結果を表2に示す。
【0035】
なお、|d31|はレーザードップラー振動計にて歪み量を測定し、31方向の圧電歪定数を算出して求めた。また、ρはセラミック層を介した内部電極間にDC50Vの電圧を30秒間印加した時の絶縁抵抗を測定し、その絶縁抵抗に電極面積を乗じ、この値を内部電極間のセラミック層厚みで割って求めた。
【0036】
表2において、*印を付したものは、本発明の範囲外のものであり、それ以外は全て本発明の範囲内のものである。
【0037】
【表2】
Figure 0004069622
【0038】
表1、2から明らかなように、本発明の範囲内の試料番号2ないし5によれば、圧電セラミックの電気抵抗率ρおよび圧電歪定数d31が向上されていることがわかる。
【0039】
しかし、一方、600℃〜1050℃の昇温過程、1050℃での保持過程、および1050℃〜300℃の降温過程の焼成温度範囲において、全過程で酸素濃度が21体積%や90体積%の焼成雰囲気条件である試料番号9および10や、昇温過程で酸素濃度が1体積%でかつ保持過程と降温過程で酸素濃度が21体積%の焼成雰囲気である試料番号11では、本発明の範囲内の試料番号2ないし5と比べて、圧電セラミックの電気抵抗率ρや圧電歪定数d31は十分に向上されていないことがわかる。
【0040】
これは、焼成の降温過程における雰囲気の酸素濃度を低くしたことによる効果と考えられる。
【0041】
すなわち、昇温過程もしくは保持過程の段階において、本発明の範囲内の試料番号2ないし5を含めて上述のいずれの場合も、酸素濃度が21体積%と高い酸素雰囲気条件で焼成しているため、積層型圧電アクチュエータの内部電極に含まれるAgが圧電セラミックの粒内に入り込み、Agとの固溶体を形成する。
【0042】
この状態のまま、降温過程においても本発明の範囲外の酸素雰囲気条件下で焼成すると、圧電特性や信頼性を阻害させる方向に働いてしまう。
【0043】
しかしながら、降温過程において本発明の0.05体積%以上3体積%以下の酸素雰囲気条件下で焼成した場合では、酸素濃度が低くなることによって、セラミック粒内に固溶していたAgが粒界に析出し、固溶前の圧電セラミックに近い状態となるので、圧電特性や信頼性を阻害させない方向に働いていると考えられる。
【0044】
また、上述の焼成温度範囲において、試料番号1のように、昇温過程と保持過程で酸素濃度が21体積%でかつ降温過程で酸素濃度が5体積%の焼成雰囲気条件では、本発明の範囲内の試料番号2ないし5と比較すると、圧電歪定数d31は同等レベルであるが、圧電セラミックの電気抵抗率ρは低くなり、絶縁性を十分確保できていないことがわかる。
【0045】
これは、降温過程での酸素濃度が5体積%の焼成雰囲気では、上述で説明したような、酸素濃度を低くすることによって、セラミック粒内に固溶していたAgを粒界に析出するようにして、圧電特性や信頼性を阻害させにくくする効果が十分でないためと考えられる。したがって、少なくともこの条件では、好ましくないことがわかる。
【0046】
さらに、試料番号6のように、昇温過程と保持過程で酸素濃度が21体積%でかつ降温過程で酸素濃度が0.03体積%の焼成雰囲気条件では、本発明の範囲内の試料番号2ないし5と比較すると、圧電歪定数d31は低く、かつ、圧電セラミックの電気抵抗率ρも低くなり、圧電特性および絶縁性を十分確保できていないことがわかる。
【0047】
これは、降温過程での酸素濃度が0.03体積%の焼成雰囲気では、圧電セラミックの表面に異相の析出が認められ、この異相の存在が圧電特性や信頼性を阻害させる原因になっていると考えられる。したがって、少なくともこの条件では、好ましくないことがわかる。
【0048】
また、試料番号7ないし8のように、昇温過程と保持過程で酸素濃度が90体積%でかつ降温過程で酸素濃度が0.5体積%以上1体積%以下の焼成雰囲気条件では、圧電セラミックの電気抵抗率ρを向上させ、かつ、圧電歪定数d31も同等レベル以上で保持されていることがわかる。
【0049】
すなわち、上述の試料番号2ないし5の場合と同等レベルの特性が得られていることがわかる。
【0050】
以上の通り、降温過程で酸素濃度が0.05体積%以上3体積%以下の焼成雰囲気条件を満足し、かつ昇温過程と保持過程での酸素濃度が21体積%以上の焼成雰囲気条件を満足させることにより、圧電特性や絶縁性を向上させることができる。
【0051】
[実施例2]
まず、出発原料として、Pb34、TiO2、ZrO2、Nb25、NiOおよびFe23を用意した。次いで、99重量%のPb1.00{(Ni1/3Nb2/30.40Zr0.25Ti0.35}O3からなる主成分に、添加物として1重量%のFe23を含有する圧電セラミック組成物が得られるように、上記原料を秤量し、ボールミルにて湿式混合した。
【0052】
次いで、上述の混合物を脱水、乾燥して、800℃の温度で2時間仮焼し、粉砕することにより、仮焼粉末を得た。
【0053】
以下、上記実施例1と同様な方法にて、実施例1と同様に、図1、図2に示すような目的とする積層型圧電アクチュエータ10を得た。
【0054】
これらの積層型圧電アクチュエータの圧電歪定数|d31|、および圧電セラミックの電気抵抗率ρを求めた。その結果を表3に示す。
【0055】
|d31|はレーザードップラー振動計にて歪み量を測定し、31方向の圧電歪定数を算出して求めた。また、ρはセラミック層を介した内部電極間の絶縁抵抗をDC50V、30secで印加した条件で測定し、その絶縁抵抗に電極面積を乗じた値を内部電極間のセラミック層厚みで割って求めた。
【0056】
なお、表3において、*印を付したものは、本発明の範囲外のものであり、それ以外はすべて本発明の範囲内のものである。
【0057】
【表3】
Figure 0004069622
【0058】
表1、3から明らかなように、本発明の範囲内の試料番号13ないし16によれば、圧電セラミックの電気抵抗率ρおよび圧電歪定数d31が向上されていることがわかる。
【0059】
しかし、一方、600℃〜1050℃の昇温過程、1050℃での保持過程、および1050℃〜300℃の降温過程の焼成温度範囲において、全過程で酸素濃度が21体積%や90体積%の焼成雰囲気条件である試料番号20および21や、昇温過程で酸素濃度が1体積%でかつ保持過程と降温過程で酸素濃度が21体積%の焼成雰囲気である試料番号22では、本発明の範囲内の試料番号13ないし16と比べて、圧電セラミックの電気抵抗率ρや圧電歪定数d31は十分に向上されていないことがわかる。
【0060】
これは、焼成の降温過程における雰囲気の酸素濃度を低くしたことによる効果と考えられる。
【0061】
すなわち、昇温過程もしくは保持過程の段階において、本発明の範囲内の試料番号13ないし16を含めて上述のいずれの場合も、酸素濃度が21体積%と高い酸素雰囲気条件で焼成しているため、積層型圧電アクチュエータの内部電極に含まれるAgが圧電セラミックの粒内に入り込み、Agとの固溶体を形成する。
【0062】
この状態のまま、降温過程においても本発明の範囲外の酸素雰囲気条件下で焼成すると、圧電特性や信頼性を阻害させる方向に働いてしまう。
【0063】
しかしながら、降温過程において本発明の0.05体積%以上3体積%以下の酸素雰囲気条件下で焼成した場合では、酸素濃度が低くなることによって、セラミック粒内に固溶していたAgが粒界に析出し、固溶前の圧電セラミックに近い状態となるので、圧電特性や信頼性を阻害させない方向に働いていると考えられる。
【0064】
また、上述の焼成温度範囲において、試料番号12のように、昇温過程と保持過程で酸素濃度が21体積%でかつ降温過程で酸素濃度が5体積%の焼成雰囲気条件では、本発明の範囲内の試料番号13ないし16と比較すると、圧電歪定数d31は同等レベルであるが、圧電セラミックの電気抵抗率ρは低くなり、絶縁性を十分確保できていないことがわかる。
【0065】
これは、降温過程での酸素濃度が5体積%の焼成雰囲気では、上述で説明したような、酸素濃度を低くすることによって、セラミック粒内に固溶していたAgを粒界に析出するようにして、圧電特性や信頼性を阻害させにくくする効果が十分でないためと考えられる。したがって、少なくともこの条件では、好ましくないことがわかる。
【0066】
さらに、試料番号17のように、昇温過程と保持過程で酸素濃度が21体積%でかつ降温過程で酸素濃度が0.03体積%の焼成雰囲気条件では、本発明の範囲内の試料番号13ないし16と比較すると、圧電歪定数d31は低く、かつ、圧電セラミックの電気抵抗率ρも低くなり、圧電特性および絶縁性を十分確保できていないことがわかる。
【0067】
これは、降温過程での酸素濃度が0.03体積%の焼成雰囲気では、圧電セラミックの表面に異相の析出が認められ、この異相の存在が圧電特性や信頼性を阻害させる原因になっていると考えられる。したがって、少なくともこの条件では、好ましくないことがわかる。
【0068】
また、試料番号18ないし19のように、昇温過程と保持過程で酸素濃度が90体積%でかつ降温過程で酸素濃度が0.5体積%以上1体積%以下の焼成雰囲気条件では、圧電セラミックの電気抵抗率ρを向上させ、かつ、圧電歪定数d31も同等レベル以上で保持されていることがわかる。
【0069】
すなわち、上述の試料番号13ないし16の場合と同等レベルの特性が得られていることがわかる。
【0070】
以上の通り、降温過程で酸素濃度が0.05体積%以上3体積%以下の焼成雰囲気条件を満足し、かつ昇温過程と保持過程での酸素濃度が21体積%以上の焼成雰囲気条件を満足させることにより、圧電特性や絶縁性を向上させることができる。
【0071】
なお、前記実施例には積層型圧電アクチュエータの場合についてのみ示したが、勿論この場合に限定されることはなく、圧電効果を利用した圧電共振子、圧電フィルタ、圧電ブザー、および圧電トランス等の積層型圧電セラミック素子全般について適用できることは言うまでもないことである。図3に本発明が適用され得るインクジェット用の積層型圧電素子30の斜視図を示す。31は圧電セラミック、32は内部電極、33は外部電極を示す。
【0072】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明の積層型圧電セラミック素子の製造方法によれば、Agを主成分とする合金を含む内部電極とセラミック層を、焼成時の昇温過程と保持過程での酸素分圧0.21気圧以上で、かつ降温過程での酸素分圧0.0005気圧〜0.03気圧となる雰囲気中で同時焼成することにより、焼成時の昇温過程と保持過程で粒内に取り込まれていたAgが、降温過程で粒界に析出し、Agを取り込むことで低下していた圧電特性が改善されるため、圧電特性、特に圧電歪定数(d)を向上させ、高信頼性を十分確保することができる。したがって、圧電特性および信頼性のさらに優れた積層型圧電セラミック素子を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる一実施例の積層型圧電アクチュエータを示す斜視図である。
【図2】図1に示す積層型圧電アクチュエータのa−b方向における断面図である。
【図3】本発明が適用され得るインクジェット用の積層型圧電素子の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
10.積層型圧電アクチュエータ
11.内部電極
12.外部電極
13.圧電セラミック
30.インクジェット用積層型圧電素子
31.圧電セラミック
32.内部電極
33.外部電極

Claims (1)

  1. Pb元素の化合物を含有している圧電セラミック材料のセラミックグリーンシート上に、Agを主成分とする合金を含む導電性ペーストを塗布し、該セラミックグリーンシートを積み重ねて積層体とする工程と、該積層体を焼成時の昇温過程と保持過程での酸素分圧0.21気圧以上で、かつ降温過程での酸素分圧0.0005気圧以上0.03気圧以下となる雰囲気中で焼成する工程とを備えることを特徴とする、積層型圧電セラミック素子の製造方法。
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