JP2003192436A - 積層型圧電セラミック素子の製造方法 - Google Patents
積層型圧電セラミック素子の製造方法Info
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Abstract
セラミック素子の製造方法を提供する。 【解決手段】Pb元素の化合物を含有する圧電セラミッ
ク材料のセラミックグリーンシート上に、Agを主成分
とする合金を含む導電性ペーストを塗布し、該セラミッ
クグリーンシートを積み重ねて積層体とする工程と、該
積層体を焼成時の昇温過程と保持過程での酸素濃度が2
1体積%以上で、かつ降温過程での酸素濃度が0.05
体積%〜3体積%となる雰囲気中で焼成する工程とを備
える。
Description
アクチュエータ、圧電フィルタ、圧電ブザー、圧電トラ
ンス等に使用される圧電セラミック素子の製造方法に関
する。特に、Agを主成分とする合金を内部電極とする
圧電セラミック素子の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来から、圧電共振子、圧電アクチュエ
ータ、圧電フィルタ、圧電ブザー、圧電トランス等に使
用される圧電セラミック素子において、それぞれの用途
に応じて、構造欠陥がなく、信頼性の高い優れた部品特
性を有するためには、最適な条件で焼成することが必要
不可欠であることはよく知られており、これまでにも種
々の取り組みがなされている。 【0003】たとえば、特開平2−74566号公報で
は、焼成温度までの昇温過程で、炉内雰囲気を酸素濃度
50体積%以上に保ち、かつ焼成温度における保持過程
では、炉内雰囲気を酸素濃度が昇温過程の場合の1/2
ないし10体積%の条件下で焼成するプロセスを示して
いる。これにより、酸素濃度50体積%以上となる高酸
素雰囲気条件下の昇温過程で、この時期に形成されるセ
ラミックの閉気孔内の酸素濃度を高め、次いで焼成温度
における保持過程で、酸素濃度を昇温過程の場合の1/
2ないし10体積%にすると、前述のセラミックの閉気
孔内と外気の酸素濃度差が大きくなり、よって酸素の拡
散速度が大きくなるので、酸化物で構成される圧電セラ
ミックスを量産性よく緻密に焼結させることができると
提案されている。 【0004】また、特開平4−357164号公報や特
開平10−95665号公報などでは、全焼成プロファ
イルにおいて、酸素濃度80体積%以上となる雰囲気条
件下で焼成するプロセスを示している。これにより、セ
ラミック焼結体の空孔や構造欠陥を抑制した緻密で高信
頼性の圧電セラミック素子、特に圧電共振子を得ること
ができるとされている。 【0005】さらに、内部電極の種類に依らず、全焼成
プロファイルにおいて、大気中、すなわち酸素濃度が約
21体積%の雰囲気中で焼成するプロセスも知られてお
り、種々の圧電セラミック部品において一般的に適用さ
れている。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記に
示したような圧電セラミック素子において用いられてき
た従来の焼成プロセスの場合では、内部電極がAgを主
成分とする合金からなる未焼成の積層体を焼成すると、
内部電極に含まれるAgが圧電セラミック層中のセラミ
ック粒内に取り込まれて、圧電特性を劣化させるという
問題点があった。 【0007】そこで、本発明の目的は、圧電特性がさら
に優れ、高い信頼性を示す積層型圧電セラミック素子の
製造方法を提供することにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の積層型圧電セラミック素子の製造方法は、
圧電セラミック材料を含有するセラミックグリーンシー
ト上に、Agを主成分とする合金を含む導電性ペースト
を塗布し、該セラミックグリーンシートを積み重ねて積
層体とする工程と、該積層体を焼成時の昇温過程と保持
過程での酸素濃度が21体積%以上で、かつ降温過程で
の酸素濃度が0.05体積%以上3体積%以下となる雰
囲気中で焼成する工程とを備えることを特徴とする。 【0009】ここで、焼成時の降温過程における酸素濃
度を0.05体積%以上3体積%以下と限定したのは、
以下の理由による。 【0010】0.05体積%以上3体積%以下の酸素雰
囲気条件下で焼成した場合では、酸素濃度が低くなるこ
とによって、昇温過程や保持過程においてセラミック粒
内に固溶していたAgが、降温過程において粒界に析出
し、固溶前の圧電セラミックに近い状態となるので、圧
電特性や信頼性を阻害させない方向に働くため、圧電特
性、および信頼性を向上させている。 【0011】しかし、3体積%を越える場合では、前述
に見られたような、セラミック粒内に取り込まれている
Agが、セラミックの粒界に析出する効果が十分に発揮
されないため、圧電特性および信頼性が向上しないから
である。 【0012】また、0.03体積%未満の場合では、圧
電セラミックの表面に異相の析出が認められ、この異相
の存在が圧電特性や信頼性を阻害させるため、圧電特性
および信頼性が向上しないからである。 【0013】また、焼成時の昇温過程および保持過程に
おける酸素濃度を21体積%以上と限定したのは、以下
の理由による。 【0014】21体積%未満では、十分な焼結性が得ら
れないため、特性の低下を引き起こすからである。 【0015】昇温過程と保持過程では、たとえば、チタ
ン酸ジルコン酸鉛(PZT)系の化合物では、酸素濃度
が約21体積%の大気雰囲気、もしくは酸素濃度が約2
1体積%以上の雰囲気条件下で焼成される。最高温度域
の焼成温度は前記雰囲気条件下で、積層体の焼結が完了
する温度、すなわち具体的には積層焼成体の充填密度が
理論密度に対して99%以上となる温度に設定される。
なお、最高温度域での保持時間も前記の焼成温度の場合
と同様な思想で設定される。 【0016】なお、昇温速度および降温速度は、たとえ
ば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系の化合物では、
いずれも、毎分1〜10℃の範囲で設定されており、最
高温度域における保持時間は1〜10時間の範囲で設定
される。 【0017】ただし、焼成条件は、上記の条件に限定さ
れるものではなく、Pb元素の化合物を含有する圧電セ
ラミック材料の種類(組成系)によって、最適な焼成温
度、昇温速度、保持時間、および降温速度を選択すれば
よい。 【0018】なお、前記セラミックグリーンシート中の
圧電セラミック材料としては、上記に示したチタン酸ジ
ルコン酸鉛(PZT)系の化合物のほか、チタン酸鉛
(PbTiO3)系の化合物、メタニオブ酸鉛(PbN
b2O6)系の化合物、およびメタタンタル酸鉛(PbT
a2O6)系化合物等を含有しているものからなる。 【0019】また、内部電極用導電性ペーストに含まれ
る導体は、Agを主成分とするもので構成され、Agが
100重量%、もしくはPdが50重量%以下を含有し
ているものからなる。 【0020】このように、本発明の積層型圧電セラミッ
ク素子の製造方法において、Agを主成分とする合金を
含む内部電極とセラミック層を、焼成時の昇温過程と保
持過程での酸素濃度が21体積%以上で、かつ降温過程
での酸素濃度が0.05体積%〜3体積%となる雰囲気
中で同時焼成することにより、焼成時の昇温過程と保持
過程で粒内に取り込まれていたAgが、降温過程で粒界
に析出し、Agを取り込むことで低下していた圧電特性
が改善されるため、圧電特性、特に圧電歪定数(d)を
向上させ、高信頼性を十分確保することができる。 【0021】したがって、圧電特性および信頼性のさら
に優れた積層型圧電セラミック素子を得ることが可能と
なる。 【0022】 【発明の実施の形態】以下、本発明の積層型圧電セラミ
ック素子の一例である積層型圧電アクチュエータの製造
方法について、実施例を用いて、実施の形態を詳細に説
明する。 【0023】[実施例1]まず、出発原料として、Pb
3O4、TiO2、ZrO2、SrCO3を用意した。次い
で、Pb0.98Sr0.02(Zr0.45Ti0.55)O3となる
圧電セラミック組成物が得られるように、上記原料を秤
量し、ボールミルにて湿式混合した。さらに、上述の混
合物を脱水、乾燥して、800℃の温度で2時間仮焼
し、粉砕することにより、仮焼粉末を得た。 【0024】次いで、この仮焼粉末に、アクリル系有機
バインダー、有機溶剤、および可塑剤などの添加物を加
えて、ボールミルにて湿式混合して、スラリーを得た。 【0025】このスラリーをドクターブレード法にて成
形し、約40μmの厚さのセラミックグリーンシートを
作製した。 【0026】このセラミックグリーンシート上に、Ag
/Pd=80重量%/20重量%の割合となる導体を含
有する導電性ペーストを、スクリーン印刷法により、焼
成後の厚みが1.0〜3.0μmとなるように塗布し、
乾燥させて、内部電極用の層が形成されたセラミックグ
リーンシートを得た。 【0027】その後、このセラミックグリーンシートを
積み重ね、熱プレスにより圧着させて、一体化させた積
層体を得た。 【0028】次いで、この積層体をあらかじめ、約50
0℃の温度でバインダー成分を十分に除去させ、表1に
示す焼成プロファイルおよび焼成雰囲気を用いて焼成を
行った。 【0029】なお、昇温速度は毎分3℃、保持過程の保
持時間は2時間、および降温速度は毎分4℃とした。 【0030】また、表1において、*印を付したもの
は、本発明の範囲外のものであり、それ以外はすべて本
発明の範囲内ものである。 【0031】 【表1】【0032】この焼成後の積層体を、所定の大きさにカ
ットした後、外部電極を塗布、焼成にて形成して、内部
電極と電気的に接続させた、圧電セラミック素子を得
た。 【0033】次に、60℃の絶縁オイル中で、4.0k
V/mmの直流電界を60分間印加して、分極処理を施
した。その後、120〜200℃の空気中で、30〜6
0分間、エージングして、図1、図2に示すような目的
とする積層型圧電アクチュエータ10を得た。なお、図
1、図2において、11は内部電極、12は外部電極、
13は圧電セラミックをそれぞれ示す。 【0034】これらの積層型圧電アクチュエータの圧電
歪定数|d31|、および圧電セラミックの電気抵抗率ρ
を求めた。その結果を表2に示す。 【0035】なお、|d31|はレーザードップラー振動
計にて歪み量を測定し、31方向の圧電歪定数を算出し
て求めた。また、ρはセラミック層を介した内部電極間
にDC50Vの電圧を30秒間印加した時の絶縁抵抗を
測定し、その絶縁抵抗に電極面積を乗じ、この値を内部
電極間のセラミック層厚みで割って求めた。 【0036】表2において、*印を付したものは、本発
明の範囲外のものであり、それ以外は全て本発明の範囲
内のものである。 【0037】 【表2】 【0038】表1、2から明らかなように、本発明の範
囲内の試料番号2ないし5によれば、圧電セラミックの
電気抵抗率ρおよび圧電歪定数d31が向上されているこ
とがわかる。 【0039】しかし、一方、600℃〜1050℃の昇
温過程、1050℃での保持過程、および1050℃〜
300℃の降温過程の焼成温度範囲において、全過程で
酸素濃度が21体積%や90体積%の焼成雰囲気条件で
ある試料番号9および10や、昇温過程で酸素濃度が1
体積%でかつ保持過程と降温過程で酸素濃度が21体積
%の焼成雰囲気である試料番号11では、本発明の範囲
内の試料番号2ないし5と比べて、圧電セラミックの電
気抵抗率ρや圧電歪定数d31は十分に向上されていない
ことがわかる。 【0040】これは、焼成の降温過程における雰囲気の
酸素濃度を低くしたことによる効果と考えられる。 【0041】すなわち、昇温過程もしくは保持過程の段
階において、本発明の範囲内の試料番号2ないし5を含
めて上述のいずれの場合も、酸素濃度が21体積%と高
い酸素雰囲気条件で焼成しているため、積層型圧電アク
チュエータの内部電極に含まれるAgが圧電セラミック
の粒内に入り込み、Agとの固溶体を形成する。 【0042】この状態のまま、降温過程においても本発
明の範囲外の酸素雰囲気条件下で焼成すると、圧電特性
や信頼性を阻害させる方向に働いてしまう。 【0043】しかしながら、降温過程において本発明の
0.05体積%以上3体積%以下の酸素雰囲気条件下で
焼成した場合では、酸素濃度が低くなることによって、
セラミック粒内に固溶していたAgが粒界に析出し、固
溶前の圧電セラミックに近い状態となるので、圧電特性
や信頼性を阻害させない方向に働いていると考えられ
る。 【0044】また、上述の焼成温度範囲において、試料
番号1のように、昇温過程と保持過程で酸素濃度が21
体積%でかつ降温過程で酸素濃度が5体積%の焼成雰囲
気条件では、本発明の範囲内の試料番号2ないし5と比
較すると、圧電歪定数d31は同等レベルであるが、圧電
セラミックの電気抵抗率ρは低くなり、絶縁性を十分確
保できていないことがわかる。 【0045】これは、降温過程での酸素濃度が5体積%
の焼成雰囲気では、上述で説明したような、酸素濃度を
低くすることによって、セラミック粒内に固溶していた
Agを粒界に析出するようにして、圧電特性や信頼性を
阻害させにくくする効果が十分でないためと考えられ
る。したがって、少なくともこの条件では、好ましくな
いことがわかる。 【0046】さらに、試料番号6のように、昇温過程と
保持過程で酸素濃度が21体積%でかつ降温過程で酸素
濃度が0.03体積%の焼成雰囲気条件では、本発明の
範囲内の試料番号2ないし5と比較すると、圧電歪定数
d31は低く、かつ、圧電セラミックの電気抵抗率ρも低
くなり、圧電特性および絶縁性を十分確保できていない
ことがわかる。 【0047】これは、降温過程での酸素濃度が0.03
体積%の焼成雰囲気では、圧電セラミックの表面に異相
の析出が認められ、この異相の存在が圧電特性や信頼性
を阻害させる原因になっていると考えられる。したがっ
て、少なくともこの条件では、好ましくないことがわか
る。 【0048】また、試料番号7ないし8のように、昇温
過程と保持過程で酸素濃度が90体積%でかつ降温過程
で酸素濃度が0.5体積%以上1体積%以下の焼成雰囲
気条件では、圧電セラミックの電気抵抗率ρを向上さ
せ、かつ、圧電歪定数d31も同等レベル以上で保持され
ていることがわかる。 【0049】すなわち、上述の試料番号2ないし5の場
合と同等レベルの特性が得られていることがわかる。 【0050】以上の通り、降温過程で酸素濃度が0.0
5体積%以上3体積%以下の焼成雰囲気条件を満足し、
かつ昇温過程と保持過程での酸素濃度が21体積%以上
の焼成雰囲気条件を満足させることにより、圧電特性や
絶縁性を向上させることができる。 【0051】[実施例2]まず、出発原料として、Pb
3O4、TiO2、ZrO2、Nb2O5、NiOおよびFe
2O3を用意した。次いで、99重量%のPb1.00{(N
i1/3Nb2/3)0. 40Zr0.25Ti0.35}O3からなる主
成分に、添加物として1重量%のFe2O3を含有する圧
電セラミック組成物が得られるように、上記原料を秤量
し、ボールミルにて湿式混合した。 【0052】次いで、上述の混合物を脱水、乾燥して、
800℃の温度で2時間仮焼し、粉砕することにより、
仮焼粉末を得た。 【0053】以下、上記実施例1と同様な方法にて、実
施例1と同様に、図1、図2に示すような目的とする積
層型圧電アクチュエータ10を得た。 【0054】これらの積層型圧電アクチュエータの圧電
歪定数|d31|、および圧電セラミックの電気抵抗率ρ
を求めた。その結果を表3に示す。 【0055】|d31|はレーザードップラー振動計にて
歪み量を測定し、31方向の圧電歪定数を算出して求め
た。また、ρはセラミック層を介した内部電極間の絶縁
抵抗をDC50V、30secで印加した条件で測定
し、その絶縁抵抗に電極面積を乗じた値を内部電極間の
セラミック層厚みで割って求めた。 【0056】なお、表3において、*印を付したもの
は、本発明の範囲外のものであり、それ以外はすべて本
発明の範囲内のものである。 【0057】 【表3】【0058】表1、3から明らかなように、本発明の範
囲内の試料番号13ないし16によれば、圧電セラミッ
クの電気抵抗率ρおよび圧電歪定数d31が向上されてい
ることがわかる。 【0059】しかし、一方、600℃〜1050℃の昇
温過程、1050℃での保持過程、および1050℃〜
300℃の降温過程の焼成温度範囲において、全過程で
酸素濃度が21体積%や90体積%の焼成雰囲気条件で
ある試料番号20および21や、昇温過程で酸素濃度が
1体積%でかつ保持過程と降温過程で酸素濃度が21体
積%の焼成雰囲気である試料番号22では、本発明の範
囲内の試料番号13ないし16と比べて、圧電セラミッ
クの電気抵抗率ρや圧電歪定数d31は十分に向上されて
いないことがわかる。 【0060】これは、焼成の降温過程における雰囲気の
酸素濃度を低くしたことによる効果と考えられる。 【0061】すなわち、昇温過程もしくは保持過程の段
階において、本発明の範囲内の試料番号13ないし16
を含めて上述のいずれの場合も、酸素濃度が21体積%
と高い酸素雰囲気条件で焼成しているため、積層型圧電
アクチュエータの内部電極に含まれるAgが圧電セラミ
ックの粒内に入り込み、Agとの固溶体を形成する。 【0062】この状態のまま、降温過程においても本発
明の範囲外の酸素雰囲気条件下で焼成すると、圧電特性
や信頼性を阻害させる方向に働いてしまう。 【0063】しかしながら、降温過程において本発明の
0.05体積%以上3体積%以下の酸素雰囲気条件下で
焼成した場合では、酸素濃度が低くなることによって、
セラミック粒内に固溶していたAgが粒界に析出し、固
溶前の圧電セラミックに近い状態となるので、圧電特性
や信頼性を阻害させない方向に働いていると考えられ
る。 【0064】また、上述の焼成温度範囲において、試料
番号12のように、昇温過程と保持過程で酸素濃度が2
1体積%でかつ降温過程で酸素濃度が5体積%の焼成雰
囲気条件では、本発明の範囲内の試料番号13ないし1
6と比較すると、圧電歪定数d31は同等レベルである
が、圧電セラミックの電気抵抗率ρは低くなり、絶縁性
を十分確保できていないことがわかる。 【0065】これは、降温過程での酸素濃度が5体積%
の焼成雰囲気では、上述で説明したような、酸素濃度を
低くすることによって、セラミック粒内に固溶していた
Agを粒界に析出するようにして、圧電特性や信頼性を
阻害させにくくする効果が十分でないためと考えられ
る。したがって、少なくともこの条件では、好ましくな
いことがわかる。 【0066】さらに、試料番号17のように、昇温過程
と保持過程で酸素濃度が21体積%でかつ降温過程で酸
素濃度が0.03体積%の焼成雰囲気条件では、本発明
の範囲内の試料番号13ないし16と比較すると、圧電
歪定数d31は低く、かつ、圧電セラミックの電気抵抗率
ρも低くなり、圧電特性および絶縁性を十分確保できて
いないことがわかる。 【0067】これは、降温過程での酸素濃度が0.03
体積%の焼成雰囲気では、圧電セラミックの表面に異相
の析出が認められ、この異相の存在が圧電特性や信頼性
を阻害させる原因になっていると考えられる。したがっ
て、少なくともこの条件では、好ましくないことがわか
る。 【0068】また、試料番号18ないし19のように、
昇温過程と保持過程で酸素濃度が90体積%でかつ降温
過程で酸素濃度が0.5体積%以上1体積%以下の焼成
雰囲気条件では、圧電セラミックの電気抵抗率ρを向上
させ、かつ、圧電歪定数d31も同等レベル以上で保持さ
れていることがわかる。 【0069】すなわち、上述の試料番号13ないし16
の場合と同等レベルの特性が得られていることがわか
る。 【0070】以上の通り、降温過程で酸素濃度が0.0
5体積%以上3体積%以下の焼成雰囲気条件を満足し、
かつ昇温過程と保持過程での酸素濃度が21体積%以上
の焼成雰囲気条件を満足させることにより、圧電特性や
絶縁性を向上させることができる。 【0071】なお、前記実施例には積層型圧電アクチュ
エータの場合についてのみ示したが、勿論この場合に限
定されることはなく、圧電効果を利用した圧電共振子、
圧電フィルタ、圧電ブザー、および圧電トランス等の積
層型圧電セラミック素子全般について適用できることは
言うまでもないことである。図3に本発明が適用され得
るインクジェット用の積層型圧電素子30の斜視図を示
す。31は圧電セラミック、32は内部電極、33は外
部電極を示す。 【0072】 【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明の
積層型圧電セラミック素子の製造方法によれば、Agを
主成分とする合金を含む内部電極とセラミック層を、焼
成時の昇温過程と保持過程での酸素濃度が21体積%以
上で、かつ降温過程での酸素濃度が0.05体積%〜3
体積%となる雰囲気中で同時焼成することにより、焼成
時の昇温過程と保持過程で粒内に取り込まれていたAg
が、降温過程で粒界に析出し、Agを取り込むことで低
下していた圧電特性が改善されるため、圧電特性、特に
圧電歪定数(d)を向上させ、高信頼性を十分確保する
ことができる。したがって、圧電特性および信頼性のさ
らに優れた積層型圧電セラミック素子を得ることが可能
となる。
エータを示す斜視図である。 【図2】図1に示す積層型圧電アクチュエータのa−b
方向における断面図である。 【図3】本発明が適用され得るインクジェット用の積層
型圧電素子の一例を示す斜視図である。 【符号の説明】 10.積層型圧電アクチュエータ 11.内部電極 12.外部電極 13.圧電セラミック 30.インクジェット用積層型圧電素子 31.圧電セラミック 32.内部電極 33.外部電極
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 【請求項1】 Pb元素の化合物を含有している圧電セ
ラミック材料のセラミックグリーンシート上に、Agを
主成分とする合金を含む導電性ペーストを塗布し、該セ
ラミックグリーンシートを積み重ねて積層体とする工程
と、該積層体を焼成時の昇温過程と保持過程での酸素濃
度が21体積%以上で、かつ降温過程での酸素濃度が
0.05体積%以上3体積%以下となる雰囲気中で焼成
する工程とを備えることを特徴とする、積層型圧電セラ
ミック素子の製造方法。
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JP2001394060A JP4069622B2 (ja) | 2001-12-26 | 2001-12-26 | 積層型圧電セラミック素子の製造方法 |
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2001
- 2001-12-26 JP JP2001394060A patent/JP4069622B2/ja not_active Expired - Lifetime
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JP2007266566A (ja) * | 2005-09-14 | 2007-10-11 | Kyocera Corp | 積層圧電アクチュエータ、その製造方法、および印刷ヘッド |
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