JP4069464B2 - 発泡耐火シート用組成物及び発泡耐火シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な発泡耐火シート用組成物及び発泡耐火シートに関する。
【0002】
【従来技術】
建築物、土木構築物等の構造物が火災等によって高温に晒された場合には、これら構造物の鉄骨及びコンクリートの物理的強度が急激に低下するという問題がある。これに対し、耐火性塗材を基材に塗付し、基材の温度上昇を遅延させ、物理的強度の低下を一時的に抑える方法が採られている。代表的な方法としては、例えばセメント等の無機質バインダーに1)ロックウール、アスベスト、ガラス繊維等の無機質繊維状物質、2)パーライト、バーミキュライト等の軽量骨材、3)結晶水を含有する無機質粉体等を適宜混合し、水と混練してペースト状又はスラリー状とした塗材組成物を基材表面に厚付けする湿式耐火被覆方法が知られている。
【0003】
しかし、上記方法で使用される塗材組成物では、使用する材料の種類にもよるが、例えば鉄骨鉄筋コンクリート構造物の柱、梁等に対する1時間耐火性能(標準加熱曲線において1時間加熱した場合、鋼材温度が平均で350℃以下、最高温度で450℃以下であること)でみると、約20〜40mmという被覆厚みが必要となり、かなりの厚付けとなる。このため、建築現場において施工を行う際には比較的大量の塗材を搬入しなければならないので、コスト上からも非常に不利である。また、厚付けのため、施工部が基材から大幅に突出し、外観上圧迫感を与えることにもなりかねない。さらに、施工後に被覆層の剥離、脱落等が生じる恐れもある。従って、より軽量な塗材組成物の開発が必要とされている。
【0004】
基材に耐火性を付与する他の方法として、火災等の温度上昇に伴い塗膜が発泡し、これによって基材に耐火性を与える発泡耐火塗料を各種の手法により基材に塗付する方法が知られている。発泡耐火塗料は、温度上昇により分解して不燃性ガスを発生する発泡成分と、炭素化して多孔質の炭化層を形成する成分とを含有している。すなわち、不燃性ガスの発生により火災の消火効果を発揮するとともに、炭素化成分による多孔質炭化層の形成によって断熱効果を発揮するものである。
【0005】
従って、発泡耐火塗料によれば、当初の塗膜は通常数mm以下と薄くても、火災時における加熱等により数倍〜数十倍の倍率で発泡して有効な断熱層を形成できる。従って、湿式耐火被覆塗材に比べて塗膜は極端に薄くでき、圧迫感も少なく、すっきりとした感じに仕上がるという利点がある。また、湿式耐火被覆塗材に比べて使用材料が少なくて済み、コスト面の問題等も解消できる。
【0006】
ところが、発泡耐火塗料を塗付する際には耐火性能を均等にするため、厚みも均等にする必要があるので、塗装時の厚み管理を徹底する必要がある。このため、塗装作業を熟練した職人に頼らざるを得ない。また、湿式の塗装方法であるため、その養生等に手間がかかるという欠点もあり、工期の短縮化にも限界がある。
【0007】
最近では、このような湿式塗装工法に代わって乾式シートによる耐火被覆が行われている。これは、予め用意された乾式シートを基材に被覆する方法である。この乾式シートとしては、例えば不燃性の繊維類を不織布状にしたもの、不燃性の不織布、織布等の布状物に発泡耐火塗料を含浸させたもの、アルミ箔等の不燃性物からなるシート状物の上に発泡耐火塗料を積層したもの等が知られている。これらは、いずれも厚み管理が容易であり、養生等も必要ないことから、幅広く実用化されつつある。このような乾式シートによる耐火被覆のうち、特に施工時には厚みが少なく、火災時には発泡して炭化層を形成するタイプのシートが脚光を浴びている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このようなシートは発泡耐火シートと呼ばれ、前述のような利点をもつものであり、物性としては十分な耐衝撃性をもつことが要求される。
【0009】
例えば、シートの製造時において、シートを一定寸法に整えるためには、ロータリーカッター、ギロチンカッター等でシートが機械的に切断される。また、施工時において、施工部位の形状に応じてシートが曲げられたり、躯体に貼り付けるために釘、鋲等によって打ち付けられる。この場合、これらの加工によってシートが部分的に欠落したり、部分的又は全体的にシートが割れてしまうと、本来の耐火性を十分に発揮できなくなる。このため、これらの加工によっても容易に欠落、割れ等が生じない性能、すなわち耐衝撃性がシートに要求される。
【0010】
しかしながら、従来の発泡耐火シートは、耐衝撃性が不十分であり、種々の加工に耐えることができない。殊に、低温環境下においては、この問題はより顕著になる。
【0011】
一方、この問題に対処するため、シートに可塑剤を含有させて柔軟性を付与することも考えられる。ところが、たとえ可塑剤の添加によって柔軟性を付与することはできても、耐汚染性の低下という別の問題が生じるおそれがある。すなわち、シート中の可塑剤がシート表面へ移行してシート表面が可塑剤に覆われると、シート表面にダスト、砂等が付着しやすくなる。これは、可塑剤を多量に使用すればそれだけ顕著になる。
【0012】
本発明は、これら従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、特に、優れた耐衝撃性を有し、欠落、割れ等の発生が抑制ないし防止された発泡耐火シートを提供することを主な目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、発泡耐火シート(組成物)における樹脂成分として特定の樹脂成分を含有させることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、下記の発泡耐火シート用組成物及び発泡耐火シートに係るものである。
【0015】
1.樹脂成分、難燃剤、発泡剤、炭化剤及び充填剤を含有し、樹脂成分として熱可塑性樹脂を含み、樹脂成分のビカット軟化点が75℃以下であることを特徴とする発泡耐火シート用組成物。
【0016】
2.上記発泡耐火シート用組成物を成形して得られる発泡耐火シート。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態に基づき詳細に説明する。
【0018】
本発明の発泡耐火シート用組成物は、樹脂成分、難燃剤、発泡剤、炭化剤及び充填剤を含有し、樹脂成分として熱可塑性樹脂を含み、樹脂成分のビカット軟化点が75℃以下であることを特徴とする。
【0019】
本発明組成物では、樹脂成分のビカット軟化点を75℃以下、好ましくは70℃以下とする。樹脂成分のビカット軟化点を75℃以下に制御することにより、特に、最終的に得られる発泡耐火シートに優れた耐衝撃性を付与することができる。さらには、可塑剤の大量使用も回避でき、これによって耐汚染性も高めることができる。
【0020】
なお、樹脂成分は、本発明組成物中に含まれるすべての樹脂成分をいう。また、本発明におけるビカット軟化点は、JIS K 7206(1991)「熱可塑性プラスチックのビカット軟化温度試験方法」により測定された値を示す。
【0021】
従って、樹脂成分としては、ビカット軟化点を75℃以下にできる限りは特に制限されない。例えば、公知の発泡耐火シートでバインダーとして採用されている熱可塑性樹脂又はその他の樹脂の中からビカット軟化点が75℃以下となるように1種又は2種以上を適宜採用することができる。
【0022】
熱可塑性樹脂の種類としても特に限定されず、例えばビニルトルエン−ブタジエン共重合体、ビニルトルエン−アクリル酸エステル共重合体、ビニルトルエン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、あるいはこれらの共重合体を構成する2種のモノマーとアクリル酸モノマー、メタクリル酸モノマー等との三元共重合体等の樹脂を用いることができる。
【0023】
これら共重合体を構成するアクリル酸モノマー又はメタクリル酸モノマーとしては、例えばメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0024】
本発明組成物は、樹脂成分以外の成分として、難燃剤、発泡剤、炭化剤及び充填剤を含む。これらの各成分は、特に火災発生時において相互の複合作用によりシートの発泡、炭化層形成、不燃性ガス発生等の諸機能を発現できるものであれば特に限定されず、公知の発泡耐火シート(発泡耐火塗料)において用いられる難燃剤、発泡剤、炭化剤及び充填剤もそのまま用いることができる。
【0025】
難燃剤は、一般に、火災時に脱水冷却効果、不燃性ガス発生効果、バインダー炭化促進効果等の少なくとも一つの効果を発揮し、バインダーの燃焼を防止ないし抑制する作用を有する。難燃剤は、かかる作用を有する限り特に制限されず、公知の発泡耐火シートにおける難燃剤と同様のものも使用できる。例えば、トリクレジルホスフェート、ジフェニルクレジルフォスフェート、ジフェニルオクチルフォスフェート、トリ(β−クロロエチル)フォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリ(ジクロロプロピル)フォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリ(ジブロモプロピル)フォスフェート、クロロフォスフォネート、ブロモフォスフォネート、ジエチル−N, N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルフォスフェート、ジ(ポリオキシエチレン)ヒドロキシメチルフォスフォネート等の有機リン系化合物;塩素化ポリフェニル、塩素化ポリエチレン、塩化ジフェニル、塩化トリフェニル、五塩化脂肪酸エステル、パークロロペンタシクロデカン、塩素化ナフタレン、テトラクロル無水フタル酸等の塩素化合物;三酸化アンチモン、五塩化アンチモン等のアンチモン化合物;三塩化リン、五塩化リン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン化合物;その他ホウ酸亜鉛、ホウ酸ソーダ等の無機質化合物等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上で使用することができる。本発明では、特にポリリン酸アンモニウムが好ましい。ポリリン酸アンモニウムを使用する場合には、脱水冷却効果と不燃性ガス発生効果とをより効果的に発揮できるので難燃効果が高く、しかも発泡剤の含有量を削減できる効果もあり、これらの点において他の難燃剤よりも有利である。
【0026】
発泡剤は、一般に、火災時に不燃性ガスを発生させて、炭化していくバインダー及び炭化剤を発泡させ、気孔を有する炭化断熱層を形成させる役割を果たす。発泡剤は、かかる作用を有する限り特に制限されず、公知の発泡耐火シートにおける発泡剤と同様のものも使用できる。例えば、メラミン及びその誘導体、ジシアンジアミド及びその誘導体、アゾジカーボンアミド、尿素、チオ尿素等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上で使用することができる。これらの中では、メラミン、ジシアンジアミド、アゾジカーボンアミド等が不燃性ガスの発生効率に優れていることから好ましい。特にメラミンがより好適に使用することができる。
【0027】
炭化剤は、一般に、火災によるバインダーの炭化とともにそれ自体も脱水炭化していくことにより、断熱性により優れた厚みのある炭化断熱層を形成する作用を有する。炭化剤は、かかる作用を有する限り特に制限されず、公知の発泡耐火シートにおける炭化剤と同様のものが使用できる。例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールのほか、デンプン、カゼイン等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上で使用することができる。本発明では、特にジペンタエリスリトールが、脱水冷却効果と炭化断熱層形成作用に優れている点で好ましい。
【0028】
充填剤は、一般に、炭化断熱層の強度を改善し、かつ、耐火性を高める作用を有する。充填剤は、かかる作用を有する限り特に制限されず、公知の発泡耐火シートにおける充填剤と同様のものが使用できる。例えば、タルク等の珪酸塩;炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩;酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物;粘土、クレー、シラス、マイカ等の天然鉱物類等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上で使用することができる。これらの充填剤中では二酸化チタンがより好ましい。
【0029】
各成分の配合比率は、火災発生時に発泡が良好に行われて、高度の断熱性を有する炭化断熱層を形成し得る限り特に限定されないが、固形分換算で、樹脂成分100重量部に対して、難燃剤200〜600重量部(好ましくは250〜500重量部)、発泡剤40〜150重量部(好ましくは50〜80重量部)、炭化剤40〜150重量部(好ましくは50〜80重量部)及び充填剤50〜160重量部(好ましくは60〜120重量部)とすれば良い。この範囲内においては、特に、炭化断熱層の発泡倍率が高く、発泡が均一であり、しかもより優れた断熱効果、強度等を得ることができる。
【0030】
本発明組成物では、これらの成分以外にも、必要に応じて補強用繊維、着色用顔料等を適宜配合できる。補強用繊維としては、ロックウール、ガラス繊維、シリカーアルミナ繊維、カーボン繊維等の無機繊維、パルプ繊維、ポリプロピレン繊維、ビニル繊維、アラミド繊維等の有機繊維が挙げられる。
【0031】
また、着色顔料としては、一般の塗料顔料(有機顔料・無機顔料)が使用できる。本発明では、特にベンガラ、黄鉛、黄色酸化鉄、チタンイエロー、クロムグリーン、群青、コバルトブルー等の無機顔料が好ましい。さらに、耐火性能をより高めるために膨張性黒鉛、未膨張バーミキュライト等を配合しても良い。
【0032】
さらに、本発明組成物には、必要に応じてジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、塩素化パラフィン等の可塑剤を添加しても良い。但し、可塑剤の添加量が増加すると耐汚染性が低下するおそれがあるので、その添加量は可能な限り少なくすることが好ましく、通常は固形分換算で樹脂成分100重量部に対して30重量部以下、好ましくは15重量部以下とすれば良い。
【0033】
本発明組成物は、これらの各成分を公知の方法に従って均一に混合すれば得ることができる。各成分の配合順序等に制限はなく、配合成分の種類等に応じて適宜配合すれば良い。
【0034】
特に、本発明組成物では溶剤含有量が少ない方が良く、本発明組成物中の溶剤含有量(合計量)を通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下とする。なお、溶剤含有量の下限は、均一な組成物が調製できる限りは特に制限されない。通常、発泡耐火シートには、製造原料中に含まれている溶剤あるいは製造工程中に配合された溶剤が一部蒸発せずに残存するが、耐火性、安全性、作業性、寸法精度等の面から溶剤残存量が少ないほど好ましい。従って、本発明では、溶剤含有量の少ない組成物を用いることにより、得られるシートの溶剤残存量をできるだけ低く抑えることができる。
【0035】
このような組成物は、例えば樹脂成分として無溶剤型樹脂を用いれば好適に調製することができる。従って、本発明組成物においては、樹脂成分として無溶剤型樹脂を用いることが好ましい。無溶剤型樹脂としては、溶剤を含まない以外は公知の樹脂を用いることができる。例えば、ビーズ状あるいはペレット状樹脂を無溶剤型樹脂として使用し、この樹脂の軟化温度まで加熱装置によって加熱し、ニーダー等によって混練しながら、その他の成分を混合すれば、溶剤含有量の少ない(又は溶剤が実質的に存在しない)発泡耐火シート用組成物を調製できる。樹脂以外の成分は、公知の発泡耐火シートの成分・組成割合をそのまま採用できる。なお、上記溶剤含有量の範囲内となる限りは、溶剤を含む成分を用いることができる。
【0036】
本発明の発泡耐火シートは、例えば本発明組成物をシート状に成形して得ることができる。成形方法は、シート状に成形できる限り実質的にあらゆる方法を採用できる。例えば、本発明組成物を型枠内に流し込み、乾燥後に脱型する方法、本発明組成物を加温塗工機によって離型紙に塗付した後に巻き取る方法、ニーダー等によって混練した本発明組成物を押し出し成型機によってシート状に加工する方法、ニーダー等によって混練した本発明組成物を対ロールの間に供給してシート状に加工する方法、本発明組成物をペレット状にした後に押し出し成型機によってシート状に加工する方法、バンバリーミキサー又はミキシングロールで混練した前記組成物を複数の熱ロールからなるカレンダによって圧延してシート状に加工する方法等が可能である。
【0037】
発泡耐火シートの厚みは、適用部位用等に応じて適宜設定すれば良いが、通常は0.2〜5mm程度、好ましくは0.5〜2mmとする。0.2mm未満の場合には、十分な耐火性能が得られないことがある。また、5mmを超える場合は、厚みに相当するだけの耐火性能の向上が十分得られないことがある。但し、必要に応じて上記範囲外となる厚みとしても差し支えない。
【0038】
本発明の発泡耐火シートは、建築物・土木構築物等の構造物において耐火構造とすべき部分、例えば、壁、柱、床、梁、屋根、階段の各部位に施工される。このような施工部位は、コンクリート又は金属で形成されていることがほとんどであるが、特に金属で形成されているH鋼、鉄骨丸柱、鉄骨角柱等は防錆処理として予め防錆塗料を塗付しておくのが好ましい。また、本発明発泡耐火シートは、コンクリート・金属だけでなく、例えば木質部材、樹脂系部材等への適用も可能である。
【0039】
本発明の発泡耐火シートは、耐火性を付与すべき躯体に貼着する際、躯体に予め接着剤を塗付して貼着する方法の他、発泡耐火シート側に接着剤層を設けて貼着する方法、発泡耐火シートを釘、鋲等により躯体に打ち付けて固定する方法等の種々の方法が可能である。
【0040】
発泡耐火シートを貼着する際には、躯体がすべて覆われるように処理できる限り、いずれの方法を採用しても良い。従って、例えばシートとシートの突き合わせ部分においては、シートどうしを重ね合わせたり、細幅のシートを重ね合わせたり、あるいは接着剤又は加熱・押圧等により貼り合わせたり、耐火性のパテ材を充填塗付することによって処理することができる。その他にも、耐火性の隙間テープ、テープ状に裁断した発泡耐火シート等で覆い隠すことも可能である。このように、突き合わせ部分の隙間を実質的になくすことにより、本来の耐火性能をより確実に得ることができる。
【0041】
本発明の発泡耐火シートの上には、必要に応じて化粧層を形成させても良い。化粧層は公知の施工方法で形成させれば良く、例えば発泡耐火シートに各種塗料を塗装したり、あるいは化粧フィルム、化粧シート等を積層しても良い。また例えば、公知の石材調貼り仕上材等を用いて施工することもできる。
【0042】
また、化粧層の形成に先立って必要に応じて化粧用下塗り材(単に「下塗り材」ともいう)を発泡耐火シート上に塗付しても良い。下塗り材の塗付によって、主として、発泡耐火シート積層後におけるシートと化粧層との密着性をより高めることができる。下塗り材は、公知の下塗り材を採用することができる。
【0043】
さらに、上記化粧層の保護を主目的として化粧層にクリヤー塗料を塗付することもできる。特に耐候性が要求される構造物外部の部位に施工する際には、化粧層にクリヤー塗料を塗付するのが好ましい。クリヤー塗料は、公知のクリヤー塗料を採用することができる。
【0044】
本発明の発泡耐火シートでは、耐火性能向上のために耐火性材料と発泡耐火シートとを積層することも可能である。例えば、耐火性を付与すべき躯体に対して耐火性材料及び発泡耐火シートの順で積層することができる。積層方法自体は、公知の方法に従って実施すれば良い。耐火性材料としては、例えば珪酸カルシウム板、パーライトセメント板、石膏ボード、ロックウール板、グラスウール保温板、石綿スレート板、気泡軽量コンクリート板、気泡モルタル板、気泡石膏ボード、軽量コンクリート板、セメント系押出成形板、無機系サイディング、金属サイディング等の成形板、あるいはロックウール、セラミックウール、グラスウール、スラグウール等からなるシート、マット、ブランケット等が挙げられる。
【0045】
【発明の効果】
本発明の発泡耐火シート用組成物は特定の樹脂成分が含まれているので、これにより製造される発泡耐火シートは、優れた耐衝撃性を発揮することができる。このため、低温環境下での加工においても欠落、割れ等が発生せず、加工性に優れている。その結果として、本発明発泡耐火シートで施工された部位では、いずれも発泡耐火シートの耐火性能を確実に得ることができる。
【0046】
しかも、本発明発泡耐火シートでは、可塑剤の添加量の低減化を図ることができるので、耐汚染性においても優れた効果を発揮できる。
【0047】
加えて、無溶剤型樹脂を本発明組成物の樹脂成分として用いる場合は、溶剤使用量を抑えることができるので、耐火性のみならず、安全性、作業性、寸法精度等においても優れた効果を発揮できる。
【0048】
このように、本発明の発泡耐火シートは、従来の発泡耐火シートよりも耐衝撃性、加工性、耐火性、安全性、寸法精度等において優れた効果を発揮することができ、耐火性能が要求される分野、部位、用途等において幅広く利用することができる。
【0049】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0050】
実施例1〜4及び比較例1〜2
(1)発泡耐火シートの作製
発泡耐火シート用組成物を表1に示す組成となるように配合した。これらを120℃に加温し、ニーダーによって混練した後、対ロールの間に供給して加工した後、室温にて放冷し、膜厚1.5mmのシートを得た。
【0051】
【表1】
【0052】
なお、表1中において発泡耐火シート用組成物に使用した各成分は、以下の通りである。
【0053】
樹脂1:エチレン−メタクリル酸エステル共重合樹脂、固形分100%、ビカット軟化点44℃
樹脂2:エチレン−メタクリル酸エステル共重合樹脂、固形分100%、ビカット軟化点72℃
樹脂3:エチレン−メタクリル酸エステル共重合樹脂、固形分100%、ビカット軟化点85℃
樹脂4:ビニルトルエン−アクリル酸エステル共重合樹脂、固形分100%、ビカット軟化点64℃
難燃剤:ポリリン酸アンモニウム
発泡剤:メラミン
炭化剤:ジペンタエリスリトール
充填剤:二酸化チタン
可塑剤:ジブチルフタレート
(2)試験及び結果
得られた各シートについて、耐衝撃性試験、耐汚染性試験及び耐火性能試験を実施した。その結果を表2に示す。なお、各試験については、下記の方法により実施した。
【0054】
・耐衝撃性試験
発泡耐火シートを300mm×150mmに切断し、20℃の温度下において、デュポン式衝撃変形試験器により500gのおもりを撃ち、発泡耐火シートに割れが生じる高さを測定した。なお、本発明の発泡耐火シートでは、その高さが通常300mm以上(特に400mm以上)であることが望ましい。
【0055】
・耐汚染性試験
発泡耐火シートを150mm×70mm×3mmの鋼鈑に貼着して2週間養生し、試験体とした。50℃の温度下にて1週間放置した試験体を、水平に置いて黒色珪砂を散布した後垂直に立て、付着した黒色珪砂の量を目視によって評価した。評価は、○:付着せず、△:わずかに付着、×:多量に付着、とした。
【0056】
・耐火性能試験
発泡耐火シートを300mm×300mm×2.3mmの熱間圧延鋼鈑に貼着して2週間養生して試験体とした。作製した試験体をJIS A 1304 「建築構造部分の耐火試験方法」の4.「加熱等級;付図1」に規定する標準曲線に基づいて、電気炉にて試験片の一面を加熱昇温し、熱間圧延鋼鈑の裏面温度が550℃に達した時点での経過時間(分)を耐火性能として評価した。また、この試験体について、乾燥塗膜に対する発泡倍率を測定した。
【0057】
【表2】
【0058】
表2の結果からも明らかなように、樹脂成分のビカット軟化点が75℃を超える比較例1〜2では耐衝撃性に劣っていた。また、ビカット軟化点の低い樹脂が含まれない分、可塑剤の添加量を増量した比較例3では、耐衝撃性を高めることはできても、耐汚染性を低下させてしまうことがわかる。
【0059】
これらに対し、本発明品である実施例1〜3は、特に、優れた耐衝撃性及び耐汚染性を同時に付与できることがわかる。
Claims (6)
- 樹脂成分、難燃剤(有機リン系化合物を除く)、発泡剤、炭化剤及び充填剤を含有し、樹脂成分として熱可塑性樹脂を含み、樹脂成分のビカット軟化点が75℃以下であって、前記熱可塑性樹脂が、ビニルトルエン−ブタジエン共重合体、ビニルトルエン−アクリル酸エステル共重合体、ビニルトルエン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、あるいはこれらの共重合体を構成する2種のモノマーとアクリル酸モノマー、メタクリル酸モノマーとの三元共重合体であることを特徴とする発泡耐火シート用組成物。
- 固形分換算で、樹脂成分100重量部に対して難燃剤(有機リン系化合物を除く)200〜600重量部、発泡剤40〜150重量部、炭化剤40〜150重量部及び充填剤50〜160重量部を含有する請求項1記載の発泡耐火シート用組成物。
- 溶剤含有量が10重量%以下である請求項1又は2に記載の発泡耐火シート用組成物。
- 樹脂成分として無溶剤型樹脂を用いた請求項1〜3のいずれかに記載の発泡耐火シート用組成物。
- さらに可塑剤を固形分換算で樹脂成分100重量部に対して30重量部以下含む、請求項1〜4のいずれかに記載の発泡耐火シート用組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の発泡耐火シート用組成物を成形して得られる発泡耐火シート。
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