JP3551808B2 - 防火性を有する断熱積層体の形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、防火性を有する断熱積層体の形成方法に関する。
【0002】
【従来技術】
ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム、フェノールフォーム等のような有機系断熱材は、一般に優れた断熱性を有し、しかも施工性・加工性も良好である。このため、建築物の壁、天井等に断熱性を付与することを目的としてこれら有機系断熱材が多く使用される。これらの断熱材を使用することにより、室内の保温効果を高め、暖房効率・冷房効率の向上を図ることもできる。
【0003】
ところが、これらの有機系断熱材は、その骨格が有機化合物であるがゆえに可燃性であり、耐火性・耐熱性に劣る。このため、工事における溶接火花の引火、火災発生等によって、断熱材自体が燃焼して延焼を促進したり、大量の有害な煙を発生するという欠点がある。
【0004】
従って、有機系断熱材に防火性塗料又は難燃性塗料を付与する方法が提案されている。例えば、有機系断熱材に発泡防火塗料を塗付して防火性を与える方法(特開昭53−143632号、特開昭63−295683号等)、有機系断熱材に難燃性無機塗料を塗付して防火性を与える方法(特公平4−48344号)等が知られている。
【0005】
しかし、これらの塗料により有機系断熱材の表面に有効な防火層を形成するにはその塗膜厚みを均一にする必要があり、塗膜厚みの厳格な管理が要求される。塗膜厚みが均一でない場合は、防火性能にムラを生じる。特に防火性が不十分な箇所では、有機系断熱材への伝熱速度が高く、有機系断熱材が熱により収縮・変形してしまい、防火層が割れたり、脱落し、ひいては有機断熱材が着火するおそれも生じる。殊に、無機塗料による防火層では特に割れを生じやすく、着火する危険性も高い。
【0006】
加えて、防火塗料による塗膜の厚み管理は、通常、施工乾燥塗膜の電磁膜厚計での測定によるが、電磁膜厚計が使用できるのは下地が金属の場合に限られる。これに対し、下地が有機系断熱材のような非金属である場合、その塗膜厚み測定を容易にすることはできず、防火塗料の厚み管理において正確さを欠くことになる。
【0007】
また、防火塗料を用いるこれらの方法は、いずれも湿式の塗装工法であることから、所望の防火性能を得るために防火塗料を複数回塗装する必要がある。このため、塗装の手間がかかるだけでなく乾燥にも時間を要し、工期の長期化を招くこととなる。さらに、湿式の塗装工法では、平滑性の高い塗装面を得ることは容易ではない。
【0008】
加えて、防火塗料として溶剤系塗料を使用すると、塗料中に含まれる溶剤によって有機系断熱材が侵される場合があり、かかる場合には断熱性能を低下させることにもなる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このように、有機系断熱材を用いる構造において、従来の工法では十分な防火性を確実に付与することが困難であり、また施工性、作業性、意匠性等において様々な問題を有しており、これらを解決できる工法の開発が切望されている。
【0010】
従って、本発明は、特に有機系断熱材を用いる構造において、優れた断熱性と防火性とを兼ね備えた構造を提供することを主な目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、従来技術に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、有機系断熱材に発泡防火シートを積層することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、下記の防火性を有する断熱積層体の形成方法に係るものである。
【0013】
1.基材に有機系断熱材を取り付け、次いで有機系断熱材上に発泡防火シートを積層することを特徴とする、防火性を有する断熱積層体の形成方法。
【0014】
2.基材に、予め発泡防火シートが積層された有機系断熱材を取り付けることを特徴とする、防火性を有する断熱積層体の形成方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態に基づき詳細に説明する。
【0016】
(1)有機系断熱材
本発明に使用できる有機系断熱材は、所望の断熱性を有するものであれば特に限定されないが、有機系樹脂を主成分とする発泡体(樹脂発泡体)を好適に使用することができる。例えば、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、塩化ビニルフォーム、ビスコーススポンジ、ゴムフォーム、EVAフォーム、ABSフォーム、ポリアミドフォーム、アクリルフォーム、ウレタンフォーム、フェノールフォーム、ユリアフォーム、シリコンフォーム、エポキシフォーム等の樹脂発泡体又はこれらと金属箔、無機成形板等の面材とを一体化したもの等が挙げられる。これらは公知のもの又は市販品をそのまま使用することもできる。
【0017】
有機系断熱材の厚みは、基材、樹脂発泡体等の種類、施工部位、要求される断熱性能等により適宜設定すれば良い。また、有機系断熱材の形状も施工部位の形状等に応じて設定すれば良い。
【0018】
(2)発泡防火シート
本発明では、有機系断熱材上に発泡防火シートを積層させる。本発明で使用する発泡防火シートは、火災により周辺温度が所定の発泡温度に達すると発泡し、炭化断熱層を形成するものであれば特に限定されず、公知のものも使用できる。具体的には、例えば特開平5−220879号公報、特開平7−276552号公報に開示されるような発泡防火組成物を公知の方法により塗膜化してシート状としたもの、これら発泡防火塗料を不織布、織布等の布状物に含浸させたもの、あるいはこれらを積層したもの、不燃性布状物(金属箔等を含む)上に積層したもの等が本発明の発泡防火シートとして使用できる。
【0019】
発泡防火シートを構成するバインダーとしては、一般には熱可塑性樹脂が使用される。熱可塑性樹脂は特に限定されず、例えば、ビニルトルエン−ブタジエン共重合体、ビニルトルエン−アクリル酸エステル共重合体、ビニルトルエン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、あるいはこれらの共重合体を構成する2種のモノマーとアクリル酸モノマー、メタクリル酸モノマー等との三元共重合体等の樹脂が挙げられる。この場合において、アクリル酸エステル成分又はメタクリル酸エステル成分を含む共重合体中のアクリル酸モノマー又はメタクリル酸モノマーとしては、例えばメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で又は2種以上で使用することができる。
【0020】
バインダー以外の成分として、公知の発泡防火シート(発泡防火塗料)として用いられる成分、例えば難燃剤、発泡剤、炭化剤、充填材等が含まれていても良い。これらの成分は、火災発生時において、相互の複合作用によりシートの発泡、炭化層形成、不燃性ガス発生等の機能を発現する。
【0021】
難燃剤は、一般に火災時に脱水冷却効果、不燃性ガス発生効果、バインダー炭化促進効果等の少なくとも1つの効果を発揮し、バインダーの燃焼を防止ないし抑制するものである。本発明において、難燃剤としては公知の発泡防火シートにおける難燃剤と同様のものが使用できる。例えば、トリクレジルホスフェート、ジフェニルクレジルフォスフェート、ジフェニルオクチルフォスフェート、トリ(β−クロロエチル)フォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリ(ジクロロプロピル)フォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリ(ジブロモプロピル)フォスフェート、クロロフォスフォネート、ブロモフォスフォネート、ジエチル−N, N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルフォスフェート、ジ(ポリオキシエチレン)ヒドロキシメチルフォスフォネート等の有機リン系化合物;塩素化ポリフェニル、塩素化ポリエチレン、塩化ジフェニル、塩化トリフェニル、五塩化脂肪酸エステル、パークロロペンタシクロデカン、塩素化ナフタレン、テトラクロル無水フタル酸等の塩素化合物;三酸化アンチモン、五塩化アンチモン等のアンチモン化合物;三塩化リン、五塩化リン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン化合物;その他ホウ酸亜鉛、ホウ酸ソーダ等の無機質化合物等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上で使用することができる。
【0022】
発泡剤は、主に、火災時に不燃性ガスを発生させて、炭化していくバインダー及び下記の炭化剤を発泡させ、気孔を含有した炭化断熱層を形成させる効果を発揮するものである。発泡剤としては、例えばメラミン及びその誘導体、ジシアンジアミド及びその誘導体、アゾジカーボンアミド、尿素、チオ尿素等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上で使用することができる。
【0023】
炭化剤は、一般に、火災によるバインダーの炭化とともにそれ自体も脱水炭化することにより、断熱性により優れた厚みのある炭化断熱層を形成する効果を発揮するものである。炭化剤としては、公知の発泡防火シートにおける炭化剤と同様のものが使用できる。例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール;デンプン、カゼイン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上で使用することができる。
【0024】
充填剤は、一般に、炭化断熱層の強度を改善し、かつ、防火性を高める効果を発揮するものである。充填剤としては、公知の発泡防火シートにおける充填剤と同様のものが使用できる。例えば、タルク等の珪酸塩;炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩;酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物;粘土、クレー、シラス、マイカ等の天然鉱物類等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上で使用することができる。
【0025】
これらの成分以外にも、必要に応じて、例えば補強用繊維、着色用顔料等を適宜配合できる。補強用繊維としては、例えばロックウール、ガラス繊維、シリカーアルミナ繊維、カーボン繊維等の無機繊維、あるいはパルプ繊維、ポリプロピレン繊維、ビニル繊維、アラミド繊維等の有機繊維が挙げられる。着色顔料としては、一般の塗料顔料(有機顔料・無機顔料)が使用できる。本発明では、特にベンガラ、黄鉛、黄色酸化鉄、チタンイエロー、クロムグリーン、群青、コバルトブルー等の無機顔料が好ましい。さらに、防火性能をより高めるために膨張性黒鉛、未膨張バーミキュライト等を配合することもできる。
【0026】
また、必要に応じて、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、塩素化パラフィン等の可塑剤を添加しても良い。但し、可塑剤の添加量が増加すると耐汚染性が低下するので、その添加量は可能な限り少なくすることが好ましい。
【0027】
本発明で用いる発泡防火シートは、溶剤含有量が少ないものが好ましく、特に溶剤が実質的に残存していないものが好ましい。通常、発泡防火シートには、製造原料中に含まれている溶剤あるいは製造工程中に配合された溶剤が一部蒸発せずに残存する。これに対し、本発明においては、防火性、安全性、作業性等の面から溶剤残存量が少ないほど好ましい。
【0028】
従って、本発明では、溶剤含有量の少ない発泡防火シート用組成物から製造(成形)された発泡防火シートを用いることが好ましい。上記組成物中の全溶剤含有量は、通常10重量%以下、さらには5重量%以下であることが好ましい。なお、下限は、均一な組成物が調整できる限りは特に制限されない。
【0029】
このような組成物は、例えばバインダー成分として無溶剤型樹脂を用いて調製することができる。無溶剤型樹脂としては、溶剤を含まない以外は公知の樹脂成分を使用することができる。例えば、ビーズ状又はペレット状の熱可塑性樹脂をそのまま無溶剤型樹脂として使用し、この樹脂の軟化温度まで加熱装置によって加熱し、ニーダー等によって混練しながら、その他の成分を混合すれば発泡防火シート用組成物を調製できる。バインダー成分以外の成分は、公知の発泡防火シートの成分・組成割合をそのまま採用できる。
【0030】
発泡防火シートの製造(成形)においては、例えば前記組成物を型枠内に流し込み、乾燥後に脱型する方法、前記組成物を加温塗工機によって離型紙に塗付した後に巻き取る方法、ニーダーによって混練した前記組成物を押し出し成型機によってシート状に加工する方法、ニーダーによって混練した前記組成物を対ロールの間に供給してシート状に加工する方法、前記組成物をペレット状にした後に押し出し成型機によってシート状に加工する方法、バンバリーミキサー又はミキシングロールで混練した前記組成物を複数の熱ロールからなるカレンダによって圧延してシート状に加工する方法等が適宜採用できる。
【0031】
発泡防火シートの厚みは、発泡防火シートの性能、適用部位等により適宜設定すれば良いが、通常は0.2〜5mm程度、好ましくは0.5〜2mmとする。0.2mm未満の場合には、十分な防火性能が得られないことがある。5mmを超える場合は、厚みに相当するだけの防火性能が十分得られない場合がある。但し、発泡防火シートの性能、適用部位等によっては必ずしもこのような厚みに限定されるものではない。
【0032】
(3)断熱積層体の形成
本発明では、基材に有機系断熱材を取り付ける方法としては特に制限されず、例えば予め所望の形状に加工された有機系断熱材(成形体)を接着剤又は釘、鋲等により取り付ける方法だけでなく、有機系断熱材用の組成物を吹付け等により基材に付与する方法等も包含する。上記組成物、塗膜の形成方法等は公知のものを採用することができ、例えば2液型組成物をポンプ圧送して吹き付け、発泡させることによって、直接硬質ポリウレタンフォーム層を基材に取り付けることができる。
【0033】
また、本発明では、予め発泡防火シートが積層された有機系断熱材を基材に取り付けることもできる。発泡防火シートを有機系断熱材に積層する方法としては、例えば後記に示す方法に従えば良い。加えて、本発明では、有機系断熱材用の組成物を直接発泡防火シートに吹付ける方法等によって上記有機系断熱材と発泡防火シートとの積層体を製造することもできる。
【0034】
本発明における基材は、断熱性を付与すべき箇所・部位であればいずれにも適用できる。特に、壁、天井、床のほか、各種のタンク、配管等にも好適である。材質としては、有機系断熱材の取り付けが可能であれば特に制限されず、例えばコンクリート、金属、無機材料、樹脂、木質等にいずれにも適用することができる。
【0035】
有機系断熱材に発泡防火シートを積層する際には、有機系断熱材及び/又は発泡防火シートに接着剤層を設けて積層する方法、釘、鋲等により固定する方法、発泡防火シートを加熱・押圧することにより有機系断熱材に接着させる熱融着法等を採用することができる。
【0036】
接着剤層を設ける方法において、この接着剤層は有機系断熱材の表面又は発泡防火シートの裏面に予め形成しても良いし、積層する直前に塗付することにより形成させても良い。接着剤としては、公知の接着剤又は市販品を使用でき、例えば酢酸ビニル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、合成ゴム系接着剤、繊維素系接着剤等が使用できる。
【0037】
接着剤層中には、必要に応じて充填剤を含有させることもできる。例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、重質炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、ホワイトカーボン、珪藻土等の粉体、パーライト、シラスバルーン等の軽量骨材、珪砂、砂等の粒状体を使用することも可能である。さらに、必要に応じて発泡性、難燃性等を有する充填剤を配合することも可能である。また、接着剤層中には、可塑剤、防腐剤、防黴剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤等の添加剤を単独で又は2種以上組み合わせて配合しても良い。
【0038】
有機系断熱材の表面に凹凸がある場合は、下地調整能を有する接着剤を適用することにより発泡防火シートの貼り付けを容易にすることができる。下地調整能を有する接着剤は、上記充填剤、添加剤等を適宜配合し、接着剤の粘性を調整することにより調製することができ、また市販品も使用できる。他方、接着剤を塗付する前に、有機系断熱材の表面に切削、研磨等の処理を施すことにより平坦化することも可能である。
【0039】
発泡防火シートどうしの接合部を有する場合は、例えば発泡防火シートの末端部どうしを重ね合せたり、あるいは末端部どうしの突き合わせ部に発泡防火シート細幅材を重ね合せた後、接着剤又は加熱・押圧(熱融着)等により貼りあわせたり、防火性のパテ材を充填塗付することによって処理すれば良い。その他にも、防火性の隙間テープ、テープ状に裁断した発泡防火シート等で覆い隠すことも可能である。接合部の間隙をなくすことにより、本来の防火性能を確実に得ることができる
(4)化粧層の形成
本発明では、発泡防火シートを積層した後、必要に応じて発泡防火シート上にさらに化粧層を形成させても良い。また、予め発泡防火シートに化粧層を形成させておくことも可能である。化粧層の形成により、美観を付与することができ、発泡防火シートの耐久性を高めることもできる。
【0040】
化粧層は、公知の施工方法で形成させれば良く、例えば発泡防火シートに各種塗料を塗装したり、あるいは化粧フィルム、化粧シート等を積層しても良い。また例えば、公知の石材調貼り仕上材等を用いて施工することもできる。
【0041】
本発明では、上記化粧層の保護を主目的としてさらにクリヤー塗料を塗付することもできる。クリヤー塗料は、特に限定されず公知のもの又は市販品を使用できる。例えば、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、アクリルシリコン系、フッ素系等の塗料を用いることができる。また、これらの塗料は水系又は溶剤系のいずれであっても良いが、特に内装部分に塗装する際には水系の方が望ましい。また、クリヤー塗料は、非汚染タイプの方が好ましい。さらに、塗料は、艶消しタイプ又は艶有りタイプでもいずれであっても良い。クリヤー塗料による塗装は、公知の塗装によれば良く、例えば吹き付け塗装、ローラー塗装、刷毛塗り等の各種の塗装方法により実施することができる。
【0042】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより明確にする。なお、実施例の発泡防火シートは、表1に示す組成のものを使用した。
【0043】
【表1】
【0044】
実施例1
表面が平坦な板状の硬質ポリウレタンフォーム(600mm×450mm×35mm)に、ポリウレタン系樹脂接着剤を塗付量0.3kg/m2で刷毛によって塗付し、直ちに発泡防火シート(600mm×450mm×0.6mm)を貼り付け、室温にて24時間養生させた。次に、アクリル系仕上塗料を塗付量0.15kg/m2で吹付により塗付した後、室温にて7日間養生した。その結果、表面が平滑で、総厚み約36mmの均一な積層体を得ることができた。この積層体を100mm×100mmに切断し試験体とした。
【0045】
作製した試験体をガスバーナーによって5分間加熱した。加熱温度は、試験体表面が約700℃となるように設定した。加熱中において発火は認められなかった。加熱後の試験体は、面積20cm2、深さ12mmにわたり、発泡防火シートが発泡炭化して、断熱材を保護していた。
【0046】
実施例2
発泡防火シートとして600mm×450mm×1.0mmのものを使用した以外は、実施例1と同様に試験体を作製し、加熱試験を行った。加熱前の試験体は、表面が平滑で、総厚み約36mmの均一なものであった。加熱中において発火は認められなかった。加熱後の試験体は、面積15cm2、深さ8mmにわたり、発泡防火シートが発泡炭化して、断熱材を保護していた。
【0047】
比較例1
表面が平坦な板状の硬質ポリウレタンフォーム(600mm×450mm×35mm)に、セメント、珪砂、水酸化アルミニウム及びアクリル系合成樹脂エマルションを主成分とする難燃性無機系塗料を膜厚が2mmとなるように鏝にて塗付した。その結果、総厚み約37mmの積層体を得た。積層体の表面は実施例1又は2で得た試験体に比べ、平滑性に劣るものであった。この積層体を100mm×100mmに切断し試験体とした。
【0048】
作製した試験体をガスバーナーによって5分間加熱した。加熱温度は、試験体表面が約700℃となるように設定した。加熱開始から2分経過した時点で加熱中央部に割れが発生した。加熱後の試験体は、内部のウレタンフォームが全体的に焼失し、防火層が脱落してしまった。
【0049】
【発明の効果】
本発明は、有機系断熱材及び発泡防火シートからなる構造を得ることができるので、平常時には優れた断熱性が発揮され、また火災時には優れた防火性が発揮される。
【0050】
特に、本発明によって得られる断熱積層体は、防火層として発泡防火シートを使用するので、その厚みが均一なものであり、火災時には均一な発泡炭化層を形成し、発泡炭化層の割れ、脱落等がない。また、発泡防火シートは、たとえ有機系断熱材が熱により収縮・変形したとしてもこれに追従する防火層を形成することができ、安定した防火性を発揮し、有機系断熱材の火災初期における延焼を有効に防止することができる。
【0051】
また、平常時においては、優れた断熱性を有し、積層体の表面は平滑性が高く意匠性に優れている。加えて、発泡防火シート上に化粧層を形成させる場合には、発泡防火シートの保護、意匠性の向上等も達成される。
【0052】
作業面においては、発泡防火塗料による施工とは異なり乾燥工程等を必要としないので、工程数の軽減化、工期の短縮化等を図ることができ、作業性の向上に寄与することができる。
【0053】
さらに、発泡防火シートにおけるバインダー成分として無溶剤型樹脂のような溶剤のない又は溶剤含有量の少ないバインダーを使用すれば、それだけ防火性、安全性、作業性等の向上に寄与することができる。
【0054】
このように、本発明では、比較的簡便な方法で防火性を有する断熱層を形成することができ、断熱性が要求される様々な用途に使用することができる。
Claims (5)
- 基材に有機系断熱材を取り付け、次いで有機系断熱材上にバインダー、難燃剤、発泡剤、炭化剤及び充填剤を含む発泡防火シートを積層することを特徴とする、防火性を有する断熱積層体の形成方法。
- 基材に、予めバインダー、難燃剤、発泡剤、炭化剤及び充填剤を含む発泡防火シートが積層された有機系断熱材を取り付けることを特徴とする、防火性を有する断熱積層体の形成方法。
- 有機系断熱材が、樹脂発泡体である請求項1又は2に記載の形成方法。
- 発泡防火シートが、溶剤含有量10重量%以下の発泡防火シート用組成物を成形して得たシートである請求項1〜3のいずれかに記載の形成方法。
- 発泡防火シート上に、さらに化粧層を形成させる請求項1〜4のいずれかに記載の形成方法。
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