JP4300374B2 - 発泡耐火シートの製造方法 - Google Patents

発泡耐火シートの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な発泡耐火シートの製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
建築物、土木構築物等の構造物が火災等による高温に晒された場合には、これら構築物の鉄骨及びコンクリートの機械的強度が急激に低下するという問題がある。これに対し、耐火性塗材を基材に塗付し、基材の温度上昇を遅延させ、強度低下を一時的に抑える耐火工法が採られている。
【0003】
かかる耐火工法の一つとして、火災等の温度上昇に伴い塗膜が発泡し、基材に耐火性を与える発泡耐火塗料を各種の手法により基材に塗付する方法が知られている。発泡耐火塗料は、温度上昇により分解して不燃性ガスを発生する発泡成分と、炭素化して多孔質の断熱層を形成する炭化成分とを含有するものである。すなわち、不燃性ガスの発生により火災の抑制効果を発揮するとともに、炭素化成分による多孔質炭化層の形成によって断熱効果を発揮するものであり、これら発泡成分と炭化成分を含む混合粉末(以下「発泡耐火性付与粉体」という。)を合成樹脂バインダーに混合したものである。
【0004】
発泡耐火塗料によれば、平常時の塗膜は通常数mm以下と薄くても、火災時には加熱等されて数倍から数十倍の倍率で発泡して有効な断熱層を形成できる。従って、非発泡性であって厚付けを必要とする従来の湿式耐火被覆塗材に比べ、塗膜は極端に薄くでき、圧迫感も少なくすっきりとした感じに仕上がるという利点がある。また、従来の湿式耐火被覆塗材に比べて使用材料が少なくて済むので、材料運搬にかかる手間も軽減できる。
【0005】
ところが、発泡耐火塗料を塗付する際には均等な耐火性能を付与するため、塗膜厚みも均等にする必要があり、塗装時の厚み管理が厳格に要求される。このため、塗装作業を熟練した職人に頼らざるを得ず、コスト高となる可能性がある。また、湿式の塗装工法であるため、その乾燥等に時間がかかり、工期の短縮化の妨げとなる。さらに、必要な耐火性能を得るためには、一般の塗料と比較してかなり厚膜にする必要があることから、発泡耐火塗料を複数回塗装しなければならず、また塗膜が完全なフラット面になりにくいという欠点もある。
【0006】
最近では、このような湿式塗装工法に代わって、乾式シート貼着による耐火被覆工法が検討されている。これは、予め用意された発泡耐火シートを基材に被覆する方法である。発泡耐火シートでは、厚み管理が容易であり、施工現場における養生も必要ないため、工期の短縮化が望めると同時に、平滑な表面が確保できることから、非常に注目されている。そして、この発泡耐火シートは、発泡耐火塗料をフローコーター等の塗付装置により離型面に塗付し、乾燥後に剥離する方法により製造されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の製造方法では、少なくとも下記(a)〜(e)の問題点がある。
【0008】
(a)発泡耐火塗料中の溶剤分(水系の場合は水分)が蒸発して、乾燥時に膜厚が減少するため、所望の膜厚を確実に得ることが困難である。
【0009】
(b)厚膜のシートを得るために発泡耐火塗料を一度に多く塗付すると、乾燥過程でシートに割れを生じたり、極端に乾燥が遅れたりする。
【0010】
(c)乾燥を早くするために加熱をすると膨れを生じる。
【0011】
(d)発泡耐火シートとして必要な膜厚を得るためには、複数回の塗付と乾燥を繰り返すか、あるいは薄膜の乾燥シートを複数枚積層するという必要があり、製造に非常に手間がかかる。
【0012】
(e)乾燥時に有機溶剤の揮発による環境汚染の問題を生じる。
【0013】
これに対し、発泡耐火塗料の固形分を高くする方法が考えられるが、系全体が高粘度になり、発泡耐火性付与粉体を合成樹脂バインダーに十分に分散させるのが困難である。しかも、発泡耐火シートとして必要な膜厚を得るためには、やはり複数回の塗付と乾燥を繰り返す必要があり、高粘度化が塗付の際に作業性を低下させることにもなる。
【0014】
以上のように、従来の製造方法では、優れた耐火性を付与できる発泡耐火シートを確実かつ効率的に製造することが困難であり、かかる点においてさらなる改善が必要とされている。
【0015】
従って、本発明は、特に、優れた耐火性を付与できる発泡耐火シートを確実かつ効率的に製造することを主な目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、従来技術の問題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、特定の方法でシートを製造する場合には上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明の発泡耐火シートの製造方法は、少なくとも熱可塑性樹脂ならびに難燃剤、発泡剤、炭化剤及び充填材を含有している発泡耐火性付与粉体を含むシート用混練物を圧延することを特徴とする発泡耐火シートの製造方法であって、
前記熱可塑性樹脂が、ビニルトルエン−ブタジエン共重合体、ビニルトルエン−アクリル酸エステル共重合体、ビニルトルエン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、あるいはこれらの共重合体を構成する2種のモノマーとアクリル酸モノマー、メタクリル酸モノマーとの三元共重合体の1種又は2種以上であって、
前記熱可塑性樹脂として無溶剤型樹脂を用い、
前記シート用混練物が、熱可塑性樹脂:発泡耐火性付与粉体が1:3〜8(重量比)である熱可塑性樹脂及び発泡耐火性付与粉体を含む混合物を加圧型ニーダーを用いて加熱混練して得られたものである製造方法に係るものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
1 シート用混練物
本発明の製造方法におけるシート用混練物としては、少なくとも熱可塑性樹脂及び発泡耐火性付与粉体を含む。
【0019】
(1)熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、ビニルトルエン−ブタジエン共重合体、ビニルトルエン−アクリル酸エステル共重合体、ビニルトルエン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、あるいはこれらの共重合体を構成する2種のモノマーとアクリル酸モノマー、メタクリル酸モノマー等との三元共重合体等の樹脂が挙げられる。この場合において、アクリル酸エステル成分又はメタクリル酸エステル成分を含む共重合体中のアクリル酸モノマー又はメタクリル酸モノマーとしては、例えばメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。これらは1種又は2種以上で使用することができる。。
【0020】
シート用混練物の圧延をより円滑に行えるという点では、メルトフローレートが2g/10min以上の熱可塑性樹脂を用いることが望ましい。このメルトフローレートは、JIS K 7210-1995「熱可塑性プラスチックの流れ試験方法」に基づいて測定した値を示す。なお、試験条件としては、温度150℃、試験荷重として21.18Nを使用する。
【0021】
また、熱可塑性樹脂は、本発明の効果を妨げない限り、溶剤型又は無溶剤型のいずれも使用することができるが、溶剤の揮発、寸法精度等の問題が実質的に回避できるという点では無溶剤型樹脂を用いることが好ましい。無溶剤型樹脂としては、例えばビーズ状、ペレット状等の無溶剤型樹脂のように公知のものを使用することができる。
【0022】
(2)発泡耐火性付与粉体
本発明における発泡耐火性付与粉体は、少なくとも難燃剤、発泡剤、炭化剤及び充填材を含有している。これらの成分は、火災発生時において、相互の複合作用によりシートの発泡、炭化層形成、不燃性ガス発生等の機能を発現するものである。
【0023】
難燃剤は、一般に火災時に脱水冷却効果、不燃性ガス発生効果、バインダー炭化促進効果等の少なくとも1つの効果を発揮し、バインダーの燃焼を防止ないし抑制する。難燃剤は、公知の発泡耐火シートにおける難燃剤と同様のものが使用できる。例えば、トリクレジルホスフェート、ジフェニルクレジルフォスフェート、ジフェニルオクチルフォスフェート、トリ(β−クロロエチル)フォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリ(ジクロロプロピル)フォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリ(ジブロモプロピル)フォスフェート、クロロフォスフォネート、ブロモフォスフォネート、ジエチル−N, N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルフォスフェート、ジ(ポリオキシエチレン)ヒドロキシメチルフォスフォネート等の有機リン系化合物;塩素化ポリフェニル、塩素化ポリエチレン、塩化ジフェニル、塩化トリフェニル、五塩化脂肪酸エステル、パークロロペンタシクロデカン、塩素化ナフタレン、テトラクロル無水フタル酸等の塩素化合物;三酸化アンチモン、五塩化アンチモン等のアンチモン化合物;三塩化リン、五塩化リン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン化合物;その他ホウ酸亜鉛、ホウ酸ソーダ等の無機質化合物等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上で使用することができる。
【0024】
発泡剤は、火災時に不燃性ガスを発生させて、炭化していくバインダー及び下記の炭化剤を発泡させ、気孔を含有した炭化断熱層を形成させる効果を発揮する。発泡剤としては、公知の発泡耐火シートで使用されているものと同様のものが使用できる。例えば、メラミン及びその誘導体、ジシアンジアミド及びその誘導体、アゾジカーボンアミド、尿素、チオ尿素等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上で使用することができる。
【0025】
炭化剤は、火災によるバインダーの炭化とともにそれ自体も脱水炭化していくことにより、断熱性により優れた厚みのある炭化断熱層を形成する効果を発揮する。炭化剤は、公知の発泡耐火シートにおける炭化剤と同様のものが使用でき、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール;デンプン、カゼイン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上で使用することができる。
【0026】
充填剤は、一般に炭化断熱層の強度を改善し、かつ、耐火性を高める効果を発揮する。充填剤は、公知の発泡耐火シートにおける充填剤と同様のものが使用できる。例えば、タルク等の珪酸塩;炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩;酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物;粘土、クレー、シラス、マイカ等の天然鉱物類等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上で使用することができる。
【0027】
各成分の配合比率は、火災発生時に発泡が良好に行われて、高度の断熱性を有する炭化断熱層を形成し得る限り特に限定されないが、固形分換算で、樹脂成分100重量部に対して、難燃剤200〜600重量部(好ましくは250〜500重量部)、発泡剤40〜150重量部(好ましくは50〜80重量部)、炭化剤40〜150重量部(好ましくは50〜80重量部)及び充填剤50〜160重量部(好ましくは60〜120重量部)とすれば良い。この範囲内においては、特に、炭化断熱層の発泡倍率が高く、発泡が均一であり、しかもより優れた断熱効果、強度等を得ることができる。
【0028】
熱可塑性樹脂と発泡耐火性付与粉体との配合割合は、本発明では特に熱可塑性樹脂:発泡耐火性付与粉体=1:1〜8程度、好ましくは1:3〜7の範囲に調整する。上記比が8を超える場合には、原料を加熱混合して製造したシート用混練物が脆くなり、圧延ローラーにて圧延する際に、発泡耐火シートが折れてしまったり、微細な割れを生じるおそれがある。上記比が1未満である場合には、圧延時の割れの問題はなく発泡耐火シートは製造可能であるが、圧延ローラーにシート用混練物が付着してしまい、製造したシートが均一な厚みとならず、表面に凹凸を生じることがある。また、火災発生時の炭化層の発泡が不十分となり、予定した耐火性能が発揮できないこともある。
【0029】
(3)その他の成分
本発明では、熱可塑性樹脂及び発泡耐火性付与粉体のほか、繊維材料を配合することもできる。繊維材料を配合する場合は、特に、発泡耐火シートを補強することができるとともに貼り付け時の寸法安定性を向上させるという利点が得られる。特に耐熱性を有する繊維材料を用いる場合は、火災発生時に炭化層が不均一に発泡して割れを防止する効果も得られる。繊維材料の寸法は、発泡耐火シートの組成等に応じて適宜設定することができるが、通常は繊維長2〜20mm、繊維径3〜30μmの繊維材料を用いることが好ましい。繊維材料としては、公知のものが使用でき、例えばロックウール、ガラス繊維、シリカーアルミナ繊維、炭素繊維等の無機繊維、あるいはパルプ繊維、ポリプロピレン繊維、ビニル繊維、アラミド繊維等の有機繊維が挙げられる。
【0030】
また、着色を目的として着色用顔料、着色骨材等を必要に応じて適宜配合することもできる。着色顔料としては、一般の塗料顔料(有機顔料・無機顔料・メタリック顔料)が使用できる。本発明では、特にベンガラ、黄鉛、黄色酸化鉄、チタンイエロー、クロムグリーン、群青、コバルトブルー等の無機顔料が好ましい。着色骨材としては、例えば着色セラミック粉砕物、着色珪砂、マイカ、着色マイカ等が使用できる。
【0031】
さらに、必要に応じて、耐火性能をより高めるために膨張性黒鉛、未膨張バーミキュライト等を配合しても良い。
【0032】
また、必要に応じて、ジブチルフタレートやジオクチルフタレート等の可塑剤を添加しても良い。但し、可塑剤の添加量が増加すると耐汚染性が低下するおそれがあるので、その添加量は可能な限り少なくすることが好ましい。
【0033】
シート用混練物は、上記の各成分が均一に混合されている限り特に調製方法は限定されない。例えば、熱可塑性樹脂として溶剤型樹脂を用いる場合は、これに他の成分を加えて公知の方法で混合して得た混合物をシート用混練物として用いることができる。また例えば、熱可塑性樹脂として無溶剤型樹脂を用いる場合又はシート用混練物の溶剤含有量の少ない場合(溶剤含有量が通常10重量%以下、特に5重量%以下)を用いる場合は、これに他の成分を加えた混合物を加熱混練して得られる混練物をシート用混練物として用いることができる。
【0034】
本発明において、特に熱可塑性樹脂として無溶剤型樹脂又は溶剤の少ない樹脂を用いる場合は、熱可塑性樹脂及び発泡耐火性付与粉体を含む混合物を加熱混練することによりシート用混練物を調製することが好ましい。加熱混練する方法としては、加圧型ニーダー、バンバリーミキサー等の公知の方法が採用できる。加圧型ニーダーは、2本のブレードを回転させて混練を行うものであり、エアシリンダーによる加圧を行いながら混練できる機構を有する。また、バンバリーミキサーは、加熱した混練室内に投入した材料をエアシリンダーが圧縮し、ローターが回転して混練するバッチ式混練機である。本発明では、嵩高い発泡耐火性付与粉体の比率が大きくなっても、これを強制的に押し込みながらより確実に熱可塑性樹脂と混練できるという点で加圧型ニーダーを用いるのが好ましい。
【0035】
加熱温度としては、用いる熱可塑性樹脂又は発泡耐火性付与粉体の種類に応じて適宜設定すれば良い。例えば、得られる発泡耐火シートの発泡温度が約200℃以上であれば、約180℃以下の範囲で加熱すれば良い。
【0036】
得られたシート用混練物は、そのまま圧延したり、あるいは一時的に保存しておくこともできる。保存する場合は、適当な形状・サイズのマスターバッチとすることができる。
【0037】
特に、加熱混練により得られたシート用混練物にあっては、そのまま圧延工程に移行すれば再加熱せずに円滑に圧延することができる。また、冷却されて固化したもの又は粘度が高くなったものは、必要に応じて再加熱して圧延すれば良い。このように、本発明では、加熱混練−圧延工程を連続的に実施する場合、非連続的に実施する場合の双方を含む。
【0038】
2 発泡耐火シートの製造
シート用混練物を圧延して発泡耐火シートを製造する。圧延方法は、特に限定されないが、圧延ローラーによる方法が特に好ましい。圧延ローラーは、シート用混練物をシート状に圧延できるものであれば特に限定されず、公知のものが使用でき、好ましくはローラー自体が加温される機構を有する。2本のローラーの上部ギャップ(隙間)に投入されたシート用混練物を所定の厚みのシートに成形するために、ローラー間のギャップ厚みを適宜調整することができる。
【0039】
圧延に際しては、圧延ローラーのギャップにシート用混練物を投入して圧延すれば良い。この場合のシート用混練物の供給量、圧延ローラーの回転数等は、シート用混練物の組成、所望のシート厚み等に応じて適宜設定すれば良い。
【0040】
本発明では、特に、圧延ローラーのギャップにシート用混練物を投入する際に、各ローラーに離型シートをシート用混練物とともに巻きこませ、シート用混練物を離型シートで挟みながら圧延することが好ましい。例えば、図1に示すように、予めロール状の離型シート(C)を各圧延ローラー(B)の表面を滑らし、離型シート間にシート用混練物(A)を投入しながら離型シートをともに巻き込んで圧延する方法が可能である。この方法では、離型シートの存在によりシート用混練物と圧延ローラーとが直接接触することがないため、シート用混練物の加熱温度を高めに設定してより軟らかな状態にしてシート成形をしやすくできるという利点がある。離型シートを用いずにシート用混練物の温度を上げすぎると、シート用混練物が圧延ローラーの表面に付着してシート化が円滑に行えなくなることがある。
【0041】
離型シートとしては、特に限定されず、公知のものが使用できる。例えば、汎用されている離型紙のほか、例えば紙シート、無機繊維シート、金属製シート、合成樹脂製シートあるいはこれらの複合材料からなるシート等の各種材質からなるシートを用いることができる。また、市販品も使用することができる。離型シートは、その表面がポリテトラフルオロエチレン、シリコーン等で処理されているものも使用できる。より具体的には、ポリテトラフルオロエチレンで処理(例えば、テフロン加工(「テフロン」商標名、デュポン社))された耐熱ガラス繊維シート、シリコーンで表面処理された紙シート等が挙げられる。離型シートの大きさは、用いる圧延ローラーのサイズ等に応じて適宜設定すれば良い。離型シートの厚みも特に制限されないが、通常は0.02〜0.3mm程度の範囲で適宜設定すれば良い。本発明では、離型シートの厚みを変えることによって、圧延ローラーのギャップを固定したままで得られる発泡耐火シートの厚みを適宜変更することも可能である。また、離型シートは、その処理面(コーティング面等)が両面又は片面のものがあるが、シート用混練物と接する面を処理面とすることが好ましい。
【0042】
離型シートを用いる場合、得られる発泡耐火シートはその表面と裏面に離型シートが積層された状態となり、使用前の発泡耐火シートを保護することができる。発泡耐火シートを適当な長さに切断する場合にも、離型シートを積層させたままで切断して、そのまま最終製品とすることができる。この場合、使用時に発泡耐火シートから離型シートを剥離すれば良い。
【0043】
3 発泡耐火シートの使用
本発明で得られる発泡耐火シートは、公知の発泡耐火シートと同様にして用いることができる。例えば、基材(耐火性を付与すべき躯体)に釘、鋲等で打ち付けたり、接着剤にて貼着する等の方法で固定することができる。また、発泡耐火シートを施工する基材としては、建築物・土木構築物等の構造物において耐火構造とすべき部分にはいずれも適用でき、例えば壁、柱、床、梁、屋根、階段等の各部位に適用できる。特に金属で形成されているH鋼、鉄骨丸柱、鉄骨角柱等には、予め防錆塗料を塗付して防錆処理することが好ましい。その他、本発明に係る発泡耐火シートは、その基材として木部、無機材料、樹脂等への適用も可能である。
【0044】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明の特徴とするところをより一層明確に説明する。
【0045】
実施例1〜4
表1に示す成分を用い、表2に示す配合(重量部)に従ってシートをそれぞれ製造した。製造方法は、各成分からなる混合物を温度120℃に設定した加圧ニーダーで混練してシート用混練物を調製後、図1に示すような装置を用いて圧延ローラーでシート厚みが1.5mmとなるように上記混練物のシート化を行った。このシート化において、離型シートを使用する場合と離型シートを使用しない場合の両方で製造を行った。離型シートとしては、シリコーンで表面処理された紙シート(厚み0.1mm)を用いた。
【0046】
【表1】
Figure 0004300374
【0047】
【表2】
Figure 0004300374
【0048】
試験例1
各シートの状態を目視にて観察し、シート厚みの均一性、割れの発生の有無等を調べた後、角鋼材(300mm×300mm×9mm、長さ1m)に上記シートを合成樹脂エマルション系粘着剤によって貼り付けたものを試験体とした。この試験体について、JIS A 1304 に準じた加熱試験を実施した。この場合、角鋼材温度が550℃に達するまでの経過時間をもって耐火時間とした。それぞれの結果を表2に併せて示す。
【0049】
実施例1〜4では、いずれも製造後のシートの状態に特に異常はなく、その厚みも均一であった。さらに加熱試験の結果、炭化層の状態にも特に問題がなく、耐火時間もすべて60分以上の結果となった。
【0050】
比較例1
実施例1の配合について、120℃程度に加温した二軸押出機にて、発泡耐火シートの厚みが1.5mmとなるように混練し、押し出し成形を行ったところ、発泡耐火性付与粉体の分散が不十分であり、押し出しした発泡耐火シートが粉体の多い部分において途中で折れた。発泡耐火シートとしての形状となった部分を利用して試験例1と同様に加熱試験を行ったが、発泡耐火性付与粉体の分散状態が不良のため、発泡炭化層の発泡厚みにバラツキを生じ、耐火時間は30分程度であった。
【0051】
【発明の効果】
本発明では、熱可塑性樹脂及び発泡耐火性付与粉体を含むシート用混練物を圧延するという方法を採用するので、従来のような溶剤を含有する発泡耐火塗料組成物から発泡耐火シートを製造する際におけるシート厚みの均一性確保、製造上の手間等の問題を生ずることなく、発泡耐火シートを製造することができる。すなわち、シート厚みの均一性、表面の平滑性等に優れた発泡耐火シートを確実かつ効率的に製造することができる。
【0052】
また、本発明の製造方法によれば、発泡耐火性付与粉体の比率を比較的高くすることもできるので、シート厚みの均一性等と相俟って優れた耐火性を基材(躯体)に付与できる発泡耐火シートが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】圧延ローラーによる圧延において、離型シートを用いて発泡耐火シートを製造する装置を示す概略図である。

Claims (5)

  1. 少なくとも熱可塑性樹脂ならびに難燃剤、発泡剤、炭化剤及び充填材を含有している発泡耐火性付与粉体を含むシート用混練物を圧延することを特徴とする発泡耐火シートの製造方法であって、
    前記熱可塑性樹脂が、ビニルトルエン−ブタジエン共重合体、ビニルトルエン−アクリル酸エステル共重合体、ビニルトルエン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、あるいはこれらの共重合体を構成する2種のモノマーとアクリル酸モノマー、メタクリル酸モノマーとの三元共重合体の1種又は2種以上であって、
    前記熱可塑性樹脂として無溶剤型樹脂を用い、
    前記シート用混練物が、熱可塑性樹脂:発泡耐火性付与粉体が1:3〜8(重量比)である熱可塑性樹脂及び発泡耐火性付与粉体を含む混合物を加圧型ニーダーを用いて加熱混練して得られたものである製造方法。
  2. シート用混練物の圧延に際し、圧延ローラーのギャップにシート用混練物を投入して圧延する請求項1に記載の製造方法。
  3. 圧延ローラーのギャップにシート用混練物を投入する際に、各ローラーに離型シートをシート用混練物とともに巻き込ませ、シート用混練物を離型シートで挟みながら圧延する請求項2記載の発泡耐火シートの製造方法。
  4. シート用混練物中に、長さ2〜20mm、直径3〜30μmの繊維材料をさらに含む請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 熱可塑性樹脂:発泡耐火性付与粉体が1:3〜7(重量比)である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
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