JP3814717B2 - 発泡耐火シート被覆工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発泡耐火シート被覆工法に関する。
【0002】
本明細書においては、発泡耐火シートを「シート」と略記する場合がある。また、発泡耐火パテを「パテ」と略記する場合がある。
【0003】
【従来の技術】
建築物、土木構築物等の構造物が火災等により高温に晒された場合には、これら構築物の鉄骨及びコンクリートの機械的強度が急激に低下するという問題がある。これに対し、火災時に発泡して炭化層を形成することによって基材の温度上昇を遅延させ、機械的強度の低下を抑制する発泡耐火シートが提案されている。
【0004】
このような発泡耐火シートは、美観ないし意匠性が要求される部位への施工要望が多く、発泡耐火シートの上には更に保護仕上層を設ける場合が多い。かかる保護仕上層を形成する塗料としては、一般に単色系の塗料を用いる場合が殆どであるため、シートの仕上げ面は美的観点からも平滑であることが望ましい。
【0005】
しかし、実際に発泡耐火シートを施工部位に貼着した場合には、シートの突き合わせ部及び重ね合わせ部に段差が生じやすく、不陸が発生する場合がある。従って、発泡耐火シートどうしの突き合わせ部及び重ね合わせ部には、通常パテ、シーリング剤等を用いて継ぎ目を埋め、不陸を解消する処理がなされている(図1)。このような継ぎ目処理をすることにより、例えば、鋼板などの平坦な面に発泡耐火シートを貼着した場合には、平滑なシート仕上げ面が得られるとともに、火災等による高温時にも基材の温度上昇が効果的に抑制され、安定した耐火性能を得ることができる。
【0006】
しかしながら、角鋼管、丸鋼管、H型鋼等のように、平面以外の湾曲面を有する基材に対して発泡耐火シートを貼着した場合には、多くの場合シートに歪みが生じる。そのため、火災等による高温時にシートが発泡した際には、図2に示すようにシート内部に応力が生じ、継ぎ目部分に充填されたパテ、シーリング剤等が両側のシートに引張られ、最終的に亀裂や割れが生じる場合がある。
【0007】
発泡耐火パテに亀裂や割れが生じた場合には、いかに発泡耐火シートの耐火性能が優れていたとしても、亀裂や割れの部分から基材温度が急激に上昇し、基材の機械的強度を著しく低下させることになる。従って、実用上、平面以外の湾曲面を有する基材に発泡耐火シートを貼着した場合であっても、高温時に亀裂や割れの発生を効果的に防止又は抑制できる継ぎ目処理を行うことが重要である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、平滑なシート仕上げ面が得られるとともに、優れた耐火性能を発揮できる発泡耐火シート被覆工法を提供することを主な目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、かかる従来技術の問題点に鑑み、鋭意研究を行った結果、発泡耐火シートの突き合わせ部分に特定の発泡耐火パテを充填することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は下記の発泡耐火シート被覆工法に係るものである。
【0011】
1.耐火性を付与すべき基材に発泡耐火シートを被覆するに際し;
(1)発泡耐火シートを基材表面に貼着し、シート末端部どうしを突き合わせる工程、及び
(2)当該突き合わせ部に、発泡耐火シートの発泡倍率を1とした場合に発泡倍率が0.2〜3である発泡耐火パテを充填して均す工程
を有することを特徴とする発泡耐火シート被覆工法。
【0012】
2.耐火性を付与すべき基材が、角鋼管、丸鋼管又はH型鋼である上記項1に記載の発泡耐火シート被覆工法。
【0013】
3.発泡耐火パテが、発泡耐火シートの発泡倍率を1とした場合に発泡倍率が1.2〜2である上記項1又は2に記載の発泡耐火シート被覆工法。
【0014】
4.発泡耐火パテが溶剤含有率20重量%以下である上記項1〜3のいずれかに記載の発泡耐火シート被覆工法。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の発泡耐火シート被覆工法について詳細に説明する。
【0016】
耐火性を付与すべき基材
本発明における耐火性を付与すべき基材としては、建築物、土木構築物等の構造物において耐火構造にできる部分を全て含み、壁、柱、床、梁、屋根、階段等の全ての部位を含む。特に、意匠性が要求されるのは人目に触れる部分であり、本発明の工法は、壁、柱、床、梁等への施工に有効である。このような施工部位は、基材がコンクリート、金属等で形成されていることが殆どである。
【0017】
本発明では、特に金属で形成された湾曲面を有する基材に発泡耐火シートを被覆する場合に優れた効果を発揮できる。すなわち、本発明の発泡耐火シート被覆工法は、湾曲面を有する基材である角鋼管、丸鋼管又はH型鋼に発泡耐火シートを被覆する場合に優れた効果を発揮できる。このような金属で形成されている基材には、予め防錆塗料を塗布して防錆処理しておいても良い。その他、基材として木部、樹脂部分等への適用も可能である。
【0018】
発泡耐火シート
本発明で使用する発泡耐火シートは、火災等により周辺温度が所定の発泡温度に達すると発泡し、炭化断熱層を形成するものであれば特に限定されず、公知のもの又は市販品を使用することができる。
【0019】
具体的には、適用部位、材質等に応じてシートは適宜選択できる。例えば、特開平5−220879号公報、特開平7−276552号公報等に記載の発泡耐火塗料を公知の方法により塗膜化してシート状としたもの、発泡耐火塗料を不織布、織布等の布状物に含浸させたもの、或いはこれらを積層したもの、不燃性布状物(金属箔等を含む)上に積層したもの、不燃性網状物上に積層したもの、断熱性板状物上に積層したもの等が本発明のシートとして使用できる。
【0020】
発泡耐火シートの厚みは、発泡耐火シートの性能、適用部位等に応じて適宜設定すれば良いが、通常0.2〜6mm程度が好ましく、0.5〜3mm程度がより好ましい。シート厚が0.2mm未満の場合には、充分な耐火性能が得られない場合がある。一方、6mmを超える場合は、厚みに相当するだけの耐火性能が充分に得られない場合がある。但し、発泡耐火シートの性能、適用部位等によっては、必ずしもこのような厚みに限定されるものではない。
【0021】
発泡耐火パテ
本発明における発泡耐火パテは、基材表面に貼着した発泡耐火シートのシート突き合わせ部に充填されるペースト状組成物であって、火災等の高温時に発泡して断熱炭化層を形成するものをいう。
【0022】
本発明において使用する発泡耐火パテとしては、前記した発泡耐火シートの発泡倍率を1とした場合に発泡倍率が0.2〜3である発泡耐火パテであれば特に限定されない。
【0023】
上記の発泡倍率を有する発泡耐火パテは、火災等による温度上昇時に亀裂や割れを生じることなく効果的に発泡層を形成することができる。中でも、特に発泡耐火シートの発泡倍率を1とした場合に発泡倍率が1.2〜2である発泡耐火パテは、火災等による温度上昇時に亀裂や割れを生じることなく発泡層を形成できるとともに、基材の温度上昇抑制効果にも優れている。
【0024】
このような特性を有する本発明の発泡耐火パテとしては、バインダー、難燃剤、発泡剤、炭化剤及び充填材を含む組成物を好適に使用することができる。この場合は、構成成分の種類や比率を変えることにより、発泡倍率を調整することができる。以下、本発明の発泡耐火パテとして好適な、バインダー、難燃剤、発泡剤、炭化剤及び充填材を構成成分として含む発泡耐火パテについて説明する。
【0025】
発泡耐火パテを構成するバインダーとしては、一般には熱可塑性樹脂が使用される。熱可塑性樹脂の種類は特に限定されないが、例えば、ビニルトルエン−ブタジエン共重合体、ビニルトルエン−アクリル酸エステル共重合体、ビニルトルエン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、或いはこれらの共重合体を構成する2種のモノマーとアクリル酸モノマー、メタクリル酸モノマー等との三元共重合体などの樹脂等が挙げられる。
【0026】
この場合において、アクリル酸エステル成分又はメタクリル酸エステル成分を含む共重合体中のアクリル酸モノマー又はメタクリル酸モノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。これら熱可塑性樹脂は、単独又は2種以上で使用できる。
【0027】
難燃剤は、一般に火災時に脱水冷却効果、不燃性ガス発生効果及びバインダー炭化促進効果から選ばれる少なくとも1種の効果を発揮し、バインダーの燃焼を防止又は抑制するものである。
【0028】
本発明において、難燃剤としては、例えば、トリクレジルホスフェート、ジフェニルクレジルフォスフェート、ジフェニルオクチルフォスフェート、トリ(β−クロロエチル)フォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリ(ジクロロプロピル)フォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリ(ジブロモプロピル)フォスフェート、クロロフォスフォネート、ブロモフォスフォネート、ジエチル−N, N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルフォスフェート、ジ(ポリオキシエチレン)ヒドロキシメチルフォスフォネート等の有機リン系化合物;塩素化ポリフェニル、塩素化ポリエチレン、塩化ジフェニル、塩化トリフェニル、五塩化脂肪酸エステル、パークロロペンタシクロデカン、塩素化ナフタレン、テトラクロル無水フタル酸等の塩素化合物;三酸化アンチモン、五塩化アンチモン等のアンチモン化合物;三塩化リン、五塩化リン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン化合物;その他ホウ酸亜鉛、ホウ酸ソーダ等の無機質化合物等が挙げられる。これら難燃剤は、単独又は2種以上で使用できる。
【0029】
発泡剤は、主として火災時に不燃性ガスを発生し、炭化するバインダー及び後述の炭化剤を発泡させ、気孔を含有した炭化断熱層を形成させる効果を有する。発泡剤としては、例えば、メラミン及びその誘導体、ジシアンジアミド及びその誘導体、アゾジカーボンアミド、尿素、チオ尿素等が挙げられる。これら発泡剤は、単独又は2種以上で使用できる。
【0030】
炭化剤は、一般に火災によりバインダーが炭化するに伴ってそれ自体も脱水炭化することにより、断熱性に優れた厚みのある炭化断熱層を形成する効果を発揮する。炭化剤としては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール;デンプン、カゼイン等が挙げられる。これら炭化剤は、単独又は2種以上で使用できる。
【0031】
充填剤は、一般に炭化断熱層の強度を改善し、且つ、耐火性を高める効果を発揮する。充填剤としては、例えば、タルク等の珪酸塩;炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩;酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛などの金属酸化物;粘土、クレー、シラス、マイカ等の天然鉱物類;パーライト、中空バルーン等の軽量骨材等が挙げられる。これら充填剤は、単独又は2種以上で使用できる。
【0032】
上記した成分に加え、必要に応じて種々の添加剤を配合しても良い。例えば、補強用繊維、着色用顔料などを配合しても良い。補強用繊維としては、例えば、ロックウール、ガラス繊維、シリカーアルミナ繊維、カーボン繊維などの無機繊維、或いはパルプ繊維、ポリプロピレン繊維、ビニル繊維、アラミド繊維等の有機繊維が挙げられる。着色顔料としては、一般の塗料顔料(有機顔料・無機顔料)が使用できる。本発明では、特にベンガラ、黄鉛、黄色酸化鉄、チタンイエロー、クロムグリーン、群青、コバルトブルー等の無機顔料を用いることが好ましい。更に、耐火性能をより高めるために膨張性黒鉛、未膨張バーミキュライト等を配合することもできる。
【0033】
また、必要に応じて、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の可塑剤を添加しても良い。但し、可塑剤は添加量を多くした場合に耐汚染性が低下するため、その添加量は可能な限り少量とすることが好ましい。
【0034】
更に、本発明で用いる発泡耐火パテとしては、溶剤含有量の少ないものが好ましく、発泡耐火パテに含まれる全溶剤含有量は、通常20重量%以下であることが好ましい。溶剤含有量の下限は、均一な組成分の発泡耐火パテが調製できる限り特に制限されない。このような発泡耐火パテは、例えばバインダー成分として無溶剤型液状樹脂を用いて調製することができる。無溶剤型液状樹脂としては、溶剤を含まない以外は公知の樹脂成分を使用することができる。このような溶剤含有量の少ない発泡耐火パテは、当該パテを充填した継目部分の肉痩せを防止できるとともに、耐火性、安全性、作業性等の面からも好ましいものである。
【0035】
本発明における発泡耐火パテは、通常、上記した成分を均一に混合することにより製造することができる。各成分の混合割合は特に限定されず、目的とする発泡倍率に応じて適宜設定することができる。好適な混合割合としては、例えば、固形分換算でバインダー100重量部に対し、難燃剤150〜600重量部、発泡剤30〜150重量部、炭化剤30〜150重量部、充填剤50〜200重量部程度を配合する一例を挙げることができる。但し、各成分の混合割合は、成分の種類により若干異なるため、必ずしも上記例示の範囲に限定されない。
【0036】
発泡耐火シート被覆工法
本発明の発泡耐火シート被覆工法は、耐火性を付与すべき基材に発泡耐火シートを被覆するに際し;
(1)発泡耐火シートを基材表面に貼着し、シート末端部どうしを突き合わせる工程、及び
(2)当該突き合わせ部に、発泡耐火シートの発泡倍率を1とした場合に発泡倍率が0.2〜3である発泡耐火パテを充填して均す工程
を有する。
【0037】
発泡耐火シートを基材表面に貼着する方法としては、シートの性能を妨げない限りいずれの方法で実施しても良い。例えば、基材及び発泡耐火シートの少なくとも一方に公知の接着剤又は粘着剤を塗付し、発泡耐火シートを基材に貼着することができる。また、接着剤等を用いずに熱融着により発泡耐火シートを基材に直接貼着したり、或いは基材側又は発泡耐火シート側の一部に接着剤を塗布して発泡耐火シートを基材に仮固定し、次いで熱融着して基材に貼着しても良い。
【0038】
本発明では、発泡耐火シートを基材表面に被覆するに際し、発泡耐火シートの末端部どうしを突き合わせ、当該突き合わせ部(シートどうしの継ぎ目部分)に発泡耐火パテを充填して均すことにより施工する。発泡耐火シート末端部どうしを突き合わせる際には、間隙なく突き合わせても良く、ある程度の間隔をもって突き合わせても良い。
【0039】
発泡耐火パテは、発泡耐火シート末端部どうしの突き合わせ部に、当該突き合わせ部に隙間が生じないように充填する。この際、鏝、へら等を用いて均すことにより、平滑なシート仕上げ面をつくることができる。
【0040】
一般に、パテに含まれる溶剤が気化することにより、継ぎ目部分の肉痩せが生じる。そのため、継ぎ目部分のパテの肉痩せをできるだけ抑制するためにも、発泡耐火パテとして、溶剤含有量の少ないものを使用することが好ましい。また、溶剤含有量の少ないパテを使用することは、耐火性、安全性、作業性等の面からも好ましいものである。
【0041】
本発明における発泡耐火シートは、シート末端部の側面形状が鋭角部分を有するとより好ましい。鋭角部分の角度は、発泡耐火パテ及び発泡耐火シートの種類及びそれらの使用部位に応じて適宜設定すれば良い。通常は、60度以下(好ましくは45度以下、より好ましくは40度以下)に設定すればよい。このような形状への加工は、例えばカッター等の切削具により作り出せば良い。このような加工を施すことにより、継目部分の内部に空隙が残存することなく、比較的簡単に継ぎ目処理を行うことができる。また、温度上昇の際に発泡層の亀裂や割れが確実に防止でき、より安定した耐火性が得られる。
【0042】
化粧層などの形成
本発明では、発泡耐火シートを基材に被覆した後、必要に応じて発泡耐火シート上に化粧層を形成させても良い。化粧層の施工方法は特に限定されず、公知の方法で形成すれば良い。例えば、発泡耐火シートに各種塗料を塗装したり、或いは化粧フィルム、化粧シート等を積層しても良い。また、公知の石材調貼り仕上材等を用いて施工することもできる。
【0043】
また、本発明では、化粧層の形成に先立ち、必要に応じて化粧用下塗材(単に「下塗材」とも言う)を発泡耐火シートに塗布しても良い。下塗材の塗布によって、主として発泡耐火シート積層後におけるシートと化粧層との密着性をよリ高めることができる。また、化粧目地を形成する際には、着色タイプの下塗材を使用して目地部分とすることも可能である。
【0044】
このような下塗材としては、発泡耐火シート及び化粧層との密着性が確保できる限り特に限定されず、公知のもの又は市販品を使用できる。例えば、シーラー、プライマー、下地調整材、サーフェーサー等の他、通常のフラットタイプの塗料も適用できる。
【0045】
また、本発明では、上記化粧層の保護を主目的としてさらにクリヤー塗料を塗布することもできる。特に、耐候性が要求される構造物外部の部位に施工する際には、化粧層にクリヤー塗料を塗付するのが好ましい。
【0046】
【発明の効果】
本発明の発泡耐火シート被覆工法によれば、基材表面に発泡耐火シートを被覆し、シート突き合わせ部に発泡耐火パテを充填して均すことにより、平滑なシート仕上げ面をつくることができる。
【0047】
また、火災等の高温時には、発泡耐火パテの発泡層に亀裂や割れを生じることなく、基材の温度上昇を効果的に抑制し且つ優れた耐火性能を発揮することができる。
【0048】
更に、発泡耐火シートどうしが発泡耐火パテにより一体化されているため外観も優れており、化粧層等の形成も容易に行うことができる。
【0049】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示し、本願発明をより詳細に説明する。但し、本願発明はこれらの範囲に限定されるものではない。
【0050】
発泡耐火シートの製造及び発泡倍率の測定
アクリル樹脂100重量部、メラミン75重量部、ジペンタエリスリトール75重量部、ポリリン酸アンモニウム370重量部及び酸化チタン105重量部を含む原料混合物を、ニーダーを用いて充分に混練後、押出し成形機によってシート状に加工し、膜厚1mmの発泡耐火シートを作製した。
【0051】
得られた発泡耐火シートを、アクリル樹脂粘着剤を用いて120mm×120mmの鋼板に貼着して試験体を作製した。この試験体を温度1000℃に設定した電気炉中に15分間放置して発泡させた。室温にて放冷後発泡倍率を測定したところ、この発泡耐火シートの発泡厚みは10mmであり、発泡倍率は10倍であった。
【0052】
発泡耐火パテの調製
表1に示すように各成分を配合し、発泡耐火パテ(1)〜(11)を調製した。各発泡耐火パテは、表1記載の各成分を混合し、更にキシレン8重量%を添加し、撹拌することにより調製した。
【0053】
各発泡耐火パテを、120mm×120mmの鋼板に塗付・乾燥して11種の試験体を作製し、これらの試験体を温度1000℃に設定した電気炉中に15分間放置して発泡させた。室温にて放冷後発泡倍率を測定したところ、各発泡耐火パテの発泡倍率は表1に示す値となった。
【0054】
表1中、発泡耐火パテ(3)〜(10)が本発明の発泡耐火パテである。
【0055】
試験体の作成
基材として、錆止め塗装された角鋼管(断面150mm×150mm、長さ200mm)を11本用いた。この基材にアクリル樹脂粘着剤をローラーにて全面塗付した後、上記方法により得た発泡耐火シートを、シートの突き合わせ部の目地幅が3〜5mmとなるように貼り付けた。
【0056】
次いで、シート突き合わせ部に、前記方法で得た発泡耐火パテ11種を、へらを用いて段差が生じないようにそれぞれ突き合わせ部の目地に充填・平滑化した。その後、室温にて3日間養生を行った。
【0057】
試験体の断面概念図を図3に示す。
【0058】
加熱試験
作製した試験体11種について、加熱試験を行った。試験方法は、建築構造物の耐火試験方法JIS A1304の「4.加熱等級;付図1」に規定する標準曲線に基づいて、電気炉で60分加熱することにより実施した。
・加熱後の外観
加熱後の外観を目視にて確認した。評価は;
○:異常なし
×:異常あり(亀裂、割れ等発生)
とした。
・基材温度
加熱時の基材温度を測定し、その最高値を確認した。評価は;
◎:550℃未満
○:550℃以上600℃未満
△:600℃以上650℃未満
×:650℃以上
とした。これらの評価結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
本発明の発泡耐火パテ(パテ(3)〜(10))によれば、加熱後の発泡耐火パテ表面に亀裂や割れは生じることはなかった。また、基材温度についても600℃未満に抑制されており、特に、発泡倍率の比が1.2〜2の範囲であるサンプル(3)〜(5)においては基材温度は550℃未満と効果的に温度上昇が抑えられていた。
【0061】
これに対し、発泡倍率の比が比較的大きいサンプル(1)及び(2)では、加熱後の外観に亀裂や割れが発生した上、それに起因した基材温度の上昇により、基材温度はいずれも650℃以上に上昇した。また、発泡倍率の比が比較的小さなサンプル(11)では、加熱後の外観に異常は無いものの、基材温度は600℃以上650℃未満まで上昇した。
【図面の簡単な説明】
【図1】発泡耐火シート継ぎ目部分の断面の概念図である。
【図2】従来技術における発泡時の断面の概念図である。
【図3】発泡耐火シート被覆後の実施例の試験体(角鋼管)の断面の概念図である。
Claims (3)
- 耐火性を付与すべき基材に発泡耐火シートを被覆するに際し;
(1)発泡耐火シートを基材表面に貼着し、シート末端部どうしを突き合わせる工程、及び(2)当該突き合わせ部に、発泡耐火シートの発泡倍率を1とした場合に発泡倍率が1.2〜2である発泡耐火パテを充填して均す工程を有することを特徴とする発泡耐火シート被覆工法。 - 耐火性を付与すべき基材が、角鋼管、丸鋼管又はH型鋼である請求項1に記載の発泡耐火シート被覆工法。
- 発泡耐火パテが溶剤含有率20重量%以下である請求項1又は2に記載の発泡耐火シート被覆工法。
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