JP4066467B2 - ブラックマトリックス及びそれを用いたカラーフィルタ - Google Patents

ブラックマトリックス及びそれを用いたカラーフィルタ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はカラー液晶表示装置等に用いる色分解用カラーフィルタに関し、特に表示コントラスト向上のために着色パターンの間隙部にブラックマトリクスを設けたカラーフィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、カラー液晶表示装置等に用いるカラーフィルタ用のブラックマトリックスとしては金属クロム膜をフォトリソ法を用いてエッチングして製造されるのが一般的であった。
【0003】
しかし、ブラックマトリックスの低反射化、低コスト化といった点から金属クロムの代替材料が検討されてきた。このうち実用化されている方式として、カーボンブラックを分散した黒色樹脂を用いてブラックマトリックスを製造する方法がある。この様にして得たブラックマトリックスは金属クロム膜に比べて反射率が低くカラー液晶表示装置の表示コントラストを向上することが可能であり、低コスト化も可能であった。
【0004】
しかし樹脂ブラックマトリックスは、金属クロムに比べて光学濃度が低く、十分な光学濃度を得るには膜厚を厚くする必要がある。それによって樹脂ブラックマトリックスと着色パターンのオーバーラップ段差も大きくなる。カラー液晶表示装置の場合、この段差により、ラビングに不良が生じて液晶の配向不良が発生したり、その上のITO膜の断線といった問題が生じる恐れがあった。
【0005】
この問題点を解決するために、黒鉛を分散した黒鉛ブラックマトリックスが特開平6−11613号公報に提案されている。黒鉛は鱗片状結晶であるため、薄膜で高い光学濃度を得ることができ、前記問題点を低減することが可能である。
【0006】
しかし、黒鉛ブラックマトリックスにも、反射率が高いといった問題点がある。即ち黒鉛が鱗片状結晶であるため基板上に塗布した場合個々の結晶が鏡面状に入射光を反射することから全体の反射率が増大してしまう。カーボンブラックを用いた樹脂ブラックマトリックスの反射率が約1%であるのに対し、黒鉛樹脂ブラックマトリックスでは約10%となり、液晶表示装置の表示コントラストを低下させる恐れがある。
【0007】
また黒鉛は他の黒色顔料に比べて光学濃度が高いことから他の黒色顔料を用いた場合と同様に感光性樹脂に分散してフォトリソ法でパターニングすることができず、リフトオフ法を用いる必要がある。リフトオフ法は、通常真空成膜で形成されたごく薄膜(0.1μm以下)に対して行われる方法であり、今回のごとくスピンコート、ロールコート法等で形成した比較的厚膜(0.3〜0.5μm程度)をパターニングする場合下地のレジストパターンのエッジの部分でカケ、ハガレが生じやすく充分な解像度が得られないといった問題点もある。
【0008】
一方でカラーフィルタは製造コストの観点から、着色パターンを剥離、洗浄した後、ブラックマトリックス上に再度着色パターンを形成して、ブラックマトリックスを再生する方法が行われている。それ故ブラックマトリックスには着色パターン材料の剥離液に対する耐性及び洗浄液耐性をもつことが要求される。
しかし金属材料においては、従来のクロムなみの剥離液耐性及び洗浄液耐性をもつブラックマトリックス材料を見出すことは容易でなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、薄膜で高い光学濃度を有するとともに反射率が低く、着色パターン材料の剥離液に対する耐性と洗浄液耐性を有するブラックマトリックス及びカラーフィルタを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明において上記課題を解決するために、まず請求項1においては、透明基板上にブラックマトリックスと少なくとも3色の着色パターンからなるカラーフィルタにおいて、前記ブラックマトリックスは遮光層と反射防止層から構成されており、前記遮光層が金属シリサイドからなり、かつ前記反射防止層が少なくとも1層以上の酸化もしくは窒化された金属シリサイドからなることを特徴とするブラックマトリックスとしたものである。
【0011】
また、請求項2においては、前記金属シリサイドを構成する金属が遷移金属であることを特徴とする請求項1記載のブラックマトリックスとしたものである。
【0012】
また、請求項3においては、前記遷移金属はZr、Ta、Mo、W、Hf、Ti及びNiからなる群から選択された金属であることを特徴とする請求項1又は2記載のブラックマトリックスとしたものである。
【0013】
また請求項4においては、前記遮光層がTaSi膜、前記反射防止層がTaSiNO膜及びTaSiN膜からなるか、あるいは遮光層がZrSi膜、反射防止層がZrSiN膜からなることを特徴とする請求項1記載のブラックマトリクスとしたものである。
【0014】
さらにまた、請求項5においては、請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載のブラックマトリックスが形成された透明基板上に、少なくとも3色の着色パターンが形成されていることを特徴とするカラーフィルタとしたものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のブラックマトリックス及びそれを用いたカラーフィルタの一実施例の断面構成を図1(a)、(b)に示す。図1(a)は透明基板1上に金属シリサイドからなる遮光層4と酸化、もしくは窒化された金属シリサイドからなる反射防止層2、3で構成されたブラックマトリックス5を設けたものである。ブラックマトリックス5の光学特性の仕様によっては反射防止層は単層の金属シリサイドであることもありうる。図1(b)は上記ブラックマトリックスが形成された透明基板1上に少なくとも3色の着色パターン6R、6G、6Bを設けてカラーフィルタを形成したものである。
【0016】
ここで、前記金属シリサイドや酸化、もしくは窒化された金属シリサイドを構成する金属は遷移金属である。さらに、前記遷移金属はZr、Ta、Mo、W、Hf、Ti及びNiからなる群から選択された金属である。
【0017】
金属シリサイドは例えば集積回路のポリシリコンに替わる電極・配線材料として物性的な研究がなされてきた(例えば文献(1)須黒恭一、國島巌:金属シリサイド技術の現状と課題、表面科学、vol.16、No.4、p.224 、1995)。その特徴のひとつに耐酸化性及び熱的安定性が優れており、通常の金属よりも加熱薬品耐性が高いことが挙げられる。
【0018】
また近年、金属シリサイドは、アルゴンに酸素や窒素を添加するいわゆる反応性スパッタリングにより酸化物や窒化物として光学特性を制御して成膜することで、ハーフトーン型位相シフトマスク用材料として用いられている(例えば文献(2)桑原理:リソグラフィ技術の最前線(1):マスク技術、O plus E、No.182、p.92、1995)。
【0019】
ブラックマトリックスの光学特性においては、可視光(波長400〜700nm)域での反射率(以下適宜Rと略す)が低いこと、同じく可視光域で光学濃度(以下適宜odと略す)が高いこと(または透過率(以下適宜Tと略す)が低いこと)が要求される。光学濃度odと透過率Tは次式の関係にある。
od=−log10
【0020】
ブラックマトリックスのように広い波長域で上記の光学特性を満たすためには、各層の屈折率及び消衰係数は波長に対して緩やかに変化する(すなわち光学定数の波長分散性が小さい)ことが必要であり、金属シリサイドを構成する金属が遷移金属であることはこの要求に適している。遷移金属はさらにエッチングによるパターニング適性などの観点から絞り込まれる。
【0021】
ところで、ある波長における薄膜の透過率や反射率などの光学特性は、その波長における屈折率(以下nと略す)と消衰係数(以下kと略す。n、kは一般に光学定数と呼ばれる)及び膜厚(以下dと略す)によって決定され、多層膜においても同様である(例えば文献(3)金原栄著、薄膜、(裳華房)p.197 )。従って各層の薄膜のn、k、dが分かれば、多層膜全体の透過率や反射率は計算により求めることができる。
【0022】
以上の方法で設計、成膜された金属シリサイド多層膜は通常のフォトリソグラフィー法によりパターニング処理されてブラックマトリックス5が形成される。次に、赤、緑、青の3原色の着色パターン6R、6G、6Bを形成する。この着色パターン6R、6G、6Bの形成法は、顔料分散法、染色法、印刷法及び電着法のうちどの方法を用いても良く、カラーフィルタに要求される諸特性により上記の方法の中から適宜選択すればよい。
【0023】
【実施例】
以下実施例により本発明を詳細に説明する。
<実施例1>
ここでは金属シリサイドを構成する遷移金属としてTa金属を使用して遮光層及び反射防止層を形成してブラックマトリックスを作製し、カラーフィルタを作製する実施例について述べる。ここで、ブラックマトリックスの光学特性の目標は、反射率Rは最大になる波長でも5%以下、光学濃度odは最小になる波長でも3.5以上とした。
【0024】
まず、透明基板上にTaSi2 をターゲットとし、Ar(15sccm)をキャリアガスとするスパッタリングによりTaSi膜を成膜した。さらに、別の透明基板上にTaSi2 をターゲットとし、Ar(12sccm)に酸素ガス(3sccm)を添加した反応性スパッタリングによりTaSiO膜を成膜した。
さらに、別の透明基板上にTaSi2 をターゲットとし、Ar(13sccm)に窒素ガス(2sccm)を添加した反応性スパッタリングによりTaSiN膜を成膜した。これらの成膜時のRF電力はいずれも200Wである。
【0025】
前記3層膜の光学定数を波長400、550、700nmについてエリプソメータで測定した結果を図2に示す。
【0026】
図2の結果から、TaSi膜、TaSiO膜、TaSiN膜の3層構成でブラックマトリックスを作ったとき、可視光域でもっとも反射率Rを低減でき、しかも光学濃度od3.5以上が確保できる各層の膜厚を求めたところ、次のような結果になった。
TaSiの膜厚・・・・1300Å
TaSiNの膜厚・・・ 133Å
TaSiOの膜厚・・・ 470Å
【0027】
以上の結果から、遷移金属としてTa金属を使った3層膜からなるブラックマトリックスの光学特性を満足する個々の成膜条件及び膜厚が設定できた。
【0028】
次に、透明基板1上に上記の成膜条件で、膜厚470ÅのTaSiO膜、膜厚133ÅのTaSiN膜及び膜厚1300ÅのTaSi膜を順次成膜し、3層膜を形成した。
【0029】
次に、上記3層膜上にフォトレジストを塗布し、所定のパターンで露光、現像処理してレジストパターンを形成した。さらに、レジストパターンをマスクにしてドライエッチングを行い、パターニング処理して、TaSiO膜からなる反射防止層2、TaSiN膜からなる反射防止層3及びTaSi膜からなる遮光層4を形成し、本発明のブラックマトリックス5が得られた(図1(a)参照)。
また、カラーフィルタの再生工程への適性を調べるため、各層の膜を着色材の剥離液に浸漬したが、膜質の変化は認められなかった。
【0030】
この3層ブラックマトリックスの反射率Rと光学濃度odの分光特性を測定した結果を図3に示す。図3からも分かるように、反射率Rは400〜700nmの波長領域で2%以下であり、また、光学濃度も3.5以上が得られ、ブラックマトリックスとして十分な光学特性が得られた。
【0031】
次に、赤の顔料分散レジストをブラックマトリックス5が形成された透明基板1上に塗布し、所定のパターンで露光、現像、ポストベーク等のパターニング処理を行い、赤の着色パターン6Rを形成した。同様にして、緑、青の各着色パターン6G、6Bを順次形成して、本発明のカラーフィルタが得られた(図1(b)参照)。
【0032】
<実施例2>
ここでは金属シリサイドを構成する遷移金属としてZr金属を使用して遮光層及び反射防止層を形成してブラックマトリックスを作製し、カラーフィルタを作製する実施例について述べる。ここで、ブラックマトリックスの光学特性の目標は、反射率Rは最大になる波長でも5%以下、光学濃度odは最小になる波長でも3.5以上とした。
【0033】
まず、透明基板上にZrSi2 をターゲットとし、Ar(15sccm)をキャリアガスとするスパッタリングによりZrSi膜を成膜した。さらに、別の透明基板上にZrSi2 をターゲットとし、Ar(13sccm)に窒素ガス(2sccm)を添加した反応性スパッタリングによりZrSiN膜(1) を成膜した。さらに、別の透明基板上にZrSi2 をターゲットとし、Ar(14sccm)に窒素ガス(1sccm)を添加した反応性スパッタリングによりZrSiN膜(2) を成膜した。これらの成膜時のRF電力はいずれも200Wである。
【0034】
前記3層膜の光学定数を波長400、550、700nmについてエリプソメータで測定した結果を図4に示す。
【0035】
図4の結果から、ZrSi膜、ZrSiN(1) 膜、ZrSiN(2) 膜の3層構成でブラックマトリックスを作ったとき、可視光域でもっとも反射率Rを低減でき、しかも光学濃度od3.5以上が確保できる各層の膜厚を求めたところ、次のような結果になった。
ZrSiの膜厚・・・・・1300Å
ZrSiN(2) の膜厚・・ 229Å
ZrSiN(1) の膜厚・・ 249Å
【0036】
以上の結果から、遷移金属としてZr金属を使った3層膜からなるブラックマトリックスの光学特性を満足する個々の成膜条件及び膜厚が設定できた。
【0037】
次に、透明基板1上に上記の成膜条件で、膜厚249ÅのZrSiN(1) 膜、膜厚229ÅのZrSiN(2) 膜及び膜厚1300ÅのZrSiN膜を順次成膜し、3層膜を形成した。
【0038】
次に、3層膜上にフォトレジストを塗布し、所定のパターンで露光、現像処理してレジストパターンを形成した。さらに、レジストパターンをマスクにしてドライエッチングを行い、ZrSiN(1) 膜からなる反射防止層2、ZrSiN(2) 膜からなる反射防止層3及びZrSi膜からなる遮光層4を形成し、本発明のブラックマトリックス5が得られた(図1(a)参照)。
また、カラーフィルタの再生工程への適性を調べるため、各層の膜を着色材の剥離液に浸漬したが、膜質の変化は認められなかった。
【0039】
この3層ブラックマトリックスの反射率Rと光学濃度odの分光特性を測定した結果を図5に示す。図5からも分かるように、反射率Rは420〜700nmの波長領域でほぼ4%以下であり、また、光学濃度も400〜700nmの波長領域で3.5以上が得られ、ブラックマトリックスとして十分な光学特性が得られた。
【0040】
次に、赤の顔料分散レジストをブラックマトリックス5が形成された透明基板1上に塗布し、所定のパターンで露光、現像、ポストベーク等のパターニング処理を行い、赤の着色パターン6Rを形成した。同様にして、緑、青の各着色パターン6G、6Bを順次形成して、本発明のカラーフィルタが得られた(図1(b)参照)。
【0041】
【発明の効果】
本発明のブラックマトリックス及びそれを用いたカラーフィルタは以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。即ち、請求項1に係わる発明によれば、遮光層が金属シリサイドで構成されているので、着色パターン材料の剥離液に対する耐性と洗浄液耐性を有する。さらには反射防止層が、少なくとも1層以上の酸化、もしくは窒化された金属シリサイドで構成されているので、前記の遮光層の特性に加えて、酸素、窒素の含有率を変えて光学特性を制御することができる。また、請求項に係わる発明によれば金属シリサイドを構成する金属が遷移金属であるので、前記ブラックマトリックスとしての光学特性は可視光のほぼ全域の広い波長域にわたって実現される。さらに、請求項に係わる発明によれば前記遷移金属はZr、Ta、Mo、W、Hf、Ti及びNiからなる群から選択された金属であるので、パターニングのためのエッチング加工も容易である。また、請求項5に係わる発明によれば上記ブラックマトリックス上に形成された少なくとも3色の着色パターンからなるカラーフィルタは、前記ブラックマトリックス全体で低い反射率と高い光学濃度を薄膜で実現できるので、表面の平滑なカラーフィルタを提供することができる。さらに、本発明のカラーフィルタをカラー液晶表示装置に組み込むことにより、表示特性の優れたカラー液晶表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明のブラックマトリックスの一実施例の構成を示す断面図である。
(b)は、本発明のカラーフィルタの一実施例の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例1のブラックマトリックスを構成する遮光膜及び反射防止膜のの光学定数の測定値を示す説明図である。
【図3】本発明の実施例1のブラックマトリックスの分光特性を示す説明図である。
【図4】本発明の実施例2のブラックマトリックスを構成する遮光膜及び反射防止膜のの光学定数の測定値を示す説明図である。
【図5】本発明の実施例2のブラックマトリックスの分光特性を示す説明図である。
【符号の説明】
1……透明基板
2、3……反射防止層
4……遮光層
5……ブラックマトリックス
6R……赤色の着色パターン
6G……緑色の着色パターン
6B……青色の着色パターン
7……入射光
8……反射光
9……透過光

Claims (2)

  1. 透明基板上にブラックマトリックスと少なくとも3色の着色パターンからなるカラーフィルタにおいて、前記ブラックマトリックスは遮光層と反射防止層から構成されており、前記遮光層がTaSi膜、前記反射防止層がTaSiNO膜及びTaSiN膜からなるか、あるいは遮光層がZrSi膜、反射防止層がZrSiN膜からなることを特徴とするブラックマトリクス。
  2. 請求項1記載のブラックマトリックスが形成された透明基板上に、少なくとも3色の着色パターンが形成されていることを特徴とするカラーフィルタ。
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