JP4063709B2 - オーステナイト系金属の表面改質方法およびそれによって得られる耐熱金属製品ならびにターボ部品 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性や耐摩耗性に優れた金属製品を得ることができるオーステナイト系金属の表面改質方法およびそれによって得られた耐熱金属製品ならびにターボ部品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ターボチャージャー用の駆動リング等の耐熱耐摩耗性が要求される金属部品には、従来から、鋼にクロム拡散処理(クロマイズ処理)を施して耐摩耗性や耐酸化性を確保することが行なわれている。例えば、母材金属としてマルテンサイト系ステンレス鋼であるSUS420J2等を使用し、粉末パック法によりクロマイズ処理を施し、表面に硬質のクロム炭化物層を形成することが行なわれている。このような技術分野に属する先行技術文献として出願人が把握しているものとして、下記の特許文献1および2を提示する。
【0003】
【特許文献1】
特開平4−191357号公報
【特許文献2】
特開平8−158035号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記のようなマルテンサイト系ステンレス鋼を母材とするものでは、高温領域での強度・耐摩耗性・耐疲労性等において十分な性能を発揮できない。このため、高温領域で使用される耐熱製品やターボ部品については、高温領域での硬度・耐摩耗性・耐疲労性等の機械的特性や高温耐酸化性等に優れたオーステナイト系ステンレス鋼を母材として用いることが望ましい。
【0005】
ところが、マルテンサイト系ステンレス鋼であれば母材中に炭素を相当量固溶するため、クロマイズ処理により、拡散浸透したクロムと母材中の炭素が結合してクロム炭化物層を形成することができるが、オーステナイト系ステンレス鋼は、低炭素材であり、母材中の炭素固溶量が少ないため、そのままクロマイズ処理しても表層部にクロム炭化物層をほとんど形成させることができない。
【0006】
また、オーステナイト系鋳造金属は、相当量の炭素を含有しているものの、上記マルテンサイト系ステンレスと違い、炭素の固溶限が小さいため、ほとんどが鉄との化合物を生成してしまい、やはり炭素固溶量は少なくなるため、同様である。
【0007】
そこで、オーステナイト系ステンレス鋼にあらかじめ浸炭処理を行なって表層部の固溶炭素濃度を高くしておき、その後クロマイズ処理することにより、オーステナイト系ステンレス鋼を母材として表層部にクロム炭化物層が形成された耐熱製品やターボ部品が得られると考えられた。
【0008】
しかしながら、オーステナイト系ステンレス鋼は、マルテンサイト系ステンレス鋼とは異なりニッケルを含有しているため、表面がより強固な不動態保護被膜に覆われ、一般に浸炭用の治具材料として用いられていることからもわかるとおり難浸炭材で、ガス浸炭のような実用的な浸炭が不可能であった。上記特許文献1においても、被処理物の母材はマルテンサイト系ステンレス鋼であり、オーステナイト系ステンレス鋼を母材とするものについての処理が報告されているわけではない。
【0009】
このように、現在までのところ、オーステナイト系ステンレス鋼を母材としてクロマイズ処理を行ってクロム炭化物層を形成することは、工業製品としての量産性や経済性を考慮すると事実上不可能だったのであり、そのような耐熱金属製品も現在までのところ得られていなかったのが実情である。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、耐熱性や高温耐久性に優れた金属製品を得ることができるオーステナイト系金属の表面改質方法およびそれによって得られた耐熱金属製品ならびにターボ部品の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1記載のオーステナイト系金属の表面改質方法は、オーステナイト系金属をフッ素系ガス雰囲気下で加熱保持してフッ化処理を行い、上記フッ化処理と同時期および/またはその後に、上記オーステナイト系金属に対し、後のクロム拡散浸透処理でクロムと化合させるための炭素の濃度を上げるために炭素を固溶拡散させる炭素固溶拡散処理を行って、オーステナイト系金属の表層部に炭素固溶層を形成し、さらに、クロムを含む雰囲気中において900℃以上の高温で加熱保持して上記オーステナイト系金属にクロム拡散浸透処理を行うことにより、浸透させたクロムを上記炭素固溶拡散処理で固溶拡散させた炭素と化合させてオーステナイト系金属の表層部にクロム炭化物層を形成するという構成をとる。
【0012】
このように、オーステナイト系金属をフッ素系ガス雰囲気下で加熱保持してフッ化処理を行い、上記フッ化処理と同時期および/またはその後に、上記オーステナイト系金属に対して炭素固溶拡散処理を行う。このとき、上記フッ化処理により、オーステナイト系金属の表面が活性化されて表面にフッ化膜が形成され、炭素が侵入しやすい状態となる。そして、フッ化処理後に炭素固溶拡散処理を行なうことにより、オーステナイト系金属の表面から炭素が侵入固溶する。侵入固溶した炭素は、炭化物粒子をつくらずに母材表層部に拡散し、オーステナイト系金属の表層部に炭素固溶層を形成する。
【0013】
そして、クロムを含む雰囲気中で加熱保持して上記オーステナイト系金属にクロム拡散浸透処理を行う。このとき、上記炭素固溶層に存在する炭素が拡散浸透されたクロムと結合して、オーステナイト系金属の表層部にクロム炭化物層を形成する。上記炭素固溶層の炭素は、クロム炭化物粒子や鉄炭化物粒子を実質的に形成せず、侵入固溶しているため、クロマイズ処理によって拡散浸透したクロムとの結合が速やかに行なわれ、比較的短時間で十分な厚みのクロム炭化物層が形成される。
【0014】
このように、本発明では、工業的に従来不可能とされていた、オーステナイト系金属に対してクロマイズ処理でクロム炭化物層を形成することが可能となったのであり、工業的・経済的な量産が可能となったのである。このようにして得られたオーステナイト系金属製品は、高温領域での強度、耐疲労性・耐摩耗性等の機械的特性に優れ、耐熱金属製品としてターボ部品ほか各種の用途に利用できる。
【0015】
本発明の請求項2記載のオーステナイト系金属の表面改質方法は、上記各構成に加えてさらに、上記オーステナイト系金属は、ニッケルおよびクロムを含む低炭素のオーステナイト系ステンレス鋼であるという構成をとる。この場合には、オーステナイト系ステンレス鋼の表面にはCr2O3を含む強固な不動態保護被膜が存在するため、浸炭不可能とされてきたが、フッ化処理を行なうことにより、上記不動態保護被膜がフッ化膜に変化し、容易に炭素が侵入しうる状態になる。そして、高温強度や高温耐疲労性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼の表面にクロム炭化物層を形成し、耐熱金属製品を得ることができる。
【0016】
本発明の請求項3記載のオーステナイト系金属の表面改質方法は、上記各構成に加えてさらに、上記炭素固溶拡散処理によって形成される炭素固溶層の深さは、10μm以上であるという構成をとる。この場合には、炭素固溶層に、その後のクロマイズ処理によって十分なクロム炭化物層を形成しうるだけの濃度の炭素が侵入固溶するため、十分な厚みのクロム炭化物層を形成できる。また、炭素固溶拡散処理あがりの中間製品を抜き取り検査することにより、クロマイズ処理後の製品特性をある程度予測できる。このため、中間製品の品質特性の基準をつくり、それに満たないものについては再度フッ化処理と炭素固溶拡散処理を行なうことができ、最終製品の不良率を減少して歩留まりを向上させることができる。
【0017】
本発明の請求項4記載のオーステナイト系金属の表面改質方法は、上記各構成に加えてさらに、上記炭素固溶拡散処理によって形成される炭素固溶層の硬度は、Hv600以上である。また、本発明の請求項5記載のオーステナイト系金属の表面改質方法は、上記各構成に加えてさらに、上記炭素固溶拡散処理によって形成される炭素固溶層の表面炭素濃度は、1.4重量%以上であるという構成をとる。この場合には、炭素固溶層に、その後のクロマイズ処理によって十分なクロム炭化物層を形成しうるだけの濃度の炭素が侵入固溶しているため、十分な厚みのクロム炭化物層を形成できる。また、炭素固溶拡散処理あがりの中間製品を抜き取り検査することにより、クロマイズ処理後の製品特性をある程度予測できる。このため、中間製品の品質特性の基準をつくり、それに満たないものについては再度フッ化処理と炭素固溶拡散処理を行なうことができ、最終製品の不良率を減少して歩留まりを向上させることができる。特に、上記炭素固溶層の硬度として、母材の表面から測定したマイクロビッカース硬度やヌープ硬度を基準とすることにより、非破壊で中間製品の検査ができて歩留まり低下を減少できる。
【0018】
本発明の請求項6記載のオーステナイト系金属の表面改質方法は、上記各構成に加えてさらに、上記炭素固溶拡散処理の処理温度が680℃以下であるという構成をとる。この場合には、オーステナイト系金属の母材自体の軟化が生じにくくなり、炭素固溶拡散された炭素原子が母材に固溶したクロムと結合してクロム炭化物を生じることによって母材自体に含まれるクロム量を減少させて表層部の耐蝕性の低下を防ぎ、炭素固溶拡散層に侵入固溶した状態で存在する炭素量を確保して後に実施するクロマイジング処理によるクロム炭化物層の形成を促進する。また、炭素固溶拡散処理による被処理物の寸法や形状の歪みも大幅に低減し、精度のよい表面改質を実現できる。
【0019】
本発明の請求項7記載のオーステナイト系金属の表面改質方法は、上記各構成に加えてさらに、上記フッ化処理の前に、オーステナイト系金属に対して析出した炭化物を溶け込ませて炭素を固溶させるための熱処理を行なうという構成をとる。この場合には、上記熱処理によって歪み応力が解放され、炭素固溶拡散処理が安定して炭素固溶層が均一化し、その後のクロマイズ処理も安定化してクロム炭化物層も均一化する。特に、母材として鋳造あがりや圧延,切削,打ち抜き,バレル加工上がりのように欠陥や内部歪みが存在するものを用いる際に有効である。
また、本発明の請求項8記載のオーステナイト系金属の表面改質方法は、上記クロム拡散浸透処理により、表面部にクロム炭化物層を形成するとともに、上記クロム炭化物層の直下にオーステナイト系金属にクロムが拡散したクロム拡散層を形成するという構成をとる。このため、得られた表面改質品は、母材がオーステナイト系金属であることから、オーステナイト系金属の高温領域における強度・耐疲労性・耐摩耗性等の優れた機械的特性や、耐酸化性,高温腐食性等の優れた化学的特性を備える。具体的には、硬質の表面クロム炭化物層の形成硬化に関しては、例えば、摺動摩耗のような機械的摩耗や、融着摩耗のような熱的摩耗、あるいは腐食摩耗のような化学的摩耗等に対する耐性に優れている。したがって、耐熱金属製品としてターボ部品ほか各種の用途に利用できる。また、上記クロム炭化物層直下の第2層としてクロム拡散層が形成されていることから、第2層はクロム濃度が高くなって格子歪みが増大し、強度が向上することから、硬質のクロム炭化物層を高強度のクロム拡散層で支えることになることから、金属製品の表面に荷重がかかったときにクロム炭化物層の変形が少なくなり、クラックや剥離が効果的に防止される。したがって、摺動,転動,振動等の外力が加わる箇所に使用しても、優れた高温耐摩耗特性を長期間にわたって維持できる。
【0020】
また、本発明の請求項9記載の耐熱金属製品は、母材であるオーステナイト系金属の表層部に、表面部の第1層としてクロム炭化物層が存在し、上記クロム炭化物層直下の第2層として母材にクロムが拡散したクロム拡散層が形成されているという構成をとる。
【0021】
このため、母材がオーステナイト系金属であることから、オーステナイト系金属の高温領域における強度・耐疲労性・耐摩耗性等の優れた機械的特性や、耐酸化性,高温腐食性等の優れた化学的特性を備える。具体的には、硬質の表面クロム炭化物層の形成硬化に関しては、例えば、摺動摩耗のような機械的摩耗や、融着摩耗のような熱的摩耗、あるいは腐食摩耗のような化学的摩耗等に対する耐性に優れている。したがって、耐熱金属製品としてターボ部品ほか各種の用途に利用できる。また、上記クロム炭化物層直下の第2層としてクロム拡散層が形成されていることから、第2層はクロム濃度が高くなって格子歪みが増大し、強度が向上することから、硬質のクロム炭化物層を高強度のクロム拡散層で支えることになることから、金属製品の表面に荷重がかかったときにクロム炭化物層の変形が少なくなり、クラックや剥離が効果的に防止される。したがって、摺動,転動,振動等の外力が加わる箇所に使用しても、優れた高温耐摩耗特性を長期間にわたって維持できる。
【0022】
本発明の請求項10記載の耐熱金属製品は、上記各構成に加えてさらに、上記母材は圧延焼鈍材または鍛造材であるという構成をとる。この場合には、圧延焼鈍によって得られた組織の表層部に第1層であるクロム炭化物層と第2層であるクロム拡散層が形成され、所定の耐熱性や機械的強度を得られる。
【0023】
本発明の請求項11記載の耐熱金属製品は、母材であるオーステナイト系金属の表層部に、表面部の第1層としてクロム炭化物層が存在し、上記母材はデンドライト組織であるという構成をとる。
【0024】
このため、母材がオーステナイト系金属であることから、オーステナイト系金属の高温領域における強度・耐疲労性・耐摩耗性等の優れた機械的特性を備える。これとともに、表面には硬質のクロム炭化物層が形成されていることにより、例えば、摺動摩耗のような機械的摩耗や、融着摩耗のような熱的摩耗、あるいは腐食摩耗のような化学的摩耗等に対する耐性に優れている。したがって、耐熱金属製品としてターボ部品ほか各種の用途に利用できる。また、鋳造によって得られたデンドライト組織の表層部に第1層であるクロム炭化物層が形成されることから、組織内に生じやすい欠陥がクロム炭化物層でカバーされ、鋳造欠陥等が生じやすい鋳造あがり品の耐熱耐摩耗強度が向上されたものである。したがって、鋳造あがりの欠陥が存在するものを用いた際にも所定の耐熱性や機械的強度が得られる。このような耐熱性や機械的強度が高く、比較的複雑形状の製品が安価に得られる。
【0025】
本発明請求項12記載の耐熱金属製品は、上記各構成に加えてさらに、上記オーステナイト系金属は、ニッケルおよびクロムを含む低炭素のオーステナイト系ステンレス鋼であるという構成をとる。この場合には、本来オーステナイト系ステンレス鋼が備えている、高温領域における強度・耐疲労性・耐酸化性等の優れた特性に加え、表面に硬質のクロム炭化物層が形成されることにより、例えば、摺動摩耗のような機械的摩耗や、融着摩耗のような熱的摩耗、あるいは腐食摩耗のような化学的摩耗等に対する耐性が向上する。したがって、高温耐久性に優れた耐熱金属製品としてターボ部品ほか各種の用途に利用できる。
【0026】
また、本発明の請求項13記載のターボ部品は、母材であるオーステナイト系金属の表層部に、表面部の第1層としてクロム炭化物層が存在し、上記クロム炭化物層直下の第2層として母材にクロムが拡散したクロム拡散層が形成されているという構成をとる。
【0027】
このため、母材がオーステナイト系金属であることから、オーステナイト系金属の高温領域における強度・耐疲労性・耐摩耗性等の優れた機械的特性や耐高温酸化・耐高温腐食性等の優れた化学的性質を備える。これとともに、表面には硬質のクロム炭化物層が形成されていることにより、例えば、摺動摩耗のような機械的摩耗や、融着摩耗のような熱的摩耗、あるいは腐食摩耗のような化学的摩耗等に対する耐性に優れている。したがって、耐熱金属製品として各種のターボ部品に利用でき、特に、700℃程度以上の環境で用いられる高温対応型のターボ部品に適したものとなる。また、上記クロム炭化物層直下の第2層としてクロム拡散層が形成されていることから、第2層はクロム濃度が高くなって格子歪みが増大し、強度が向上することから、硬質のクロム炭化物層を高強度のクロム拡散層で支えることになることから、金属製品の表面に荷重がかかったときにクロム炭化物層の変形が少なくなり、クラックや剥離が効果的に防止される。したがって、摺動,転動,振動等の外力が加わる箇所に使用しても、優れた耐熱耐摩耗特性を長期間にわたって維持できる。
【0028】
また、本発明の請求項14記載のターボ部品は、母材であるオーステナイト系金属の表層部に、表面部の第1層としてクロム炭化物層が存在し、上記母材はデンドライト組織であるという構成をとる。
【0029】
このため、母材がオーステナイト系金属であることから、オーステナイト系金属の高温領域における強度・耐疲労性・耐摩耗性等の優れた機械的特性を備える。これとともに、表面には硬質のクロム炭化物層が形成されていることにより、例えば、摺動摩耗のような機械的摩耗や、融着摩耗のような熱的摩耗、あるいは腐食摩耗のような化学的摩耗等に対する耐性に優れている。したがって、耐熱金属製品としてターボ部品ほか各種の用途に利用できる。また、鋳造によって得られたデンドライト組織の表層部に第1層であるクロム炭化物層が形成されることから、組織内に生じやすい欠陥がクロム炭化物層でカバーされ、鋳造欠陥等が生じやすい鋳造あがり品の耐熱耐摩耗強度が向上されたものである。したがって、鋳造あがりの欠陥が存在するものを用いた際にも所定の耐熱性や機械的強度を得られる。このような耐熱性や機械的強度が高く、比較的複雑形状のターボ部品が安価に得られる。
【0030】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0031】
本発明のオーステナイト系金属の表面改質方法は、主としてつぎの工程を実施することにより行なう。
(1)まず、オーステナイト系金属の歪取り熱処理を行なう。
(2)ついで、オーステナイト系金属をフッ素系ガス雰囲気下で加熱保持してフッ化処理を行う。
(3)このフッ化処理と同時期またはその後に、上記オーステナイト系金属に対して浸炭処理を行い、オーステナイト系金属の表層部にクロム炭化物粒子が実質的に存在しない炭素固溶層を形成する。
(4)さらに、クロムを含む雰囲気中で加熱保持して上記オーステナイト系金属にクロム拡散浸透処理を行い、オーステナイト系金属の表層部にクロム炭化物層を形成する。
【0032】
まず、本発明の表面改質方法が適用される母材であるオーステナイト系金属について説明する。
【0033】
上記オーステナイト系金属としては、オーステナイト系ステンレス鋼、例えば鉄分を50重量%以上含有し、クロム分を12重量%以上含有するとともにニッケルを含有するオーステナイト系ステンレス鋼等があげられる。具体的には、SUS304、SUS316等の18−8系ステンレス鋼材や、クロムを25重量%、ニッケルを20重量%含有するオーステナイト系ステンレス鋼であるSUS309やSUS310S、さらに、クロム含有量が23重量%、モリブデンを2重量%含むオーステナイト−フェライト2相系ステンレス鋼材等があげられる。また、ニッケルを19〜22重量%、クロムを20〜27重量%、炭素を0.25〜0.45重量%含むSCH21やSCH22等の耐熱鋼鋳鋼も本発明のオーステナイト系金属として好適に用いられる。さらに、クロムを20〜22重量%、ニッケルを3.25〜4.5重量%、マンガンを8〜10重量%、炭素を0.48〜0.58重量%含むSUH35や、クロムを13.5〜16重量%、ニッケルを24〜27重量%、モリブデンを1〜1.5重量%含むSUH660等の耐熱鋼も本発明のオーステナイト系金属として好適に用いることができる。
【0034】
上記オーステナイト系金属として、ニッケルおよびクロムを含む低炭素のオーステナイト系ステンレス鋼を使用することにより、オーステナイト系ステンレス鋼は、高温領域における強度・耐疲労性・耐酸化性等の優れた特性を備えるとともに、表面には硬質のクロム炭化物層が形成されているため、例えば、摺動摩耗のような機械的摩耗や、融着摩耗のような熱的摩耗、あるいは腐食摩耗のような化学的摩耗等に対する耐性に優れている。したがって、耐熱金属製品としてターボ部品ほか各種の用途に利用できる。
【0035】
さらに、上記オーステナイト系金属には、耐熱鋼であるインコロイ(Ni30〜45重量%,Cr10重量%以上,残Fe等)や、ニッケル分45重量%以上、クロム20重量%、鉄30重量%、その他モリブデン等を含むニッケル基合金も含まれる。このように、本発明においてオーステナイト系金属とは、常温で実質的(実質的とは、60重量%以上がオーステナイト相を有することをいう)に、オーステナイト相を呈するあらゆる金属を含む趣旨であり、ニッケルをオーステナイト安定化元素であるマンガンで置換したような、Fe−Cr−Mn系金属も含まれる。
【0036】
上記オーステナイト系金属としては、所定の製品形状に加工したものを用いることができる。例えば、オーステナイト系金属を鋳造によってニアネットシェープ製品に形成し、その後必要に応じて所定形状に切削加工等を施したものを用いることができる。このように、鋳造品を母材とし、歪取り熱処理,フッ化処理,低温浸炭処理,クロマイズ処理を含む本発明の表面改質を実施することにより、製品の母材(表面改質されない芯に近い部分)はデンドライト組織(樹枝状組織、鋳造組織)を基にした組織になり、鋳造時に形成された樹枝状晶が観察される。
【0037】
そして、母材をデンドライト組織とすることにより、鋳造によって得られたデンドライト組織の表層部に第1層であるクロム炭化物層が形成されることから、鋳造欠陥等の欠陥が生じやすい鋳造あがり品の耐熱強度が向上されたものである。したがって、鋳造あがりの欠陥の存在する確率が高いものを用いても所定の耐熱性や耐摩耗性等の機械的強度が得られる。このような耐熱性や機械的強度の高い製品について、比較的複雑形状のものが安価に得られる。
【0038】
また、オーステナイト系金属を圧延により所定厚みの板状やブロック状に形成してから切削加工やプレス加工等によって所定の製品形状に形成したものを用いることができる。このように、圧延焼鈍材を母材とし、歪取り熱処理,フッ化処理,浸炭処理,クロマイズ処理等を含む本発明の表面改質を実施することにより、製品の母材(表面改質されない芯に近い部分)は圧延焼鈍組織を基にした組織になり、圧延による圧延方向繊維状組織の痕跡のほか、いわゆる焼鈍組織、非金属介在物等が観察される。
【0039】
また、上記オーステナイト系金属の圧延焼鈍材をさらに熱間もしくは冷間で鍛造した鍛造品を母材として用いることもできる。この場合、鍛造品を母材とし、歪取り熱処理,フッ化処理,浸炭処理,クロマイズ処理等を含む本発明の表面改質を実施することにより、製品の母材(表面改質されない芯に近い部分)は鍛造組織を基にした組織になり、鍛造によるファイバーフローが観察される場合がある。
【0040】
(1)本発明では、まず、上記オーステナイト系金属をフッ化処理の前に歪取り熱処理を行なう。
【0041】
この歪取り熱処理によって改質処理前の母材に存在する加工歪・加工応力が解放されるので、浸炭時に導入される炭素と歪との相互作用による炭化物の生成析出が回避されて炭素が固溶状態で浸炭層を形成することとなる。
【0042】
すなわち、上記歪取り熱処理により、改質処理前の母材の内部歪みが除去されることから、その後の浸炭処理やクロマイズ処理における処理性が格段に改善される。また、熱変形等が軽減され、製品の寸法変化が少なく、表面粗度の悪化も少なくなる。さらに、母材として圧延焼鈍材や鍛造材を使用して歪取り熱処理を行なうと、表層部の結晶の格子欠陥が正常化され、浸炭処理やクロマイズ処理がより安定化するのである。
【0043】
また、上記歪取り熱処理により、母材中に析出している炭化物が固溶され、固溶炭素量が増大する。そして、微細炭化物はほとんど存在しなくなり、比較的大きな炭化物も微粒化されて母材の組織が正常化する。これにより、浸炭処理が安定して炭素固溶層が均一化するうえ、その後のクロマイズ処理でも、固溶炭素とクロムの反応が促進されてクロム炭化物層の形成が安定化し、クロム炭化物層の厚みや特性も均一化する。
【0044】
したがって、改質処理前の母材に微細炭化物粒子が存在するものは、上記歪取り熱処理により微細炭化物はほとんど存在しなくなり、比較的大きな炭化物粒子が存在する材料も、炭化物が微粒化されて母材の組織が正常化し、その後のクロマイズ処理によるクロム炭化物層の形成が安定化する。また、特に、母材として上述したような鋳造品のように欠陥や内部歪みの存在する確率が高く、炭化物が多く存在するものを用いた場合にも、炭化物の溶け込みが生じてその後のクロマイズ処理によるクロム炭化物層の形成が安定化するため、有効である。
【0045】
上記歪取り熱処理の条件としては、母材とするオーステナイト系金属の種類によって適当な条件を用いることができるが、800℃以上の温度で、圧延材の場合で15分から1時間程度、鋳造材の場合で1時間程度行なわれる。
【0046】
(2)ついで、上記オーステナイト系金属をフッ素系ガス雰囲気下で加熱保持してフッ化処理を行う。
【0047】
上記フッ化処理に用いられるフッ素系ガスとしては、NF3,BF3,CF4,HF,SF6,C2F6,WF6,CHF3,SiF4,ClF3等からなるフッ素化合物ガスがあげられる。これらは、単独でもしくは2種以上併せて使用される。
【0048】
また、これらのガス以外にも、分子内にフッ素(F)を含むフッ素系ガスも本発明のフッ素系ガスとして用いることができる。また、このようなフッ素化合物ガスを熱分解装置で熱分解させて生成させたF2ガスや、あらかじめ作られたF2ガスも上記フッ素系ガスとして用いることができる。このようなフッ素化合物ガスとF2ガスとは、場合によって混合使用することができる。
【0049】
これらのなかでも、本発明で使用するフッ素系ガスとして最も実用性を備えているのはNF3である。上記NF3は、常温においてガス状を呈し、化学的安定性が高く、取扱いが容易だからである。このようなNF3ガスは、通常、後述するように、N2ガスと組み合わせて、所定の濃度範囲内で希釈して用いられる。
【0050】
上記に例示された各種のフッ素系ガスは、それのみで用いることもできるが、通常はN2ガス等の不活性ガスで希釈されて使用される。このような希釈されたガスにおけるフッ素系ガス自身の濃度は、例えば、容量基準で10000〜100000ppmであり、好ましくは20000〜70000ppm、より好ましくは、30000〜50000ppmである。
【0051】
上記フッ素系ガスを雰囲気ガスとして用いたフッ化処理は、後述するようなマッフル炉等の雰囲気加熱炉を使用し、炉内に未処理のオーステナイト系金属を装入し、上記濃度のフッ素系ガス雰囲気下において加熱状態で保持することにより行なわれる。
【0052】
このときの、加熱保持は、オーステナイト系金属自体を、例えば、250〜600℃、好適には、280〜450℃の温度に保持することによって行われる。上記フッ素系ガス雰囲気中での上記オーステナイト系金属の保持時間は、通常は、10数分〜数十分に設定される。オーステナイト系金属をこのようなフッ素系ガス雰囲気下で加熱処理することにより、オーステナイト系金属の表面に形成された、Cr2O3を含む不働態皮膜がフッ化膜に変化する。このフッ化膜は、不働態皮膜に比べ、浸炭に用いる炭素原子の浸透を容易にし、オーステナイト系金属の表面は、上記フッ化処理によって炭素原子の浸透の容易な表面状態になるものと考えられる。
【0053】
(3)つぎに、上記フッ化処理と同時期またはその後に、上記オーステナイト系金属に対して浸炭処理を行う。
【0054】
浸炭処理は上記オーステナイト系金属自体を680℃以下の浸炭処理温度に加熱し、CO+H2からなる浸炭用ガス、または、RXガス〔CO23容量%,CO21容量%,H231容量%,H2O1容量%,残部N2〕+CO2からなる浸炭用ガス等を用い、炉内を浸炭用ガス雰囲気にして行われる。この浸炭用ガス雰囲気に、必要に応じてプロパンガス等の炭素源ガスをエンリッチすることもできる。
【0055】
このように、本発明では、浸炭処理を従来公知の浸炭処理に比べて極めて低い温度領域で行うのである。この場合、上記CO+H2の比率は、CO2〜10容量%、H230〜40容量%が好ましく、RX+CO2は、RXが80〜90容量%、CO2が3〜7容量%の割合が好ましい。また、浸炭に用いるガスは、CO+CO2+H2も用いられる。この場合、それぞれの比率は、CO32〜43容量%、CO22〜3容量%、H255〜65容量%の割合が好適である。
【0056】
上記浸炭処理の際の加熱温度すなわち浸炭処理温度としては、680℃以下すなわち400〜680℃の温度が好適である。浸炭処理温度が680℃を超えると、オーステナイト系金属の母材自体の軟化が生じやすくなるうえ、浸炭された炭素原子が母材に固溶したクロムと結合してクロム炭化物を生じ、母材自体に含まれるクロム量を減少させて表層部の耐蝕性が大幅に低下するうえ、浸炭層に侵入固溶した状態で存在する炭素量が減少し、後に実施するクロマイジング処理によるクロム炭化物層の形成が促進されなくなるからである。
【0057】
同様の理由により、上記浸炭処理温度としてより好適なのは400〜600℃の温度範囲であり、さらに好適なのは400〜550℃、もっと好適なのは400〜500℃の温度範囲である。本発明においては、上記フッ化処理を行なうことにより、このような極めて低温における浸炭処理が可能となり、浸炭処理中にクロム炭化物粒子をほとんど生成させずに母材中に炭素を侵入固溶させ、クロマイズ処理によるクロム炭化物層の生成を容易にするのである。また、浸炭処理による被処理物の寸法や形状の歪みも大幅に低減し、精度のよい表面改質を実現できる。
【0058】
このように処理することにより、オーステナイト系金属の表層部に炭素が拡散浸透した炭素固溶層が深く均一に形成される。この炭素固溶層は、基相であるオーステナイト相中に、多量のC原子が侵入固溶して格子歪を起こした状態となっており、母材に比べて著しく硬度の向上を実現している。しかも、上記炭素原子は、母材中のクロムとCr23C6やCr7C3等の炭化物をほとんど形成することなく結晶格子中に侵入固溶していることから、上記炭素固溶層中にはクロム炭化物粒子が実質的に存在せず、母材に固溶するクロム量を減少させることもないことから、母材と同程度の耐蝕性を維持できる。
【0059】
また、上記のようにして浸炭処理を行なったオーステナイト系金属は、表面粗度もほとんど悪化せず、膨れによる寸法変化や磁性も生じない。したがって、後に実施されるクロマイズ処理後の面粗度低下や寸法変化も少なく、比較的精度よく表面改質をすることができる。また、本発明者らによる研究の結果、オーステナイト系金属の中でも、ニッケルを多量に含む安定型オーステナイト系ステンレス鋼や、モリブデンを含有する安定型オーステナイト系ステンレス鋼では、炭素固溶層の高温耐蝕性がより良好であることが明らかとなった。
【0060】
上記のようなフッ化処理および浸炭処理は、例えば、図1に示すような金属製のマッフル炉1で行うことができる。すなわち、このマッフル炉1内において、まずフッ化処理をし、このフッ化処理と同時期もしくはその後に浸炭処理を行う。フッ化処理と同時期もしくはその後に浸炭処理を行うというのは、例えば、フッ化処理の開始と同時に浸炭処理を開始してもよいし、まずフッ化処理だけを開始してフッ化処理の終了を待たずに浸炭処理を開始してもよいし、あるいは、フッ化処理を終了してから浸炭処理を開始してもよい趣旨である。
【0061】
図1において、1はマッフル炉であり、外殻2と、内部が処理室に形成された内容器4と、上記内容器4と外殻2の間に設けられたヒータ3とを備えている。上記内容器4内には、ガス導入管5および排気管6が連通している。上記ガス導入管5には、浸炭ガスであるH2,COが充填されたボンベ15、およびフッ化処理ガスであるN2+NF3,CO2が充填されたボンベ16が連通している。17は流量計、18はバルブである。
【0062】
また、上記排気管6には、排ガス処理装置14および真空ポンプ13が接続されている。これにより、内容器4内の処理室内に処理ガスを導入して排出するようになっている。上記処理室内には処理ガスを攪拌するモーター7付きのファン8が設けられている。11はワークであるオーステナイト系金属製品10が装入されるかごである。
【0063】
このマッフル炉1内に、例えばオーステナイト系ステンレス鋼製品10を入れ、ボンベ16を流路に接続しNF3等のフッ素系ガスをマッフル炉1内に導入して加熱しながらフッ化処理をし、ついで排気管6からそのガスを真空ポンプ13の作用で引き出し、排ガス処理装置14内で無毒化して外部に放出する。ついで、ボンベ15を流路に接続しマッフル炉1内に先に述べた浸炭用ガスを導入して浸炭処理を行い、その後、排気管6、排ガス処理装置14を経由してガスを外部に排出する。この一連の作業によりフッ化処理と浸炭処理が行なわれる。
【0064】
このようにしてフッ化処理と浸炭処理を行なうことにより、オーステナイト系金属の表層部に、炭素固溶層が形成される。
【0065】
上記フッ化処理および浸炭処理によって形成される炭素固溶層の深さは、10μm以上が好ましく、さらには15μm以上に設定するのが好適である。このようにすることにより、炭素固溶層に、その後のクロマイズ処理によって十分なクロム炭化物層を形成しうるだけの濃度の炭素が侵入固溶するため、十分な厚みのクロム炭化物層を形成できる。また、浸炭処理あがりの中間製品を抜き取り検査することにより、クロマイズ処理後の製品特性をある程度予測できる。このため、中間製品の品質特性の基準をつくり、それに満たないものについては再度フッ化処理と浸炭処理を行なうことができ、最終製品の不良率を減少して歩留まりを向上させることができる。
【0066】
上記フッ化処理および浸炭処理によって形成される炭素固溶層の硬度は、Hv600以上とするのが好適である。また、上記フッ化処理および浸炭処理によって形成される炭素固溶層の表面炭素濃度、1.4重量%以上とするのが好適である。このようにすることにより、炭素固溶層に、その後のクロマイズ処理によって十分なクロム炭化物層を形成しうるだけの濃度の炭素が侵入固溶しているため、十分な厚みのクロム炭化物層を形成できる。また、浸炭処理あがりの中間製品を抜き取り検査することにより、クロマイズ処理後の製品特性をある程度予測できる。このため、中間製品の品質特性の基準をつくり、それに満たないものについては再度フッ化処理と浸炭処理を行なうことができ、最終製品の不良率を減少して歩留まりを向上させることができる。特に、上記炭素固溶層の硬度として、母材の表面から測定したマイクロビッカース硬度やヌープ硬度を基準とすることにより、非破壊で中間製品の検査ができて歩留まり低下を減少できる。
【0067】
上記浸炭処理において、浸炭処理の温度が高くなり、特に450℃を越えると、たとえわずかでもCr23C6等の炭化物が硬化層の表面に析出するという現象が生じる。しかし、このような場合でも、その浸炭処理品をHF−HNO3,HCl−HNO3等の強酸に浸漬して酸洗処理を行なうことにより、表面の析出物が除去され、母材なみの耐蝕性と、ビッカース硬度Hv850以上の高い表面硬度とを保持することができる。このように、本発明は、浸炭後の酸洗処理等によって表面のわずかの析出物を除去してからクロマイズ処理を行なう場合を含む趣旨である。また、表面の析出物を除去しうる処理であれば、ショットブラストや乾式・湿式の各種バレル研磨等の機械的な除去法を採用することもできる。
【0068】
上記のようなショットブラスト等の機械式研磨は、表面に析出した炭化物を除去する目的だけではなく、浸炭処理でスーチングが生じた際の表面のすすの除去等の目的でも行なわれる。
【0069】
(4)さらに、クロムを含む雰囲気中で加熱保持して上記オーステナイト系金属にクロム拡散浸透処理すなわちクロマイズ処理を行う。
【0070】
上記クロマイズ処理は、浸炭処理後(酸洗処理や機械研磨を行なった場合はそれらの後処理後)のオーステナイト系金属を、例えば、クロム源である金属クロム粉末またはフェロクロム粉末と焼結防止剤としてのアルミナ粉末との混合粉末とともに容器中に入れ、真空もしくは不活性ガス中で900〜1400℃、好ましくは900〜1200℃の温度域で3〜10時間加熱することにより行なうことができる(粉末パック法)。金属クロムまたはフェロクロムとアルミナ粉末との混合比は金属クロム粉末(またはフェロクロム粉末)が55重量%に対し、アルミナ粉末が45重量%程度が好ましく用いられ、助剤を1重量%以上含むものが用いられる。
【0071】
また、クロマイズ処理は、上記粉末パック法に限定するものではなく、金属クロム等と焼結防止剤を含む処理剤をスラリー状にしてオーステナイト系金属の表面に部分的に塗布して加熱することにより行なうこともできる。また、オーステナイト系金属を水素雰囲気中で、クロムまたはフェロクロムを含む混合粉末中に包み、焼結防止剤としてアルミナ,カオリンを、促進剤として塩化アンモニウムを加え、これを1000〜1100℃に加熱して塩化水素ガスを送ることによりクロムを浸透させる気体法によって行なうこともできる。この場合、フッ化クロムを用いることもできる。さらに、アルゴン気流中で塩化バリウム,塩化ナトリウム,クロム薄片を含む溶融塩浴中にオーステナイト系金属を浸漬処理する塩浴法によって行なうこともできる。
【0072】
上記クロマイズ処理により、オーステナイト系金属の表層部にクロム炭化物層を形成する。このとき、母材であるオーステナイト系金属の表層部には、表面部の第1層としてクロム炭化物層が形成され、上記クロム炭化物層直下の第2層として母材にクロムが拡散したクロム拡散層が形成され、このようなオーステナイト系金属製品ができる。
【0073】
以上のように、上記オーステナイト系金属の表面改質方法によれば、オーステナイト系金属をフッ素系ガス雰囲気下で加熱保持してフッ化処理を行い、上記フッ化処理と同時期および/またはその後に、上記オーステナイト系金属に対して浸炭処理を行う。このとき、上記フッ化処理により、オーステナイト系金属の表面が活性化されて表面にフッ化膜が形成され、炭素が侵入しやすい状態となる。そして、フッ化処理後に浸炭処理を行なうことにより、オーステナイト系金属の表面から炭素が侵入固溶する。侵入固溶した炭素は、炭化物粒子をつくらずに母材表層部に拡散し、オーステナイト系金属の表層部に炭素固溶層を形成する。
【0074】
そして、クロムを含む雰囲気中で加熱保持して上記オーステナイト系金属にクロム拡散浸透処理を行う。このとき、上記炭素固溶層に固溶した炭素が拡散浸透されたクロムと結合して、オーステナイト系金属の表層部にクロム炭化物層を形成する。上記炭素固溶層の炭素は、クロム炭化物粒子を実質的に形成せず、侵入固溶しているため、クロマイズ処理によって拡散浸透したクロムとの結合が速やかに行なわれ、比較的短時間で十分な厚みのクロム炭化物層が形成される。
【0075】
このように、本発明では、従来不可能とされていた、オーステナイト系金属に対してクロマイズ処理でクロム炭化物層を形成することが可能となったのである。このようにして得られたオーステナイト系金属製品は、高温領域での強度、耐疲労性・耐摩耗性等の機械的特性に優れ、耐熱金属製品としてターボ部品ほか各種の用途に利用できる。
【0076】
上記のようにして得られたオーステナイト系金属製品において、第1層であるクロム炭化物層の厚みとしては、5〜30μm程度に設定するのが好ましく、10〜30μmであればなお好ましく、より好ましいのは15μm〜30μmである。上記クロム炭化物層の厚みが5未満では、十分な耐摩耗性や耐疲労性を得ることができず、30μmを超えると、処理時間が長くなって生産性が低下するうえ、得られるオーステナイト系金属製品の表面粗度が悪くなって仕上げ処理にコストがかかるようになるからである。
【0077】
また、上記オーステナイト系金属製品において、第2層であるクロム拡散層の厚みとしては、0〜50μm程度に設定するのが好ましく、10〜50μmであればなお好ましく、より好ましいのは20μm〜50μmである。50μmを超えると、処理時間が長くなって生産性が低下するうえ、第1層であるクロム炭化物層の十分な厚みが得られなくなるからである。
【0078】
上記のようにして得られたオーステナイト系金属製品は耐熱金属製品として好適に用いられる。このような耐熱金属製品は、母材がオーステナイト系金属であることから、オーステナイト系金属の高温領域における強度・耐疲労性・耐酸化性・耐摩耗性等の優れた機械的特性を備える。これとともに、表面には硬質のクロム炭化物層が形成されていることにより、例えば、摺動摩耗のような機械的摩耗や、融着摩耗のような熱的摩耗、あるいは腐食摩耗のような化学的摩耗等に対する耐性に優れている。したがって、耐熱金属製品として可変翼型等のターボ部品ほか各種の用途に利用できる。
【0079】
また、上記クロム炭化物層直下の第2層としてクロム拡散層を形成させた場合には、第2層はクロム濃度が高くなって格子歪みが増大し、強度が向上することから、硬質のクロム炭化物層を高強度のクロム拡散層で支えることになることから、金属製品の表面に荷重がかかったときにクロム炭化物層の変形が少なくなり、クラックや剥離が効果的に防止される。したがって、摺動,転動,振動等の外力が加わる箇所に使用しても、優れた耐熱耐摩耗特性を長期間にわたって維持でき、主として、特に、800℃程度以上の環境で用いられる高温対応型のターボ部品ほか各種の用途に利用できる。
【0080】
本発明が適用される耐熱金属製品としては、例えば、自動車・船舶・飛行機等の内燃機関用部品、タービン用部品,コンプレッサ用部品,ボイラ用部品,ジェットエンジンやロケット用部品,ディーゼル機関用部品,化学プラント用部品,原子炉用部品,工業炉用部品等をあげることができる。また、常温域の耐摩耗・耐食用途の金属製品として、耐海水腐食性や耐応力腐食割れ性が要求される船舶用部品等に用いることができる。なお、本発明が適用される金属製品としては、これらに限定する趣旨ではない。
【0081】
また、本発明が適用されるターボ部品としては、例えば、可変翼型ターボチャージャ用コントロールユニット等に代表されるターボ用の部品として、可変翼,接合ピン,リンクプレート,ノズルベーン,ノズル,ノズル支持体,リング等をあげることができるが、これらに限定する趣旨ではない。
【0082】
つぎに、実施例について説明する。
【0083】
【実施例1】
本発明を可変フラップ付ターボの構成部品に適用し、下記の処理条件で表面改質を実施した。なお、ターボ構成部品として、ノズルリンク板,駆動リングピン,ノズルスライド,ノズルリンクピン,駆動リンクピン,駆動スライド,駆動リング,ノズル等の各部品に適用した。その結果を図2に示す。
【0084】
図2に示したサンプル中、サンプルNo.2の表層部組織写真を図3に示す。
【0085】
〔処理条件〕
母 材:SUS310S(25%Cr−20%Ni)圧延材
溶体化:1030℃×15分
フッ化処理 :10容量%NF3+残部N2雰囲気
300℃×15分
浸炭処理 :CO:50容量%+H210容量%+N2雰囲気
480〜500℃×20時間
ショットブラスト:ガラスビーズ 2分
クロマイズ処理 :処理剤
金属クロム 49.5%
アルミナ粉末 49.5%
助剤(塩化アンモニウム) 1%以下
1050℃×10時間
【0086】
上記図2および図3からわかるように、本発明によれば、第1層として、平均厚さで6〜14μmのクロム炭化物層が形成され、その直下に第2層としてクロム拡散層が形成されていることがわかる。なお、上記図2では、第1層と第2層を合わせたものを「合金層」と称している。
【0087】
【実施例2】
【0088】
図2に示したサンプル中、サンプルNo.6の表層部組織写真を図4に示す。
【0089】
図4からわかるとおり、鋳造材を母材とした場合、第2層であるクロム拡散層は形成されず、クロム炭化物層だけが形成された。その厚みは約14μmであった。
【0090】
【実施例3】
下記の処理条件で本発明の表面改質を行なったときの、浸炭層の特性とクロム炭化物層およびクロム拡散層の関係を図5に示す。図5からわかるように、浸炭層の深さが深くなり、浸炭品の表面硬度が高くなるほど、クロム炭化物層やクロム拡散層の厚みが厚くなる。
【0091】
〔処理条件〕
母 材:SUS310S(25%Cr−20%Ni)圧延材
溶体化:1030℃×15分
フッ化処理 :10容量%NF3+残部N2雰囲気
400℃×15分
浸炭処理 :CO:50容量%+H210容量%+N2雰囲気
500℃×4〜16時間
ショットブラスト:ガラスビーズ 2分
クロマイズ処理 :処理剤
金属クロム 54.5%
アルミナ粉末 44.5%
助剤(塩化アンモニウム) 1%以下
1050℃×10時間
【0092】
【発明の効果】
以上のように、本発明の請求項1記載のオーステナイト系金属の表面改質方法によれば、オーステナイト系金属をフッ素系ガス雰囲気下で加熱保持してフッ化処理を行い、上記フッ化処理と同時期および/またはその後に、上記オーステナイト系金属に対して炭素固溶拡散処理を行う。このとき、上記フッ化処理により、オーステナイト系金属の表面が活性化されて表面にフッ化膜が形成され、炭素が侵入しやすい状態となる。そして、フッ化処理後に炭素固溶拡散処理を行なうことにより、オーステナイト系金属の表面から炭素が侵入固溶する。侵入固溶した炭素は、炭化物粒子をつくらずに母材表層部に拡散し、オーステナイト系金属の表層部にクロム炭化物粒子が実質的に存在しない炭素固溶層を形成する。
【0093】
そして、クロムを含む雰囲気中で加熱保持して上記オーステナイト系金属にクロム拡散浸透処理を行う。このとき、上記炭素固溶層に存在する炭素が拡散浸透されたクロムと結合して、オーステナイト系金属の表層部にクロム炭化物層を形成する。上記炭素固溶層の炭素は、クロム炭化物粒子を実質的に形成せず、侵入固溶しているため、クロマイズ処理によって拡散浸透したクロムとの結合が速やかに行なわれ、比較的短時間で十分な厚みのクロム炭化物層が形成される。
【0094】
このように、本発明では、工業的には従来不可能とされていた、オーステナイト系金属に対してクロマイズ処理でクロム炭化物層を形成することが可能となったのである。このようにして得られたオーステナイト系金属製品は、高温領域での強度、耐疲労性・耐摩耗性等の機械的特性に優れ、耐熱金属製品としてターボ部品ほか各種の用途に利用できる。
【0095】
また、本発明の請求項8記載の耐熱金属製品は、母材がオーステナイト系金属であることから、オーステナイト系金属の高温領域における強度・耐疲労性・耐摩耗性等の優れた機械的特性を備える。特に耐摩耗性については、表面には硬質のクロム炭化物層が形成されていることにより、例えば、摺動摩耗のような機械的摩耗や、融着摩耗のような熱的摩耗、あるいは腐食摩耗のような化学的摩耗等に対する耐性に優れている。したがって、耐熱金属製品としてターボ部品ほか各種の用途に利用できる。また、上記クロム炭化物層直下の第2層としてクロム拡散層が形成されていることから、第2層はクロム濃度が高くなって格子歪みが増大し、強度が向上することから、硬質のクロム炭化物層を高強度のクロム拡散層で支えることになることから、金属製品の表面に荷重がかかったときにクロム炭化物層の変形が少なくなり、クラックや剥離が効果的に防止される。したがって、摺動,転動,振動等の外力が加わる箇所に使用しても、優れた耐熱耐摩耗特性を長期間にわたって維持できる。
【0096】
また、本発明の請求項11記載の耐熱金属製品は、母材がオーステナイト系金属であることから、オーステナイト系金属の高温領域における強度・耐疲労性・耐摩耗性等の優れた機械的特性を備える。これとともに、表面には硬質のクロム炭化物層が形成されていることにより、例えば、摺動摩耗のような機械的摩耗や、融着摩耗のような熱的摩耗、あるいは腐食摩耗のような化学的摩耗等に対する耐性に優れている。したがって、耐熱金属製品としてターボ部品ほか各種の用途に利用できる。また、鋳造によって得られたデンドライト組織の表層部に第1層であるクロム炭化物層が形成されることから、組織内に生じやすい欠陥がクロム炭化物層でカバーされ、鋳造欠陥等が生じやすい鋳造あがり品の耐熱耐摩耗強度が向上されたものである。したがって、鋳造あがりの欠陥の存在する確率が高いものを用いても所定の耐熱性や機械的強度を得られる。このような耐熱性や機械的強度の高い製品が、比較的複雑形状のものが安価に得られる。
【0097】
また、本発明の請求項13記載のターボ部品は、母材がオーステナイト系金属であることから、オーステナイト系金属の高温領域における強度・耐疲労性・耐摩耗性等の優れた機械的特性を備える。これとともに、表面には硬質のクロム炭化物層が形成されていることにより、例えば、摺動摩耗のような機械的摩耗や、融着摩耗のような熱的摩耗、あるいは腐食摩耗のような化学的摩耗等に対する耐性に優れている。したがって、耐熱金属製品として各種のターボ部品に利用でき、特に、700℃程度以上の環境で用いられる高温対応型のターボ部品に適したものとなる。また、上記クロム炭化物層直下の第2層としてクロム拡散層が形成されていることから、第2層はクロム濃度が高くなって格子歪みが増大し、強度が向上することから、硬質のクロム炭化物層を高強度のクロム拡散層で支えることになることから、金属製品の表面に荷重がかかったときにクロム炭化物層の変形が少なくなり、クラックや剥離が効果的に防止される。したがって、摺動,転動,振動等の外力が加わる箇所に使用しても、優れた耐熱耐摩耗特性を長期間にわたって維持できる。
【0098】
また、本発明の請求項14記載のターボ部品は、母材がオーステナイト系金属であることから、オーステナイト系金属の高温領域における強度・耐疲労性・耐摩耗性等の優れた機械的特性を備える。これとともに、表面には硬質のクロム炭化物層が形成されていることにより、例えば、摺動摩耗のような機械的摩耗や、融着摩耗のような熱的摩耗、あるいは腐食摩耗のような化学的摩耗等に対する耐性に優れている。したがって、耐熱金属製品としてターボ部品ほか各種の用途に利用できる。また、鋳造によって得られたデンドライト組織の表層部に第1層であるクロム炭化物層が形成されることから、組織内に生じやすい欠陥がクロム炭化物層でカバーされ、鋳造欠陥等が生じやすい鋳造あがり品の耐熱耐摩耗強度が向上されたものである。したがって、鋳造あがりの欠陥の存在する確率が高いものを用いても所定の耐熱性や機械的強度を得られる。このような耐熱性や機械的強度の高い製品が、比較的複雑形状のターボ部品が安価に得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のオーステナイト系金属の表面改質方法に用いる装置を示す構成図である。
【図2】実施例1の測定結果を示す表である。
【図3】実施例1の表層部組織写真である。
【図4】実施例2の表層部組織写真である。
【図5】実施例3における浸炭層の特性とクロム炭化物層およびクロム拡散層の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 マッフル炉
2 外殻
3 ヒータ
4 内容器
5 ガス導入管
6 排気管
7 モーター
8 ファン
10 オーステナイト系金属製品
11 かご
13 真空ポンプ
14 排ガス処理装置
15 ボンベ
16 ボンベ
17 流量計
18 バルブ
Claims (14)
- オーステナイト系金属をフッ素系ガス雰囲気下で加熱保持してフッ化処理を行い、上記フッ化処理と同時期および/またはその後に、上記オーステナイト系金属に対し、後のクロム拡散浸透処理でクロムと化合させるための炭素の濃度を上げるために炭素を固溶拡散させる炭素固溶拡散処理を行って、オーステナイト系金属の表層部に炭素固溶層を形成し、さらに、クロムを含む雰囲気中において900℃以上の高温で加熱保持して上記オーステナイト系金属にクロム拡散浸透処理を行うことにより、浸透させたクロムを上記炭素固溶拡散処理で固溶拡散させた炭素と化合させてオーステナイト系金属の表層部にクロム炭化物層を形成することを特徴とするオーステナイト系金属の表面改質方法。
- 上記オーステナイト系金属は、ニッケルおよびクロムを含む低炭素のオーステナイト系ステンレス鋼である請求項1記載のオーステナイト系金属の表面改質方法。
- 上記炭素固溶拡散処理によって形成される炭素固溶層の深さは、10μm以上である請求項1または2記載のオーステナイト系金属の表面改質方法。
- 上記炭素固溶拡散処理によって形成される炭素固溶層の硬度は、Hv600以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載のオーステナイト系金属の表面改質方法。
- 上記炭素固溶拡散処理によって形成される炭素固溶層の表面炭素濃度は、1.4重量%以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載のオーステナイト系金属の表面改質方法。
- 上記炭素固溶拡散処理の処理温度が680℃以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載のオーステナイト系金属の表面改質方法。
- 上記フッ化処理の前に、オーステナイト系金属に対して析出した炭化物を溶け込ませて炭素を固溶させるための熱処理を行なう請求項1〜6のいずれか一項に記載のオーステナイト系金属の表面改質方法。
- 上記クロム拡散浸透処理により、表面部にクロム炭化物層を形成するとともに、上記クロム炭化物層の直下にオーステナイト系金属にクロムが拡散したクロム拡散層を形成する請求項1〜7のいずれか一項に記載のオーステナイト系金属の表面改質方法。
- 母材であるオーステナイト系金属の表層部に、表面部の第1層としてクロム炭化物層が存在し、上記クロム炭化物層直下の第2層として母材にクロムが拡散したクロム拡散層が形成されていることを特徴とする耐熱金属製品。
- 上記母材は圧延焼鈍材または鍛造材である請求項9記載の耐熱金属製品。
- 母材であるオーステナイト系金属の表層部に、表面部の第1層としてクロム炭化物層が存在し、上記母材はデンドライト組織であることを特徴とする耐熱金属製品。
- 上記オーステナイト系金属は、ニッケルおよびクロムを含む低炭素のオーステナイト系ステンレス鋼である請求項9〜11のいずれか一項に記載の耐熱金属製品。
- 母材であるオーステナイト系金属の表層部に、表面部の第1層としてクロム炭化物層が存在し、上記クロム炭化物層直下の第2層として母材にクロムが拡散したクロム拡散層が形成されていることを特徴とするターボ部品。
- 母材であるオーステナイト系金属の表層部に、表面部の第1層としてクロム炭化物層が存在し、上記母材はデンドライト組織であることを特徴とするターボ部品。
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