JP7370263B2 - 金属製品およびその製造方法 - Google Patents
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Description
〔0020〕
請求項1記載の金属の表面改質方法は、鉄系金属またはニッケル系金属である母材を準備する。鉄系金属やニッケル系金属は、酸化皮膜や不動態皮膜で表面が覆われている。表面に酸化皮膜や不動態皮膜が存在すると、一般に窒素原子の拡散浸透の妨げになりやすい。上記母材を、窒化源ガスを含む雰囲気で加熱保持する窒化処理を行う。この窒化処理により、ハロゲン化処理で活性化した母材の表面に窒素原子を拡散浸透させる。その後、上記窒化した母材を、金属クロム粉末を含む粉末中に存在させて850~1200℃の温度に加熱保持するクロマイズ処理を行う。このクロマイズ処理により、窒素原子が拡散浸透した表層部にクロム原子が拡散浸透し、表面改質層が形成される。
〔0087〕
図5(a)図5(b)は、実施例で形成された表面改質層の元素分布状況である。測定は、EPMA(X線マイクロアナライザー)により、材料断面の濃度分布を測定した。
図5(a)はSUS304母材に、フッ化処理、軟窒化処理およびクロマイズ処理を施して形成された表面改質層である。軟窒化処理は570℃×2時間行った。
図5(b)はSUS304母材に、フッ化処理、窒化処理およびクロマイズ処理を施して形成された表面改質層である。窒化処理は570℃×30分行った。
いずれも、表面側の50μm程度の厚みにおいてCrとNの濃度が高く、Feの濃度が低い層が形成されている。これが窒化クロム層とみることができる。この窒化クロム層は、クロムが約82重量%、窒素が約11重量%であり、Cr2Nであると同定することができる。また、その下側の60μm程度の厚みにおいて、窒素の濃度が低く、FeとCrの濃度が高い層が形成されている。これは、母材にクロムが拡散浸透したクロム濃化層とみることができる。
〔0007〕
Cr皮膜を例に取ると、本発明の摺動部材は、鋼部材に、鉄とクロムの複合炭化物(Fe,Cr)Cからなる中間層を介してクロム炭化物層が被覆されていることを特徴とする。この層構造を図1(a)に示す。図1(a)に示すように・・・被膜割れを防止することができる。
〔0009〕
また、本発明は、拡散浸透処理によって鉄とクロムの複合炭化物(Fe,Cr)Cからなる中間層を介してクロム炭化物層を鋼材部に被覆する摺動部材の製造方法であり、鋼材組織はセメンタイトをあらかじめ含み、Fe-C系状態図上のオーステナイト+セメンタイト領域で拡散浸透処理を行うことを特徴とする。鋼部材表面の組織がオーステナイト+セメンタイトの状態であると、オーステナイト+セメンタイト領域ではFe3Cが安定に存在するため、外部からCrを供給してFe3Cと反応させることにより、図1に示すような(Fe,Cr)Cからなる中間層を鋼部材表面に確実に生成することができる。
上記Cr2N層はセラミックスであり、その熱膨張係数は9×10-6/℃と小さい。最も内側に存在するオーステナイト系母材の熱膨張係数は、17×10-6/℃であり、上記Cr2N層と比べると約2倍になる。また、上記クロム濃化層には、実質的に窒素が存在していない。このため、上記クロム濃化層の熱膨張係数も、上記オーステナイト系母材の熱膨張係数と大きく変わらない。したがって、最表層であるCr2N層と、その下層として存在するクロム濃化層および母材とのあいだで、熱膨張係数が大きく異なり乖離している。このような層構造では、たとえば1000℃以上の高温で使用される場合、加熱と冷却の繰り返しによる熱応力で、Cr2N層の剥離や割れを生じるおそれがある。このため、従来の金属製品は、使用できる環境や用途に制約があった。
この方法では、母材があらかじめセメンタイトを含む、すなわち炭素を0.6重量%以上含む鉄系材料である必要がある。このため、耐食性の高い、例えばステンレス鋼や耐熱鋼など炭素含有量の少ない材料では上記中間層を形成させることができない。このため、耐食性も必要とされる環境や用途には適用できないという問題があった。
また、中間層に析出させる化合物が、Cr系炭化物等の炭化物であり、Cr系窒化物等と比較して高温に加熱された場合に分解しやすい。したがって、高温環境で使用される場合に性能が劣化しやすいという問題もある。
繰り返し熱応力への耐性が高い耐熱・耐食および耐摩耗性の表面層を有する金属製品およびその製造方法を提供する。
炭素濃度が0.6重量%以下であるステンレス鋼,耐熱鋼.ニッケル基金属のうちいずれからなる母材と、上記母材の表面に形成された表面改質層とを備え、
上記表面改質層は、
表面側に存在するクロム化合物層と、
上記クロム化合物層と上記母材との間に存在し、上記母材を構成する母材金属中にクロム化合物が析出した析出層とを含んで構成され、
上記クロム化合物層がCr 2 Nからなり、上記Cr 2 Nからなるクロム化合物層の窒素濃度は10原子%以上である。
上記Cr 2 Nからなる上記クロム化合物層の硬度は、MHv1400以上である。
炭素濃度が0.6重量%以下であるステンレス鋼,耐熱鋼,ニッケル基金属のうちいずれからなる母材に対し、
窒化源ガスを含む雰囲気で上記母材を加熱保持する窒化処理を行うことにより、母材の表層部に窒素濃度が10原子%以上で厚み5μm以上の窒素拡散層を形成し、
金属クロム粉末を含む粉末中に上記窒化処理した母材を存在させ、850~1200℃の温度で加熱保持するクロマイズ処理を行うことにより、
上記母材の表面に、
表面側に存在するクロム化合物層と、
上記クロム化合物層と上記母材との間に存在し、上記母材を構成する母材金属中にクロム化合物が析出した析出層とを含んで構成される
表面改質層を形成する。
したがって、各層の熱膨張係数は、クロム化合物層<析出層<母材と、表面から深部に向かって順次大きくなる。このため、表面のクロム化合物層とクロム濃化層および母材とのあいだで熱膨張係数が大きく乖離する従来技術にくらべ、各層間の熱膨張係数の差が小さくなる。これにより、従来よりも、表面層の繰り返し熱応力への耐性が高く、上記表面層が有する耐熱・耐食および耐摩耗性の特性を維持できる。使用できる環境や用途が従来よりも広がる。
また、上記クロム化合物層がCr 2 Nからなり、上記Cr 2 Nからなるクロム化合物層の窒素濃度は10原子%以上であるため、たとえば上記クロム化合物層の硬度はMHv1400以上となる。
さらに、上記のような母材に対し、クロム化合物層と析出層の2層を含む表面改質層を形成することにより、優れた特性をもった金属製品が得られる。炭素濃度が0.6重量%以下であるステンレス鋼,耐熱鋼,ニッケル基合金は、母材中にセメンタイトが存在するような高濃度の炭素を含まない。したがって、クロムの拡散浸透処理を行うだけでは、表層の炭化物層と、その内側に鉄とCr等との複合炭化物からなる中間層を形成することができない。たとえば窒化処理を行って窒素原子を拡散浸透させたのち、クロムの拡散浸透処理を行うことにより、表面にクロム化合物層としてクロム窒化物層を形成し、母材との間に熱膨張係数差等を緩和するため、母材金属中にクロム窒化物が析出した析出層を形成させることができる。
この金属製品は、極めて硬度が高く耐熱性および耐食性にも優れ、高温酸化・高温腐食・エロージョン・キャビテーションなどの環境に優れた性能を発揮する。また、上記金属製品は、酸・アルカリの環境や中性環境や、海水等の塩化物等の腐食環境においても優れた性能を発揮する。そして、上記金属製品は、たとえば自動車部品であれば、ターボチャージャーにおける耐熱性および耐摩耗性を必要とする部品に適用することができる。また、たとえばアルミニウム・マグネシウム・亜鉛などのダイカストに用いる金型において、合金への溶損を防止し、優れた性能を維持する。また、化学工業・火力発電・代替エネルギーなどの環境における翼材・バルブ材・ポンプ材等をはじめとする多くの部品に適用することができる。また、酸・アルカリの環境や中性環境、海水等の塩化物等の腐食環境において使用される材料や部品に適用することができる。
したがって、各層の熱膨張係数は、クロム化合物層<析出層<母材と、表面から深部に向かって順次大きくなる。このため、表面のクロム化合物層とクロム濃化層および母材とのあいだで熱膨張係数が大きく乖離する従来技術にくらべ、各層間の熱膨張係数の差が小さくなる。これにより、従来よりも、表面層の繰り返し熱応力への耐性が高く、上記表面層が有する耐熱・耐食および耐摩耗性の特性を維持できる。使用できる環境や用途が従来よりも広がる。
また、上記のような母材に対し、クロム化合物層と析出層の2層を含む表面改質層を形成することにより、優れた特性をもった金属製品が得られる。炭素濃度が0.6重量%以下であるステンレス鋼,耐熱鋼,ニッケル基合金は、母材中にセメンタイトが存在するような高濃度の炭素を含まない。したがって、クロムの拡散浸透処理を行うだけでは、表層の炭化物層と、その内側に鉄とCr等との複合炭化物からなる中間層を形成することができない。たとえば窒化処理を行って窒素原子を拡散浸透させたのち、クロムの拡散浸透処理を行うことにより、表面にクロム化合物層としてクロム窒化物層を形成し、母材との間に熱膨張係数差等を緩和するため、母材金属中にクロム窒化物が析出した析出層を形成させることができる。
この金属製品は、極めて硬度が高く耐熱性および耐食性にも優れ、高温酸化・高温腐食・エロージョン・キャビテーションなどの環境に優れた性能を発揮する。また、上記金属製品は、酸・アルカリの環境や中性環境や、海水等の塩化物等の腐食環境においても優れた性能を発揮する。そして、上記金属製品は、たとえば自動車部品であれば、ターボチャージャーにおける耐熱性および耐摩耗性を必要とする部品に適用することができる。また、たとえばアルミニウム・マグネシウム・亜鉛などのダイカストに用いる金型において、合金への溶損を防止し、優れた性能を維持する。また、化学工業・火力発電・代替エネルギーなどの環境における翼材・バルブ材・ポンプ材等をはじめとする多くの部品に適用することができる。また、酸・アルカリの環境や中性環境、海水等の塩化物等の腐食環境において使用される材料や部品に適用することができる。
表面のCr2N層がセラミックス層で、その内側のクロム濃化層および母材が合金層であり、上記セラミックス層と合金層の界面で、熱膨張係数が乖離していることが問題の根幹である。つまり、Cr2N層と母材のあいだに存在する合金層のクロム濃化層に、窒素が存在しない。このため、上述した層界面における熱膨張係数の乖離が生じ、繰り返し熱応力に対する耐性が十分でなかった。
図1(A)に示すように、従来品は、Cr2N層とクロム濃化層(高クロム合金層)の熱膨張係数が大きく違う。合金層のクロム濃化層には窒素が存在せず、層界面で熱膨張係数の乖離が生じている。
図1(B)に示すように、本発明は、上記析出層には窒素が存在し、Cr2N層から析出層(Cr2N析出層)を介して母材にかけて、熱膨張係数が徐々に変化している。層界面での熱膨張係数の乖離が緩和されている。
なお、図1の熱膨張係数の線図では、縦軸の下にいくほど熱膨張係数が大きい。
本実施形態の金属製品は、鉄系金属またはニッケル系金属である母材と、上記母材の表面に形成された表面改質層とを備えている。
上記母材を構成する母材金属には、鉄系金属またはニッケル系金属を使用する。
上記表面改質層は、表面側に存在するクロム化合物層と、上記クロム化合物層と上記母材との間に存在する析出層とを含んで構成されている。
上記クロム化合物層は、上述した窒化処理により上記母材金属表面に形成された窒化層の窒素原子と、上記クロマイズ処理により上記窒化層に侵入したクロム原子とが化合することによって形成される。上記窒化層は、表面の窒化鉄層とその深部の窒素拡散層である。表面の窒化鉄層は窒化処理等の条件によっては形成されない場合もある。
上記析出層は、上記母材を構成する母材金属中にクロム化合物が析出して構成されている。
上記実施形態の金属製品は、つぎの効果を奏する。
したがって、各層の熱膨張係数は、クロム化合物層<析出層<母材と、表面から深部に向かって順次大きくなる。このため、表面のクロム化合物層とクロム濃化層および母材とのあいだで熱膨張係数が大きく乖離する従来技術にくらべ、各層間の熱膨張係数の差が小さくなる。これにより、従来よりも、表面層の繰り返し熱応力への耐性が高く、上記表面層が有する耐熱・耐食および耐摩耗性の特性を維持できる。使用できる環境や用途が従来よりも広がる。
これにより、上記析出層の熱膨張係数は、表面から深部に向かって順次大きくなる。このため、表面側のクロム化合物層から母材にかけて、熱膨張係数が段階的ではなく連続的に変化する。これにより、従来よりも、表面層の繰り返し熱応力への耐性が高く、上記表面層が有する耐熱・耐食および耐摩耗性の特性を維持できる。使用できる環境や用途が従来よりも広がる。
このような母材に対し、クロム化合物層と析出層の2層を含む表面改質層を形成することにより、優れた特性をもった金属製品が得られる。炭素濃度が0.6重量%以下であるステンレス鋼,耐熱鋼,ニッケル基合金は、母材中にセメンタイトが存在するような高濃度の炭素を含まない。したがって、クロムの拡散浸透処理を行うだけでは、表層の炭化物層と、その内側に鉄とCr等との複合炭化物からなる中間層を形成することができない。たとえば窒化処理を行って窒素原子を拡散浸透させたのち、クロムの拡散浸透処理を行うことにより、表面にクロム化合物層としてクロム窒化物層を形成し、母材との間に熱膨張係数差等を緩和するため、母材金属中にクロム窒化物が析出した析出層を形成させることができる。
この金属製品は、極めて硬度が高く耐熱性および耐食性にも優れ、高温酸化・高温腐食・エロージョン・キャビテーションなどの環境に優れた性能を発揮する。また、上記金属製品は、酸・アルカリの環境や中性環境や、海水等の塩化物等の腐食環境においても優れた性能を発揮する。そして、上記金属製品は、たとえば自動車部品であれば、ターボチャージャーにおける耐熱性および耐摩耗性を必要とする部品に適用することができる。また、たとえばアルミニウム・マグネシウム・亜鉛などのダイカストに用いる金型において、合金への溶損を防止し、優れた性能を維持する。また、化学工業・火力発電・代替エネルギーなどの環境における翼材・バルブ材・ポンプ材等をはじめとする多くの部品に適用することができる。また、酸・アルカリの環境や中性環境、海水等の塩化物等の腐食環境において使用される材料や部品に適用することができる。
本実施形態の金属製品の製造方法は、鉄系金属またはニッケル系金属である母材に対し、窒化処理を行い、クロマイズ処理を行う。
上記窒化処理は、窒化源ガスを含む雰囲気で上記母材を加熱保持する。
上記クロマイズ処理は、金属クロム粉末を含む粉末中に上記窒化処理した母材を存在させて加熱保持する。
上記ハロゲン化処理は、雰囲気を制御できる加熱炉を用い、ハロゲンを含む雰囲気ガス中において上記母材を加熱保持することにより行う。
上記窒化処理は、必要に応じて上記ハロゲン化した母材を、窒化源ガスを含む雰囲気で加熱保持する。
上記窒化処理として軟窒化処理を行った場合は、母材の表層部に窒素濃度と炭素濃度の高い炭窒素拡散層を形成する。その後クロマイズ処理を行うことにより、クロマイズ処理によって拡散浸透するクロム原子と、炭窒素拡散層に存在する窒素原子および炭素原子が結合し、クロム化合物層として炭窒化クロム層が生成する。
上記クロマイズ処理は、金属クロム粉末を含む粉末中に上記窒化した母材を存在させて加熱保持する。上記クロマイズ処理により、上記窒化処理を終えた母材の表面からクロム原子を拡散浸透させる。
これにより、Cr2N層の内側にNおよびCrの傾斜濃度勾配を有する析出層を形成できる。
耐熱ケースに充填した処理剤粉末のなかに窒化処理を終えた母材を埋設し、上記耐熱ケースを雰囲気炉内に入れて反応促進のためのガスを流しながら加熱保持することによって行う。このようにすることにより、上記窒化処理を終えた母材の表面からクロム原子が拡散浸透するよう処理する。
本実施形態の金属製品の製造方法は、上述した母材に窒化処理とクロマイズ処理を行うことにより、上記母材の表面に表面改質層を形成する。
上記表面改質層は、上述したとおり、表面側に存在するクロム化合物層と、上記クロム化合物層と上記母材との間に存在する析出層を含む。上記析出層は、上記母材を構成する母材金属中にクロム化合物が析出して構成される。
上記実施形態の金属製品の製造方法は、つぎの効果を奏する。
したがって、各層の熱膨張係数は、クロム化合物層<析出層<母材と、表面から深部に向かって順次大きくなる。このため、表面のクロム化合物層とクロム濃化層および母材とのあいだで熱膨張係数が大きく乖離する従来技術にくらべ、各層間の熱膨張係数の差が小さくなる。これにより、従来よりも、表面層の繰り返し熱応力への耐性が高く、上記表面層が有する耐熱・耐食および耐摩耗性の特性を維持できる。使用できる環境や用途が従来よりも広がる。
図2(A)はSUS304母材に、下記の条件でフッ化処理、窒化処理およびクロマイズ処理を施して形成された表面改質層の元素分布状況である。
◎フッ化処理
雰囲気:フッ素系ガス(NF3:10vol%+N2:90vol%)
温度:300℃
時間:15分
◎窒化処理
雰囲気:NH3:50vol%+N2:50vol%
温度:570℃
時間:30分
◎クロマイズ処理
処理剤:粉末状のCrないしはFe-Cr合金に焼結防止用のAl2O3を必要量添加し、反応促進用のNH4Clを少量添加した粉末
気流:水素ないしはアルゴン気流
温度:1050℃
時間:10時間
図2(B)はSUS310S母材に、下記の条件でフッ化処理、窒化処理およびクロマイズ処理を施して形成された表面改質層の元素分布状況である。
◎フッ化処理
雰囲気:フッ素系ガス(NF3:10vol%+N2:90vol%)
温度:400℃
時間:60分
◎窒化処理
雰囲気:NH3:H2:N2=30:20:50
温度:590℃
時間:20時間
◎クロマイズ処理
処理剤:金属Cr粒ないしFe-Cr合金粒+焼結防止用Al2O3+反応促進用の少量NH4Cl
気流:水素ないしアルゴン
温度:1050℃
時間:2時間
上記実施例1は、Cr2N層の下に、Cr濃度とN濃度が漸次減少する傾斜組成の層が存在する。この傾斜組成の層が本発明の析出層である。
図3(B)は、上記実施例1の表層部の断面顕微鏡写真である。
比較例1は、表面のCr2N層、高Cr拡散層および母材の界面が明瞭に観察される。
実施例1は、Cr2N層とその下にある析出層および母材の界面が、比較例1に比べると明瞭に観察されない。
図5(B)は、ショットブラストを30秒実施した後の実施例1の外観観察写真である。
比較例1の表面には、例としていくつかの矢印で示した部分に、ショットブラストの衝撃によって生じた剥離が多数発生していた。
実施例1の表面にはそのような剥離や割れ等は発生していなかった。
図6(A)は、比較例1の外観観察写真である。
図6(B)は、実施例1の外観観察写真である。
比較例1の表面には、例としていくつかの矢印で示した部分に剥離が多数発生していたのに加え、丸で囲んだ部分のような割れも発生していた。
実施例1の表面にはそのような剥離や割れ等は発生していなかった。
実施例2として、二相系ステンレス鋼であるSUS329J4Lを母材として、下記の条件でフッ化処理、窒化処理およびクロマイズ処理を施した。
◎フッ化処理
雰囲気:フッ素系ガス(NF3:10vol%+N2:90vol%)
温度:400℃
時間:60分
◎窒化処理
雰囲気:NH3:H2:N2=30:20:50
温度:590℃
時間:20時間
◎クロマイズ処理
処理剤:金属Cr粒ないしFe-Cr合金粒+焼結防止用Al2O3+反応促進用の少量NH4Cl
気流:水素ないしアルゴン
温度:1050℃
時間:5時間
実施例2も、Cr2N層の内側にはN濃度が上昇していて、オーステナイト相が安定化し、σ層の析出は認められない。
実施例2も、Cr2N層の内側に行くにつれて傾斜組成領域が形成されていることが明らかに認められる。
図9は、上記実施例2にショットブラスト試験(ガラスパウダ:0.4MPa×30秒)を実施した後の外観観察写真である。
図10は、上記実施例2に1000℃から常温までの加熱冷却の繰り返しを100回行う試験を実施した後の外観観察写真である。
この場合も、剥離や割れ等は発生していなかった。
Cr2Nの傾斜組成をCr2N層と母材との間に設けることによって、第1図に示したように、Cr2N層と母材の界面の熱膨張係数の違いを吸収し、発生する熱応力を低減させている。
以上のことから、本願の処理により、熱応力および衝撃力による剥離や割れへの耐性が著しく改善されていることが明らかである。
以上は本発明の特に好ましい実施形態について説明したが、本発明は示した実施形態に限定する趣旨ではなく、各種の態様に変形して実施することができ、本発明は各種の変形例を包含する趣旨である。
Claims (4)
- 炭素濃度が0.6重量%以下であるステンレス鋼,耐熱鋼.ニッケル基金属のうちいずれからなる母材と、上記母材の表面に形成された表面改質層とを備え、
上記表面改質層は、
表面側に存在するクロム化合物層と、
上記クロム化合物層と上記母材との間に存在し、上記母材を構成する母材金属中にクロム化合物が析出した析出層とを含んで構成され、
上記クロム化合物層がCr 2 Nからなり、上記Cr 2 Nからなるクロム化合物層の窒素濃度は10原子%以上である
ことを特徴とする金属製品。 - 上記Cr 2 Nからなる上記クロム化合物層の硬度は、MHv1400以上である
請求項1記載の金属製品。 - 上記クロム化合物層、上記析出層、上記母材の熱膨張係数が、表面から深部に向かうほど大きい
請求項1または2記載の金属製品。 - 炭素濃度が0.6重量%以下であるステンレス鋼,耐熱鋼,ニッケル基金属のうちいずれからなる母材に対し、
窒化源ガスを含む雰囲気で上記母材を加熱保持する窒化処理を行うことにより、母材の表層部に窒素濃度が10原子%以上で厚み5μm以上の窒素拡散層を形成し、
金属クロム粉末を含む粉末中に上記窒化処理した母材を存在させ、850~1200℃の温度で加熱保持するクロマイズ処理を行うことにより、
上記母材の表面に、
表面側に存在するクロム化合物層と、
上記クロム化合物層と上記母材との間に存在し、上記母材を構成する母材金属中にクロム化合物が析出した析出層とを含んで構成される
表面改質層を形成する
ことを特徴とする金属製品の製造方法。
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