JP2000178711A - 鉄系材料の表面処理方法およびそれに用いる塩浴炉 - Google Patents

鉄系材料の表面処理方法およびそれに用いる塩浴炉

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JP2000178711A JP10353917A JP35391798A JP2000178711A JP 2000178711 A JP2000178711 A JP 2000178711A JP 10353917 A JP10353917 A JP 10353917A JP 35391798 A JP35391798 A JP 35391798A JP 2000178711 A JP2000178711 A JP 2000178711A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】品質の安定化,塩浴寿命の長期化および処理時
間の大幅短縮ができ、工業的な量産を可能とした鉄系材
料の表面処理方法およびそれに用いる塩浴炉を提供す
る。 【解決手段】鉄系材料に窒化処理を施して表面に鉄窒化
物および鉄炭窒化物の少なくとも一方からなる窒化層を
形成させ、この鉄系材料を下記の処理剤(A)中で、5
00〜700℃の温度に加熱保持することにより、上記
窒化層中にクロムを拡散させてクロム窒化物およびクロ
ム炭窒化物の少なくとも一方の化合物層を形成させるよ
うにした。 (A)下記(a)を主成分とし、下記(b)および
(c)を含有する処理剤。 (a)アルカリ金属の塩化物およびアルカリ土類金属の
塩化物の少なくとも一方。 (b)酸化珪素を主成分とするガラス。 (c)クロム。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉄系材料の耐摩耗
性,耐熱性,耐酸化性,耐疲労性等の機械的性質を向上
させるため、鉄系材料の表面にクロム窒化物もしくはク
ロム炭窒化物の化合物層(以下、単に「クロム炭窒化物
層」という)等の表面硬化層を安定的に形成させる鉄系
材料の表面処理方法およびそれに用いる塩浴炉に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】鉄系材料表面にクロム炭窒化物層を形成
させることにより、耐摩耗性,耐熱性,耐酸化性,耐疲
労性等の機械的性質を向上させることができることは広
く知られている。このようなクロム炭窒化物層を鉄系材
料表面に形成させる方法としては、例えば、めっき拡散
法や、クロマイジング処理法(特公昭42−24967
号公報,米国特許第4242151号)ならびに塩浴法
(特公平3−65435号公報,特公平4−24422
号公報,特公平4−24423号公報,特公平4−47
028号公報,特公平4−47029号公報,特開平2
−159361号公報,特開平3−202460号公
報)等、各種の方法が提案されている。
【0003】上記各方法のうち、例えば、特公平3−6
5435号公報に示される方法は、塩浴等による方法で
あって、鉄合金材料の表面に窒化処理を施して窒化層を
形成させた後、この鉄合金材料と、純クロム,クロム
合金,クロム化合物等のクロム材料と、アルカリ金属
またはアルカリ土類金属の塩化物、弗化物、ホウ弗化
物、酸化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸塩、硝酸塩、硼酸
塩あるいはハロゲン化アンモニウム塩または金属ハロゲ
ン化物からなる処理剤とを共存させて加熱処理し、クロ
ムを拡散させることにより、鉄合金材料の表面にクロム
炭窒化物層を形成するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記方法では、塩浴剤
としてアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物、
弗化物、ホウ弗化物、酸化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸
塩、硝酸塩、硼酸塩等、多くの塩類を列挙し、これらを
単独または混合して使用することにより、クロム炭窒化
物層が形成されるとしている。しかしながら、上記各塩
類のうち、塩化物以外は、塩浴の酸化性に及ぼす影響や
熱力学的な観点を考慮すると、現実的には全く使用に適
さない塩浴剤である。また、これらの塩類は、逆に処理
部品の腐食を引き起こす等のマイナス作用も大きく、ク
ロム炭窒化物層を生成するのはかえって困難である。
【0005】また、上記方法は、クロム材料としても、
フェロクロムやCrCl3 ,CrF6 ,Cr2 3 ,K
2 CrO3 等、クロムの塩化物,弗化物,酸化物等のク
ロム化合物等を列挙している。しかしながら、クロムの
塩化物は、水和物を多く含むため、塩浴中の露点を高め
てしまうという不都合がある。また、弗化物や酸化物で
は、熱力学的な観点からクロム炭窒化物層の生成に必要
な化学平衡が得られないという問題がある。したがっ
て、これらは、クロム炭窒化物層を生成させるための処
理剤としては不適当であり、上記方法には疑問点が多
い。
【0006】さらに、上記方法には、塩浴の粘性を調整
する目的で、Al2 3 やZrO2等の酸化物や、Na
CN等のシアン化物等の添加を行う旨が記載されてい
る。しかしながら、本願発明者らによる実験,研究によ
り、Al2 3 やZrO2 を添加しても塩浴の粘性の調
整には効果が薄いだけでなく、それらを添加すること
は、クロム炭窒化物層の生成をかえって阻害することが
確認されている。また、シアン化物の添加により、溶融
クロムおよび鉄合金材料の窒化や錯塩生成を促進し、ク
ロム炭窒化物層が全く生成しなくなるうえ、生成した錯
塩は爆発的な燃焼を起こしやすく、非常に危険であるこ
とから、これらも使用に適さないことがわかった。
【0007】このように、従来の塩浴法は、塩浴物性に
対する基本的な解明が不充分であり、実験室的には鉄合
金材料表面にクロム炭窒化物層を形成させることができ
たとしても、生成皮膜がばらついたり塩浴寿命が短い
等、品質の安定性や経済性の面で数々の問題を有してい
る。したがって、安定した品質でクロム炭窒化物層を形
成させることができず、現在のところ工業生産を実施す
るに至っていないのが実情である。
【0008】本発明は、このような事情に鑑みなされた
もので、品質の安定化,塩浴寿命の長期化および処理時
間の大幅短縮ができ、工業的な量産を可能とした鉄系材
料の表面処理方法およびそれに用いる塩浴炉の提供をそ
の目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明の鉄系材料の表面処理方法は、鉄系材料に窒
化処理を施して表面に鉄窒化物および鉄炭窒化物の少な
くとも一方からなる窒化層を形成させ、この鉄系材料を
下記の処理剤(A)中で、500〜700℃の温度に加
熱保持することにより、上記窒化層中にクロムを拡散さ
せてクロム窒化物およびクロム炭窒化物の少なくとも一
方の化合物層を形成させることを第1の要旨とする。 (A)下記(a)を主成分とし、下記(b)および
(c)を含有する処理剤。 (a)アルカリ金属の塩化物およびアルカリ土類金属の
塩化物の少なくとも一方。 (b)酸化珪素を主成分とするガラス。 (c)クロム。
【0010】また、本発明の鉄系材料の表面処理方法
は、鉄系材料に窒化処理を施して表面に窒素拡散層から
なる窒化層を形成させ、この鉄系材料を上記処理剤
(A)中で、500〜700℃の温度に加熱保持するこ
とにより、上記窒化層中にクロムを拡散させてクロム濃
化層を形成させることを第2の要旨とする。
【0011】また、上記の目的を達成するため、本発明
の塩浴炉は、溶融塩浴処理を行う塩浴炉であって、処理
剤が投入される処理槽と、処理槽内の処理剤を加熱溶融
させる加熱手段と、処理槽内で溶融した処理剤を攪拌す
る攪拌手段とを備え、上記処理槽の底部に傾斜面を有
し、上記攪拌手段が処理槽底部の傾斜面下方側の底の深
い部分に配設されていることを要旨とする。
【0012】本発明者らは、工業的に安定した高品質の
クロム炭窒化物層等の表面硬化層を生成させるため、一
連の研究を重ねる過程において、塩浴処理によって安定
したクロム炭窒化物層等を生成させるためには、塩浴の
塩基度を適正にコントロールし、塩浴中のクロムイオン
の熱力学的な活性と平衡を維持することが重要であるこ
とに着目した。そして、アルカリ金属の塩化物およびア
ルカリ土類金属の塩化物の少なくとも一方を主成分と
し、かつ、クロムを含有させた塩浴中に、酸化珪素を主
成分とするガラス粉末を含有させることにより、塩浴の
塩基度を適正に保つことができることを突き止め、本発
明に到達した。
【0013】
【発明の実施の形態】つぎに、本発明の実施の形態を詳
しく説明する。
【0014】本発明は、鉄系材料に窒化処理を施して表
面に鉄窒化物および鉄炭窒化物の少なくとも一方からな
る窒化層を形成させ、この鉄系材料を、アルカリ金属の
塩化物およびアルカリ土類金属の塩化物の少なくとも一
方を主成分とし、かつ、酸化珪素を主成分とするガラス
およびクロムを含有させた処理剤中で、500℃以上7
00℃以下の温度に加熱保持することにより、上記窒化
層中にクロムを拡散させてクロム窒化物およびクロム炭
窒化物の少なくとも一方の化合物層を形成させる。
【0015】本発明が対象とする鉄系材料は、特に限定
されるものではなく、各種の材質のものが用いられる。
例えば、ニッケル・クロム鋼,ニッケル・クロム・モリ
ブデン鋼,クロム鋼,クロム・モリブデン鋼等の機械構
造用炭素鋼、マンガン・クロム鋼,クロム・バナジウム
鋼,珪素・マンガン鋼等のばね鋼、高炭素クロム鋼,タ
ングステン・クロム鋼,タングステン・バナジウム鋼等
の工具鋼、タングステン・クロム・バナジウム鋼等の高
速度鋼の他、マンガン鋼,H鋼,窒化鋼,高張力鋼,快
削鋼,ダイス鋼,軸受鋼,耐熱鋼,ボロン鋼等の各種合
金鋼や、各種鋳鉄,鋳鋼等があげられる。また、鋼だけ
でなく、炭素をほとんど含有しない工業用純鉄でもよい
し、この純鉄や炭素鋼等に浸炭処理を行ったものでもよ
い。さらに、溶製鋼に限らず、粉末冶金法によって得ら
れる焼結合金でもよい。これらは、あらかじめ焼き入
れ,焼き戻し、焼きならし、焼きなまし等使用目的に応
じて各種の熱処理を行ってもよい。
【0016】本発明では、まず、上記鉄系材料に窒化処
理を施して表面に鉄窒化物および鉄炭窒化物の少なくと
も一方からなる窒化層を形成させる。窒化処理法として
は、特に限定されるものではなく、各種の方法が行われ
る。例えば、塩浴窒化法,塩浴軟窒化法,ガス窒化法,
ガス軟窒化法,イオン窒化法,浸炭窒化法,酸窒化法,
フッ化とガス軟窒化の複合処理法等各種の方法があげら
れる。これら各窒化処理の条件としては、鉄系材料の表
面に所定厚みの窒化層が形成される条件であれば、採用
する窒化法によっても異なり、特に限定されるものでは
ない。
【0017】上記各窒化処理のなかでも、特に、鉄系材
料をあらかじめフッ素系ガス雰囲気中に加熱保持して表
面にフッ化物膜を生成したのち、窒化雰囲気中で加熱し
て窒化層を形成させる、フッ化とガス軟窒化の複合処理
法が最も好適に行われる。
【0018】上記複合処理法におけるフッ素系ガスとし
ては、NF3 ,BF3 ,CF4 ,F2 ,SF6 ,C2
6 ,WF6 ,CHF3 ,SiF4 等からなるフッ素化合
物ガスがあげられ、単独でもしくは併せて使用される。
また、これら以外に、分子内にFを含む他のフッ素化合
物ガスや、上記フッ素化合物ガスを熱分解装置で熱分解
させて生成させたF2 ガスや、あらかじめつくられたF
2 ガスも用いることができる。このようなフッ素化合物
ガスとF2 ガスとは、場合により混合使用される。そし
て、上記フッ素化合物ガス,F2 ガス等のフッ素系ガス
は、それのみで用いることもできるが、通常は、N2
ス等の不活性ガスで希釈されて使用される。このような
希釈されたガスにおけるフッ素系ガス自身の濃度は、例
えば10000〜100000ppmであり、好ましく
は20000〜70000ppm、より好ましくは30
000〜50000ppmである。このフッ素系ガスと
して最も実用性を備えているのはNF3 である。上記N
3 は、常温でガス状であり、化学的安定性が高く、取
扱いが容易だからである。
【0019】上記濃度のフッ素系ガス雰囲気下に、鉄系
材料を加熱状態で保持し、フッ化処理する。この場合、
加熱温度は、例えば300〜550℃の温度に設定され
る。そして、加熱保持時間は、製品の種類や製品の形状
寸法,加熱温度等に応じて適当な時間を設定すればよ
く、通常は十数分〜数十分に設定される。鉄系材料をこ
のようなフッ素系ガス雰囲気下でフッ化処理することに
より、「N」原子が鉄系材料の表面から内部に浸透しや
すくなる。この理由は、鉄系材料の表面には、FeO,
Fe3 4 ,Cr2 3 等の酸化物皮膜等が形成されて
いるが、この酸化物皮膜等が形成された鉄系材料を上記
のようにフッ化処理すると、上記酸化物皮膜等がフッ素
ガスと反応し、FeF2 ,FeF3 ,CrF2 ,CrF
4 等の化合物を含む薄いフッ化膜に変換して活性化し、
「N」原子の浸透の容易な表面状態になると考えられ
る。したがって、このような「N」原子の浸透の容易な
表面状態となっている鉄系材料を、後述するように、窒
化雰囲気中において加熱保持すると、窒化ガス中の
「N」原子が鉄系材料中に、表面から一定の深さで均一
に拡散し、深く均一な窒化層が形成されると考えられ
る。この過程で、上記フッ化膜は分解除去される。
【0020】上記のように、フッ素処理により「N」原
子の浸透しやすい状態となっている鉄系材料は、つぎに
窒化雰囲気下において加熱状態で保持されガス軟窒化処
理される。この場合、窒化雰囲気をつくる窒化ガスとし
ては、NH3 のみからなる単体ガスが用いられ、またN
3 と炭素源を有するガス(例えばRXガス)との混合
ガス、例えばNH3 とCOとCO2 との混合ガスも用い
られる。両者を混合使用することも行われる。通常は、
上記単体ガス、混合ガスにN2 等の不活性ガスを混合し
て使用される。場合によっては、これらのガスにH2
スをさらに混合して使用することも行われる。窒化処理
時間は、通常は、窒化雰囲気温度350〜650℃、好
適には500〜580℃で、1時間〜数十時間、好適に
は1〜10時間に設定される。
【0021】このフッ化とガス軟窒化の複合処理によれ
ば、鉄系材料表面におけるNの吸着拡散が均一かつ迅速
に行われ、窒化が均一に行われて均一な窒化層が形成さ
れるとともに、ポーラス層の生成が少ないため、耐久性
に優れたクロム炭窒化物層を得ることができるという利
点がある。
【0022】これらの窒化処理法により、鉄系材料の表
面に窒素を拡散させることにより、最表面に鉄窒化物お
よび鉄炭窒化物の少なくとも一方からなる窒素化合物層
が形成され、その下側に窒素拡散層が形成される。本発
明では、これら窒素化合物層ならびに窒素拡散層を総称
して窒化層という。すなわち、図6に、窒化処理後の鉄
系材料の表面層部分の断面硬度分布を示すが、図におい
て、表面の最も硬い層が鉄炭窒化物等からなる窒素化合
物層であり、この窒素化合物層の下側(図では右側)で
徐々に硬度が低下している部分が窒素拡散層である。そ
して、上記各窒化処理によって形成される窒化層の厚み
は、適用する鉄系材料の材質,鋼種によって異なる。す
なわち、普通鋼(S10C〜S55C,SPCC,SM
n,SK1〜SK7,SS材,FC,FCD等)の場合
には、上記窒素化合物層厚さが15〜25μm程度で、
窒素拡散層の厚みが300〜600μmに形成され、表
面硬度はHv400〜700程度になる。また、低合金
鋼(SCM,SNC,SNCM,SCr等)の場合に
は、窒素化合物層厚さが5〜15μm程度で、窒素拡散
層の厚みが100〜300μmに形成され、表面硬度は
Hv600〜900程度になる。また、高合金鋼(SK
D,SKS,SKH等)の場合には、窒素化合物層厚さ
が2〜10μm程度で、窒素拡散層の厚みが50〜10
0μmに形成され、表面硬度はHv800〜1200程
度になる。窒素化合物層の厚みが上記各値よりも薄い場
合には、形成されるクロム炭窒物層の厚みが薄くなり、
上記各値を越えると、窒化処理自体に時間がかかり、処
理コストが高くなるほか、ポーラス層の増加や表面粗さ
の増加を招くため、かえって機械的性質を低下させるお
それがあるからである。
【0023】本発明は、上記窒化処理後の鉄系材料を、
アルカリ金属の塩化物およびアルカリ土類金属の塩化物
の少なくとも一方を主成分とし、かつ、酸化珪素を主成
分とするガラスおよびクロムを含有させた処理剤中で加
熱保持する。
【0024】アルカリ金属の塩化物としては、LiC
l,NaCl,KCl,RbCl,CsClがあげら
れ、アルカリ土類金属の塩化物としては、BeCl2
MgCl2 ,CaCl2 ,SrCl2 ,BaCl2 ,R
aCl2 があげられる。これらは、単独でもしくは併せ
て使用することができる。これらは、主として粉末状も
しくは粒状で使用され、加熱溶融させて塩浴とするのが
処理が行いやすく好適である。これらは、塩浴の構成材
料となる外、塩浴処理の際、鉄系材料の表面にクロムを
拡散させる媒介となるものである。
【0025】上記クロムとしては、工業用金属クロムが
使用される。この金属クロムは、粉末状,粒状,繊維状
等各種の形状で使用することができるが、特に、粉末状
のものは、入手が容易で安価であるとともに、塩浴への
溶解,混入も容易に行えることから、好適に用いられ
る。上記粉末の粒径としては50メッシュ以下が好まし
く、200メッシュ以下であれば、一層好適である。5
0メッシュを越えると、塩浴中への溶解,分散が均一に
行われなくなるため、安定したクロム炭窒化物層等の生
成が困難となるからである。また、粉末状等に限らず、
棒状や板状のクロム材を、陽極として溶融塩浴中に浸漬
させ、電解溶融させるようにしてもよい。上記クロム
は、塩浴中に溶融し、鉄系材料表面の窒化層に拡散する
ことにより、上記窒化層中の鉄と置換され、クロム炭窒
化物層等が形成される。
【0026】処理剤中のクロムの含有量としては、3〜
30重量%が好ましく、15〜20重量%であれば、一
層好ましい。3重量%未満では、クロムと鉄の置換反応
が起こりにくく、クロム炭窒化物層等が形成されにくく
なり、30重量%を越えると、未溶解のクロムが処理槽
内に溜まって効果が頭打ちになるほか、塩浴の流動性が
悪くなることから均一な化合物層の生成が困難となる。
また、処理部品への処理剤の付着が増加するため、持ち
出し量も増えて非常に不経済になるからである。
【0027】上記酸化珪素を主成分とするガラスとして
は、酸化珪素(SiO2 )を主成分とするガラスであれ
ば、各種のものが用いられ、特に限定するものではな
い。例えば、ケイ酸ガラス,ケイ酸アルカリガラス,ソ
ーダ石灰ガラス,カリ石灰ガラス,鉛ガラス,バリウム
ガラス,ホウケイ酸ガラス等の各種ケイ酸塩ガラスや、
工業用の純酸化珪素等があげられる。これらは、単独で
もしくは併せて使用することができる。また、主成分で
ある酸化珪素の含有量としては、80重量%以上が好ま
しく、95重量%以上であれば一層好ましい。80重量
%未満では、他の不純物の混入が多くなり、塩浴の塩基
度を安定化させるという効果が減少するほか、クロムイ
オンの活性化に悪影響を及ぼすことから、クロム炭窒化
物層等が形成されにくくなるからである。これらのなか
でも、塩基度の安定化が顕著に現れるほか、入手しやす
く取扱いも容易である等の理由から、特に、純度99重
量%以上の純酸化珪素が好適に用いられる。
【0028】また、酸化珪素を主成分とするガラスは、
粉末状,粒状,繊維状,液状等で使用することができる
が、特に、粉末状のものは、入手が容易で安価であると
ともに、処理剤への混入も均一に行えるうえ、取り扱い
も容易であることから、好適に用いられる。上記塩浴中
での粉末の粒径としては1000μm以下が好ましく、
50μm以下であれば、一層好適である。1000μm
を越えると、処理剤中に均一分散しにくくなるほか、塊
状の酸化珪素が処理部品に付着し、処理ばらつきの原因
となるからである。
【0029】上記酸化珪素を主成分とするガラスは、ア
ルカリ金属等の塩化物とクロムからなる塩浴に含有させ
ることにより、塩浴の塩基度を安定化させて熱力学的に
クロムイオン活量を維持増進させ、クロム炭窒化物層等
を安定的に生成させることができる。
【0030】上記処理剤中の酸化珪素を主成分とするガ
ラスの含有量としては、1〜40重量%が好ましく、1
0〜20重量%であれば、一層好ましい。1重量%未満
では、酸化珪素を加えることによる塩基度安定化の効果
が充分得られないため、クロム炭窒化物層等の生成が困
難となるからである。また、40重量%を越えると、塩
浴の粘性が高くなりすぎて処理剤の持ち出しが多くなる
ほか、処理ムラや穴詰まり等の原因となるからである。
【0031】上記処理剤には、さらに、金属炭化物,ア
ルカリ金属の炭化物,アルカリ土類金属の炭化物,アル
カリ金属の水素化物,アルカリ土類金属の水素化物,ア
ルカリ金属の水酸化物,アルカリ土類金属の水酸化物,
アルカリ金属の酸化物,アルカリ土類金属の酸化物,シ
リコン粉末,マンガン粉末等の化合物を添加することが
できる。これらは単独でもしくは併せて用いられる。
【0032】上記各化合物のうち、特に、金属炭化物,
アルカリ金属の炭化物,アルカリ土類金属の炭化物,ア
ルカリ金属の水素化物,アルカリ土類金属の水素化物,
アルカリ金属の水酸化物,アルカリ土類金属の水酸化
物,アルカリ金属の酸化物,アルカリ土類金属の酸化物
が好適に用いられる。これらは単独でもしくは併せて用
いられる。これらの化合物を含有させることにより、塩
浴の塩基度をさらに安定化させ、クロム炭窒化物層等の
生成を安定化させるとともにその成長速度を速め、緻密
で良質なクロム炭窒化物層等を経済的に得ることができ
る。
【0033】また、上記各化合物のうち、特に、金属炭
化物,アルカリ金属の炭化物,アルカリ土類金属の炭化
物,アルカリ金属の水素化物,アルカリ土類金属の水素
化物,アルカリ金属の酸化物,アルカリ土類金属の酸化
物,シリコン粉末,マンガン粉末が好適に用いられる。
これらは、単独でもしくは併せて用いられる。これらの
化合物を添加することにより、大気から塩浴中に溶け込
んでくる酸素の濃度を低く保ち、一層長期間にわたって
塩基度を安定化させ、クロム炭窒化物層等の安定した生
成を長期にわたって維持し、塩浴寿命の長期化ができ
る。
【0034】上記金属炭化物としては、例えば、Cr3
2 ,Cr236 ,Cr7 3 ,Fe3 C,TiC,C
3 C,MoC,Mo2 C,W2 C,WC,NbC,T
aC,VC,ZrC,Mn3 C,Mn236 ,Mn7
3 等各種のものがあげられる。これらは、単独でもしく
は併せて使用される。特に有効なのは、TiC,VCで
ある。
【0035】また、アルカリ金属の炭化物としては、L
2 2 ,Na2 2 ,K2 2 ,RbC8 ,Rb
16,CsC8 ,CsC16等があげられ、アルカリ土類
金属の炭化物としては、Be2 C,MgC2 ,Mg2
3 ,CaC2 ,SrC2 ,BaC2 等があげられる。こ
れらは、単独でもしくは併せて使用される。特に有効な
のは、CaC2 である。
【0036】また、アルカリ金属の水素化物としては、
LiH,NaH,KH,RbH,CsHがあげられ、ア
ルカリ土類金属の水素化物としては、BeH2 ,MgH
2 ,CaH2 ,SrH2 ,BaH2 ,RaH2 があげら
れる。これらは、単独でもしくは併せて使用される。特
に有効なのは、CaH2 である。
【0037】また、アルカリ金属の水酸化物としては、
LiOH,NaOH,KOH,RbOH,CsOHがあ
げられ、アルカリ土類金属の水酸化物としては、Be
(OH)2 ,Mg(OH)2 ,Ca(OH)2 ,Sr
(OH)2 ,Ba(OH)2 ,Ra(OH)2 があげら
れる。これらは、単独でもしくは併せて使用される。特
に有効なのは、NaOH,KOH,Ca(OH)2 であ
る。
【0038】また、アルカリ金属の酸化物としては、L
2 O,Na2 O,K2 O等があげられ、アルカリ土類
金属の酸化物としては、MgO,CaO,SrO,Ba
O等があげられる。これらは、単独でもしくは併せて使
用される。特に有効なのは、CaOである。
【0039】上記各化合物のうち、アルカリ金属の炭化
物,アルカリ土類金属の炭化物,アルカリ金属の水酸化
物,アルカリ土類金属の水酸化物,アルカリ金属の酸化
物,アルカリ土類金属の酸化物のうち少なくともひとつ
を、合計で0.01〜10重量%になるように、処理剤
に含有させることが好ましく、0.1〜2.0重量%で
あれば、なお好ましい。0.01重量%未満では、塩浴
の塩基度および酸素濃度を調節する効果が薄くなるた
め、クロム炭窒化物層等の生成が困難となり、10重量
%を越えると、塩浴の粘性が高くなり過ぎて、処理剤の
持ち出しが多くなり、処理むらや穴詰まりを起こしやす
くなるからである。
【0040】また、上記各化合物のうち、金属炭化物,
アルカリ金属の水素化物,アルカリ土類金属の水素化
物,シリコン粉末,マンガン粉末のうち少なくともひと
つを、合計で0.0001〜1重量%になるように、処
理剤に含有させるのが好ましく、0.001〜0.01
重量%であれば、なお好ましい。0.0001重量%未
満では、塩浴の塩基度および酸素濃度を調節する効果が
薄くなるため、クロムのイオン化が阻害され、クロム炭
窒化物層等の生成が困難となり、1重量%を越えると、
添加剤のイオン濃度が高くなり過ぎて自らが窒素と反応
を引き起こす等の弊害が発生し、クロム炭窒化物層等の
生成にとってマイナスとなるからである。
【0041】本発明の表面処理方法は、上記処理剤を使
用し、例えば、図1に示す塩浴炉で処理を行うことがで
きる。この塩浴炉は、炉の外側を覆う炉体1の内部に、
処理剤4が投入される有底四角筒状の処理槽2が配設さ
れている。上記炉体1と処理槽2の間の隙間に、上記処
理槽2を外側から加熱して処理槽2内の処理剤4を加熱
溶融させるヒーター3が設けられている。また、処理槽
2内で溶融した処理剤4を攪拌するインペラー5が処理
槽2内に装入されている。図において、6はインペラー
5の保持装置である。そして、上記処理槽2の底部が一
方に向かって下り傾斜する傾斜面になっており、上記イ
ンペラー5の下端部が、処理槽2底部の傾斜面下方側の
底の深い部分7に位置するように配設されている。上記
処理槽2は、鋳鉄,炭素鋼,フェライト系ステンレス鋼
またはオーステナイト系ステンレス鋼等の材質で構成す
ることが可能であるが、耐蝕性等の観点からは、インコ
ネル(インコネル600),ハステロイ,モネル,イリ
ウム等のニッケル合金で構成することが最も望ましい。
【0042】上記塩浴炉によれば、上記処理槽2の底部
が一方に向かって下り傾斜する傾斜面になっており、上
記インペラー5の下端部が、処理槽2底部の傾斜面下方
側の底の深い部分7に配設されているため、クロム等の
金属粉末を含む処理剤4によって溶融塩浴処理を行う場
合に、上記底の深い部分7に上記金属粉末が集まりやす
くなり、この集まった金属粉末がインペラー5によって
吸い上げられるように攪拌されるため、処理槽2内の処
理剤4の攪拌効率が向上し、塩浴処理が均一化安定化す
るという効果を奏する。また、処理槽2がニッケル合金
で作られている場合は、処理剤4によって侵食されにく
いため、処理槽2の構成材料が、処理剤4中に不純物と
して溶出しにくく、安定した処理が継続できるという利
点がある。
【0043】なお、上記処理槽2は、全体をニッケル合
金で形成してもよいし、内側だけをニッケル合金によっ
てライニングするようにしてもよい。また、処理槽2の
底部は、一方に向かって傾斜する傾斜面に形成したが、
中央付近の1か所が深くなるようなすり鉢状の傾斜にし
てもよいし、四角筒状の処理槽2の角部が最も深くなる
ような傾斜を設けてもよい。いずれにしても、底の深い
部分にインペラー5の下端部が配設されていれば、同様
の作用効果を奏する。なお、図1の塩浴炉では、攪拌手
段としてインペラー5を使用したが、これに限定するも
のではなく、塩浴剤をポンプで吸い上げて攪拌するポン
プ式のものや、攪拌羽根を上下に揺動させて攪拌する揺
動式のものや、ガスを吹き込むことにより攪拌する吹き
込み式のもの等、各種のものが用いられる。特に、吹き
込み式のものにおいて、吹き込むガスが、窒素,アルゴ
ン,ヘリウム等の不活性ガス、水素、塩素および塩化水
素のうちの少なくともひとつである場合は、処理剤4の
中の酸素濃度を低下させ、クロムイオンを活性化させる
ことができる。このことにより、緻密で良質なクロム炭
窒化物層等が形成されるとともに、クロム炭窒化物層等
の生成速度が速くなり、一層経済的な生産性を維持する
ことができるようになる。さらに、ガスが吹き込まれる
ことにより、処理剤4が攪拌されるため、クロム等の比
重が大きく上記底の深い部分7に集まりやすい金属粉末
が均一に分散するとともに、処理剤4の温度分布が均一
になる。その結果、溶融塩浴処理のばらつきが少なくな
るとともに、溶融塩浴処理される鉄系材料の熱処理歪み
や表面粗さ等の機械的精度が向上し、商品価値が向上す
る。また、上記処理槽2は、四角筒状のものを用いた
が、これに限定するものではなく、円筒状や六角筒状等
各種の形状のものを用いることができる。これらの場合
も、同様の作用効果を奏する。
【0044】本発明では、上記塩浴炉を使用して、例え
ば、つぎのようにして鉄系材料の表面処理が行われる。
まず、アルカリ金属等の塩化物と、酸化珪素を主成分と
するガラスおよびクロムを所定の配合割合で混合して処
理剤を調整する。この処理剤には、金属炭化物、アルカ
リ金属等の炭化物,水素化物,水酸化物,酸化物,シリ
コン粉末およびマンガン粉末等の化合物を混合させるこ
とが行われる。
【0045】ついで、上記のようにして調整した処理剤
を、塩浴炉の処理槽2内に投入し、ヒーター3によって
加熱溶融させ、塩浴を建浴する。そして、上記塩浴に、
窒化層を形成させた鉄系材料を浸漬し、所定時間加熱保
持する。このときの、加熱温度としては、500〜70
0℃に設定するのが好ましい。500℃以下では、処理
効率が悪くなって安定したクロム炭窒化物層が形成され
にくくなるほか、処理剤4が溶融しないため、塩浴処理
が行いにくくなるからである。一方、700℃を越える
と、処理層2の侵食が激しくなるほか、鉄系材料が軟化
して強度が低下してしまうからである。処理時間は、処
理温度や形成させるクロム炭窒化物層等の厚み等によっ
ても異なるが、おおむね、1時間〜十数時間程度であ
る。
【0046】このようにして塩浴処理することにより、
あらかじめ窒化処理によって形成された鉄系材料表面の
窒化層内に、処理剤中に溶融したクロムが拡散し、窒化
層内の鉄とクロムとの置換反応が、下記の例示のように
起こる。
【0047】まず、表面に鉄窒化物,鉄炭窒化物の窒素
化合物層が形成された窒化層の場合には、クロムと鉄と
の置換反応により、上記鉄窒化物および鉄炭窒化物が表
面から徐々にクロム窒化物およびクロム炭窒化物に変化
する。処理時間が比較的短いうちは、窒素化合物層の表
面近傍では、クロム窒化物およびクロム炭窒化物の割合
が多く、母材近傍では鉄窒化物および鉄炭窒化物の割合
が多い状態である。そして、処理を続けると、最終的に
は、鉄窒化物および鉄炭窒化物がほとんど存在しないク
ロム窒化物およびクロム炭窒化物だけの化合物層が形成
される。上述のようにして得られた化合物層を、X線回
折に供した結果を図2に示す。このX線回折により、C
r(N,C)およびCr2 (N,C)のピークが明瞭に
認められ、上記化合物層は、クロム炭窒化物であること
がわかる。なお、本発明の処理方法によって形成される
クロム窒化物層とは、鉄窒化物および鉄炭窒化物がほと
んど存在しないクロム窒化物およびクロム炭窒化物だけ
の状態だけでなく、母材近傍に鉄窒化物および鉄炭窒化
物が残存している状態も含むものである。
【0048】また、上記塩浴処理により、窒素化合物層
へのクロムの拡散だけでなく、窒素化合物層の下に存在
する窒素拡散層にまでクロムが拡散する。すなわち、上
記窒素化合物層は、鉄窒化物の場合で説明すると、主と
してFe3 N,Fe4 N等の化合物から構成されてお
り、上記窒素拡散層は、FeとFe4 Nが混在した状態
であると考えられる。そして、上記塩浴処理を行うこと
により、クロムは、窒素化合物層へ拡散するだけでな
く、その下の窒素拡散層へも拡散し、上記FeとFe4
Nが混在した窒素拡散層のFeとクロムとの置換反応が
起こり、上記窒素拡散層がクロムリッチな材質に変質す
る。
【0049】さらに、本発明は、窒素化合物層が形成さ
れず、窒素拡散層だけの窒化層が形成されるような条件
で窒化処理を施したり、あるいは、窒素化合物層と窒素
拡散層とからなる窒化層を形成させたのち、機械加工
(研磨やショットピーニング等)や化学研磨(酸への浸
漬等)等の方法で、表面の窒素化合物層を除去し、窒素
拡散層だけを残した状態にしたものに対しても、表面か
らクロムを拡散させて耐摩耗性,耐酸化性,耐疲労性等
の機械的性質を向上させることができる。この場合は、
上述したようなクロム炭窒化物層は形成されないが、窒
素拡散層のFeとクロムとの置換反応が起こり、クロム
リッチな材質に変質する。図7に、窒素拡散層だけを形
成させたのち、塩浴処理によってクロムを拡散させたサ
ンプルの表層部のEPMA分析結果を示す。図7からあ
きらかなように、窒素濃度の高い窒素拡散層の表面部
に、高濃度でクロムが拡散し、いわばクロムの濃化層が
形成されていることがわかる。そして、クロム炭窒化物
層を形成させたサンプルと、クロム炭窒化物層を形成さ
せず、クロムの濃化層を形成させたサンプルとについ
て、ファレックス摩耗試験に供した結果を図8に示す。
比較品として、タフトライド処理品を使用した。図8か
らあきらかなように、クロム炭窒化物層を形成させず、
クロムの濃化層を形成させたサンプルも、クロム炭窒化
物層を形成させたサンプルと同等の非常に高い耐摩耗性
を得ることができることがわかる。
【0050】このような、クロム炭窒化物層を形成させ
ず、クロムの濃化層を形成させた場合には、衝撃荷重や
曲げ荷重が著しく高くかかる金型や、鉄鋼部品の処理に
効果的であり、耐摩耗性,耐熱性等の機械的性質を向上
させ、かつ、クラック(亀裂)や割れ等の発生を防止す
る対策上で非常に有効な手段となる。また、高い精度が
必要な部品の製作にも効果的であり、窒化処理ののち、
研磨等の方法で高精度に機械加工仕上げを行い、その後
塩浴によってクロムを拡散させることで、高い耐摩耗性
を持つ高精度部品の製作が可能になる。
【0051】そして、本発明によれば、処理剤中に酸化
珪素を主成分とするガラスを含有させていることから、
上記クロム炭窒化物層の形成や窒素拡散層中へのクロム
の拡散が安定する。この理由については、現在のところ
必ずしも明らかではないが、上記酸化珪素がアルカリ金
属等の塩化物の塩浴中において、その一部がxNaOy
SiO2 を形成し、塩浴の塩基度を安定に保つ働きを果
たすとともに、さらに、その一部がイオン解離し、イオ
ン化したクロムの過度の酸化を防止する役割を果たすか
らではないかと考えられる。すなわち、上記酸化珪素を
含有させることにより、塩浴の塩基度の安定化が達成で
きるのであり、酸化珪素は、塩浴法によって安定したク
ロム炭窒化物層等の生成を可能にするうえで欠かせない
添加物の一種である。
【0052】また、塩浴は、時間の経過とともに、大気
中の酸素や水分が溶け込み、塩基度が低下して酸化性が
高まっていくとともに、処理剤中のクロムが酸化されて
消費される。このような塩基度の低下にともなって、表
面処理によって形成されるクロム炭窒化物層等は次第に
薄くなり、さらに酸化性が進むと、全く化合物層等は生
成しなくなり、鉄系材料の表面に肌荒れ状の腐食を引き
起こすことになる。すなわち、良好なクロム炭窒化物層
等を安定して生成させるためには、塩浴の塩基度が高く
維持されるとともに、酸素濃度が低く維持される必要が
ある。したがって、塩浴処理を安定的に行おうとすれ
ば、塩浴の塩基度と酸素濃度とを常に適正な状態に調節
する必要がある。
【0053】そして、処理剤に、金属炭化物,アルカリ
金属の炭化物,アルカリ土類金属の炭化物,アルカリ金
属の水素化物,アルカリ土類金属の水素化物,アルカリ
金属の水酸化物,アルカリ土類金属の水酸化物,アルカ
リ金属の酸化物,アルカリ土類金属の酸化物のうち少な
くともひとつを含有させること、および窒素,アルゴ
ン,ヘリウム等の不活性ガス、水素、塩素および塩化水
素のうちの少なくともひとつのガスを吹き込むことの少
なくとも一方により、塩浴の塩基度がさらに安定化し、
緻密で良質なクロム炭窒化物層等が形成されるととも
に、クロム炭窒化物層等の生成速度が速くなり、一層経
済的な生産性を維持することができるようになる。
【0054】さらに、処理剤に、金属炭化物,アルカリ
金属の炭化物,アルカリ土類金属の炭化物,アルカリ金
属の水素化物,アルカリ土類金属の水素化物,シリコン
粉末,マンガン粉末のうち少なくともひとつを含有させ
ることにより、塩浴中の酸素濃度を低く保つことができ
る。すなわち、酸化物を形成しやすいクロムに対し、大
気から処理剤中に溶け込んでくる酸素濃度を低く保つこ
とができ、一層長期間にわたって塩基度を安定化させ、
クロム炭窒化物層等を長期間にわたって安定して生成さ
せ、塩浴寿命の長期化が図れる。この理由については、
必ずしも明らかにはなっていないが、アルカリ金属,ア
ルカリ土類金属,シリコン,マンガン等の金属が、クロ
ムに比較して酸素との結合力が高いこと等によるものと
推定される。
【0055】なお、本発明において、窒化処理後の鉄系
材料の表面にクロムめっき層を形成させてから塩浴処理
を行う場合には、必ずしも処理剤中に上記クロムを含有
させる必要はない。すなわち、塩浴処理により、クロム
めっき層中のクロムが窒化層中に拡散することにより、
クロム炭窒化物層等が形成されるからである。
【0056】また、上記実施の形態では、処理剤を加熱
溶融させて鉄系材料を浸漬する、いわゆる溶融塩浴処理
の場合について説明したが、本発明は、これに限定され
るものではなく、上記溶融塩浴中に鉄系材料を陰極とし
て浸漬して電解することによるいわゆる溶融塩電解法
や、鉄系材料を粉末状態のままの処理剤中に保持して加
熱することによるいわゆる粉末パック法や、粉末状の処
理剤をバインダーと混合させてペースト状にし、このペ
ーストを鉄系材料の処理部分に塗布してから加熱するい
わゆるペースト法や、粉末状態のままの処理剤を流動層
炉中に充填してガスを吹き込み流動させ、その中に鉄系
材料を加熱保持させることによりいわゆる流動層法等、
各種の方式で行うことができ、これら各方式によっても
上述と同様の作用効果を奏する。
【0057】
【発明の効果】以上のように、本発明は、窒化層を形成
させた鉄系材料を、アルカリ金属の塩化物およびアルカ
リ土類金属の塩化物の少なくとも一方を主成分とし、か
つ、酸化珪素を主成分とするガラスおよびクロムを含有
させた処理剤中で、加熱保持する。これにより、窒化層
中にクロムを拡散させてクロム窒化物もしくはクロム炭
窒化物の化合物層が形成される。このとき、処理剤中に
含有させた酸化珪素の働きにより、塩浴の塩基度が安定
化し、均一で緻密なクロム炭窒化物層等を、従来に比べ
て非常に短時間で形成させることができるうえ、安定し
てクロム炭窒化物層等を生成させることができるように
なり、従来実現しなかった工業化が可能になる。
【0058】つぎに、実施例について説明する。
【0059】(1)窒化層
【実施例1,比較実施例1および比較例1】SKD61
材のテストピースを使用し、下記の条件で本発明の表面
処理を行った。そして、各条件で表面処理されたテスト
ピースのクロム炭窒化物層の厚みを測定した。このとき
の、クロム炭窒化物層の厚みと塩浴処理時間との関係を
図3に示す。なお、図3は、実施例1のb(下記表1参
照)の場合および比較例1(下記表2参照)を示してい
る。 〔窒化処理条件〕 雰囲気 :フッ化+ガス軟窒化複合処理(N
3 :N2 =75:25) 温度×時間 :ガス軟窒化複合処理:570℃×6時
間 窒素化合物層厚み:12〜15μm
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】上記表1,表2および図3から明らかなよ
うに、いずれの処理時間においても、実施例1の方が比
較実施例1および比較例1に比べて厚いクロム炭窒化物
層が形成されていることがわかる。また、6μm程度の
厚さのクロム炭窒化物層を得るのに、比較実施例1で
は、4時間以上を要し、比較例1では、8時間以上を要
していたのに対し、実施例1では約2時間程度の処理時
間ですみ、比較実施例1に比べ、処理時間を2分の1〜
3分の1に、比較例1に比べ、処理時間を3分の1〜4
分の1に短縮することができることがわかる。
【0063】(2)窒素拡散層
【実施例2】SKD61材のテストピースを使用し、フ
ッ化,ガス軟窒化複合処理ののちN2 ガス雰囲気下で拡
散処理を行う窒化処理を下記の条件にして行うことによ
り窒素拡散層を形成し、そののち、実施例1と同様の塩
浴処理条件で塩浴処理を行った。 〔窒化処理条件〕 雰囲気 :フッ化+ガス軟窒化複合処理(NH3 :N2 =25:75) +拡散処理(N2 ) 温度×時間 :ガス軟窒化複合処理:500℃×3時間 拡散処理:500℃×0.75時間 窒素拡散層厚み:50〜60μm
【0064】その結果、上記実施例1のクロム炭窒化物
層と同程度の厚みのクロム濃化層が形成され、同様の効
果が得られた。
【0065】(3)窒素拡散層
【実施例3】SKD61材のテストピースを使用し、上
記実施例1と同様の窒化処理条件で窒化処理を行い、形
成された窒素化合物層をショットピーニングにより削除
し、窒素拡散層を残した状態にした。そののち、実施例
1と同様の塩浴処理条件で塩浴処理を行った。
【0066】その結果、上記実施例1のクロム炭窒化物
層と同程度の厚みのクロム濃化層が形成され、同様の効
果が得られた。
【0067】(4)窒素拡散層
【実施例4】SKD61材のテストピースを使用し、上
記実施例1と同様の窒化処理条件で窒化処理を行い、形
成された窒素化合物層を酸に浸漬することにより削除
し、窒素拡散層を残した状態にした。そののち、実施例
1と同様の塩浴処理条件で塩浴処理を行った。
【0068】その結果、上記実施例1のクロム炭窒化物
層と同程度の厚みのクロム濃化層が形成され、同様の効
果が得られた。
【0069】(5)窒化層+クロムめっき層
【実施例5】SKD61材のテストピースを使用し、上
記実施例1と同様の窒化処理条件で窒化処理を行い、形
成された窒素化合物層の表面に厚みが15μmのクロム
めっき層を形成した。そののち、実施例1と同様の塩浴
処理条件で塩浴処理を行った。
【0070】その結果、上記実施例1のクロム炭窒化物
層と同程度の厚みのクロム炭窒化物層が形成され、同様
の効果が得られた。
【0071】(6)窒化層
【実施例6,比較実施例2および比較例2】SKD61
材のテストピースを使用し、下記の条件で本発明の表面
処理を行った。塩浴処理は、同じ塩浴を繰り返して7回
まで使用し、各チャージで表面処理されたテストピース
のクロム炭窒化物層の厚みを測定した。このときの、塩
浴の累積使用時間と、クロム炭窒化物層の厚みとの関係
を図4に示す。なお、図4は、実施例6のb(下記表3
参照)の場合および比較例2(下記表4参照)を示して
いる。 〔窒化処理条件〕 雰囲気 :フッ化+ガス軟窒化複合処理(N
3 :N2 =75:25) 温度×時間 :ガス軟窒化複合処理:570℃×6時
間 窒素化合物層厚み:12〜14μm
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】上記表3,表4および図4から明らかなよ
うに、比較例2では、3回目の処理以後は、クロム炭窒
化物層厚みが極めて薄くなっていることがわかる。これ
に対し、実施例6では、比較例2に比べて全体的に厚い
クロム炭窒化物層が形成され、しかも、処理を繰り返し
て塩浴の累積使用時間が長くなっても安定してほぼ同じ
厚みのクロム炭窒化物層が形成されていることがわか
る。また、比較実施例2の場合も、処理を繰り返して塩
浴の累積使用時間が長くなっても安定してほぼ同じ厚み
のクロム炭窒化物層が形成されているが、その厚みが実
施例6に比べて薄い。
【0075】(7)窒化層
【実施例7】熱間鍛造金型(荒地型,材質SKD61,
焼き入れ焼き戻し処理済,母材高度HRC47〜50)
を使用し、下記の条件で本発明の表面処理を行った。 〔窒化処理条件〕 雰囲気 :フッ化+ガス軟窒化複合処理(RX
ガス:NH3 =1:1) 温度×時間 :ガス軟窒化複合処理:570℃×6
時間 窒素化合物層厚み:11〜13μm 〔塩浴処理条件〕 処理剤 :実施例1と同様 温度×時間 :570℃×4時間処理後、空冷
【0076】なお、上記処理条件において、塩浴の建浴
は、つぎのようにして行った。すなわち、まず、CaC
2 ,NaCl,SiO2 を所定割合で混合し、図1に
示す塩浴炉に入れて大気中で570℃に加熱溶融させ、
溶融後塩浴を攪拌しながらクロム粉末を添加し、つい
で、アルカリ金属,アルカリ土類金属の炭化物,水酸化
物,水素化物,酸化物およびSi,Mn等の金属粉末を
添加する。つぎに、塩浴の塩基度を鋼箔テスト(厚み
0.01mm×幅30mmの純鉄鋼箔を塩浴中に10分
間浸漬し、その酸化の程度や腐食減量により塩浴の塩基
度を判定する。塩基度が低く、酸化性が高ければ鋼箔の
腐食が大きいが、本発明では、浸漬後も外観上ほとんど
鋼箔に腐食がなく光沢のある状態で処理が行われる。)
によってチェックし、粘性を調整した。
【0077】また、上記熱間鍛造金型を処理するのと同
一チャージに、同じ材質のテストピースを処理し、これ
を調査することにより、8〜10μmの化合物層が形成
され、また、X線回折によって上記化合物層がクロム炭
窒化物〔Cr(N,C),Cr2 (N,C)〕であるこ
とが確認された。
【0078】上記のようにして表面処理を行った熱間鍛
造金型は、2500tonのクランクプレス用金型であ
り、クロム・モリブデン鋼のギヤ類の鍛造に使用した。
その結果、従来、イオン窒化で表面硬化を行った金型で
は、約3000〜3500個鍛造すると寿命となってい
たのに対し、上記実施例7の金型では、約6500〜7
000個まで鍛造することができ、イオン窒化の金型と
比べて約2倍の寿命が得られた。
【0079】(8)窒化層
【実施例8】硬質プラスチック射出成形用スクリュウヘ
ッド(材質SKD61,焼き入れ焼き戻し処理済,母材
高度HRC40〜45)を使用し、下記の条件で本発明
の表面処理を行った。 〔窒化処理条件〕 雰囲気 :ガス軟窒化処理(RXガス:NH3
=1:1) 温度×時間 :570℃×6時間 窒素化合物層厚み:11〜12μm 〔塩浴処理条件〕 処理剤 :実施例1と同様 温度×時間 :570℃×4時間処理後、空冷
【0080】同一チャージに、同じ材質のテストピース
を処理し、これを調査することにより、8〜10μmの
化合物層が形成され、また、X線回折によって上記化合
物層がクロム炭窒化物〔Cr(N,C),Cr2 (N,
C)〕であることが確認された。また、上記クロム炭窒
化物層の断面顕微鏡写真を図5に示す。図5からわかる
とおり、欠陥のない緻密な表面層が形成され、密着性も
良好であることがわかる。
【0081】上記のようにして表面処理を行ったスクリ
ュウヘッドは、ガラス繊維等を含有するプラスチックの
射出成形に用いられ、高耐摩耗性を要求されるものであ
る。その結果、従来、PVD(物理的気相蒸着法)によ
ってTiC,N等の炭窒化物皮膜処理を施したり、ボロ
ン鋼が使用されたりしていたが、上記実施例8のスクリ
ュウヘッドでは、PVD処理品を凌ぐ耐摩耗性と耐剥離
性とを示し、3倍以上の寿命向上が得られた。
【0082】(9)窒化層
【実施例9】アルミダイカスト金型用鋳抜きピン(材質
SKD61)を使用し、下記の条件で本発明の表面処理
を行った。 〔窒化処理条件〕 雰囲気 :フッ化+ガス軟窒化複合処理(RX
ガス:NH3 =1:1) 温度×時間 :ガス軟窒化複合処理:570℃×3
時間 窒素化合物層厚み:10〜15μm 〔塩浴処理条件〕 処理剤 :実施例1と同様 温度×時間 :570℃×4時間処理後、空冷
【0083】同一チャージに、同じ材質のテストピース
を処理し、これをX線回折することによってクロム炭窒
化物〔Cr(N,C),Cr2 (N,C)〕層が形成さ
れていることが確認された。
【0084】上記鋳抜きピンは、高い耐蝕性と耐摩耗性
を要求されるものである。イオン窒化により表面硬化処
理を行っていた従来品では約150ショットで寿命に達
していたが、実施例9の鋳抜きピンは、450ショット
以上の耐久性を発揮し、従来品と比べ、寿命を約3倍以
上に延長することができた。
【0085】(10)窒化層
【実施例10および比較例3】塩浴炉は、図9に示すも
のを使用した。このものは、ガス吹き込み用のパイプ8
を準備し、このパイプ8の先端のガス吹き出し口8a
を、図1に示す塩浴炉の処理槽の底の深い部分7に位置
させた塩浴炉である。なお、この場合は、処理剤4の攪
拌にインペラー5を用いる必要がないため、インペラー
5およびインペラー5の保持装置6を設けなくてもよい
が、図9に示すように設けても差し支えない。また、表
面処理する鉄系材料は、SKD61材のテストピースを
使用し、下記の条件で本発明の表面処理を行い、同じ組
成の塩浴処理剤へのガス吹き込みの有無が品質に及ぼす
影響について調査を行った。このときの、クロム炭窒化
物層の厚みと表面硬度の測定結果を図10に、表面粗さ
の測定結果を下記表5に示す。 〔窒化処理条件〕 雰囲気 :フッ化+ガス軟窒化複合処理(N
3 :N2 =75:25) 温度×時間 :ガス軟窒化複合処理:570℃×3時
間 窒素化合物層厚み:10〜13μm 〔塩浴処理条件;実施例10〕 処理剤 :実施例1と同様 吹き込みガス:窒素ガス(3リットル/分)+水素ガス
(1リットル/分) 温度×時間 :570℃×6時間 〔塩浴処理条件;比較例3〕 処理剤 :実施例1と同様 温度×時間 :570℃×6時間
【0086】
【表5】
【0087】図10から明らかなように、表面硬度は、
実施例10では測定加重が増加しても殆ど低下しない
が、比較例3では大きく低下する。このことは、両者の
クロム炭窒化物層の緻密さの違いを現しているものであ
り、実施例10の方がよりクロムリッチな構成となって
いると判断できる。また、上記表5から明らかなよう
に、表面粗さは、実施例10の方が小さい。このこと
は、ガス吹き込みが酸化を抑制したことを現している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の塩浴炉を示す断面図である。
【図2】本発明の表面処理方法によって処理した鉄系材
料のX線回折結果である。
【図3】処理時間とクロム炭窒化物層厚みとの関係を示
すグラフ図である。
【図4】塩浴の累積使用時間とクロム炭窒化物層厚みと
の関係を示すグラフ図である。
【図5】クロム炭窒化物層を示す断面顕微鏡写真であ
る。
【図6】窒化層を形成させた鉄系材料の表層部の断面硬
度分布を示すグラフ図である。
【図7】窒素拡散層を形成させたサンプルに塩浴処理を
行ったもののEPMA分析結果を示す線図である。
【図8】摩耗試験結果を示すグラフ図である。
【図9】本発明の他の塩浴炉を示す断面図である。
【図10】塩浴処理剤へのガス吹き込みの有無がクロム
炭窒化物層の厚みと表面硬度に及ぼす影響を示すグラフ
図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C23C 8/50 C23C 8/50 10/24 10/24

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉄系材料に窒化処理を施して表面に鉄窒
    化物および鉄炭窒化物の少なくとも一方からなる窒化層
    を形成させ、この鉄系材料を下記の処理剤(A)中で、
    500〜700℃の温度に加熱保持することにより、上
    記窒化層中にクロムを拡散させてクロム窒化物およびク
    ロム炭窒化物の少なくとも一方の化合物層を形成させる
    ことを特徴とする鉄系材料の表面処理方法。 (A)下記(a)を主成分とし、下記(b)および
    (c)を含有する処理剤。 (a)アルカリ金属の塩化物およびアルカリ土類金属の
    塩化物の少なくとも一方。 (b)酸化珪素を主成分とするガラス。 (c)クロム。
  2. 【請求項2】 鉄系材料に窒化処理を施して表面に窒素
    拡散層からなる窒化層を形成させ、この鉄系材料を上記
    処理剤(A)中で、500〜700℃の温度に加熱保持
    することにより、上記窒化層中にクロムを拡散させてク
    ロム濃化層を形成させることを特徴とする鉄系材料の表
    面処理方法。
  3. 【請求項3】 鉄系材料に窒化処理を施して表面に鉄窒
    化物および鉄炭窒化物の少なくとも一方からなる窒化層
    を形成させ、この窒化層の表面にクロムめっき層を形成
    させ、この鉄系材料を上記処理剤(A)中で、500〜
    700℃の温度に加熱保持することにより、上記窒化層
    中にクロムを拡散させてクロム窒化物およびクロム炭窒
    化物の少なくとも一方の化合物層を形成させる請求項1
    記載の鉄系材料の表面処理方法。
  4. 【請求項4】 上記処理剤(A)中の(b)の酸化珪素
    を主成分とするガラスの含有量が、1〜40重量%であ
    る請求項1〜3のいずれか一項に記載の鉄系材料の表面
    処理方法。
  5. 【請求項5】 上記処理剤(A)に、さらに下記の化合
    物(B)を含有させた請求項1〜4のいずれか一項に記
    載の鉄系材料の表面処理方法。(B)金属炭化物,アル
    カリ金属の炭化物,アルカリ土類金属の炭化物,アルカ
    リ金属の水素化物,アルカリ土類金属の水素化物,アル
    カリ金属の水酸化物,アルカリ土類金属の水酸化物,ア
    ルカリ金属の酸化物,アルカリ土類金属の酸化物および
    シリコン粉末からなる群から選ばれる少なくともひと
    つ。
  6. 【請求項6】 上記化合物(B)が、金属炭化物,アル
    カリ金属の炭化物,アルカリ土類金属の炭化物,アルカ
    リ金属の水素化物,アルカリ土類金属の水素化物,アル
    カリ金属の水酸化物,アルカリ土類金属の水酸化物,ア
    ルカリ金属の酸化物およびアルカリ土類金属の酸化物か
    らなる群から選ばれる少なくともひとつである請求項5
    記載の鉄系材料の表面処理方法。
  7. 【請求項7】 上記化合物(B)が、金属炭化物,アル
    カリ金属の炭化物,アルカリ土類金属の炭化物,アルカ
    リ金属の水素化物,アルカリ土類金属の水素化物,アル
    カリ金属の酸化物,アルカリ土類金属の酸化物およびシ
    リコン粉末からなる群から選ばれる少なくともひとつで
    ある請求項5記載の鉄系材料の表面処理方法。
  8. 【請求項8】 上記化合物(B)のうち、アルカリ金属
    の炭化物,アルカリ土類金属の炭化物,アルカリ金属の
    水酸化物,アルカリ土類金属の水酸化物,アルカリ金属
    の酸化物およびアルカリ土類金属の酸化物のうちの少な
    くともひとつが、合計で0.01〜10重量%になるよ
    うに含有されている請求項5記載の鉄系材料の表面処理
    方法。
  9. 【請求項9】 上記化合物(B)のうち、金属炭化物,
    アルカリ金属の水素化物,アルカリ土類金属の水素化物
    およびシリコン粉末のうちの少なくともひとつが、合計
    で0.0001〜1重量%になるように含有されている
    請求項5記載の鉄系材料の表面処理方法。
  10. 【請求項10】 上記処理剤(A)中での鉄系材料の加
    熱保持が、溶融塩浴処理である請求項1〜9のいずれか
    一項に記載の鉄系材料の表面処理方法。
  11. 【請求項11】 窒化処理が、鉄系材料をあらかじめフ
    ッ素系ガス雰囲気中に加熱保持して表面にフッ化物膜を
    生成したのち、窒化雰囲気中で加熱保持して窒化層を形
    成するようにしたものである請求項1〜10のいずれか
    一項に記載の鉄系材料の表面処理方法。
  12. 【請求項12】 溶融塩浴処理を行う塩浴炉であって、
    処理剤が投入される処理槽と、処理槽内の処理剤を加熱
    溶融させる加熱手段と、処理槽内で溶融した処理剤を攪
    拌する攪拌手段とを備え、上記処理槽の底部に傾斜面を
    有し、上記攪拌手段が処理槽底部の傾斜面下方側の底の
    深い部分に配設されていることを特徴とする塩浴炉。
  13. 【請求項13】 攪拌手段がガスを吹き込むことにより
    攪拌するものである請求項12記載の塩浴炉。
  14. 【請求項14】 吹き込むガスが窒素,アルゴン,ヘリ
    ウム等の不活性ガス、水素、塩素および塩化水素のうち
    の少なくともひとつである請求項13記載の塩浴炉。
  15. 【請求項15】 処理槽の内面がニッケル合金で形成さ
    れている請求項12記載の塩浴炉。
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