JP2616814B2 - 鉄合金材料の表面処理方法および処理剤 - Google Patents

鉄合金材料の表面処理方法および処理剤

Info

Publication number
JP2616814B2
JP2616814B2 JP31317588A JP31317588A JP2616814B2 JP 2616814 B2 JP2616814 B2 JP 2616814B2 JP 31317588 A JP31317588 A JP 31317588A JP 31317588 A JP31317588 A JP 31317588A JP 2616814 B2 JP2616814 B2 JP 2616814B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
diffusion
treatment
group
treated
surface layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP31317588A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH02159361A (ja
Inventor
透 新井
浩紀 藤田
義彦 杉本
佐藤  明
幸夫 太田
重雄 守山
和之 中西
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Toyota Central R&D Labs Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Central R&D Labs Inc filed Critical Toyota Central R&D Labs Inc
Priority to JP31317588A priority Critical patent/JP2616814B2/ja
Publication of JPH02159361A publication Critical patent/JPH02159361A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2616814B2 publication Critical patent/JP2616814B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Solid-Phase Diffusion Into Metallic Material Surfaces (AREA)
  • Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、金型、治工具類及び機械部品などの鉄合金
材料の表面に、周期律表の第V a族元素の窒化物層ある
いは炭窒化物層を形成せしめる表面処理方法およびそれ
に用いる処理剤に関するものである。
〔従来の技術およびその問題点〕
鉄合金材料の表面に第V a族元素の炭化物、窒化物ま
たは炭窒化物から成る表面処理層を被覆すると、鉄合金
材料の耐摩耗性、耐焼付性、耐酸化性、耐食性などの諸
性質が改善されることはよく知られている。
この表面層を被覆する方法について、近年多くの提案
がなされている。例えば、第V a族元素のハロゲン化物
などを利用してプラズマCVD(化学的気相蒸着法)など
により鉄合金材料表面に第V a族元素の炭窒化物から成
る表面層を形成しようとする方法が提案されている(例
えば、特開昭55−65357号、特開昭55−154563号)。し
かしながら、これらの方法では鉄のAc1変態点である約7
00℃以下の温度域で処理するため、鉄合金材料の母材に
熱による歪みを与えることなく表面層を形成することが
できるものの、形成された表面層のつきまわり性や密着
性が良好なものを得ることは難しい。また、処理工程が
複雑で、装置が安価である。さらに、水素中あるいは減
圧中で実施しなければならないので能率も悪いという問
題があった。
これら従来の技術の問題点を解決する方法として、本
出願人は先に鉄合金材料の表面に窒化処理を施し、その
後580℃以下の温度において周期周期律表の第V a族元素
とアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物、弗化
物、ホウ弗化物、酸化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸塩、
硝酸塩、硼酸塩のうちの1種または2種以上とからなる
処理剤を共存せしめて加熱処理を施すことにより、鉄合
金材料表面に第V a族元素の窒化物または炭窒化物から
なる表面層を形成する鉄合金材料の表面処理方法(特開
昭62−40362)を提案した。これにより、580℃以下の低
温度での熱拡散処理により、密着性に優れかつ緻密な窒
化物または炭窒化物からなる表面層を形成することに成
功した。しかしながら、この方法では、第V a族元素の
拡散量が十分でなく、また処理剤の寿命がやや短いとい
う問題があった。
そこで、本発明者らは、上述の如き従来技術の問題点
を解決すべく鋭意研究し、各種の系統的実験を重ねた結
果、本発明を成すに至ったものである。
〔発明の目的〕 本発明の目的は、鉄合金材料からなる被処理材料の表
面に、第V a族元素の拡散量の多い窒化物或いは炭窒化
物から成り、かる母材との密着性に優れた表面層を、低
温での加熱処理により、また母材に歪みを発生させるこ
となく、容易かつ効率よく形成する方法を提供しようと
するものである。
本発明の他の目的は、寿命が長くかつ安定した鉄合金
材料の表面処理処理剤を提供するにある。
〔第1発明の説明〕 発明の構成 本第1発明の鉄合金材料の表面処理方法(特許請求の
範囲第(1)項記載の発明)は、鉄合金材料からなる被
処理材料の表面に、窒化処理を施して鉄−窒素または鉄
−炭素−窒素からなる窒化層を形成する窒化処理工程
と、周期律表の第V a族元素を含む材料からなる拡散主
剤と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物、
弗化物、ホウ弗化物、酸化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸
塩、硝酸塩、硼酸塩のうちの1種または2種以上から成
る拡散助剤と、硼素を含む炭化物、窒化物、酸化物およ
び合金のうち1種または2種以上からなる拡散促進剤と
からなる処理剤を用意する工程と、該処理剤中に前記窒
化処理した被処理材料を浸漬し、580℃以下の温度雰囲
気において該被処理材料を加熱拡散処理して第V a族元
素を該被処理材料表面に拡散させることにより、被処理
材料表面に第V a族元素の窒化物あるいは炭窒化物か成
る表面層を形成せしめる拡散処理工程とからなることを
特徴とするものである。
発明の作用 本第1発明において、第V a族元素の窒化物あるいは
炭窒化物から成る表面層の形成機構は明確ではないが、
本発明者らがX線マイクロアラナイザー分析や処理時間
と表面層厚さとの関係などから判断すると、以下のよう
であると考えられる。なお、以下の説明は第V a族元素
の炭窒化物層を形成する機構について代表的に説明した
(以下の説明中のm,n,o,pはそれぞれ数字を表す)。
まず、被処理材料である鉄合金材料に窒化処理を施す
ことにより、外部から供給される窒素(N)が鉄合金材
料の表面部の鉄(Fe)及び炭素(C)と反応してFe
m(C,N)の形で窒化物層が形成される。また、この窒
化物層の直下には、窒素の固溶体(Fe−Nの形)も形成
される。
その後、拡散主剤と拡散助剤と拡散促進剤とからなる
処理剤を用意し、該処理剤と鉄合金材料からなる被処理
材料との共存下で該被処理材料に拡散処理を施すことに
より、前記窒化物層に前記処理剤中の第V a族元素(以
下、Mと表示する)が十分に拡散する。この拡散は、Fe
m(C,N)のFeとMとが置換する反応であり、窒化物層
は(M,Fe)(C,N)に変化する。そして、Fem(C,
N)層がすべて(M,Fe)(C,N)に変化すると、そ
れ以上(M,Fe)(C,N)層の成長はない。なお、
(M,Fe)(C,N)層においては表面ほどMが多く,
母材に近いほどFeが多い傾向にある。従って、条件によ
っては表面部のFe量は著しく小さく、M0(C,N)と表
示するのが妥当な場合もある。
この場合、前記表面層中に第V a族元素(M)が十分
に拡散するのは、以下の理由によると考えられる。すな
わち、大気中で表面処理をした場合、大気中の酸素が溶
融状態の拡散剤に浸入し、上記Mと反応して、炭窒化物
層中へMの拡散を妨害する恐れがある。本発明の方法で
は、処理剤中の拡散促進剤である硼素の化合物が還元作
用、あるいは酸素の吸収などによってMと酸素との反応
を抑制し、Mの炭窒化物層中への拡散が促進されるた
め、第V a族元素が前記表面層中へ十分拡散すると考え
られる。
また、形成される表面層の厚さは最初の窒化処理によ
り形成される窒化物層の厚さとほぼ同じになる。そのた
め、窒化処理の条件によって表面層の最大層厚さを規定
することができる。また、すべてのFem(C,N)層が
(M,Fe)(C,N)に変化するまでの間は、表面側に
(M,Fe)(C,N)層,母材側にFem(C,N)層の存
在する二層から成る表面層が存在している。そして、こ
の表面層の厚さは最初のFem(C,N)層の厚さにほぼ等
しい。
また、第V a族元素の窒化物から成る表面層を形成す
る場合についても、表面層形成機構はこの第V a族元素
の炭窒化物から成る表面層を形成する場合と同様であ
る。
発明の効果 本第1発明によれば、鉄合金材料からなる被処理材料
の表面に鉄・窒素あるいは鉄・炭素・窒素の窒化物層を
形成後、前記特殊組成の処理剤を用い、580℃という低
温において第V a族元素の拡散処理を行うので、該被処
理材料に第V a族元素が多量に拡散した窒化物あるいは
炭窒化物から成る優れた表面層を形成することができ
る。
また、低温で鉄合金材料を加熱するため、材料の母材
に歪みが発生しにくい。さらに、低温処理により操作性
が良好であり、多大のエネルギーを必要としない。
また、本第1発明による層は、拡散によって形成され
るため、低温で処理するにもかかわらず、拡散反応のな
いPVDによる炭化物層、窒化物層の場合と異なる母材と
の密着性に優れ、緻密な表面層を形成することができ
る。また、形成された層の厚さは、実用上十分なもので
ある。
また、本第1発明の第V a族元素の窒化物または炭窒
化物から成る表面層を形成する方法では、窒化処理を行
わないで第V a族元素の炭窒化物層を形成する方法に比
べて非常に短時間にしかも多量の第V a族元素を拡散し
た表面層を形成することができる。
〔第2発明の説明〕 発明の構成 本第2発明の鉄合金材料の表面処理用処理剤(特許請
求の範囲第(3)項記載の発明)は、周期律表の第V a
族元素を含む材料からなる拡散主剤と、アルカリ金属ま
たはアルカリ土類金属の塩化物、弗化物、ホウ弗化物、
酸化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸塩、硝酸塩、硼酸塩の
うちの1種または2種以上から成る拡散助剤と、硼素を
含む炭化物、窒化物、酸化物および合金のうち1種また
は2種以上からなる拡散促進剤とからなるものである。
発明の効果 本第2発明の鉄合金材料の表面処理用処理剤は、寿命
が長くかつ安定した処理剤である。
〔その他の発明の説明〕
前記第1発明および第2発明のその他の発明のつい
て、以下に述べる。
本第1発明の鉄合金材料の表面処理方法は、先ず、鉄
合金材料からなる被処理材料の表面に、窒化処理を施し
て該被処理材料の表面に窒素(N)を拡散させ、鉄−窒
素または鉄−炭素−窒素からなる窒化物層を形成する
(窒化処理工程)。
被処理材料は、鉄合金材料からなり、第V a族元素の
窒化物層あるいは炭窒化物層を表面に形成する被処理材
である。該鉄合金材料としては、炭素を含むもの、例え
ば、炭素鋼、合金鋼、鋳鉄、焼結合金等でもよく、また
純鉄のような炭素を極くわずかしか含まないものでもよ
い。さらに、鉄合金材料中の炭素含有量が多ければ、そ
れだけ形成される第V a族元素の炭窒化物層中の炭素量
も増える。そのため形成される表面層の炭素量を増やす
目的で、窒化処理に先立って、浸炭処理等により表面部
の炭素含有量を増加させてもよく、窒化処理中に浸炭さ
せてもよい。なお、工業用純鉄を被処理剤とする場合に
は、母材中に含有される極く微量の炭素が第V a族元素
の炭窒化物層に入る。
窒化処理の方法は、ガス窒化、ガス軟窒化、塩浴軟窒
化、グロー放電窒化など如何なる方法でもよい。
この窒化処理により被処理材料の表面に形成した窒化
物層は、鉄と窒素とが反応した鉄の窒化物あるいは鉄と
窒素と母材中の炭素とが反応した鉄の炭窒化物から成
る。なお、該窒化物層の直下には窒素の鉄への固溶体層
(拡散層)が形成されている。そして、この鉄合金材料
を第V a族元素を含む処理剤と共に加熱処理することに
より窒化物層に第V a族元素が拡散し、第V a族元素と上
記窒化物層中の鉄との置換反応が起こる。この際、窒化
物層が鉄の炭窒化物層の場合には第V a族元素の炭窒化
物から成る表面層が形成され、また窒化物層が鉄の窒化
物層の場合には第V a族元素の窒化物から成る表面層が
形成される。該窒化処理した鉄合金材料に形成させ得る
表面層の最大厚さは、窒化物層の層厚さと同じであり、
従って表面層の厚さは窒化処理によって規定される。
この窒化物層の窒化濃度は高い方が望ましく、また窒
化物層厚さは深い方が望ましいが、最も望ましいのは窒
化物層厚さが3〜15μmの範囲である。窒化物層厚さが
浅すぎると形成される第V a族元素の窒化物層あるいは
炭窒化物層の厚さが薄くなり、一方深すぎると鉄合金材
料の靭性が低下するおそれがある。
次いで、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化
物、弗化物、ホウ弗化物、酸化物、臭化物、ヨウ化物、
炭酸塩、硝酸塩、硼酸塩のうちの1種または2種以上か
ら成る拡散助剤と、硼素を含む炭化物、窒化物、酸化物
および合金のうち1種または2種以上からなる拡散促進
剤と、周期律表の第V a族元素を含む材料とからなる処
理剤を用意する。
第V a族元素を含む材料からなる拡散主剤は、鉄合金
材料の表面に拡散される第V a族元素を供給するもので
あり、該元素〔バナジウム(V),ニオブ(Nb)、タン
タル(Ta)〕を含む金属あるいは該元素を含む化合物等
を用いる。
この第V a族元素を含む金属としては、第V a族元素の
金属やフェロバナジウム等の合金が挙げられる。また、
前記元素を含む化合物としては、VCl3,NbCl5,K2NbF7,Nb
F5,VF5,K2TaF7,V2O5,NaVO3,Nb2O5,Ta2O5等の塩化物、弗
化物、酸化物等が挙げられる。これら第V a族元素を含
む材料は、これらのうち1種または2種以上を用いる
が、合金を用いるのが最も実用的である。
拡散助剤は、第V a族元素が鉄合金材料の表面に拡散
する媒介となる働きをする物質である。該拡散助剤とし
ては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物、
弗化物、ホウ弗化物、酸化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸
塩、硝酸塩、硼酸塩のうちの1種または2種以上から成
るアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物、から
成るものであり、加熱処理方法によって適宜選択して使
用する。
例えば、前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の
化合物としては、NaCl,CaCl2,LiCl,NaF,KF,LiF,KBF4,Na
2CO3,LiCO3,KCO3,NaNO3,Na2O等が挙げられ、これらのう
ちの1種または2種以上を使用する。なお、TiやCrを含
む化合物を使用する場合には、第V a族元素(V,Nb,Ta)
と同時にTi,Crが含まれた表面層が形成される可能性が
ある。
拡散促進剤は、鉄合金材料からなる被処理材料の表面
の前記窒化物層に前記処理剤中の第V a族元素が拡散す
るのを促進する物質である。この拡散促進剤は、硼素
(B)を含む炭化物、窒化物、酸化物および合金のうち
の1種または2種以上である。具体的には、炭化硼素
(B4C)、窒化硼素(BN)、フェロボロン(Fe−B)、
硼化ニッケル(NiB)、硼化クロム(CrB2)、硼化ジル
コニウム(ZrB)、硼化アルミニウム(AlB2)、硼酸ア
ンモニウム(NH42O・5B2O3、硼酸ナトリウム(Na2B4O
7)、硼酸(B2O3)などが挙げられる。これらのうちの
1種または2種以上使用する。
拡散助剤としてVCl3,NbCl3等の第V a族元素のハロゲ
ン化物を使用する場合、前記第V a族元素を含む材料と
して兼用することもできる。
また、該処理剤には、前記材料以外にさらに添加剤を
加えることができる。例えば、処理剤中に加熱処理中に
固化しやすいような物質がある場合には、アルミナ(Al
2O3)等の不活性粉末を添加することができる。さら
に、第V a族元素を含む材料からなる拡散主剤と拡散助
剤または拡散促進剤の組合わせが表面層形成効果の乏し
い場合には、従来活性剤として公知のハロゲン化剤をさ
らに添加し、表面層形成効果を高めることができる。こ
れらの添加物の添加量は、目的に応じて任意に選択する
ことができる。
次いで、前記処理剤中に前記窒化処理した被処理材料
を浸漬し、580℃以下所定の温度雰囲気において該被処
理材料を加熱拡散処理して第V a族元素を該被処理材料
表面に拡散せしめることにより、被処理材料表面に第V
a族元素の窒化物あるいは炭窒化物から成る表面層を形
成せしめる(拡散処理工程)。
この拡散処理方法としては、溶融塩浸漬法、溶融塩電
解法が挙げられる。
溶融塩浸漬法は、前記処理剤中の拡散助剤を溶融して
溶融浴を形成し、該溶融浴に第V a族元素を含む材料か
らなる拡散主剤と、硼素(B)を含む炭化物、窒化物、
酸化物および合金のうちの1種または2種以上からなる
拡散促進剤を共存させて処理剤となし、該処理剤中に被
処理材料を浸漬することにより行うものである。この方
法で拡散処理を行う場合、拡散助剤としては、アルカリ
金属またはアルカリ土類金属の塩化物、弗化物、ホウ弗
化物、炭酸塩、硝酸塩、酸化物、硼素塩の1種または2
種以上、を使用する。なお、溶融状態を良好にするた
め、NaClとCaCl2との組合わせのように2種類以上の上
記化合物を使用するのが望ましい。さらに、溶融浴の粘
性を調節するなどの目的のためにAl2O3,ZrO2等の酸化物
やNaCN等のシアン化合物等を添加してもよい。
前記拡散助剤からなる溶融浴に第V a族元素を含む材
料からなる拡散主剤を共存させるのは、溶融浴中に第V
a族元素を溶入させるためである。第V a族元素を含む材
料を溶入させる手段としては、該材料を粉末状(好まし
くは200メッシュ以下)または薄板状で溶融浴に添加す
る方法あるいは棒状または板状の該材料を陽極として溶
融浴中に浸漬して電解し、第V a族元素を溶融浴中に陽
極溶解させる方法等がある。この陽極溶解により第V a
族元素を溶入する場合には、第V a族元素が迅速に溶入
して作業能率を向上させることができ、しかも未溶解の
第V a族元素を含む材料が浴底に堆積することはないと
いう点で有利である。なお、この場合の陰極としては溶
融浴の容器または他に挿入した導電性物質を使用する。
陽極溶解するときの陽極電流密度は、これを大きくすれ
ば溶入速度は大きくなるが、電解しなくても溶入するこ
とから考えても、比較的低い電流密度で充分である。実
用上は、0.1〜0.8A/cm2が適当である。
浴中に溶入した第V a族元素は、被処理材料の前記窒
化処理工程において形成された窒化物層表面に拡散して
第V a族元素の窒化物層あるいは炭窒化物層を形成す
る。
溶融浴の容器としては黒鉛や鋼などが用いられるが、
実用上は鋼で充分である。
溶融塩電解法は、拡散助剤と拡散促進剤を溶融せしめ
た浴に第V a族元素を含む材料からなる拡散主剤を共存
させて第V a族元素を溶入せしめた状態で、該溶融浴に
被処理材料を陰極として浸漬し、電解処理を行うもので
ある。なお、この場合、陽極として浴の容器または別に
挿入した導電性物質を用いる。
拡散助剤としては、前記溶融塩浸漬法と同様なものを
使用し、該拡散助剤を溶融した浴に第V a族元素を含む
材料からなる拡散主剤および硼素を含む拡散促進剤を共
存させて第V a族元素を溶入する手段も前記溶融浴塩浸
漬法と同様な方法でよい。また、処理剤の溶融浴に第V
a族元素を含む材料を陽極、被処理材料を陰極として浸
漬し電解処理を行うこともできる。この場合、第V a族
元素の陽極溶解と表面層の形成とを同時に行うことがで
きるというメリットがある。
被処理材料を浸漬して電解処理を行う場合、処理条件
としては、陰極電流密度は2A/cm2以下、実用的には0.05
A/cm2〜0.8A/cm2が適当である。
なお、前記溶融塩浸漬法、溶融塩電解法とも大気雰囲
気あるいは保護ガス(N2,Ar等)中いずれにても処理が
可能である。
処理剤の配合割合は、全処理剤に対して、第V a族元
素を含む材料からなる拡散主剤の配合割合が0.5〜20重
量%(以下、重量%を%とする)、拡散促進剤が0.5〜1
5%含まれる範囲が好ましい。この範囲外の場合、第V a
族元素の窒化物あるいは炭窒化物から成る表面層を連続
的に形成することが困難になり、また、この範囲の中心
に近づくと、連続的な表面層形成が容易になる傾向にあ
る。また、特に前記拡散促進剤の配合量が前記範囲内の
場合には、鉄合金材料からなる被処理材料の表面への第
V a族元素の拡散量が十分に多い窒化物或いは炭窒化物
から成る表面層を形成することができるからである。
拡散処理の加熱温度条件は、580℃以下である。これ
は、該加熱温度を580℃以下の温度域とすることによ
り、被処理材料の母材が歪を受けにくくなるからであ
る。その下限温度としては、450℃とするのが好まし
い。これは、該加熱処理を450℃より低い温度条件下で
行った場合、第V a族元素の窒化物あるいは炭窒化物か
ら成る表面層の形成速度が非常に遅いからである。実用
上は、ダイス鋼の高温焼戻し温度、構造用鋼の焼戻し温
度程度の500〜580℃の温度範囲が望ましい。
拡散処理の加熱時間は長くなると、表面層中の第V a
族元素の含有量が増加する。このため、加熱処理時間は
第V a族元素の含有量により定まるが、概ね1〜50時間
の範囲で選ばれる。
形成する表面層の厚さは3〜15μm程度が実用的であ
る。
〔実施例〕
以下、本発明の実施例を説明する。
実施例1 直径6mm、長さ30mmのJIS、SKH51丸棒試片を580℃の塩
浴中に2時間浸漬して塩浴窒化処理を施した。
次に、CaCl2 52モル%とNaCl148モル%の混合物の入
った耐熱鋼容器を大気中の電気炉にて加熱して570℃の
溶融塩浴を形成し、さらに、該浴中にフェロバナジウム
粉末(Fe−V:JIS1号、100メッシュ以下)を前記溶融塩
浴に対して20重量%(以下、単に%とする)および拡散
促進材としてのB4C粉末(100メッシュ以下)を5%添加
して、本実施例にかかる処理剤を用意した。
次いで、該処理剤からなる溶融塩浴を570℃に保ち所
定時間放置・経過後、前記被処理材料を該溶融塩浴中に
8時間浸漬し、その後該溶融塩浴から被処理材料を取り
出して、油冷した。これにより、被処理材料に表面層を
形成した。
この時、前記処理剤を放置して所定時間経過した毎
に、浸漬処理後の被処理材料表面のバナジウム(V)の
蛍光X線強度を測定した。その結果を、第1図に示す。
同図中、「1」が本実施例の結果を示す。
また、被処理材料の表面に形成した表面層について、
その断面の組織を顕微鏡により観察した。該表面層の断
面の金属組織の顕微鏡写真(倍率400倍)を、第2図に
示す。図中、「A1」が表面層を、「B1」が母材をそれぞ
れ示す。同図より明らかの如く、該表面層の表面の滑ら
かな層であり、しかも層と母材との境界は複雑に入り組
み、層厚さが約8μmの密着性に優れた被覆層である。
また、前記表面層のX線マイクロアナライザーによる
分析を行った。その結果を、第3図に示す。同図より明
らかの如く、表面層中にはVとともにNとCとが認めら
れた。さらに、X線回折により、窒化バナジウム(VN)
に相当する回折線が認められた。これらの結果より、被
処理材料の表面に形成された表面層は、(V,Fe)(N,
C)から成るバナジウムの炭窒化物層であることが確か
められた。
比較のため、比較用処理剤として、前記拡散促進剤を
添加しないほかは上述の本実施例の処理剤と同様の組成
のものからなる処理剤を用意し、被処理材料に上述と同
様の処理を施し、該被処理材料に表面層を形成した。次
いで、比較用被処理材料に形成された表面層について、
上述と同様に、バナジウム(V)の蛍光X線強度を測定
した。その結果を、第1図に併せて示す。同図中、「C
1」が本比較例を示す。
第1図より明らかの如く、拡散促進剤であるB4C粉末
を添加した本実施例にかかる処理剤が、該拡散促進剤を
添加していない比較用処理剤に比べてバナジウム(V)
濃度が大変高く、また処理剤の寿命も長いことがわか
る。
さらに、フェロバナジウム粉末を20%に一定にして、
拡散促進剤としてのB4C粉末の添加量を0.5%、2%、10
%および15%と変えた処理剤および比較用の拡散促進剤
を添加しない処理剤を用意し、上記と同様に被処理材料
を表面処理した。該表面処理した被処理材料について、
表面層の断面組織観察および表面層のX線マイクロアナ
ライザーによる分析を行ったところ、第2図と同様な断
面組織のバナジウム炭窒化物よりなる層が得られた。ま
た、該表面層のバナジウム(V)濃度について蛍光X線
強度測定試験を行ったところ、拡散促進剤であるB4C粉
末を添加した本実施例にかかる処理剤は、いずれも該拡
散促進剤を添加していない比較用処理剤に比べてバナジ
ウム(V)濃度が大変高く、また処理剤の寿命も長いこ
とがわかった。
実施例2 JIS、SKH51丸棒試片(直径6mm,長さ30mm)を、550
℃、3時間の条件でイオン窒化処理することにより、窒
化処理を施した。
次いで、実施例1と同様の組成のCaCl2+NaClの溶融
塩浴を調整し(570℃)、さらに、この浴中にフェロバ
ナジウム粉末(Fe−V:JIS1号、100メッシュ以下)を前
記溶融塩浴に対して20%および拡散促進剤としてのBN粉
末(100メッシュ以下)を前記溶融塩浴に対して5%添
加して、本実施例にかかる処理剤を用意した。
次いで、該処理剤からなる溶融塩浴を550℃に保ち所
定時間放置・経過後、前記被処理材料を該溶融塩浴中に
8時間浸漬し、その後該溶融塩浴から被処理材料を取り
出して、油冷した。これにより、被処理材料に表面層を
形成した。
この時、前記処理剤を放置して所定時間経過した毎
に、浸漬処理後の被処理材料表面のバナジウム(V)と
蛍光X線強度を測定した。その結果を、第4図に示す。
同図中、「2」が本実施例の結果を示す。
また、処理剤を調整して11日経過した浴を用いて表面
処理を行った被処理材料について、表面層の断面組織を
顕微鏡により観察したところ、該表面層は表塩の滑らか
な層であり、しかも層と母材との境界は複雑に入り組
み、層厚さが約6μmの密着性に優れた被覆層であっ
た。
また、前記表面層のX線マイクロアナライザーによる
分析を行った。その結果を、第5図に示す。同図より明
らかの如く、表面層中にはVとともにNとCとが認めら
れた。表面からの分析結果によると、約50%のV量が存
在した。さらに、X線回折により、窒化バナジウム(V
N)に相当する回折線が認められた。これらの結果よ
り、被処理材料の表面に形成された表面層は、(V,Fe)
(N.C)から成るバナジウムの炭窒化物層であることが
確かめられた。
比較のため、処理剤として、前記拡散促進剤を添加し
ないほかは上述の本実施例の処理剤と同様の組成のもの
からなる処理剤を用意し、被処理材料に上述と同様な処
理を施し、該被処理材料に表面層を形成した。次いで、
比較用被処理材料に形成された表面層について、同様
に、バナジウム(V)の蛍光X線強度を測定した。その
結果を、第4図に併せて示す。同図中、「C2」が本比較
例を示す。
第4図より明らかの如く、拡散促進剤であるBN粉末を
添加した本実施例にかかる処理剤が、該拡散促進剤を添
加していない比較用処理剤に比べてバナジウム(V)濃
度が大変高く、また処理剤の寿命も長いことがわかる。
さらに、拡散主剤としてのフェロバナジウム粉末を0.
5〜20%に、拡散促進剤としてのBN粉末の添加量を0.5%
〜20%に調整して、処理剤を用意し、上記と同様に被処
理材料を表面処理し、上記と同様に表面層の断面組織観
察および表面層のX線マイクロアナライザーによる分析
を行ったところ、バナジウム炭窒化物よりなる層が確認
され、また、該表面層のバナジウム(V)濃度について
蛍光X線強度測定を行ったところ、バナジウム(V)濃
度が大変高く、また処理剤の寿命も長いことがわかっ
た。
実施例3 JIS、SKH51丸棒試片(直径6mm,長さ30mm)を、570℃
の塩浴中に2時間浸漬して塩浴窒化処理を施した。
次いで、実施例1と同様の組成のCaCl2+NaClの溶融
塩浴を調整し(550℃)、さらに、この浴中にフェロバ
ナジウム粉末(Fe−V:JIS1号、100メッシュ以下)を前
記溶融塩浴に対して20%および拡散促進剤としてのFe−
B粉末(100メッシュ以下)を前記溶融塩浴に対して5
%添加して、本実施例にかかる処理剤を用意した。
次いで、該処理剤からなる溶融塩浴を550℃に保ち所
定時間放置・経過後、前記被処理材料を該溶融塩浴中に
8時間浸漬し、その後該溶融塩浴から被処理材料を取り
出して、油冷した。これにより、被処理材料に表面層を
形成した。
この時、前記処理剤を放置して所定時間経過した毎
に、浸漬処理後の被処理材料表面のバナジウム(V)の
蛍光X線強度を測定した。その結果を、第6図に示す。
同図中、「3」が本実施例の結果を示す。
また、処理剤を調整して3日経過した浴を用いて表面
処理を行った被処理材料について、表面層の断面の組織
を顕微鏡により観察した。該表面層の断面の金属組織の
顕微鏡写真(倍率400倍)を、第7図に示す。図中、「A
3」が表面層を、「B3」が被処理材料の母材をそれぞれ
示す。同図より明らかの如く、該表面層は表面の滑らか
な層であり、しかも層と母材との境界は複雑に入り組
み、層厚さが約5μmの密着性に優れた被覆層であっ
た。
また、前記表面層のX線マイクロアナライザーによる
分析を行った。その結果を、第8図に示す。同図より明
らかの如く、表面層中にはVとともにNとCとが認めら
れた。表面からの分析結果によると、約50%のV量が存
在した。さらに、X線回折により、窒化バナジウム(V
N)に相当する回折線が認められた。これらの結果よ
り、被処理材料の表面に形成された表面層は、(V,Fe)
(N,C)から成るバナジウムの炭窒化物層であることが
確かめられた。
比較のため、処理剤として前記拡散促進剤を添加しな
いほかは上述の本実施例の処理剤と同様の組成のものか
らなる処理剤を用意し、被処理材料に上述と同様な処理
を施し、該被処理材料に表面層を形成した。次いで、比
較用被処理材料に形成された表面層について、同様に、
バナジウム(V)の蛍光X強度を測定した。その結果
を、第6図に併せて示す。同図中、「C3」が本比較例を
示す。
第6図より明らかの如く、拡散促進剤であるFe−B粉
末を添加した本実施例にかかる処理剤が、該拡散促進剤
を添加していない比較用処理剤に比べてバナジウム
(V)濃度が大変高く、また処理剤の寿命も長いことが
わかる。
実施例4 JIS、SKH51丸棒試片(直径6mm,長さ30mm)を、580℃
の塩浴中に2時間浸漬して塩浴窒化処理を施した。
次いで、実施例1と同様の組成のCaCl2+NaClの溶融
塩浴を調整し(550℃)、さらに、この浴の中央部に40
×35×4mmのFe−V(JIS1号)を浸漬して、これを陽極
とし、容器を陰極として0.1A/cm2の陽極電流密度で約3
時間通電した。この陽極溶解処理により、Fe−V板の重
量減から計算して、塩浴量全体に対して約0.5%のバナ
ジウムが浴中に溶出した。さらに、この浴中に拡散促進
剤としてのNa2B4O7粉末(100メッシュ以下)を前記溶融
塩浴に対して5%添加して、本実施例にかかる処理剤を
用意した。
次いで、該処理剤からなる溶融塩浴を570℃に保ち所
定時間放置・経過後、前記被処理材料を該溶融塩浴中に
9時間浸漬し、その後該溶融塩浴から被処理材料を取り
出して、油冷した。これにより、被処理材料に表面層を
形成した。
この表面層について、X線マイクロアナライザーによ
る分析試験を行った結果、該表面層にはVとともにNと
Cとが認められ、被処理材料の表面に形成された表面層
は、(V,Fe)(N,C)から成るバナジウムの炭窒化物層
であることが確認された。
比較のため、処理剤として前記拡散促進剤を添加しな
いほかは上述の本実施例の処理剤と同様の組成のものか
らなる処理剤を用意し、被処理材料に上述と同様な処理
を施し、該被処理材料に表面層を形成した。
上記本実施例にかかる被処理材料の表面に形成された
表面層と比較用被処理材料に形成された表面層につい
て、バナジウム(V)の蛍光X線強度を測定したとこ
ろ、Na2 B4 O7粉末を添加した本実施例にかかる処理剤
の場合の該強度が約20cps/mm、該拡散促進剤を添加して
いない比較用処理剤の場合の前記強度が約5〜10cps/mm
であり、本実施例にかかる場合はは比較例に比べてバナ
ジウム(V)濃度が大変高く、また処理剤の寿命も長か
った。
実施例5 まず外径φ10mm、内径φ7mm、長さ25mmのJIS・S48C円
筒形試片を570℃、6時間でガス軟窒化処理した。
次に、KF50モル%とLiF50モル%の混合物の入った黒
鉛容器を大気中の電気炉にて加熱して550℃の溶融塩浴
を形成し、さらに、該浴中にフェロバナジウム粉末(Fe
−V:JIS1号、100メッシュ以下)を前記溶融塩浴に対し
て20重量%(以下、単に%とする)および拡散促進剤と
してのNa2 B4 O7粉末(100メッシュ以下)を前記溶融塩
浴に対して5%添加して、本実施例にかかる処理剤を用
意した。
次いで、該処理剤からなる溶融塩浴を570℃に保ち所
定時間放置・経過後、前記被処理材料を該溶融塩浴中に
9時間浸漬し、その後該溶融塩浴から被処理材料を取り
出して、油冷した。これにより、被処理材料に表面層を
形成した。
この時、前記処理剤を放置して所定時間経過した毎
に、浸漬処理後の被処理材料表面のパナジウム(V)の
蛍光X線強度を測定した。その結果を、第9図に示す。
同図中、「5」が本実施例の結果を示す。
また、処理剤を調整して14日経過した浴を用いて表面
処理を行った被処理材料について、表面層の断面の金属
組織を顕微鏡により観察したところ、該表面層は第10図
のように、表面の滑らかな層であり、しかも層と母材と
の境界は複雑に入り組み、層厚さが約12μmの密着性に
優れた被覆層であった。なお、第10図中、「A5」が表面
層を、「B5」が被処理材料の母材をそれぞれ示す。
また、前記表面層のX線マイクロアナライザーによる
分析を行った。その結果を、第11図に示す。同図より明
らかな如く、表面層中にはVとともにNとCとが認めら
れた。表面からの分析結果によると、約55%のV量が存
在した。さらに、X線回折により、窒化バナジウム(V
N)に相当する回折線が認められた。これの結果より、
被処理材料の表面に形成された表面層は、(V,Fe)(N,
C)から成るバナジウムの炭窒化物層であることが確か
められた。
比較のため、処理剤として前記拡散促進剤を添加しな
いほかは上述の本実施例の処理剤と同様の組成のものか
らなる処理剤を用意し、被処理材料に上述と同様な処理
を施し、該被処理材料に表面層を形成した。次いで、比
較用被処理材料に形成された表面層について、同様に、
バナジウム(V)の蛍光X線強度を測定した。その結果
を、第9図に併せて示す。同図中、「C5」が本比較例を
示す。
第9図より明らかな如く、Na2 B4 O7粉末を添加した
本実施例にかかる処理剤が、該拡散促進剤を添加してい
ない比較用処理剤に比べてバナジウム(V)濃度が大変
高く、また処理剤の寿命も長いことが分る。
実施例6 実施例1と同様にしてJIS,S45C丸棒試片(直径7mm,長
さ30mm)を塩浴窒化処理した。
次にCaCl2 52モル%とNaCl48モル%の混合物の入った
耐熱鋼容器を大気中の電気炉にて加熱して570℃の溶融
塩浴を形成し、さらに、該浴中に−350メッシュの金属
ニオブ粉末(99.9%純度)を溶融塩浴にたいして20%お
よび拡散促進剤としてのB4 C粉末(−100メッシュ以
下)を5%添加して、本実施例にかかる処理剤を用意し
た。
次いで、該処理剤からなる溶融塩浴を570℃に保ち所
定時間放置・経過後、前記被処理材料を該溶融塩浴中に
8時間浸漬し、その後該溶融塩浴から被処理材料を取り
出して、油冷した。これにより、被処理材料に表面層を
形成した。形成された表面層をX線マイクロアナライザ
ーにより分析した結果ところ第12図に示すように、表面
層にはNbの他、NとCが認められた。また、X線回折に
より、窒化ニオビウムNbNの回折線とよく一致し、従っ
て表面層には(Nb,Fe)(C,N)となることが確かめられ
た。
実施例7 長さ60mm、幅20mm、厚さ10mmの板状のJIS・SKH51試片
を実施例1と同様にして塩浴窒化処理した。
次に、CaCl2 52モル%とNaCl48モル%の混合物を耐熱
鋼容器に入れ、大気中の電気炉にて570℃に加熱して溶
融塩浴を調整し、更にこの浴に−100メッシュのFe−V
(JIS1号)を粉末を溶融塩浴全量に対して20%添加し
た。さらに、拡散処理剤であるNa2 B4 O7を5%添加し
浴を作製した。この570℃の浴に上記試片を8時間浸漬
した後、取り出し油冷した。
形成された表面層をX線回折で調べたところ、VNに相
当する回折線が認められ、表面層はバナジウムの炭窒化
物層であることが確かめられた。
次に、上記バナジウム炭窒化物被覆試片(試料番号
7)について、球状化焼なましされたJIS・SCM21を相手
材として大越式迅速摩耗試験機により乾式、最終荷重3.
3kg、すべり距離600m、すべり速度2m/secと4.4m/secの
条件で摩耗試験を実施した。また比較のため、上記の窒
化処理も加熱処理も施していないJIS・SKH51試片(試料
番号C7)と窒化処理のみ施したSKH51試片(試料番号C
8)についても摩耗試験を実施した。
上記の摩耗試験の結果を表に示す。表より明らかなよ
うに、本発明により形成された表面層は、比較例のもの
に比べて摩耗しにくいことがわかる。
また1000℃の高温度の溶融塩浴中に2時間浸漬して約
4μm厚さの炭化バナジウム(VC)層を被覆したJIS・S
KH51試片あるいは850℃、4時間の条件で化学気相蒸着
法(CVD)により約7μm厚さのTi(C,N)からなるチタ
ンの炭窒化物層を被覆したJIS・SKH51試片についても摩
耗試験を行ったところ、本発明により処理した試料番号
7とほとんど同じような摩耗量であった。このことよ
り、本発明により形成された表面層は高温での溶融塩浴
浸漬法やCVDにより形成した表面層に比べて、耐摩耗性
の点において同等の性能が得られていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
第1図ないし第3図は本発明の実施例1を示し、第1図
は処理剤の経過日数とVの蛍光X線強度との関係を示す
線図、第2図は被処理材料に形成された表面層の断面の
金属組織を示す顕微鏡写真図(400倍)、第3図は被処
理材料の表面層のX線マイクロアナライザー分析結果を
示す図、第4図および第5図は本発明の実施例2を示
し、第4図は処理剤の経過日数とVの蛍光V線強度との
関係を示す線図、第5図は被処理材料の表面層のX線マ
イクロアナライザー分析結果を示す図、第6図、第7図
および第8図は本発明の実施例3を示し、第6図は処理
剤の経過日数とVの蛍光X線強度との関係を示す線図、
第7図は被処理材料に形成された表面層の断面の金属組
織を示す顕微鏡写真図(400倍)、第8図は被処理材料
の表面層のX線マイクロアナライザー分析結果を示す
図、第9図ないし第11図は本発明の実施例5を示し、第
9図は処理剤の経過日数とVの蛍光X線強度との関係を
示す線図、第10図は被処理材料に形成された表面層の断
面の金属組織を示す顕微鏡写真図(400倍)、第11図は
被処理材料の表面層のX線マイクロアナライザー分析結
果を示す図、第12図は本発明の第6実施例を示し、その
被処理材料の表面層のX線マイクロアナライザー分析結
果を示す図である。 1、2、3、5……本実施例 C1、C2、C3、C5……比較例 A1、A3、A5……表面層 B1、B3、B5……母材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 太田 幸夫 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41 番地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 守山 重雄 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41 番地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 中西 和之 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41 番地の1 株式会社豊田中央研究所内 審査官 山本 一正

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鉄合金材料からなる被処理材料の表面に、
    窒化処理を施して鉄−窒素または鉄−炭素−窒素からな
    る窒化物層を形成する窒化処理工程と、 周期律表の第V a族元素を含む材料からなる拡散主剤
    と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物、弗
    化物、ホウ弗化物、酸化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸
    塩、硝酸塩、硼酸塩のうちの1種または2種以上から成
    る拡散助剤と、硼素を含む炭化物、窒化物、酸化物およ
    び合金のうち1種または2種以上からなる拡散促進剤と
    からなる処理剤を用意する工程と、 該処理剤中に前記窒化処理した被処理材料を浸漬し、58
    0℃以下の温度雰囲気において該被処理材料を拡散処理
    して第V a族元素を該被処理材料表面に拡散させること
    により、被処理材料表面に第V a族元素の窒化物あるい
    は炭窒化物から成る表面層を形成せしめる拡散処理工程
    と、からなることを特徴とする鉄合金材料の表面処理方
    法。
  2. 【請求項2】処理剤の配合割合が、周期律表の第V a族
    元素を含む材料からなる拡散主剤が0.5〜20重量%、拡
    散促進剤が0.5〜15重量%であることを特徴とする特許
    請求の範囲第(1)項記載の鉄合金材料の表面処理方
    法。
  3. 【請求項3】周期律表の第V a族元素を含む材料からな
    る拡散主剤と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の
    塩化物、弗化物、ホウ弗化物、酸化物、臭化物、ヨウ化
    物、炭酸塩、硝酸塩、硼酸塩のうちの1種または2種以
    上から成る拡散助剤と、硼素を含む炭化物、窒化物、酸
    化物および合金のうち1種または2種以上からなる拡散
    促進剤とからなることを特徴とする鉄合金材料の表面処
    理用処理剤。
  4. 【請求項4】処理剤の配合割合が、周期律表の第V a族
    元素を含む材料からなる拡散主剤が0.5〜20重量%、拡
    散促進剤が0.5〜15重量%であることを特徴とする特許
    請求の範囲第(6)項記載の鉄合金材料の表面処理用処
    理剤。
JP31317588A 1988-12-12 1988-12-12 鉄合金材料の表面処理方法および処理剤 Expired - Lifetime JP2616814B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP31317588A JP2616814B2 (ja) 1988-12-12 1988-12-12 鉄合金材料の表面処理方法および処理剤

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP31317588A JP2616814B2 (ja) 1988-12-12 1988-12-12 鉄合金材料の表面処理方法および処理剤

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH02159361A JPH02159361A (ja) 1990-06-19
JP2616814B2 true JP2616814B2 (ja) 1997-06-04

Family

ID=18038009

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP31317588A Expired - Lifetime JP2616814B2 (ja) 1988-12-12 1988-12-12 鉄合金材料の表面処理方法および処理剤

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2616814B2 (ja)

Also Published As

Publication number Publication date
JPH02159361A (ja) 1990-06-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US4765847A (en) Method of treating the surface of iron alloy materials
US6328818B1 (en) Method for treating surface of ferrous material and salt bath furnace used therefor
JP5431348B2 (ja) 高速電気分解プロセスを用いた被覆のホウ素化のための方法
US4818351A (en) Method for the surface treatment of an iron or iron alloy article
JP2518710B2 (ja) 鉄合金材料の表面処理方法および処理剤
JP3939451B2 (ja) 鉄系材料の塩浴処理方法
JP2616814B2 (ja) 鉄合金材料の表面処理方法および処理剤
JPH0365435B2 (ja)
JPH05140725A (ja) チタン材料の表面処理法
JPH11158603A (ja) 表面硬化オーステナイト鋼製品およびその製法
JP2001025843A (ja) 鍛造品の製法およびそれに用いる鍛造用金型
CA1036976A (en) Anodically dissolving group v-a element into molten borate bath
US4804445A (en) Method for the surface treatment of an iron or iron alloy article
JPH08143384A (ja) 炭素部材およびその製造方法
JPH0424423B2 (ja)
JPH0424422B2 (ja)
JPH0447030B2 (ja)
JP2001025856A (ja) ダイカスト品の製法およびそれに用いるダイカスト用金型
JPS6335764A (ja) 鉄または鉄合金材料の表面処理方法
JPS6141984B2 (ja)
JPS622628B2 (ja)
JPH0447029B2 (ja)
JPH0447028B2 (ja)
KR101204509B1 (ko) 티타늄 또는 지르코늄 치환형 질화 염욕 열처리 방법
JPH0356308B2 (ja)

Legal Events

Date Code Title Description
R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080311

Year of fee payment: 11

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090311

Year of fee payment: 12

EXPY Cancellation because of completion of term