JPH05140725A - チタン材料の表面処理法 - Google Patents

チタン材料の表面処理法

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JPH05140725A
JPH05140725A JP3331293A JP33129391A JPH05140725A JP H05140725 A JPH05140725 A JP H05140725A JP 3331293 A JP3331293 A JP 3331293A JP 33129391 A JP33129391 A JP 33129391A JP H05140725 A JPH05140725 A JP H05140725A
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titanium
layer
carbide
titanium material
chromium
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JP3331293A
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English (en)
Inventor
Yoshihiko Sugimoto
義彦 杉本
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Toyota Central R&D Labs Inc
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 炭化物からなる表面層を密着性良く,かつ容
易に形成することができるチタン材料の表面処理法を提
供すること。 【構成】 チタン材料(Ti又はTi合金)の表面に浸
炭処理を施し,その後溶融塩法,流動層法,粉末パック
法等の熱拡散処理法を用いて,チタン材料の表面に周期
率表第4a族元素,第5a族元素,クロムの1種以上の
炭化物からなる表面層を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,チタン材料(チタン又
はチタン合金)の表面に,密着性に優れた炭化物の表面
層を,容易に形成することができる,チタン材料の表面
処理法に関する。
【0002】
【従来技術】チタン(Ti)及びチタン合金(以下,こ
れらを総称してチタン材料という)は,比強度が高い
為,航空機材料や構造用材料に広く利用されている。し
かしながら,硬度がHv200〜300と比較的低く,
摩擦係数が0.5〜0.6と大きいため,特に摺動部品
に使用した場合,焼付きが発生し,摩耗も大きいという
問題がある。また,チタン材料は軽量のため,例えば自
動車部品におけるエンジン用バルブに用いることが検討
されている。しかし,このものには,高温下での耐熱性
が要求され,高温耐酸化性に優れたチタン合金は,現在
のところ見当たらない。
【0003】そこで,チタン材料に関して,耐摩擦性,
耐焼付性,耐酸化性及び耐食性などの諸特性を改善する
表面処理方法として,近年多くの提案がなされている。
例えば,浸炭や窒化によってTiCやTiN層などを形
成する試みが行われている。しかし,この方法では,こ
れら浸炭等の加熱昇温過程でチタン材料の表面にチタン
酸化物が生じて,浸炭や窒化が妨害されるためか,形成
される層中には多数の酸化物が形成されてしまう(後述
する実施例1の図2参照)。
【0004】また,特開平2−70072号公報では,
チタン材料の表面に盛金溶接もしくは溶射を利用して,
耐摩耗性の向上を図る方法が示されている。しかし,こ
の方法においては,盛金溶接層や溶射層と母材との間の
密着性が劣っており,また表面粗さが非常に大きいた
め,研削加工が必要となる。一方,炭化物や窒化物など
の硬質セラミックスを被覆する方法として,物理的蒸着
法(PVD法)と化学的蒸着法(CVD法)が知られて
いる(特開昭61−48565号公報)。
【0005】しかし,PVD法の場合には,形成された
表面層のつきまわり性や密着性が充分でない。また,C
VD法では,金属源として用いられるハロゲン化物がチ
タン材料中のチタンと反応するため,健全な表面層が形
成されない。また,いずれの方法も,水素中あるいは減
圧中で実施しなければならないので,能率が悪いし,処
理工程が複雑で,装置も高価である。
【0006】
【解決しようとする課題】本発明は,かかる従来の問題
点に鑑み,チタン材料の表面に,周期率表第4a族元
素,第5a族元素,クロムの1種以上の炭化物からなる
健全な表面層を,密着性良く,かつ容易に形成すること
ができるチタン材料の表面処理法を提供しようとするも
のである。
【0007】
【課題の解決手段】本発明は,チタン又はチタン合金か
らなるチタン材料の表面に浸炭処理を施し,その後溶融
塩法,流動層法,粉末パック法等の熱拡散処理法を用い
て,チタン材料の表面に周期率表第4a族元素,第5a
族元素,クロムの1種以上の炭化物からなる表面層を形
成することを特徴とするチタン材料の表面処理法にあ
る。
【0008】即ち,従来は,前記したようにチタン材料
に浸炭処理を施すことによって形成されるチタン炭化物
層中には,多数の酸化物が形成され,そのために,耐摩
耗性や耐食性等が劣り,健全で,かつ,緻密な表面層は
形成できないと考えられていた。そこで,本発明者は酸
化物を含まないチタンの炭化物を形成することにつき,
鋭意研究した。その結果,チタン材料の表面に形成され
た多孔質のチタン炭化物層の外部から,クロムやバナジ
ウム等の炭化物形成元素を高温で拡散してやると,該ク
ロム等の元素とチタン炭化物層の炭素とが反応してクロ
ム等の炭化物層が形成されることを見出した。そして,
この場合,炭化物層形成処理前にチタン炭化物層に存在
していた酸化物は,上記炭化物層の中では全て消滅して
いることを見出し,本発明を成すに至ったのである。
【0009】本発明において,チタン及びチタン合金
(チタン材料)は,周期率表第4a族,第5a族の元素
及びクロム(以下,炭化物形成元素という)の1種以上
の炭化物層を,その表面に形成する被処理材である。上
記第4a族元素としては,チタン(Ti),ジルコニウ
ム(Zr),ハウニウム(Hf)がある。また,第5a
族元素としては,バナジウム(V),ニオブ(Nb),
タンタル(Ta)がある。
【0010】また,上記チタン材料としては,チタンが
ある。また,チタン合金としては,α型のTi−8%A
l−1%Mo−1%V,β型のTi−13%V−11%
Cu−3%Al,およびα+β型のTi−6%Al−4
%Vがあり,またチタンと銅その他の金属を添加混合し
て,製造した焼結Ti合金などがある。浸炭処理はチタ
ン材料の表面に炭素を拡散させ,浸炭層を形成する処理
である。炭素は,母材であるチタン材料の中に拡散して
いく際に,チタンと反応し,母材の最表面にチタンの炭
化物層が形成される。
【0011】また,このチタン炭化物層の直下には,チ
タン材料中に炭素が僅かに固溶した拡散層が形成され
る。なお,最表面のチタン炭化物層を除去して前記拡散
層のみを形成した材料を用いてもよい。また,チタン炭
化物層と炭素の拡散層が混合した層を形成した材料でも
よい。また,チタン炭化物層や固溶体層に窒素が共存し
ていてもよい。
【0012】浸炭処理の方法としては,RXガス(変成
ガス)を用いたガス浸炭,液体浸炭,固体浸炭,真空浸
炭,プラズマ浸炭等いかなる方法を用いることができ
る。浸炭層の炭素濃度は高い方が望ましく,浸炭層厚さ
も厚い方が望ましい。浸炭層の炭素濃度が低く,厚さが
薄いと,形成されるクロム等の炭化物層の厚さが薄くな
るおそれがある。浸炭の温度及び時間は,浸炭処理で一
般的に行われている条件でよいが,望ましくは,800
〜1100℃,30分〜5時間が選定される。なお,水
素(H2 )はチタン材料に非常に固溶しやすく,多量に
固溶するとチタン材料を脆くするおそれがある。そのた
め,水素の混入を防止したい場合には,メタン(C
4 )等の水素化合物およびキャリヤガスとしての水素
を含まない浸炭ガスを使用する必要がある。
【0013】チタン材料に上記浸炭処理を施した後,該
チタン材料と,クロム等の炭化物形成元素を含有する材
料とを,処理剤の存在下で,熱拡散処理する。この熱拡
散処理は,チタン材料の表面にクロム等の炭化物形成元
素を拡散させて,クロム等の炭化物から成る表面層を形
成するものである。上記炭化物形成元素を含有する材料
としては,金属や合金あるいは化合物等を用いる。かか
る金属としては,純クロム,純バナジウム,純チタンお
よびフェロクロム,フェロニオブ,フェロバナジウム,
フェロチタン等が上げられる。また,上記化合物として
は,CrCl3 ,VCl3 ,NbCl5 ,V25 ,C
rF6 ,Cr2 3 ,K2 CrO3 ,TiO2 等の塩化
物,弗化物,酸化物等が挙げられる。
【0014】なお,炭化物形成に当たっては,これら材
料のうちの1種または2種以上を用いるが,純クロム,
フェロバナジウム,酸化バナジウムと,炭化ボロン,フ
ェロチタン,フェロニオブなどを用いるのが最も実用的
である。また,前記処理剤は,炭化物形成元素がチタン
材料の表面に拡散する媒介となる働きを有している。該
処理剤としては,アルカリ金属またはアルカリ土類金属
の塩化剤,弗化物,ホウ弗化物,酸化物,臭化物,ヨウ
化物,炭酸塩,硝酸塩,硼酸塩のうちの1種または2種
以上から成るアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化
合物,あるいはハロゲン化アンモニウム塩または金属ハ
ロゲン化物の一方または双方から成るものがある。これ
らは熱拡散処理の方法によって適宜選択して使用する。
【0015】例えば上記アルカリ金属またはアルカリ土
類金属の化合物としては,NaCl,CaCl2 ,Li
Cl,NaF,KF,LiF,KBF4 ,Na2
3 ,LiCO3 ,KCO3 ,NaNO3 ,Na2 O,
Na2 4 7 等が挙げられ,これらのうちの1種また
は2種以上を使用する。また,ハロゲン化アンモニウム
塩としては,NH4 Cl,NH4 Br,NH4 I,NH
4 F等が挙げられ,金属ハロゲン化物としては,CrI
2 ,CrBr3 ,TiF4 ,VCl3 ,TiBr4 等が
挙げられ,これらのうちの1種または2種以上を使用す
る。なおTiやVを含む化合物を使用する場合には,C
rと同時にTi,Vが含まれた表面層が形成される可能
性がある。
【0016】熱拡散処理法としては,処理温度において
これら処理剤が溶融状態にあるか固体状態にあるかによ
って,溶融塩浸漬法又は溶融塩電解法の溶融塩法,流動
層法,粉末パック法,スラリー法などがある。上記溶融
塩浸漬法とは,前記処理剤を溶融して溶融浴を形成し,
該溶融浴に炭化物形成元素の材料を供給すると共にチタ
ン材料を浸漬する方法である。この方法で用いる処理剤
は,前記処理剤のうちのアルカリ金属またはアルカリ土
類金属の塩化物,弗化物,ホウ弗化物,炭酸塩,硝酸
塩,酸化物,硼酸塩の1種または2種以上,あるいは加
熱処理温度以下の温度で溶融し蒸発しない金属ハロゲン
化物を使用する。
【0017】更に溶融浴の粘性を調節するなどの目的の
ために,Al2 3 ,ZrO2 等の酸化物やNaCN等
のシアン化合物等を添加してもよい。上記溶融浴に炭化
物形成元素の材料を供給する手段としては,例えば純ク
ロム等のクロム材料を粉末状(好ましくは200メッシ
ュ以下)または薄板状で添加する方法がある。また,棒
状または板状のクロム材料を陽極として溶融浴中に陽極
溶解させる方法などがある。上記陽極溶解による場合に
は,クロムが迅速に溶入し,しかも未溶解のクロム材料
が浴底に堆積することがなく,処理可能な浴の容積を大
きくとれる点で有利である。
【0018】陽極溶解するときの陽極電流密度は,これ
を大きくすれば溶入速度は大きくなるが,実用上は電流
密度0.1〜0.8A/cm2 が適当である。浴中に溶
入したクロム等の炭化物形成元素は,チタン材料中の浸
炭層へ拡散して,炭化物を形成する。なお溶融浴の容器
としては黒鉛や鋼などが用いられるが,実用上は鋼で充
分である。また,溶解塩電解法とは,チタン材料を処理
浴中に浸漬し,これを陰極,容器を陽極として電解する
方法である。また,上記溶融塩電解法では,陰極電流密
度0.01〜3A/cm2 程度が適当である。
【0019】流動層法とは,流動層式炉を用いるもので
あり,流動中に固まりとなるのを防ぐためのアルミナ等
の耐火物粉末と,炭化物の形成反応を促進するハロゲン
化物等の活性化剤粉末を上記炭化物形成元素材料の粉末
に添加し,その混合粉末を上記炉中に配置する。そし
て,流動化ガスを導入して,上記粉末が流動化した流動
層状態になし,この中にチタン材料を入れて熱拡散処理
する方法である。前記活性化剤は,流動層外から固体
状,気体状または液体状で随時添加してもよい。
【0020】この方法で加熱処理を実施すると,極めて
平滑な表面層を得ることができ,さらに流動層の温度分
布が均一であるので,均一な厚さの表面層を形成するこ
とができる。流動化ガスとしては,アルゴンガス等の不
活性ガスや窒素ガス等の非酸化性ガスを使用することが
できる。
【0021】また流動化ガスの流速は,流動層中で50
cm/分以上とすることが好ましい。この場合には,表
面層に粉末の付着がない。ガス圧としては,取り扱い上
0.5〜2kg/cm2 の範囲が好ましい。また,粉末
パック法とは,粉末状の炭化物形成元素の材料および活
性化剤粉末を含む処理剤によりチタン材料を覆い,加熱
する方法である。また,スラリー法は,炭化物形成元素
の材料と活性化剤の混合粉末をエチルアルコール等の溶
媒を用いてスラリー状にし,これをチタン材料に塗布し
た後,加熱する方法である。
【0022】熱拡散処理における加熱温度は,600℃
以上前記チタン材料の融点以下で行うが,実用上は80
0〜1200℃程度が望ましい。処理時間は30分〜2
4時間程度である。処理温度を高く,処理時間を長くす
ると,炭化物層は厚く形成される。なお,炭化物層の厚
みは2〜30μmが実用的である。
【0023】
【作用及び効果】本発明は,チタン材料を浸炭処理する
工程と,その後に上記炭化物形成元素の熱拡散処理を実
施する工程とからなっている。従来,チタン材料の浸炭
処理は,その表面にチタン酸化物を形成するため非常に
困難とされていた。即ち,浸炭処理によってチタン炭化
物よりなる表面層が形成されるが,その表面層には多数
のチタンの酸化物が存在しているため,緻密で健全なも
のではなかった。
【0024】これに対して,本発明法によるときは,浸
炭処理によってチタン材料の母材内部に固溶した炭素,
及び表面に形成されたチタン炭化物層中の炭素と,クロ
ム等の上記炭化物形成元素との結合によって,その表面
に炭化物層が形成されるが,その際浸炭処理で発生した
酸化物などの欠陥は消失している。酸化物が消失する理
由は明確ではないが,熱拡散処理によって,酸化物がチ
タン材料の内部へ拡散消失するか,ガス状となって外部
へ拡散消失したものと思われる。
【0025】また,炭化物層は,母材であるチタン材料
と優れた,密着性を示す。その理由は,以下のようであ
ると推察される。即ち,前記クロム炭化物等の炭化物層
は,浸炭処理によって形成されたチタン炭化物層中の炭
素,ならびに該チタン炭化物層の直下に形成された少量
の炭素を固溶した固溶体層中の炭素と,クロム等の炭化
物形成元素との高温での拡散反応によって形成される。
そのため,クロム等の炭化物層と母材であるチタン材料
との境界部には,拡散層が形成され,炭化物層と母材と
の密着性を著しく高めているのである。
【0026】以上のごとく,本発明によれば,チタン材
料の表面に耐摩耗性,耐焼付性,耐食性,耐酸化性等に
優れた周期律表第4a族元素と第5a族元素及びクロム
の1種以上からなる,酸化物のない緻密な炭化物層を形
成させることができる。また,本発明により形成される
炭化物層は,熱拡散処理によって形成されるため,母材
であるチタン材料との密着性に優れている。
【0027】また,本発明においては,上記熱拡散処理
法を用いるので,前記従来例に示した方法に比して,処
理工程,装置も簡単である。したがって,本発明によれ
ば,上記炭化物からなる健全な表面層を,密着性良く,
かつ容易に形成することができる,チタン材料の表面処
理法を提供することができる。
【0028】
【実施例】
実施例1 以下,本発明の実施例を説明する。なお%は重量%を意
味する。直径10mm,長さ30mmの純チタン(T
i)丸棒試片を,H2 :C3 8 (プロパン)=1.
0:0.1,圧力が0.8torrの雰囲気中におい
て,1000℃,2時間の条件でプラズマ浸炭処理を施
した。図2は,プラズマ浸炭処理によってチタン丸棒試
片表面に形成された,チタン炭化物層の断面における金
属組織の顕微鏡写真(倍率400倍,以下同じ)を示し
たものである。層中には粒状の酸化物(同図の粒状黒色
部分)が多数形成されている。なお,図2において最上
層に見られる白色層は,顕微鏡撮影試料の作成時に形成
したニッケル(Ni)メッキ層である(以下の写真も全
て同じ)。
【0029】次に,この試片を酸化バナジウム(V2
5 )20%及び炭化ボロン(B4 C)10%を含有せし
めた1000℃の溶融硼砂浴に,30分〜16時間浸漬
し,その後取り出して空冷した。即ち,溶融塩浸漬法に
よる熱拡散処理を行った。付着溶剤を洗浄除去後,断面
を研磨して表面に形成された層の厚さを測定した。形成
された層の厚さは処理時間の増加によって厚くなり,8
時間の浸漬で約10μmの被覆層が形成されていた。図
1はこの試片の断面の顕微鏡写真であり,層中には酸化
物が全く形成されておらず(図2と比較),かつ表面が
滑らかな被覆層であった。
【0030】この試片についてX線回折を行ったとこ
ろ,VCの回折線とよく一致した。したがって,被覆層
はVCが形成されていることが明らかになった。このV
C層断面の硬度をビッカース硬度計によって測定したと
ころ,ビッカース硬度3000を示し,耐摩耗性に優れ
ていた。これは,焼入鋼のビッカース硬度1000の約
3倍という,極めて高い硬度である。
【0031】実施例2 実施例1と同様にして,直径13mm,長さ50mmの
チタン合金(Ti−6Al−4V合金)に対して,プラ
ズマ浸炭処理を施した。次に,このものを,酸化クロム
(Cr2 3 )20%添加の1000℃の溶融硼砂浴
に,浸漬した。そして,これを陰極となし,一方内径6
5mm,深さ200mmの黒鉛容器を陽極として0.0
5A/cm2 の陰極電流密度で6時間電解処理した。即
ち,溶融塩電解法による熱拡散処理を行った。
【0032】形成された表面層は,図3の顕微鏡写真に
示すように,約8μm厚さの滑らかな層であった。断面
のX線マイクロアナライザー分析によれば,図4に示す
ように,層中には約80%のCrと共にCが認められ
た。また,図5はX線回折で得られた測定結果である。
同図の横軸はd値即ち回折線を示し,縦軸はX線強度を
示している。回折線はCr7 3 の回折線とよく一致
し,被覆層はCr7 3 なるCrの炭化物よりなってい
ることが確認された。
【0033】実施例3 実施例1と同じ寸法のチタン金属丸棒試片を用い,これ
をメタン(CH4 )100%,水素還元雰囲気の真空浸
炭炉に挿入し,1000℃,8時間保持して,真空浸炭
処理を施した。次に,ステンレス鋼容器に入れた−10
0メッシュの純クロム90%と硼フッ化カリウム(KB
4 )10%からなる混合粉末層の中に,上記試片を埋
設した。更に酸化防止のため混合粉末の上に−100メ
ッシュのフェロボロン粉末を3〜4mmの厚さで被覆し
た。
【0034】これを容器ごと大気炉で600℃,16時
間加熱した。容器を炉から取り出して空冷後,粉末中か
ら試片を取り出した。即ち,粉末パック法による熱拡散
処理を施した。試片の表面からのX線回折結果では,得
られた回折像がCr7 3 の回折数とよく一致した。し
たがってこの層は,クロムの炭化物層であることが確か
められた。
【0035】実施例4 アルミナ(Al2 3 )粉末40%,Fe−Nb粉末
(62%ニオビウム含有,−100メッシュ)55%,
塩化アンモニウム(NH4 Cl)粉末5%からなる混合
粉を,エチルアルコールでエチルセルロースを溶かした
溶媒を用いてスラリー化した。次いで,実施例3と同じ
条件で真空浸炭されたチタン丸棒試片に,3〜5mm厚
みに上記スラリーを塗布した。その後,ステンレス製容
器中に装入し,アルゴン雰囲気中にて1000℃,5時
間加熱した。
【0036】即ち,スラリー法による熱拡散処理を施し
た。これにより,表面に形成された層の厚さは,約7μ
mであり,図6の断面組織顕微鏡写真のように,表面の
滑らかな被覆層であった。また,形成された表面層をX
線マイクロアナライザーによる分析を行った結果,Nb
Cより成っていることが確かめられた。
【0037】実施例5 実施例2と同じ寸法,組成のチタン合金に対して,A
r:0.5リットル/min,C3 8 (プロパンガ
ス):0.2リットル/min,真空度:0.2tor
r及び1000℃,2時間の条件で,プラズマ浸炭処理
を施した。次にアルミナ(Al2 3 )70%,Fe−
Ti 28.8%,NH4 Cl1.2%からなる混合粉
末を流動層炉内に入れ,層の下部より導入したアルゴン
ガスで上記混合粉末を流動状態とした。
【0038】この流動層炉内に上記の浸炭処理したチタ
ン合金を挿入し,1000℃で8時間保持して,熱拡散
処理を施した。その後,これを取り出して空冷した。こ
の表面に形成された層の厚さは10μmであった。図7
は,その断面組織の顕微鏡写真である。試片表面から行
ったX線回折の結果,被覆層はTiCよりなっているこ
とが確認された。
【0039】実施例6 直径10mm,長さ30mmの純チタン丸棒試片,及び
直径13mm,長さ30mmのチタン合金(Ti−6A
l−4V合金)丸棒試片を用い,それぞれ実施例1と同
様の条件でプラズマ浸炭処理を施した。次に,この試片
を,−100メッシュのクロム粉末(Cr)10%を添
加した,1000℃の溶融硼砂浴に8時間浸漬し,熱拡
散処理を施した。その後,浴から取り出して空冷した。
試片に形成された被覆層断面についてX線マイクロアナ
ライザー分析を行ったところ,図8に示す結果が得ら
れ,層中には約80%のCrと共にCも検出された。
【0040】また,形成された表面層をX線回折で調べ
たところ,純チタン及びチタン合金のいずれの試片にも
Cr7 3 に相当する回折線が認められ,表面層はクロ
ムの炭化物層であることが確かめられた。次に,上記ク
ロム炭化物被覆試片(純チタン試料:No.5,及びT
i−6Al−4V合金試料:No.6)について,90
0℃の大気中に1時間保持する条件で酸化試験を実施し
た。
【0041】また比較のために,上記の浸炭処理も熱拡
散処理も施していない,純チタン試片(試料No.1)
とチタン合金試片(試料No.2),及び浸炭処理のみ
を施した純チタン試片(試料No.3)とチタン合金試
片(試料No.4)についても,同様の酸化試験を実施
した。図9は,その酸化試験結果を示した図であって,
この結果より試料No.1とNo.2の試片,及びN
o.3とNo.4の試片は,いずれも2.0〜3.5m
g/cm2 の大きな酸化増量を示した。
【0042】これに対して,本発明による試料No.5
とNo.6の試片では,いずれも0.3mg/cm2
僅かな酸化増量であり,被覆層が酸化消失した形跡も認
められなかった。以上の結果より,本発明により形成し
た被覆層は,高温での大気中酸化試験に対しても,その
耐酸化性が非常に優れていることが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における,炭化物層を形成した金属組
織の顕微鏡写真。
【図2】実施例1における,炭化物層を形成する前の金
属組織の顕微鏡写真。
【図3】実施例2における,炭化物層を形成した金属組
織の顕微鏡写真。
【図4】実施例2における,X線マイクロアナライザー
の分析結果を示す線図。
【図5】実施例2における,X線回折の測定結果を示す
図。
【図6】実施例4における,炭化物層を形成した金属組
織の顕微鏡写真。
【図7】実施例5における,炭化物層を形成した金属組
織の顕微鏡写真。
【図8】実施例6における,X線マイクロアナライザー
の分析結果を示す線図。
【図9】実施例6における,酸化試験の結果を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C23C 10/52 8116−4K 26/00 C

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 チタン又はチタン合金からなるチタン材
    料の表面に浸炭処理を施し,その後溶融塩法,流動層
    法,粉末パック法等の熱拡散処理法を用いて,チタン材
    料の表面に周期率表第4a族元素,第5a族元素,クロ
    ムの1種以上の炭化物からなる表面層を形成することを
    特徴とするチタン材料の表面処理法。
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