JP4063549B2 - 巻線型電子部品の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント基板上に面実装可能な巻線型電子部品製造方法に係り、特にコアの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インダクタとして使用される従来の巻線型電子部品は、内部にコイルを埋設する積層型インダクタに比較し、巻線が金属粉末の焼結体ではなく、導電性の高い金属線によって構成できるので、高いQ値を得ることができるという特徴がある。このような巻線型インダクタにおいて、磁性体または非磁性体でなるコアは、従来、磁性体または非磁性体粉末からなる成形用コア材料を金型により成形した後、焼成することにより得ている。
【0003】
図18(A)は従来の巻線型電子部品のコア50の一例を示している。図18(B)に示すように、前述のようにして成形、焼成したコア50の鍔51に、銀ペーストをディップ等により塗布して焼き付けることにより、下地電極52を完成させる。次に図18(C)に示すように、コア50の巻心に巻線54を巻回した後、該巻線の巻始め、巻終りとなる巻線端末を前記下地電極52に溶接、熱圧着または超音波振動もしくはこれらの併用により接合する。次に下地電極52および巻線端末の下地電極52に溶接された部分に電解メッキを行って端子電極55を形成し、さらに、鍔51の上面側に樹脂等を塗布するか、あるいは樹脂フィルムを上面に貼り付けることにより、プリント基板上にマウンタにより自動装着するためのプレート56を形成して完成する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、従来の巻線型電子部品のコア50は、成形用コア材料を金型により成形して焼成することにより得ているので、一度に成形するコアの数に限界があり、量産性に乏しいという問題点がある。また、コア材料の焼成縮率の違いにより、完成品の寸法がロットで変動するが、この寸法の変動を極力小さく抑えるため、同じ規格の製品でありながら、複数の金型を準備する必要が生じ、設備費がかさむとういう問題点がある。
【0005】
また、金型は高価であるため、あまり多くの数の金型を準備するわけにはいかず、コア材料の縮率データから逆算して金型の成形寸法を選ぶ場合に、2つある金型のうちの中間の寸法の金型が必要となった場合は、所望の寸法に対して若干大きいか、若干小さい寸法での生産を余儀なくされることになる。ところが、コア50に巻線54を巻回するタイプのものは、コア材料の縮率変動により巻心53の寸法が変わることは、巻線54の巻数を調整しない限り、そのままインダクタンスが変動することになり、安定した生産ができなくなる。
【0006】
また、従来品として、金型による成形段階でコアの素体に窪み、それを焼成した後、銀ペーストを塗布してから焼付けを行うものもあるが、この構造のものは、銀ペーストが窪み部分を覆ってしまい、十分な窪みが形成できなかったり、窪み寸法が大きくばらついてしまう。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑み、コアの量産が容易となる巻線型電子部品製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、所望の寸法のコアを得ることができ、従ってインダクタンス値のばらつきの小さい構造の巻線型電子部品製造方法を提供することを他の目的とする。また本発明は、下地電極の寸法のばらつきが小さく、よってプリント基板に実装した場合のプリント基板への固着強度も安定した巻線型電子部品製造方法を提供することを他の目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項の巻線型電子部品の製造方法は、磁性体または非磁性体からなるシートの両面におけるそれぞれ表裏一致する位置に縦横の切断用マークを付し、
前記切断用マークを基準にして、前記シートの表裏面に、縦横いずれかの方向に複数の溝を等間隔に、いずれか先に切削する面の溝の幅より、後で切削する面の溝の幅を広くして切削し、
前記シートを、前記溝の両側の非切削部に沿う切断線と、該切断線に直角をなす切断線に沿って等間隔に切断することにより、コアを形成し、
前記溝の部分に巻線を巻き、該巻線の両端の端末を、裏面における前記溝の両側に設けた端子電極に固着する
ことを特徴とする。
【0009】
このような製造方法により、量産性の向上、寸法精度の向上によるインダクタンス値のばらつきの低減、プリント基板への固着強度の向上が達成できる。また、ダイサーにより溝を切削する場合、後で溝を切削する面の溝切削を先に切削する面の溝の幅より広くして切削するので、ダイサーのシートに対する押し付け圧力によってシートが撓むことが防止され、溝の切削寸法精度を向上させることができる。
【0010】
請求項の巻線型電子部品の製造方法は、磁性体または非磁性体からなる四角形のシートの周辺部近傍の隣接する2辺を直交する線に沿って切断してその切断された辺を基準辺とし、
該基準辺を基準として前記シートを位置決めし、該シートの表裏面に、縦横いずれかの方向に複数の溝を等間隔に、いずれか先に切削する面の溝の幅より、後で切削する面の溝の幅を広くして切削し、
前記シートを、前記溝の両側の非切削部に沿う切断線と、該切断線に直角をなす切断線に沿って等間隔に切断することにより、コアを形成し、
前記溝の部分に巻線を巻き、該巻線の両端の端末を、裏面における前記溝の両側に設けた端子電極に固着する
ことを特徴とする。
【0011】
このように、材料となるシートの端部の隣接する2辺を切断し、その2辺を基準辺にして位置決めすれば、マークの印刷は不要となり、工程が簡略化され、コスト低減に寄与する。また、ダイサーにより溝を切削する場合、後で溝を切削する面の溝の幅を先に切削する面の溝の幅より広くして切削するので、ダイサーのシートに対する押し付け圧力によってシートが撓むことが防止され、溝の切削寸法精度を向上させることができる。
【0012】
請求項の巻線型電子部品の製造方法は、請求項またはにおいて、
前記シートの段階でシートの裏面に端子電極用導体を固着する
ことを特徴とする。
【0013】
請求項またはの製造方法を実施する場合、請求項3の方法のように、予め端子電極用導体をシートに固着しておくことにより、端子電極導体を後付けする場合に比較し、多数個分についての溝(凹部)の形成が同時にでき、量産性、寸法精度、プリント基板への固着強度が向上する。
【0014】
請求項の巻線型電子部品の製造方法は、請求項またはにおいて、
グリーンシートの積層圧着体の裏面に、導電体粉末を含んだ端子電極構成用の導体グリーンシートを固着して前記シートとし、該シートの表裏面に前記溝を形成し、縦横に切断後に焼成することにより、コアを得る
ことを特徴とする。
【0015】
このように、シートとしてグリーンシートを使用すれば、グリーンシートに混合する粉末の材質の選択により、種々の透磁率、誘電率、Q値の巻線型電子部品を得ることができる。また、グリーンシートを積層し圧着した焼成前の状態において、ダイサー等により、容易に溝を切削することができる。
【0016】
請求項の巻線型電子部品の製造方法は、請求項またはにおいて、
前記シートの段階でシートの裏面に端子電極用導電体を固着すると共に、
前記シートの裏面に、前記導電体に、巻線端末を導電固着する窪みとなる1本以上の溝を形成する
ことを特徴とする。
【0017】
前記した従来技術のように、コア素体に窪みを設けてから銀ペーストを塗布する方法では、銀ペーストが窪み部分を覆ってしまい、十分な窪みが形成できなかったり、窪み寸法が大きくばらついてしまう。一方、請求項5の発明のように、端子電極に窪みを設けてその窪みに巻線端末を固着することにより、巻線の終端位置が固定され、インダクタンスのばらつきが軽減されると共に、鍔の装着面に突起が現れず、平坦となり、プリント基板への実装が良好に行われる。
【0018】
請求項の巻線型電子部品の製造方法は、請求項からまでのいずれかにおいて、
前記シートにおける製品コアの両側面に相当する位置に、巻線の太さより深い溝を形成する貫通スリットを設ける
ことを特徴とする。
【0019】
このような貫通スリットを設け、その貫通スリットの部分が溝として残るように切断することにより、コアの側面に凹部を有して側面より巻線が突出しない幅精度の面で優れた巻線型電子部品を提供できる。
【0020】
請求項の巻線型電子部品の製造方法は、請求項からまでのいずれかにおいて、
前記シートの表面の溝の幅を、巻線のターン数に見合う幅となるように調整する
ことを特徴とする。
【0021】
このように、少なくともシートの表面側の溝を、巻線のターン数に見合う幅となるように調整することにより、巻線を整然とコアに巻くことができ、インダクタンス値のばらつきを低減することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1(A)は本発明による製造方法により得られる巻線型電子部品の一例を示す側面図、図1(B)はそのプリント基板への実装状態を示す斜視図である。この巻線型電子部品は、コア1を、磁性体または非磁性体からなるシートの縦横の切断によってほぼ矩形に切り出すことにより作製したものである。該コアの裏面、すなわち図1(B)に示すプリント基板7への取付け面の両端部に、プリント基板7上のパッドにはんだ8により固着するための端子電極2を有する。
【0023】
また、前記裏面における端子電極2、2の間と表面に、巻線3の太さより深く、切削により形成された凹部4、5を有する。そして、巻線3の周回部の一部を前記各凹部4、5に収容し、巻線の両端の端末3aを前記端子電極2にそれぞれ導電固着している。6は巻線3をコア1に施した後にコア1の表面に樹脂によって固着する表面平滑化用プレートであり、マウンタに吸着させてプリント基板への搭載を行うものである。
【0024】
図2ないし図5により図1に示した巻線型電子部品の製造方法の一例を説明する。この方法は、グリーンシートを用いるものである。図2(A)はグリーンシートの積層前の状態を、製品状態では裏面となる側を上にして示している。9は絶縁体グリーンシートであり、該グリーンシート9は磁性体粉末または非磁性体粉末をバインダおよび溶剤と共に混合し成形することにより、シート状に成形したものである。該グリーンシート9は、コアの厚みを得るために必要枚数準備される。
【0025】
絶縁体グリーンシート9として非磁性体を用いる場合、高周波用として、分布容量を低減するため、比誘電率が30以下のアルミナ、コーディライト、ウムライト、低誘電率ガラス等を用いることが好ましいが、本実施例においては、ストロンチウム、カルシウム、アルミナ、酸化珪素からなるガラス70%、アルミナ30%(いずれも重量%)の組成のセラミック組成物からなるセラミックグリーンシートを用いた。
【0026】
10は端子電極2形成用の導体グリーンシートであり、該グリーンシート10は、例えば銀あるいは銀合金粉末と、ガラス粉末と、バインダと、溶剤とを混合してシート状に成形したものである。実施例においては、焼成後の組成において、銀が47体積%となるように材料を配合した。該グリーンシート10には切断の際に基準となる切断マーク11をグリーンシート10の周囲に等間隔に付す。12は積層圧着後に剥離するフィルムであり、導体グリーンシート10および絶縁体グリーンシート9の積層圧着シートの導体グリーンシート10の反対側の面に切断マーク13を印すためのものである。
【0027】
図2(A)に示すグリーンシート9、10およびフィルム12は図2(B)に示すように重ねて圧着される。圧着後はフィルム12は剥離する。
【0028】
このようにして得られた図2(B)に示す積層圧着シート14は、乾燥後、図3(A)の底面図、図3(B)に示す側面図に示すように、前記切断マーク11を基準にして導体グリーンシート10側の面をダイサーにより等間隔に切削して前記凹部4となる溝4Aを形成する。溝4Aを切削せずに残った導体部分2Aが端子電極2となる部分である。
【0029】
次に図4(A)の平面図、図4(B)の側面図に示すように、積層圧着シート14の表面にも前記切断マーク11を基準にして前記凹部5となる溝5Aを切削により形成する。
【0030】
次に図5(A)の平面図、図5(B)の側面図、図5(C)の部分底面図に示すように、前記切断マーク13を基準にして、溝5A(4A)に平行な図面上縦の切断線15に沿って溝を形成していない部分を等間隔に切断し、さらに切断マーク11を基準として切断線15に直角をなす切断線16に沿って等間隔に切断することにより、それぞれ個々の電子部品用のコア1を得る。
【0031】
なお、この切断作業は、前記積層圧着シート14を熱剥離可能な剥離シート(図示せず)に固定して行い、その後、剥離シートからグリーン状態のコアを剥離し、水バレルを行い、乾燥後に約900℃にて焼成してコアを完成した。
【0032】
次にコア1に巻線し、巻線3の両端を端子電極2に熱圧着し、電解めっきを行った後、コア1の表面に自動装着用プレート6を樹脂により固着した。端子電極2および巻線端末3aへの固着状態における電気めっきは、銅とニッケルと錫をこの順序で行った。この他、ニッケルと錫、ニッケルと金、ニッケルとパラジウムと金、ニッケルとパラジウムと銀、ニッケルと銀等を記載順序でめっきする多層構造のものを採用することができる。このように、端子電極2および巻線端末3aに電気めっきを行えば、プリント基板7に対する端子電極2の面が平滑となり、プリント基板への固着強度をより高めることができる。
【0033】
本例の巻線型電子部品は、コアをシート14からの切り出しにより得ているので、小型の巻線型電子部品のコアの場合、シート14の縦横の切断により、同時に数千個ものコアを得ることができ、量産性が向上する。例えば1.6mm×0.8mm×0.8mmサイズのインダクタの場合、1枚のシート14から6000個〜10000個程度のコアを得ることができる。
【0034】
また、本例の巻線型電子部品のコア1は、コア1をシート14の切り出しによって形成し、巻線3を巻く巻心部となる凹部4、5を切削により巻線3の太さより深く形成しているので、巻線3がコア1の表裏面から露出しない構造となり、巻線型電子部品の厚み寸法をコアの厚みで設定することができ、高い寸法精度を保持できる。
【0035】
また、本実施の形態のように、グリーンシートを積層圧着して切削、切断前のシートとして用いる場合、コアとして切断した後に焼成する必要があるが、コア材料の焼成縮率を考慮して切断間隔(切断マーク11間および切断マーク13間の間隔)を調整することにより、焼成後の寸法精度が高いコアが得られる。また、グリーンシートに予め所定の厚みの導体グリーンシート10を圧着し、切り出しにより下地電極を形成しているので、端子電極2の寸法精度も高まり、プリント基板7に実装した場合にも固着強度の十分な巻線型電子部品が得られる。
【0036】
本実施の形態のように、グリーンシートを積層圧着したものを用いれば、グリーンシートに混合する粉末の材質の選択により、種々の透磁率、誘電率、Q値の巻線型電子部品を得ることができる。また、グリーンシートを積層し圧着した焼成前の状態において、ダイサー等により、容易に溝を切削することができる。
【0037】
また、本実施の形態においては、最初に切削する溝4A(凹部4)の幅aより後で切削する溝5A(凹部5)の幅bを大きくしている(図1(A)参照)が、これは下記のことを目的としている。図6は溝4A、5Aの切削にダイサー17を使用し、グリーンシート材料のロット間の焼成縮率の相違に呼応して溝4A、5Aの幅を変えるため、一旦溝4A、5Aの全長について切削を行った後、ダイサー17の位置を若干移動させて再度切削を行うことにより、所定の溝幅が得られるように切削する。このように1つの溝について2度の切削を行うことにより、1つのダイサー17を使用して任意の幅の切削を行うことができ、多種の幅のダイサーを使用する場合に比較して経済化が達成される。
【0038】
図6のようなダイサー17による切削を行うため、図6の上段の左側、右側にそれぞれ示すように、後で切削する溝5Aの切削を部分的に行う場合、溝5Aの幅が溝4Aの幅以下であると、先に切削した溝4Aの部分が薄くなっており、支えがなくなるので、その部分でシートに撓みを生じ、溝5Aの切削が良好に行われなくなるおそれがある。しかし、本実施の形態のように、後で切削する溝5Aの幅を先に切削する溝4Aの幅より大きく設定すれば、溝5Aの切削の際に、ダイサー17に対向する部分が溝4A以外の部分を含むため、その溝4A以外の対向部分が支えとなり、シート14の切削部分における撓みを防止し、良好な状態で切削を行うことができる。
【0039】
図7(A)は本発明による製造方法により得られる巻線型電子部品の他の例を示す側面図、図7(B)はそのコアを示す端面図であり、本例においては、端子電極2に窪み19を設け、該窪み19に巻線端末3aを導電固着したものである。
【0040】
このように、端子電極2に窪み19を設けて巻線端末3aをその窪みに導電固着する構造とすることにより、巻線3の終端位置が固定され、インダクタンスのばらつきが軽減されると共に、鍔の装着面に突起が現れず、平坦となり、プリント基板への実装が良好に行われる。
【0041】
図8〜図10は図7(A)、(B)に示した端子電極構造を有するコアの製造工程を示すものである。このコアを製造する場合、まず、図8(A)の底面図、図8(B)の端面図に示すように、前記積層圧着シート16の導体グリーンシート10の面に、前記窪みとなる細い溝19Aを切削加工する。
【0042】
次に図9(A)の底面図、図9(B)の端面図、図9(C)の側面図に示すように、前記溝4Aを溝19Aに直交する方向に等間隔に切削する。次に図10(A)の平面図、図10(B)の端面図、図10(C)の側面図、図10の部分底面図に示すように、前記溝4A、5Aに平行な切断線15とこれに直交する切断線16に沿って等間隔に切削することにより、コア1を得る。
【0043】
図7(C)は図7(B)の変形例であり、前記窪み19を複数個(図示例は3個)の設け、これらのいずれかを選択して巻線端末3aを導電固着することにより、インダクタンス値の調整が可能となるようにしたものである。
【0044】
このように、窪み19を複数個設けてそのうちのいずれかに巻線端末3aを選択的に固定するようにすれば、インダクタンスの微調整が可能となり、より安定したインダクタンス値を得ることができる。
【0045】
図11は本発明の製造方法により得られる巻線型電子部品の他の例を示すもので、(A)、(B)、(C)はそれぞれコアの平面図、側面図、端面図である。本例のコア1は、コア1の側面にも巻線3の太さより深い凹部20を設けたものである。
【0046】
この構成によれば、図11(D)の側面図に示すように、コア1の表裏面から巻線3が突出しないのみならず、図11(E)の平面図に示すように、コア1の両側面から巻線3が突出しないので、側面の幅方向の寸法精度も向上する。
【0047】
図12、図13は図11の巻線型電子部品を製造する工程を示す図である。まず、図12(A)、(B)の平面図、側面図に示すように、前記溝4A、5Aを切削した積層圧着シート14における溝4A、5Aを設けた部分に、前記切断マーク13または11を使用して、20Aに示す部分に、メカパンチングかまたはレーザーにより貫通スリットを開ける。
【0048】
次に図13(A)、(B)、(C)の平面図、側面図、部分底面図に示すように、前記溝4A、5Aに平行な切断線15とこれに直交する切断線16に沿って等間隔に切削することにより、コア1を得る。
【0049】
図14(A)、(B)の底面図、側面図は本発明による製造方法の他の実施の形態を示すもので、前述のように積層圧着シート14Aとして、前記導体グリーンシート10を有しないものを用い、前記溝4Aを切削した後、銀または銀合金粉末を含む導体ペーストの印刷によって導体層21を溝4Aを加工していない部分(突出部分)に設け、その後は前記実施の形態と同様に溝5Aの加工、さらに必要に応じて図12(A)に示した貫通スリット20Aの加工を行い、前記切断線15、16に沿って切断してコアを得る。なお、導体ペーストの印刷は、溝4Aを加工する前に、底面側の1枚のグリーンシートに予め印刷しておくかあるいは導体グリーンシートを持たない積層圧着シートに印刷しておいてもよい。また、コア1に切断後に導体ペーストを塗布し、焼付けてもよい。
【0050】
図15(A)は本発明の製造方法の他の実施の形態を示す平面図、図15(B)はその側面図である。この実施の形態においては、シート22として、樹脂シートまたは磁性体粉末または非磁性体粉末を混入した樹脂シートまたはセラミックシートを用い、これに前記溝4A、5Aを切削し、その後、前記切断線15、16に沿って切断することにより、端子電極2を有しないコア1を作製し、その後、めっきや焼付けにより端子電極2を設けるようにしたものである。
【0051】
図14、図15のいずれの実施の形態においても、高い寸法精度の巻線型電子部品を得ることができる。なお、図15の実施の形態において、予め導体シートが樹脂板等に固着されている銅貼りシートを用いれば、端子電極2のための導体のめっき等の作業は不要となる。
【0052】
図16は本発明による製造方法により得られる巻線型電子部品の他の例を示すもので、図16(C)に示すように、表面の凹部5に対し、巻線3の巻数が少ない場合、巻線3が撓んだりしてインダクタンスのばらつきが大きくなり、歩留まりが低下する。そこで、図16(A)、(B)に示すように、表面の凹部5の幅b1、b2を、巻数に見合う幅に設定することにより、巻線3のコア表面における周回部分を整列させ、これにより巻線の撓みを防止し、インダクタンスを揃えて歩留まりを向上させるようにしたものである。
【0053】
図16(D)はさらに、端子電極2の裏面側の凹部4の幅a1も巻線3の巻数に見合う幅に設定することにより、さらに巻線の撓みを防止し、さらなる歩留まりの向上を図ったものである。
【0054】
図17は本発明の巻線型電子部品の製造方法の他の実施の形態を示す工程図である。この製造方法においては、図17(A)に示すように、四角形のシート14の周辺部近傍の隣接する2辺を直交する線23、24に沿って切断してその切断された辺を基準辺14x、14yとする。次に図17(B)、(C)に示すように裏面、表面に溝4A、5Aを切削加工する際に、該基準辺14x、14yを縦横の基準位置X、Yに合わせて前記シート14を位置決めし、一定の間隔ごとに溝4A、5Aを切削加工する。図17(D)に示すように溝4A、5Aを加工した後に該シート14を線15、16に沿って切断する際にも、同様に基準辺14x、14yを基準位置X、Yに合わせて切断する。
【0055】
このように、材料となるシートの端部の隣接する2辺を切断し、その2辺を基準辺にして位置決めすれば、マークの印刷は不要となり、工程が簡略化され、コスト低減に寄与する。
【0056】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、量産性の向上、寸法精度の向上によるインダクタンスのばらつきの低減、プリント基板への固着強度の向上が達成できる。また、表裏面に切削形成する溝のうち、後で切削する側の面の溝の幅を広くしたので、ダイサーにより溝を切削する場合、ダイサーのシートに対する押し付け圧力によってシートが撓むことが防止され、溝の切削寸法精度が向上する。
【0057】
請求項2の発明によれば、材料となるシートの端部の隣接する2辺を切断し、その2辺を基準辺にして位置決めするため、マークの印刷は不要となり、工程が簡略化され、コスト低減に寄与する。また、表裏面に切削形成する溝のうち、後で切削する側の面の溝の幅を広くしたので、ダイサーにより溝を切削する場合、ダイサーのシートに対する押し付け圧力によってシートが撓むことが防止され、溝の切削寸法精度が向上する。
【0058】
請求項3の発明によれば、端子電極用導体を予めシートに固着しておいて溝の切削やコアへの切断を行うようにしたので、端子電極導体を後付けする場合に比較し、多数個分についての溝(凹部)の形成が同時にでき、量産性、寸法精度、プリント基板への固着強度がより向上する。
【0059】
請求項4の発明によれば、シートとしてグリーンシートを使用したので、グリーンシートに混合する粉末の材質の選択により、種々の透磁率、誘電率、Q値の巻線型電子部品を得ることができる。また、グリーンシートを積層し圧着した焼成前の状態において、ダイサー等により、容易に溝を切削することができる。
【0060】
請求項5の発明によれば、端子電極に窪みを設けてその窪みに巻線端末を導電固着するので、巻線の終端位置が固定され、インダクタンスのばらつきが軽減されると共に、鍔の装着面に突起が現れず、平坦となり、プリント基板への実装が良好に行われる。
【0061】
請求項6の発明によれば、材料となるシートに貫通スリットを設け、その貫通スリットの部分が溝として残るように切断するため、コアの側面に凹部を有して側面より巻線が突出しない幅精度の面で優れた巻線型電子部品が構成できる。
【0062】
請求項7の発明によれば、少なくともシートの表面側の溝を、巻線のターン数に見合う幅となるように調整するため、巻線を整然とコアに巻くことができ、インダクタンス値のばらつきを低減することができ、歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明の製造方法により得られる巻線型電子部品の一例を示す側面図、(B)はそのプリント基板への実装状態を示す斜視図である。
【図2】(A)は図1の巻線型電子部品をシート工法により製造する場合のグリーンシートの積層前の状態を、製品状態では裏面となる側を上にして示す斜視図、(B)はその積層圧着後の状態を示す斜視図である。
【図3】(A)は本実施の形態の製造工程における積層圧着シートの溝切削後の状態を示す底面図、(B)はその側面図である。
【図4】(A)は図3の積層圧着シートの表面への溝切削後の状態を示す平面図、(B)はその側面図である。
【図5】(A)は図4の積層圧着シートの切断線を示す平面図、(B)は切断後の状態を示す側面図、(C)はその部分底面図である。
【図6】本例の巻線型電子部品のコアの溝の切削工程を説明する図である。
【図7】(A)は本発明の製造方法により得られる巻線型電子部品の他の例を示す側面図、(B)はそのコアの端面図、(C)は(B)の変形例を示す端面図である。
【図8】(A)は図7(A)、(B)の巻線型電子部品において、端子電極に窪みを設けるための溝を切削した状態を示す底面図、(B)はその端面図である。
【図9】(A)は図8の積層圧着シートに凹部形成用溝を切削した状態を示す平面図、(B)はその端面図、(C)はその側面図である。
【図10】(A)は図9の積層圧着シートの切断線を示す平面図、(B)、(C)、(D)はそれぞれその切断後の状態を示す端面図、側面図、部分底面図である。
【図11】本発明の製造方法により得られる巻線型電子部品の他の例を示すもので、(A)、(B)、(C)はそれぞれそのコアの平面図、側面図、端面図、(D)、(E)はその巻線を施した後の状態を示す側面図、平面図である。
【図12】図11の巻線型電子部品を得るための積層圧着シートの貫通スリットの位置を示す平面図、(B)はその側面図である。
【図13】(A)は図12の積層圧着シートの切断線を示す平面図、(B)、(C)、はそれぞれその切断後の状態を示す側面図、部分底面図である。
【図14】本発明による製造方法の他の実施の形態を示す積層圧着シートの平面図、(B)はその側面図である。
【図15】本発明による製造方法の他の実施の形態を示すシートの切断線を示す平面図、(B)はその側面図、(C)はその部分底面図である。
【図16】(A)、(B)はそれぞれ本発明の製造方法により得られる巻線型電子部品の他の例を示す側面図、(C)は巻線型電子部品において、巻線の巻数が少ない場合の問題点を説明する側面図、(D)は(A)、(B)の変形例を示す側面図である。
【図17】(A)〜(D)は本発明の巻線型電子部品の製造方法の他の実施の形態を示す工程図である。
【図18】(A)は従来の巻線型電子部品のコアを示す側面図、(B)はその端子電極付着後の状態を示す側面図、(C)はその製品を示す側面図である。
【符号の説明】
1:コア、2:端子電極、2A:導体部分、3:巻線、3a:巻線端末、4、5:凹部、4A、5A:溝、6:自動装着用シート、7:プリント基板、8:はんだ、9:絶縁体グリーンシート、10:導体グリーンシート、11、13:切断マーク、12:フィルム、14:積層圧着シート、14A:シート、14x、14y:基準位置、15、16:切断線、17:ダイサー、19:窪み、19A:溝、20:凹部、20A:貫通スリット、22:シート、23、24:切断線

Claims (7)

  1. 磁性体または非磁性体からなるシートの両面におけるそれぞれ表裏一致する位置に縦横の切断用マークを付し、
    前記切断用マークを基準にして、前記シートの表裏面に、縦横いずれかの方向に複数の溝を等間隔に、いずれか先に切削する面の溝の幅より、後で切削する面の溝の幅を広くして切削し、
    前記シートを、前記溝の両側の非切削部に沿う切断線と、該切断線に直角をなす切断線に沿って等間隔に切断することにより、コアを形成し、
    前記溝の部分に巻線を巻き、該巻線の両端の端末を、裏面における前記溝の両側に設けた端子電極に固着する
    ことを特徴とする巻線型電子部品の製造方法。
  2. 磁性体または非磁性体からなる四角形のシートの周辺部近傍の隣接する2辺を直交する線に沿って切断してその切断された辺を基準辺とし、
    該基準辺を基準として前記シートを位置決めし、該シートの表裏面に、縦横いずれかの方向に複数の溝を等間隔に、いずれか先に切削する面の溝の幅より、後で切削する面の溝の幅を広くして切削し、
    前記シートを、前記溝の両側の非切削部に沿う切断線と、該切断線に直角をなす切断線に沿って等間隔に切断することにより、コアを形成し、
    前記溝の部分に巻線を巻き、該巻線の両端の端末を、裏面における前記溝の両側に設けた端子電極に固着する
    ことを特徴とする巻線型電子部品の製造方法。
  3. 請求項またはの巻線型電子部品の製造方法において、
    前記シートの段階でシートの裏面に端子電極用導体を固着する
    ことを特徴とする巻線型電子部品の製造方法。
  4. 請求項またはの巻線型電子部品の製造方法において、
    グリーンシートの積層圧着体の裏面に、導電体粉末を含んだ端子電極構成用の導体グリーンシートを固着して前記シートとし、該シートの表裏面に前記溝を形成し、縦横に切断後に焼成することにより、コアを得る
    ことを特徴とする巻線型電子部品の製造方法。
  5. 請求項またはの巻線型電子部品の製造方法において、
    前記シートの段階でシートの裏面に端子電極用導電体を固着すると共に、
    前記シートの裏面に、前記導電体に、巻線端末を導電固着する窪みとなる1本以上の溝を形成する
    ことを特徴とする巻線型電子部品の製造方法。
  6. 請求項からまでのいずれかに記載の巻線型電子部品の製造方法において、
    前記シートにおける製品コアの両側面に相当する位置に、巻線の太さより深い溝を形成する貫通スリットを設ける
    ことを特徴とする巻線型電子部品の製造方法。
  7. 請求項からまでのいずれかに記載の巻線型電子部品の製造方法において、
    前記シートの表面の溝の幅を、巻線のターン数に見合う幅となるように調整する
    ことを特徴とする巻線型電子部品の製造方法。
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