JP4057190B2 - ブロック共重合体 - Google Patents

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    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08FMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED BY REACTIONS ONLY INVOLVING CARBON-TO-CARBON UNSATURATED BONDS
    • C08F293/00Macromolecular compounds obtained by polymerisation on to a macromolecule having groups capable of inducing the formation of new polymer chains bound exclusively at one or both ends of the starting macromolecule
    • C08F293/005Macromolecular compounds obtained by polymerisation on to a macromolecule having groups capable of inducing the formation of new polymer chains bound exclusively at one or both ends of the starting macromolecule using free radical "living" or "controlled" polymerisation, e.g. using a complexing agent
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    • C08FMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED BY REACTIONS ONLY INVOLVING CARBON-TO-CARBON UNSATURATED BONDS
    • C08F2438/00Living radical polymerisation
    • C08F2438/01Atom Transfer Radical Polymerization [ATRP] or reverse ATRP

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はアルケニル基を有する重合体をリビングラジカル重合系、または、リビングカチオン重合系に添加することによりブロック共重合体を製造される重合体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
異なる種類の重合体ブロックが結合したブロック共重合体は、一般に異なるモノマーを連続して重合することにより製造される。これまでに様々な重合方法が開発され、それらを利用したブロック共重合体の製造の試みが行われている。しかし、カチオン重合を利用した場合は、成長種であるカルベニウムイオンが不安定なため、重合の制御は困難であった。近年、カチオン重合の成長カルベニウムイオンの異性化や連鎖移動反応、停止反応を抑えた、いわゆるリビングカチオン重合の例が報告された。例えば、東村ら(Macromolecules,17,265,1984)はヨウ化水素とヨウ素を組み合わせた開始剤を用いてビニルエーテルを重合し、カチオンリビング重合が可能であることを報告している。しかし、この開始剤による重合は、電子供与性の大きいアルコキシ基を持つカチオン重合性に富む単量体に限定されることや、また、開始剤が不安定であり、取り扱いも煩雑であるなど種々の問題があった。
【0003】
一方、ケネディら(特開昭62−48704、特開昭64−62308)は、有機カルボン酸やエステル類あるいはエーテル類を開始剤として、ルイス酸と組み合わせて、イソブチレンなどのオレフィン単量体を重合し、オレフィン単量体においてもカチオンリビング重合が可能であることを示した。この方法は、いくつかの改良がなされ、日本ゼオン(特公平7−59601)により、アミン類の添加により連続的なモノマー添加でブロック共重合体を得ることに成功している。この方法では塩化メチレンとヘキサンからなる混合溶媒中で、イソブチレン重合体とスチレン重合体からなるイソブチレン系ブロック共重合体の製造方法が示されている。しかしながら、これら炭素数1又は2のハロゲン化炭化水素は取扱いが困難であったり、環境への排出を防ぐために大がかりな装置が必要となりコスト上昇を招く、といった問題がある。一方、トルエン等の非ハロゲン系溶媒中での重合も可能ではあるが、モノマーによりその適正な極性は非常に微妙な調整が必要であり、反応性の異なる2種以上のモノマーを連続して重合する条件を設定することは非常に困難である。
【0004】
さらに、近年、制御ラジカル重合、更にはリビングラジカル重合が開発され、リビング重合をよくコントロールできるようになってきた。Matyjaszewskiらは、後に説明する原子移動ラジカル重合を利用して、連続的にモノマーを添加する方法や、マクロイニシエーターを用いた方法により、ブロック共重合体を合成する方法を報告している(マクロモレキュールズ(Macromolecules)1995年、28巻、7901頁等)。しかし、これらの方法では、モノマーごとに最適な重合条件が異なるために異なるモノマーを連続して重合することが困難であったり、マクロイニシエーターの末端に次に重合するモノマーに最適な開始剤末端を導入するのが困難だったりとの問題が生じることがある。
【0005】
一方、ブロック共重合体を製造する他の方法として、各重合体ブロックを別々に合成し、それを後でカップリングさせる方法がある。しかし、この場合、定量的で選択的なカップリング反応を達成することは容易ではなく、工業的に有用な方法はほとんど見出されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、重合条件の困難な最適化などを必要とせず容易に製造される、様々な重合体とリビングラジカル重合ポリマー、または、リビングカチオン重合ポリマーとのブロック共重合体を提供することを課題とする。
【0007】
本発明は、アルケニル基を有する重合体(I)を、リビングラジカル重合系、又は、リビングカチオン重合系に添加することにより製造されるブロック共重合体である。
【0008】
重合体(I)のアルケニル基は、限定はされないが、一般式1で表されるものであることが好ましい。
C=C(R)− (1)
(式中、Rは水素原子あるいは炭素数1〜20の炭化水素基である)
さらに、限定はされないが、一般式1においてRが水素であることが好ましく、重合体(I)の末端のアルケニル基が、その炭素−炭素二重結合と共役するカルボニル基、アルケニル基、芳香族環により活性化されていないことが好ましい。
重合体(I)のアルケニル基は、限定はされないが、重合体(I)の末端にあることが好ましい。
【0009】
本発明のリビングラジカル重合系は、限定はされないが、原子移動ラジカル重合系であることが好ましい。
そして、上記原子移動ラジカル重合系において、重合体(I)が、原子移動ラジカル重合の開始剤基となる基を有する場合、製造されるブロック共重合体がマルチブロック共重合体であることが可能であり、その重合体(I)の原子移動ラジカル重合の開始剤基となる基は、限定はされないが、一般式2、または、一般式3で表されるものであることが好ましい。
−C(Ar)(R)(X) (2)
(式中、Arは置換基を持って構わないアリール基、Rは水素原子あるいは炭素数1〜20の炭化水素基、Xは塩素、臭素、ヨウ素である)
−C(COR)(R)(X) (3)
(式中、Rは水素原子あるいはメチル基、Rは炭素数1〜20の有機基、Xは塩素、臭素、ヨウ素である)
【0010】
限定はされないが、一般式2及び3においてRが水素であることが好ましい。さらに、この原子移動ラジカル重合の触媒とする金属錯体が銅、ニッケル、ルテニウム、鉄錯体、中でも特に銅錯体であることが好ましい。
リビングラジカル重合系で重合されるモノマーとしては、限定はされないが、(メタ)アクリル系モノマーであることが好ましい。
【0011】
本発明のリビングカチオン重合系において、重合体(I)が、リビングカチオン重合の開始剤基となる基を有する場合、製造されるブロック共重合体がマルチブロック共重合体であることが可能であり、その重合体(I)のリビングカチオン重合の開始剤基となる基は、限定はされないが、一般式2で表されるものであることが好ましい。
−C(Ar)(R)(X) (2)
(式中、Arは置換基を持って構わないアリール基、Rは水素原子あるいは炭素数1〜20の炭化水素基、Xは塩素、臭素、ヨウ素である)
【0012】
重合体(I)の製造法は特に限定されないが、制御ラジカル重合により製造することが好ましく、中でも、原子移動ラジカル重合により製造されることが好ましい。
重合体(I)が原子移動ラジカル重合により製造される場合において、アルケニル基を有する開始剤、さらにはアリルハロゲン化物を開始剤として用いることが好ましい。
【0013】
重合体(I)は、また、リビングカチオン重合により製造されることが好ましく、それにより製造された重合体としては、スチレン系重合体、イソブチレン系重合体、ポリエーテル系重合体、ビニルエーテル系重合体からなる群から選ばれるものであることが好ましい。
【0014】
重合体(I)としては、限定はされないが、ビニル系重合体、ポリオレフィン系重合体、炭化水素系重合体、ポリエステル系重合体、ポリエーテル系重合体、ポリシロキサン系重合体であることが好ましい。
【0015】
また、本発明で製造される重合体において、重合体(I)のガラス転移点が25℃以上であり、重合体(I)が添加される原子移動ラジカル重合により新たに重合される重合体鎖のガラス転移点が25℃以下であるか、あるいは、重合体(I)のガラス転移点が25℃以下であり、重合体(I)が添加される原子移動ラジカル重合により新たに重合される重合体鎖のガラス転移点が25℃以上であることが好ましい。
また、本発明のブロック共重合体は、熱可塑性エラストマーや耐衝撃性改良材として利用される。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は、少なくとも一つの末端にアルケニル基を有する重合体(I)を、リビングラジカル重合系、又は、リビングカチオン重合系に添加することにより製造されるブロック共重合体である。
【0017】
重合体(I)の説明
重合体(I)の末端のアルケニル基は、限定はされないが、一般式1で表されるものであることが好ましい。
C=C(R)− (1)
(式中、Rは水素原子あるいは炭素数1〜20の炭化水素基である)
【0018】
一般式1において、Rは水素原子あるいは炭素数1〜20の炭化水素基であり、具体的には以下のような基が例示される。
−(CH−CH、−CH(CH)−(CH−CH、−CH(CHCH)−(CH−CH、−CH(CHCH、−C(CH−(CH−CH、−C(CH)(CHCH)−(CH−CH、−C、−C(CH)、−C(CH、−(CH−C、−(CH−C(CH)、−(CH−C(CH
(nは0以上の整数で、各基の合計炭素数は20以下)
これらの内では、水素原子が好ましい。
【0019】
さらに、限定はされないが、重合体(I)の末端のアルケニル基が、その炭素−炭素二重結合と共役するカルボニル基、アルケニル基、芳香族環により活性化されていないことが好ましい。
アルケニル基と重合体(I)の主鎖の結合形式は、特に限定されないが、炭素−炭素結合、エステル結合、エステル結合、カーボネート結合、アミド結合、ウレタン結合等を介して結合されていることが好ましい。
【0020】
重合体(I)のアルケニル基の位置は、特に限定されず、末端でも、主鎖の中央部でも構わない。本発明によれば、末端にある場合、直鎖状のブロック共重合体が合成できるし、主鎖中央部の場合は、そこから枝別れしたブロック共重合体が合成できる。
重合体(I)のアルケニル基の数は、特に限定されない。目的とするブロック重合体の構造により、1つのもの、2つのもの、あるいは、それ以上の数を持つものが選択される。
【0021】
本発明の重合体(I)の分子量分布、すなわち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量と数平均分子量の比は、特に限定されないが、好ましくは1.8未満であり、好ましくは1.7以下であり、より好ましくは1.6以下であり、さらに好ましくは1.5以下であり、特に好ましくは1.4以下であり、最も好ましくは1.3以下である。本発明でのGPC測定においては、通常、移動相としてクロロホルムを用い、測定はポリスチレンゲルカラムにておこない、数平均分子量等はポリスチレン換算で求めることができる。
【0022】
本発明の重合体(I)の数平均分子量は特に制限はないが、500〜1,000,000の範囲が好ましく、1000〜100,000がさらに好ましい。
また、重合体(I)がすでにブロック共重合体である場合には、容易に3種類以上の重合体ブロックを有するブロック共重合体が容易に得られる。この場合、機械物性や、屈折率の調整に有効である。
重合体(I)の製造法については、後に記述する。
【0023】
リビングラジカル重合
以下に重合体(I)を添加してブロック共重合体を製造する重合系の一つのリビングラジカル重合について説明する。
リビングラジカル重合について説明するに際し、まず、ラジカル重合について説明しておく。
ラジカル重合法は、重合開始剤としてアゾ系化合物、過酸化物などを用いて、特定の官能基を有するモノマーとビニル系モノマーとを単に共重合させる「一般的なラジカル重合法」と末端などの制御された位置に特定の官能基を導入することが可能な「制御ラジカル重合法」に分類できる。
【0024】
「一般的なラジカル重合法」は簡便な方法であるが、この方法では特定の官能基を有するモノマーは確率的にしか重合体中に導入されないので、官能化率の高い重合体を得ようとした場合には、このモノマーをかなり大量に使う必要があり、逆に少量使用ではこの特定の官能基が導入されない重合体の割合が大きくなるという問題点がある。またフリーラジカル重合であるため、分子量分布が広く粘度の高い重合体しか得られないという問題点もある。
【0025】
「制御ラジカル重合法」は、更に、特定の官能基を有する連鎖移動剤を用いて重合をおこなうことにより末端に官能基を有するビニル系重合体が得られる「連鎖移動剤法」と重合生長末端が停止反応などを起こさずに生長することによりほぼ設計どおりの分子量の重合体が得られる「リビングラジカル重合法」とに分類することができる。
【0026】
「連鎖移動剤法」は、官能化率の高い重合体を得ることが可能であるが、開始剤に対してかなり大量の特定の官能基を有する連鎖移動剤が必要であり、処理も含めて経済面で問題がある。また上記の「一般的なラジカル重合法」と同様、フリーラジカル重合であるため分子量分布が広く、粘度の高い重合体しか得られないという問題点もある。
【0027】
これらの重合法とは異なり、「リビングラジカル重合法」は、重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどによる停止反応が起こりやすいため制御の難しいとされるラジカル重合でありながら、停止反応が起こりにくく、分子量分布の狭い(Mw/Mnが1.1〜1.5程度)重合体が得られるとともに、モノマーと開始剤の仕込み比によって分子量は自由にコントロールすることができる。
【0028】
従って「リビングラジカル重合法」は、分子量分布が狭く、粘度が低い重合体を得ることができる上に、特定の官能基を有するモノマーを重合体のほぼ任意の位置に導入することができるため、上記特定の官能基を有するビニル系重合体の製造方法としてはより好ましいものである。
【0029】
なお、リビング重合とは狭義においては、末端が常に活性を持ち続けて分子鎖が生長していく重合のことをいうが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にありながら生長していく擬リビング重合も含まれる。本発明における定義も後者である。
【0030】
「リビングラジカル重合法」は近年様々なグループで積極的に研究がなされている。その例としては、たとえばジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)、1994年、116巻、7943頁に示されるようなコバルトポルフィリン錯体を用いるもの、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1994年、27巻、7228頁に示されるようなニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの、有機ハロゲン化物等を開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする「原子移動ラジカル重合」(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)などがあげられる。
【0031】
「リビングラジカル重合法」の中でも、有機ハロゲン化物あるいはハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーを重合する「原子移動ラジカル重合法」は、上記の「リビングラジカル重合法」の特徴に加えて、官能基変換反応に比較的有利なハロゲン等を末端に有し、開始剤や触媒の設計の自由度が大きいことから、特定の官能基を有するビニル系重合体の製造方法としてはさらに好ましい。この原子移動ラジカル重合法としては例えばMatyjaszewskiら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)1995年、117巻、5614頁、マクロモレキュールズ(Macromolecules)1995年、28巻、7901頁,サイエンス(Science)1996年、272巻、866頁、WO96/30421号公報,WO97/18247号公報、WO98/01480号公報,WO98/40415号公報、あるいはSawamotoら、マクロモレキュールズ(Macromolecules)1995年、28巻、1721頁、特開平9−208616号公報、特開平8−41117号公報などが挙げられる。
【0032】
本発明において、これらのリビングラジカル重合のうちどの方法を使用するかは特に制約はないが、原子移動ラジカル重合法が好ましい。
以下にリビングラジカル重合について詳細に説明していくが、その前に、後に説明する重合体(I)の製造に用いることができる制御ラジカル重合のうちの一つ、連鎖移動剤を用いた重合について説明する。連鎖移動剤(テロマー)を用いたラジカル重合としては、特に限定されないが、本発明に適した末端構造を有したビニル系重合体を得る方法としては、次の2つの方法が例示される。
【0033】
特開平4−132706号公報に示されているようなハロゲン化炭化水素を連鎖移動剤として用いてハロゲン末端の重合体を得る方法と、特開昭61−271306号公報、特許2594402号公報、特開昭54−47782号公報に示されているような水酸基含有メルカプタンあるいは水酸基含有ポリスルフィド等を連鎖移動剤として用いて水酸基末端の重合体を得る方法である。
【0034】
以下に、リビングラジカル重合について説明する。
そのうち、まず、ニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いる方法について説明する。この重合では一般に安定なニトロキシフリーラジカル(=N−O・)をラジカルキャッピング剤として用いる。このような化合物類としては、限定はされないが、2,2,6,6−置換−1−ピペリジニルオキシラジカルや2,2,5,5−置換−1−ピロリジニルオキシラジカル等、環状ヒドロキシアミンからのニトロキシフリーラジカルが好ましい。置換基としてはメチル基やエチル基等の炭素数4以下のアルキル基が適当である。具体的なニトロキシフリーラジカル化合物としては、限定はされないが、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル(TEMPO)、2,2,6,6−テトラエチル−1−ピペリジニルオキシラジカル、2,2,6,6−テトラメチル−4−オキソ−1−ピペリジニルオキシラジカル、2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジニルオキシラジカル、1,1,3,3−テトラメチル−2−イソインドリニルオキシラジカル、N,N−ジ−t−ブチルアミンオキシラジカル等が挙げられる。ニトロキシフリーラジカルの代わりに、ガルビノキシル(galvinoxyl)フリーラジカル等の安定なフリーラジカルを用いても構わない。
【0035】
上記ラジカルキャッピング剤はラジカル発生剤と併用される。ラジカルキャッピング剤とラジカル発生剤との反応生成物が重合開始剤となって付加重合性モノマーの重合が進行すると考えられる。両者の併用割合は特に限定されるものではないが、ラジカルキャッピング剤1モルに対し、ラジカル開始剤0.1〜10モルが適当である。
【0036】
ラジカル発生剤としては、種々の化合物を使用することができるが、重合温度条件下で、ラジカルを発生しうるパーオキシドが好ましい。このパーオキシドとしては、限定はされないが、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類、ジクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド等のジアルキルパーオキシド類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート類、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル類等がある。特にベンゾイルパーオキシドが好ましい。さらに、パーオキシドの代わりにアゾビスイソブチロニトリルのようなラジカル発生性アゾ化合物等のラジカル発生剤も使用しうる。
【0037】
Macromolecules 1995,28,2993で報告されているように、ラジカルキャッピング剤とラジカル発生剤を併用する代わりに、下図のようなアルコキシアミン化合物を開始剤として用いても構わない。
【0038】
【化1】
Figure 0004057190
【0039】
アルコキシアミン化合物を開始剤として用いる場合、それが上図で示されているような水酸基等の官能基を有するものを用いると末端に官能基を有する重合体が得られる。これを本発明の方法に利用すると、末端に官能基を有する重合体が得られる。
【0040】
上記のニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いる重合で用いられるモノマー、溶媒、重合温度等の重合条件は、限定されないが、次に説明する原子移動ラジカル重合について用いるものと同様で構わない。
【0041】
<原子移動ラジカル重合>
次に、本発明のリビングラジカル重合としてより好ましい原子移動ラジカル重合法について説明する。
この原子移動ラジカル重合では、有機ハロゲン化物、特に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物(例えば、α位にハロゲンを有するカルボニル化合物や、ベンジル位にハロゲンを有する化合物)、あるいはハロゲン化スルホニル化合物等が開始剤として用いられる。
【0042】
具体的に例示するならば、
−CHX、C−C(H)(X)CH、C−C(X)(CH
(ただし、上の化学式中、Cはフェニル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
−C(H)(X)−CO、R−C(CH)(X)−CO、R−C(H)(X)−C(O)R、R−C(CH)(X)−C(O)R
(式中、R、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
【0043】
−C−SO
(上記の各式において、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
等が挙げられる。
【0044】
原子移動ラジカル重合の開始剤として、重合を開始する官能基以外の官能基を有する有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物を用いることもできる。このような場合、一方の主鎖末端に官能基を、他方の主鎖末端に原子移動ラジカル重合の生長末端構造を有するビニル系重合体が製造される。このような官能基としては、アルケニル基、架橋性シリル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。
【0045】
アルケニル基を有する有機ハロゲン化物としては限定されず、例えば、一般式4に示す構造を有するものが例示される。
C(X)−R−R−C(R)=CH (4)
(式中、Rは水素、またはメチル基、R、Rは水素、または、炭素数1〜20の1価のアルキル基、アリール基、またはアラルキル、または他端において相互に連結したもの、Rは、−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、またはo−,m−,p−フェニレン基、Rは直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいても良い、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
【0046】
置換基R、Rの具体例としては、水素、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。RとRは他端において連結して環状骨格を形成していてもよい。
【0047】
一般式4で示される、アルケニル基を有する有機ハロゲン化物の具体例としては、
XCHC(O)O(CHCH=CH
CC(H)(X)C(O)O(CHCH=CH
(HC)C(X)C(O)O(CHCH=CH
CHCHC(H)(X)C(O)O(CHCH=CH
【0048】
【化2】
Figure 0004057190
【0049】
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
XCHC(O)O(CHO(CHCH=CH
CC(H)(X)C(O)O(CHO(CHCH=CH
(HC)C(X)C(O)O(CHO(CHCH=CH
CHCHC(H)(X)C(O)O(CHO(CHCH=CH
【0050】
【化3】
Figure 0004057190
【0051】
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−(CH−CH=CH
o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CH−CH=CH
o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CH−CH=CH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
【0052】
o,m,p−XCH−C−(CH−O−(CH−CH=CH
o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CH
O−(CH−CH=CH
o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CH
O−(CHCH=CH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
【0053】
o,m,p−XCH−C−O−(CH−CH=CH
o,m,p−CHC(H)(X)−C−O−(CH−CH=CH
o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−O−(CH
CH=CH
【0054】
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)o,m,p−XCH−C−O−(CH−O−(CH−CH=CH
o,m,p−CHC(H)(X)−C−O−(CH
O−(CH−CH=CH
o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−O−(CH
O−(CH−CH=CH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
【0055】
アルケニル基を有する有機ハロゲン化物としてはさらに一般式5で示される化合物が挙げられる。
C=C(R)−R−C(R)(X)−R10−R (5)
(式中、R、R、R、R、Xは上記に同じ、R10は、直接結合、−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、または、o−,m−,p−フェニレン基を表す)
【0056】
は直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基(1個以上のエーテル結合を含んでいても良い)であるが、直接結合である場合は、ハロゲンの結合している炭素にビニル基が結合しており、ハロゲン化アリル化物である。この場合は、隣接ビニル基によって炭素−ハロゲン結合が活性化されているので、R10としてC(O)O基やフェニレン基等を有する必要は必ずしもなく、直接結合であってもよい。Rが直接結合でない場合は、炭素−ハロゲン結合を活性化するために、R10としてはC(O)O基、C(O)基、フェニレン基が好ましい。
【0057】
一般式5の化合物を具体的に例示するならば、
CH=CHCHX、CH=C(CH)CHX、
CH=CHC(H)(X)CH、CH=C(CH)C(H)(X)CH
CH=CHC(X)(CH、CH=CHC(H)(X)C
CH=CHC(H)(X)CH(CH
CH=CHC(H)(X)C、CH=CHC(H)(X)CH
CH=CHCHC(H)(X)−COR、
CH=CH(CHC(H)(X)−COR、
CH=CH(CHC(H)(X)−COR、
CH=CH(CHC(H)(X)−COR、
CH=CHCHC(H)(X)−C
CH=CH(CHC(H)(X)−C
CH=CH(CHC(H)(X)−C
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基)
等を挙げることができる。
【0058】
アルケニル基を有するハロゲン化スルホニル化合物の具体例を挙げるならば、
o−,m−,p−CH=CH−(CH−C−SOX、
o−,m−,p−CH=CH−(CH−O−C−SOX、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)等である。
【0059】
上記架橋性シリル基を有する有機ハロゲン化物としては特に限定されず、例えば一般式6に示す構造を有するものが例示される。
C(X)−R−R−C(H)(R)CH
[Si(R112−b(Y)O]−Si(R123−a(Y)(6)(式中、R、R、R、R、R、Xは上記に同じ、R11、R12は、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または(R’)SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R11またはR12が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基または加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0,1,2,または3を、また、bは0,1,または2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする)
【0060】
一般式6の化合物を具体的に例示するならば、
XCHC(O)O(CHSi(OCH
CHC(H)(X)C(O)O(CHSi(OCH
(CHC(X)C(O)O(CHSi(OCH
XCHC(O)O(CHSi(CH)(OCH
CHC(H)(X)C(O)O(CHSi(CH)(OCH
(CHC(X)C(O)O(CHSi(CH)(OCH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、ヨウ素、nは0〜20の整数、)
【0061】
XCHC(O)O(CHO(CHSi(OCH
CC(H)(X)C(O)O(CHO(CHSi(OCH
(HC)C(X)C(O)O(CHO(CHSi(OCH
CHCHC(H)(X)C(O)O(CHO(CHSi(OCH
XCHC(O)O(CHO(CHSi(CH)(OCH
CC(H)(X)C(O)O(CHO(CH
Si(CH)(OCH
(HC)C(X)C(O)O(CHO(CH
Si(CH)(OCH
CHCHC(H)(X)C(O)O(CHO(CH
Si(CH)(OCH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、ヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
【0062】
o,m,p−XCH−C−(CHSi(OCH
o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CHSi(OCH
o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CHSi(OCH
o,m,p−XCH−C−(CHSi(OCH
o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CHSi(OCH
o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CHSi(OCH
o,m,p−XCH−C−(CH−O−(CHSi(OCH
o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CH
O−(CHSi(OCH
o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CH
O−(CHSi(OCH
o,m,p−XCH−C−O−(CHSi(OCH
o,m,p−CHC(H)(X)−C−O−(CHSi(OCH
o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−O−(CH
Si(OCH
o,m,p−XCH−C−O−(CH−O−(CH
Si(OCH
o,m,p−CHC(H)(X)−C−O−(CH
O−(CHSi(OCH
o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−O−(CH
O−(CHSi(OCH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
等が挙げられる。
【0063】
上記架橋性シリル基を有する有機ハロゲン化物としてはさらに、一般式7で示される構造を有するものが例示される。
(R123−a(Y)Si−[OSi(R112−b(Y)
CH−C(H)(R)−R−C(R)(X)−R10−R(7)
(式中、R、R、R、R、R10、R11、R12、a、b、m、X、Yは上記に同じ)
【0064】
このような化合物を具体的に例示するならば、
(CHO)SiCHCHC(H)(X)C
(CHO)(CH)SiCHCHC(H)(X)C
(CHO)Si(CHC(H)(X)−COR、
(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−COR、
(CHO)Si(CHC(H)(X)−COR、
(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−COR、
(CHO)Si(CHC(H)(X)−COR、
(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−COR、
(CHO)Si(CHC(H)(X)−COR、
(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−COR、
(CHO)Si(CHC(H)(X)−C
(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−C
(CHO)Si(CHC(H)(X)−C
(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−C
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基)
等が挙げられる。
【0065】
上記ヒドロキシル基を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物としては特に限定されず、下記のようなものが例示される。
HO−(CH−OC(O)C(H)(R)(X)
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは1〜20の整数)
【0066】
上記アミノ基を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物としては特に限定されず、下記のようなものが例示される。
N−(CH−OC(O)C(H)(R)(X)
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは1〜20の整数)
【0067】
上記エポキシ基を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物としては特に限定されず、下記のようなものが例示される。
【0068】
【化4】
Figure 0004057190
【0069】
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは1〜20の整数)
【0070】
本発明の末端構造を1分子内に2つ以上有する重合体を得るためには、2つ以上の開始点を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物が開始剤として用いるのが好ましい。具体的に例示するならば、
【0071】
【化5】
Figure 0004057190
【0072】
【化6】
Figure 0004057190
【0073】
等があげられる。
この重合において用いられるビニル系モノマーとしては特に制約はなく、後に例示するものをすべて好適に用いることができる。
【0074】
重合触媒として用いられる遷移金属錯体としては特に限定されないが、好ましくは周期律表第7族、8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体錯体である。更に好ましいものとして、0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄又は2価のニッケルの錯体が挙げられる。なかでも、銅の錯体が好ましい。1価の銅化合物を具体的に例示するならば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅等である。銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために2,2′−ビピリジル及びその誘導体、1,10−フェナントロリン及びその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン等の配位子が添加される。また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl(PPh)も触媒として好適である。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類が添加される。更に、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl(PPh)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl(PPh)、及び、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr(PBu)も、触媒として好適である。
【0075】
重合は無溶剤または各種の溶剤中で行うことができる。溶剤の種類としては、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒等が挙げられ、単独または2種以上を混合して用いることができる。また、限定はされないが、重合は0℃〜200℃の範囲で行うことができ、好ましくは50〜150℃である。
【0076】
<リビングラジカル重合によるマルチブロック共重合体の製造>
原子移動ラジカル重合系において、重合体(I)が、原子移動ラジカル重合の開始剤基となる基を有する場合、製造されるブロック共重合体がマルチブロック共重合体であることが可能であり、その重合体(I)の原子移動ラジカル重合の開始剤基となる基は、限定はされないが、一般式2、または、一般式3で表されるものであることが好ましい。
−C(Ar)(R)(X) (2)
(式中、Arは置換基を持って構わないアリール基、Rは水素原子あるいは炭素数1〜20の炭化水素基、Xは塩素、臭素、ヨウ素である)
−C(COR)(R)(X) (3)
(式中、Arは置換基を持って構わないアリール基、Rは水素原子あるいはメチル基、Rは炭素数1〜20の有機基、Xは塩素、臭素、ヨウ素である)
【0077】
限定はされないが、一般式2及び3においてRが水素であることが好ましい。一般式2において、Arが置換基を有するものである場合、置換基としては特に限定はされないが、ハロゲン又は炭素数1〜20の飽和又は不飽和の炭化水素基等を挙げることができる。
【0078】
<リビングラジカル重合のモノマー>
本発明のリビングラジカル重合に用いられるビニル系モノマーとしては特に限定されず、各種のものを用いることができる。例示するならば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマー;
【0079】
スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。
【0080】
これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。なかでも、生成物の物性等から、スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル酸系モノマーが好ましい。より好ましくは、アクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーであり、特に好ましくはアクリル酸エステルモノマーであり、更に好ましくは、アクリル酸ブチルである。
【0081】
本発明においては、リビングラジカル重合の生長末端が重合体(I)のアルケニル基に付加する必要があるので、その生長末端の構造の違いによる付加活性の順は、これにより限定されるわけではないが、一般に、アクリル型末端、メタクリル型末端、スチレン型末端の順に低下する。よって、付加しにくくブロック共重合体が生成しにくい重合系において、アクリル酸系モノマーのような生長末端の活性が高くなるモノマーを添加してやると、そのモノマーが末端となっている時にアルケニル基に付加しやすくなり、ブロック共重合体の収率が向上することがある。本発明においては、これらの好ましいモノマーを他のモノマーと共重合させても構わなく、その際は、これらの好ましいモノマーが重量比で40%含まれていることが好ましい。なお上記表現形式で例えば(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/あるいはメタクリル酸を表す。
【0082】
<リビングラジカル重合系への重合体(I)添加>
重合体(I)のリビングラジカル重合系への添加時期は特に限定されないが、重合終期が好ましい。重合体(I)を添加する量は、特に限定されないが、リビングラジカル重合の成長末端の数と、重合体(I)の一般式1で示される末端の数が一致することが好ましい。
重合体(I)の添加は、そのまま添加しても構わないし、リビングラジカル重合に悪影響を与えない溶媒に溶解して添加しても構わない。
【0083】
原子移動ラジカル重合の開始剤基を有する重合体(I)の原子移動ラジカル重合系への添加時期は特に限定されないが、目的に合ったマルチブロック共重合体を製造するために適正化が必要である。例えば、既に述べたように重合初期から開始剤として添加する方法、重合中に添加する方法、重合が終了した時点で添加し、その時あるいはその後に再びラジカル重合性のモノマーを添加する方法などが挙げられる。
【0084】
重合終了時点とは、好ましくは90%以上のモノマーが重合した時点であり、更に好ましくは99%以上の時点である。この重合終了後、原子移動ラジカル重合の開始剤基を有する重合体(I)を添加すると、それだけではマルチブロックになりにくいので、再びラジカル重合性のモノマーを添加する必要がある。この添加の時期は、あまり遅すぎると、原子移動ラジカル重合の開始剤基を有する重合体(I)の生長末端が直接別の原子移動ラジカル重合の開始剤基を有する重合体(I)のアルケニル基末端に付加してしまう可能性もあるので、注意が必要である。
【0085】
原子移動ラジカル重合の開始剤基を有する重合体(I)を添加する量は、特に限定されないが、原子移動ラジカル重合の生長末端の数と、それが付加する原子移動ラジカル重合の開始剤基を有する重合体(I)の原子移動ラジカル重合の開始剤基の数が一致することが好ましい。原子移動ラジカル重合の開始剤基を有する重合体(I)を最初から原子移動ラジカル重合の開始剤として用いる場合は、既に述べたように付加されるアルケニル末端と生長末端の数が原理的に一致するが、他の開始剤を用いた場合には、その分だけ成長末端の方が上回ることになる。よって、目的とするマルチブロック共重合体に応じてその比を調整することが好ましい。
【0086】
リビングカチオン重合
以下に重合体(I)を添加してブロック共重合体を製造する重合系の一つのリビングカチオン重合について説明する。
リビングカチオン重合とは、カチオン重合の問題点である、成長カルベニウムイオンの異性化や連鎖移動反応、停止反応を抑えた重合法で、生長末端が見かけ上失活することなく、重合が進行していく重合のことである。見かけ上というのは、上述したリビングラジカル重合と同様に、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にありながら生長していくものも含まれる。リビングカチオン重合の報告例としては、東村ら(Macromolecules,17,265,1984)のヨウ化水素とヨウ素を組み合わせた開始剤を用いてビニルエーテルを重合したもの、ケネディら(特開昭62−48704、特開昭64−62308)の、有機カルボン酸やエステル類あるいはエーテル類を開始剤として、ルイス酸と組み合わせて、イソブチレンなどのオレフィン単量体を重合したもの等が挙げられる。
【0087】
本発明において、重合体(I)を添加することにより目的のブロック共重合体を製造するリビングカチオン重合は、限定はされないが、下記一般式8で表わされる化合物の存在下に、カチオン重合性単量体を重合させるものである。
(CR1314X)nR15 (8)
(式中Xはハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基またはアシロキシ基から選ばれる置換基、R13、R14はそれぞれ水素原子または炭素数1〜6の1価炭化水素基でR13、R14は同一であっても異なっていても良く、R15は多価芳香族炭化水素基または多価脂肪族炭化水素基であり、nは1〜6の自然数を示す。)
【0088】
<リビングカチオン重合のモノマー>
本発明のリビングカチオン重合に用いられるモノマーは特に限定されないが、脂肪族オレフィン類、芳香族ビニル類、ジエン類、ビニルエーテル類、シラン類、ビニルカルバゾール、β−ピネン、アセナフチレン等の単量体が例示できる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用される。以下にモノマーの具体例を例示するが、これらの内では、生成する共重合体の物性面からイソブチレンが好ましい。
【0089】
脂肪族オレフィン系単量体としては、イソブチレン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、シクロヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキセン、オクテン、ノルボルネン等が挙げられる。
【0090】
芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、o−、m−又はp−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−メチル−o−メチルスチレン、α−メチル−m−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、β−メチル−o−メチルスチレン、β−メチル−m−メチルスチレン、β−メチル−p−メチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、α−メチル−2,6−ジメチルスチレン、α−メチル−2,4−ジメチルスチレン、β−メチル−2,6−ジメチルスチレン、β−メチル−2,4−ジメチルスチレン、o−、m−又はp−クロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、α−クロロ−o−クロロスチレン、α−クロロ−m−クロロスチレン、α−クロロ−p−クロロスチレン、β−クロロ−o−クロロスチレン、β−クロロ−m−クロロスチレン、β−クロロ−p−クロロスチレン、2,4,6−トリクロロスチレン、α−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、α−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、o−、m−又はp−t−ブチルスチレン、o−、m−又はp−メトキシスチレン、o−、m−又はp−クロロメチルスチレン、o−、m−又はp−ブロモメチルスチレン、シリル基で置換されたスチレン誘導体、インデン、ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0091】
ジエン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、ジビニルベンゼン、エチリデンノルボルネン等が挙げられる。
【0092】
ビニルエーテル系単量体としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、(n−、イソ)プロピルビニルエーテル、(n−、sec−、tert−、イソ)ブチルビニルエーテル、メチルプロペニルエーテル、エチルプロペニルエーテル等が挙げられる。
【0093】
シラン化合物としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリビニルメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0094】
<リビングカチオン重合の開始剤>
上記一般式8で表わされる化合物は開始剤となるものでルイス酸等の存在下炭素陽イオンを生成し、カチオン重合の開始点になると考えられる。本発明で用いられる一般式8の化合物の例としては、次のような化合物等が挙げられる。
【0095】
(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン
C(CHCl
1,4−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン
1,4−Cl(CHCCC(CHCl
1,3−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン
1,3−Cl(CHCCC(CHCl
1,3,5−トリス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン
1,3,5−(ClC(CH
1,3−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)−5−(tert−ブチル)ベンゼン 1,3−(C(CHCl)-5−(C(CH)C
【0096】
これらの中でも特に好ましいのはビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[C(C(CHCl)]である[なおビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼンは、ビス(α−クロロイソプロピル)ベンゼン、ビス(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼンあるいはジクミルクロライドとも呼ばれる]。これは2官能開始剤であり、これから重合を開始すると両末端が成長末端となる重合体が得られ、ブロック共重合体(I)と反応させることにより、容易にABCBA型のブロックコポリマーが得られる。
【0097】
<リビングカチオン重合の触媒>
イソブチレン系ブロック共重合体の重合に際し、さらにルイス酸触媒を共存させることもできる。このようなルイス酸としてはカチオン重合に使用できるものであれば良く、TiCl、TiBr、BCl、BF、BF・OEt、SnCl、SbCl、SbF、WCl、TaCl、VCl、FeCl、ZnBr、AlCl、AlBr等の金属ハロゲン化物;EtAlCl、EtAlCl等の有機金属ハロゲン化物を好適に使用することができる。中でも触媒としての能力、工業的な入手の容易さを考えた場合、TiCl、BCl、SnClが好ましい。ルイス酸の使用量は、特に限定されないが、使用する単量体の重合特性あるいは重合濃度等を鑑みて設定することができる。通常は一般式8で表される化合物に対して0.1〜100モル当量使用することができ、好ましくは1〜60モル当量の範囲である。
【0098】
<リビングカチオン重合の電子供与体成分>
イソブチレン系ブロック共重合体の重合に際しては、さらに必要に応じて電子供与体成分を共存させることもできる。この電子供与体成分は、カチオン重合に際して、成長炭素カチオンを安定化させる効果があるものと考えられており、電子供与体の添加によって分子量分布の狭い構造が制御された重合体が生成する。使用可能な電子供与体成分としては特に限定されないが、例えば、ピリジン類、アミン類、アミド類、スルホキシド類、エステル類、または金属原子に結合した酸素原子を有する金属化合物等を挙げることができる。
【0099】
各成分の使用量は目的とする重合体の特性によって適宜設計することが可能である。まずイソブチレン系単量体及びイソブチレンとは別種のカチオン重合性単量体と一般式8で表わされる化合物のモル当量関係によって、得られる重合体の分子量が決定できる。通常得られるブロック共重合体の数平均分子量が20,000〜500,000程度になるように設定される。
【0100】
<リビングカチオン重合の重合条件>
本発明は必要に応じて溶剤中で行うことができ、このような溶剤としてはカチオン重合を本質的に阻害しなければ特に制約なくどれでも使用することができる。具体的には、塩化メチル、ジクロロメタン、クロロホルム、塩化エチル、ジクロロエタン、n−プロピルクロライド、n−ブチルクロライド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等のアルキルベンゼン類;エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の直鎖式脂肪族炭化水素類;2−メチルプロパン、2−メチルブタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,2,5−トリメチルヘキサン等の分岐式脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素類;石油留分を水添精製したパラフィン油等を挙げることができる。これらの中では、トルエン混合溶媒が、環境に対する安全性と重合物性等から好ましい。
【0101】
また、炭素数3〜8の1級及び/又は2級のモノハロゲン化炭化水素も好適に使用できる。この具体例としては、例えば、1−クロロプロパン、1−クロロ−2−メチルプロパン、1−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルブタン、1−クロロ−3−メチルブタン、1−クロロ−2,2−ジメチルブタン、1−クロロ−3,3−ジメチルブタン、1−クロロ−2,3−ジメチルブタン、1−クロロペンタン、1−クロロ−2−メチルペンタン、1−クロロ−3−メチルペンタン、1−クロロ−4−メチルペンタン、1−クロロヘキサン、1−クロロ−2−メチルヘキサン、1−クロロ−3−メチルヘキサン、1−クロロ−4−メチルヘキサン、1−クロロ−5−メチルヘキサン、1−クロロヘプタン、1−クロロオクタン、2−クロロプロパン、2−クロロブタン、2−クロロペンタン、2−クロロペンタン、2−クロロヘキサン、2−クロロヘプタン、2−クロロオクタン、クロロベンゼン等が使用でき、これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、イソブチレン系ブロック共重合体の溶解度、分解による無害化の容易さ、コスト等のバランスから、1−クロロブタンが好ましく使用できる。
【0102】
これらの溶剤は、ブロック共重合体を構成する単量体の重合特性及び生成する重合体の溶解性等のバランスを考慮して単独又は2種以上を組み合わせて使用される。溶剤の使用量は、得られる重合体溶液の粘度や除熱の容易さを考慮して、重合体の濃度が1〜50wt%、好ましくは5〜35wt%となるように決定される。
【0103】
実際の重合を行うに当たっては、各成分を冷却下例えば−100℃以上0℃未満の温度で混合する。エネルギーコストと重合の安定性を釣り合わせるために、特に好ましい温度範囲は−30℃〜−80℃である。
【0104】
<リビングカチオン重合によるマルチブロック共重合体の製造>
本発明のリビングカチオン重合系において、重合体(I)が、リビングカチオン重合の開始剤基となる基を有する場合、製造されるブロック共重合体がマルチブロック共重合体であることが可能であり、その重合体(I)のリビングカチオン重合の開始剤基となる基は、限定はされないが、一般式2で表されるものであることが好ましい。
−C(Ar)(R)(X) (2)
(式中、Arは置換基を持って構わないアリール基、Rは水素原子あるいは炭素数1〜20の炭化水素基、Xは塩素、臭素、ヨウ素である)
【0105】
<リビングカチオン重合系への重合体(I)添加>
重合体(I)のリビングカチオン重合系への添加時期は特に限定されないが、重合終期が好ましい。また、重合体(I)はその製法によっては末端にカチオン活性なハロゲン基を持つものがある。例えば、アリルハライドを開始剤として原子移動ラジカル重合を行い、重合体(I)を製造した場合が挙げられる。この場合には、この部分からカチオン重合が開始する可能性があるので、それを嫌う場合にも、添加は重合終期でモノマーがほとんどない状態が好ましい。
【0106】
重合体(I)を添加する量は、特に限定されないが、リビングカチオン重合の成長末端の数と、重合体(I)のアルケニル基の数が一致することが好ましい。
重合体(I)の添加は、そのまま添加しても構わないし、リビングカチオン重合に悪影響を与えない溶媒に溶解して添加しても構わない。
【0107】
リビングカチオン重合の開始剤基を有する重合体(I)のリビングカチオン重合系への添加時期は特に限定されないが、目的に合ったマルチブロック共重合体を製造するために適正化が必要である。例えば、既に述べたように重合初期から開始剤として添加する方法、重合中に添加する方法、重合が終了した時点で添加し、その時あるいはその後に再びカチオン重合性のモノマーを添加する方法などが挙げられる。重合終了時点とは、好ましくは90%以上のモノマーが重合した時点であり、更に好ましくは99%以上の時点である。この後、リビングカチオン重合の開始剤基を有する重合体(I)を添加すると、それだけではマルチブロックにならないので、再びカチオン重合性のモノマーを添加する必要がある。この添加の時期は、あまり遅すぎると、リビングカチオン重合の開始剤基を有する重合体(I)の一般式2の末端が直接アルケニル基に付加してしまう可能性もあるので、注意が必要である。
【0108】
リビングカチオン重合の開始剤基を有する重合体(I)を添加する量は、特に限定されないが、リビングカチオン重合の成長末端の数と、それが付加する重合体(I)のアルケニル基の数が一致することが好ましい。リビングカチオン重合の開始剤基を有する重合体(I)を最初から開始剤として用いる場合は、既に述べたように原理的に一致するが、他の開始剤を用いた場合には、その分だけ成長末端の方が上回ることになる。よって、目的とするマルチブロック共重合体に応じてその比を調整することが好ましい。
【0109】
重合体( I )の製造
以下に、本発明に用いられるアルケニル基を有する重合体(I)の製造法について説明する。
【0110】
<重合体(I)の重合法の概要>
重合体(I)を製造する重合法は、特に限定されない。アニオン重合、カチオン重合、ラジカル重合、配位重合、グループトランスファー重合、縮合重合、開環重合等様々な重合により合成される。中でも、分子量及び分子量分布が制御される方が好ましいので、リビングアニオン重合、リビングカチオン重合、リビングラジカル重合等のリビング重合が好ましい。中でも、限定はされないが、リビングカチオン重合とリビングラジカル重合が好ましく、よりリビングラジカル重合が好ましく、特に原子移動ラジカル重合が好ましい。
【0111】
<重合体(I)の主鎖の概要>
本発明の重合体(I)の主鎖は特に限定されない。ポリエステル系重合体、ポリエーテル系重合体、ビニル系重合体、(メタ)アクリル系重合体、ポリシロキサン系重合体、炭化水素系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリアリレート系重合体、ジアリルフタレート系重合体、ポリアミド系重合体、ポリイミド系重合体等が挙げられる。
【0112】
<末端官能基導入の概要>
アルケニル基を重合体に導入する方法については、種々提案されているものを用いることができるが、重合後にアルケニル基を導入する方法と、重合中にアルケニル基を導入する方法に大別することができる。重合後にアルケニル基を導入する方法としては、例えば末端、主鎖、あるいは側鎖に水酸基、アルコキシド基等の官能基を有する有機重合体に、上記官能基に対して反応性を示す活性基及びアルケニル基を有する有機化合物を反応させることによりアルケニル基を末端、主鎖あるいは側鎖に導入することができる。上記官能基に対して反応性を示す活性基及びアルケニル基を有する有機化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、アクリル酸クロライド、アクリル酸ブロマイド等のC−C20の不飽和脂肪酸、酸ハライド、酸無水物等やアリルクロロホルメート(CH=CHCHOCOCl)、アリルブロモホルメート(CH=CHCHOCOBr)等のC−C20の不飽和脂肪酸置換炭酸ハライド、アリルクロライド、アリルブロマイド、ビニル(クロロメチル)ベンゼン、アリル(クロロメチル)ベンゼン、ビニル(ブロモメチル)ベンゼン、アリル(ブロモメチル)ベンゼン、アリル(クロロメチル)エーテル、アリル(クロロメトキシ)ベンゼン、1−ブテニル(クロロメチル)エーテル、1−ヘキセニル(クロロメトキシ)ベンゼン、アリルオキシ(クロロメチル)ベンゼン等が挙げられる。
【0113】
重合中にアルケニル基を導入する方法としては、例えばラジカル重合法で重合する際に、アリルメタクリレート、アリルアクリレート等の分子中にラジカル重合性の低いアルケニル基を有するビニル系モノマー、アリルメルカプタン等のラジカル反応性の低いアルケニル基を有するラジカル連鎖移動剤を用いることにより、重合体の主鎖又は末端にアルケニル基を導入することができる。
【0114】
<制御ラジカル重合による重合体(I)の製造>
以下に制御ラジカル重合による重合体(I)の製造について説明する。
制御ラジカル重合そのものについては、上述のリビングラジカル重合の項で説明しているので、ここでは、アルケニル基の導入する方法と、原子移動ラジカル重合の開始剤基の導入法について説明する。
【0115】
<末端アルケニル基導入>
アルケニル基、好ましくは一般式1で表わされる基を、重合体に導入する方法については、種々提案されているものを用いることができる。以下の[A]〜[C]において、主に原子移動ラジカル重合により製造されるビニル系重合体に関して、具体的に例示して説明するが,これらに限定されるものではない。その他の重合体に関しては、一般的に知られた方法を用いて合成することができ、また、以下に述べる方法の中の水酸基を変換する方法等を利用することもできる。
【0116】
[A]ラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、重合体主鎖に直接アルケニル基を導入する方法。
[B]ハロゲンを少なくとも1個有するビニル系重合体を用いて、このハロゲンをアルケニル基含有官能基に置換する方法。
[C]水酸基を少なくとも1個有するビニル系重合体を用いて、この水酸基をアルケニル基含有官能基に置換する方法。
【0117】
上記合成法[A]の重合体主鎖に直接アルケニル基を導入する方法としては特に限定されないが、具体的には次に述べる[A−a]〜[A−b]の方法などを挙げることができる。
【0118】
[A−a]リビングラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、所定のビニル系モノマーとともに、下記一般式9等で表される一分子中に重合性のアルケニル基および重合性の低いアルケニル基を併せ持つ化合物をも反応させる方法。
【0119】
C=C(R)−R16−R17−C(R)=CH (9)
(式中、Rは上記と同じで、互いに同一であっても異なっていてもよい。R16は−C(O)O−(エステル基)、またはo−,m−もしくはp−フェニレン基を示す。R17は直接結合、または1個以上のエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を示す。R16がエステル基のものは(メタ)アクリレート系化合物、R16がフェニレン基のものはスチレン系の化合物である。)
【0120】
上記一般式9におけるR17としては、特に限定されないが、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン等のアルキレン基;o−,m−,p−フェニレン基;ベンジル基等のアラルキル基;−CHCH−O−CH−や−O−CH−等のエーテル結合を含むアルキレン基等が挙げられる。
【0121】
上記一般式9の化合物の中でも、入手が容易であるという点から下記のものが好ましい。
C=C(H)C(O)O(CH−CH=CH、HC=C(CH)C(O)O(CH−CH=CH
上記の各式において、nは0〜20の整数を示す。
C=C(H)C(O)O(CH−O−(CHCH=CH、HC=C(CH)C(O)O(CH−O−(CHCH=CH
上記の各式において、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数を示す。
【0122】
o−,m−,p−ジビニルベンゼン、o−,m−,p−HC=CH−C−CHCH=CH、o−,m−,p−HC=CH−C−CH−C(CH)=CH、o−,m−,p−HC=CH−C−CHCHCH=CH、o−,m−,p−HC=CH−C−OCHCH=CH、o−,m−,p−HC=CH−C−OCH−C(CH)=CH、o−,m−,p−HC=CH−C−OCHCHCH=CH、o−,m−,p−HC=C(CH)−C−C(CH)=CH、o−,m−,p−HC=C(CH)−C−CHCH=CH、o−,m−,p−HC=C(CH)−C−CHC(CH)=CH、o−,m−,p−HC=C(CH)−C−CHCHCH=CH、o−,m−,p−HC=C(CH)−C−OCHCH=CH、o−,m−,p−HC=C(CH)−C−OCH−C(CH)=CH、o−,m−,p−HC=C(CH)−C−OCHCHCH=CH
上記の各式において、Cはフェニレン基を示す。
【0123】
なお、上記重合性のアルケニル基および重合性の低いアルケニル基を併せ持つ化合物を反応させる時期としては特に制限はないが、リビングラジカル重合において、重合反応の終期あるいは所定のモノマーの反応終了後に、第2のモノマーとして反応させるのが好ましい。
【0124】
[A−b]リビングラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、重合反応の終期あるいは所定のモノマーの反応終了後に、第2のモノマーとして、重合性の低いアルケニル基を少なくとも2個有する化合物を反応させる方法。
このような化合物としては特に限定されないが、一般式10に示される化合物等が挙げられる。
C=C(R)−R18−C(R)=CH(10)
式中、Rは上記と同じで、互いに同一でも異なっていてもよい。R18は1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を示す。
【0125】
上記一般式10に示される化合物としては特に限定されないが、入手が容易であるということから、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエンが好ましい。
上記合成法[A]の重合体主鎖に直接アルケニル基を導入することによる、アルケニル基を少なくとも1個有するビニル系重合体の合成方法においては、一分子当たりに導入されるアルケニル基の制御がより容易である点から[A−b]の方法が好ましい。
【0126】
上記合成法[B]におけるハロゲンを末端に有するビニル系重合体の合成法は原子移動ラジカル重合法が好ましい。この重合体のハロゲンをアルケニル基含有官能基に置換する方法としては特に限定されないが、具体的には次に述べる[B−a]〜[B−d]の方法などを挙げることができる。
【0127】
[B−a]ハロゲンを末端に有するビニル系重合体にアルケニル基を有する各種の有機金属化合物を作用させてハロゲンを置換する方法。
このような有機金属化合物としては、有機リチウム、有機ナトリウム、有機カリウム、有機マグネシウム、有機錫、有機ケイ素、有機亜鉛、有機銅等が挙げられる。特に原子移動ラジカル重合の生長末端のハロゲンと選択的に反応し、カルボニル基との反応性が低いという点で、有機錫、有機銅化合物が好ましい。
【0128】
アルケニル基を有する有機錫化合物としては、特に制限はないが、下記一般式11で示される化合物が好ましい。
C=C(R)C(R19)(R20)Sn(R21 (11)
(式中、Rは上述したものと同様である。R19およびR20は水素、または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、または炭素数7〜10のアラルキル基を表し、これらは互いに同じであっても異なっていてもよい。R21は、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基を示す。)
【0129】
上記一般式11の有機錫化合物の具体例を示すならば、アリルトリブチル錫、アリルトリメチル錫、アリルトリ(n−オクチル)錫、アリルトリ(シクロヘキシル)錫等が例示される。 アルケニル基を有する有機銅化合物としては、ジビニル銅リチウム、ジアリル銅リチウム、ジイソプロペニル銅リチウム等が例示される。
【0130】
[B−b]ハロゲンを末端に有するビニル系重合体に、下記一般式12等で表されるアルケニル基を有する安定化カルバニオンを反応させてハロゲンを置換する方法。
(R23)(R24)−R22−C(R)=CH (12)
(式中、Rは上述したものと同様である。R22は1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。R23およびR24はともにカルバニオンCを安定化する電子吸引基、または一方が上記電子吸引基で他方が水素または炭素数1〜10のアルキル基もしくはフェニル基を表す。R23およびR24の電子吸引基としては、−COR(エステル基)、−C(O)R(ケト基)、−CON(R)(アミド基)、−COSR(チオエステル基)、−CN(ニトリル基)、−NO(ニトロ基)等が挙げられる。置換基Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基もしくはフェニル基である。R23およびR24としては、−COR、−C(O)Rおよび−CNが特に好ましい。Mはアルカリ金属イオンまたは4級アンモニウムイオンを示す。)
【0131】
アルカリ金属イオンとしてはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンが、また、4級アンモニウムイオンとしては、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、トリメチルベンジルアンモニウムイオン、トリメチルドデシルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン等が具体例として挙げられる。
【0132】
上記一般式12のカルバニオンは、その前駆体に対して塩基性化合物を作用させ、活性プロトンを引き抜くことによって得ることができる。
一般式12のカルバニオンの前駆化合物としては以下のような化合物が例示できる。
【0133】
C=CH−CH(COCH、HC=CH−CH(CO、HC=CH−(CHCH(COCH、HC=CH−(CHCH(CO、o−,m−,p−HC=CH−C−CH(COCH、o−,m−,p−HC=CH−C−CH(CO、o−,m−,p−HC=CH−C−CHCH(COCH、o−,m−,p−HC=CH−C−CHCH(CO、HC=CH−CH(C(O)CH)(CO)、HC=CH−(CHCH(C(O)CH)(CO)、o−,m−,p−HC=CH−C−CH(C(O)CH)(CO)、o−,m−,p−HC=CH−C−CHCH(C(O)CH)(CO)、HC=CH−CH(C(O)CH、HC=CH−(CHCH(C(O)CH、o−,m−,p−HC=CH−C−CH(C(O)CH、o−,m−,p−HC=CH−C−CHCH(C(O)CH、HC=CH−CH(CN)(CO)、HC=CH−(CHCH(CN)(CO)、o−,m−,p−HC=CH−C−CH(CN)(CO)、o−,m−,p−HC=CH−C−CHCH(CN)(CO)、HC=CH−CH(CN)、HC=CH−(CHCH(CN)、o−,m−,p−HC=CH−C−CH(CN)、o−,m−,p−HC=CH−C−CHCH(CN)、HC=CH−(CHNO、o−,m−,p−HC=CH−C−CHNO、o−,m−,p−HC=CH−C−CHCHNO、HC=CH−CH(C)(CO)、HC=CH−(CHCH(C)(CO)、o−,m−,p−HC=CH−C−CH(C)(CO)、o−,m−,p−HC=CH−C−CHCH(C)(CO
上記式中、nは1〜10の整数を示す。
【0134】
上記化合物からプロトンを引き抜き一般式12のカルバニオンとするためには各種の塩基性化合物が使用される。これらの塩基性化合物としては以下のような化合物が例示できる。
ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属;ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド、カリウム−tert−ブトキシド等の金属アルコキシド;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物;水素化ナトリウム、水素化カリウム、メチルリチウム、エチルリチウム等の水素化物;n−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド等の有機金属;アンモニア;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のアルキルアミン;テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン等のポリアミン;ピリジン、ピコリン等のピリジン系化合物等
【0135】
塩基性化合物の使用量は前駆物質に対して当量または小過剰量用いればよく、好ましくは1〜1.2当量である。
上記のカルバニオンとして4級アンモニウム塩も使用できる。この場合、カルボン酸化合物のアルカリ金属塩であるものを調製し、これに4級アンモニウムハライドを作用させることによって得られる。4級アンモニウムハライドとしては、テトラメチルアンモニウムハライド、テトラエチルアンモニウムハライド、トリメチルベンジルアンモニウムハライド、トリメチルドデシルアンモニウムハライド、テトラブチルアンモニウムハライド等が例示される。
【0136】
上記前駆化合物と塩基性化合物を反応させる際に用いられる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0137】
上記の前駆体に塩基性化合物を作用させることにより一般式12で表されるカルバニオンが調製され、ハロゲン末端を有するビニル系重合体と反応させることにより、アルケニル基を末端に有するビニル系重合体を得ることができる。
【0138】
[B−c]ハロゲンを末端に有するビニル系重合体に、金属単体あるいは有機金属化合物を作用させてエノレートアニオンとし、しかる後に、アルケニル基を有する求電子化合物と反応させる方法。
【0139】
金属単体としては、生成するエノレートアニオンが他のエステル基を攻撃したり転移するような副反応を起こしにくいという点で亜鉛が特に好ましい。アルケニル基を有する求電子化合物としては各種のものを使用することができる。例えば、ハロゲンやアセチル基のような脱離基を有するアルケニル基含有化合物、アルケニル基を有するカルボニル化合物、アルケニル基を有するイソシアネート化合物、アルケニル基を有する酸ハロゲン化物等である。これらのうち、ハロゲンやアセチル基のような脱離基を有するアルケニル基含有化合物を用いると、主鎖に炭素以外の原子が導入されず、ビニル系重合体の耐候性が失われないので好ましい。
【0140】
[B−d]ハロゲンを末端に有するビニル系重合体に、下記一般式13等で表されるアルケニル基含有オキシアニオン又は下記一般式14等で表されるアルケニル基含有カルボキシレートアニオンを反応させて、上記ハロゲンをアルケニル基含有置換基に置換する方法。
CH=C(R)−R22−O (13)
(式中、R、RおよびMは上述したものと同様である。)
CH=C(R)−R22−C(O)O (14)
(式中、R、R22およびMは上述したものと同様である。)
【0141】
一般式13および14で表されるオキシアニオンの前駆化合物としては以下のような化合物:
C=CH−CH−OH、HC=CH−CH(CH)−OH、HC=C(CH)−CH−OH、HC=CH−(CH−OH(nは、2〜20の整数を示す。)、HC=CH−CH−O−(CH−OH、HC=CH−C(O)O−(CH−OH、HC=C(CH)−C(O)O−(CH−OH、o−,m−,p−HC=CH−C−CH−OH、o−,m−,p−HC=CH−CH−C−CH−OH、o−,m−,p−HC=CH−CH−O−C−CH−OH等のアルコール性水酸基含有化合物;o−,m−,p−HC=CH−C−OH、o−,m−,p−HC=CH−CH−C−OH、o−,m−,p−HC=CH−CH−O−C−OH等のフェノール性水酸基含有化合物;HC=CH−C(O)−OH、HC=C(CH)−C(O)−OH、HC=CH−CH−C(O)−OH、HC=CH−(CH−C(O)−OH(nは、2〜20の整数を示す。)、HC=CH−(CH−OC(O)−(CH−C(O)−OH(m及びnは、同一又は異なって、0〜19の整数を示す。)、o−,m−,p−HC=CH−C−C(O)−OH、o−,m−,p−HC=CH−CH−C−C(O)−OH、o−,m−,p−HC=CH−CH−O−C−C(O)−OH、o−,m−,p−HC=CH−(CH−OC(O)−C−C(O)−OH(nは、0〜13の整数を示す。)等のカルボキシル基含有化合物;
等が挙げられる。
【0142】
上記の化合物からプロトンを引き抜き上記一般式13あるいは14のアニオンとするためには各種の塩基性化合物が使用され、その具体例としては、前述の一般式12のカルバニオンを調製する際に用いられる塩基性化合物がすべて好適に使用される。また、反応溶媒についてもカルバニオンを調製する際に用いられるものがすべて好適に使用される。
【0143】
上記合成法[B]の中では、高い比率でアルケニル基を導入することができることから、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤、遷移金属錯体を触媒として用いる原子移動ラジカル重合法によって得られたハロゲンを末端に有するビニル系重合体のハロゲンを[B−d]の方法により変換することによりアルケニル基を導入する方法が好ましい。[B−d]の方法の中では一般式14等で表されるアルケニル基含有カルボキシレートアニオンを反応させる方法がより好ましい。
【0144】
有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーを重合する原子移動ラジカル重合法を用いることを特徴とするビニル系重合体の製造法において、アルケニル基を有する有機ハロゲン化物を開始剤として用いれば、片末端にアルケニル基を有し、他の末端が原子移動ラジカル重合の開始剤基の構造を有するビニル系重合体を得ることができる。このようにして得られる重合体の停止末端のハロゲンをアルケニル基含有置換基に変換すれば、両末端にアルケニル基を有するビニル系重合体を得ることができる。その変換方法としては、既に記載した方法を使用することができる。アルケニル基を有する有機ハロゲン化物としては、後に原子移動ラジカル重合の説明の項で詳細に述べる。
【0145】
上記合成法[C]の水酸基を末端に有するビニル系重合体を用いて、この水酸基をアルケニル基含有官能基に置換する方法としては特に限定されないが、具体的には次に述べる[C−a]〜[C−d]の方法などを挙げることができる。
なお、上記の水酸基を末端に有するビニル系重合体は、後述する[D−a]〜[D−f]の方法により得ることができる。
【0146】
[C−a]水酸基を末端に有するビニル系重合体の水酸基に、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド等の塩基を作用させた後に、塩化アリルのようなアルケニル基含有ハロゲン化物と反応させる方法。
[C−b]水酸基を末端に有するビニル系重合体とアリルイソシアネート等のアルケニル基含有イソシアネート化合物とを反応させる方法。
[C−c]ピリジン等の塩基存在下、水酸基を末端に有するビニル系重合体を(メタ)アクリル酸クロリド等のアルケニル基含有酸ハロゲン化物と反応させる方法。
[C−d]酸触媒の存在下、水酸基を末端に有するビニル系重合体とアクリル酸等のアルケニル基含有カルボン酸とを反応させる方法。
【0147】
[C]の方法で用いる水酸基を末端に有するビニル系重合体の製造方法は以下に示す[D−a]〜[D−f]のような方法が例示されるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0148】
[D−a]リビングラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、下記一般式15等で表される一分子中に重合性のアルケニル基および水酸基を併せ持つ化合物を第2のモノマーとして反応させる方法。
C=C(R)−R16−R17−OH (15)
(式中、R、R16およびR17は上述したものと同様である。)
【0149】
なお、一分子中に重合性のアルケニル基および水酸基を併せ持つ化合物を反応させる時期に制限はないが、特にゴム的な性質を期待する場合には重合反応の終期あるいは所定のモノマーの反応終了後に、第2のモノマーとして反応させるのが好ましい。
【0150】
[D−b]リビングラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、重合反応の終期あるいは所定のモノマーの反応終了後に、第2のモノマーとして、一分子中に重合性の低いアルケニル基および水酸基を有する化合物を反応させる方法。
【0151】
このような化合物としては特に限定されないが、一般式16に示される化合物等が挙げられる。
C=C(R)−R18−OH (16)
(式中、RおよびR18は上述したものと同様である。)
【0152】
上記一般式16に示される化合物としては特に限定されないが、入手が容易であるということから、10−ウンデセノール、5−ヘキセノール、アリルアルコールのようなアルケニルアルコールが好ましい。
【0153】
[D−c]特開平4−132706号公報などに開示されるような方法で、原子移動ラジカル重合により得られる炭素−ハロゲン結合を末端に有するビニル系重合体のハロゲンを、加水分解あるいは水酸基含有化合物と反応させることにより、末端に水酸基を導入する方法。
【0154】
[D−d]原子移動ラジカル重合により得られる炭素−ハロゲン結合を末端に有するビニル系重合体に、一般式17に挙げられるような水酸基を有する安定化カルバニオンを反応させてハロゲンを置換する方法。
(R23)(R24)−R22−OH (17)
(式中、R22、R23およびR24は上述したものと同様である。)
【0155】
[D−e]原子移動ラジカル重合により得られる炭素−ハロゲン結合を末端に有するビニル系重合体に、例えば亜鉛のような金属単体あるいは有機金属化合物を作用させてエノレートアニオンを調製し、しかる後にアルデヒド類、又はケトン類を反応させる方法。
【0156】
[D−f]ハロゲンを末端に有するビニル系重合体に、下記一般式18等で表される水酸基含有オキシアニオン又は下記一般式19等で表される水酸基含有カルボキシレートアニオンを反応させて、上記ハロゲンを水酸基含有置換基に置換する方法。
HO−R22−O (18)
(式中、R、R22およびMは上述したものと同様である。)
HO−R22−C(O)O (19)
(式中、R、R22およびMは上述したものと同様である。)
【0157】
本発明では[D−a]〜[D−b]のような水酸基を導入する方法にハロゲンが直接関与しない場合、制御がより容易である点から[D−b]の方法がさらに好ましい。
【0158】
また[D−c]〜[D−f]のような炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体のハロゲンを変換することにより水酸基を導入する場合は、制御がより容易である点から[D−f]の方法がさらに好ましい。
【0159】
<原子移動ラジカル重合の開始剤基の導入>
原子移動ラジカル重合の開始剤基とは、上述の原子移動ラジカル重合の説明の中で詳細に述べられる開始剤の構造を有するものであり、好ましくは一般式2あるいは3で表わされる基や、ベンジルハライド基、スルホニルハライド基等である。
−CH−C(Ar)(R)(X) (2)
(式中、Arは置換基を持って構わないアリール基、Rは水素原子あるいは炭素数1〜20の炭化水素基、Xは塩素、臭素、ヨウ素である)
−CH−C(COR)(R)(X) (3)
(式中、Arは置換基を持って構わないアリール基、Rは水素原子あるいはメチル基、Rは炭素数1〜20の有機基、Xは塩素、臭素、ヨウ素である)
【0160】
原子移動ラジカル重合により重合体(I)を製造した場合には、その末端は、原子移動ラジカル重合の開始剤基となっている。一般式2あるいは3で表わされる基は、好ましくは、原子移動ラジカル重合によりスチレン系モノマーやアクリル系モノマーを重合した時に、生長末端として得られる。上述したように、アルケニル基を導入するために、この開始剤基を変換してしまう場合には、2官能開始剤を用いるなどの方法で、両末端に生長末端を有する重合体を製造し、そのうちの片末端をアルケニル基に変換する方法が挙げられる。
【0161】
それ以外の方法としては、原子移動ラジカル重合の開始剤基とアルケニル基を有する化合物、あるいは原子移動ラジカル重合の開始剤基とヒドロシリル基を有する化合物を、ヒドロシリル基やアルケニル基を有する様々な重合体にヒドロシリル化反応により導入する方法が挙げられる(Polymer,39(21),5163(1998)等参照)。
【0162】
上述した重合体(I)を製造する方法として、限定はされないが、好ましい方法は、官能基を有する開始剤を用いて原子移動ラジカル重合を行い、その官能基がアルケニル基の場合にはそのままでよく、アルケニル以外の場合には、アルケニル基に変換する方法である。例としては、Polymer.J.30,138(1998)の方法が挙げられる。
より具体的には、アリルハロゲン化物を開始剤として用いることが好ましい。
【0163】
また、一般式2で表される基は、リビングカチオン重合の開始剤基として用いることも可能であり、上記の製法によって製造される重合体を、リビングカチオン重合系においてリビングカチオン重合の開始剤基となる基を有する重合体(I)を添加してマルチブロック共重合体を製造する方法に利用しても構わない。
【0164】
<リビングカチオン重合による重合体(I)の製造>
以下にリビングカチオン重合による重合体(I)の製造について説明する。
リビングカチオン重合そのものについては、上述のリビングカチオン重合の項で説明しているので、ここでは、アルケニル基の導入する方法と、リビングカチオン重合の開始剤基の導入法について説明する。
【0165】
リビングカチオン重合により製造される重合体(I)としては、スチレン系重合体、イソブチレン系重合体、ポリエーテル系重合体、ビニルエーテル系重合体からなる群から選ばれるものであることが好ましい。
【0166】
<末端官能基導入>
リビングカチオン重合により製造される重合体に、アルケニル基を導入する方法は、特に限定されないが、以下のような方法が挙げられる。
【0167】
▲1▼アリルシランを用いる方法
特開昭63−105005号公報に開示。イニファー法のリビングカチオン重合で得られる重合直後あるいは生成後のポリマーをアリルトリメチルシランと反応させることにより、末端にアリル基を有するポリマーを得る。
【0168】
▲2▼非共役ジエンを用いる方法
特開平4−288309号公報に開示。イニファー法のリビングカチオン重合系に1、7−オクタジエンのような非共役ジエンを添加することにより、末端にアリル基を有するポリマーを得る。
【0169】
▲3▼有機金属試薬を用いる方法
特開平4−311705号公報に開示。グリニャール試薬、アルキルリチウムを用いて、ポリイソブチレン系ポリマーの塩素原子末端のアルキル化を行う。アルケニル基を有するグリニャール試薬を用いるとアルケニル基が導入される。
【0170】
▲4▼水酸基を変換する方法
末端、主鎖、あるいは側鎖の水酸基を−ONaや−OKなどの基にしたのち一般式20
CH=CH−R25−X (20)
〔式中、Xは塩素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、R25は−R26−、−R26−OC(=O)−または−R26−C(=O)−(R26は炭素数1〜20の2価の炭化水素基で、好ましい具体例としてはアルキレン基、シクロアルキレン基、アリレ−ン基、アラルキレン基が挙げられる〕
で示される2価の有機基で、
【0171】
【化7】
Figure 0004057190
【0172】
(R27は炭素数1〜10の炭化水素基)より選ばれた2価の基が特に好ましい。〕で示される有機ハロゲン化合物を反応させることにより、末端アルケニル基を有する飽和炭化水素系重合体が製造される。
【0173】
末端ヒドロキシ飽和炭化水素系重合体の末端水酸基をオキシメタル基にする方法としては、Na、Kのごときアルカリ金属;NaHのごとき金属水素化物;NaOCHのごとき金属アルコキシド;苛性ソ−ダ、苛性カリのごとき苛性アルカリなどと反応させる方法が挙げられる。
【0174】
前記方法では、出発原料として使用した末端ヒドロキシ飽和炭化水素系重合体とほぼ同じ分子量をもつ末端アルケニル基含有飽和炭化水素系重合体が得られるが、より高分子量の重合体を得たい場合には、一般式20の有機ハロゲン化合物を反応させる前に、塩化メチレン、ビス(クロロメチル)ベンゼン、ビス(クロロメチル)エーテルなどのごとき、1分子中にハロゲン原子を2個以上含む多価有機ハロゲン化合物 と反応させれば分子量を増大させることができ、そののち一般式20で示される有機ハロゲン化合物と反応させれば、より高分子量でかつ末端にアルケニル基を有する水添ポリブタジエン系重合体を得ることができる。
【0175】
前記一般式20で示される有機ハロゲン化合物の具体例としては、例えばアリルクロライド、アリルブロマイド、ビニル(クロロメチル)ベンゼン、アリル(クロロメチル)ベンゼン、アリル(ブロモメチル)ベンゼン、アリル(クロロメチル)エ−テル、アリル(クロロメトキシ)ベンゼン、1−ヘキセニル(クロロメトキシ)ベンゼン、アリルオキシ(クロロメチル)ベンゼンなどが挙げられるが、それらに限定されるものではない。これらのうちでは安価で、かつ容易に反応することからアリルクロライドが好ましい。
【0176】
▲5▼フリーデルクラフツ反応を利用する方法
種々のアルケニルフェニルエ−テル類とCl基のフリ−デルクラフツ反応を行い、アルケニル基を導入する。および種々のフェノ−ル類とCl基のフリ−デルクラフツ反応を行い水酸基を導入した上で、さらに前記のアルケニル基導入方法を併用する方法。
【0177】
▲6▼脱離反応による方法
USP4,316,973号公報に開示。イニファー法のリビングカチオン重合により合成された末端にハロゲン原子を持つポリイソブチレン系ポリマーから脱ハロゲン化水素し、末端にアルケニル基を導入する。
【0178】
▲7▼アルケニル基含有開始剤を利用する方法
J.Polym.Sci.: Part A: Polym.Chem. 2699,(1994)に開示。
▲8▼シリルエノールエーテルを利用する方法
J.Polym.Sci.: Part A: Polym.Chem. 2531,(1994)に開示。トリメチルシリルメタクリレートをリビングカチオン重合末端に反応させ、メタクリロイル基を導入。
これらの方法の内では、限定はされないが、▲1▼と▲2▼の方法が好ましい。
【0179】
<リビングカチオン重合の開始剤基の導入>
リビングカチオン重合の開始剤基とは、上述のリビングカチオン重合の説明の中で詳細に述べられる開始剤の構造を有するものであり、限定はされないが、好ましくは一般式2で表わされる基等である。
−CH−C(Ar)(R)(X) (2)
(式中、Arは置換基を持って構わないアリール基、Rは水素原子あるいは炭素数1〜20の炭化水素基、Xは塩素、臭素、ヨウ素である)
【0180】
このリビングカチオン重合の開始剤基を導入する方法は限定されないが、リビングカチオン重合によって製造された重合体の末端の利用、上述した原子移動ラジカル重合による方法、ヒドロシリル化反応等の反応により重合体の官能基を変換して導入する方法、等が挙げられる。
【0181】
ブロック共重合体の構造
本発明のブロック共重合体の構造としては、特に限定されないが、以下のように重合体(I)と、それを添加するリビングラジカル重合又はリビングカチオン重合(ここではリビングC/R重合と略す。)により分類される。
【0182】
▲1▼アルケニル基を1分子あたり1つ持つ重合体(I)と、1官能開始剤から重合されるリビングC/R重合、▲2▼アルケニル基を1分子あたり1つ持つ重合体(I)と、2官能開始剤から重合されるリビングC/R重合、▲3▼アルケニル基を1分子あたり1つ持つ重合体(I)と、多官能開始剤から重合されるリビングC/R重合、▲4▼アルケニル基を1分子あたり2つ持つ重合体(I)と、1官能開始剤から重合されるリビングC/R重合、▲5▼アルケニル基を1分子あたり2つ以上持つ重合体(I)と、1官能開始剤から重合されるリビングC/R重合、▲6▼アルケニル基を1分子あたり2つ持つ重合体(I)と、2官能開始剤から重合されるリビングC/R重合、▲7▼重合体(I)のアルケニル基と、リビングC/R重合の開始剤の開始部位の数のどちらかが2個以上でどちらかが3個以上の場合、等である。
【0183】
▲1▼の場合にはAB型のブロック共重合体、▲2▼又は▲4▼の場合にはABA型のブロック共重合体、▲3▼又は▲5▼の場合には星型のブロック共重合体、▲6▼の場合にはマルチブロック共重合体、▲7▼の場合には架橋したブロック共重合体が得られる。
また、リビングラジカル重合又はリビングカチオン重合の開始剤基を有する重合体(I)を用いた場合にはマルチブロック共重合体を得ることができる。
【0184】
各重合体ブロックは、様々な種類のものが合成できる。限定はされないが、本発明で製造される重合体において、重合体(I)のガラス転移点が25℃以上であり、重合体(I)が添加されるリビングC/R重合により新たに重合される重合体鎖のガラス転移点が25℃以下であるか、あるいは、重合体(I)のガラス転移点が25℃以下であり、重合体(I)が添加されるリビングC/R重合により新たに重合される重合体鎖のガラス転移点が25℃以上であることが好ましい。例えば、ABA型のブロック共重合体において、Aとしてガラス転移点の高い(具体的には限定はされないが、25℃以上)重合体、Bとしてガラス転移点の低い(具体的には限定はされないが、25℃以下)重合体を重合した場合、熱可塑性エラストマーとしての性質が期待される。星型重合体の場合も同様に、外側にガラス転移点が高い重合体ブロック、内側にガラス転移点が低い重合体ブロックを用いると熱可塑性エラストマーとしての性質が期待される。
【0185】
用途
<熱可塑エラストマー>
本発明のブロック共重合体は、既存の熱可塑性エラストマーと同等の用途に使用できる。具体的には、樹脂やアスファルトの改質用途、樹脂とブロック体とのコンパウンド用途(必要に応じて可塑剤や充填材、安定剤等を加えてもよい)、熱硬化性樹脂の収縮防止剤、粘・接着剤、制振材のベースポリマーとして使用することができる。具体的な応用分野としては、自動車の内装・外装部品、電気・電子分野、食品の包装用フィルムやチューブ、医薬・医療用容器やシール性物品等が挙げられる。
【0186】
<耐衝撃性改良材>
また、本発明のブロック共重合体は、それ自身でも耐衝撃性を有する樹脂として成形材料となりうるが、種々の熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂と混合して用いるとこれらの樹脂に高度の耐衝撃性を付与できる耐衝撃性改良剤となりうる。このほか、加工性改良剤、相溶化剤、艶消し剤、耐熱性改良剤などとして使用できる。
【0187】
本発明のブロック共重合体を添加して耐衝撃性を改良しうる熱可塑性樹脂としては、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状オレフィン共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂の混合物、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種のビニル系単量体70〜100重量%とこれらのビニル系単量体と共重合可能なたとえばエチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどの他のビニル系単量体および(または)ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン系単量体など0〜30重量%とを重合して得られる単独重合体または共重合体、ポリスチレン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂の混合物などをあげることができるが、これらに限定されることなく、熱可塑性樹脂樹脂が広く使用可能である。特にポリメチルメタクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂などが耐候性、耐衝撃性などの特徴を出しやすく好ましい。
【0188】
本発明のブロック共重合体を各種樹脂に添加する方法としては、バンバリーミキサー、ロールミル、二軸押出機等の公知の装置を用い、機械的に混合しペレット状に賦形する方法をあげることができる。押出賦形されたペレットは、幅広い温度範囲で成形可能であり、成形には、通常の射出成形機、ブロー成形機、押出成形機などが用いられる。
【0189】
さらに、この樹脂組成物には、必要に応じて耐衝撃性改良剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、顔料、充填剤などを配合し得る。具体的には、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)、アクリル系グラフト共重合体、アクリル−シリコーン複合ゴム系グラフト共重合体などの耐衝撃性改良剤;トリフェニルホスファイトなどの安定剤;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどの滑剤;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート等のホスフェート系難燃剤、デカブロモビフェニル、デカブロモビフェニルエーテルなどの臭素系難燃剤、三酸化アンチモンなどの難燃剤;酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛などの顔料;ガラス繊維、アスベスト、ウォラストナイト、マイカ、タルク、炭酸カルシウムなどの充填剤などがあげられる。
【0190】
【実施例】
以下に、この発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明するが、この発明は、下記実施例に限定されない。
下記実施例および比較例中「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を表す。
【0191】
下記実施例中、「数平均分子量」および「分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量の比)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。ただし、GPCカラムとしてポリスチレン架橋ゲルを充填したもの、GPC溶媒としてクロロホルムを用いた。
【0192】
(製造例1)
還流管および攪拌機付きの500mLの三口フラスコに、CuBr(3.44g、0.024mol)、2,2’−ビピリジル(11.2g、0.072mol)を仕込み、容器内を窒素で置換した後、ジフェニルエーテル(110mL)、スチレン(110mL、0.96mol)を加えた。100℃に加熱し、臭化アリル(2.08mL、0.024mol)を加え、100℃で7時間加熱攪拌した。
【0193】
反応混合物をトルエン200mLで希釈し、活性アルミナカラムを通した。メタノールからの再沈殿を繰り返すことにより重合体を精製した後、重合体を減圧加熱乾燥した。重合体の数平均分子量は3360、分子量分布は1.23であった。H NMRで、片末端のアルケニル基ともう片末端の臭素基の数が一致していることが確認された。
【0194】
(製造例2)
製造例1においてCuBrの代りにCuCl(2.38g、0.024mol)、臭化アリルの代りに塩化アリル(1.31mL、0.024mol)を用い、反応温度を130℃とする以外は同様の操作を行った。
重合体の数平均分子量は5880、分子量分布は1.27であった。H NMRで、片末端のアルケニル基ともう片末端の塩素基の数が一致していることが確認された
【0195】
(製造例3)重合体末端のハロゲン基の処理
還流管および攪拌機付きの500mLの三口フラスコに、CuBr(3.44g、0.024mol)、2,2’−ビピリジル(11.2g、0.072mol)を仕込み、容器内を窒素で置換した後、ジフェニルエーテル(110mL)、スチレン(110mL、0.96mol)を加えた。100℃に加熱し、臭化アリル(2.08mL、0.024mol)を加え、100℃で7時間加熱攪拌することにより重合体[1]を得た。
還流管付き100mL三口フラスコに重合体[1](10g)、カリウムメチラート(0.417mg)、ジメチルホルムアミド(10mL)を仕込み、窒素気流下、70℃で1時間加熱攪拌した反応混合物を脱揮し、トルエンに溶解させ、ろ過した。メタノールからの再沈殿、減圧加熱乾燥により重合体[2]を精製した。H NMR分析によりハロゲン基が除去されていることを確認した。
【0196】
(実施例1)ポリスチレン−ポリアクリル酸ブチルマルチブロックコポリマーの合成
50mLフラスコにCuBr(0.10g、0.7mmol)を仕込み、容器内を窒素置換した。アセトニトリル(1.0mL)を加え、70℃に加熱した。製造例1で得られた重合体(5.86g)、アクリル酸ブチル(10mL)、ペンタメチルジエチレントリアミン(0.04mL、0.17mmol)を添加し、70℃で13時間加熱攪拌した。アクリル酸ブチルの反応率は98%であった。反応混合物をトルエンで希釈し、活性アルミナカラムに通した。揮発分を留去し、重合体を得た。
重合体の重量平均分子量はMw=46900で、GPCのピーク分子量はMp=64500であった。ポリスチレン−ポリアクリル酸ブチルマルチブロックコポリマーの生成が確認された。下記に本反応の反応式を示す。
【0197】
【化8】
Figure 0004057190
【0198】
(実施例2)ポリスチレン−ポリイソブチレンマルチブロックコポリマーの合成製造例2で合成された片末端にアリル基、もう片末端にクロロ基を有するポリスチレンを開始剤として用いて、イソブチレンの重合を行った。溶媒として塩化メチレン/メチルシクロヘキサン、触媒としてTiCl、エレクトロンドナーとしてα−ピコリンを用い、−70℃で重合した。触媒を添加した時点で重合熱が観察され、最終的なイソブチレンモノマーの添加率は80%であった。生成物のH−NMR測定で、アリル基は観察されず、生長末端カチオンが付加したことが確認できた。
【0199】
(実施例3)PBA−PEAマルチブロック体の合成
30mLのガラス反応容器に窒素雰囲気下、臭化第一銅(50.0mg、0.348mmol)、アセトニトリル(1.0mL)、アクリル酸ブチル(10.0mL、69.8mmol)、ジエチル2,5−ジブロモアジペート(0.314g、0.871mmol)、アルケニル末端PEA(9.85g、0.871mmol、数平均分子量11300、分子量分布1.26、数平均分子量基準のアルケニル基導入率2.33)およびペンタメチルジエチレントリアミン(20μL、0.0958mmol)を加えて70℃で420分攪拌した。この時GC測定よりアクリル酸ブチルの消費率は98%であった。混合物を活性アルミナで処理した後、揮発分を減圧下加熱して留去することで淡黄色重合体を得た。得られた重合体のGPC測定(ポリスチレン換算)により、数平均分子量は16900、重量平均分子量37400、分子量分布は2.21であり、マルチブロック体ができていることが確認された。またH−NMRの測定からもマルチブロック体の生成が確認された。
【0200】
(実施例4)ポリスチレン−ポリイソブチレンブロックポリマーの合成
溶媒として塩化メチレン/メチルシクロヘキサン、開始剤としてビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン、触媒としてTiCl、エレクトロンドナーとしてα−ピコリンを用い、−70℃、窒素雰囲気下でイソブチレンの重合を行った。触媒を添加した時点で重合熱が観察された。イソブチレンの重合が完了した時点で重合体[2]とα−ピコリンの塩化メチレン/メチルシクロヘキサン混合液を添加し、さらに反応させた。
重合体[2]添加時のポリイソブチレンの数平均分子量は27700であったが、重合体[2]の添加により数平均分子量31000の高分子量重合体が得られた。この高分子量重合体は芳香環によるUV吸収が観測された。すなわち、ポリイソブチレン−ポリスチレン共重合体が得られた。
【0201】
(製造例4)
特開昭53−134095号公報に開示された方法に従って、末端にアリル型オレフィン基を有するポリオキシプロピレンを合成した。
平均分子量3000であるポリオキシプロピレングリコールと粉末苛性ソーダを60℃で攪拌し、ブロモクロロメタンを加えて反応を行い、分子量を増大させた。次に、アリルクロライドを加えて、110℃で末端をアリルエーテル化した。これをケイ酸アルミニウムにより処理して、精製末端アリルエーテル化ポリオキシプロピレンを合成した。
このポリエーテルの平均分子量は7960であり、ヨウ素価から末端の92%がオレフィン基(0.0231mol/100g)であった。E型粘度計による粘度は130ポイズ(40℃)であった。
【0202】
(製造例5)
攪拌機、滴下ロート、温度計、三方コック、冷却管を備え付けた1L4つ口フラスコを準備し、平均分子量約2000で末端がヒドロキシル基であるポリテトラメチレンオキシド(商品名:テラタン−2000、デュポン社製)300gをフラスコ内に仕込んだ。トルエンを用いて共沸脱気を行った後、t−BuOK50.5gをTHF200mLに溶解したものを追加した。50℃で1時間攪拌した後、アリルクロライド49mLを滴下ロートより1時間かけて滴下した。滴下終了後、50℃で約1時間反応させた後、室温でケイ酸アルミニウム30gを添加し、30分間攪拌した。該混合物を珪藻土を濾過助剤として濾過し、揮発成分をエバポレーターを用いて除去したところ、透明で粘調な液体約230gを得た。該生成物を一晩室温で放置しておくと、結晶化して白色の固体となった。ヨウ素価滴定(0.0718mol/100g)より、このポリテトラメチレンオキシドの約73%の末端にアリル基が導入されたことが解った。
【0203】
(製造例6)
両末端に水酸基を有する水素添加ポリイソプレン(出光石油化学製、商品名エポール)300gにトルエン50mLを加え、共沸脱気により脱水した。t−BuOK48gをTHF200mLに溶解したものを注入した。50℃で1時間反応させた後、アリルクロライド47mLを約30分間かけて滴下した。滴下終了後、50℃で1時間反応させた。反応終了後、生成した塩を吸着させるために反応溶液にケイ酸アルミニウム30gを加え、30分間室温で攪拌した。濾過精製により焼く250gのアリル末端水添ポリイソプレンを粘調な液体として得た。300MHz H−NMR分析により末端の92%にアリル基が導入されていることが確認された。ヨウ素価より求めたオレフィンのモル数は0.1046mol/100gであった。またE型粘度計による粘度は302ポイズ(23℃)であった。
【0204】
*エポールの代表的な物性値(技術資料より)
水酸基含有量(meq/g) 0.90
粘度(poise/30℃) 700
平均分子量(VPO測定) 2500
【0205】
(製造例7)
n−ブチルアクリレート115.72g、メチルメタクリレート60.00g、アリルメタクリレート20.16g、n−ドデシルメルカプタン6.46g、アゾビスイソブチロニトリル2.0g、トルエン400mLよりなるアクリル酸エステルモノマーのトルエン溶液を、50mLのトルエンを還流させたフラスコ内へ窒素雰囲気で滴下ロートより約2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間反応させた。該反応溶液をエバポレートし、更に80℃で3時間減圧乾燥することにより、淡黄色の粘調の液状オリゴマー約195gを得た。ヨウ素価滴定によるアリル基のモル数は0.0818mol/100g、VPOによる分子量は2950で1分子当たり平均2.4個のアリル基が導入されたことが解った。
【0206】
(製造例8)
300g(0.1モル)の末端水酸基ポリカプロラクトン(数平均分子量3000、水酸基当量1500)、24.0gのピリジン、300mLのTHFを攪拌棒、温度計、滴下ロート、窒素吹き込み管、冷却管を付設した丸底フラスコに仕込み、室温下、滴下ロートより32gのクロルぎ酸アリルを徐々に滴下した。その後、50℃に加熱し、3時間攪拌した。生成した塩を濾過で除いた後、150mLのトルエンを添加し、200mLの塩酸水溶液で洗浄、中和、濃縮することによりアリル末端ポリカプロラクトンを得た。得られたオリゴマーのVPO測定から数平均分子量は3200であった。300MHzH−NMRのオレフィン部分のスペクトルによりアリル基の導入が確認できた。また、ヨウ素価滴定によるオレフィンの定量から1分子中に平均1.83個のアリル型不飽和基(0.0573mol/100g)が導入されていることを確認した。
【0207】
(製造法9)
オートクレーブにヘキサシアノコバルト酸亜鉛−グライム錯体0.02g、ジプロピレングリコール1.0gのTHF溶液、プロピレンオキサイド4.8gを添加し、窒素雰囲気下76℃で反応させた。その後プロピレンオキサイド72.6gを反応系に追加した。未反応モノマーと溶媒を回収、精製し、油状物75gを得た。
生成物はGPC分析で単一ピークを示し、その水酸基価は11.8mgKOH/gであった。製造例1と同様に、この生成物にNaOMeを反応させ、次にアリルクロライドを反応させ、末端アリルエーテル化ポリオキシプロピレンを合成した。
【0208】
(製造例10)
1Lの耐圧ガラス製オートクレーブに撹拌用羽根、三方コック及び真空ラインを取り付けて、真空ラインで真空に引きながら重合容器を100℃で1時間加熱することにより乾燥させ、室温まで冷却後三方コックを用いて窒素で常圧に戻した。
その後、三方コックの一方から窒素を流しながら、注射器を用いてオ−トクレ−ブにモレキュラ−シ−ブ処理によって乾燥させた溶媒、塩化メチレン155mL、n−ヘキサン348mLを導入した。次いでDCC(ジクミルクロリド;下記化合物A)7.5mmolを溶解させた10mLの塩化メチレン溶液を添加した。さらに続いて添加剤α−ピコリン3.0mmolを添加した。
【0209】
次に、酸化バリウムを充填したカラムを通過させることにより脱水したイソブチレンが112.8g入っているニ−ドルバルブ付耐圧ガラス製液化ガス採取管を三方コックに接続した後、容器本体を−70℃のドライアイスーアセトンバスに浸積し、重合器内部を撹拌しながら1時間冷却した。冷却後、真空ラインにより内部を減圧した後、ニ−ドルバルブを開け、イソブチレンを耐圧ガラス製液化ガス採取管から重合容器に導入した。その後三方コックの一方から窒素を流すことにより常圧に戻し、さらに撹拌下に1時間冷却を続け、重合容器内を−70℃まで昇温した。
次に、TiCl 4.1mL(37.5mmol)を注射器を用いて三方コックから添加して重合を開始させ、1時間経過した時点で、1,9−デカジエン27.7mL(150mmol)を添加した。さらに8時間反応させた後、反応混合物を水に注ぎ込むことにより触媒を失活させた。次に有機層を純水により3回洗浄した後分液し、塩化メチレン、n−ヘキサン、および1,9−デカジエンを減圧留去することにより、アリル末端のイソブチレンポリマ−を得た。
尚、化合物Aの構造は下記に示す通りである。
【0210】
【化9】
Figure 0004057190
【0211】
(製造例11)
3Lの耐圧ガラス製オ−トクレ−ブに撹拌用羽根、三方コック及び真空ラインを取り付けて、真空ラインで真空に引きながら重合容器を100℃で1時間加熱することにより乾燥させ、室温まで冷却後三方コックを用いて窒素で常圧に戻した。
その後、三方コックの一方から窒素を流しながら、注射器を用いてオ−トクレ−ブにモレキュラーシーブ処理によって乾燥させた溶媒、塩化メチレン618mL、n−ヘキサン1001mLを導入した。次いでDCC(ジクミルクロリド)15mmolを溶解させた50mLの塩化メチレン溶液を添加した。さらに続いて添加剤α−ピコリン6.0mmolを添加した。
【0212】
次に、酸化バリウムを充填したカラムを通過させることにより脱水したイソブチレンが224g入っているニ−ドルバルブ付耐圧ガラス製液化ガス採取管を三方コックに接続した後、容器本体を−70℃のドライアイス−アセトンバスに浸積し、重合器内部を撹拌しながら1時間冷却した。冷却後、真空ラインにより内部を減圧した後、ニ−ドルバルブを開け、イソブチレンを耐圧ガラス製液化ガス採取管から重合容器に導入した。その後三方コックの一方から窒素を流すことにより常圧に戻し、さらに撹拌下に1時間冷却を続け、重合容器内を−70℃まで昇温した。
次に、TiCl 8.2mL(75mmol)を注射器を用いて三方コックから添加して重合を開始させ、1時間経過した時点で、アリルトリメチルシラン14.3mL(90mmol)を添加した。さらに1時間反応させた後、反応混合物をメタノールに注ぎ反応を停止させた。しばらく撹拌した後静置し、ポリマ−を沈殿分離させた。
【0213】
このようにして得られたポリマ−を再びn−ヘキサンに溶解させ、純水で3回洗浄した後、溶媒を留去しアリル末端イソブチレン系ポリマーを得た。
製造例10、11で得られたポリマ−の収量より収率を算出するとともに、Mn及びMw/MnをGPC法により、また末端構造をH−NMR法により各構造に帰属するプロトン(開始剤由来のプロトン:6.5〜7.5ppm、及びポリマ−末端由来のビニルプロトン:4.5〜5.9ppm)の共鳴信号の強度を測定、比較することにより求めた。結果を表1に示す。
【0214】
【表1】
Figure 0004057190
【0215】
【発明の効果】
本発明によれば、リビングラジカル重合又はリビングカチオン重合による重合系に、アルケニル基を有する様々な重合体を添加することにより、容易にこれらの様々な重合体が結合したブロック共重合体が得られる。また、リビングラジカル重合又はリビングカチオン重合の開始剤基とアルケニル基を有する重合体を用いると、容易にマルチブロック共重合体を得ることができる。そして、本発明ではリビング重合を利用するため、構造がよく制御されたブロック共重合体が得られる。

Claims (26)

  1. C=CH−CH−で表されるアルケニル基を有する重合体(I)を、リビングラジカル重合系、又は、リビングカチオン重合系に添加することを特徴とする、ブロック共重合体の製造方法であって、
    前記重合体(I)が、ポリエステル系重合体、ポリエーテル系重合体、ビニル系重合体、(メタ)アクリル系重合体、炭化水素系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリアリレート系重合体、ジアリルフタレート系重合体、ポリアミド系重合体、又は、ポリイミド系重合体である製造方法。
  2. 重合体(I)のアルケニル基が、重合体(I)の末端にあることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  3. 重合体(I)を添加する重合系がリビングラジカル重合系であることを特徴とする請求項1又は2記載の製造方法。
  4. リビングラジカル重合系が、原子移動ラジカル重合系であることを特徴とする請求項3記載の製造方法。
  5. 重合体(I)が、原子移動ラジカル重合の開始剤基となる基を有し、製造されるブロック共重合体がマルチブロック共重合体であることを特徴とする請求項4記載の製造方法。
  6. 重合体(I)の原子移動ラジカル重合の開始剤基となる基が、一般式2で表されることを特徴とする請求項5記載の製造方法。
    −C(Ar)(R)(X) (2)
    (式中、Arは置換基を持って構わないアリール基、Rは水素原子あるいは炭素数1〜20の炭化水素基、Xは塩素、臭素、ヨウ素である)
  7. 重合体(I)の原子移動ラジカル重合の開始剤基となる基が、一般式3で表される基である場合の請求項5記載の製造方法。
    −C(COR)(R)(X) (3)
    (式中、Rは水素原子あるいはメチル基、Rは炭素数1〜20の有機基、Xは塩素、臭素、ヨウ素である)
  8. 一般式2及び3においてRが水素である場合の請求項6又は7記載の製造方法。
  9. 原子移動ラジカル重合の触媒とする金属錯体が銅、ニッケル、ルテニウム、鉄錯体である場合の請求項4〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
  10. 原子移動ラジカル重合の触媒とする金属錯体が銅錯体である場合の請求項9記載の製造方法。
  11. リビングラジカル重合系で重合されるモノマーが(メタ)アクリル系モノマーであることを特徴とする請求項3〜10のいずれか一項に記載の製造方法。
  12. 重合体(I)を添加する重合系がリビングカチオン重合系であることを特徴とする請求項1又は2記載の製造方法。
  13. 重合体(I)が、リビングカチオン重合の開始剤基となる基を有し、製造されるブロック共重合体がマルチブロック共重合体であることを特徴とする請求項12記載の製造方法。
  14. 重合体(I)のリビングカチオン重合の開始剤基となる基が、一般式2で表されることを特徴とする請求項13記載の製造方法。
    −C(Ar)(R)(X) (2)
    (式中、Arは置換基を持って構わないアリール基、Rは水素原子あるいは炭素数1〜20の炭化水素基、Xは塩素、臭素、ヨウ素である)
  15. 重合体(I)が、制御ラジカル重合により製造されたことを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の製造方法。
  16. 重合体(I)が、原子移動ラジカル重合により製造されたビニル系重合体からなることを特徴とする請求項15記載の製造方法。
  17. 重合体(I)が、アルケニル基を有する開始剤を用いて原子移動ラジカル重合により製造されたことを特徴とする請求項16記載の製造方法。
  18. 重合体(I)が、アリルハロゲン化物を開始剤として製造されたことを特徴とする請求項17記載の製造方法。
  19. 重合体(I)が、リビングカチオン重合により製造されたことを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の製造方法。
  20. リビングカチオン重合により製造された重合体(I)が、スチレン系重合体、イソブチレン系重合体、ポリエーテル系重合体、ビニルエーテル系重合体からなる群から選ばれることを特徴とする請求項19記載の製造方法。
  21. 重合体(I)が、ビニル系重合体である請求項1〜14のいずれか一項に記載の製造方法。
  22. 重合体(I)が、ポリオレフィン系重合体である請求項1〜14のいずれか一項に記載の製造方法。
  23. 重合体(I)が、炭化水素系重合体である請求項1〜14のいずれか一項に記載の製造方法。
  24. 重合体(I)が、ポリエステル系重合体である請求項1〜14のいずれか一項に記載の製造方法。
  25. 重合体(I)が、ポリエーテル系重合体である請求項1〜14のいずれか一項に記載の製造方法。
  26. 重合体(I)のガラス転移点が25℃以上であり、重合体(I)が添加される原子移動ラジカル重合により新たに重合される重合体鎖のガラス転移点が25℃以下であるか、あるいは、重合体(I)のガラス転移点が25℃以下であり、重合体(I)が添加される原子移動ラジカル重合により新たに重合される重合体鎖のガラス転移点が25℃以上であることを特徴とする請求項1〜25のいずれか一項に記載の製造方法。
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