JP4021109B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、熱可塑性樹脂とメタアクリル系重合体およびイソブチレン系重合体を含有するブロック共重合体からなる耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に熱可塑性樹脂は種々の分野で使用されているが、単一の樹脂だけでは十分な性能が得られない場合は、他の樹脂などと組み合わせて使用する手法が試みられている。とくに、耐衝撃性を改質する目的でエラストマー的な性質を有する高分子材料と組み合わせて用いる場合が多い。このような目的で利用される高分子材料を耐衝撃性改質剤と呼ぶ。
【0003】
たとえば、塩化ビニル樹脂は塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、メチルメタアクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ブチルアクリレート−メチルメタアクリレート共重合体などと、メタアクリル樹脂はブチルアクリレート−スチレン−メチルメタアクリレート共重合体などと、ポリカーボネート樹脂はアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ブチルアクリレート−メチルメタアクリレート共重合体などと、プリブチレンテレフタレート樹脂はアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、エポキシ変性エチレン−プロピレン共重合体などと組み合わされた組成物が提案されており、工業的に利用されている例も多い。このような耐衝撃性改質剤の中で、メチルメタアクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ブチルアクリレート−メチルメタアクリレート共重合体は、架橋したゴム粒子(コア部を形成する)の存在下でビニル系単量体をグラフト重合(シェル部を形成する)した共重合体で、その粒子構造からコアシェル型グラフト共重合体と呼ばれており、耐衝撃性改質剤として有用である。このようなコアシェル型グラフト共重合体の中で、ブタジエンを共重合したMBS樹脂やABS樹脂はポリマー主鎖中に不飽和二重結合が残存しているため、耐候性に問題がある。したがって、耐候性が要求される場合は、ブチルアクリレート−メチルメタアクリレート共重合体を選択する場合が非常に多い。しかし、このようなコアシェル型グラフト共重合体は耐衝撃性改質剤として有用であるものの、架橋構造を含むため、成形流動性などに問題があると指摘される場合がある。
【0004】
一方、ハードセグメントとソフトセグメント(ゴム成分)を組み合わせたブロック共重合体も熱可塑性樹脂と組み合わせた組成物として使用しうることが知られている。このようなブロック共重合体として、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、および、これらの水添重合体(それぞれ、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン共重合体と呼ばれる)が広く使用されている。このようなブロック共重合体を使用すると、一般に、耐衝撃性、剛性、成形流動性のバランスに優れた組成物が得られるものの、組み合わされる熱可塑性樹脂はポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂などの極性の低いものに限定されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、メタアクリル系重合体およびイソブチレン系重合体を含有するブロック共重合体が優れた耐衝撃性改質剤として機能し、熱可塑性樹脂と組み合わせることで耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂組成物となることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)(a)熱可塑性樹脂と、(b)メタアクリル系重合体ブロックおよびイソブチレン系重合体ブロックを含有するブロック共重合体からなり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したブロック共重合体(b)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.8以下である熱可塑性樹脂組成物、
(2)熱可塑性樹脂(a)99.5〜30重量%およびブロック共重合体(b)0.5〜70重量%からなる前記(1)記載の熱可塑性樹脂組成物、
(3)熱可塑性樹脂(a)がポリ塩化ビニル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、メチルメタクリレート−スチレン共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂またはポリアミド樹脂である前記(1)記載の熱可塑性樹脂組成物、
(4)ブロック共重合体(b)がトリブロック共重合体またはジブロック共重合体である前記(1)記載の熱可塑性樹脂組成物、
(5)ブロック共重合体(b)の数平均分子量が30000〜500000である前記(1)記載の熱可塑性樹脂組成物、
(6)ブロック共重合体(b)が5〜90重量%のメタアクリル系重合体ブロックおよび95〜10重量%のイソブチレン系重合体ブロックを含有するブロック共重合体である前記(1)記載の熱可塑性樹脂組成物、
(7)メタアクリル系重合体ブロックがメタアクリル酸エステル50〜100重量%およびこれと共重合可能な他のビニル系単量体0〜50重量%とからなる重合体である前記(1)記載の熱可塑性樹脂組成物、
(8)メタアクリル酸エステルがメタアクリル酸メチルである前記(7)記載の熱可塑性樹脂組成物、
(9)メタアクリル系重合体ブロックのガラス転位温度が25℃以上である前記(1)記載の熱可塑性樹脂組成物、
(10)イソブチレン系重合体ブロックがイソブチレン50〜100重量%およびこれと共重合可能な他の単量体0〜50重量%とからなることを特徴とする前記(1)記載の熱可塑性樹脂組成物、
(11)他の単量体が芳香族アルケニル化合物、共役ジエン系化合物、ビニルエーテル系化合物または環状エーテル系化合物の単量体である前記(10)記載の熱可塑性樹脂組成物、
(12)イソブチレン系重合体ブロックのガラス転位温度が25℃以下である前記(1)記載の熱可塑性樹脂組成物、
(13)ブロック共重合体(b)が高分子開始剤を用いた制御ラジカル重合により製造されたブロック共重合体である前記(1)記載の熱可塑性樹脂組成物、
(14)ブロック共重合体(b)が末端にハロゲンを有するイソブチレン系重合体ブロックを高分子開始剤として用いて製造されたブロック共重合体である前記(13)記載の熱可塑性樹脂組成物、
(15)ブロック共重合体(b)が末端にハロゲンを有するイソブチレン系重合体を高分子開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として用いて製造されたブロック共重合体である前記(14)記載の熱可塑性樹脂組成物、
(16)ブロック共重合体(b)が末端に連鎖移動性官能基を有するイソブチレン系重合体を高分子開始剤として用いて製造されたブロック共重合体である前記(13)記載の熱可塑性樹脂組成物、
(17)末端にハロゲンを有するイソブチレン系重合体が下記一般式(I):
【0008】
【化3】
Figure 0004021109
【0009】
(式中、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは炭素数1〜30の炭化水素基、lは1〜10の整数、mは100〜10,000の整数、nは0〜1,000の整数)
または下記一般式(II):
【0010】
【化4】
Figure 0004021109
【0011】
(式中、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは炭素数1〜30の炭化水素基、lは1〜10の整数、mは100〜10,000の整数)
で表されることを特徴とする前記(14)記載の熱可塑性樹脂組成物、および
(18)末端にハロゲンを有するイソブチレン系重合体がリビングカチオン重合により製造されたことを特徴とする前記(14)または前記(17)記載の熱可塑性樹脂組成
に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、熱可塑性樹脂およびメタアクリル系重合体ブロックおよびイソブチレン系重合体ブロックを含有するブロック共重合体からなる熱可塑性樹脂組成物である。
【0013】
本発明に使用しうる熱可塑性樹脂としては、たとえばポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状オレフィン共重合樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、あるいは芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種のビニル系単量体70〜100重量%とこれらのビニル系単量体と共重合可能なたとえばエチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどの他のビニル系単量体および/またはブタジエン、イソプレンなどのジエン系単量体など0〜30重量%とを重合して得られる単独重合体または共重合体、さらにポリスチレン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂の混合物、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂の混合物、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂およびポリアリレート樹脂などをあげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。本発明において、熱可塑性樹脂はこれらに限定されることがなく、種々の熱可塑性樹脂を広く用いることができる。
【0014】
前記熱可塑性樹脂のなかでは、本発明で使用するブロック共重合体との相溶性に優れ、高い耐衝撃性を得やすいという点から、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、メチルメタクリレート−スチレン共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂およびポリアミド樹脂の少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
本発明に使用しうるメタアクリル系重合体ブロックおよびイソブチレン系重合体ブロックを含有するブロック共重合体は、メタアクリル系単量体を主成分とする重合体ブロック(A)とイソブチレン系単量体を主成分とする重合体ブロック(B)をそれぞれ少なくとも1つ含有するブロック共重合体である。
【0016】
すなわち、ブロック共重合体(b)は、A−B型のジブロック共重合体、A−B−A型のトリブロック共重合体、B−A−B型のトリブロック共重合体、(A−B)n型のマルチブロック共重合体から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体である。これらの中でも、耐衝撃性の点から、A−B型のジブロック共重合体、A−B−A型のトリブロック共重合体、または、これらの混合物が好ましい。
【0017】
前記ブロック共重合体の構造は、線状ブロック共重合体または分岐状(星状)ブロック共重合体であり、これらの混合物であってもよい。このようなブロック共重合体の構造は、熱可塑性樹脂組成物の加工特性や機械特性などの必要特性に応じて使い分ければよい。
【0018】
前記ブロック共重合体の数平均分子量はとくに限定されないが、30000〜500000、好ましくは50000〜400000である。数平均分子量が小さいと粘度が低く、また、数平均分子量が大きいと粘度が高くなる傾向があるため、必要とする加工特性に応じて設定すればよい。
【0019】
ブロック共重合体(b)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)もとくに限定がないが、1.8以下であることが好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。Mw/Mnが1.8より大きくなるとブロック共重合体の均一性が低下する傾向がある。
【0020】
ブロック共重合体(b)を構成するメタアクリル系重合体ブロック(A)とイソブチレン系重合体ブロック(B)の組成比は、(A)が5〜90重量%、(B)が95〜10重量%であり、好ましくは(A)が10〜80重量%、(B)が90〜20重量%であり、さらに好ましくは(A)が20〜50重量%、(B)が80〜50重量%である。(A)の割合が5重量%より少ないと熱可塑性樹脂との相溶性が低下する傾向があり、(B)の割合が10重量%より少ないと熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下する傾向がある。また、熱可塑性樹脂組成物に透明性を付与するためには、ブロック共重合体の屈折率が組み合わせる熱可塑性樹脂の屈折率と一致するような(A)と(B)の割合を選択すればよい。
【0021】
ブロック共重合体(b)を構成するメタアクリル系重合体ブロック(A)は、メタアクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなるブロックであり、メタアクリル酸エステル重合体の性質を損なわない範囲で、屈折率、ガラス転移温度、熱可塑性樹脂との相溶性などを調節する目的で、これらと共重合可能なビニル系単量体を共重合してもよい。かかるメタアクリル系重合体ブロック(A)は、メタアクリル酸エステル50〜100重量%およびこれと共重合可能なビニル系単量体0〜50重量%とからなることが好ましく、メタアクリル酸エステル50〜99.9重量%およびこれと共重合可能なビニル系単量体0.1〜50重量%であることが好ましい。メタアクリル酸エステルが50%未満ではメタアクリル酸エステル重合体が本来有するガラス転移温度および熱可塑性樹脂との相溶性が損なわれる傾向がある。
【0022】
ブロック(A)を構成するメタアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸−n−プロピル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸−n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸−tert−ブチル、メタアクリル酸−n−ペンチル、メタアクリル酸−n−ヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸−n−ヘプチル、メタアクリル酸−n−オクチル、メタアクリル酸−2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トルイル、メタアクリル酸ベンジル、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸−2−メトキシエチル、メタアクリル酸−3−メトキシブチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタアクリル酸のエチレンオキサイド付加物、メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタアクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチル、メタアクリル酸パーフルオロメチル、メタアクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタアクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、メタアクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどがあげられる。これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも組み合わせる熱可塑性樹脂との相溶性および入手しやすさの点でメタアクリル酸メチルが好ましい。
【0023】
ブロック(A)を構成するメタアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸−n−ペンチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−n−ヘプチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−3−メトキシブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのアクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどの芳香族アルケニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン系化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン含有不飽和化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのケイ素含有不飽和化合物;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステルなどの不飽和ジカルボン酸化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどのビニルエステル化合物;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系化合物などの各種ビニル系単量体があげられる。これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いられる。これらのビニル系単量体は、組み合わせる熱可塑性樹脂との相溶性によって好ましいものを選択することができる。また、熱可塑性樹脂組成物に透明性を付与するためには、ブロック(A)の屈折率が組み合わせる熱可塑性樹脂の屈折率と一致するようなビニル系単量体を選択すればよい。
【0024】
これらの中では、工業的に入手しやすい点で、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物またはハロゲン含有不飽和化合物であることが好ましい。
【0025】
ブロック(A)のガラス転位温度は、25℃以上であり、好ましくは40℃以上であり、さらに好ましくは50℃以上である。ガラス転位温度が25℃より低いと熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低くなる傾向がある。
【0026】
ブロック共重合体(b)を構成するイソブチレン系重合体ブロック(B)は、イソブチレンを主成分とする単量体を重合してなるブロックであり、イソブチレン重合体の性質を損なわない範囲で、屈折率、ガラス転移温度、熱可塑性樹脂との相溶性を調節する目的で、これと共重合可能な単量体を共重合してもよい。かかるイソブチレン系重合体ブロック(B)は、イソブチレン単量体50〜100重量%およびこれと共重合可能な単量体0〜50重量%とからなることが好ましく、イソブチレン単量体50〜99.9重量%およびこれと共重合可能な単量体0.1〜50重量%であることが好ましい。い。イソブチレンが50重量%未満では、イソブチレン重合体が本来有するガラス転移温度および熱可塑性樹脂との相溶性が損なわれる傾向がある。
【0027】
ブロック(B)を構成するイソブチレン単量体と共重合可能な単量体としては、たとえば、スチレン、o−、m−またはp−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−メチル−o−メチルスチレン、α−メチル−m−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、β−メチル−o−メチルスチレン、β−メチル−m−メチルスチレン、β−メチル−p−メチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、α−メチル−2,6−ジメチルスチレン、α−メチル−2,4−ジメチルスチレン、β−メチル−2,6−ジメチルスチレン、β−メチル−2,4−ジメチルスチレン、o−、m−またはp−クロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、α−クロロ−o−クロロスチレン、α−クロロ−m−クロロスチレン、α−クロロ−p−クロロスチレン、β−クロロ−o−クロロスチレン、β−クロロ−m−クロロスチレン、β−クロロ−p−クロロスチレン、2,4,6−トリクロロスチレン、α−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、α−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、o−、m−またはp−t−ブチルスチレン、o−、m−またはp−メトキシスチレン、o−、m−またはp−クロロメチルスチレン、o−、m−またはp−ブロモメチルスチレン、p−トリメトキシシリルスチレン、p−ジメトキシメチルシリルスチレン、インデン、ビニルナフタレンなどの芳香族アルケニル化合物;ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、ジビニルベンゼン、エチリデンノルボルネンなどの共役ジエン系化合物;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、(n−、イソ)プロピルビニルエーテル、(n−、sec−、tert−、イソ)ブチルビニルエーテル、メチルプロペニルエーテル、エチルプロペニルエーテルなどのビニルエーテル系化合物;テトラヒドロフランなどの環状エーテル系化合物;エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、シクロヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキセン、オクテン、ノルボルネンなどの脂肪族オレフィン系化合物;ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリビニルメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランなどのシラン系化合物などの各種カチオン重合性単量体があげられる。これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いられる。これらのカチオン重合性単量体は、ブロック(B)に要求されるガラス転位温度によって好ましいものを選択することができる。また、熱可塑性樹脂組成物に透明性を付与するためには、ブロック(B)の屈折率が組み合わせる熱可塑性樹脂の屈折率と一致するようなカチオン重合性単量体を選択すればよい。
【0028】
これらの中では、工業的に入手しやすい点で、芳香族アルケニル化合物、共役ジエン系化合物、ビニルエーテル系化合物または環状エーテル系化合物であることが好ましい。
【0029】
ブロック(B)のガラス転位温度は、25℃以下であり、好ましくは0℃以下であり、さらに好ましくは−20℃以下である。ガラス転位温度が25℃より高いと熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低くなる傾向がある。
【0030】
ブロック共重合体(b)を製造する方法としてはとくに限定されないが、高分子開始剤を用いた制御重合を用いることが好ましい。制御重合としては、リビングアニオン重合や連鎖移動剤を用いるラジカル重合、近年開発されたリビングラジカル重合があげられ、リビングラジカル重合がブロック共重合体の分子量および構造の制御の点から好ましい。
【0031】
リビングラジカル重合は、重合末端の活性が失われることなく維持されるラジカル重合である。リビング重合とは狭義においては、末端が常に活性を持ち続ける重合のことを示すが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にある擬リビング重合も含まれる。本発明における定義も後者である。リビングラジカル重合は近年様々なグループで積極的に研究がなされている。その例としては、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いるもの、コバルトポルフィリン錯体(J.Am.Chem.Soc.1994、116、7943)やニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの(Macromolecules、1994、27、7228)、有機ハロゲン化物などを開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合(Atom TransferRadical Polymerization:ATRP)などがあげられる。本発明において、これらのうちどの方法を使用するかはとくに制約はないが、制御の容易さなどから原子移動ラジカル重合が好ましい。
【0032】
原子移動ラジカル重合は、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として重合される。(たとえば、Matyjaszewskiら、J.Am.Chem.Soc.1995,117,5614,Macromolecules 1995,28,7901,Science 1996,272,866、あるいはSawamotoら、Macromolecules1995,28,1721)。これらの方法によると一般的に非常に重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどの停止反応が起こりやすいラジカル重合でありながら、重合がリビング的に進行し、分子量分布の狭いMw/Mn=1.1〜1.5程度の重合体が得られ、分子量はモノマーと開始剤の仕込み比によって自由にコントロールすることができる。
【0033】
原子移動ラジカル重合法において、開始剤として用いられる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物としては、一官能性、二官能性、または、多官能性の化合物が使用できる。これらは目的に応じて使い分ければよいが、ジブロック共重合体を製造する場合は、一官能性化合物が好ましく、A−B−A型のトリブロック共重合体、B−A−B型のトリブロック共重合体を製造する場合は二官能性化合物を使用するのが好ましく、分岐状ブロック共重合体を製造する場合は多官能性化合物を使用するのが好ましい。また、前記開始剤として高分子開始剤を用いることも可能である。高分子開始剤とは、有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物のうち、分子鎖末端にハロゲン原子の結合した重合体からなる化合物である。このような高分子開始剤は、リビングラジカル重合法以外の制御重合法でも製造することが可能であるため、異なる重合法で得られる重合体を結合したブロック共重合体が得られるという特徴がある。本発明で用いられるブロック共重合体を構成するイソブチレン系重合体は、後述するリビングカチオン重合法で製造されうるが、このような方法で得られたイソブチレン系重合体を高分子開始剤として用いることが、重合体の構造制御がしやすいという点で好ましい。
【0034】
高分子開始剤としては、たとえば、
一般式:
【0035】
【化5】
Figure 0004021109
【0036】
(式中、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは炭素数1〜30の炭化水素基、lは1〜10の整数、mは100〜10,000の整数、nは0〜1,000の整数)
一般式:
【0037】
【化6】
Figure 0004021109
【0038】
(式中、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは炭素数1〜30の炭化水素基、lは1〜10の整数、mは100〜10,000の整数)
などがあげられる。前述したように、このような高分子開始剤は後述するリビングカチオン重合法などにより製造されうる。
【0039】
また、重合を開始するもの以外に官能基を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を用いると、容易に末端に官能基が導入された重合体が得られる。このような官能基としては、アルケニル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シリル基などがあげられる。
【0040】
これらの開始剤として用いられうる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物は、ハロゲンが結合している炭素がカルボニル基あるいはフェニル基などと結合しており、炭素−ハロゲン結合が活性化されて重合が開始する。使用する開始剤の量は、必要とするブロック共重合体の分子量に合わせて、単量体との比から決定すればよい。すなわち、開始剤1分子あたり、何分子の単量体を使用するかによって、ブロック共重合体の分子量を制御できる。
【0041】
前記原子移動ラジカル重合の触媒として用いられる遷移金属触媒としてはとくに限定はないが、好ましいものとして、1価および0価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄または2価のニッケルの錯体があげられる。これらの中でも、コストや反応制御の点から銅の錯体が好ましい。1価の銅化合物としては、たとえば塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅などがあげられる。銅化合物をもちいる場合、触媒活性を高めるために2,2′−ビピリジルおよびその誘導体、1,10−フェナントロリンおよびその誘導体、テトラメチルエチレントリアミン(TMEDA)、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチル(2−アミノエチル)アミンなどのポリアミンなどを配位子として添加してもよい。また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl2(PPh33)も触媒として好ましい。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類を添加してもよい。さらに、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl2(PPh32)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl2(PPh32)、および2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr2(PBu32)も、触媒として好ましい。使用する触媒、配位子および活性化剤の量は、とくに限定されないが、使用する開始剤、単量体および溶媒の量と必要とする反応速度の関係から適宜決定すればよい。
【0042】
前記原子移動ラジカル重合は、無溶媒(塊状重合)または各種の溶媒中で行うことができる。前記溶媒としては、たとえば、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒などがあげられる。これらは、単独または2種以上を混合して用いることができる。前述したように、無溶媒で実施する場合は塊状重合となる。一方、溶媒を使用する場合、その使用量は、系全体の粘度と必要とする撹拌効率(すなわち、反応速度)の関係から適宜決定すればよい。
【0043】
また、前記原子移動ラジカル重合は、室温〜200℃の範囲で行うことができ、好ましくは50〜150℃の範囲である。
【0044】
前記原子移動ラジカル重合により、ブロック共重合体を製造するには、単量体を逐次添加する方法、あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤として次のブロックを重合する方法、別々に重合した重合体を反応により結合する方法などがあげられる。これらの方法は目的に応じて使い分ければよいが、前述したように重合体の構造制御がしやすいという点から、あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤として次のブロックを重合する方法が好ましい。
【0045】
前述したイソブチレン系重合体からなる高分子開始剤を製造するには、とくに限定されないが、重合体の構造を制御しやすいという点から、リビングカチオン重合が好ましい。
【0046】
前記リビングカチオン重合は、下記一般式(III)で表わされる化合物の存在下に、カチオン重合性単量体を重合させるものである。
【0047】
(CR12X)n3 (III)
(式中Xはハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基またはアシロキシ基から選ばれる置換基、R1、R2はそれぞれ水素原子または炭素数1〜6の1価炭化水素基でR1、R2は同一であっても異なっていても良く、R3は多価芳香族炭化水素基または多価脂肪族炭化水素基であり、nは1〜6の自然数を示す。)
【0048】
前記一般式(III)で表わされる化合物は開始剤となるもので、ルイス酸などの存在下、炭素陽イオンを生成し、カチオン重合の開始点になると考えられる。本発明で用いられる一般式(III)の化合物の例としては、次のような合物などがあげられる。
【0049】
(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン〔C65C(CH32Cl〕、1,4−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン〔1,4−Cl(CH32CC64C(CH32Cl〕、1,3−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン〔1,3−Cl(CH32CC64C(CH32Cl〕、1,3,5−トリス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン〔1,3,5−(ClC(CH32363〕、1,3−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)−5−(tert−ブチル)ベンゼン〔1,3−(C(CH32Cl)2-5−(C(CH33)C63
【0050】
これらの中でもとくに好ましいのは、ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[C64(C(CH32Cl)2]である(なお、ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼンは、ビス(α−クロロイソプロピル)ベンゼン、ビス(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼンあるいはジクミルクロライドとも呼ばれる)。これは2官能開始剤であり、これから重合を開始すると両末端が成長末端となる重合体が得られる。
【0051】
イソブチレン系重合体ブロックの重合に際し、さらにルイス酸触媒を共存させることもできる。このようなルイス酸としてはカチオン重合に使用できるものであれば良く、TiCl4、TiBr4、BCl3、BF3、BF3・OEt2、SnCl4、SbCl5、SbF5、WCl6、TaCl5、VCl5、FeCl3、ZnBr2、AlCl3、AlBr3などの金属ハロゲン化物;Et2AlCl、EtAlCl2などの有機金属ハロゲン化物を好適に使用することができる。中でも触媒としての能力、工業的な入手の容易さを考えた場合、TiCl4、BCl3、SnCl4が好ましい。ルイス酸の使用量は、とくに限定されないが、使用する単量体の重合特性あるいは重合濃度などを鑑みて設定することができる。通常は一般式(III)で表される化合物に対して0.1〜100モル当量使用することができ、好ましくは1〜60モル当量の範囲である。
【0052】
イソブチレン系重合体ブロックの重合に際しては、さらに必要に応じて電子供与体成分を共存させることもできる。この電子供与体成分は、カチオン重合に際して、成長炭素カチオンを安定化させる効果があるものと考えられており、電子供与体の添加によって分子量分布の狭い構造が制御された重合体が生成する。使用可能な電子供与体成分としてはとくに限定されないが、たとえば、ピリジン類、アミン類、アミド類、スルホキシド類、エステル類、または金属原子に結合した酸素原子を有する金属化合物などを挙げることができる。
【0053】
各成分の使用量は目的とする重合体の特性によって適宜設計することが可能である。
【0054】
本発明は必要に応じて溶剤中で行うことができ、このような溶剤としてはカチオン重合を本質的に阻害しなければとくに制約なくどれでも使用することができる。具体的には、塩化メチル、ジクロロメタン、クロロホルム、塩化エチル、ジクロロエタン、n−プロピルクロライド、n−ブチルクロライド、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼンなどのアルキルベンゼン類;エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの直鎖式脂肪族炭化水素類;2−メチルプロパン、2−メチルブタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,2,5−トリメチルヘキサンなどの分岐式脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの環式脂肪族炭化水素類;石油留分を水添精製したパラフィン油などをあげることができる。これらの中では、トルエン混合溶媒が、環境に対する安全性と重合物性などから好ましい。また、炭素数3〜8の1級および/または2級のモノハロゲン化炭化水素も好適に使用できる。この具体例としては、たとえば1−クロロプロパン、1−クロロ−2−メチルプロパン、1−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルブタン、1−クロロ−3−メチルブタン、1−クロロ−2,2−ジメチルブタン、1−クロロ−3,3−ジメチルブタン、1−クロロ−2,3−ジメチルブタン、1−クロロペンタン、1−クロロ−2−メチルペンタン、1−クロロ−3−メチルペンタン、1−クロロ−4−メチルペンタン、1−クロロヘキサン、1−クロロ−2−メチルヘキサン、1−クロロ−3−メチルヘキサン、1−クロロ−4−メチルヘキサン、1−クロロ−5−メチルヘキサン、1−クロロヘプタン、1−クロロオクタン、2−クロロプロパン、2−クロロブタン、2−クロロペンタン、2−クロロペンタン、2−クロロヘキサン、2−クロロヘプタン、2−クロロオクタン、クロロベンゼンなどが使用でき、これらは1種または2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、イソブチレン系ブロック共重合体の溶解度、分解による無害化の容易さ、コストなどのバランスから、1−クロロブタンが好ましく使用できる。
【0055】
これらの溶剤は、ブロック共重合体を構成する単量体の重合特性および生成する重合体の溶解性などのバランスを考慮して単独または2種以上を組み合わせて使用される。
【0056】
溶剤の使用量は、得られる重合体溶液の粘度や除熱の容易さを考慮して、重合体の濃度が1〜50重量%、好ましくは5〜35重量%となるように決定される。
【0057】
実際の重合を行うに当たっては、各成分を冷却下たとえば−100℃以上0℃未満の温度で混合する。エネルギーコストと重合の安定性を釣り合わせるために、とくに好ましい温度範囲は−30℃〜−80℃である。
【0058】
このようなリビングカチオン重合により得られる重合体は、そのままでも原子移動ラジカル重合の高分子開始剤として使用可能であるが、スチレンやジフェニルエチレンと反応させることにより、末端を活性化することが好ましい。
【0059】
本発明に使用される熱可塑性樹脂とブロック共重合体の配合量は、とくに限定されないが、熱可塑性樹脂(a)が99.5〜30重量%およびブロック共重合体(b)が0.5〜70重量%が好ましく、熱可塑性樹脂が99.5〜50重量%およびブロック共重合体が0.5〜50重量%がより好ましく、熱可塑性樹脂が99.5〜70重量%およびブロック共重合体が0.5〜30重量%が最も好ましい。ブロック共重合体の配合量が0.5%重量以下では、耐衝撃性の改良効果が低くなる傾向があり、70重量%以上では、熱可塑性樹脂の特徴が出しにくい傾向がある。
【0060】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する方法としては、バンバリーミキサー、ロールミル、二軸押出機などの公知の装置を用い、機械的に混合しペレット状に賦形する方法などの既存の方法をもちいることができる。賦形されたペレットは、幅広い温度範囲で成形可能であり、成形には、通常の射出成形機、ブロー成形機、押出成形機、圧縮成形機などがもちいられる。
【0061】
さらに、この熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて耐衝撃性改良剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、顔料、充填剤などを配合しうる。具体的には、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)、アクリル系グラフト共重合体、アクリル−シリコーン複合ゴム系グラフト共重合体、イソブチレン系グラフト共重合体、イソブチレン−アクリル複合ゴム系グラフト共重合体、イソブチレン−シリコーン複合ゴム系グラフト共重合体などの耐衝撃性改良剤;トリフェニルホスファイト、ヒンダードフェノール、ジブチル錫マレエートなどの安定剤;パラフィン系オイル、ポリブテン系オイル、軽油、スピンドル油、マシン油、アマニ油、ゴマ油、ヒマシ油、ツバキ油、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルアジペート、トリクレジルホスフェートなどの可塑剤;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、モンタン酸系ワックスなどの滑剤;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、デカブロモビフェニル、デカブロモビフェニルエーテル、三酸化アンチモンなどの難燃剤;酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛などの顔料;ガラス繊維、アスベスト、ウォラストナイト、マイカ、タルク、炭酸カルシウムなどの充填剤などがあげられる。
【0062】
【実施例】
つぎに、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0063】
製造例1(メタアクリル酸メチル−イソブチレン系ブロック共重合体)
2Lセパラブルフラスコに、メチルシクロヘキサン(モレキュラーシーブス4Aで乾燥して使用)493ml、塩化メチレン(モレキュラーシーブス4Aで乾燥して使用)372ml、p−ジクミルクロライド0.6545gを加えた。反応容器を−70℃に冷却した後、α−ピコリン(2−メチルピリジン)0.43ml、イソブチレン200mlを添加した。さらに四塩化チタン8.54mlを加えて、350rpmで1.5時間撹拌した。次いで反応溶液にスチレン10mlを添加し、さらに10分間反応を続けた後、メタノール300mlを添加して反応を停止させた。重合体が析出した。溶媒をデカンテーションし、さらに、メタノール700mlで2回洗浄した後、1.2lのヘキサンを加え、2lの水を加えて水洗した。このヘキサン溶液を大量のアセトン中に投入し、重合体を沈殿させ、溶媒をデカンテーションした。60℃で15時間真空乾燥することにより、ポリイソブチレン高分子開始剤を得た。
【0064】
得られたポリイソブチレン高分子開始剤125.9g、メタアクリル酸メチル112.3g、臭化銅(I)4.02g、アセトニトリル180ml、トルエン720mlの混合液を、窒素雰囲気下、70℃に昇温し、300rpmで撹拌しながらペンタメチルジエチレントリアミン5.84ml加えた。6.5時間撹拌後、トルエン300mlを加え、室温まで冷却した。メタアクリル酸メチルの転化率は45%であった。混合液をアルミナカラムに通し、臭化銅を除いた後、大量のメタノール中に滴下し、重合体を再沈させ、溶媒を濾過により除いた。生成物であるメタアクリル酸メチル−イソブチレン系ブロック共重合体(以下、B−1という)の一次構造を以下に示した方法で確認した。重量平均分子量(Mw)は184000、数平均分子量(Mn)は139000、分子量分布(Mw/Mn)は1.33であった。ブロック化率は90%で、ブロック共重合体中のポリイソブチレンとポリメタアクリル酸メチルの重量分率は、それぞれ67重量%と33重量%であった。また、以下に示した方法で測定したガラス転位温度(Tg)は、ポリイソブチレンブロックが−64℃、ポリメタアクリル酸メチルブロックが105℃であった。得られたブロック共重合体は、トリブロック共重合体である。
【0065】
(分子量・分子量分布)
クロロホルムを移動相として、ポリスチレンゲルカラムを使用したGPC測定を行い、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
【0066】
(ブロック化率)
メチルエチルケトンを用いて、可溶分と不溶分に分離し、可溶分をホモポリメタアクリル酸メチルとして除いた。次に、ヘキサンを用いて、可溶分と不溶分に分離し、可溶分をホモポリイソブチレンとして除いた。残った不溶分をブロック共重合体として、その重量分率をブロック化率とした。また、1H−NMRにより、ブロック共重合体中のポリイソブチレンとポリメタアクリル酸メチルの重量分率を確認した。
【0067】
(ガラス転位温度)
JIS K7121に従い、DSC(示差走査熱量測定)を用い、20℃/分の昇温速度で測定した。
【0068】
製造例2(メタアクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−スチレン系グラフト共重合体)
(a)架橋メタアクリル系重合体(最内層)の重合
イオン交換水220重量部、ほう酸0.32重量部、炭酸ナトリウム0.03重量部、N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウム0.09重量部、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.09重量部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.008重量部、硫酸第一鉄7水塩0.002重量部をガラス製セパラブルフラスコに仕込み、窒素気流中で攪拌しながら80℃に昇温した後、メタアクリル酸メチル96重量部、アクリル酸n−ブチル4重量部、メタアクリル酸アリル0.4重量部からなる最内層モノマー成分とt−ブチルハイドロパーオキサイド69%水溶液0.13重量部との混合液の内25%を一括して仕込み、45分間の重合を行った。続いてこの混合液の残り75%を1時間に渡って連続追加した。追加終了後、同温度で1時間保持し重合を完結させた。また、この間に0.2重量部のN−ラウロイルサルコシン酸ナトリウムを追加した。得られた最内層架橋メタアクリル系重合体ラテックス中の重合体粒子の平均粒子径は、1600Å(546μmの波長の光散乱を利用して求めた)であり、重合転化率(重合生成量/モノマー仕込量×100)は98%であった。
【0069】
(b)ゴム状重合体(中間層)の重合
前記(a)により得た架橋メタアクリル系重合体ラテックスを窒素気流中で80℃に保ち、t−ブチルハイドロパーオキサイド69%水溶液0.1重量部を添加して30分放置した。その後、過硫酸カリウム0.13重量部を添加した後、モノマー成分がアクリル酸n−ブチル82重量部、スチレン18重量部、メタアクリル酸アリル1.5重量部のモノマー混合液を5時間に渡って連続追加した。この間にオレイン酸カリウム0.11重量部を連続的に添加した。モノマー混合液の追加終了後、重合を完結させるためにさらに過硫酸カリウムを0.05重量部添加し2時間保持した。得られた重合体の平均粒子径は2300Åであり重合添加率は99%であった。
【0070】
(c)グラフト重合体(最外層)の重合
前記(b)により得たゴム状重合体ラテックスを80℃に保ち、過硫酸カリウム0.02重量部を添加した後、メタアクリル酸メチル96重量部、アクリル酸n−ブチル4重量部、t−ドデシルメルカプタン0.15重量部の混合液を1.25時間にわたって連続追加した。モノマー混合液の追加終了後1時間保持し多層構造グラフト共重合体ラテックスを得た。多層構造グラフト共重合体の平均粒子径は2530Åであり、重合転化率は99.5%であった。得られた多層構造グラフト共重合体ラテックスは公知の方法で塩析凝固、熱処理、乾燥を行い白色粉末状の多層構造メタアクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−スチレン系グラフト共重合体(G−1)を得た。G−1の最内層のTgは104℃、中間層のTgは−15℃、最外層のTgは104℃であった。
【0071】
製造例3
(a)ゴム状重合体(内層)の重合
窒素気流中で、水220重量部、ロジン酸カリウム0.5重量部、オレイン酸ナトリウム0.5重量部、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.4重量部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.008重量部、硫酸第一鉄7水塩0.002重量部を40℃の温度に保ち、攪拌しながら、アクリル酸n−ブチル80重量部、メタアクリル酸アリル0.4重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.2重量部の混合液のうち、アクリル酸n−ブチルが7重量部に相当する量を一括して仕込み、1.5時間重合を行なった。ついで前記混合液の残りの量、つまりアクリル酸n−ブチル73重量部に相当する量を5.5時間にわたって添加した。この間に、オレイン酸ナトリウム1重量部を連続的に添加した。
【0072】
単量体の添加が終了してから2.5時間40℃に保って重合を完結した。重合転化率は95%であった。重合終了時の平均粒子径は2200Å(546μmの波長の光散乱を利用して測定した)であり、ゴム中のトルエン不溶成分量は85%であった。
【0073】
(b)グラフト重合体(外層)の重合
前記(a)でえられたゴム状重合体の水性分散液を窒素気流中で50℃に昇温し、ついでメタアクリル酸メチル5重量部、メタアクリル酸アリル0.5重量部、クメンハイドロパーオキサイドを30分にわたって添加し、そののち45分間保持した。
【0074】
さらにメタアクリル酸メチル15重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.07重量部、オレイン酸0.5重量部を1.25時間にわたって添加したのち、クメンハイドロパーオキサイドを0.02重量部添加して2時間の後重合を行ない、重合を完結させた。重合転化率は95%であった。
【0075】
えられたラテックスを通常の方法で凝固、熱処理、乾燥して白色粉末状のメタアクリル酸メチル−アクリル酸ブチル系グラフト共重合体(G−2)をえた。G−2の内層のTgは−42℃、外層のTgは108℃であった。
【0076】
実施例1
熱可塑性樹脂として塩化ビニル樹脂(S1008、鐘淵化学工業(株)製)100重量部、安定剤としてジブチルスズマレエート2.5重量部、滑剤としてヘキスト ワックスE(ヘキスト ジャパン(株)製)0.5重量部、加工助剤としてPA−20(鐘淵化学工業(株)製)2.0重量部、顔料として酸化チタン3.0重量部の混合物に対し、耐衝撃性改良剤としてメタアクリル酸メチル−イソブチレン系ブロック共重合体である(B−1)を12重量部配合し、設定温度180℃で5分間ロール混練し、シート化した。えられたシートを、設定温度190℃で熱プレス成形し、厚さ5mmの物性評価用の成形体をえた。
【0077】
えられた成形体のアイゾット衝撃強度を以下の方法にしたがって測定したところ、14kg・cm/cmであった。
【0078】
(アイゾット衝撃強度)
ASTM D256−56に記載の方法に準拠して、Vノッチ付き試料を用い、23℃において、n=5で測定した値の平均値を採用した。
【0079】
比較例1
実施例1において、耐衝撃性改良剤を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして成形体を作製し、アイゾット衝撃強度を評価したところ、3kg・cm/cmであった。
【0080】
比較例2
実施例1において、耐衝撃性改良剤として、メタアクリル酸メチル−アクリル酸ブチル系グラフト共重合体であるFM−21(鐘淵化学工業(株)製)を使用した以外は、実施例1と同様にして成形体を作製し、アイゾット衝撃強度を評価したところ、10kg・cm/cmであった。
【0081】
実施例1および比較例1、2から、メタアクリル酸メチル−イソブチレン系ブロック共重合体は、塩化ビニル樹脂に対して、耐衝撃性改良効果を示し、その効果は、メタアクリル酸メチル−アクリル酸ブチル系グラフト共重合体よりも大きいことがわかる。
【0082】
実施例2
熱可塑性樹脂として、メタクリル樹脂パラペットG1000(株式会社クラレ製)84重量部に対し、耐衝撃性改良剤として、メタアクリル酸メチル−イソブチレン系ブロック共重合体である(B−1)を16重量部配合し、ベント付二軸押出機(32mm、L/D=25.5)を用い、設定温度230℃で押出混練し、ペレット化した。得られたペレットは、80℃で15時間乾燥後、設定温度230℃で射出成形し、物性評価用の平板状成形体(120×120×3(厚さ)(mm))を得た。
【0083】
えられた成形体のカードナー強度を以下の方法にしたがって測定したところ、21kg・cmであった。
【0084】
(ガードナー強度)
ASTM D3029−84−GBに記載の方法に準拠して、700gのおもりを用い、23℃において、n=40で測定した。
【0085】
比較例3
実施例2において、耐衝撃性改良剤を添加しないこと以外は、実施例2と同様にして成形体を作製し、ガードナー強度を評価したところ、9kg・cmであった。
【0086】
比較例4
実施例2において、耐衝撃性改良剤として、メタアクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−スチレン系グラフト共重合体であるG−1を使用した以外は、実施例2と同様にして成形体を作製し、ガードナー強度を評価したところ、16kg・cmであった。
【0087】
実施例2および比較例3、4から、メタアクリル酸メチル−イソブチレン系ブロック共重合体は、メタクリル樹脂においても、耐衝撃性改良効果を示し、その効果は、メタアクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−スチレン系グラフト共重合体よりも大きいことがわかる。
【0088】
実施例3
熱可塑性樹脂として、ポリカーボネート樹脂レキサン141R−111(日本ジーイープラスチックス(株)製)95重量部、安定剤として、トパノールCA((株)リプレ製)0.3重量部、アデカスタブPEP−36(旭電化工業(株)製)に対し、耐衝撃性改良剤として、メタアクリル酸メチル−イソブチレン系ブロック共重合体であるB−1を5重量部配合し、ベント付二軸押出機(32mm、L/D=25.5)を用い、設定温度280℃で押出混練し、ペレット化した。得られたペレットは、80℃で15時間乾燥後、設定温度280℃で射出成形し、物性評価用の成形体(1/4インチ厚み)を得た。
【0089】
えられた成形体のアイゾット衝撃強度を0℃で測定したところ、23kg・cm/cmであった。また、ペレットの280℃における溶融粘度を、以下の方法で測定したところ、3700poiseであった。
【0090】
(溶融粘度)
JIS K−7199に記載の方法に準拠して、キャピラリーレオメーターを用い、1216s-1の剪断速度で測定した。
【0091】
比較例5
実施例3において、耐衝撃性改良剤を添加しない以外は、実施例3と同様にして成形体を作製し、0℃におけるアイゾット衝撃強度を評価したところ、5kg・cm/cmであった。また、280℃における溶融粘度は5000poiseであった。
【0092】
比較例6
実施例3において、耐衝撃性改良剤として、メタアクリル酸メチル−アクリル酸ブチル系グラフト共重合体である(G−2)を使用した以外は、実施例3と同様にして成形体を作製し、0℃におけるアイゾット衝撃強度を評価したところ、20kg・cm/cmであった。また、280℃における溶融粘度は4700poiseであった。
【0093】
実施例3および比較例5、6から、メタアクリル酸メチル−イソブチレン系ブロック共重合体は、ポリカーボネート樹脂においても、耐衝撃性改良効果を示し、その効果は、メタアクリル酸メチル−アクリル酸ブチル系グラフト共重合体よりも大きいことがわかる。さらに、メタアクリル酸メチル−イソブチレン系ブロック共重合体は、ポリカーボネート樹脂の溶融粘度を下げて、成形流動性を向上させることがわかる。
【0094】
実施例4
熱可塑性樹脂として、ポリブチレンテレフタレート樹脂ジュラネックス2002(ポリプラスチック(株)製)80重量部、安定剤として、トパノールCA((株)リプレ製)0.3重量部、アデカスタブPEP−36(旭電化工業(株)製)0.3重量部に対し、耐衝撃性改良剤として、メタアクリル酸メチル−イソブチレン系ブロック共重合体である(B−1)を20重量部配合し、ベント付二軸押出機(32mm、L/D=25.5)を用い、設定温度245℃で押出混練し、ペレット化した。得られたペレットは、80℃で15時間乾燥後、設定温度250℃で射出成形し、物性評価用の成形体(1/8インチ厚み)を得た。
【0095】
えられた成形体のアイゾット衝撃強度を23℃で測定したところ、22kg・cm/cmであった。また、成形流動性の指標であるスパイラルフローを、以下の方法で測定したところ、490mmであった。
【0096】
(スパイラルフロー)
シリンダー温度250℃、金型温度70℃に設定し、射出圧力608kgf/cm2で、3mm厚みの角形スパイラルを射出成形し、その長さ(mm)で成形流動性を評価した。
【0097】
比較例7
実施例4において、耐衝撃性改良剤として、メタアクリル酸メチル−アクリル酸ブチル系グラフト共重合体である(G−2)を使用した以外は、実施例4と同様にして成形体を作製し、23℃におけるアイゾット衝撃強度を評価したところ、9kg・cm/cmであった。また、スパイラルフローは、310mmであった。
【0098】
実施例4および比較例7から、メタアクリル酸メチル−イソブチレン系ブロック共重合体は、メタアクリル酸メチル−アクリル酸ブチル系グラフト共重合体よりも、ポリブチレンテレフタレート樹脂の耐衝撃性改良効果および成形流動性改良効果が優れていることがわかる。
【0099】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂が本来有する、たとえば耐候性、熱安定性などを維持しながら、とくにすぐれた耐衝撃性を示す成形品を提供することができる。
【0100】
したがって、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、たとえば包装材料、建築、土木材料、自動車用材料、家電製品用材料、その他雑貨品用材料などの分野で有用なシート、フィルム、板、異形などの押出成形品、カレンダー成形品、ボトルなどのブロー成形品、自動車や家電製品に用いられる各種射出成形品などの製造に好適に使用することができ、その工業的価値は非常に大きい。

Claims (18)

  1. (a)熱可塑性樹脂と、(b)メタアクリル系重合体ブロックおよびイソブチレン系重合体ブロックを含有するブロック共重合体からなり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したブロック共重合体(b)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.8以下である熱可塑性樹脂組成物。
  2. 熱可塑性樹脂(a)99.5〜30重量%およびブロック共重合体(b)0.5〜70重量%からなる請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 熱可塑性樹脂(a)がポリ塩化ビニル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、メチルメタクリレート−スチレン共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂またはポリアミド樹脂である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. ブロック共重合体(b)がトリブロック共重合体またはジブロック共重合体である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. ブロック共重合体(b)の数平均分子量が30000〜500000である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. ブロック共重合体(b)が5〜90重量%のメタアクリル系重合体ブロックおよび95〜10重量%のイソブチレン系重合体ブロックを含有するブロック共重合体である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. メタアクリル系重合体ブロックがメタアクリル酸エステル50〜100重量%およびこれと共重合可能な他のビニル系単量体0〜50重量%とからなる重合体である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  8. メタアクリル酸エステルがメタアクリル酸メチルである請求項記載の熱可塑性樹脂組成物。
  9. メタアクリル系重合体ブロックのガラス転位温度が25℃以上である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  10. イソブチレン系重合体ブロックがイソブチレン50〜100重量%およびこれと共重合可能な他の単量体0〜50重量%とからなることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  11. 他の単量体が芳香族アルケニル化合物、共役ジエン系化合物、ビニルエーテル系化合物または環状エーテル系化合物の単量体である請求項10記載の熱可塑性樹脂組成物。
  12. イソブチレン系重合体ブロックのガラス転位温度が25℃以下である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  13. ブロック共重合体(b)が高分子開始剤を用いた制御ラジカル重合により製造されたブロック共重合体である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
  14. ブロック共重合体(b)が末端にハロゲンを有するイソブチレン系重合体ブロックを高分子開始剤として用いて製造されたブロック共重合体である請求項13記載の熱可塑性樹脂組成物。
  15. ブロック共重合体(b)が末端にハロゲンを有するイソブチレン系重合体を高分子開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として用いて製造されたブロック共重合体である請求項14記載の熱可塑性樹脂組成物。
  16. ブロック共重合体(b)が末端に連鎖移動性官能基を有するイソブチレン系重合体を高分子開始剤として用いて製造されたブロック共重合体である請求項13記載の熱可塑性樹脂組成物。
  17. 末端にハロゲンを有するイソブチレン系重合体が下記一般式(I):
    Figure 0004021109
    (式中、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは炭素数1〜30の炭化水素基、lは1〜10の整数、mは100〜10,000の整数、nは0〜1,000の整数)
    または下記一般式(II):
    Figure 0004021109
    (式中、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは炭素数1〜30の炭化水素基、lは1〜10の整数、mは100〜10,000の整数)
    で表されることを特徴とする請求項14記載の熱可塑性樹脂組成物。
  18. 末端にハロゲンを有するイソブチレン系重合体がリビングカチオン重合により製造されたことを特徴とする請求項14または17記載の熱可塑性樹脂組成物。
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