JP4056972B2 - ジェル状組成物の製造方法 - Google Patents
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宇根他、フレグランスジャーナル、2000年、第28巻、第4号、P.15−21 永尾他、フレグランスジャーナル、2000年、第28巻、第4号、P.22−27
しかしながら、上記方法の場合、ジェル化のための放置期間に10日から2週間程度を要することから、現在の商慣習である短納期に対応するためには、相応の仕掛かり在庫を持たざるを得ず、好ましくない。
本発明におけるジェル状組成物は、ポリオールと水の介在下、絹フィブロインを結晶化させたもので、ジェル状で、均一に延びる延展性を呈しているものをいう。本発明におけるジェル状組成物中には絹フィブロイン成分を0.1〜5質量%(以下、%と記す)、より好ましくは1〜4%含んでいることが望ましい。
防腐効果を得るためには、ジェル状組成物中、1,3ブチレングリコール12%以上、1,2ペンタンジオール2.9%以上、1,2ヘキサンジオール1.4%以上等を用いることが好適である。
その際、可溶化剤として使用される、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコール等のポリオールは、パラベン類の様な疎水性物質の溶解性を高める可溶化能といった観点からも最適である。元来この種の防腐剤は冷水に難溶であるばかりでなく、90℃以上に加熱した水に溶解させても、液温の低下と共に再び析出してくるものである。しかしながら、予めポリオールに溶解したパラベン類は高濃度で安定して水に溶解することができることが一般に知られている。このような性質は、本発明のジェル状組成物に防腐能を付加する際に極めて有効に機能する。
本発明のジェル状組成物を得るにあたっては、以上に示した防腐剤のうち1種もしくは2種を、予め絹フィブロインと混合される、水或いはポリオールといった該防腐剤を無理なく溶解させ得る溶媒に溶解させて用いる。
即ち、絹フィブロインが十分に結晶化した際に、分散媒分子の自由度が完全に失われると言うことは、得られるジェルの物性が極めて強固なものであることを意味し、そのようなジェルは一般的な寒天の様なさくいジェル状を示し、本発明が目的とするところとは全く性状を異にするものである。
まず該濃度が1.5%を下回る場合、得られるジェル状組成物は、非常に硬度が小さいため、該組成物単体での形状保持能が小さく、振動を与えると該組成物が流動する性状を示す。当然、該濃度が下がるに連れてこの傾向は強くなり、実質的にジェルと標榜できる該濃度の下限値は0.1%程度である。この下限値に満たない条件でジェル化させた場合、十分に絹フィブロイン分が結晶化しても自由度が全く制限されない分散媒分子が必要以上に存在することになり、本発明のジェル状組成物とは趣を異にする傾向にある。
次に該濃度が1.5〜3.5%の範囲内にある場合、得られるジェル状組成物は、延展に適度な硬度を有し、容器を傾けてもジェル状物界面が追従して傾くことがない程度の性状を示す。
最後に該濃度が3.5%を超える場合、得られるジェル状組成物は、手指等の塗擦により延展性を示すものの硬度の大きい性状となる。当然、該濃度が上がるに連れて硬度も増大し、実質的に該組成物単体でジェルと標榜できる該濃度の上限値は5%程度であり、必要に応じ擂潰器やディスパーなど物理的な外力によって、感触の調整を行うことも可能である。
加えて、ジェル状組成物の性状は、絹フィブロインの重量平均分子量の大小によっても操作することが可能である。該分子量を小さくすれば、絹フィブロイン濃度を下げた場合と同様の傾向を示し、該分子量を大きくすれば、絹フィブロイン濃度上げた場合と同じような挙動を示す。その際、該分子量の下限値は1万程度である。これより小さい分子量では、絹フィブロイン濃度を上げてもジェル化が認められない傾向にある。
本発明に係る酸化側電解生成水とは、陽極側と陰極側との間にイオン交換樹脂等の隔膜を設け、塩化ナトリウムを添加した水或いは添加しない水を電気分解することにより、陽極側に得られる酸性サイドの水のことを言う。機能水、電解機能水、酸性水、酸化水等の様々な名称で呼ばれることがあるが、本質は無機或いは有機の酸の添加によらずに電気的に分解することで酸性を呈する水を指す。また該酸化側電解生成水は肌につけてアストリンゼントとして化粧料にも用いられ、肌を引き締めるいわゆる収斂効果も期待できることが知られている。
絹フィブロイン液に、弱撹拌下、酸化側電解生成水を徐々に加えながらpHを調整するわけであるが、この場合、絹フィブロインの濃度が、該生成水の添加により下がってしまうので、必要に応じ、元となる絹フィブロイン液中の絹フィブロイン濃度を上げておかなければならない。
本発明に係る強酸性陽イオン交換樹脂は、高分子基体にイオン交換基を結合させた構造のもので、該交換基にスルホン酸基を結合させたものである。その構造により、ゲル形とマクロポーラス形に大別されるが、いずれの形でも差し支えない。また、イオン交換樹脂メーカーやグレードによって樹脂粒径の分布、総交換容量や架橋度に差異があるが、使用に際して特に限定されるものではない。
イオン交換にあたって該樹脂は、予めH+形に再生しておく。再生は常法に従って行い、塩酸或いは硫酸を用いて実施すればよい。
また、交換の方法は、特に定めるものはなく、公知のバッチ方法や連続方法のいずれでも可能である。
ポリオールの添加によって、ジェル化に要する時間が無添加のものより短縮される点も、生産性という観点から好都合である。
得られたジェル状組成物は、該pHが酸性サイドであるため、必要に応じアルカリ剤を加えて、pH調整することが可能である。また、濾紙等で水分を除去し、ジェルの硬度を調整することも可能である。
絹フィブロイン液の原料となる撚糸屑を、1.0%マルセル石鹸溶液(浴比30倍)で1時間煮沸精練してセリシンを除去し、水洗後、熱風乾燥した。次いで、ニーダーに38%塩化カルシウム溶液を準備し、該脱セリシン撚糸屑を浴比で5倍相当量投入し、加熱捏和・溶解させた。濾過して不純物を除去後、ホローファイバー型の透析装置を用いて透析・脱塩し、絹フィブロイン液を得た。得られた絹フィブロイン液の絹フィブロイン濃度は5.5%で重量平均分子量は4.1×104だった。
得られたジェル状組成物は、硬度が小さく、程よい延展性を呈し、肌や毛髪に滑らかになじむ性質のものであった。手肌への塗布に関しては少量でもムラ無くスムーズに延び、乾燥後はともすればべたつきがちなポリオールのしっとり感を絹フィブロインのさらさら感が上手くカバーした、使用性に優位な保湿剤が得られた。
実施例1で用いた酸化側電解生成水325gにイオン交換水130gを加え(pH2.3)、これを実施例1で得られた絹フィブロイン溶液545gに、徐々に加えた。十分に混和した後これを密栓し、冷蔵保存した。14時間経過時点では白濁化が確認されたが性状は未だ水様だった。23時間経過時点では粘稠度の増加が確認されたが、容器を傾けるとそれに連れて内容物も流動し、ジェル化が完了しているとは言えない状態だった。39時間経過時点では容器を傾けても流動せず、ジェル化が完了したと確認された。
得られたジェル状組成物は、実施例1と同様な手肌への塗布感を呈していたが、乾燥後は絹フィブロインのさらさら感のみが強調された感じとなった。
絹フィブロイン液の原料となるブーレットを、1.0%マルセル石鹸溶液(浴比30倍)で1時間煮沸精練してセリシンを除去し、水洗後、熱風乾燥した。次いでニーダーに7%銅エチレンジアミン溶液を準備し、該脱セリシンブーレットを浴比で10倍相当量投入し、常温下捏和・溶解させた。得られた溶解液をセルロースチューブで流水透析し、不溶物を濾過除去して、絹フィブロイン液を得た。得られた絹フィブロイン液の絹フィブロイン濃度は6.3%で重量平均分子量は1.5×104だった。
得られたジェル状組成物は、実施例1に比較して硬度は大きいものの、手指による塗擦で何ら無理なく手肌上で延び、肌や毛髪に滑らかになじむ性質のものであった。
絹フィブロイン液の原料として生糸屑を用い、実施例1に準じて精練、溶解した。得られた溶解液をセルロースチューブで流水透析し、不溶物を濾過除去して、絹フィブロイン液を得た。得られた絹フィブロイン液の絹フィブロイン濃度は7.5%で重量平均分子量は8.2×104だった。
得られたジェル状組成物は、僅かな振動でその形状を崩してしまう程の非常に硬度の小さいジェルで、ごく僅かな量で広い塗布面積をカバーできる性質のものであった。
Claims (1)
- 絹フィブロイン液を強酸性陽イオン交換樹脂で処理した後、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコール、1,2ペンタンジオール、1,2ヘキサンジオール、及びグリセリンから選ばれる1種又は2種以上のポリオールと混合した後、16時間以内にジェル化させ、最終組成物に対する絹フィブロインの含量が0.1〜5.0質量%であることを特徴とするジェル状組成物の製造方法。
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