JP3537297B2 - フィブロイン流動体及びその製造方法 - Google Patents
フィブロイン流動体及びその製造方法Info
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Description
又は食品等の分野で主剤又は添加剤として利用されうる
フィブロイン流動体に関する。
ブロインが知られている。ゲル状のフィブロインは、ク
エン酸や酢酸等の酸を加えて絹蛋白の等電点までpHを
下げるか、又はセリシンその他の多糖類等をゲル化剤と
して添加することによって得られる。
下、フィブロインゲル)は、系全体にわたる支持構造を
有し、ゲル全体として一つの塊となっているため、クリ
ーム状となることはない。また、フィブロインゲルは保
水力にも欠け、放置すれば水分を失ってゲルにヒビが入
る。
ルを作成した場合には、添加したものをゲル化後に完全
に除去するのが困難であり、不純物としてゲル中に残存
した添加物は、フィブロインゲルから得られる最終製品
の品質に悪影響を及ぼす。そればかりでなく、添加した
クエン酸その他の酸やゲル化剤は、単に不純物として混
在しているというレベルに止まらず、フィブロインの架
橋構造に関与してフィブロインゲル本来の吸着能の発揮
を妨げる。
インゲルは、クリーム状にできず保水力に欠けるという
ようなフィブロインゲル本来の物性上の問題や、品質悪
化の原因となる添加物が使用されるというような製法上
の問題を有している。それゆえに、フィブロイン自体は
医薬、食品、化粧品等の分野に広く応用できる可能性を
有しているにもかかわらず、フィブロインゲルを使用し
てそれを実現させようとするには無理があり、フィブロ
インの利用範囲は極めて狭いものに限られてしまってい
た。
あり、その目的は、医薬、食品、化粧品等の諸分野にフ
ィブロインが広く応用されるのを可能にすることにあ
る。
すべく、鋭意研究を重ねた結果、本発明者らは、二酸化
炭素をフィブロイン水溶液に添加し、その後に減圧もし
くは加熱して二酸化炭素を完全に除去するという方法に
よって製造されるフィブロイン流動体は、フィブロイン
微小構造体が分散媒体中に分散した状態で存在するとい
うことを見出した。そして、このフィブロイン流動体
は、従来のフィブロインゲルとは異なり、クリーム状に
もできるような流動性を有し、かつ、従来のフィブロイ
ンゲルよりも保湿性にも優れており、コレステロール低
下剤や化粧品として広く使用できるという有用性も見出
し、本発明を完成するに至った。
か有しない従来のフィブロインゲルとは異なり、クリー
ム状にもできるような流動性を有するフィブロインの流
動体に関する。
ブロイン水溶液のようなフィブロインが水に溶解してい
る均一質とは異なり、平均100μm程度の大きさの固
体のフィブロイン微小構造体が分散媒体中に分散した混
合体である。
ン微小構造体は、立体的な分岐構造をとる多孔性の膜状
物質である。そして、本発明に係る製造方法により製造
されるフィブロイン微小構造体の大きさは100μm程
度(平均値)であり、大きさの分布はあまり広くない。
は、代表的には水である。しかしながら、低級アルコー
ル類のような水に近い溶媒も分散媒体として使用するこ
とができる。但し、フィブロイン自体を変性させるよう
な有機溶媒は使用することができない。
立体的な分岐構造をとる多孔質膜状物質であるフィブロ
イン微小構造体が独立に分散した状態で存在する。そし
て、このようなフィブロイン微小構造体を単位としたも
のの分散体である本発明に係るフィブロイン流動体は、
従来のフィブロインゲルよりも大きな流動性を有し、保
水性にも優れる。
のフィブロインゲルに残存せざるを得なかったクエン酸
や多糖類その他のゲル化剤などを全く含まない。このた
め、これらの不純物による悪影響がなく、医薬医療、化
粧品、食品その他の産業へのフィブロインの利用を可能
になる。
化炭素をフィブロイン溶液に添加し、その後に減圧もし
くは加熱して二酸化炭素を完全に除去するという方法に
よって容易かつ安価に製造することができる。本発明の
製造方法によれば、フィブロイン流動体を得るために添
加した二酸化炭素は、加熱又は減圧処理によって短時間
で完全に除去することができる。
ブロイン溶液に混合してpHをフィブロイン等電点付近
とすることにより、フィブロイン微小構造体を単位とす
るフィブロイン流動体とする。次に、混合された二酸化
炭素を、その後の減圧又は加熱により、系内から除去す
る。その際に、混合された二酸化炭素は、フィブロイン
微小構造体の構造に関与することなく、短時間で完全に
系内から除去される。従って、この製造方法によれば、
純粋なフィブロイン流動体を容易に得ることができる。
方法により作成することができる。フィブロイン水溶液
を得るにあたって、本発明者らはフィブロインを塩化カ
ルシウム水溶液に溶解させた後、透析によって塩化カル
シウムを水溶液中から除去する方法を採用しているが、
銅エチレンジアミン錯塩溶液に溶かし酢酸で中和後に流
水透析することによってフィブロイン水溶液を得る方法
や、臭化リチウム水溶液や硝酸カルシウム水溶液に溶解
させてから臭化リチウムや硝酸カルシウムを透析除去す
る方法なども採用することができる。
のフィブロインは、蚕繭や絹糸からセリシンを除去する
ことにより得られる。蚕繭もしくは絹糸からのセリシン
の除去は、例えば熱水もしくは希アルカリで当該蚕繭も
しくは絹糸を処理するという公知の方法により行うこと
ができる。しかしながら、セリシンを完全に除去するた
めに、アルカリを用いて行ったほうが好ましい。
せると、その時点ではあまり変化が生じない。しかしな
がら、それを暫く放置しておくと、溶液が懸濁してフィ
ブロイン流動体が生成する。放置の期間は一般に10日
から2週間程度かかるが、この範囲を外れてしまう場合
もある。ここで、フィブロイン水溶液の濃度が高かった
場合には、全体として白いクリーム状になるが、濃度が
低かった場合には、上層部分に上澄みができる。フィブ
ロイン水溶液の濃度が低く、上澄みができた場合の沈殿
部分はフィブロイン流動体そのものであり、その部分を
ろ過して水を切ったときの水分含有量は約98%であ
り、製品化の際にそのまま使用することができる。
ロイン流動体中では、平均100μm程度の立体的な分
岐構造を示す膜状のフィブロイン微小構造体が、互いに
架橋することなく、一様に分散している。
体は、それら自体がそれぞれ多量の水分を含んでいる。
そして、フィブロイン微小構造体に含まれる水分量を調
節することによって、延びのよいクリーム状、乳液状そ
の他の任意の流動物に適したフィブロイン流動体を容易
に得ることができる。フィブロイン流動体の一単位とな
るフィブロイン微小構造体は、加熱及び加圧に耐え、医
薬品、食品又は化粧品等の製品化に必要な滅菌工程、成
形工程、充填工程等の加熱又は加圧処理によってもその
構造を破壊されることがなく、取り扱いが容易である。
構造を有するだけでなく、多数の微細孔が存在する。そ
して、この多数の微細孔により、他の物質を吸着する効
果が極めて大きくなる。加えて、フィブロイン自体は親
水性の部分も親油性の部分も有しているため、水、油又
はアルコールの種類を問わず、あらゆるものを吸着する
ことができる。
体を含む混合体である本発明に係るフィブロイン流動体
は、従来のゲル状フィブロインよりも優れた水、油又は
アルコール等との親和作用、保湿作用、物質吸着作用を
有する。しかも本発明に係るフィブロイン流動体は、ゲ
ル化剤等の不純物を一切含まないため、フィブロイン微
小構造体はそれらに妨げられることなく他の物質を吸着
することができるという有利な効果をも有する。
利用して本発明に係るフィブロイン流動体を、生体内に
投与できる形態でコレステロールを吸着させる形態とす
れば、それを血中コレステロール低下剤として使用する
ことができる。また、本発明に係るフィブロイン流動体
は、クリーム状にも乳液状にもでき、保湿作用を有する
ことに加え、その構成物質であるフィブロイン自体に紫
外線吸収作用があるため、化粧品として使用することも
できる。本発明に係るフィブロイン流動体は不純物を一
切含まないので、化粧品として使用する場合には、これ
を主成分としても添加物としてもよいであろう。
低下剤は、経口投与することにより、コレステロール沈
着症、動脈硬化もしくは脳梗塞を治療及び予防すること
ができると考えられる。
図1及び図2の顕微鏡写真に見られるように、各々が独
立に存在するフィブロイン微小構造体が一様に分散した
状態で存在する。各フィブロイン微小構造体の大きさは
100μm程度であり、図3に見られるように多数の微
細孔が存在する。
一例を次に説明する。
ウムで30分煮沸してセリシンを除去した後、50%塩
化カルシウム溶液で溶解させる。その後、透析して塩化
カルシウムを除去し、絹フィブロイン溶液とする。絹フ
ィブロイン溶液に対し、通常は約2倍以上、好ましくは
約4倍量の二酸化炭素を混合することによって絹フィブ
ロイン溶液を酸性(pH3〜5)にする。ここで、フィ
ブロイン濃度が濃い場合には粘度の高いクリーム状の流
動体が得られ、溶液濃度が薄い場合には粘度の低いフィ
ブロイン流動体が得られる。このフィブロイン流動体は
濾過により水分を除去し、その粘度または硬さを自由に
調整することができる。
圧処理又は加熱処理という単一の工程によって完全に除
去される。本発明に係るフィブロイン流動体中のフィブ
ロイン微小構造体は、高熱・高圧においても安定で、滅
菌等のため通常行われる100℃で30分程度の加熱滅
菌処理では何ら影響を受けることがない。
説明するために、その流動体強度、保湿作用、血中コレ
ステロール吸着作用及びLDL−コレステロール、肝臓
中脂肪の低下作用について比較試験を行った。以下、こ
れらの試験方法及び結果について説明する。
沸騰した塩化カルシウム500g、水500mlの溶液
中に溶かしたのち、濾過し、不純物を取り除き、透析に
より塩化カルシウムを除去した。得られた溶液に二酸化
炭素を溶かし込んで流動体化させ、フィブロイン微小構
造体の沈澱物を得た。減圧により二酸化炭素を除去し、
濾過により水分を調節して900cm3 としたクリーム
状のフィブロイン流動体(フィブロイン含有量2.2
%)を使用した。
得たフィブロイン流動体と、クエン酸もしくは酢酸でゲ
ル化した従来のフィブロインゲルとのゲル強度を比較し
た。絹フィブロイン濃度はいずれも2.0%であった。
測定は、径8mmの円柱を10m/minの速度でゲル
に押し込んだ場合に接面に生じる抵抗(g/cm2 )を
測定することにより行った(平林らの方法(SEN−I
GAKKAISHI VOL.46 521))。こ
の5回の測定結果を平均値±標準誤差として表1に示
す。
ブロイン流動体は、従来のゲルに比較してゲル強度が極
めて低い。ゲル強度は、ゲルの系全体にわたる支持構造
の強さを示すので、本発明に係るフィブロインゲルの構
造は従来のゲル構造と全く異なるということがこの結果
から分かる。即ち、本発明に係るフィブロイン流動体の
ゲル強度がこのように低くなるのは、本発明に係るフィ
ブロイン流動体は独立した含水フィブロイン微小構造体
が分散した状態であり、ゲル全体が一つの塊として支持
構造を有するというような典型的なゲル構造を備えてい
ないからである。そして、このような状態をとるため
に、滑らかなクリーム状態の流動体を得ることができる
のである。
で得られたフィブロイン流動体(水分量98%、97
%)と、クエン酸によりゲル化したフィブロインゲル
(水分量98%、97%)及びコラーゲン由来のゼラチ
ンゲル(水分量98%、97%)とを比較した。コラー
ゲン由来のゼラチンゲルと比較したのは、ゼラチンゲル
は保湿力が高いことが既知であり、化粧品等に保湿剤と
して既に広く利用されているからである。
に同一の状態で、25℃、相対湿度50%のデシケータ
中に放置し、72時間後に保水量を秤量し、3回の測定
(g)の平均値及び標準誤差に基づいて、その保湿作用
を比較した。表2にその結果を平均±標準誤差として示
す。
構造体を単位としたフィブロイン流動体は、コラーゲン
や従来のフィブロインゲルよりも優れた保水作用を示し
た。
保水性を有することは公知であるが、それに比して本発
明に係るフィブロイン流動体が更に高い保水性を示すの
は、フィブロイン流動体を構成する多孔質のフィブロイ
ン微小構造体が膜状の立体分岐構造を有し、しかも多く
の微細孔を有することから吸着面積が大きくなることに
加え、それぞれのフィブロイン微小構造体が保水した状
態で分散できるためであると考えられる。
ム500g、水500mlの溶液中に溶かしたのち、濾
過し、不純物を取り除き、透析により塩化カルシウムを
除去した。得られた溶液に二酸化炭素を混合し、流動体
化させ、減圧により二酸化炭素を除去した。これを液体
窒素で凍結した後、凍結乾燥することにより得たフィブ
ロイン粉末を使用して、血中コレステロール低下作用及
び肝臓中脂質の低下実験を行った。
中脂質の低下作用]試験区及び対照区とも予めコレステ
ロールを1%添加した栄養評価用の資料(AIN76、
東京実験動物株式会社)で7日間飼育した血中コレステ
ロールの高いラット8匹(総コレステロール185mg
/dl)を用いた。
し、試験区のラットは絹フィブロイン添加飼料(上記A
IN76飼料のセルロース3%を上記絹フィブロイン粉
末で置換した飼料)で7日間飼育した。その後各ラット
について心臓採血し、血中の総コレステロール、HDL
−コレステロール及びLDL−コレステロールを測定し
た。肝臓中脂質は、組織切片による顕微鏡観察と分析に
よる脂質重量(Folch法)により評価した。統計処
理をして平均値±標準誤差をそれぞれ表3及び表4に示
す。
るフィブロイン粉末は、経口投与で動脈硬化の原因とな
る血中のLDL−コレステロールを低下させるだけでな
く、肝臓中の脂質をも低下させることが分かる。
ば、細胞中の脂肪滴が顕著に減少することが明らかにな
っている。
本実験では、実験3で使用したフィブロイン粉末につい
て、試験管内レベルでのコレステロールの吸着能につい
て試験を行った。対照実験の試料として、コレステロー
ル低下作用があるとされている大豆蛋白分解物を使用し
た。
0mgを試験管にとり、0.1M胆汁酸塩(タウロコー
ル酸、グリココール酸)1mlを加え、2時間振とうし
たのち限外濾過し、胆汁酸を測定した。胆汁酸の吸着量
(mg/dl)を表5に示す。
ブロイン粉末は、高いコレステロール吸着能を示した。
この結果から、本発明に係るフィブロイン粉末は油性の
物質とも結合し易いことが明らかとなった。
ン粉末又はフィブロイン流動体を構成するフィブロイン
微小構造体が試験管内で直接的にコレステロールを吸着
するのみならず、経口投与によって生体内における血中
コレステロールを吸着することも分かる。
ロイン流動体は、酸を初めとして一切の不純物を含まな
い蛋白質であるから、生体に対し安全な物質である。ま
た、日本国のある地方においては、蚕繭が食用に供せら
れていることをも考慮すれば、日常的に経口で摂取でき
る安全な血中コレステロール低下剤として利用できるこ
とは明らかである。しかしながら、本発明に係るフィブ
ロイン流動体からなるコレステロール低下剤の安全性を
確認するため、ラットを用いて以下のような毒性試験を
行った。
用の飼料(AIN76、東京実験動物株式会社)で4日
間の予備飼育を行った。予備飼育後、試験区となる10
匹のラットをAIN76飼料に含まれるシュークロース
を5%フィブロイン粉末に置換した飼料で3週間飼育し
た。一方、対照区となる10匹のラットをAIN76で
3週間飼育した。試験区のラットと対照区のラットを比
較した。急性毒性試験の結果は、以下の通りである。
動体フィブロイン流動体自体は殆ど毒性がないため実験
中に死亡したラットは一匹も確認できなかった。
べるため、ラットの体重、臓器重量、臓器の解剖所見に
ついて調べた。臓器重量の体重にしめる割合(%)を以
下の表6に示す。
腎臓、膵臓、胃、小腸、精巣の臓器重量割合は、試験
区、対照区で統計学的に有為な差はなかった。更に、臓
器の解剖所見も試験区及び対照区で差は全く見られなか
った。
実験2で使用した本発明に係るクリーム状のフィブロイ
ン流動体とクエン酸でゲル化したフィブロインゲルの紫
外線吸収作用を比較した。クエン酸でゲル化したフィブ
ロインゲルについては、残存した酸の影響を最小限にす
るため、24時間水中に晒した。
gを2名の健常人の右上腕部約3cm2 に塗布した。直
径1cm2 の円形の穴を開けた黒色の紙で上記塗布面を
覆い、30cmの距離を保って紫外線殺菌灯(ナショナ
ル15W)で10分間紫外線を照射した。これと同様の
方法で、フィブロイン流動体を塗布しない場合につい
て、並行して試験を行った。
布しない場合及びクエン酸でゲル化したフィブロインゲ
ルを塗布した場合には皮膚に発赤を生じたが、フィブロ
イン流動体を塗布した場合には皮膚に変化は見られなか
った。この結果から、本発明に係るフィブロイン流動体
は、紫外線吸収作用があるものと考えられる。
子からなるフィブロイン流動体の製造方法の例を以下に
示す。
シウム500g、水500mlの溶液中に溶かしたの
ち、濾過し、不純物を取り除き、透析により塩化カルシ
ウムを除去した。得られた溶液に二酸化炭素を溶解して
流動体化させ、フィブロイン微小構造体の沈澱物を得
た。本実施例では、二酸化炭素の溶解は、固体の二酸化
炭素(ドライアイス)をフィブロイン水溶液中に投入
し、容器に栓をすることによって二酸化炭素を溶解させ
るという手法を取った。減圧により二酸化炭素を除去
し、濾過により水分を調節して900cm3 とし、フィ
ブロイン微小構造体を単位とするクリーム状のフィブロ
イン流動体(フィブロイン含有量2.2%)を得た。
シウム500g、水500mlの溶液中に溶かしたの
ち、濾過し、不純物を取り除き、透析により塩化カルシ
ウムを除去し、フィブロイン溶液1000mlを得た。
得られた溶液に二酸化炭素を溶解して流動体化させ、フ
ィブロイン微小構造体の沈澱物を得た。本実施例では、
二酸化炭素の溶解は、固体の二酸化炭素(ドライアイ
ス)をフィブロイン水溶液中に投入し、容器に栓をする
ことによって二酸化炭素を溶解させるという手法を取っ
た。減圧により二酸化炭素を除去し、濾過により水分を
調節して1000cm3 のフィブロイン微小構造体を単
位とするフィブロイン流動体を得た。
ム500g、水500mlの溶液中に溶かしたのち、濾
過し、不純物を取り除き、透析により塩化カルシウムを
除去した。得られた溶液に二酸化炭素を溶解して沈殿物
を得た後、減圧により二酸化炭素を除去した。本実施例
では、二酸化炭素の溶解は、固体の二酸化炭素(ドライ
アイス)をフィブロイン水溶液中に投入し、容器に栓を
することによって二酸化炭素を溶解させるという手法を
取った。これを液体窒素で凍結後、凍結乾燥することに
よりフィブロイン微小構造体からなるフィブロイン粉末
を得た。実施例1から3における二酸化炭素は、液化さ
れた二酸化炭素又はドライアイスのような固体の二酸化
炭素を使用してもよい。
は、クリーム状、乳液状その他の流動物を構成できる流
動性を有し、油、水又はアルコールに対し高い親和性を
示し、同時に、クエン酸等のゲル化剤を一切含まないこ
とから、医薬、美容、衛生又は食品等の広い分野におい
て主剤又は添加剤として利用されうる。
で一体として結合しているのに対し、本発明に係るフィ
ブロイン流動体は独立して分散する多数のフィブロイン
微小構造体からなるので、本発明は、従来にはなかった
新規かつ応用性の高いフィブロイン流動体を提供するこ
とになる。特に、クリーム状態で長時間安定なフィブロ
イン流動体は、特に医薬品、化粧品、食品等の分野で利
用価値がある。
の微細孔が存在しており、他の物質の吸着力に優れてい
る。この高い吸着能により、本発明のフィブロイン流動
体は、動脈硬化の原因ともなるLDL血中コレステロー
ル及び肝臓中脂質を直接的にまたは間接的に(経口的
に)低下させる効果を有し、人体にも安全な優れたコレ
ステロール低下剤として使用することができる。
を示し、任意の比率で混合できるため、クリーム状、乳
液状、ジェル状等の多様な状態を保つため多様な形態に
加工が可能であって、保水力、紫外線吸収能をも併せも
つことから、医薬品、食品及び化粧品等の分野での高い
利用価値を有する。
動体は、その特長的な物性により、優れた保湿作用、物
質吸着作用、油又はアルコールとの親和性、コレステロ
ール低下、及び紫外線吸収作用を奏することに加え、本
発明に係る製造方法によれば、労力、費用のかからない
簡便な方法でこれを量産することができ、医薬、医療、
化粧品、衛生及び食品等の主剤又は添加剤として有用な
フィブロイン流動体を供給することができる。
動体の300倍の電子顕微鏡写真である。
動体の1000倍の電子顕微鏡写真である。
動体の1500倍の電子顕微鏡写真である。
Claims (21)
- 【請求項1】 立体的な分岐構造を有する多孔質物質で
あるフィブロイン微小構造体が分散媒体中に分散したも
のからなることを特徴とするフィブロイン流動体。 - 【請求項2】 水分含量を調整することによりクリーム
状とされていることを特徴とする請求項1記載のフィブ
ロイン流動体。 - 【請求項3】 請求項1記載のフィブロイン流動体を凍
結乾燥することにより得られるフィブロイン粉末。 - 【請求項4】 請求項1記載のフィブロイン流動体を有
効量含む保湿剤もしくは紫外線吸収剤。 - 【請求項5】 請求項2記載のフィブロイン流動体を有
効量含む保湿剤もしくは紫外線吸収剤。 - 【請求項6】 請求項3記載のフィブロイン粉末を有効
量含む保湿剤もしくは紫外線吸収剤。 - 【請求項7】 請求項5記載の保湿剤もしくは紫外線吸
収剤を使用した化粧品。 - 【請求項8】 請求項1記載のフィブロイン流動体を有
効量含む血中コレステロール低下剤。 - 【請求項9】 請求項3記載のフィブロイン粉末を有効
量含む血中コレステロール低下剤。 - 【請求項10】 二酸化炭素をフィブロイン水溶液に溶
解して該フィブロイン水溶液を酸性にすることにより得
られる流動物から二酸化炭素を除去して得られるフィブ
ロイン流動体。 - 【請求項11】 請求項10記載のフィブロイン流動体
を凍結乾燥することにより得られるフィブロイン粉末。 - 【請求項12】 二酸化炭素をフィブロイン水溶液に溶
解して該フィブロイン水溶液を酸性にし、該酸性化した
二酸化炭素混合フィブロイン水溶液から二酸化炭素を除
去してフィブロイン流動体を製造する方法。 - 【請求項13】蚕繭もしくは絹糸からセリシンを除去し
た後に塩化カルシウム水溶液に溶解させ、その後、透析
により塩化カルシウムを除去することにより前記フィブ
ロイン水溶液を得ることを特徴とする請求項12記載の
フィブロイン流動体製造方法。 - 【請求項14】 前記フィブロイン水溶液に対して少な
くとも2倍以上の二酸化炭素を混合することを特徴とす
る請求項12記載のフィブロイン流動体製造方法。 - 【請求項15】 前記フィブロイン水溶液に対して約4
倍量の二酸化炭素を混合することを特徴とする請求項1
2記載のフィブロイン流動体製造方法。 - 【請求項16】 気体の二酸化炭素を直接的に前記フィ
ブロイン水溶液に溶解させるか、あるいは固体の二酸化
炭素を用いて前記フィブロイン水溶液に二酸化炭素を溶
解させることを特徴とする請求項12記載のフィブロイ
ン流動体製造方法。 - 【請求項17】 前記二酸化炭素を混合したフィブロイ
ン水溶液のpHがフィブロインの等電点付近であること
を特徴とする請求項12記載のフィブロイン流動体製造
方法。 - 【請求項18】 前記二酸化炭素を混合したフィブロイ
ン水溶液のpHが3から4.5であることを特徴とする
請求項17記載のフィブロイン流動体製造方法。 - 【請求項19】 二酸化炭素混合フィブロイン水溶液の
減圧処理もしくは加熱処理により二酸化炭素を除去する
ことを特徴とする請求項12記載のフィブロイン流動体
製造方法。 - 【請求項20】 請求項2記載のフィブロイン流動体が
微小な構造体からなることを利用し、混合したときに含
有が視覚的に確認できる化粧品。 - 【請求項21】 請求項2記載のフィブロイン流動体が
油脂と容易に混合できることを利用した化粧品。
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-
1997
- 1997-08-12 JP JP23022797A patent/JP3537297B2/ja not_active Expired - Lifetime
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