JP4055983B2 - サスペンションリンク - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、サスペンションリンクに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図4及び図5はトラックやバスなどの大型車両におけるリヤサスペンション構造の一例を示すもので、車体の前後方向(図4中における左右方向)に延びる左右一対のフレーム1の下方に、車幅方向(図5中における上下方向)に延び且つその両端で車輪2を軸支する為のアクスル3が配置されており、該アクスル3の端部寄りの下面に一体的に組み付けられたサポートビーム4の前後端部と前記フレーム1下面との間に、上下方向の振動を吸収するエアスプリング5が介装されている。
【0003】
また、前側に配置されたエアスプリング5の更に前方のフレーム1には、下方向きに延びるブラケット6が取り付けられており、該ブラケット6の下端部と前記サポートビーム4の中間部との間が、車体のロール剛性を高めるスタビライザ7により傾動自在に連結されている。
【0004】
即ち、ここに図示しているスタビライザ7は、一般的にロアロッド一体式スタビライザと称されているもので、左右のブラケット6の下端部間に回動自在に架設された中空のパイプ(中空軸)から成るスタビライザバー8と、該スタビライザバー8の両端部に一端を固定して装着し且つ他端を前記サポートビーム4の中間部に設けたブラケット10に対しラバーブッシュを介して連結したアーム9とにより構成されて左右の車輪2の間をコの字型に橋渡しするようになっており、左右の車輪2が同時に上下動した場合はブラケット6に対しスタビライザバー8が回動してスタビライザ7が特に働くことはないが、コーナリングなどで左右の車輪2が異なる上下動を成した場合にスタビライザバー8に捩じれモーメントが作用し、その反力で左右の車輪2を元に戻すような働きを成すようになっている。
【0005】
ここで、このスタビライザ7におけるアーム9は、ロア側のトルクロッドとしてアクスル3の位置や角度決めを行う機能も兼ね備えており、ロア側のトルクロッドを別に設けなくても済むようにしてあるが、これらのアーム9だけでは、アクスル3にかかる軸回りの回転モーメント(制動力や駆動力)及び横方向への変位モーメントを確実に抑え込むことが困難である。
【0006】
この為、アクスル3の中央部上面と、左右のフレーム1の内側面との間が、アッパ側のトルクロッドとして機能するVロッド12により連結されるようになっており、より具体的には、このVロッド12の左右に別れた分岐端部12a(前側端部)が、左右のフレーム1の内側面から延ばしたブラケット13に対しラバーブッシュを介して連結され、また、Vロッド12中央の屈曲端部12b(後側端部)が、アクスル3の中央部上側に設けたブラケット14に対しラバーブッシュを介して連結されている。
【0007】
そして、このようなVロッド12を採用すれば、車体の前後方向と左右方向の両方の向きの入力に対して対応することが可能となるので、平行リンク式のトルクロッドを採用した場合のような左右方向の入力対策としてのラテラルロッドを別途並設しなくても済み、しかも、下側のアーム9に対し上方にオフセット配置されているので、アクスル3にかかる軸回りの回転モーメントを確実に抑え込むことが可能となる。
【0008】
尚、前記サポートビーム4の中途部と、その直上のフレーム1との間は、上下方向に延びるショックアブソーバ11により連結されており、このショックアブソーバ11により上下方向の振動の揺り返しを抑制して振動減衰が図られるようにしてある。
【0009】
他方、近年においては、前述したVロッド12に替わる新たなサスペンションリンクとして、図6に示す如き全体的な平面形状がX型を成すように一体成形されたXリンク15が提案されており、このような平面形状のXリンク15によれば、従来のVロッド12の場合と同様に車体の前後方向と左右方向の両方の向きの入力に対し対応することが可能である上、コーナリングなどで左右の車輪2(図4及び図5参照)が異なる上下動を成した場合に捩じれモーメントが作用し、その反力で左右の車輪2を元に戻すようなスタビライザの働きを成すようになっているので、図4や図5に示してあるようなロアロッド一体式のスタビライザ7を不要として、シンプルな平行リンク式のトルクロッドに置き換えることが可能となる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来においては、鍛造による一体成形品としてXリンク15を製造するようにしていた為、製造コストが高くついてしまうという問題があり、しかも、全体重量が大きなものとなって組み付け時の作業性が悪くなるという問題があった。
【0011】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、従来のXリンクに劣らない優れた機能を確保しつつ、その製造コストの削減と全体重量の大幅な軽量化を図り得るようにした新規なサスペンションリンクを提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、アクスルの上側位置で該アクスルとフレームとの間を連結するサスペンションリンクであって、第一の板ばねピースと第二の板ばねピースとを向い合せの状態で上下に重ねて第一のI型ピースを構成すると共に、該第一のI型ピースを間に挟んで第三の板ばねピースと第四の板ばねピースとを向い合せの状態で上下に重ねて第二のI型ピースを構成し、これら第一及び第二のI型ピースの夫々を互いの長手方向中央部同士が交差するように配置し且つその交差部分を上下方向に貫通するピンにより該ピンを中心に第一及び第二のI型ピースの相互が水平方向に回動し得るように連結したことを特徴とするものである。
【0013】
而して、このようにすれば、通常の板ばねの生産工程を利用して安価に製作することが可能な第一乃至第四の板ばねピースを組み付けるだけでX型のサスペンションリンクを構成することが可能となるので、鍛造によりX型の一体成型品を製造する場合と比較して製造コストを大幅に削減することが可能となる。
【0014】
また、従来のXリンクの各アーム部分の断面形の高さ寸法より若干大きくなるように第一及び第二のI型ピースの高さ寸法を設定すれば、その上下の板ばねピースの相互間が空隙となっていて相互の断面積の総和が従来のXリンクの各アーム部分の断面積より小さくなっていても、実質的な断面二次モーメント(曲げモーメントに対する梁断面の幾何学的な曲がり難さを表す数値)に大きな違いは生じないので、鍛造による一体成型品のXリンクと比較して強度低下を招くことなく全体重量を大幅に軽量化することが可能となる。
【0015】
特に第一乃至第四の板ばねピースは、通常の板材と比較して高い靭性を有するものである上、第一及び第二のI型ピースの交差部分がピンにより回動自在に連結されて剪断応力が作用しないように工夫され、これにより各板ばねピースが単純な曲げ応力だけに対応すれば済む負担の少ない構造となっており、しかも、各I型ピースごとに向い合せの状態となっていて、上下の何れか一方が圧縮変形した時に他方が引っ張り変形するような理にかなった配置を採用しているので、従来のXリンクと同等の機能を確保する条件下で究極的な軽量化を実現することが可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1〜図3は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図1に示す如く、本形態例のサスペンションリンクにおいては、第一の板ばねピース16と第二の板ばねピース17とを向い合せの状態で上下に重ねて第一のI型ピース18を構成すると共に、該第一のI型ピース18を間に挟んで第三の板ばねピース19と第四の板ばねピース20とを向い合せの状態で上下に重ねて第二のI型ピース21を構成し、これら第一及び第二のI型ピース18,21の夫々を互いの長手方向中央部同士が交差するように配置し且つその交差部分を上下方向に貫通するピン22により該ピン22を中心に第一及び第二のI型ピース18,21の相互が水平方向に回動し得るように連結した構造としてある。
【0018】
ここで、第一乃至第四の板ばねピース16,17,19,20は、何れも図2に示す如き概ね同様の形状を成すように形成されており、各板ばねピース16,17,19,20の長手方向一端部に、その幅方向の片側に寄せてアイ16a,17a,19a,20aが形成されていると共に、各板ばねピース16,17,19,20の長手方向他端部には、前記一端部側と逆になるように幅方向の片側に寄せてアイ16b,17b,19b,20bが形成されており、夫々の組み合わせ相手と向い合せの状態で上下に重ねた時に、互いのアイ16aとアイ17a、アイ16bとアイ17b、アイ19aとアイ20a、アイ19bとアイ20bが干渉せずに幅方向に並ぶように構成されている。
【0019】
また、各板ばねピース16,17,19,20の長手方向中央部には、ピン22を摺動自在に貫通せしめる為の貫通孔16c,17c,19c,20cが穿設されており、これらを合致させた状態でピン22を成すチューブラリベットを通して上下端部を押し潰すことにより、各板ばねピース16,17,19,20の相互を回動自在に連結するようにしてある。
【0020】
尚、実際の使用に際しては、アイ16aとアイ17a、アイ16bとアイ17b、アイ19aとアイ20a、アイ19bとアイ20bの夫々が成す円筒状のボス部に対しラバーブッシュを介して図示しない揺動ピンを嵌挿装着し、該各揺動ピンのうちの何れか二つを左右のフレームに対しブラケットを介して連結し且つ残りの二つをアクスルの上側に対しブラケットを介して連結すれば良い。
【0021】
而して、このようにサスペンションリンクを構成すれば、通常の板ばねの生産工程を利用して安価に製作することが可能な第一乃至第四の板ばねピース16,17,19,20を組み付けるだけでX型のサスペンションリンクを構成することが可能となるので、鍛造によりX型の一体成型品を製造する場合と比較して製造コストが大幅に削減されることになる。
【0022】
また、従来のXリンクの各アーム部分の断面形の高さ寸法より若干大きくなるように第一及び第二のI型ピース18,21の高さ寸法を設定すれば、その上下の板ばねピース16,17及び19,20の相互間が空隙となっていて相互の断面積の総和が従来のXリンクの各アーム部分の断面積より小さくなっていても、実質的な断面二次モーメント(曲げモーメントに対する梁断面の幾何学的な曲がり難さを表す数値)に大きな違いは生じないので、鍛造による一体成型品のXリンクと比較して強度低下を招くことなく全体重量を大幅に軽量化することが可能となる。
【0023】
特に第一乃至第四の板ばねピース16,17,19,20は、通常の板材と比較して高い靭性を有するものである上、第一及び第二のI型ピース18,21の交差部分がピン22により回動自在に連結されて剪断応力が作用しないように工夫され、これにより各板ばねピース16,17,19,20が単純な曲げ応力だけに対応すれば済む負担の少ない構造となっており、しかも、各I型ピースごとに向い合せの状態となっていて、上下の何れか一方が圧縮変形した時に他方が引っ張り変形するような理にかなった配置を採用しているので、従来のXリンクと同等の機能を確保する条件下で究極的な軽量化を実現することが可能となる。
【0024】
従って、上記形態例によれば、従来のXリンクに劣らない優れた機能を有するX型のサスペンションリンクを第一乃至第四の板ばねピース16,17,19,20を組み付けて安価に製造することができるので、その製造コストを著しく削減することができ、しかも、全体重量の大幅な軽量化を図ることができる。
【0025】
尚、本発明のサスペンションリンクは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、様々な形式のサスペンション構造に適用し得ること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0026】
【発明の効果】
上記した本発明のサスペンションリンクによれば、従来のXリンクに劣らない優れた機能を確保しつつ、その製造コストを著しく削減することができ、しかも、全体重量の大幅な軽量化を図ることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の各板ばねピースの単品図である。
【図3】図1のサスペンションリンクの交差部分の断面図である。
【図4】従来例を示す概略図である。
【図5】図4のV−V方向の矢視図である。
【図6】従来のXリンクの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 フレーム
3 アクスル
16 第一の板ばねピース
17 第二の板ばねピース
18 第一のI型ピース
19 第三の板ばねピース
20 第四の板ばねピース
21 第二のI型ピース
22 ピン
Claims (1)
- アクスルの上側位置で該アクスルとフレームとの間を連結するサスペンションリンクであって、第一の板ばねピースと第二の板ばねピースとを向い合せの状態で上下に重ねて第一のI型ピースを構成すると共に、該第一のI型ピースを間に挟んで第三の板ばねピースと第四の板ばねピースとを向い合せの状態で上下に重ねて第二のI型ピースを構成し、これら第一及び第二のI型ピースの夫々を互いの長手方向中央部同士が交差するように配置し且つその交差部分を上下方向に貫通するピンにより該ピンを中心に第一及び第二のI型ピースの相互が水平方向に回動し得るように連結したことを特徴とするサスペンションリンク。
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