JP4055414B2 - リチウムイオン二次電池用正極活物質 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用正極活物質 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウムイオン二次電池に使用される正極活物質に係り、特に、ガス発生が少なく、電池特性(サイクル特性、高負荷特性)及び熱安定性に優れた正極活物質に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯用のパソコン、ビデオカメラ等の電子機器に内蔵される電池として、高エネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池が採用されている。このリチウムイオン二次電池は、リチウムコバルト複合酸化物等の正極活物質をその支持体である正極集電体に保持してなる正極板、リチウム金属等の負極活物質をその支持体である負極集電体に保持してなる負極板、LiPF等のリチウム塩を溶解した有機溶媒からなる非水電解液、及び正極板と負極板の間に介在して両極の短絡を防止するセパレータからなっている。このうち、正極板、負極板及びセパレータの薄いシート状に成形されたものを巻回し、金属ラミネート樹脂フィルムの電池ケースに収納したラミネート電池、或いは薄型の金属ケースに収納した電池は、従来の厚型の金属ケースに収納した電池に比べ、電池内のガス発生、発熱又は外部からの加熱により容易に膨張し、電池を格納した電池パックケースまでも膨張変形するという問題があった。
【0003】
従来、リチウムイオン二次電池の正極活物質としてLiCoOを用いた場合、放電容量を向上する目的で充電電圧を上昇させると、正極活物質の結晶の転移、或いは正極活物質の分解が起こり、コバルト酸からの酸素が放出され、この酸素は非水系電解液を酸化分解し、その結果電池内でガスが発生し、ラミネート電池等において上記問題が起きるため対策を必要とした。
【0004】
同様に、放電容量を向上する目的で充電電圧を上昇させると、正極活物質の結晶転移或いは分解に伴い、電池特性(サイクル特性、高負荷特性)、熱安定性も低下した。また、正極活物質のLiCoOは導電性が低く、そのため導電性のあるカーボンを被覆することで導電性を改善しているが、カーボンとの接触が悪い場合、サイクル劣化を引き起こす原因となっていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたもので、リチウムイオン二次電池のガス発生を低減し、電池特性(サイクル特性、高負荷特性)及び熱安定性を向上できる正極活物質を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上述した問題を解決するために鋭意検討した結果、リチウムイオン二次電池の正極活物質として一般式がLiCo1−b(MはTi、Al、V、Zr、Mg、Ca、Srから選ばれた少なくとも1種の元素、Xは少なくとも一種以上のハロゲン元素を示す。aは0.95≦a≦1.05、bは0<b≦0.10、cは1≦c≦2.5、dは0<d≦0.1、eは0<e≦0.015である。)で表される正極活物質を用いることで、上記課題を解決することができることを見いだし本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、一般式がLiCo1−b(MはTi、Al、V、Zr、Mg、Ca、Srから選ばれた少なくとも1種の元素、Xは少なくとも一種以上のハロゲン元素を示す。aは0.95≦a≦1.05、bは0<b≦0.10、cは1≦c≦2.5、dは0<d≦0.1、eは0<e≦0.015である。)で表される正極活物質であって、元素Mとしては、Ti、Al、V、Zr、Mg、Ca、Srが好ましく、特にTi、Al、Mg、Caが好ましい。また、ハロゲン元素Xとしては、F、Cl、Br、Iが好ましく、特にF、Clが好ましい。組成中のLi量(a値)はリチウムイオン二次電池の放電容量及び高負荷容量に影響し、0.95≦a≦1.05の範囲が好ましい。また、組成中のM量(b値)、X量(d値)及びS量(e値)はリチウムイオン二次電池のガス発生、電池特性(サイクル特性、高負荷特性)及び熱安定性に非常に影響し、0<b≦0.10、0<d≦0.1、0<e≦0.015の範囲が好ましく、さらに0.0005≦b≦0.05、0.001≦d≦0.07、0.0005≦e≦0.009の範囲がより好ましい。組成中のO量(c値)については、ハロゲン元素、S元素を正極活物質中に導入する方法等により異なり、1≦c≦2.5の範囲である。
【0008】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、その比表面積が0.2〜2.0m/gの範囲であることを特徴とする。正極活物質の比表面積はリチウムイオン二次電池のガス発生に非常に影響し、特に上記一般式で表される本発明の正極活物質の場合、比表面積が0.2〜2.0m/gの範囲でガス発生を大幅に低減することができる。より好ましくは0.4〜0.8m/gの範囲である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の合成は、下記に示すように、リチウム化合物、コバルト化合物、Ti、Al、V、Zr、Mg、Ca、Srから選ばれた少なくとも1種の元素を含む化合物及びハロゲン元素を含む化合物に硫黄又は硫黄化合物を混合した原料混合物を焼成した後、粉砕することによって行われる。
【0010】
リチウム化合物、コバルト化合物、Ti、Al、V、Zr、Mg、Ca、Srから選ばれた少なくとも1種の元素を含む化合物としては、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、ハロゲン化物等が用いられ、ハロゲン元素を含む化合物としては、アルカリ金属のハロゲン化物、アンモニウム塩等が用いられる。例えば、リチウム化合物としては、LiO、LiOH、LiCO、LiHCO、LiNO、LiSO、Li(CHCOO)、LiCl等が用いられ、コバルト化合物としては、Co、Co、CoCO、Co(NO)、CoCl等が好ましく用いられる。また、Ti、Al、V、Zr、Mg、Ca、Srから選ばれた少なくとも1種の元素を含む化合物としては、TiO、Ti(NO)、Ti(SO)、Al、V、ZrO、MgO、MgCO、Mg(NO)・6HO、MgCl、CaO、CaCO、Ca(NO)、CaCl、SrO、SrCO等が用いられ、ハロゲン元素を含む化合物としては、LiF、LiCl、LiBr、LiI、NHF、NHCl、NHBr、NHI等が好ましく用いられる。
【0011】
硫黄化合物としては、酸化物、硫化物、硫酸塩、硫酸水素塩、ピロ硫酸塩、亜硫酸塩、ペルオクソ二硫酸塩、チオ硫酸塩、アルキル硫酸塩等を用いることができる。好ましくは、(NH)S、LiSO・HO、CoSO、(NH)SO、(NH)等が使用できる。
【0012】
これらの原料の混合は、粉末状の原料をそのまま混合しても良く、水又は有機溶媒を用いてスラリー状として混合しても良い。スラリー状の混合物は乾燥して原料混合物とする。
【0013】
このようにして得られる原料混合物を空気中或いは弱酸化雰囲気で、500〜1000℃の温度範囲で1〜24時間焼成する。好ましくは800〜1000℃の温度範囲で6〜12時間焼成する。焼成温度が500℃未満の場合、未反応の原料が正極活物質に残留し正極活物質の本来の特徴を生かせない。逆に、1000℃を越えると、正極活物質の粒径が大きくなり過ぎて電池特性が低下する。焼成時間は、1時間未満では原料粒子間の拡散反応が進行せず、24時間経過すると拡散反応はほとんど完了しているため、それ以上焼成する必要がない。
【0014】
上記焼成により得られる焼成品をらいかい機を用いて粉砕して、比表面積が0.2〜2.0m/g、平均粒径が1.0〜12.0μmの範囲の本発明の正極活物質を得る。
【0015】
本発明の正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池は、電解液の酸化分解反応が抑制され、電池内で発生するガス量が低減されるため、膨張変形が非常に少なく、電池特性(サイクル特性、高負荷特性)及び熱安定性も向上する。
【0016】
次に、本発明の正極活物質を用いてリチウムイオン二次電池を作製し、ガス発生、電池特性(サイクル特性、高負荷特性)及び熱安定性について測定した結果を説明する。
【0017】
(リチウムイオン二次電池の作製)
正極活物質粉末90重量部と、導電剤としてのアセチレンブラック5重量部と、ポリフッ化ビニリデン5重量部とを混練してペーストを調製し、これを正極集電体に塗布、乾燥して正極板とする。また、負極に天然黒鉛、セパレータに多孔性プロピレンフィルムを用い、電解液としてエチレンカーボネート:ジエチルカーボネイト=1:1(体積比)の混合溶媒にLiPFを1mol/lの濃度で溶解した溶液を用いてリチウムイオン二次電池を作製する。ここでは、正極板、負極板及びセパレータの薄いシート状に成形されたものを巻回し、金属ラミネート樹脂フィルムの電池ケースに収納したラミネート電池を作製する。
【0018】
(ガス発生の評価)
一般式がLiCo0.999Ti0.0010.005、LiCo0.999Ti0.001、LiCoO0.005及びLiCoOで表される種々の正極活物質を用いてラミネート電池を作製し、充電負荷0.5Cで4.2Vまで定電流充電後、80℃で2日間保存し、ガス発生による電池の膨張率(%)を下記の式から求める(ここで1Cは、1時間で充電又は放電が終了する電流負荷である)。
電池の膨張率={(80℃保存後の電池の厚み−測定前の電池の厚み)/測定前の電池の厚み}×100
【0019】
図1に、上記正極活物質中のF量(d値)と電池の膨張率の関係を示す。この図から明らかなように、本発明の正極活物質LiCo0.999Ti0.0010.005(1A)を用いた電池の膨張率は、d値が0<d≦0.10の範囲で低く、特に0.001≦d≦0.07の範囲で非常に低くなっており、電池内で発生するガス量が低減されることがわかる。また、S元素を含有しない正極活物質LiCo0.999Ti0.001(1B)、Ti元素を含有しない正極活物質LiCoO0.005(1C)及びS元素とTi元素を共に含有しない正極活物質LiCoO(1D)を用いた電池に比べて、膨張率が非常に低いことがわかる。このように、正極活物質中にTi元素、F元素、S元素の3種類の元素を全て含むことによって、電池の膨張率は非常に低減される。また、Tiの代わりにTi単独を除くTi、Al、V、Zr、Mg、Ca、Srから選ばれた少なくとも1種の元素、或いはFの代わりにF単独を除く少なくとも一種以上のハロゲン元素を含む場合も同様な特性を示す。
【0020】
上記と同様にして、一般式がLiCo1−bMg0.0020.005、LiCo1−bMg0.002、LiCo1−bMg0.005及びLiCo1−bMgで表される種々の正極活物質を用いてラミネート電池を作製し、電池の膨張率を求める。図2に、上記正極活物質中のMg量(b値)と電池の膨張率の関係を示す。この図から明らかなように、本発明の正極活物質LiCo1−bMg0.0020.005(2A)を用いた電池の膨張率は、b値が0<b≦0.10の範囲で少なく、特に0.0005≦b≦0.05の範囲で非常に少なくなっており、電池内で発生するガス量が低減されることがわかる。また、b値が0.10を越えると、電池の膨張率が増加するだけでなく、放電容量も低下するため、0<b≦0.10の範囲が好ましく、0.0005≦b≦0.05の範囲がより好ましい。さらに、この図から、本発明の正極活物質LiCo1−bMg0.0020.005(2A)を用いた電池は、S元素を含有しない正極活物質LiCo1−bMg0.002(2B)、F元素を含有しない正極活物質LiCo1−bMg0.005(2C)及びS元素とF元素を共に含有しない正極活物質LiCo1−bMg(2D)を用いた電池に比べて、膨張率が非常に低いことがわかる。このように、正極活物質中にMg元素、F元素、S元素の3種類の元素を全て含むことによって、電池の膨張率は非常に低減される。Mgの代わりにMg単独を除くTi、Al、V、Zr、Mg、Ca、Srから選ばれた少なくとも1種の元素、或いはFの代わりにF単独を除く少なくとも一種以上のハロゲン元素を含む場合も同様な特性を示す。
【0021】
これは、正極活物質中にTi、Al、V、Zr、Mg、Ca、Srから選ばれた少なくとも1種の元素を固溶させることによって格子定数が小さくなり、充放電に伴う体積変化が減少して、粒子に与える応力が緩和されることにより、正極活物質の分解等が抑制され、電解液の酸化分解反応が抑制される結果、電池内で発生するガス量が低減されるものと考えられる。さらに、固溶していない該元素とハロゲン元素及びS元素とが反応し、正極活物質を被覆することにより、負極への影響が軽減されることからも、ガス量が低減されるものと考えられる。
【0022】
次に、比表面積が異なる種々の正極活物質LiCo0.999Ti0.0010.0020.005を用いてラミネート電池を作製し、同様に電池の膨張率(%)を求める。図3に、上記正極活物質の比表面積と電池の膨張率の関係を示す。この図から明らかなように、電池の膨張率は比表面積が2.0m/g以下で少なく、特に0.8m/g以下で非常に少なくなっており、電池内で発生するガス量が低減されることがわかる。比表面積が2.0m/gより大きくなると、正極活物質表面或いはその近傍で起こる電解液の酸化分解反応の反応性が増し、その結果電池内で発生するガス量が増えるものと考えられる。また、比表面積が0.2m/gより小さいと、正極活物質の粒径が大きくなり過ぎて電池特性が低下するため、比表面積は0.2〜2.0m/gの範囲が好ましく、0.4〜0.8m/gの範囲がより好ましい。
【0023】
(サイクル特性の評価)
一般式がLiCo0.999Ti0.0010.002及びLiCo0.998Ti0.001Mg0.0010.002で表される種々の正極活物質を用いてラミネート電池を作製し、常温(25℃)で、充電負荷0.5Cで4.2Vまで定電流充電後、1.0Cで2.75Vまで放電する充放電を500サイクル行い、500サイクル目の容量維持率(%)を下記の式から求める。
容量維持率=(500サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0024】
図4に、上記正極活物質中のS量(e値)と容量維持率の関係を示す。この図から明らかなように、LiCo0.999Ti0.0010.002(4A)、LiCo0.998Ti0.001Mg0.0010.002(4B)のいずれも容量維持率はe値が0<e≦0.015の範囲で高く、特に0.0005≦e≦0.009の範囲で非常に高くなっており、サイクル特性が優れていることがわかる。また、正極活物質中にTi元素、F元素、S元素に加えてMg元素を含むことによって、容量維持率がさらに向上し、サイクル特性が良くなっていることがわかる。
【0025】
(高負荷特性の評価)
一般式がLiCo1−bTi0.0020.005及びLiCo0.999−bTiMg0.0010.0020.005で表される種々の正極活物質を用いてラミネート電池を作製し、充電負荷2.0Cで4.2Vまで定電流充電後、2.0Cで2.75Vまで放電したときの放電容量を高負荷容量(mAh/g)として求める。
【0026】
図5に、上記正極活物質中のTi量(b値)と高負荷容量の関係を示す。この図から明らかなように、LiCo1−bTi0.0020.005(5A)、LiCo0.999−bTiMg0.0010.0020.005(5B)のいずれも高負荷容量はb値が0<b≦0.10の範囲で高く、特に0.0005≦b≦0.05の範囲で非常に高くなっており、高負荷特性が優れていることがわかる。また、正極活物質中にTi元素、F元素、S元素に加えてMg元素を含むことによって、高負荷容量がさらに高くなり、高負荷特性が良くなっていることがわかる。
【0027】
同様に、一般式がLiCo0.999Ti0.0010.0020.005で表される正極活物質を用いてラミネート電池を作製し、高負荷容量(mAh/g)を求める。図6に、正極活物質中のLi量(a値)と高負荷容量の関係を示す。この図から、高負荷容量はa値が1.05より大きくなると低下していることがわかる。
【0028】
また、通常の電流密度で放電させた場合(0.25C)について、図7に正極活物質中のLi量(a値)と放電容量の関係を示す。この図から、放電容量はa値が0.95より小さくなると低下していることがわかる。
【0029】
従って、高負荷容量と通常時の放電容量のいずれも考慮すると、a値は0.95≦a≦1.05の範囲に設定する必要がある。
【0030】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は具体的実施例のみに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0031】
【実施例】
[実施例1]
炭酸リチウム(LiCO)、四三酸化コバルト(Co)、二酸化チタン(TiO)、フッ化リチウム(LiF)及び硫酸リチウム(LiSO・HO)を、a=1.0、b=0.001、d=0.002、e=0.005になるように計量し、乾式混合する。得られた原料混合物を空気中、900℃で10時間焼成した後、らいかい機を用いて粉砕して、比表面積が0.63m/g、平均粒径が3.6μmの正極活物質粉末LiCo0.999Ti0.0010.0020.005を得る。
【0032】
なお、比表面積は、窒素ガス吸着による定圧式BET一点法にて測定した値であり、平均粒径は、空気透過法により比表面積を測定し、一次粒子の粒径の平均値を求めたものであり、フィッシャーサブシーブサイザー(F.S.S.S.)を用いて測定した値である。
【0033】
[実施例2]
b=0.005にする以外は実施例1と同様にして、比表面積が0.65m/g、平均粒径が3.5μmの正極活物質粉末LiCo0.995Ti0.0050.0020.005を得る。
【0034】
[実施例3]
二酸化チタン(TiO)の代わりに炭酸マグネシウム(MgCO)を使用する以外は実施例1と同様にして、比表面積が0.63m/g、平均粒径が3.5μmの正極活物質粉末LiCo0.999Mg0.0010.0020.005を得る。
【0035】
[実施例4]
c=0.005にする以外は実施例3と同様にして、比表面積が0.63m/g、平均粒径が3.4μmの正極活物質粉末LiCo0.995Mg0.0050.0020.005を得る。
【0036】
[実施例5]
原料としてさらに炭酸マグネシウム(MgCO)を加え、b=0.002にする以外は実施例1と同様にして、比表面積が0.63m/g、平均粒径が3.5μmの正極活物質粉末LiCo0.998Ti0.001Mg0.0010.0020.005を得る。
【0037】
[実施例6]
二酸化チタン(TiO)の代わりに酸化アルミニウム(Al)を使用する以外は実施例1と同様にして、比表面積が0.63m/g、平均粒径が3.3μmの正極活物質粉末LiCo0.999Al0.0010.0020.005を得る。
【0038】
[実施例7]
二酸化チタン(TiO)の代わりに炭酸カルシウム(CaCO)を使用する以外は実施例1と同様にして、比表面積が0.64m/g、平均粒径が3.4μmの正極活物質粉末LiCo0.999Ca0.0010.0020.005を得る。
【0039】
[実施例8]
二酸化チタン(TiO)の代わりに炭酸ストロンチウム(SrCO)を使用する以外は実施例1と同様にして、比表面積が0.65m/g、平均粒径が3.3μmの正極活物質粉末LiCo0.999Sr0.0010.0020.005を得る。
【0040】
[実施例9]
二酸化チタン(TiO)の代わりに五酸化バナジウム(V)を使用する以外は実施例1と同様にして、比表面積が0.64m/g、平均粒径が3.4μmの正極活物質粉末LiCo0.9990.0010.002 .005を得る。
【0041】
[実施例10]
二酸化チタン(TiO)の代わりに酸化ジルコニウム(ZrO)を使用する以外は実施例1と同様にして、比表面積が0.65m/g、平均粒径が3.3μmの正極活物質粉末LiCo0.999Zr0.0010.0020.005を得る。
【0042】
[実施例11]
d=0.01にする以外は実施例1と同様にして、比表面積が0.62m/g、平均粒径が3.5μmの正極活物質粉末LiCo0.999Ti0.0010.010.005を得る。
【0043】
[実施例12]
d=0.05にする以外は実施例1と同様にして、比表面積が0.62m/g、平均粒径が3.5μmの正極活物質粉末LiCo0.999Ti0.0010.050.005を得る。
【0044】
[実施例13]
e=0.001にする以外は実施例1と同様にして、比表面積が0.59m/g、平均粒径が3.7μmの正極活物質粉末LiCo0.999Ti0.0010.0020.001を得る。
【0045】
[実施例14]
e=0.009にする以外は実施例1と同様にして、比表面積が0.62m/g、平均粒径が3.5μmの正極活物質粉末LiCo0.999Ti0.0010.0020.009を得る。
【0046】
[実施例15]
フッ化リチウム(LiF)の代わりに塩化リチウム(LiCl)を使用する以外は実施例1と同様にして、比表面積が0.61m/g、平均粒径が3.6μmの正極活物質粉末LiCo0.999Ti0.001Cl0.0020.005を得る。
【0047】
[実施例16]
フッ化リチウム(LiF)の代わりに塩化リチウム(LiBr)を使用する以外は実施例1と同様にして、比表面積が0.61m/g、平均粒径が3.6μmの正極活物質粉末LiCo0.999Ti0.001Br0.0020.005を得る。
【0048】
[実施例17]
フッ化リチウム(LiF)の代わりに塩化リチウム(LiI)を使用する以外は実施例1と同様にして、比表面積が0.61m/g、平均粒径が3.6μmの正極活物質粉末LiCo0.999Ti0.0010.0020.005を得る。
【0049】
[実施例18]
硫酸リチウム(LiSO・HO)の代わりに硫黄(S)を使用する以外は実施例1と同様にして、比表面積が0.64m/g、平均粒径が3.4μmの正極活物質粉末LiCo0.999Ti0.0010.0020.005を得る。
【0050】
[実施例19]
硫酸リチウム(LiSO・HO)の代わりに硫化アンモニウム((NH)S)を使用する以外は実施例1と同様にして、比表面積が0.63m/g、平均粒径が3.5μmの正極活物質粉末LiCo0.999Ti0.0010.0020.005を得る。
【0051】
[比較例1]
二酸化チタン(TiO)、フッ化リチウム(LiF)及び硫酸リチウム(LiSO・HO)を使用しない以外は実施例1と同様にして、比表面積が0.61m/g、平均粒径が3.6μmの正極活物質粉末LiCoOを得る。
【0052】
[比較例2]
フッ化リチウム(LiF)及び硫酸リチウム(LiSO・HO)を使用しない以外は実施例1と同様にして、比表面積が0.61m/g、平均粒径が3.6μmの正極活物質粉末LiCo0.999Ti0.001を得る。
【0053】
[比較例3]
二酸化チタン(TiO)及びフッ化リチウム(LiF)を使用しない以外は実施例1と同様にして、比表面積が0.61m/g、平均粒径が3.6μmの正極活物質粉末LiCoO0.005を得る。
【0054】
[比較例4]
二酸化チタン(TiO)及び硫酸リチウム(LiSO・HO)を使用しない以外は実施例1と同様にして、比表面積が0.61m/g、平均粒径が3.6μmの正極活物質粉末LiCoO0.002を得る。
【0055】
[比較例5]
フッ化リチウム(LiF)を使用しない以外は実施例1と同様にして、比表面積が0.61m/g、平均粒径が3.6μmの正極活物質粉末LiCo0.999Ti0.0010.005を得る。
【0056】
[比較例6]
硫酸リチウム(LiSO・HO)を使用しない以外は実施例1と同様にして、比表面積が0.61m/g、平均粒径が3.6μmの正極活物質粉末LiCo0.999Ti0.0010.002を得る。
【0057】
[比較例7]
二酸化チタン(TiO)を使用しない以外は実施例1と同様にして、比表面積が0.61m/g、平均粒径が3.6μmの正極活物質粉末LiCoO0.0020.005を得る。
【0058】
(評価)
実施例1〜19及び比較例1〜7で得られた正極活物質粉末を用いてラミネート電池を作製し、ガス発生、電池特性(サイクル特性、高負荷特性)及び熱安定性について測定した結果を表1にまとめる。電池の膨張率、常温(25℃)での容量維持率及び高負荷容量は前述した方法で測定する。高温(60℃)での容量維持率は、60℃高温槽中で測定し、300サイクル目の容量維持率(%)を求める以外は常温(25℃)での容量維持率と同様に測定する。熱安定性については、次のように示差走査熱量測定を行い、発熱開始温度により評価する。
【0059】
(熱安定性の評価)
▲1▼ラミネート電池を前述した方法で作製する。
▲2▼定電流による充放電を行いなじませた後、一定電流の下で電池電圧が4.2Vになるまで充電を行う。
▲3▼充電後、Arガスのボックス中でラミネート電池を分解して正極板を取り出し、DECで洗浄した後30分間真空乾燥する。
▲4▼正極板から削り取った正極活物質5mgとエチレンカーボネート2mgを内径4mmのAlセルに入れ、Al蓋でかしめ密閉し、示差走査熱量分析を行い、発熱開始温度を求める。
【0060】
示差走査熱量分析とは、基準物質と試料とを同時に一定の速度で加熱しながら両者の間に生じる温度差を測定し、試料物質の熱的特性を解析する方法であり、正極活物質について測定すると、低温部では示差走査熱量は変化しないが、ある温度以上で示差走査熱量が大きく増大する。この時の温度を発熱開始温度とし、この温度が高いほど熱安定性が良いといえる。
【0061】
表1から、比較例1〜7に比べ、実施例1〜19は正極活物質中にTi、Al、V、Zr、Mg、Ca、Srのうちの少なくとも1種の元素、ハロゲン元素及びS元素を含むことによって、電池の膨張率が低減し、容量維持率、高負荷容量が高く、電池特性(サイクル特性、高負荷特性)が優れていることがわかる。サイクル特性については、常温(25℃)でのサイクル特性よりも、高温(60℃)でのサイクル特性において特に効果が著しいことがわかる。また、発熱開始温度は比較例に比べ高く、熱安定性にも優れていることがわかる。例えば、Ti元素、F元素、S元素の3種類の元素をいずれも含まない比較例1、1種類の元素のみ含む比較例2〜4、2種類の元素を含む比較例5〜7に比べ、3種類の元素を全て含む実施例1の場合、電池の膨張率は低く、且つ容量維持率、高負荷容量が高くなっている。また、発熱開始温度も高くなっている。このように、正極活物質中にTi元素、F元素、S元素の3種類の元素を全て含むことによって、相乗効果として正極活物質の結晶転移或いは分解がさらに抑制される結果、電池内のガス発生は著しく低減し、電池特性(サイクル特性、高負荷特性)及び熱安定性は非常に向上する。また、Tiの代わりにTi単独を除くTi、Al、V、Zr、Mg、Ca、Srから選ばれた少なくとも1種の元素、或いはFの代わりにF単独を除く少なくとも一種以上のハロゲン元素を含む場合も同様な効果が得られる。
【0062】
【表1】
Figure 0004055414
【0063】
【発明の効果】
リチウムイオン二次電池の正極活物質として一般式がLiCo1−b(MはTi、Al、V、Zr、Mg、Ca、Srから選ばれた少なくとも1種の元素、Xは少なくとも一種以上のハロゲン元素を示す。aは0.95≦a≦1.05、bは0<b≦0.10、cは1≦c≦2.5、dは0<d≦0.1、eは0<e≦0.015である。)で表される正極活物質を用いることにより、電池内のガス発生を低減し、電池特性(サイクル特性、高負荷特性)及び熱安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】正極活物質中のF量(d値)と電池の膨張率の関係を示す特性図
【図2】正極活物質中のMg量(b値)と電池の膨張率の関係を示す特性図
【図3】正極活物質の比表面積と電池の膨張率の関係を示す特性図
【図4】正極活物質中のS量(e値)と容量維持率の関係を示す特性図
【図5】正極活物質中のTi量(b値)と高負荷容量の関係を示す特性図
【図6】正極活物質中のLi量(a値)と高負荷容量の関係を示す特性図
【図7】正極活物質中のLi量(a値)と放電容量の関係を示す特性図

Claims (2)

  1. 一般式がLiCo1−b(MはTi、Al、V、Zr、Mg、Ca、Srから選ばれた少なくとも1種の元素、Xは少なくとも一種以上のハロゲン元素を示す。aは0.95≦a≦1.05、bは0<b≦0.10、cは1≦c≦2.5、dは0<d≦0.1、eは0<e≦0.015である。)で表されることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  2. 比表面積が0.2〜2.0m/gの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
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