JP2002260660A - 非水系電解質二次電池用正極活物質およびその製造方法 - Google Patents

非水系電解質二次電池用正極活物質およびその製造方法

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JP2002260660A JP2001060626A JP2001060626A JP2002260660A JP 2002260660 A JP2002260660 A JP 2002260660A JP 2001060626 A JP2001060626 A JP 2001060626A JP 2001060626 A JP2001060626 A JP 2001060626A JP 2002260660 A JP2002260660 A JP 2002260660A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 初期容量を大きく犠牲にすることなく、高温
熱安定性が高く、かつ、製造安定性も備えた非水系電解
質二次電池を得ることが可能な正極活物質と、その製造
方法を提供する。 【解決手段】 LiMO2(但し、Mは、Ni、または
Niおよびその他1種以上の遷移金属元素)で表される
複合酸化物に、Li3VO4などのV化合物を、Mに対す
るVの原子比率が0.1〜2%となるように、かつ、L
iMO2粒子の表面を被覆するか、LiMO2粒子の表面
ないし表面近傍に存在するように含有させたリチウムニ
ッケル複合酸化物からなる非水系電解質正極用活物質を
製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、非水系電解質二次
電池用正極活物質に関し、特に、正極材料として用いる
ことで、電池の容量を損なうことなく、高温熱安定性を
向上させることが可能となる非水系二次電池の活物質に
関する。
【0002】
【従来の技術】近年、携帯電話やノート型パソコンなど
の携帯機器の普及にともない、高いエネルギー密度を有
する小型、軽量な二次電池の開発が強く望まれている。
このようなものとして、リチウム金属、リチウム合金、
金属酸化物あるいはカーボンを負極として用いるリチウ
ムイオン二次電池があり、研究開発が盛んに行われてい
る。
【0003】リチウム複合酸化物、特に、合成が比較的
容易なリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)を
正極材料に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の
高い電圧が得られるため、高エネルギー密度を有する電
池として期待され、実用化が進んでいる。リチウムコバ
ルト複合酸化物を用いた電池では、優れた初期容量特性
やサイクル特性を得るための開発は、これまで数多く行
われてきており、すでにさまざまな成果が得られてい
る。
【0004】しかし、リチウムコバルト複合酸化物は、
原料に希産で高価なコバルト化合物を用いるため、活物
質さらには電池のコストアップの原因となり、代替材料
が望まれている。活物質のコストを下げ、より安価なリ
チウムイオン二次電池の製造を可能とすることは、現在
普及している携帯機器の軽量、小型化の点で工業的に大
きな意義を有する。
【0005】リチウムイオン二次電池用正極活物質の新
たなる材料としては、Coよりも安価なMnを用いたリ
チウムマンガン複合酸化物(LiMn24)や、Niを
用いたリチウムニッケル複合酸化物(LiNiO2)を
挙げることができる。
【0006】リチウムマンガン複合酸化物は、原料が安
価である上、熱安定性に優れるため、リチウムコバルト
複合酸化物の有力な代替材料であるといえるが、理論容
量がリチウムコバルト複合酸化物のおよそ半分程度しか
なく、年々高まるリチウムイオン二次電池の高容量化の
要求に応えるのが難しいという欠点がある。
【0007】一方、リチウムニッケル複合酸化物は、リ
チウムコバルト複合酸化物よりも低い電気化学ポテンシ
ャルを示すため、より高容量が期待でき、コバルト系と
同様に高い電池電圧を示すため、開発が盛んに行われて
いる。しかし、純粋にNiのみで合成したリチウムニッ
ケル複合酸化物を正極活物質としてリチウムイオン二次
電池を作製した場合、コバルト系のものに比べサイクル
特性が劣る。また、高温環境下で使用されたり保存され
たりした場合に、比較的電池性能を損ないやすいという
欠点を有する。
【0008】このような欠点を解決するために、例え
ば、特開平8−213015号公報では、リチウムイオ
ン二次電池の自己放電特性やサイクル特性を向上させる
ことを目的として、LixNiaCobc2(0.8≦
x≦1.2、0.01≦a≦0.99、0.01≦b≦
0.99、0.01≦c≦0.3、0.8≦a+b+c
≦1.2、MはAl、V、Mn、Fe、Cu及びZnか
ら選ばれる少なくとも1種の元素)で表されるリチウム
含有複合酸化物や、特開平8−45509号公報では、
高温環境下での保存や使用に際して良好な電池性能を維
持することのできる正極活物質として、LiwNixCo
yz2(0.05≦w≦1.10、0.5≦x≦0.
995、0.005≦z≦0.20、x+y+z=1)
で表されるリチウム含有複合酸化物、あるいは特開平8
−321299号公報では、サイクル特性や耐過充電性
を向上させることを目的として、Niの5原子%以下を
Gaで置換したリチウム含有複合酸化物等が提案されて
いる。
【0009】しかしながら、従来の製造方法によって得
られたリチウムニッケル複合酸化物では、コバルト系複
合酸化物に比べて充電容量、放電容量ともに高く、サイ
クル特性も改善されているが、満充電状態で高温環境下
に放置しておくと、コバルト系複合酸化物に比べて低い
温度から酸素放出を伴う分解が始まり、その結果、電池
の内部圧力が上昇して、電池にふくれが発生したり、最
悪の場合には、電池が爆発する危険を有している。この
原因については、現在のところ明らかになっていない
が、リチウムニッケル複合酸化物は、酸素放出分解温度
がリチウムコバルト酸化物と比較して低く、分解時に放
出された酸素が電解液と反応して、燃焼反応が起こるこ
と、正極活物質の充電生成物である遷移金属酸化物が持
つ電解液の分解反応の触媒能が相違することが、推定さ
れている。
【0010】このような問題を解決するために、例えば
特開平5−242891号公報では、リチウムイオン二
次電池正極材料の高温熱的安定性を向上させることを目
的として、LiabNicCode(MはAl、Mn、
Sn、In、Fe、V、Cu、Mg、Ti、Znおよび
Moから成る群から選択される少なくとも一種の金属で
あり、かつ0<a<1.3、0.02≦b≦0.5、
0.02≦d/c+d≦0.9、1.8<e<2.2の
範囲であって、さらにb+c+d=1である)で表され
るリチウム含有複合酸化物等が提案されている。この中
でたとえばMとしてAlを選んだ場合、熱安定性向上に
有効な量のAlでNiを置換すると、電池性能として最
も重要である初期容量が大きく低下するという問題をは
らんでいる。
【0011】また、特開2000−156227号公報
では、リチウム遷移金属複合酸化物の二次粒子からなる
正極活物質において、該二次粒子の中心部にある一次粒
子と表面にある一次粒子とが、異なる組成であることが
提案されている。また、特開2000−133246号
公報では、一次粒子と二次粒子の存在割合を決めること
で、高温安定性を向上させることが記載されている。
【0012】しかし、これらの方法では、製造工程が複
雑になり、特開2000−156227号公報では、中
心部、表面の組成コントロールが難しく、特開2000
−133246号公報では一次粒子と二次粒子の存在割
合を安定的に保つことが難しい等の課題が残っている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】これまで報告されてき
たような、熱安定性向上のためにNiの一部を別の元素
で置換したリチウムニッケル複合酸化物を正極活物質と
した非水系電解質二次電池では、LiCoO2のCoの
一部や、LiNiO2のNiの一部を、添加元素で置換
する方法を採り、熱安定性向上を図ってきたが、元素で
置換した分だけ初期容量が低下するという問題点を有し
ていた。
【0014】また、粒子の中心と表面で厳密に組成を制
御したり、粒子比率を制御する等の方法では、熱安定性
向上は図れるものの、その製造安定性が確保できない等
の問題点を有していた。
【0015】本発明は、このような問題点に着目してな
されたもので、その課題とするところは、初期容量を大
きく犠牲にすることなく、高温熱安定性が高く、かつ、
製造安定性も備えた非水系電解質二次電池を得ることが
可能な正極活物質と、その製造方法を提供することにあ
る。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明による非水系電解
質二次電池用正極活物質は、LiMO2にV化合物を含
有させることを特徴とする。ここで、Mは、Ni、また
はNiおよびその他1種以上の遷移金属元素であり、N
iおよびその他の1種以上の遷移金属元素の場合には、
これらが所定のモル比率で存在する。
【0017】前記V化合物は、LiMO2粒子の表面を
被覆するか、またはLiMO2粒子の表面ないしは表面
近傍に存在することが好ましい。
【0018】また、前記V化合物は、LiとVの複合酸
化物、特に、Li3VO4であることが好ましい。
【0019】なお、元素Mに対するVの原子比率は、
0.1〜2%であることが望ましい。
【0020】一方、本発明による非水系電解質用正極活
物質は、Mの化合物にVの化合物を予め添加し、その後
にLi化合物と混合して、熱処理することにより製造さ
れる。
【0021】また、LiMO2で表される複合酸化物
に、Vの化合物を加熱融解したもの、またはV化合物を
溶媒に溶解したものを含浸させることで製造することが
できる。
【0022】さらに、LiMO2で表される複合酸化物
と、Vの化合物を加熱融解したもの、またはVの化合物
を溶媒に溶解したものとを混合し、熱処理することによ
り製造することができる。
【0023】なお、LiMO2で表される複合酸化物の
Mの組成は、Ni単独でも構わないが、合成の容易さ、
より高いサイクル特性、さらに熱安定性を実現するため
に、Niの一部を他の元素で置換した方がよい。例え
ば、原子比でNiの10%以上をCoで置換すると、完
全な結晶構造を実現するための合成が容易になり、サイ
クル特性が改善される。ただし、あまり多く置換する
と、初期容量が低下してしまうため、置換量は10〜2
0%程度であることが好ましい。また、活物質自身の分
解反応を抑えるために、Niの一部をAlで置換するこ
とも効果がある。ただし、これもあまり多く置換すると
初期容量が低下してしまうため、初期容量をあまり低下
させずに分解反応を抑制する置換量としては3〜10%
程度であることが好ましい。
【0024】
【発明の実施の形態】リチウムニッケル複合酸化物は、
電池活物質として考えた場合、Liの脱離および挿入に
よって、充放電が行われる。200mAh/g程度の満
充電状態は、リチウムニッケル複合酸化物から約7割の
Liが脱離した状態である。すなわち、Li0.3NiO2
となっているわけであるが、このとき、Niはその一部
が3価および4価となっている。4価のNiは非常に不
安定で、高温にすると容易に酸素を放出して2価(Ni
O)となりやすい。上述したように、リチウムニッケル
複合酸化物が熱安定性に劣る理由としては、この酸素放
出分解温度がリチウムコバルト複合酸化物と比較して低
く、このとき放出された酸素が電解液と反応して燃焼反
応が起こることや、Ni自体が触媒となって電解液の分
解反応を促進することなどが原因と考えられている。
【0025】これらの挙動は、充電状態にある正極材料
を電解液の存在下で示差走査熱量測定を行い、その発熱
量を見ることで評価できる。この方法で、正極材料の熱
安定性に関し、本発明者等が種々研究を進めた結果、V
含有化合物を添加することによって、高温熱安定性に優
れた非水系電解質二次電池用正極活物質が得られること
を見いだし、本発明を完成するに至った。
【0026】その理由はまだ明らかにはなっていない
が、V含有化合物が、LiMO2の表面を被覆している
か、LiMO2粒子の表面に微細粒子として存在する
か、あるいはLiMO2粒子の表面近傍に微細粒子とし
て存在することによって、酸素と電解液との反応を抑え
る効果や、触媒能を抑え電解液の分解反応を抑える効果
があるためと考えられる。この時、VはLiMO2のM
原子を置換しない。
【0027】V含有化合物の添加に関しては、わずかな
量の添加で効果が出始め、その量を増やしていくと徐々
に効果が増大していくが、ある程度以上の添加では、そ
の質量分だけ質量当たりの容量が減少するだけで、安全
性に対する効果はほとんど変化しないことが見出されて
いる。本発明者らが研究を深めた結果、Mnに対するV
のモル比が0.1%以上で効果があり、2%以上では質
量当たりの初期容量の低下が大きくなるため望ましくな
いことを見いだした。
【0028】また、リチウムニッケル複合酸化物に含ま
れるV含有化合物は、LiとVの複合酸化物であり、安
定しているLi3VO4となっていることが好ましい。
【0029】V化合物の添加は、必ずしも原料に添加し
ておく必要があるわけではない。すでに合成したリチウ
ムニッケル複合酸化物に、後から添加しても効果があ
る。
【0030】Liと遷移金属の複合酸化物に含むNiの
原料となるニッケル化合物としては、酸化ニッケル、水
酸化ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッ
ケルなどを用い、同時に含ませる元素の原料は、Niの
場合と同様の金属塩を用いることができる。また、リチ
ウム化合物としては、炭酸リチウムや水酸化リチウム、
水酸化リチウム一水和物、硝酸リチウム、過酸化リチウ
ムなどを用いることができる。
【0031】本発明により、V含有化合物を含有したリ
チウムニッケル複合酸化物を、リチウムイオン二次電池
の正極活物質として用いた場合、電池の初期容量を大き
く低下させることなく、高温熱安定性を向上させ、か
つ、製造安定性も確保することができる。
【0032】以下、本発明の一実施の形態を好適な図面
に基づいて詳述する。
【0033】
【実施例】(実施例1)Vを添加したLiNi0.83Co
0.14Al0.032は、以下のように合成した。
【0034】NiとCoとAlのモル比が83:14:
3で固溶した複合水酸化物を用意し、五酸化Vを溶解し
た30%アンモニア水溶液に、VとNi+Co+Alの
モル比が0.005:1.00となるように、この複合
水酸化物を投入し、加熱攪拌して、乾燥した。市販の水
酸化リチウム一水和物とこの乾燥物を、LiとNi+C
o+Alのモル比が1.045:1.000となるよう
に秤量し、十分に混合した。この混合粉末を、酸素流量
3000cm3/minの気流中で350℃で2時間仮
焼した後、750℃で20時間焼成し、室温まで炉冷し
て、活物質を得た。
【0035】得られた活物質を、CuのKα線を用いた
粉末X線回折で分析したところ、六方晶で帰属できるリ
チウムニッケル複合酸化物の他に、Li3VO4のピーク
もわずかに確認できた。
【0036】得られた活物質を用いて、以下のように、
図1に示した2032型コイン電池を作製し、充放電容
量を測定した。
【0037】活物質粉末87質量%に、アセチレンブラ
ック5質量%およびPVDF(ポリ沸化ビニリデン)8
質量%を混合し、NMP(n−メチルピロリドン)を加
えペースト化した。これを、20μm厚のアルミニウム
箔に、乾燥後の活物質質量が0.025g/cm2にな
るように塗布し、120℃で真空乾燥を行い、1cmφ
の円板状に打ち抜いて正極3とした。
【0038】負極1としてリチウム金属を、電解液には
1MのLiClO4を支持塩とするエチレンカーボネー
ト(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混
合溶液を用いた。ポリエチレンからなるセパレータ2に
電解液を染み込ませ、露点が−80℃に管理されたAr
雰囲気のグローブボックス中で、2032型のコイン電
池を作製した。
【0039】作製した電池は24時間程度放置し、OC
Vが安定した後、正極に対する電流密度を0.5mA/
cm2とし、カットオフ電圧4.3−3.0Vで充放電
試験を行った。得られた1サイクル目の単位質量当たり
の放電容量(初期容量)を表1に示す。
【0040】また、同様な方法でもう一つ電池を作成
し、正極に対する質量当たりの電流密度を6mA/gと
して、196mAh/gまで充電した。充電終了後、こ
の電池を分解して正極材料を取り出し、この正極材料
2.4mgに対して電解液として、1MのLiClO4
を支持塩とするエチレンカーボネート(EC)とジエチ
ルカーボネート(DEC)の等量混合溶液2.0mgを
加えて、アルミニウム製の密閉容器に封入し、示差走査
熱量測定を行った。その結果を図2に示す。
【0041】(実施例2)実施例1と同様に、複合水酸
化物を用意し、五酸化バナジウムを溶解した30%アン
モニア水溶液に、VとNi+Co+Alのモル比が0.
005:1.00となるように複合水酸化物を投入し、
加熱攪拌して、乾燥した。市販の水酸化リチウム一水和
物とこの乾燥物を、LiとNi+Co+Alのモル比が
1.060:1.000となるように秤量し、十分に混
合した。後の方法は、実施例1とまったく同様にして活
物質を得た。
【0042】得られた活物質を、CuのKα線を用いた
粉末X線回折で分析したところ、六方晶で帰属できるリ
チウムニッケル複合酸化物の他に、Li3VO4のピーク
もわずかに確認できた。
【0043】初期容量の測定、および示差走査熱量測定
は、実施例1と同様な方法で行った。
【0044】結果を表1と図2に示す。
【0045】(実施例3)実施例1と同様に、複合水酸
化物を用意し、五酸化バナジウムを溶解した30%アン
モニア水溶液に、VとNi+Co+Alのモル比が0.
01:1.00となるように複合水酸化物を投入し、加
熱攪拌して、乾燥した。市販の水酸化リチウム一水和物
とこの乾燥物を、LiとNi+Co+Alのモル比が
1.060:1.000となるように秤量し、十分に混
合した。後の方法は、実施例1とまったく同様にして活
物質を得た。
【0046】得られた活物質を、CuのKα線を用いた
粉末X線回折で分析したところ、六方晶で帰属できるリ
チウムニッケル複合酸化物の他に、Li3VO4のピーク
もわずかに確認できた。
【0047】初期容量の測定、および示差走査熱量測定
は、実施例1と同様な方法で行った。
【0048】結果を表1と図2に示す。
【0049】(実施例4)実施例1と同様に、複合水酸
化物を用意し、五酸化バナジウムを溶解した30%アン
モニア水溶液に、VとNi+Co+Alのモル比が0.
02:1.00となるように複合水酸化物を投入し、加
熱攪拌して、乾燥した。市販の水酸化リチウム一水和物
とこの乾燥物を、LiとNi+Co+Alのモル比が
1.090:1.000となるように秤量し、十分に混
合した。後の方法は実施例1とまったく同様にして活物
質を得た。
【0050】得られた活物質を、CuのKα線を用いた
粉末X線回折で分析したところ、六方晶で帰属できるリ
チウムニッケル複合酸化物の他に、Li3VO4のピーク
もわずかに確認できた。
【0051】初期容量の測定、および示差走査熱量測定
は、実施例1と同様な方法で行った。
【0052】結果を表1と図2に示す。
【0053】(実施例5)LiNi0.83Co0.14Al
0.032を、以下のように合成した。
【0054】市販の水酸化リチウム一水和物と、Niと
CoとAlのモル比が83:14:3で固溶した複合水
酸化物を用意した。LiとNi+Co+Alのモル比が
1.03:1.00となるように秤量し、十分に混合し
た。この混合粉末を、酸素流量3000cm3/min
の気流中で350℃で2時間仮焼した後、750℃で2
0時間焼成し、室温まで炉冷して活物質を得た。
【0055】活物質へのVの添加は以下のように行っ
た。市販の水酸化リチウム一水和物を純水に溶解し、こ
れにLiとVのモル比が3:1になるように五酸化バナ
ジウムを投入し、溶解した。この水溶液に、VとNi+
Co+Alのモル比が0.010:1.00となるよう
に活物質を投入し、加熱攪拌して、乾燥した。
【0056】得られた活物質を、CuのKα線を用いた
粉末X線回折で分析したところ、方晶で帰属できるリチ
ウムニッケル複合酸化物の他に、Li3VO4のピークも
わずかに確認できた。
【0057】初期容量の測定、および示差走査熱量測定
は実施例1と同様な方法で行った。結果を表1と図2に
示す。
【0058】(実施例6)LiNi0.83Co0.14Al
0.032を、以下のように合成した。市販の水酸化リチ
ウム一水和物と、NiとCoとAlのモル比が83:1
4:3で固溶した複合水酸化物を用意した。LiとNi
+Co+Alのモル比が1.03:1.00となるよう
に秤量し、十分に混合した。この混合粉末を、酸素流量
3000cm 3/minの気流中で350℃で2時間仮
焼した後、750℃で20時間焼成し、室温まで炉冷し
てLiNi0.83Co0.14Al0.032を得た。
【0059】LiNi0.83Co0.14Al0.032へのV
の添加は以下のように行った。市販の水酸化リチウム一
水和物を純水に溶解し、これにLiとVのモル比が3:
1になるように五酸化バナジウムを投入し、溶解した。
この水溶液に、VとNi+Co+Alのモル比が0.0
10:1.00となるように活物質を投入し、加熱攪拌
して、乾燥した。この乾燥物を、酸素流量3000cm
3/minの気流中で750℃で20時間焼成し、室温
まで炉冷して、活物質を得た。
【0060】得られた活物質を、CuのKα線を用いた
粉末X線回折で分析したところ、六方晶で帰属できるリ
チウムニッケル複合酸化物の他に、Li3VO4のピーク
もわずかに確認できた。
【0061】初期容量の測定、および示差走査熱量測定
は、実施例1と同様な方法で行った。
【0062】結果を表1と図2に示す。
【0063】(実施例7)活物質を、以下のように合成
した。市販の水酸化リチウム一水和物と、NiとCoと
Alのモル比が83:14:3で固溶した複合水酸化物
と市販の五酸化バナジウムを用意した。LiとNi+C
o+AlとVのモル比が1.03:1.00:0.01
となるように秤量し、十分に混合した。この混合粉末
を、酸素流量3000cm3/minの気流中で350
℃で2時間仮焼した後、750℃で20時間焼成し、室
温まで炉冷して活物質を得た。
【0064】得られた活物質を、CuのKα線を用いた
粉末X線回折で分析したところ、六方晶で帰属できるリ
チウムニッケル複合酸化物の他に、Li3VO4のピーク
もわずかに確認できた。
【0065】初期容量の測定、および示差走査熱量測定
は、実施例1と同様な方法で行った。
【0066】結果を表1と図2に示す。
【0067】(比較例1)LiNi0.83Co0.14Al
0.032を、以下のように合成した。市販の水酸化リチ
ウム一水和物と、NiとCoとAlのモル比が83:1
4:3で固溶した複合水酸化物を用意した。LiとNi
+Co+Alのモル比が1.03:1.00となるよう
に秤量し、十分に混合した。この混合粉末を、酸素流量
3000cm 3/minの気流中で350℃で2時間仮
焼した後、750℃で20時間焼成し、室温まで炉冷し
て正極活物質を得た。
【0068】得られた正極活物質を、CuのKα線を用
いた粉末X線回折で分析したところ、六方晶で帰属でき
るリチウムニッケル複合酸化物のみが確認できた。
【0069】初期容量の測定、および示差走査熱量測定
は、実施例1と同様な方法で行った。
【0070】結果を表1と図2に示す。
【0071】
【表1】
【0072】表1から、実施例1〜7の電池の初期容量
は、比較例1の電池と比較して、Vの添加量に応じてわ
ずかに初期容量が減少しているものの、2原子%までの
添加では、実用上まったく問題ない程度の減少に抑えら
れていることがわかる。
【0073】また、図2の示差走査熱量測定により、実
施例1〜7の正極材料は比較例1の正極材料に見られる
ような急激な発熱が緩和され、比較的マイルドな反応と
なっており、いずれも熱安定性の改善に大きな効果があ
ることがわかる。
【0074】
【発明の効果】本発明により、電池として高い初期容量
を大きく損なうことなく、熱安定性を向上させることが
可能な二次電池を提供することができるという効果があ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 コイン電池の断面を示す斜視図である。
【図2】 示差走査熱量測定の結果を示すグラフであ
る。
【符号の説明】
1 リチウム金属負極 2 セパレータ(電解液含浸) 3 正極(評価用電極) 4 ガスケット 5 負極缶 6 正極缶
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4G048 AA04 AB05 AC06 AE05 5H029 AJ04 AJ07 AK03 AL12 AM03 AM05 AM07 BJ03 CJ02 CJ08 CJ23 DJ08 DJ16 EJ05 HJ02 5H050 AA05 AA10 AA13 CA08 CB12 DA09 EA10 EA12 EA24 GA02 GA10 GA23 HA02

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 LiMO2(Mは、Ni、またはNiお
    よびその他1種以上の遷移金属元素)にV化合物を含有
    させたリチウムニッケル複合酸化物からなる非水系電解
    質二次電池用正極活物質。
  2. 【請求項2】 前記V化合物が、LiMO2粒子の表面
    を被覆する、またはLiMO2粒子の表面ないしは表面
    近傍に存在する請求項1に記載の非水系電解質二次電池
    用正極活物質。
  3. 【請求項3】 前記V化合物が、LiとVの複合酸化物
    である請求項1または2に記載の非水系電解質二次電池
    用正極活物質。
  4. 【請求項4】 前記V化合物が、Li3VO4である請求
    項1〜3のいずれかに記載の非水系電解質二次電池用正
    極活物質。
  5. 【請求項5】 元素Mに対するVの原子比率が0.1〜
    2%である請求項1〜4のいずれかに記載の非水系電解
    質二次電池用正極活物質。
  6. 【請求項6】 M化合物にV化合物を予め添加し、その
    後にLi化合物と混合して、熱処理することにより、請
    求項1〜5のいずれかに記載の非水系電解質二次電池用
    正極活物質を製造する方法。
  7. 【請求項7】 LiMO2で表される複合酸化物に、V
    化合物を加熱融解したもの、またはV化合物を溶媒に溶
    解したものを含浸させることにより、請求項1〜5のい
    ずれかに記載の非水系電解質二次電池用正極活物質を製
    造する方法。
  8. 【請求項8】 LiMO2で表される複合酸化物と、V
    化合物を加熱融解したもの、またはV化合物を溶媒に溶
    解したものとを混合し、熱処理することにより、請求項
    1〜5のいずれかに記載の非水系電解質二次電池用正極
    活物質を製造する方法。
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