JP3835180B2 - 非水系電解質二次電池用正極活物質およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水系電解質二次電池用正極活物質に関し、特に、正極材料として用いることで、電池の容量を損なうことなく、高温熱安定性を向上させることが可能となる非水系二次電池の活物質に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話やノート型パソコンなどの携帯機器の普及にともない、高いエネルギー密度を有する小型、軽量な二次電池の開発が強く望まれている。このようなものとして、リチウム金属、リチウム合金、金属酸化物あるいはカーボンを負極として用いるリチウムイオン二次電池があり、研究開発が盛んに行われている。
【0003】
リチウム複合酸化物、特に、合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高エネルギー密度を有する電池として期待され、実用化が進んでいる。リチウムコバルト複合酸化物を用いた電池では、優れた初期容量特性やサイクル特性を得るための開発は、これまで数多く行われてきており、すでにさまざまな成果が得られている。
【0004】
しかし、リチウムコバルト複合酸化物は、原料に希産で高価なコバルト化合物を用いるため、活物質さらには電池のコストアップの原因となり、代替材料が望まれている。活物質のコストを下げ、より安価なリチウムイオン二次電池の製造を可能とすることは、現在普及している携帯機器の軽量、小型化の点で工業的に大きな意義を有する。
【0005】
リチウムイオン二次電池用正極活物質の新たなる材料としては、Coよりも安価なMnを用いたリチウムマンガン複合酸化物(LiMn2O4)や、Niを用いたリチウムニッケル複合酸化物(LiNiO2)を挙げることができる。
【0006】
リチウムマンガン複合酸化物は、原料が安価である上、熱安定性に優れるため、リチウムコバルト複合酸化物の有力な代替材料であるといえるが、理論容量がリチウムコバルト複合酸化物のおよそ半分程度しかなく、年々高まるリチウムイオン二次電池の高容量化の要求に応えるのが難しいという欠点がある。
【0007】
一方、リチウムニッケル複合酸化物は、リチウムコバルト複合酸化物よりも低い電気化学ポテンシャルを示すため、より高容量が期待でき、コバルト系と同様に高い電池電圧を示すため、開発が盛んに行われている。しかし、純粋にNiのみで合成したリチウムニッケル複合酸化物を正極活物質としてリチウムイオン二次電池を作製した場合、コバルト系のものに比べサイクル特性が劣る。また、高温環境下で使用されたり保存されたりした場合に、比較的電池性能を損ないやすいという欠点を有する。
【0008】
このような欠点を解決するために、例えば、特開平8−213015号公報では、リチウムイオン二次電池の自己放電特性やサイクル特性を向上させることを目的として、LixNiaCobMcO2(0.8≦x≦1.2、0.01≦a≦0.99、0.01≦b≦0.99、0.01≦c≦0.3、0.8≦a+b+c≦1.2、MはAl、V、Mn、Fe、Cu及びZnから選ばれる少なくとも1種の元素)で表されるリチウム含有複合酸化物や、特開平8−45509号公報では、高温環境下での保存や使用に際して良好な電池性能を維持することのできる正極活物質として、LiwNixCoyBzO2(0.05≦w≦1.10、0.5≦x≦0.995、0.005≦z≦0.20、x+y+z=1)で表されるリチウム含有複合酸化物、あるいは特開平8−321299号公報では、サイクル特性や耐過充電性を向上させることを目的として、Niの5原子%以下をGaで置換したリチウム含有複合酸化物等が提案されている。
【0009】
しかしながら、従来の製造方法によって得られたリチウムニッケル複合酸化物では、コバルト系複合酸化物に比べて充電容量、放電容量ともに高く、サイクル特性も改善されているが、満充電状態で高温環境下に放置しておくと、コバルト系複合酸化物に比べて低い温度から酸素放出を伴う分解が始まり、その結果、電池の内部圧力が上昇して、電池にふくれが発生したり、最悪の場合には、電池が爆発する危険を有している。この原因については、現在のところ明らかになっていないが、リチウムニッケル複合酸化物は、酸素放出分解温度がリチウムコバルト酸化物と比較して低く、分解時に放出された酸素が電解液と反応して、燃焼反応が起こること、正極活物質の充電生成物である遷移金属酸化物が持つ電解液の分解反応の触媒能が相違することが、推定されている。
【0010】
このような問題を解決するために、例えば特開平5−242891号公報では、リチウムイオン二次電池正極材料の高温熱的安定性を向上させることを目的として、LiaMbNicCodOe(MはAl、Mn、Sn、In、Fe、V、Cu、Mg、Ti、ZnおよびMoから成る群から選択される少なくとも一種の金属であり、かつ0<a<1.3、0.02≦b≦0.5、0.02≦d/c+d≦0.9、1.8<e<2.2の範囲であって、さらにb+c+d=1である)で表されるリチウム含有複合酸化物等が提案されている。この中でたとえばMとしてAlを選んだ場合、熱安定性向上に有効な量のAlでNiを置換すると、電池性能として最も重要である初期容量が大きく低下するという問題をはらんでいる。
【0011】
また、特開2000−156227号公報では、リチウム遷移金属複合酸化物の二次粒子からなる正極活物質において、該二次粒子の中心部にある一次粒子と表面にある一次粒子とが、異なる組成であることが提案されている。また、特開2000−133246号公報では、一次粒子と二次粒子の存在割合を決めることで、高温安定性を向上させることが記載されている。
【0012】
しかし、これらの方法では、製造工程が複雑になり、特開2000−156227号公報では、中心部、表面の組成コントロールが難しく、特開2000−133246号公報では一次粒子と二次粒子の存在割合を安定的に保つことが難しい等の課題が残っている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
これまで報告されてきたような、熱安定性向上のためにNiの一部を別の元素で置換したリチウムニッケル複合酸化物を正極活物質とした非水系電解質二次電池では、LiCoO2のCoの一部や、LiNiO2のNiの一部を、添加元素で置換する方法を採り、熱安定性向上を図ってきたが、元素で置換した分だけ初期容量が低下するという問題点を有していた。
【0014】
また、粒子の中心と表面で厳密に組成を制御したり、粒子比率を制御する等の方法では、熱安定性向上は図れるものの、その製造安定性が確保できない等の問題点を有していた。
【0015】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、初期容量を大きく犠牲にすることなく、高温熱安定性が高く、かつ、製造安定性も備えた非水系電解質二次電池を得ることが可能な正極活物質と、その製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明による非水系電解質二次電池用正極活物質は、LiMO2にV化合物を含有させることを特徴とする。ここで、Mは、Ni、またはNiおよびその他1種以上の遷移金属元素であり、Niおよびその他の1種以上の遷移金属元素の場合には、これらが所定のモル比率で存在する。
【0017】
前記V化合物は、LiMO2粒子の表面を被覆するか、またはLiMO2粒子の表面ないしは表面近傍に存在することが好ましい。
【0018】
また、前記V化合物は、LiとVの複合酸化物、特に、Li3VO4であることが好ましい。
【0019】
なお、元素Mに対するVの原子比率は、0.1〜2%であることが望ましい。
【0020】
一方、本発明による非水系電解質用正極活物質は、Mの化合物にVの化合物を予め添加し、その後にLi化合物と混合して、熱処理することにより製造される。
【0021】
また、LiMO2で表される複合酸化物に、Vの化合物を加熱融解したもの、またはV化合物を溶媒に溶解したものを含浸させることで製造することができる。
【0022】
さらに、LiMO2で表される複合酸化物と、Vの化合物を加熱融解したもの、またはVの化合物を溶媒に溶解したものとを混合し、熱処理することにより製造することができる。
【0023】
なお、LiMO2で表される複合酸化物のMの組成は、Ni単独でも構わないが、合成の容易さ、より高いサイクル特性、さらに熱安定性を実現するために、Niの一部を他の元素で置換した方がよい。例えば、原子比でNiの10%以上をCoで置換すると、完全な結晶構造を実現するための合成が容易になり、サイクル特性が改善される。ただし、あまり多く置換すると、初期容量が低下してしまうため、置換量は10〜20%程度であることが好ましい。また、活物質自身の分解反応を抑えるために、Niの一部をAlで置換することも効果がある。ただし、これもあまり多く置換すると初期容量が低下してしまうため、初期容量をあまり低下させずに分解反応を抑制する置換量としては3〜10%程度であることが好ましい。
【0024】
【発明の実施の形態】
リチウムニッケル複合酸化物は、電池活物質として考えた場合、Liの脱離および挿入によって、充放電が行われる。200mAh/g程度の満充電状態は、リチウムニッケル複合酸化物から約7割のLiが脱離した状態である。すなわち、Li0.3NiO2となっているわけであるが、このとき、Niはその一部が3価および4価となっている。4価のNiは非常に不安定で、高温にすると容易に酸素を放出して2価(NiO)となりやすい。上述したように、リチウムニッケル複合酸化物が熱安定性に劣る理由としては、この酸素放出分解温度がリチウムコバルト複合酸化物と比較して低く、このとき放出された酸素が電解液と反応して燃焼反応が起こることや、Ni自体が触媒となって電解液の分解反応を促進することなどが原因と考えられている。
【0025】
これらの挙動は、充電状態にある正極材料を電解液の存在下で示差走査熱量測定を行い、その発熱量を見ることで評価できる。この方法で、正極材料の熱安定性に関し、本発明者等が種々研究を進めた結果、V含有化合物を添加することによって、高温熱安定性に優れた非水系電解質二次電池用正極活物質が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0026】
その理由はまだ明らかにはなっていないが、V含有化合物が、LiMO2の表面を被覆しているか、LiMO2粒子の表面に微細粒子として存在するか、あるいはLiMO2粒子の表面近傍に微細粒子として存在することによって、酸素と電解液との反応を抑える効果や、触媒能を抑え電解液の分解反応を抑える効果があるためと考えられる。この時、VはLiMO2のM原子を置換しない。
【0027】
V含有化合物の添加に関しては、わずかな量の添加で効果が出始め、その量を増やしていくと徐々に効果が増大していくが、ある程度以上の添加では、その質量分だけ質量当たりの容量が減少するだけで、安全性に対する効果はほとんど変化しないことが見出されている。本発明者らが研究を深めた結果、Mに対するVのモル比が0.1%以上で効果があり、2%以上では質量当たりの初期容量の低下が大きくなるため望ましくないことを見いだした。
【0028】
また、リチウムニッケル複合酸化物に含まれるV含有化合物は、LiとVの複合酸化物であり、安定しているLi3VO4となっていることが好ましい。
【0029】
V化合物の添加は、必ずしも原料に添加しておく必要があるわけではない。すでに合成したリチウムニッケル複合酸化物に、後から添加しても効果がある。
【0030】
Liと遷移金属の複合酸化物に含むNiの原料となるニッケル化合物としては、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケルなどを用い、同時に含ませる元素の原料は、Niの場合と同様の金属塩を用いることができる。また、リチウム化合物としては、炭酸リチウムや水酸化リチウム、水酸化リチウム一水和物、硝酸リチウム、過酸化リチウムなどを用いることができる。
【0031】
本発明により、V含有化合物を含有したリチウムニッケル複合酸化物を、リチウムイオン二次電池の正極活物質として用いた場合、電池の初期容量を大きく低下させることなく、高温熱安定性を向上させ、かつ、製造安定性も確保することができる。
【0032】
以下、本発明の一実施の形態を好適な図面に基づいて詳述する。
【0033】
【実施例】
(実施例1)
Vを添加したLiNi0.83Co0.14Al0.03O2は、以下のように合成した。
【0034】
NiとCoとAlのモル比が83:14:3で固溶した複合水酸化物を用意し、五酸化Vを溶解した30%アンモニア水溶液に、VとNi+Co+Alのモル比が0.005:1.00となるように、この複合水酸化物を投入し、加熱攪拌して、乾燥した。市販の水酸化リチウム一水和物とこの乾燥物を、LiとNi+Co+Alのモル比が1.045:1.000となるように秤量し、十分に混合した。この混合粉末を、酸素流量3000cm3/minの気流中で350℃で2時間仮焼した後、750℃で20時間焼成し、室温まで炉冷して、活物質を得た。
【0035】
得られた活物質を、CuのKα線を用いた粉末X線回折で分析したところ、六方晶で帰属できるリチウムニッケル複合酸化物の他に、Li3VO4のピークもわずかに確認できた。
【0036】
得られた活物質を用いて、以下のように、図1に示した2032型コイン電池を作製し、充放電容量を測定した。
【0037】
活物質粉末87質量%に、アセチレンブラック5質量%およびPVDF(ポリ沸化ビニリデン)8質量%を混合し、NMP(n−メチルピロリドン)を加えペースト化した。これを、20μm厚のアルミニウム箔に、乾燥後の活物質質量が0.025g/cm2になるように塗布し、120℃で真空乾燥を行い、1cmφの円板状に打ち抜いて正極3とした。
【0038】
負極1としてリチウム金属を、電解液には1MのLiClO4を支持塩とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合溶液を用いた。ポリエチレンからなるセパレータ2に電解液を染み込ませ、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス中で、2032型のコイン電池を作製した。
【0039】
作製した電池は24時間程度放置し、OCVが安定した後、正極に対する電流密度を0.5mA/cm2とし、カットオフ電圧4.3−3.0Vで充放電試験を行った。得られた1サイクル目の単位質量当たりの放電容量(初期容量)を表1に示す。
【0040】
また、同様な方法でもう一つ電池を作成し、正極に対する質量当たりの電流密度を6mA/gとして、196mAh/gまで充電した。充電終了後、この電池を分解して正極材料を取り出し、この正極材料2.4mgに対して電解液として、1MのLiClO4を支持塩とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合溶液2.0mgを加えて、アルミニウム製の密閉容器に封入し、示差走査熱量測定を行った。その結果を図2に示す。
【0041】
(実施例2)
実施例1と同様に、複合水酸化物を用意し、五酸化バナジウムを溶解した30%アンモニア水溶液に、VとNi+Co+Alのモル比が0.005:1.00となるように複合水酸化物を投入し、加熱攪拌して、乾燥した。市販の水酸化リチウム一水和物とこの乾燥物を、LiとNi+Co+Alのモル比が1.060:1.000となるように秤量し、十分に混合した。後の方法は、実施例1とまったく同様にして活物質を得た。
【0042】
得られた活物質を、CuのKα線を用いた粉末X線回折で分析したところ、六方晶で帰属できるリチウムニッケル複合酸化物の他に、Li3VO4のピークもわずかに確認できた。
【0043】
初期容量の測定、および示差走査熱量測定は、実施例1と同様な方法で行った。
【0044】
結果を表1と図2に示す。
【0045】
(実施例3)
実施例1と同様に、複合水酸化物を用意し、五酸化バナジウムを溶解した30%アンモニア水溶液に、VとNi+Co+Alのモル比が0.01:1.00となるように複合水酸化物を投入し、加熱攪拌して、乾燥した。市販の水酸化リチウム一水和物とこの乾燥物を、LiとNi+Co+Alのモル比が1.060:1.000となるように秤量し、十分に混合した。後の方法は、実施例1とまったく同様にして活物質を得た。
【0046】
得られた活物質を、CuのKα線を用いた粉末X線回折で分析したところ、六方晶で帰属できるリチウムニッケル複合酸化物の他に、Li3VO4のピークもわずかに確認できた。
【0047】
初期容量の測定、および示差走査熱量測定は、実施例1と同様な方法で行った。
【0048】
結果を表1と図2に示す。
【0049】
(実施例4)
実施例1と同様に、複合水酸化物を用意し、五酸化バナジウムを溶解した30%アンモニア水溶液に、VとNi+Co+Alのモル比が0.02:1.00となるように複合水酸化物を投入し、加熱攪拌して、乾燥した。市販の水酸化リチウム一水和物とこの乾燥物を、LiとNi+Co+Alのモル比が1.090:1.000となるように秤量し、十分に混合した。後の方法は実施例1とまったく同様にして活物質を得た。
【0050】
得られた活物質を、CuのKα線を用いた粉末X線回折で分析したところ、六方晶で帰属できるリチウムニッケル複合酸化物の他に、Li3VO4のピークもわずかに確認できた。
【0051】
初期容量の測定、および示差走査熱量測定は、実施例1と同様な方法で行った。
【0052】
結果を表1と図2に示す。
【0053】
(実施例5)
LiNi0.83Co0.14Al0.03O2を、以下のように合成した。
【0054】
市販の水酸化リチウム一水和物と、NiとCoとAlのモル比が83:14:3で固溶した複合水酸化物を用意した。LiとNi+Co+Alのモル比が1.03:1.00となるように秤量し、十分に混合した。この混合粉末を、酸素流量3000cm3/minの気流中で350℃で2時間仮焼した後、750℃で20時間焼成し、室温まで炉冷して活物質を得た。
【0055】
活物質へのVの添加は以下のように行った。市販の水酸化リチウム一水和物を純水に溶解し、これにLiとVのモル比が3:1になるように五酸化バナジウムを投入し、溶解した。この水溶液に、VとNi+Co+Alのモル比が0.010:1.00となるように活物質を投入し、加熱攪拌して、乾燥した。
【0056】
得られた活物質を、CuのKα線を用いた粉末X線回折で分析したところ、方晶で帰属できるリチウムニッケル複合酸化物の他に、Li3VO4のピークもわずかに確認できた。
【0057】
初期容量の測定、および示差走査熱量測定は実施例1と同様な方法で行った。結果を表1と図2に示す。
【0058】
(実施例6)
LiNi0.83Co0.14Al0.03O2を、以下のように合成した。市販の水酸化リチウム一水和物と、NiとCoとAlのモル比が83:14:3で固溶した複合水酸化物を用意した。LiとNi+Co+Alのモル比が1.03:1.00となるように秤量し、十分に混合した。この混合粉末を、酸素流量3000cm3/minの気流中で350℃で2時間仮焼した後、750℃で20時間焼成し、室温まで炉冷してLiNi0.83Co0.14Al0.03O2を得た。
【0059】
LiNi0.83Co0.14Al0.03O2へのVの添加は以下のように行った。市販の水酸化リチウム一水和物を純水に溶解し、これにLiとVのモル比が3:1になるように五酸化バナジウムを投入し、溶解した。この水溶液に、VとNi+Co+Alのモル比が0.010:1.00となるように活物質を投入し、加熱攪拌して、乾燥した。この乾燥物を、酸素流量3000cm3/minの気流中で750℃で20時間焼成し、室温まで炉冷して、活物質を得た。
【0060】
得られた活物質を、CuのKα線を用いた粉末X線回折で分析したところ、六方晶で帰属できるリチウムニッケル複合酸化物の他に、Li3VO4のピークもわずかに確認できた。
【0061】
初期容量の測定、および示差走査熱量測定は、実施例1と同様な方法で行った。
【0062】
結果を表1と図2に示す。
【0063】
(実施例7)
活物質を、以下のように合成した。市販の水酸化リチウム一水和物と、NiとCoとAlのモル比が83:14:3で固溶した複合水酸化物と市販の五酸化バナジウムを用意した。LiとNi+Co+AlとVのモル比が1.03:1.00:0.01となるように秤量し、十分に混合した。この混合粉末を、酸素流量3000cm3/minの気流中で350℃で2時間仮焼した後、750℃で20時間焼成し、室温まで炉冷して活物質を得た。
【0064】
得られた活物質を、CuのKα線を用いた粉末X線回折で分析したところ、六方晶で帰属できるリチウムニッケル複合酸化物の他に、Li3VO4のピークもわずかに確認できた。
【0065】
初期容量の測定、および示差走査熱量測定は、実施例1と同様な方法で行った。
【0066】
結果を表1と図2に示す。
【0067】
(比較例1)
LiNi0.83Co0.14Al0.03O2を、以下のように合成した。市販の水酸化リチウム一水和物と、NiとCoとAlのモル比が83:14:3で固溶した複合水酸化物を用意した。LiとNi+Co+Alのモル比が1.03:1.00となるように秤量し、十分に混合した。この混合粉末を、酸素流量3000cm3/minの気流中で350℃で2時間仮焼した後、750℃で20時間焼成し、室温まで炉冷して正極活物質を得た。
【0068】
得られた正極活物質を、CuのKα線を用いた粉末X線回折で分析したところ、六方晶で帰属できるリチウムニッケル複合酸化物のみが確認できた。
【0069】
初期容量の測定、および示差走査熱量測定は、実施例1と同様な方法で行った。
【0070】
結果を表1と図2に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
表1から、実施例1〜7の電池の初期容量は、比較例1の電池と比較して、Vの添加量に応じてわずかに初期容量が減少しているものの、2原子%までの添加では、実用上まったく問題ない程度の減少に抑えられていることがわかる。
【0073】
また、図2の示差走査熱量測定により、実施例1〜7の正極材料は比較例1の正極材料に見られるような急激な発熱が緩和され、比較的マイルドな反応となっており、いずれも熱安定性の改善に大きな効果があることがわかる。
【0074】
【発明の効果】
本発明により、電池として高い初期容量を大きく損なうことなく、熱安定性を向上させることが可能な二次電池を提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 コイン電池の断面を示す斜視図である。
【図2】 示差走査熱量測定の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 リチウム金属負極
2 セパレータ(電解液含浸)
3 正極(評価用電極)
4 ガスケット
5 負極缶
6 正極缶
Claims (6)
- LiMO2(Mは、Ni、またはNiおよびその他1種以上の遷移金属元素)にV化合物を含有させたリチウムニッケル複合酸化物からなり、前記V化合物が、LiとVの複合酸化物であり、かつ、該V化合物がLiMO 2 粒子の表面を被膜している、または、該V化合物がLiMO 2 粒子の表面ないし表面近傍に存在している、ことを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質。
- 前記V化合物が、Li3VO4である請求項1に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質。
- 元素Mに対するVの原子比率が0.1〜2%である請求項1または2に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質。
- M化合物にV化合物を予め添加し、その後にLi化合物と混合して、熱処理することにより、請求項1〜3のいずれかに記載の非水系電解質二次電池用正極活物質を製造する方法。
- LiMO2で表される複合酸化物に、V化合物を加熱融解したもの、または、V化合物を溶媒に溶解したものを含浸させることにより、請求項1〜3のいずれかに記載の非水系電解質二次電池用正極活物質を製造する方法。
- LiMO2で表される複合酸化物と、V化合物を加熱融解したもの、または、V化合物を溶媒に溶解したものとを混合し、熱処理することにより、請求項1〜3のいずれかに記載の非水系電解質二次電池用正極活物質を製造する方法。
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