JP2008130287A - 非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法および非水電解質二次電池 - Google Patents

非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法および非水電解質二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】高エネルギー密度を有し、かつ長寿命特性に優れた非水電解質二次電池を提供するための正極活物質の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)ニッケル複合酸化物またはニッケル複合水酸化物と、(B)酸化アルミニウム,水酸化アルミニウム,酸化コバルト及び水酸化コバルトからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物と、(C)水酸化リチウムと、を乾式混合する混合工程と、前記混合工程で得られた混合物を酸素の存在下で焼成する焼成工程とを有し、前記ニッケル複合酸化物またはニッケル複合水酸化物(A)が、ニッケルの無機酸塩と、コバルト,アルミニウム,マンガン、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素の無機酸塩とを溶解した水溶液を中和することにより得られる共沈殿物、または、前記共沈殿物の焼成物である非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法による。
【選択図】図1

Description

本発明は非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法に関し、特に高容量、高出力で寿命特性に優れたリチウムイオン二次電池用の正極活物質の製造方法に関する。また、該製造方法により得られた正極活物質を用いた非水電解質二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は高い作動電圧と高エネルギー密度が要求される携帯電話やノート型パソコン、ビデオカムコーダーなどのポータブル電子機器の駆動用電源として実用化されている。これらは、小型の二次電池をリードする電池として生産量が急増している。
近年、リチウムイオン二次電池は、上記のような小型民生用途だけでなく、極めて高い出力が求められる用途、具体的には、電力貯蔵用や電気自動車用などの大容量の大型電池への実用化が進められている。また、瞬間的に高出力が求められる電動工具の駆動用電源等に用いられるニカド電池やニッケル水素電池等に代わる、高出力の二次電池としても期待されている。
高出力が求められる二次電池の用途の中でも、とくに、電気自動車(EV)用リチウムイオン二次電池やハイブリッド電気自動車(HEV)用リチウムイオン二次電池の開発が近年、急速に進められている。
HEV用二次電池等には、小型民生用途には要求されない、限られた容量で瞬時にエンジンのパワーアシスト又は回生を行うことができるような、高レベルの高出入力特性が求められる。また、HEV用二次電池等には、高出入力特性に加えて、高レベルの寿命特性、具体的には、10〜15年以上のカレンダー寿命が求められる。この寿命は、小型民生用途である、例えば携帯電話の要求寿命である2〜3年に比べて格段に長い。従って、HEV用二次電池等の開発のハードルは高く、寿命特性を向上するために、正極材料、負極材料、及び電解液等の電池を構成する各要素それぞれの改良が進められている。
従来、小型民生用二次電池など比較的小型のリチウムイオン二次電池には、その正極活物質としてコバルト酸リチウム等が用いられていた。しかしながら、HEV用二次電池等に用いられる比較的大型のリチウムイオン二次電池の正極活物質としては、コバルトの埋蔵量やコストの観点から、ニッケル系酸化物、マンガン系酸化物を使用することが検討されている。
ニッケル系酸化物の一つであるニッケル酸リチウムを正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高いために高容量特性に優れており、また、高出力特性にも優れているために、コバルト酸リチウム等に代わる正極活物質として、古くから検討が進められている。しかしながらこのようなリチウムイオン二次電池は、高容量特性には優れているものの、充放電サイクルや長期保存により、高容量特性及び高出力特性が経時的に低下するという、寿命特性が不充分であるという問題があった。
ニッケル酸リチウムを正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池の寿命特性を向上させる技術として、以下の特許文献1には、充電時のリチウムイオンをデインターカレートした正極活物質の結晶構造の安定化を図るために、ニッケル(Ni)元素の一部を他の遷移元素、例えばコバルト(Co),アルミニウム(Al),マンガン(Mn),チタン(Ti),鉄(Fe)などで置換した固溶したLiNiMO(Mは金属原子)を用いることが開示されている。具体的には、CoおよびAlを固溶した3元系のLiNiCoAl(0.70≦x<0.85、0.05≦y≦0.20、0.10<z≦0.25)が記載されている。そして、Ni,Co,Alを固溶される方法としては、混合塩の水溶液を中和することで共沈物を得る共沈法と呼ばれる方法が開示されている。前記共沈物を焼成して得られるLiNiCoAlを正極活物質に用いた場合には、y及びzの値を共に大きくすることにより内部抵抗が低下して寿命特性が向上する。
さらに、以下の特許文献2には、LiNi1−b(0.98≦a≦1.1、0.03≦b≦0.7、AはCo、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Yからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属)と、金属アルミニウムと、水とを反応させ、活物質表面に炭酸リチウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウムを含む層を担持させることが提案されている。LiNi1−bを金属アルミニウム及び水と反応させて、活物質表面にアルミニウム由来の層を担時させることにより、充放電サイクルを繰り返したり、高温環境において保存したりする場合に生じる、電池の内部抵抗の増加を抑制し、従って寿命特性の低下もある程度は抑制することができる。
特開平11−60244号公報 特開2005−322616号公報
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法により得られるリチウムイオン二次電池は、CoやAlの含有比率を高めることにより、エネルギー密度が低くなり、リチウムイオン二次電池の特長である高容量特性が得られなくなるという問題があった。
また、特許文献2に記載の製造方法により得られるリチウムイオン二次電池においては、ニッケル酸リチウムが水分に溶解しやすいために、製造時に水と反応させた場合には、製造時に用いた水分が使用時にまで残存し、正極活物質内のリチウムが水に溶解して、容量密度が低下するという問題があった。
本発明は、上記のような問題点を解決するものであり、高エネルギー密度を有し、かつ長寿命特性に優れた非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、ニッケル酸リチウムを正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池の高出力特性が経時的に低下する原因が、正極活物質の粒子表面が変質して内部抵抗が増加することであることを突き止めた。詳しくは、リチウムがデインターカレートしたリチウムイオン二次電池の充電状態のニッケル酸リチウムにおいては、ニッケル元素が4価に近づいて結晶構造が不安定となり、そのために、上記粒子表面の近傍においては、4価のニッケル元素が、3価、さらには2価の安定な構造へ移行しようとする。そして、酸化ニッケル(NiO)等からなる絶縁性の被膜が形成されて、電池の内部抵抗が高くなると考えた。従来技術のニッケル酸リチウムに、コバルト,アルミニウム,マンガン等を単に固溶させることにより、ニッケル元素の一部を前記金属元素で置換して得られる正極活物質を用いた場合には、比較的多量の金属元素を固溶させなければ酸化ニッケル(NiO)等の絶縁性の被膜の発生を充分に抑制することができなかった。この場合には、容量密度が極端に低下する。
本発明者らは、酸化ニッケル(NiO)等の絶縁性の被膜の発生を充分に抑制するためには、粒子全体にコバルト、アルミニウム等を均質に固溶させる必要はなく、粒子表面の近傍にコバルト、アルミニウム等を偏在させることにより、容量密度を極端に低下させることなく、絶縁性の被膜の発生を充分に抑制することができると考え、本発明に想到した。
すなわち、本発明の非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法は、(A)ニッケル複合酸化物またはニッケル複合水酸化物と、(B)酸化アルミニウム,水酸化アルミニウム,酸化コバルト及び水酸化コバルトからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物と、(C)水酸化リチウムと、を乾式混合する混合工程と、前記混合工程で得られた混合物を酸素の存在下で焼成する焼成工程とを有し、前記ニッケル複合酸化物またはニッケル複合水酸化物(A)が、ニッケルの無機酸塩と、コバルト,アルミニウム,マンガン,及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素の無機酸塩とを溶解した水溶液を中和することにより得られる共沈殿物、または、前記共沈殿物の焼成物である製造方法である。上記製造方法によれば、ニッケル複合酸化物等(A)中のニッケル元素の一部は、アルミニウムまたはコバルトと置換して固溶する。しかしながら、ニッケル複合酸化物等(A)中には予め、コバルトやアルミニウム等が固溶されているために、焼成工程の固相反応においては固溶が進みにくくなる。そのために、酸化アルミニウム,水酸化アルミニウム,酸化コバルト,水酸化コバルト等の一部分は固溶するが、残りの部分はアルミニウムやコバルトの酸化物の状態でニッケル複合酸化物等(A)の粒子の表面に偏在させることができる。これにより、絶縁性の被膜の発生を充分に抑制することができるために、容量密度を極端に大きく低下させずに、長寿命化を図ることができる。
また、前記ニッケル複合酸化物等(A)としては、一般式:
Ni1−(x+y)CoAlO・・・(1)
で表されるニッケル複合酸化物、または、
Ni1−(x+y)CoAl(OH)・・・(2)
で表されるニッケル複合水酸化物であることが好ましい(ただし、式(1)及び(2)中、0.1≦x≦0.3、0.03≦y≦0.2である)。
また、前記ニッケル複合酸化物またはニッケル複合水酸化物(A)の平均粒径が、5〜20μmであり、前記金属化合物(B)の粉体の平均粒径が、5〜20μmであることが好ましい。
また、前記焼成工程は、酸素雰囲気又は乾燥空気雰囲気下において750〜850℃で焼成する工程であることが好ましい。
また、本発明の非水電解質二次電池は、上記非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法により得られた正極活物質を含む正極と、リチウム金属、リチウム合金またはリチウムイオンを吸蔵および放出することができる材料のいずれか1つを含む負極と、非水溶媒にリチウム塩を溶解させた電解液とを有する非水電解質二次電池である。このような二次電池は、高容量特性及び高出力特性に優れ、且つ、長寿命な二次電池である。
本発明の製造方法により得られる正極活物質を用いることにより、高容量特性及び高出力特性に優れ、且つ、長寿命な非水電解質二次電池を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法は、(A)コバルト,アルミニウム,マンガン,及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含有する、ニッケル複合酸化物またはニッケル複合水酸化物と、(B)酸化アルミニウム,水酸化アルミニウム,酸化コバルト及び水酸化コバルトからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物と、(C)水酸化リチウムと、を乾式混合する混合工程と、前記混合工程で得られた混合物を酸素の存在下で焼成する焼成工程とを有する。
本発明における、ニッケル複合酸化物等(A)は、ニッケルの無機酸塩と、コバルト,アルミニウム,マンガン,及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素の無機酸塩とを溶解した水溶液を中和することにより得られる共沈殿物、または、前記共沈殿物の焼成物である。
ニッケル複合酸化物等(A)の製造方法について詳しく説明する。
コバルト,アルミニウム,マンガン,及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素の無機酸塩は、前記各金属元素の硫酸塩,硝酸塩,シュウ酸塩等、具体的には、例えば、硫酸コバルト,塩化コバルト,硝酸コバルト等のコバルト無機酸塩、硫酸アルミニウム,硝酸アルミニウム等のアルミニウム無機酸塩、硫酸マンガン,硝酸マンガン等のマンガン無機酸塩、硫酸鉄,硝酸鉄等の鉄無機酸塩等が挙げられる。
また、ニッケルの無機酸塩としては、硫酸ニッケル,塩化ニッケル、硝酸ニッケル等が挙げられる。
ニッケル複合酸化物等(A)は、ニッケルの無機酸塩と、コバルト,アルミニウム,マンガン、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素の無機酸塩とを溶解した水溶液を中和することにより得られる共沈殿物にアルカリ水溶液を徐々に滴下することにより生じる共沈殿物、または、前記共沈殿物の焼成物である。このとき添加する、ニッケルの無機酸塩と、コバルト,アルミニウム,マンガン、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素の無機酸塩との比率により、ニッケル複合酸化物等(A)中のニッケルと、コバルト,アルミニウム,マンガン,鉄の含有比率を調整することができる。
前記水溶液を撹拌しながら、アルカリ水溶液を徐々に滴下して中和することにより共沈殿物が得られる。
前記アルカリ水溶液としては、共沈殿物を生成させるものであれば特に限定されない。具体的には、例えば、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム等が挙げられる。
なお、アルカリ水溶液の滴下において、滴下速度,撹拌速度,反応温度等を制御することにより生成する共沈殿物の一次粒子径、二次粒子径を制御することができる。
このようにして、生成する共沈殿物は、ニッケルと、コバルト,アルミニウム,マンガン、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素Mとが固溶した、
NiMα(OH)(Mは、Co,Al,Mn,Feで表される金属元素であり、
0.1≦α≦0.5である)で表されるニッケル複合水酸化物である。
そして、得られたニッケル複合水酸化物を濾過手段等により分離したのち、乾燥することにより、共沈殿物の粉末が得られる。
得られた共沈殿物は、その結晶性を高めるために、600〜1000℃で熱処理されることが好ましい。熱処理することにより、ニッケル複合水酸化物はニッケル複合酸化物になる。
このようにして得られたニッケル複合酸化物等(A)においては、コバルトの含有割合が10モル%以上の場合には、充放電時の結晶相の変化を抑制して、結晶構造の安定化を図ることができる点から好ましい。また、コバルトの固溶限界はないが、30モル%までは固溶量に応じて寿命特性が向上する点から30モル%までは含有してもよい。しかしながら、コバルトの固溶量が多すぎる場合には、容量密度の低下量が大きくなる傾向があるために、その固溶量は10モル%〜20モル%であることが好ましい。
また、アルミニウム,マンガン,又は鉄の含有割合は、その合計が3〜10モル%であることが、寿命性能を充分に向上させる点から好ましい。特に、アルミニウムの固溶限界は約20モル%であるが、アルミニウムの固溶量が多すぎる場合には、容量密度の低下量が大きくなる傾向があるために、その固溶量は3モル%〜5モル%であることが好ましい。
上記のようなニッケル複合酸化物等(A)の中では、下記一般式:
Ni1−(x+y)CoAlO・・・(1)
で表されるニッケル複合酸化物、または、
Ni1−(x+y)CoAl(OH)・・・(2)
で表されるニッケル複合水酸化物であることが好ましい(ただし、式(1)及び(2)中、0.1≦x≦0.3、0.03≦y≦0.2である)。
以上説明したニッケル複合酸化物(A)は、異種元素が液相反応で固溶されているために、各金属元素が原子レベルで固溶されている。従って、反応完成度は高く、また、各成分の固溶割合も幅広い範囲で制御できる。なお、ニッケル複合酸化物等を得る方法としては、水酸化ニッケル、水酸化アルミニウム、水酸化コバルト等の固溶すべき金属水酸化物あるいは金属酸化物を乾式で混合して、酸化雰囲気下において焼成する方法もある。しかしながらこのような方法によれば、固相反応で固溶が進行するために、前記方法に比べて、反応完成度は劣り、また、固溶元素の種類や量が多い場合には固溶せずに酸化物の状態等で混在して単一相の酸化物を得ることが困難である。
そして、上記のようにして得られた、ニッケル複合酸化物等(A)と、酸化アルミニウム,水酸化アルミニウム,酸化コバルト及び水酸化コバルトからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物(B)と、水酸化リチウム(C)とを乾式混合し、乾式混合して得られた混合物を酸素の存在下で焼成することにより非水電解質二次電池用正極活物質である、リチウムニッケル複合酸化物が得られる。
上記方法により得られる正極活物質は、予め、コバルト,アルミニウム等の金属元素が液相において充分に固溶されて結晶構造が安定化したニッケル複合酸化物(A)の粒子上に、酸化アルミニウムや酸化コバルト等が被着されているために、粒子表面近傍のニッケル元素が変質しにくくなる。そのために、絶縁性の被膜の生成を抑制するために、優れた寿命特性が得られる。また、被着した酸化アルミニウムや酸化コバルトは固溶していないので活物質の容量密度を極端に低下させることもない。さらに、水相工程リチウムを添加していないので、使用時にリチウムが水に溶解することによる、容量の低下という問題も生じない。
上記乾式混合工程における、少なくとも1種の金属化合物(B)の混合割合は特に限定はされないが、ニッケル複合酸化物等(A)に対して、1モル%〜5モル%であることが好ましい。1モル%未満では目的とする効果が充分に発揮されず、5モル%を越えると充放電の際に正極活物質の容量変化が大きくなる点から好ましくない。
また、上記乾式混合工程における、水酸化リチウム(C)の混合割合は、ニッケル複合酸化物等(A)のニッケルおよび固溶されるその他の金属の原子数の和に対して、1.00〜1.08のリチウム原子比の範囲にあることが好ましい。その比率が1.00未満の場合にはリチウムニッケル複合酸化物の反応完成度が低く未反応酸化物の生成による容量低下、出力低下が起こる傾向があり、1.08を超える場合には未反応のリチウム化合物が存在し、強アルカリ性を呈することから正極合剤調製中にペーストがゲル化するなどの傾向がある。
なお、上記乾式混合においては、平均粒径5μm〜20μmニッケル複合酸化物(A)の粉体と、平均粒径5μm〜20μmの水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化コバルト及び水酸化コバルトからなる群から選ばれる少なくとも1種を乾式混合した後に水酸化リチウムを加えて焼成することが好ましい。これらそれぞれの平均粒子径が5μm未満では得られるニッケル酸リチウムのタップ密度が小さくなり比表面積が大きくなる傾向にあり、電極充填性が低下し容量減になることや電解液との副反応を加速するなどの影響があり好ましくない。逆に20μmを越える場合は、粉体粒子間の固相反応の進行が阻害され目的とする活物質の生成が困難となる。また薄型長尺の電極を作製する上で均一な電極合剤厚みを確保することが難しくなり好ましくない。
上記焼成条件としては、酸素雰囲気あるいは乾燥空気雰囲気下において750℃以上850℃以下の焼成を行なうことが好ましい。水酸化ニッケルあるいは酸化ニッケルをリチウム源である水酸化リチウムと混合し焼成によりニッケル酸リチウムを得るためには酸素の供給が必要であり、酸素雰囲気あるいは空気雰囲気での焼成が必須である。また水分に敏感に反応するために水分を充分に除去した乾燥空気雰囲気が求められる。焼成温度範囲としては750℃以上850℃以下であることが重要であり、更に好ましくは775℃〜825℃である。750℃未満では反応完成度が低くニッケル酸リチウムの結晶性が低く、異種元素を固溶および表面被覆した効果が充分に得られず長寿命化には充分寄与できない。一方、850℃を越えた場合はLi元素がNiサイトの一部に置換するディスオーダー構造に移行することになり、Liイオンの移動度は低下し出力性能が低下する。また容量密度も低下することになり好ましくない。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
[実施例1]
(電池Aの製造)
硫酸ニッケル飽和水溶液に、硫酸コバルトおよび硫酸アルミニウムを加えて溶解して水溶液を調製した。硫酸コバルトは、コバルト比率がニッケルに対し15モル%になるように添加した。また、硫酸アルミニウムは、アルミニウム比率がニッケルに対し5モル%になるように添加した。前記水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を、充分に攪拌しながら徐々に滴下して中和することにより、コバルトおよびアルミニウムを固溶状態で含有するニッケル複合水酸化物である、Ni0.8Co0.15Al0.05(OH)を共沈殿させた。この沈殿物をろ過、水洗して、80℃で乾燥することにより、平均粒径約10μmのNi0.8Co0.15Al0.05(OH)の粉末が得られた。
得られたNi0.8Co0.15Al0.05(OH)をアルミナ製の容器に入れ、大気中900℃で10時間の熱処理を行うことにより、コバルトおよびアルミニウムを固溶状態で含有するニッケル複合酸化物Ni0.8Co0.15Al0.05Oを得た。
前記ニッケル複合酸化物Ni0.8Co0.15Al0.05Oは粉末X線回折により、CoおよびAlが固溶している六方晶層状構造に帰属する回折パターンが観察され、単一相であることを確認した。
次に、得られたNi0.8Co0.15Al0.05Oの粉末に、Ni,Co,Alの原子数の和とLiの原子数との比が1対1.05になるように、平均粒径約8μmの水酸化リチウム1水和物を加え、更に平均粒径約8μmの水酸化コバルト及び水酸化アルミニウムの粉末をNi、Co、Alの原子数の和に対してそれぞれ1対0.03になるように加えて充分に混合した。そして、この混合物をアルミナ製の容器に入れて酸素雰囲気中800℃で10時間の熱処理を行うことにより、リチウムニッケル複合酸化物Aが得られた。
得られたリチウムニッケル複合酸化物Aの粉末X線回折には、CoおよびAlが固溶している六方晶層状構造に帰属する回折パターンと、酸化コバルトおよび酸化アルミニウムに帰属する回折ピークが観察された。この粉末X線回折の結果は、共沈殿により固溶したCoおよびAlは全て固溶体として存在し、また、粉末状態で加えた水酸化コバルトおよび水酸化アルミニウムは、一部分は固溶して、一部は固溶せずに酸化コバルトおよび酸化アルミニウムとして存在していることを示す。酸化コバルトおよび酸化アルミニウムは、粒子表面に付着、又は、被覆する形態で存在していると思われる。
リチウムニッケル複合酸化物Aを粉砕した後、分級して正極活物質粉末を得た。得られた正極活物質粉末は、平均粒径9.5μm、BET法による比表面積は0.5m/gであった。
このようにして得られた正極活物質粉末を用いて、以下のようにして正極板を作製した。
得られた正極活物質粉末100質量部に導電材であるアセチレンブラック(電気化学工業(株)製デンカブラック)5質量部を加えて混合した。そして、この混合物を、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)(呉羽化学工業(株)製)を溶解したN−メチルピロリドン(NMP)(三菱化学(株)製)の溶液に添加、混練してペースト状にした。なお、正極活物質粉末100質量部に対してPVdF5質量部のなるように調製した。そして、得られたペーストをアルミニウム箔の両面に塗工し、乾燥した後、圧延して厚み0.075mm、合剤幅100mm、長さ3400mmの正極板とした。このとき、正極合剤層の両面の合計厚みは55μmであった。
負極板は以下のようにして製造した。正極板の作製と同様にして、黒鉛粉末100質量部とPVdFのNMP溶液とを混練してペースト状にした。加えたPVdFの量は黒鉛粉末100質量部に対して8質量部となるように調製した。なお、黒鉛粉末としては市販の日立化成(株)製のMAG10(平均粒径:約10μm、比表面積:2.5m/g)を用いた。そして、このペーストを銅箔の両面に塗工して、乾燥した後、圧延して厚み0.078mm、合剤幅105mm、長さ3510mmの負極板とした。このとき、負極合剤層の両面の合計厚みは68μmであった。
上記得られた正極板及び負極板を厚み0.020mm、幅108mmのポリエチレン製の微多孔膜からなるセパレータを介して渦巻状に捲回し、円筒形の極板群を構成した。そして、この極板群を直径32mm、高さ120mmの電池ケースに収納した。
電解液を、極板群を収容した電池ケースに、所定量注液した後、電池の開口部を、封口板を用いて封口し、電池を完成した。なお、この電池は、満充電状態における負極の容量密度が約320Ah/kgとなるように設計したものである。
なお、上記電池においては、電解液としてエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを3:4:3の体積比で混合した溶媒に、電解質として1モル/lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を溶解したものを用いた。このようにして得られた電池を電池Aとする。
(電池Bの製造)
硫酸ニッケル飽和水溶液に、硫酸コバルトおよび硫酸マンガンを加え、水溶液を調製した。硫酸コバルトは、コバルト比率がニッケルに対し20モル%になるように添加した。また、硫酸マンガンは、マンガン比率がニッケルに対し5モル%になるように添加した。この水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を、充分に攪拌しながら徐々に滴下して中和することにより、コバルトおよびマンガンを固溶状態で含有するニッケル複合水酸化物である、Ni0.75Co0.2Mn0.05(OH)を共沈殿により生成させた。この沈殿物をろ過、水洗して、80℃で乾燥することにより、平均粒径約9μmのNi0.75Co0.2Mn0.05(OH)の粉末が得られた。
上記ニッケル複合水酸化物Ni0.75Co0.2Mn0.05(OH)の粉末X線回折には、CoおよびMnが固溶している六方晶層状構造に帰属する回折パターンが観察された。これにより、上記ニッケル複合水酸化物が単一相であることを確認した。
次に、得られたNi0.75Co0.2Mn0.05(OH)粉末に、Ni、Co、Mnの原子数の和とLiの原子数との比が1対1.05になるように平均粒径約8μmの水酸化リチウム1水和物を加え、更に平均粒子径約8μmの水酸化コバルト及び水酸化アルミニウムの粉末をNi、Co、Alの原子数の和に対してそれぞれ1対0.03になるように加えて充分に混合した。そして、この混合物をアルミナ製の容器に入れて乾燥空気雰囲気中825℃で10時間の熱処理を行うことにより、リチウムニッケル複合酸化物Bを得た。
得られたリチウムニッケル複合酸化物Bの粉末X線回折には、CoおよびMnが固溶している六方晶層状構造に帰属する回折パターンと、酸化コバルト,酸化アルミニウムに帰属する回折ピークとが観察された。この粉末X線回折の結果は、共沈殿により固溶したコバルトは全て固溶体として存在し、また、粉末状態で加えた水酸化コバルトおよび水酸化アルミニウムは一部は固溶して、一部は固溶せずに、酸化コバルトおよび酸化アルミニウムとして存在していることを示している。酸化コバルトおよび酸化アルミニウムは、粒子表面に付着、又は、被覆する形態で存在していると思われる。
前記リチウムニッケル複合酸化物Bを粉砕した後、分級して正極活物質粉末を得た。得られた正極活物質粉末は、平均粒径9μm、BET法による比表面積は0.6m/gであった。
そして、得られた正極活物質を用いて、電池Aの製造と同様にして電池を作製した。これを電池Bとする。
(比較電池Cの製造)
電池Aの製造において、共沈殿により得られたNi0.8Co0.15Al0.05O粉末に、Ni,Co,Alの原子数の和とLiの原子数との比が1対1.05になるように水酸化リチウム1水和物を加え、水酸化コバルトと水酸化アルミニウムを加えなかった以外は同様に酸素雰囲気中800℃で10時間の熱処理を行い、リチウムニッケル複合酸化物である、LiNi0.8Co0.15Al0.05を得た。
得られたLiNi0.8Co0.15Al0.05は粉末X線回折によりCoおよびAlが固溶している六方晶層状構造に帰属する単一相の回折パターンを示すことを確認した。平均粒径は約10μmであった。
そして、得られた正極活物質を用いて、電池Aの製造と同様にして電池を作製した。これを比較電池Cとする。
(比較電池Dの製造)
比較電池Cの製造で得られたリチウムニッケル複合酸化物LiNi0.8Co0.15Al0.051kgと平均粒径約20μmの金属アルミニウム粉末1.4gとを1Lのイオン交換水に入れて3時間撹拌により混合した。混合物はスラリー状となりアルカリ性を呈した。この混合物を濾過して得られた濾過物を80℃で10時間乾燥した。得られた正極活物質の粉末を電子線マイクロアナライザ(EPMA)で分析したところ、活物質表面にアルミニウム元素の存在が確認され、また、粉末X線回折から、水酸化アルミニウム及び酸化アルミニウムが被着していることが確認できた。このことは、金属アルミニウムが水溶液中で溶解して、水酸化物及び酸化物として活物質表面に被覆相を形成したことを示している。
そして、得られた正極活物質を用いて、電池Aの製造と同様にして電池を作製した。これを比較電池Dとする。
(比較電池Eの製造)
平均粒径約10μmである、水酸化ニッケル,水酸化コバルト,及び水酸化アルミニウムの粉末をNi:Co:Alの原子比が80:15:5の比になるように乾式で充分に混合した。そして、前記混合物のNi,Co,及びAlの原子数の和とLiの原子数との比が1対1.05になるように水酸化リチウム1水和物をさらに加えて、混合した。
そして、前記混合物をアルミナ製の容器に入れて、酸素雰囲気中800℃で10時間の熱処理を行うことにより、リチウムニッケル複合酸化物である、LiNi0.8Co0.15Al0.05を得た。
得られたリチウムニッケル複合酸化物の粉末X線回折から、CoおよびAlが固溶している六方晶層状構造に帰属する回折パターンに加えて、酸化アルミニウムに帰属可能な若干量のピークが観察され、完全な単一相でないことが確認された。得られたリチウムニッケル複合酸化物を粉砕及び分級することにより得られた正極活物質の平均粒径は約10μmであった。
そして、得られた正極活物質を用いて、電池Aの製造と同様にして電池を作製した。これを比較電池Eとする。
〈評価〉
電池A、電池B、比較電池C、比較電池D、及び比較電池Eのそれぞれを25℃の環境下、2.7Aの定電流で充電上限電圧4.1V、放電下限電圧2.5Vの条件下で充放電を3サイクル繰り返した。そして、3サイクル目の放電容量を初期容量とした。そしてこれらの電池の初期出力を算出するために、以下の手順に従い電流―電圧特性試験を行った。
まず、25℃環境下において、それぞれの電池を50%の充電状態(SOC)となるように定電流で充電を行い、1Cから最大10Cまでの放電パルスと充電パルスを各10秒間繰り返し、各放電パルス印可後の10秒目の電圧を測定し、電流値に対してプロットした(図1)。そして、各電圧プロットを最小二乗法を用いて直線近似し、放電下限電圧である2.5Vまで外挿したときの予測電流値(A)と2.5(V)を乗ずることで初期出力(W)を算出した。
次に、それぞれの電池を2.7Aの定電流でSOC80%に相当する電圧まで充電した。そしてこれらの電池を60℃環境下において、56日間保存した。そして、前記保存の後、25℃環境において、2.7Aの定電流で充電上限電圧4.1V、放電下限電圧2.5Vの条件で充放電を2サイクル繰り返し、2サイクル目の放電容量を保存後容量とした。また、SOC50%状態での電流―電圧特性試験から出力を算出し、保存後出力とした。結果を表1に示す。
Figure 2008130287
表1の結果より、電池Aについては、初期状態、保存後状態、共に高容量、高出力が得られている。特に出力については、保存による維持率が98%と高く長寿命化が期待できる。これは正極活物質の結晶構造の安定化および酸化アルミニウム及び酸化コバルトを被着させたことによる表面改質による正極活物質粒子表面の変質抑制効果によるものと考えられる。
電池Bについては初期容量は電池Aに比べるとやや小さいが、保存による容量低下及び出力低下が小さく、寿命特性に優れている。これも電池Aと同様に、結晶構造の安定化および表面改質効果によるものと考えられる。
一方、比較電池Cでは初期容量及び初期出力は電池Aよりも大きいが、保存による容量低下及び出力低下が大きく、寿命特性が劣っている。特に出力低下は正極活物質が劣化することによると思われる。これは、CoおよびAlを共沈殿により固溶して結晶構造の安定化は図られているが、保存により、正極活物質の粒子表面が電解液と好ましくない反応を起こし、Ni価数の変化による変質及び、絶縁被膜層を形成すること等によるものと考えられる。
比較電池Dは保存による容量低下や出力低下は小さく、寿命特性は優れていた。このことは正極活物質を金属アルミニウム及び水と反応させることにより、粒子表面にアルミニウム層が形成されたことによると考えられる。しかし、同様の活物質組成である電池Aや、比較電池Cに比べて初期容量が小さく、高容量化には適さないことがわかる。これは正極活物質が水と反応することにより、リチウムが溶解して容量低下すると考えられる。
比較電池Eは初期容量が他の電池に比べて大きく高容量であるが、保存による容量低下や出力低下が生じ、特に出力低下は著しかった。比較電池Eの正極活物質はCoおよびAlを固溶した系ではあるが、共沈殿ではなく粉体混合物を焼成することによる固相反応により得られたものであるために、共沈殿に比べて結晶構造の安定性が低下すると考えられる。そして、そのことが保存による容量低下や出力低下の原因であると考えられる。
以上の結果から、Co、AlあるいはCo、Mnを共沈固溶し、かつ水酸化コバルト、水酸化アルミニウムを加え焼成し合成したリチウムニッケル複合酸化物を正極活物質に用いることにより、高容量を維持し寿命特性に優れる非水電解質二次電池が得られることがわかる。
[実施例2]
実施例1の電池Aの製造において、共沈生成物を沈殿させる際のアルカリ水溶液の滴下速度及び反応温度を制御することにより、3〜25μmの範囲で平均粒径が異なる5種類の水酸化ニッケル粉末を得た。そして、5種類の水酸化ニッケル粉末のそれぞれに対して、Ni,Co,及びAlの原子数の和とLiの原子数との比が1対1.05になるように水酸化リチウム1水和物を加え、更に平均粒径の異なる酸化アルミニウムの粉末をNi,Co,及びAlの原子数の和に対して1対0.03になるように加えて充分に混合した。そして得られたそれぞれの混合物をアルミナ製の容器に入れて、乾燥空気中800℃で10時間熱処理することにより、リチウムニッケル複合酸化物LiNi0.8−(x+y)Co0.15+xAl0.05+yを得た。
得られたそれぞれの正極活物質を用いて、電池Aの製造と同様にして電池を作製した。得られた電池を電池F〜電池Jとする。そして、実施例1と同様にして、初期容量、初期出力、保存後の容量及び保存後の出力を測定して、容量維持率及び出力維持率を算出した。結果を表2に示す。
Figure 2008130287
表2の結果より、共沈水酸化ニッケルおよび混合する酸化アルミニウムの平均粒径が5μm〜20μmの範囲にある電池G、H、Iの性能が良いことがわかる。平均粒径が3μm程度と小粒径の電池Fでは初期容量が小さくなる。これは活物質のタップ密度が低下し充填性が低下することによる容量減を示している。また保存後の出力維持率が小さくなっているのは、活物質の比表面積が大きくなることでの電解液との副反応が幾分促進されることによると考えられる。比表面積は1.2m/gであった。
一方、平均粒径が20μmを越える大粒径品を用いた電池Jにおいては、初期容量、初期出力、保存後性能共に他の電池に比べ劣る結果となった。このことは、それぞれの粒径が大きすぎるためにニッケル酸リチウムを合成する際の固相反応が充分に進行せずに反応完成度がやや低くなったものと考えられる。粉体混合した酸化アルミニウムも活物質粒子表面に充分に被覆されていない可能性が考えられる。
以上の結果から、本発明の共沈殿により得られた水酸化ニッケル粉末および粉体混合する酸化アルミニウム粉末の平均粒径としては5μm〜20μmの範囲にあることが好ましいと言える。
[実施例3]
硫酸ニッケル飽和水溶液に、硫酸コバルトおよび硫酸鉄を加えて、水溶液を調製した。
硫酸コバルトは、コバルト比率がニッケルに対し17モル%になるように添加した。また、硫酸鉄は、鉄比率がニッケルに対し3モル%になるように添加した。この水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を、充分に攪拌しながら徐々に滴下して中和することにより、コバルトおよび鉄を固溶状態で含有する水酸化ニッケルである、Ni0.8Co0.17Fe0.03(OH)の沈殿を共沈殿により生成させた。この沈殿物をろ過、水洗し、80℃で乾燥することにより、平均粒径約11μmのNi0.8Co0.17Fe0.03(OH)の粉末が得られた。
得られたNi0.8Co0.17Fe0.03(OH)をアルミナ製の容器に入れ、大気中800℃で10時間の熱処理を行うことにより、コバルトおよび鉄を固溶状態で含有する酸化ニッケルNi0.8Co0.17Fe0.03Oを得た。
得られたNi0.8Co0.17Fe0.03Oは粉末X線回折によりCoおよびFeが固溶している六方晶層状構造に帰属する回折パターンが見られ、単一相であることを確認した。
次に、得られたNi0.8Co0.17Fe0.03Oの粉末に、Ni、Co、Feの原子数の和とLiの原子数との比が1対1.05になるように水酸化リチウム1水和物を加え、更に平均粒径約8μmの酸化コバルトの粉末をそれぞれNi、Co、Feの原子数の和に対して1対0.03になるように加えて充分に混合した。そしてこの混合物を異なる複数のアルミナ製の容器に入れて、表3に記載したようなそれぞれ異なる雰囲気及び温度で10時間の熱処理を行うことにより、リチウムニッケル複合酸化物である、LiNi0.8−xCo0.17+xFe0.03を得た。
得られたリチウムニッケル複合酸化物の粉末X線回折には、CoおよびFeが固溶している六方晶層状構造に帰属する回折パターンと、酸化コバルトに帰属する回折ピークが観察された。この粉末X線回折の結果は、共沈殿により固溶したCoおよびFeは全て固溶体として存在し、また、粉末状態で加えた水酸化コバルトは、一部分は固溶して、その他の部分は固溶せずに酸化コバルトとして存在していることを示す。酸化コバルトは、粒子表面に付着、又は、被覆する形態で存在していると思われる。それぞれのリチウムニッケル複合酸化物を粉砕した後、分級して正極活物質粉末を得た。
得られたそれぞれの正極活物質を用いて、電池Aの製造と同様にして電池を作製した。これらを電池K〜電池Sとする。そして、実施例1と同様にして、初期容量、初期出力、を測定した。結果を表3に示す。
Figure 2008130287
表3より、乾燥窒素雰囲気での焼成を行った電池Kの製造においては、正極活物質の合成ができなかった。本反応は酸素の供給により反応が進行するために、酸素が全く存在しない乾燥窒素雰囲気下では酸素欠損が大きいためである。一方、乾燥空気雰囲気で焼成を行った電池Lは正極活物質が合成でき、容量、出力共に良好である。空気中に含まれる酸素が反応に関与しており、酸素存在下での焼成が必要なことがわかる。
電池Mから電池Sはいずれも酸素雰囲気中での焼成であるが、焼成温度が変化している。焼成温度が750℃から850℃の範囲にある電池Nから電池Rが容量、出力共に良好であることがわかり、特に775℃から825℃の範囲の活物質を用いた電池が最も良好な性能を示していることがわかる。
焼成温度が700℃と低い電池Mでは出力が低下する傾向にある。これは、結晶成長が不十分であることに起因するものと考えられる。また、焼成温度が900℃と高温である電池Sでは、容量、出力共に低下する傾向が見られた。このことは、合成反応時にリチウムがニッケルのサイトに一部落ち込むといったディスオーダー構造に移行するために充分な容量、出力を得ることが不可能になるものと考えられる。
以上の結果より、ニッケル酸リチウム合成時の焼成雰囲気としては乾燥空気雰囲気あるいは酸素雰囲気が重要であり、その焼成温度としては750℃〜850℃、好ましくは775℃〜825℃の範囲であることがより好ましいことがわかる。
なお、本実施例および比較例の負極には市販の黒鉛粉末を用いたが、コークスや難黒鉛化性炭素、炭素繊維など従来より公知な炭素材料が使用可能である。またリチウムと合金形成が可能な例えば、Si、Sn、あるいはそれらの酸化物なども負極材料として使用可能である。電解液の溶媒にはEC、DMC、EMCの混合溶媒を使用したが、ジエチルカーボネート、ブチレンカーボネート、メチルプロピオネートなど従来より公知な溶媒を始め、4V級の耐酸化還元電位を有する溶媒が単独あるいは混合溶媒として使用可能である。更に電解質についてもLiBF、LiClOなど従来より公知な電解質が使用可能である。
本発明の製造法による正極活物質を用いた非水電解質二次電池は、高容量(高エネルギー密度)特性及び高出力特性に優れており、かつ長期耐久性を確保することが可能であり、ハイブリッド電気自動車、燃料電池自動車など電気モーターをアシストする二次電池としての利用はもちろんのことであるが、電動工具、掃除機、ロボットなどの駆動用電源や大型の電力貯蔵用電源としても利用可能である。また、今後の成長分野として期待される、一定距離は完全に電池電力による電気モーターのみで走行し、所定容量以下になるとガソリンエンジンを併用するHEVモードに移行するといったいわゆるプラグインHEVの動力源としても利用が可能である。
実施例において、出力を算出するための電流―電圧特性を示すグラフである。

Claims (5)

  1. (A)ニッケル複合酸化物またはニッケル複合水酸化物と、(B)酸化アルミニウム,水酸化アルミニウム,酸化コバルト及び水酸化コバルトからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物と、(C)水酸化リチウムと、を乾式混合する混合工程と、
    前記混合工程で得られた混合物を酸素の存在下で焼成する焼成工程とを有し、
    前記ニッケル複合酸化物またはニッケル複合水酸化物(A)が、ニッケルの無機酸塩と、コバルト,アルミニウム,マンガン,及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素の無機酸塩とを溶解した水溶液を中和することにより得られる共沈殿物、または、前記共沈殿物の焼成物である非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  2. 前記ニッケル複合酸化物またはニッケル複合水酸化物(A)が、一般式:
    Ni1−(x+y)CoAlO・・・(1)
    で表されるニッケル複合酸化物、または、
    Ni1−(x+y)CoAl(OH)・・・(2)
    で表されるニッケル複合水酸化物である請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
    (ただし、式(1)及び(2)中、0.1≦x≦0.3、0.03≦y≦0.2である)
  3. 前記ニッケル複合酸化物またはニッケル複合水酸化物(A)及び前記金属化合物(B)の平均粒径が5〜20μmである、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  4. 前記焼成工程が、酸素雰囲気又は乾燥空気雰囲気下において750〜850℃で焼成する工程である請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載の非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法により得られた正極活物質を含む正極と、リチウム金属、リチウム合金またはリチウムイオンを吸蔵および放出することができる材料のいずれか1つを含む負極と、非水溶媒にリチウム塩を溶解させた電解液とを有する非水電解質二次電池。
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