JP4054187B2 - 光記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光記録媒体の製造方法であって、特に追記型の光記録媒体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、レーザ光により一回限りの情報の記録が可能な光記録媒体(ライトワンス型の光ディスク、所謂CD−R型の光ディスク)が知られている。このタイプの光ディスクの代表的な構造は、透明な円盤状基板上に有機色素からなる記録層、金や銀等の金属からなる反射層、さらに樹脂製の保護層をこの順に積層したものである。
そしてこの光ディスクへの情報の記録は、近赤外域のレーザ光(通常は780nm付近の波長のレーザ光)を照射して記録層を局所的に発熱変形させて、ピットを形成させることにより行われる。
一方情報の読み取り(再生)は通常、記録用のレーザ光と同じ波長のレーザ光を照射して、記録層が発熱変形された部位(記録部分)と変形されない部位(未記録部分)との反射率の違いを検出することにより行われている。
【0003】
近年、パーソナルコンピュータ等の普及に伴って記録密度のより高い光記録媒体が求められている。記録密度を高めるには、照射されるレーザ光の光径を小さく絞ることが有効であり、また波長が短いレーザ光ほど光径を小さく絞ることができるため、高密度化に有利であることが理論的に知られている。従って、従来から一般的に用いられている780nmより短波長のレーザ光を用いて記録再生を行うための光ディスクの開発が進められており、例えば、追記型デジタル・ヴァーサタイル・ディスク(所謂DVD−R)と称される光ディスクが提案されている。この光ディスクは、直径が120mmあるいは直径が80mmの透明な円盤状基板上に、色素を含有する記録層、そして通常は記録層の上にさらに反射層および保護層を設けてなるディスクを二枚、あるいは該ディスクと略同じ寸法の円盤状保護基板とをそれぞれ記録層を内側にして接着剤で貼り合わせた構造となるように製造されている。前記DVD−Rは、可視レーザ光(通常は600nm〜700nmの範囲の波長のレーザ光)を照射することにより、記録および再生が行われ、CD−R型の光ディスクより高密度の記録が可能であるとされている。
【0004】
従来から、CD−R型の光ディスクにおいては、その記録層に含有する色素としてシアニン色素等を使用する追記型の光記録媒体が知られている。このような色素の例としては、特開昭64−40382号公報、あるいは「機能性色素の最新応用技術」(シー・エム・シー、1996年4月発行、第3章の6)に記載されているものがある。
【0005】
追記型の光記録媒体では、情報の記録を案内溝部へのピットの生成という形で行っており、そのピット部分における基板の形状の変形は、色素の分解による光学特性の変化とともに再生特性に大きな影響を与える。
【0006】
ところで、色素を含む記録層は、一般にプリグルーブが形成された基板上に色素を含む溶液を塗布し乾燥することによって形成されるが、この場合、グルーブ部の記録層の膜厚はランド部の記録層よりも厚くなる。そのため、基板のプリグルーブ溝の形状を反映して形成された記録層表面の溝深さは、基板のプリグルーブ溝の深さよりも浅くなり、記録層に情報を記録してプリグルーブに記録ピットを形成させたとき、記録層表面の溝上部(基板のランド部を反映した部分)と溝底部との位相差が小さくなるために、記録ピットの変調度が小さくなるという問題がある。
そのため、基板プリグルーブの深さを大きくして記録層表面に形成される溝の深さを相対的に深くすることにより記録ピットの変調度を大きくすることが考えられるが、その場会は、一般に反射率が低下する傾向にある。
【0007】
そこで、本出願人は先に、特開平4−132026号公報において、記録層を形成する際の色素溶液の濃縮限界を99〜20%とし、これをスピンコートして記録層を形成し、グルーブ部の記録層の厚さとランド部の記録層の厚さとの差をλ/8(λ=再生用レーザの波長)以下として光記録媒体を製造する方法を開示した。
【0008】
しかし、上記製造方法では、グルーブ部が深い場合(本願で好ましいとされるグルーブの深さ(5〜80nm)以上の深さの場合)、グルーブ部の記録層の厚さとランド部の記録層の厚さとの差がλ/8以下になりにくい。また。グルーブ部の記録層の厚さが薄いため、変調度が小さいという問題点があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
以上から、本発明は、グルーブ部が深い場合でも高反射率を有し、かつ高い変調度をも有する光記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下に示す本発明により達成することができる。すなわち、本発明は、
<1> スパイラル状のプリグルーブが形成された側の基板表面に、少なくとも、記録層と、反射層とを順次形成して光記録媒体を製造する方法であって、前記スパイラル状のプリグルーブの深さが100〜160nmであり、前記記録層が、溶剤に対する飽和溶解度の1/10〜1/2の濃度であるオキソノール色素を含有する塗布液を相対湿度40%以上の条件下でスピンコート法により塗布して、形成されることを特徴とする光記録媒体の製造方法である。
<2> 前記オキソノール色素の濃度が前記溶剤に対する飽和溶解度の1/8〜1/2であることを特徴とする<1>に記載の光記録媒体の製造方法である。
<3> 前記オキソノール色素の濃度が前記溶剤に対する飽和溶解度の1/6〜1/2の濃度であることを特徴とする<2>に記載の光記録媒体の製造方法である。
<4> 前記プリグルーブの深さが120〜150nmであることを特徴とする<1>または<2>に記載の光記録媒体の製造方法である。
<5> 前記プリグルーブの深さが130〜140nmであることを特徴とする<4>に記載の光記録媒体の製造方法である。
<6> 前記相対湿度が50%以下であることを特徴とする<1>〜<5>のいずれか1に記載の光記録媒体の製造方法である。
<7> 前記スピンコート法により塗布する際の温度が25℃以上であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1に記載の光記録媒体の製造方法である。
<8> 前記スパイラル状のプリグルーブの半値幅が200〜400nmであることを特徴とする<1>〜<7>のいずれか1に記載の光記録媒体の製造方法である。
<9> 前記スパイラル状のプリグルーブのトラックピッチが400〜900nmであることを特徴とする<1>〜<8>のいずれか1に記載の光記録媒体の製造方法である。
<10> 前記光記録媒体に対し情報の記録および再生に使用されるレーザの波長が、600〜700nmであることを特徴とする<1>〜<9>のいずれか1に記載の光記録媒体の製造方法である。
<11> 前記<1>〜<10>のいずれかに記載の光記録媒体の製造方法により製造されることを特徴とする光記録媒体である。
<12> 情報の記録および再生に使用されるレーザの波長が、600〜700nmであることを<11>に記載の光記録媒体である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の光記録媒体の製造方法は、スパイラル状のプリグルーブが形成された側の基板表面に、少なくとも、記録層と、反射層とを順次形成して光記録媒体を製造する方法であり、前記記録層が、溶剤に対する飽和溶解度の1/10〜1/6の濃度であるオキソノール色素を含有する塗布液を相対湿度40%以上の条件下でスピンコート法により塗布して、形成される。
なお、その他の層として、下塗り層や保護層等その他の公知の層を適宜有していてもよい。
以下、本発明の光記録媒体の製造方法について詳細に説明する。
【0012】
前記基板としては、従来の光記録媒体の基板材料として用いられている各種の材料を任意に選択して使用することができる。
具体的には、ガラス;ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;エポキシ樹脂;アモルファスポリオレフィン;ポリエステル;アルミニウム等の金属;等を挙げることができ、所望によりこれらを併用してもよい。
上記材料の中では、耐湿性、寸法安定性および低価格等の点から、アモルファスポリオレフィン、ポリカーボネートが好ましく、ポリカーボネートが特に好ましい。また、基板の厚さは、0.5〜1.2mmとすることが好ましく、0.6〜1.1mmとすることがより好ましい。
【0013】
基板には、トラッキング用の案内溝またはアドレス信号等の情報を表わす凹凸(プリグルーブ)が形成されている。プリグルーブのトラックピッチは、300〜900nmの範囲とすること好ましく、350〜850nmとすることがより好ましく、400〜800nmとすることがさらに好ましい。
300nm未満では、プログルーブを正確に形成することが困難になる上、クロストークの問題が発生することがあり、900nmを超えると、記録密度が低下する問題が生ずることがある。
また、プリグルーブの深さ(溝深さ)は、100〜160nmの範囲とすることし、120〜150nmとすることが好ましく、130〜140nmとすることがより好ましい。
100nm未満では、十分な記録変調度が得られないことがあり、160nmを超えると、反射率が大幅に低下することがある。
さらに、プリグルーブの半値幅は、200〜400nmの範囲とすることが好ましく、230〜380nmとすることがより好ましく、250〜350nmとすることがさらに好ましい。
200nm未満では、成形時に溝が十分に転写されなかったり、記録のエラーレートが高くなったりすることがあり、400nmを超えると、記録時に形成されるピットが広がってしまい、クロストークの原因となったり、十分な変調度が得られないことがある。
【0014】
なお、後述する記録層が設けられる側の基板の表面には、平面性の改善、接着力の向上の目的で、下塗層を形成することが好ましい。
該下塗層の材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、N−メチロールアクリルアミド、スチレン・ビニルトルエン共重合体、クロルスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の高分子物質;シランカップリング剤等の表面改質剤;を挙げることができる。
下塗り層を形成する場合は、既述の下塗り層の材料を適当な溶剤に溶解または分散して塗布液を調製した後、この塗布液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコート等の塗布法により基板表面(プリグルーブ等が形成された面)に塗布することにより、下塗り層を形成することができる。
下塗層の層厚は、一般に0.005〜20μmの範囲にあり、好ましくは0.01〜10μmの範囲である。
【0015】
記録層は、記録物質である色素を、結合剤等と共に適当な溶剤に溶解して塗布液を調製し、次いでこの塗布液をスピンコート法により基板のプリグルーブが形成された面(必要に応じて下塗り層が形成された場合は、該下塗り層上)に塗布して塗膜を形成した後、乾燥することにより形成される。
スピンコート法を適用する際の相対湿度は、40%以上とすることを必須としする。
相対湿度を40%未満とすると、プリグルーブの色素膜(記録層)が薄く形成されてしまい変調度が低下してしまう。溶剤が蒸発すると、気化熱のためその部分の温度が低下する。このとき相対湿度が高いと、結露して塗布ムラが発生しやすくなる。従って、相対湿度の上限は、50%とすることが好ましい。
また、スピンコート法を適用する際の温度は、23℃以上とすることが好ましく、25℃以上とすることがより好ましい。温度の上限は特にないが、溶剤の引火点より低い温度とする必要があり、好ましくは35℃とする。
23℃未満とすると、溶剤の乾燥が遅くなり、目的とする色素膜厚(記録層の厚み)が得られない場合や塗布乾燥時間が長くなり、生産性が低下することがある。
【0016】
塗布液中の色素の濃度は、塗布液に使用する溶剤に対する飽和溶解度の1/10〜1/2の濃度(好ましくは、1/8〜1/3、より好ましくは、1/6〜1/4)とする。
飽和溶解度の1/10未満では、目的とする色素膜厚が得られなくなったり、トラッキングエラー信号が小さくなり、トラッキングがかからなくなってしまう。1/2を超えると、十分な変調度が得られなくなってしてしまう。
なお、色素を2種以上を含有する場合は、一番割合の多い色素が上記範囲に入るようにする。
【0017】
当該色素としては、オキソノール色素を使用する。
また、特開平4−74690号公報、特開平8−127174号公報、同11−53758号公報、同11−334204号公報、同11−334205号公報、同11−334206号公報、同11−334207号公報、特開2000−43423号公報、同2000−108513号公報、および同2000−158818号公報等に記載されている色素も好適に用いられる。
【0018】
塗布液の溶剤としては、酢酸ブチル、乳酸エチル、2−メトキシエチルアセテート等のエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミド等のアミド;メチルシクロヘキサン等の炭化水素;テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサン等のエーテル;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールジアセトンアルコール等のアルコール;2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;等を挙げることができる。
上記溶剤は使用する記録物質の溶解性を考慮して単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。塗布液中にはさらに酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤等各種の添加剤を目的に応じて添加してもよい。
【0019】
結合剤を使用する場合に、該結合剤の例としては、ゼラチン、セルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴム等の天然有機高分子物質;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ゴム誘導体、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂の初期縮合物等の合成有機高分子;を挙げることができる。記録層の材料として結合剤を併用する場合に、結合剤の使用量は、一般に記録物質に対して0.01倍量〜50倍量(質量比)の範囲にあり、好ましくは0.1倍量〜5倍量(質量比)の範囲にある。このようにして調製される塗布液中の記録物質の濃度は、一般に0.01〜10質量%の範囲にあり、好ましくは0.1〜5質量%の範囲にある。
【0020】
塗布方法としては、既述のようにスピンコート法を適用するが、その際に使用する装置等については、従来公知のものを使用することができる。
また、記録層は単層でも重層でもよく、その層厚は、一般に20〜500nmの範囲にあり、好ましくは30〜300nmの範囲にあり、より好ましくは50〜100nmの範囲にある。
【0021】
記録層には、該記録層の耐光性を向上させるために、種々の褪色防止剤を含有させることができる。
褪色防止剤としては、一般的に一重項酸素クエンチャーが用いられる。一重項酸素クエンチャーとしては、既に公知の特許明細書等の刊行物に記載のものを利用することができる。
その具体例としては、特開昭58−175693号公報、同59−81194号公報、同60−18387号公報、同60−19586号公報、同60−19587号公報、同60−35054号公報、同60−36190号公報、同60−36191号公報、同60−44554号公報、同60−44555号公報、同60−44389号公報、同60−44390号公報、同60−54892号公報、同60−47069号公報、同63−209995号公報、特開平4−25492号公報、特公平1−38680号公報、および同6−26028号公報等の各公報、ドイツ特許350399号明細書、そして日本化学会誌1992年10月号第1141頁等に記載のものを挙げることができる。
【0022】
前記一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤の使用量は、色素の量に対して、通常0.1〜50質量%の範囲であり、好ましくは、0.5〜45質量%の範囲、更に好ましくは、3〜40質量%の範囲、特に好ましくは5〜25質量%の範囲である。
【0023】
記録層形成後、該記録層上に光反射性物質を蒸着、スパッタリングまたはイオンプレーティングして反射層を形成する。反射層の形成に際しては、通常マスクが使用され、これによって反射層の形成領域を調節することができる。
【0024】
反射層には、レーザ光に対する反射率が高い光反射性物質が用いられる。当該反射率は、70%以上であることが好ましい。
反射率が高い光反射性物質としては、Mg、Se、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi等の金属および半金属あるいはステンレス鋼を挙げることができる。これらの光反射性物質は単独で用いてもよいし、あるいは二種以上の組合せで、または合金として用いてもよい。これらのうちで好ましいものは、Cr、Ni、Pt、Cu、Ag、Au、Alおよびステンレス鋼である。特に好ましくは、Au、Ag、Alあるいはこれらの合金であり、最も好ましくは、Au、Agあるいはこれらの合金である。
反射層の層厚は、一般的には10〜300nmの範囲とし、50〜200nmの範囲とすることが好ましい。
【0025】
反射層を形成した後は、該反射層上に必要に応じて保護層が形成される。
保護層は、スピンコート法により形成される。スピンコート法を適用することで、記録層にダメージ(色素の溶解、色素と保護層材料との化学反応等)を与えることなく保護層を形成することができる。スピンコートする際の回転数は、均一な層形成および記録層へのダメージの防止の観点から、50〜8000rpmとすることが好ましく、100〜5000rpmとすることがより好ましい。
なお、保護層に紫外線硬化樹脂を使用した場合は、スピンコート法により保護層を形成した後、該保護層上から紫外線照射ランプ(メタルハライドランプ)により紫外線を照射して、紫外線硬化樹脂を硬化させる。
また、形成する保護層の厚みムラを無くすため、樹脂を硬化させる前に一定時間放置する等の処理を適宜行ってもよい。
【0026】
保護層は、水分の侵入やキズの発生を防止する。保護層を構成する材料としては、紫外線硬化樹脂、可視光硬化樹脂、熱硬化性樹脂、二酸化ケイ素等であることが好ましく、なかでも紫外線硬化樹脂であることが好ましい。該紫外線硬化樹脂としては、例えば、大日本インキ化学工業社製の「SD−640」等の紫外線硬化樹脂を挙げることができる。また、SD−347(大日本インキ化学工業社製)、SD−694(大日本インキ化学工業製)、SKCD1051(SKC社製)等を使用することができる。保護層の厚さは、1〜200μmの範囲が好ましく、50〜150μmの範囲がより好ましい。
また、保護層が、レーザー光路として使用される層構成においては、透明性を有することが必要とされる。ここで、「透明性」とは、記録光および再生光に対して、該光を透過する(透過率:90以上)ほどに透明であることを意味する。
【0027】
以上のようにして、基板上に記録層、および反射層、そして所望により保護層等を設けた積層体を作製することができる。そして、かかる積層体を2枚用意し、各々の記録層が内側となるように接着剤等で貼り合わせることにより、二つの記録層を持つDVD−R型の光記録媒体を製造することができる。
また得られた一枚の積層体と、該積層体の基板と略同じ寸法の円盤状の保護基板もしくは該保護基板に記録層を除く既述の反射層や保護層が形成された積層体とを、その記録層が内側となるように(反射層や保護層が形成されている場合は前記記録層とこれらの層が内側になるように)接着剤等で貼り合わせることにより、片側のみに記録層を持つDVD−R型の光記録媒体を製造することができる。
【0028】
なお、前記接着剤として、前記保護層の形成に用いたUV硬化性樹脂を用いてもよいし、合成接着剤を用いもよい。合成接着剤としては、カチオン硬化型エポキシ樹脂のような遅効型接着剤や紫外線硬化型アクリレート樹脂のようなスピン硬化型接着剤を挙げることができ、遅効型接着剤がより好ましい。この接着剤の層(接着層)に保護層の機能を兼用させることもできる。接着層の厚さは、反りを防止するため、5〜55μmの範囲が好ましく、より好ましくは10〜47μm、さらに好ましくは13〜40μmである。また、二枚の積層体の貼り合わせは、その他に両面テープ等を用いて行ってもよい。
いずれの態様のDVD−R型の光記録媒体においてもその全体の厚みは、1.2±0.2mmとなるように調整することが好ましい。
【0029】
保護層と接着層との間には、保存性や接着性を向上させるために、バッファー層を設けてもよい。バッファー層に用いられる材料としては、例えば、SiO、SiO2、MgF2、SnO2、Si3N4等の無機物質、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、UV硬化性樹脂等の有機物質を挙げることができる。このバッファー層は、真空成膜やスピンコート等を利用して形成することができる。
【0030】
本発明の製造方法により製造された光記録媒体への情報の記録は、例えば、次のようにして行われる。
まず、光記録媒体を所定の定線速度または所定の定角速度にて回転させながら、基板側から半導体レーザ光等の記録用のレーザ光を光学系を通して集光し、照射する。レーザ光の照射により、記録層の照射部分がその光を吸収して局所的に温度上昇し、物理的あるいは化学的な変化(いわゆるピットの生成)が生じてその光学特性を変えることにより、情報が記録される。
【0031】
記録光としては、可視域のレーザ光、通常600nm〜700nm(好ましくは620〜680nm、さらに好ましくは、630〜670nm)の範囲の発振波長を有する半導体レーザービームが用いられる。また記録光は、NAが0.55〜0.7の光学系を通して集光されることが好ましい。
【0032】
上記のように記録された情報の再生は、光記録媒体を所定の定線速度で回転させながら記録時と同じ波長を持つ半導体レーザ光を基板側から照射して、その反射光を検出することにより行うことができる。
【0033】
【実施例】
本発明を以下に示す実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
射出成形機(住友重機械工業(株)製)を用いて、ポリカーボネート樹脂を、スパイラル状のグルーブ(深さ140nm、幅800nm、トラックピッチ0.74μm)を有する厚さ0.6mm、直径120mmの基板に成形した。
【0035】
下記化学式で表わされる色素Aを2,2,3,3−テトラフルオロ−1−ペンタノール溶液に溶解して塗布液(色素Aの濃度:0.68質量%)を調製した。温度30℃相対湿度45%RHにてこの塗布液を、スピンコート法により上記基板のグルーブが形成されている面に塗布し、厚さ120nmの記録層を形成した。
なお、色素Aの2,2,3,3−テトラフルオロ1−ぺンタノールに対する飽和溶解度は1.4質量%であった。
【0036】
【化1】
【0037】
次に、前記記録層上に銀をスパッ夕リングして厚さ150nmの反射層を形成した。該反射層上に、紫外線硬化樹脂(大日本インキ化学工業(株)社製ダイキュアクリアSD−318)をスピンコート法で塗布し、メタルハライドランプで紫外線照射することで厚さ7μmの保護層を形成し、全体の厚さが0.6mmのディスクAを作製した。
【0038】
また、ディスクAと同じ基板で、グルーブが形成された面に銀をスパッタリングして反射層(厚さ:150nm)を形成した。ディスクAと同様にして保護層(厚さ:7μm)を形成し、記録層を有しない0.6mm厚のディスクBを作製した。
【0039】
作製したディスクAおよびディスクBのそれぞれの保護層面に、遅効性カチオン重合型接着剤(ソニーケミカル(株)社製、SK7000)をスクリーン印刷によって塗布し、それぞれの厚さが20μmの接着層を形成した。
次に、メタルハライドランプにて紫外線照射した直後、ディスクAの接着層とディスクBの接着層と貼合せ、両面から圧縮した。約5分間放置後、接着剤は完全に硬化し、厚さ1.2mmの1枚のディスク(光記録媒体)を作製した。
【0040】
(実施例2)
色素Aの代わりに、下記化学式で表わされる色素Bを2,2,3,3−テトラフルオロ−1−ペンタノール溶液に溶解して塗布液(色素Bの濃度:1.25質量%)を調製し、これを使用した以外は、実施例1と同様にして光記録媒体を作製した。
なお、色素Bの2,2,3,3−テトラフルオロ1−ぺンタノールに対する飽和溶解度は6質量%であった。
【0041】
【化2】
【0042】
(比較例1)
塗布液中の色素Aの濃度を1.1質量%とした以外は、実施例1と同様にして光記録媒体を作製した。
【0043】
(比較例2)
塗布液を塗布する際の温度および相対湿度を、それぞれ30℃および25%RHとした以外は、実施例1と同様にして光記録媒体を作製した。
【0044】
実施例1および比較例1、2で作製した光記録媒体について、エキスパートマグネティクス社製DVDT−R(DVD−R Authoring用)を用い、それぞれの最適記録パワー、ジッター、反射率および14T変調度の評価を行った。なお、最適記録パワーはジッターが最小となる記録パワーである。
結果を下記表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
実施例1および実施例2の光記録媒体は、比較例1および比較例2の光記録媒体と比較して、高い反射率が得られた。また、最適記録パワー、ジッターおよび14T変調度もほぼ同じ値が得られ、良好な結果であった。
これは、実施例1および実施例2の光記録媒体が、比較例1および比較例2の光記録媒体より、グルーブ部の記録層膜厚/ランド部の記録層膜厚が大きい、すなわち、グループ部の膜厚がより厚いためであると推定される。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、グルーブ部が深い場合でも高反射率を有し、かつ高い変調度をも有する光記録媒体の製造方法を提供することができる。
Claims (10)
- スパイラル状のプリグルーブが形成された側の基板表面に、少なくとも、記録層と、反射層とを順次形成して光記録媒体を製造する方法であって、
前記スパイラル状のプリグルーブの深さが100〜160nmであり、
前記記録層が、溶剤に対する飽和溶解度の1/10〜1/2の濃度であるオキソノール色素を含有する塗布液を相対湿度40%以上の条件下でスピンコート法により塗布して、形成されることを特徴とする光記録媒体の製造方法。 - 前記オキソノール色素の濃度が前記溶剤に対する飽和溶解度の1/8〜1/2であることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体の製造方法。
- 前記オキソノール色素の濃度が前記溶剤に対する飽和溶解度の1/6〜1/2の濃度であることを特徴とする請求項2に記載の光記録媒体の製造方法。
- 前記プリグルーブの深さが120〜150nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の光記録媒体の製造方法。
- 前記プリグルーブの深さが130〜140nmであることを特徴とする請求項4に記載の光記録媒体の製造方法。
- 前記相対湿度が50%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光記録媒体の製造方法。
- 前記スピンコート法により塗布する際の温度が25℃以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光記録媒体の製造方法。
- 前記スパイラル状のプリグルーブの半値幅が200〜400nmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光記録媒体の製造方法。
- 前記スパイラル状のプリグルーブのトラックピッチが300〜900nmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の光記録媒体の製造方法。
- 前記光記録媒体に対し情報の記録および再生に使用されるレーザの波長が、600〜700nmであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の光記録媒体の製造方法。
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