JP4284036B2 - 光情報記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザー光を用いて情報の記録および再生を行う光情報記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、レーザー光により一回限りの情報の記録が可能な光情報記録媒体(光ディスク)が知られている。この光ディスクは、追記型CD(所謂CD−R)とも称され、その代表的な構造は、透明な円盤状基板上に有機色素からなる記録層、金等の金属からなる光反射層、さらに樹脂製の保護層がこの順に積層状態で設けられている。そしてこのCD−Rへの情報の記録は、近赤外域のレーザー光(通常は780nm付近の波長のレーザー光)をCD−Rに照射することにより行われ、記録層の照射部分がその光を吸収して局所的に温度上昇し、物理的あるいは化学的変化(例えば、ピットの生成)が生じてその光学的特性を変えることにより、情報が記録される。一方、情報の読み取り(再生)もまた記録用のレーザー光と同じ波長のレーザー光を照射することにより行われ、記録層の光学的特性が変化した部位(記録部分)と変化しない部位(未記録部分)との反射率の違いを検出することにより情報が再生される。
【0003】
近年、記録密度のより高い光情報記録媒体が求められている。このような要望に対して、追記型デジタル・ヴァサタイル・ディスク(所謂DVD−R)と称される光ディスクが提案されている(例えば、「日経ニューメディア」別冊「DVD」、1995年発行)。このDVD−Rは、照射されるレーザー光のトラッキングのための案内溝(プレグルーブ)がCD−Rに比べて半分以下(0.74〜0.8μm)と狭く形成された透明な円盤状基板上に、色素からなる記録層、そして通常は該記録層の上に光反射層、そしてさらに必要により保護層を設けてなるディスクを二枚、あるいは該ディスクと同じ形状の円盤状保護基板とを該記録層を内側にして接着剤で貼り合わせた構造を有している。DVD−Rへの情報の記録再生は、可視レーザー光(通常は、630nm〜680nmの範囲の波長のレーザー光)を照射することにより行われ、CD−Rより高密度の記録が可能であるとされている。
【0004】
最近、インターネット等のネットワークやハイビジョンTVが急速に普及している。また、HDTV(High Definition Television)の放映も間近にひかえて、画像情報を安価簡便に記録するための大容量の記録媒体の要求が高まっている。DVD−Rによれば、大容量の記録媒体としての地位をある程度までは確保されるものの、将来の要求に対応できる程の充分大きな記録容量を有しているとは言えない。そこで、DVD−Rよりもさらに短波長のレーザー光を用いることによって記録密度を向上させ、より大きな記録容量を備えた光ディスクの開発が進められている。例えば、特開平4−74690号公報、特開平7−304256号公報、特開平7−304257号公報、特開平8−127174号公報、同11−53758号公報、同11−334204号公報、同11−334205号公報、同11−334206号公報、同11−334207号公報、特開2000−43423号公報、同2000−108513号公報、同2000−113504号公報、同2000−149320号公報、同2000−158818号公報および同2000−228028号公報には、有機色素を含む記録層を有する光情報記録媒体において、記録層側から光反射層側に向けて波長530nm以下のレーザー光を照射することにより、情報の記録再生を行う記録再生方法が開示されている。具体的には、記録層の色素として、ポルフィリン化合物、アゾ系色素、金属アゾ系色素、キノフタロン系色素、トリメチンシアニン色素、ジシアノビニルフェニル骨格色素、クマリン化合物、ナフタロシアニン化合物等を用いた光ディスクに、青色(波長430nm、488nm)または青緑色(波長515nm)のレーザー光を照射することにより情報の記録再生を行う情報記録再生方法が提案されている。
【0005】
また、現CD−Rシステムとの互換性という観点から、2つの異なる波長領域のレーザー光において記録再生が可能な光記録媒体が提案されている。例えば、特開2000−141900号公報、同2000−158816号公報、同2000−185471号公報、同2000−289342号公報、同2000−309165号公報には、CD−Rに用いられる色素とDVD−Rで用いられる色素とを混合して用いることによって、何れのレーザー光によっても記録再生が可能である記録媒体が提案されている。
【0006】
しかしながら、本発明者の検討によれば、上記公報に記載された光ディスクでは、波長450nm以下の短波長レーザー光の照射により情報を記録する場合には、反射率や変調度等の記録特性が満足できるレベルではなく、また保存安定性においても、尚充分でないことからさらに改良を要することが判明した。特に、上記公報に記載された光ディスクでは、波長405nm付近のレーザー光を照射した場合に記録特性が低下してしまうことがわかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の問題点を解決すべくなされたものであり、本発明の第1の課題は、波長450nm以下の短波長のレーザー光、とりわけ汎用性の高い波長405nm近辺の半導体レーザー光を照射して情報の高密度記録及び再生が可能であり、かつ優れた記録特性を有する光情報記録媒体を提供することにある。
本発明の第2の課題は、高温及び高湿度に対して安定な記録層を設計することによって、記録情報の長期保存に耐え得る光情報記録媒体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下に示す本発明により達成される。すなわち、
<1> 波長390〜415nmのレーザー光照射により情報が記録され、且つ、情報の記録に用いられたレーザー光と同じ波長のレーザー光照射により再生される光情報記録媒体であって、
トラックピッチが0.2〜0.8μmの範囲にあるプレグルーブが形成された基板の該プレグルーブ上に、下記一般式(I)で表されるフタロシアニン誘導体を含有する単一の記録層を有することを特徴とする光情報記録媒体である。
【化2】
[一般式(I)中、
Rα1〜Rα8は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキルスルホニル基、炭素原子数6乃至14のアリールスルホニル基、又は炭素原子数0乃至32のスルファモイル基を表し、
R β1 〜R β8 はすべてが同時に水素原子を表し、
Mは亜鉛、マグネシウム、銅、ニッケル、及びパラジウムからなる群より選択される1種を表す。
但し、Rα1〜Rα8はすべてが同時に水素原子ではない。]
<2> 前記記録層上に、更に保護層を有することを特徴とする前記<1>に記載の光情報記録媒体である。
<3> 前記基板と前記記録層との間、又は、前記記録層と前記保護層との間に更に光反射層を有することを特徴とする前記<2>に記載の光情報記録媒体である。
<4> 前記一般式(I)中のMが、銅又はパラジウムであることを特徴とする前記<1>〜<3>のいずれか1に記載の光情報記録媒体である。
<5> 前記プレグルーブの深さが0.01〜0.18μmの範囲にあることを特徴とする前記<1>〜<4>のいずれか1に記載の光情報記録媒体である。
【0009】
【発明の実施の形態】
<光情報記録方法>
本発明における光情報記録方法は、まず、本発明の光情報記録媒体を定線速度または定角速度にて回転させながら、基板側あるいは保護層側から半導体レーザー光等の記録用の光を照射する。この光の照射により、記録層がその光を吸収して局所的に温度上昇し、物理的あるいは化学的変化(例えば、ピットの生成)が生じてその光学的特性を変えることにより、情報が記録されると考えられる。本発明においては、記録には390〜415nmの範囲の波長を有するレーザー光が用いられる。好ましい光源としては390〜415nmの範囲の発振波長を有する青紫色半導体レーザー光を挙げることができる。上記のように記録された情報の再生は、光情報記録媒体を上記と同一の定線速度で回転させながら、情報の記録に用いられたレーザー光と同じ波長の半導体レーザー光を基板側あるいは保護層側から照射して、その反射光を検出することにより行うことができる。
【0010】
<光情報記録媒体>
本発明の光情報記録媒体は、既述の光情報記録方法に使用される光情報記録媒体であって、詳しくは、該光情報記録媒体の記録層がフタロシアニン誘導体を含有する。
当該フタロシアニン誘導体は、700nm付近の主吸収帯と340nm付近の副吸収帯とを有している。このフタロシアニン誘導体を記録層の記録材料として用いることで、波長が450nm以下の短波長のレーザー光に対しても高い反射率及び高い変調度を与える良好な記録再生特性を具えた光情報記録媒体を得ることができる。
さらに、当該フタロシアニン誘導体は、特定の置換基を有することによって、熱力学的に安定なアモルファス相を形成する。このため、光情報記録媒体の保存時に記録層が結晶化等の相転移をすることがなく、従って、本発明の光情報記録媒体は優れた保存安定性を具える。
以下、本発明の光情報記録媒体の実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
本発明の光情報記録媒体に用いられるフタロシアニン誘導体は、下記一般式(I)で表される化合物である。
【0012】
【化3】
【0013】
一般式(I)中、Rα1〜Rα8は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1乃至20アルキルスルホニル基、炭素原子数6乃至14アリールスルホニル基、又は炭素原子数0乃至32のスルファモイル基を表し、R β1 〜R β8 はすべてが同時に水素原子を表し、Mは亜鉛、マグネシウム、銅、ニッケル、及びパラジウムからなる群より選択される1種を表す。
【0014】
一般式(I)において、Rα1〜Rα8のすべてが同時に水素原子ではなく、更に、Rα1及びRα2のいずれか一方、Rα3及びRα4のいずれか一方、Rα5及びRα6のいずれか一方、Rα7及びRα8のいずれか一方の計4つの置換基が同時に水素原子ではないことが好ましい。
【0015】
一般式(I)において、R α 1 〜R α 8 の好ましい例としては、水素原子、炭素原子数1乃至14のアルキルスルホニル基、である。
【0016】
一般式(I)において、Rα1〜Rα8 はさらに置換基を有していてもよく、該置換基の例としては、以下に記載のものを挙げることができる。
炭素原子数1〜20の鎖状または環状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基)、炭素原子数6〜18のアリール基(例えば、フェニル基、クロロフェニル基、2,4−ジ−t−アミルフェニル基、1−ナフチル基)、炭素原子数7〜18のアラルキル基(例えば、ベンジル基、アニシル基)、炭素原子数2〜20のアルケニル基(例えば、ビニル基、2−メチルビニル基)、炭素原子数2〜20のアルキニル基(例えば、エチニル基、2−メチルエチニル基、2−フェニルエチニル基)、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I)、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、炭素原子数2〜20のアシル基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基、サリチロイル基、ピバロイル基)、炭素原子数1〜20のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基)、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、1−ナフトキシ基、トルオイル基)、炭素原子数1〜20のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、ブチルチオ基、ベンジルチオ基、3−メトキシプロピルチオ基)、炭素原子数6〜20のアリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、4−クロロフェニルチオ基)、炭素原子数1〜20のアルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、ブタンスルホニル基)、炭素原子数6〜20のアリールスルホニル基(例えば、ベンゼンスルホニル基、パラトルエンスルホニル基)、炭素原子数1〜17のカルバモイル基(例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、n−ブチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基)、炭素原子数1〜16のアミド基(例えば、アセトアミド基、ベンズアミド基)、炭素原子数2〜10のアシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基)、炭素原子数2〜10のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基)、5もしくは6員のヘテロ環基(例えば、ピリジル基、チエニル基、フリル基、チアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基等の芳香族ヘテロ環基;ピロリジン環基、ピペリジン環基、モルホリン環基、ピラン環基、チオピラン環基、ジオキサン環基、ジチオラン環基等のヘテロ環基)。
【0017】
一般式(I)において、Rα1〜Rα8 の置換基として好ましいものは、炭素原子数1〜16の鎖状または環状のアルキル基、炭素原子数6〜14のアリール基、炭素原子数7〜15のアラルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数6〜14のアリールオキシ基、ハロゲン原子、炭素原子数2〜17のアルコキシカルボニル基、炭素原子数1〜10のカルバモイル基、炭素数1〜10のアミド基であり、中でも好ましいものは、炭素原子数1〜10の鎖状または環状のアルキル基、炭素原子数7〜13のアラルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、塩素原子、炭素原子数2〜11のアルコキシカルボニル基、炭素原子数1〜7のカルバモイル基、炭素数1〜8のアミド基であり、
特に好ましいものは、炭素原子数1〜8の鎖状分岐または環状のアルキル基、炭素原子数7〜11のアラルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数3〜9のアルコキシカルボニル基、フェニル基および塩素原子であり、さらに優れて好ましいものは炭素原子数1〜6のアルコキシ基である。
【0018】
一般式(I)において、Mは、銅またはニッケルが好ましく、特に銅が好ましい。
【0019】
記録材料の重要な特性であるC/N(キャリヤー/ノイズ比)を向上させるためには、一般式(I)で表される化合物の分子量は1,300以下であることが好ましく、1,200以下であることがより好ましく、かつ、このとき、Rα1及びRα2のいずれか一方、Rα3及びRα4のいずれか一方、Rα5及びRα6のいずれか一方、Rα7及びRα8のいずれか一方の計4つの置換基が同一のスルホニル基である場合が好ましい。
【0020】
一般式(I)で表される化合物は、任意の位置で結合して多量体を形成していてもよく、この場合の各単位は互いに同一でも異なっていてもよく、またポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、セルロース等のポリマー鎖に結合していてもよい。
【0021】
本発明の光情報記録媒体に用いられる一般式(I)で表されるフタロシアニン誘導体は、特定の誘導体単独で使用してもよく、また構造の異なったものを複数種混合して用いてもよい。特に記録層の結晶化を防ぐ目的で、置換基の置換位置が異なる異性体の混合物を使用することが好ましい。
【0022】
本発明の光情報記録媒体の記録層は、記録に用いられるレーザー光のエネルギーを吸収して科学的又は物理的に分解、変質することによって記録マーク(ピット)を形成する。この記録マークは、再生時において反射率が変化した部位として検出される。消衰係数(k)は、光エネルギーの吸収量に関わる光学物性であり、記録時において記録層が吸収するレーザー光のエネルギー量に関連するのみならず、記録再生時に検出される反射率にも関わっている。屈折率(n)は、記録マークの光学的大きさ(反射率の変化量)に関わっている。記録に用いられるレーザー光の出力は、数mW〜十数mWが現実的な範囲であるから、記録に用いられる化合物の基本骨格に対して、消衰係数(k)および屈折率(n)の好ましい範囲が存在する。
本発明の光情報記録媒体の場合、一般式(I)で表される化合物を含有してなる記録層の屈折率(n)及び消衰係数(k)は、記録に用いられるレーザー光の波長において、1.0<n<1.9、0.03<k<0.30の範囲にあることが好ましく、1.5<n<1.9、0.04<k<0.15の範囲にあることがより好ましい。尚、これら屈折率(n)及び消衰係数(k)は、例えば、回転検光子法(エリプソメトリー)によって容易に測定することができる。
【0023】
下記表1〜3に、本発明で用いられるフタロシアニン誘導体の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
表1〜3において、例えば、Rx/Ry(xおよびyは、α1〜α8のいずれかを表わす)という表記はRxまたはRyのいずれか一方という意味を表しており、従ってこの表記のある化合物は置換位置異性体の混合物である。また無置換の場合、即ち水素原子が置換している場合は表記を省略している。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】
本発明に用いられるフタロシアニン誘導体は、例えば白井−小林共著、(株)アイピーシー発行「フタロシアニン−化学と機能−」(p.1〜62)、C.C.Leznoff−A.B.P.Lever共著、VCH発行‘Phthalocyanines−Properties and Applications’(p.1〜54)等に記載、引用もしくはこれらに類似の方法により合成することができる。
【0029】
既述のように、本発明の光情報記録媒体は、基板上に前記フタロシアニン誘導体を含有する記録層を有する。前記フタロシアニン誘導体の含有量は、記録層中に80質量%以上とすることが好ましく、90質量%以上とすることがより好ましい。80質量%未満だと、レーザー光に対する屈折率が低下し、このため変調度が低下することがある。
【0030】
本発明の光情報記録媒体には、種々の構成のものが含まれる。本発明の光情報記録媒体は、一定のトラックピッチのプレグルーブが形成された円盤状基板上に記録層、光反射層および保護層をこの順に有する構成、あるいは該基板上に光反射層、記録層および保護層をこの順に有する構成であることが好ましい。また、一定のトラックピッチのプレグルーブが形成された透明な円盤状基板上に記録層および光反射層が設けられてなる二枚の積層体が、それぞれの記録層が内側となるように接合された構成も好ましい。
【0031】
本発明の光情報記録媒体は、より高い記録密度を達成するためにCD−RやDVD−Rに比べて、より狭いトラックピッチのプレグルーブが形成された基板を用いる。本発明の光情報記録媒体の場合、前記トラックピッチは0.2〜0.8μmの範囲にあることを必須とし、さらに0.2〜0.5μmの範囲にあることが好ましく、特に0.2〜0.4μmの範囲にあることが好ましい。
プレグルーブの深さは、0.01〜0.18μmの範囲にあることが好ましく、さらに0.02〜0.15μmの範囲にあることが好ましい。
【0032】
本発明の光情報記録媒体として、円盤状基板上に記録層、光反射層、および保護層をこの順に有する構成のものを例にとって、以下にその製造方法を説明する。
本発明の光情報記録媒体の基板は、従来の光情報記録媒体の基板として用いられている各種の材料から任意に選択することができる。基板材料としては、例えばガラス、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、アモルファスポリオレフィンおよびポリエステル;等を挙げることができ、所望によりそれらを併用してもよい。なお、これらの材料はフィルム状として、または剛性のある基板として使うことができる。上記材料の中では、耐湿性、寸法安定性および価格等の点からポリカーボネートが好ましい。
【0033】
記録層が設けられる側の基板表面には、平面性の改善、接着力の向上および記録層の変質防止の目的で、下塗層が設けられてもよい。下塗層の材料としては例えば、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、N−メチロールアクリルアミド、スチレン・ビニルトルエン共重合体、クロルスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の高分子物質;およびシランカップリング剤等の表面改質剤を挙げることができる。下塗層は、上記物質を適当な溶剤に溶解または分散して塗布液を調製した後、この塗布液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコート等の塗布法により基板表面に塗布することにより形成することができる。下塗層の層厚は一般に0.005〜20μmの範囲にあり、好ましくは0.01〜10μmの範囲である。
【0034】
記録層の形成は、蒸着、スパッタリング、CVDまたは溶剤塗布等の方法によって行うことができるが、溶剤塗布が好ましい。この場合、前記色素化合物、さらに所望によりクエンチャー、結合剤等を溶剤に溶解して塗布液を調製し、次いでこの塗布液を基板表面に塗布して塗膜を形成したのち乾燥することにより行うことができる。塗布液の溶剤としては、酢酸ブチル、乳酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミド等のアミド;メチルシクロヘキサン等の炭化水素;ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール;2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類等を挙げることができる。上記溶剤は使用する色素の溶解性を考慮して単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。塗布液中にはさらに酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤等各種の添加剤を目的に応じて添加してもよい。
【0035】
結合剤を使用する場合に、結合剤の例としては、ゼラチン、セルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴム等の天然有機高分子物質;およびポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ゴム誘導体、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂の初期縮合物等の合成有機高分子を挙げることができる。記録層の材料として結合剤を併用する場合に、結合剤の使用量は、一般に、色素(フタロシアニン誘導体)に対して0.01倍量〜50倍量(重量比)の範囲にあり、好ましくは0.1倍量〜5倍量(重量比)の範囲にある。このようにして調製される塗布液中の色素の濃度は、一般に0.01〜10質量%の範囲にあり、好ましくは0.1〜5質量%の範囲にある。
【0036】
溶剤の塗布の方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、スクリーン印刷法等を挙げることができる。記録層は単層でも重層でもよい。記録層の層厚は一般に10〜500nmの範囲にあり、好ましくは15〜300nmの範囲にあり、より好ましくは20〜100nmの範囲にある。
【0037】
レーザー光照射時における記録層の熱分解挙動を制御して記録特性の向上を図る目的で、種々の熱分解制御剤を記録層に添加することができる。例えば、欧州特許第0600427号記載の金属錯体を添加する方法が有効であり、金属錯体の中でもメタロセン誘導体が好ましく、特にフェロセン誘導体が好適である。
【0038】
記録層には、記録層の耐光性を向上させるために、種々の褪色防止剤を含有させることができる。褪色防止剤としては、一般的に一重項酸素クエンチャーが用いられる。一重項酸素クエンチャーとしては、既に公知の特許明細書等の刊行物に記載のものを利用することができる。その具体例としては、特開昭58−175693号公報、同59−81194号公報、同60−18387号公報、同60−19586号公報、同60−19587号公報、同60−35054号公報、同60−36190号公報、同60−36191号公報、同60−44554号公報、同60−44555号公報、同60−44389号公報、同60−44390号公報、同60−54892号公報、同60−47069号公報、同63−209995号公報、特開平4−25492号公報、特公平1−38680号公報、および同6−26028号公報等、ドイツ特許350399号明細書、そして日本化学会誌1992年10月号第1141頁等に記載のものを挙げることができる。好ましい一重項酸素クエンチャーの例としては、下記の一般式(II)で表される化合物を挙げることができる。
【0039】
【化4】
【0040】
但し、R21は置換基を有していてもよいアルキル基を表わし、Q−はアニオンを表わす。
一般式(II)において、R21は置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基が一般的であり、無置換の炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。アルキル基の置換基としては、ハロゲン原子(例、F,Cl)、アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ)、アルキルチオ基(例、メチルチオ、エチルチオ)、アシル基(例、アセチル、プロピオニル)、アシルオキシ基(例、アセトキシ、プロピオニルオキシ)、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル)、アルケニル基(例、ビニル)、アリール基(例、フェニル、ナフチル)を挙げることができる。これらの中で、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基が好ましい。Q−のアニオンの好ましい例としては、ClO4 −、AsF6 −、BF4 −、およびSbF6 −を挙げることができる。
一般式(II)で表される化合物例を表4に記載する。
【0041】
【表4】
【0042】
前記一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤の使用量は、色素(前記フタロシアニン誘導体)の量に対して、通常0.1〜50質量%の範囲であり、好ましくは、0.5〜45質量%の範囲、さらに好ましくは、3〜40質量%の範囲、特に好ましくは5〜25質量%の範囲である。
【0043】
記録層に隣接して、情報の再生時における反射率の向上の目的で光反射層を設けることが好ましい。光反射層の材料である光反射性物質はレーザー光に対する反射率が高い物質であり、その例としては、Mg、Se、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi等の金属および半金属あるいはステンレス鋼を挙げることができる。これらの物質は単独で用いてもよいし、あるいは二種以上の組合せで、または合金として用いてもよい。これらのうちで好ましいものは、Cr、Ni、Pt、Cu、Ag、Au、Alおよびステンレス鋼である。特に好ましくは、Au金属、Ag金属、Al金属あるいはこれらの合金であり、最も好ましくは、Ag金属、Al金属あるいはそれらの合金である。光反射層は、例えば、上記光反射性物質を蒸着、スパッタリングまたはイオンプレーティングすることにより基板もしくは記録層の上に形成することができる。光反射層の層厚は、一般的には10〜300nmの範囲にあり、50〜200nmの範囲にあることが好ましい。
【0044】
光反射層もしくは記録層の上には、記録層等を物理的および化学的に保護する目的で保護層を設けることが好ましい。なお、DVD−R型の光情報記録媒体の製造の場合と同様の形態、すなわち二枚の基板を記録層を内側にして張り合わせる構成をとる場合は、必ずしも保護層の付設は必要ではない。保護層に用いられる材料の例としては、Zn−SiO2、ZnS、SiO、SiO2、MgF2、SnO2、Si3N4等の無機物質、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、UV硬化性樹脂等の有機物質を挙げることができる。保護層は、例えばプラスチックの押出加工で得られたフィルムを接着剤を介して反射層上にラミネートすることにより形成することができる。あるいは真空蒸着、スパッタリング、塗布等の方法により設けられてもよい。また、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の場合には、これらを適当な溶剤に溶解して塗布液を調製したのち、この塗布液を塗布し、乾燥することによっても形成することができる。UV硬化性樹脂の場合には、そのままもしくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製したのちこの塗布液を塗布し、UV光を照射して硬化させることによっても形成することができる。これらの塗布液中には、さらに帯電防止剤、酸化防止剤、UV吸収剤等の各種添加剤を目的に応じて添加してもよい。保護層の層厚は一般には0.1μm〜1mmの範囲にある。以上の工程により、基板上に、記録層、光反射層そして保護層、あるいは基板上に、光反射層、記録層そして保護層が設けられた積層体を製造することができる。
【0045】
【実施例】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
[実施例1]
化合物(I−1)を2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールに溶解し、記録層形成用塗布液(濃度:1質量%)を得た。この塗布液を表面にスパイラル状のプレグルーブ(トラックピッチ:0.4μm、グルーブ幅:0.2μm、グルーブの深さ:0.08μm)が射出成形により形成されたポリカーボネート基板(直径:120mm、厚さ:0.6mm)のそのプレグルーブ側の表面にスピンコート法により塗布し、記録層(厚さ(プレグルーブ内):約80nm)を形成した。
次に、記録層上に銀をスパッタして厚さ約100nmの光反射層を形成した。さらに、光反射層上にUV硬化性樹脂(SD318、大日本インキ化学工業(株)製)を塗布し、紫外線を照射して硬化させ、層厚7μmの保護層を形成した。
以上の工程により本発明に従う光ディスクを得た。
【0047】
[実施例2〜8]
実施例1において、化合物(I−1)を表5に示す化合物に変更した(使用量は変更なし)こと以外は同様にして、本発明に従う光ディスクを製造した。
【0048】
[比較例1〜7]
実施例1において、化合物(I−1)を下記に示す比較用色素化合物A〜G(使用量は変更なし)に変更したこと以外は同様にして、比較用の光ディスクを製造した。
【0049】
【化5】
比較用色素化合物A:特開平7−304256号公報の実施例に記載の化合物
【0050】
【化6】
比較用色素化合物B:特開平8−127174号公報の実施例1に記載の化合物
【0051】
【化7】
比較用色素化合物C:特開平11−334207号公報の実施例1に記載の化合物
【0052】
【化8】
比較用色素化合物D:特開2000−228028号公報の実施例に記載の化合物
【0053】
【化9】
比較用色素化合物E:特開2001−287465号公報の実施例5に記載の化合物
【0054】
【化10】
比較用色素化合物F:特開2001−287465号公報の実施例6に記載の化合物
【0055】
【化11】
比較用色素化合物G:特開2001−287465号公報の実施例7に記載の化合物
【0056】
(光ディスクとしての評価1)
実施例1〜8、並びに比較例1〜7で作製したそれぞれの光ディスクに、線速度3.5m/秒で14T−EFM信号を発振波長405nmの青紫色半導体レーザー光を用いて記録したのち、記録した信号を再生した。最適パワーでの変調度(C/N(キャリヤー/ノイズ比))およびグルーブ反射率を測定した。さらに、これら光ディスクを温度80℃−湿度85%の強制条件下に100日間放置した後、変調度を測定することによって、記録信号の劣化を評価した。記録および記録特性評価はパルステック工業(株)製DDU1000を用いて行った。評価結果を表5に示す。
表5中、変調度Bは強制条件に置く前の変調度、変調度Aは強制条件に置いた後の変調度を示している。
【0057】
【表5】
【0058】
表5の結果から、本発明の特徴とするフタロシアニン誘導体を含有する記録層を有する光ディスク(実施例1〜8)は、比較化合物A〜Gを含む記録層を有する光ディスク(比較例1〜7)に比べて、上記青紫色半導体レーザー光に対して高い反射率および高い変調度を与え、かつ強制条件下に置いた場合でも変調度変化が少ないことがわかる。従って、本発明に従うフタロシアニン誘導体を用いることで、短波長レーザー光に対する高い記録特性と高温−高湿度に対する高い保存安定性を具えた光ディスクが得られることがわかる。
【0061】
【発明の効果】
本発明の光情報記録媒体によれば、上記従来技術の問題点を解決することが可能であり、かつ優れた記録特性を有し、高温および高湿度に対し安定して記録情報の長期保存に耐え得る。
Claims (5)
- 波長390〜415nmのレーザー光照射により情報が記録され、且つ、情報の記録に用いられたレーザー光と同じ波長のレーザー光照射により再生される光情報記録媒体であって、
トラックピッチが0.2〜0.8μmの範囲にあるプレグルーブが形成された基板の該プレグルーブ上に、下記一般式(I)で表されるフタロシアニン誘導体を含有する単一の記録層を有することを特徴とする光情報記録媒体。
Rα1〜Rα8は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキルスルホニル基、炭素原子数6乃至14のアリールスルホニル基、又は炭素原子数0乃至32のスルファモイル基を表し、
R β1 〜R β8 はすべてが同時に水素原子を表し、
Mは亜鉛、マグネシウム、銅、ニッケル、及びパラジウムからなる群より選択される1種を表す。
但し、Rα1〜Rα8はすべてが同時に水素原子ではない。] - 前記記録層上に、更に保護層を有することを特徴とする請求項1に記載の光情報記録媒体。
- 前記基板と前記記録層との間、又は、前記記録層と前記保護層との間に更に光反射層を有することを特徴とする請求項2に記載の光情報記録媒体。
- 前記一般式(I)中のMが、銅又はパラジウムであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
- 前記プレグルーブの深さが0.01〜0.18μmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の光情報記録媒体。
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