JP4053673B2 - アルミニウム・亜鉛めっき浴用部材の製造方法 - Google Patents

アルミニウム・亜鉛めっき浴用部材の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融亜鉛めっき浴用シンクロールやサポートロールのような部材の製造方法、特にアルミニウムを含む溶融亜鉛めっき浴に浸漬して使用される部材の表面処理技術に関するものである。
なお、本発明は、アルミニウム含有量が0.05〜10wt%の溶融亜鉛めっき浴に設置されるロールなどに対して特に有用である。
さらに本発明は、溶融アルミニウムめっき浴用部材としても適用が可能である。
【0002】
【従来の技術】
連続溶融亜鉛めっき装置や連続溶融アルミニウムめっき装置などに用いられているシンクロールは、図1に示すように、めっき浴中に浸漬して用いられるものである。このシンクロールは、溶融亜鉛などの溶融金属中に常時浸漬されていることから、使用条件が苛酷であり、基本的には次のような機能を具備することが要求されている。
▲1▼ 溶融金属によってロール表面が侵食されにくいこと、
▲2▼ 通過する被めっき材料と接触しても表面が磨耗しにくく、初期の形状精度を長く維持できること、
▲3▼ 消耗材ではあるが、その寿命が長く、装置コストを抑制できること、
▲4▼ めっき浴中に発生するドロス(主としてFe−Zn合金などの粒子で、金属Znより融点が高くこれが鋼帯面に付着するとめっき層の形状欠陥を招くもの) が、被めっき鋼帯に付着しにくい構成であること、
▲5▼ シンクロールの外周面に設けられているドロス排出用らせん溝に起因する色調むら、光沢むらなどのめっき表面欠陥(いわゆる「グルーブマーク」と称されている)が発生しにくいものであること。
【0003】
これらの要求に応えられる従来のシンクロールとしては、a.ロール外周面に、耐溶融金属侵食性に優れた被覆層を設けたもの、b.ロール外周面に形成するらせん溝の形状を改善したもの、などがある。
前者のロールとしては、たとえば▲1▼特開平1−225761号公報に開示のような、WC−Coサーメットを高速ガス溶射法を用いて被覆したもの、▲2▼特開平5−209259号公報に開示のように、炭化物−硼化物−Coまたは炭化物−硼化物−Co・Cr系サーメットをプラズマ溶射や高速フレーム溶射法によって施工したもの、▲3▼実開平3−63565 号公報に開示のように、化学的緻密化処理法によってCrO3の水溶液を塗布して被覆したのち、加熱処理を行うことによって、該溶射皮膜の微細気孔中にCr2O3 微粒子を含浸する方法などが提案され、実用化されている。
また、後者のロールについては、▲4▼ロール表面に図2(a), (b)に示すような、らせん溝を刻設したものが古くから知られているほか、▲5▼実開平3−74654 号公報に開示のような、ロール胴周面に深さ0.05〜0.5mm 、幅0.05〜1.6mm 、ピッチ0.5 〜10mmの連続もしくは非連続な溝を設けたもの、▲6▼特開平4−301057号公報に開示のような、ロール胴周面に高低差で0.5 〜5mmの凹凸面を形成することにより、搬送材とロール外周面とが直接に面接触しないようにしたシンクロール、などが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これらの各従来技術は、ロール表面形状の長期安定化やロール表面のZn−Al−Fe金属間化合物の付着, 成長防止、およびドロス排出用らせん溝が鋼板と接触することによって生じるめっきの色調あるいは光沢のむらの軽減にかなりの効果を発揮してきた。しかしながら、近年、自動車用防錆鋼板などに求められている亜鉛めっき鋼板の品質はますます高度化しており、従来の改善技術では必ずしも満足すべき状態にはない。すなわち、めっき鋼板の機械的性質はもちろんのこと、塗装の下地の分野についても、たとえばめっきの点状欠陥あるいは模様欠陥などに対する表面品質への要求がさらに高まっているのが実情である。
【0005】
このような技術的背景の下で、発明者らは、めっき品質のさらなる向上を図るべく研究を進めるうちに、めっき鋼板表面の欠陥は鋼板とロールとの接触面、とくにロール表面のごく小さな形状欠陥 (面, 線, 点) に起因することをつきとめた。しかも、この形状欠陥は、表面皮膜自体の形状欠陥よりもむしろこの皮膜表面に付着しためっき浴中成分 (ドロス等) に起因していることがわかった。そして、このめっき浴中成分は、微細なFe−AlあるいはFe−Al−Zn金属間化合物であることも判明した。
【0006】
ところで、上掲の特開平1−225761号公報などが開示するWC−Coサーメットや特開平 5−209259号公報が開示する炭化物−硼化物−Coサーメット溶射皮膜などは、耐溶融金属性を有する材料であるからロール基材の保護には一応は有効である。しかし、前記溶射皮膜中にはX線回折法では同定できないほどの僅少な量の金属Co相が存在する。そして、この溶射皮膜中のCo相は、溶融Zn−Alと親和性をもつことから、Fe−AlあるいはFe−Al−Zn金属間化合物 (ドロス) を誘引し、ドロス付着を促進すると考えられる。
さらに、従来技術による溶射皮膜の耐食性およびドロスの付着現象が、溶融亜鉛めっき浴の組成特にAl含有量によって甚だしく異なり、常に安定した性能を発揮しないことが判明した。
また、実公平 7−48665 号公報で開示するCr2O3 による緻密化処理についても、溶融Zn−Alと接触するロール表層部では、溶融金属AlがCr2O3 を還元して金属Crを生成させる。従って、めっき浴にAlを共に含有するような溶融亜鉛めっき浴中での耐用性は、Cr2O3 では熱力学的に不安定となり、皮膜の劣化が早期に起こり、しかも上記金属間化合物の付着が促進されるという課題があった。
【0007】
そこで本発明の目的は、耐溶融亜鉛性が高く、ドロスの付着が少なく、そしてこのドロスの付着に起因するめっき鋼板の品質低下の少ない部材表面処理技術を提案するところにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上掲の目的を実現すべく鋭意研究する過程において、炭・硼化物系サーメット溶射皮膜を、アルミニウムを含有する溶融亜鉛めっき浴中へ浸漬したときに、その溶射皮膜表面で起こる溶融金属の挙動から、本発明の目的を達成するには、耐溶融亜鉛性に優れた溶射皮膜の形成に加え、さらに該溶射皮膜の表面に濃縮するAl−Zn合金膜の作用を利用することが有用であるとの知見を得て本発明に想到した。
【0009】
発明の製造方法を適用して製造しようとするアルミニウム・亜鉛めっき浴用部材は、鋼鉄製基材の表面に、金属を3〜20wt%含み、残部が金属炭化物と金属硼化物とで構成される膜厚80〜500μmのサーメット溶射皮膜が形成され、さらにこのサーメット溶射皮膜の表面に、アルミニウムを含む溶融亜鉛めっき浴中の平均アルミニウム含有量より高い濃度のアルミニウム−亜鉛合金膜を形成なるものである。
【0010】
即ち、本発明は、鋼鉄製基材の表面に、金属と金属炭化物とを予め焼結することにより、その金属成分のすべてもしくはその一部を金属間化合物にしたものと金属硼化物とを混合してなる炭・硼化物系サーメットを溶射して被覆し、次いでまず、Alを5wt%以上含有する高濃度アルミニウム−亜鉛溶融浴中に浸漬して炭・硼化物系サーメット溶射皮膜の表面に高濃度アルミニウム−亜鉛合金膜を形成し、その後、Al:0.1〜5wt%未満の低濃度アルミニウム−亜鉛溶融浴中に浸漬することを特徴とするアルミニウム・亜鉛めっき浴用部材の製造方法を提案する
【0011】
なお、本発明において、鋼鉄製基材の表面に施工するサーメット溶射皮膜の成分は、
(a) 金属として、CoおよびCrから選ばれた1種以上、
(b) 金属炭化物として、 Cr3C2, TiC, ZrC, WC, B4C, NbC, MoC および SiCから選ばれる1種以上、
(c) 金属硼化物として、TiB2, ZrB2, HfB2, VB2 , TaB2, NbB2, W2B5(WB でもよい) , CrB2およびMoB から選ばれる1種以上
であることが好ましい。
【0012】
また、本発明においては、炭・硼化物系サーメット溶射皮膜は、金属と金属炭化物とをあらかじめ加熱焼結させることにより、その金属成分のすべてもしくはその一部を金属間化合物にしたものであることが好ましい実施態様となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
発明者らの知見によると、炭・硼化物系サーメット溶射皮膜を、溶融状態の含Al−Zn浴中に浸漬すると、該溶射皮膜の表面には、浴成分のうちAlの反応析出が起こって濃縮し、この濃縮Al含有層が溶融亜鉛による部材の摩耗, 侵食を緩和する作用があることをつきとめた。そこで、以下にそのAl濃縮現象について説明す
る。
【0014】
(1)本発方法の下で製造する炭・硼化物系サーメット溶射皮膜被覆部
本発明方法の下で鋼鉄基材の表面に形成する溶射皮膜は、金属−金属炭化物−金属硼化物からなる炭・硼化物系サーメットで構成されている。この溶射皮膜は、高速フレーム溶射法またはプラズマ溶射法や爆発溶射法によって、下記の溶射材料を基材表面に溶射して形成されるものである。
a.金属として、Co,Crから選ばれる1種以上を使用する。
b.金属炭化物として、Cr3C2,TiC,ZrC,WC,B4C,NbC,MoC,TaC,SiCから選ばれる1種以上を使用する。
c.金属硼化物として、TiB2,ZrB2,HfB2,VB2,TaB2,NbB2,W2B5(WBでもよい),CrB2,MoBから選ばれる1種以上を使用する。
【0015】
上掲の3種類の材料群は、金属を3〜20wt%、残りを金属炭化物と金属硼化物からなる組成とすることが好適である。この理由は、金属成分の量が3wt%より少ないと、金属炭化物粒子との結合力が弱くなり、溶射皮膜を形成した際にその粒子間結合力が弱くなり、機械的衝撃や熱衝撃によって容易に破壊したり、剥離する。一方、この金属成分の量が20wt%より多いと、粒子間結合力は向上するものの、溶融亜鉛による侵食作用を受けやすくするとともに、ドロス成分の付着が多くなるので適当でない。
【0016】
さらに、この溶射材料は、まず金属炭化物と金属の粉末を非酸化性あるいは浸炭性雰囲気中で加圧焼結した後、これを粒径5〜50μmに粉砕したものを準備し、これに金属硼化物粒子を物理的に混合して製造したものを用いることが好適である。この理由は、金属炭化物と金属との焼結によって、金属の大部分は金属炭化物もしくはその中に含まれている遊離状の炭素と反応して金属間化合物 (例えば、Co3W3C, Cr23C6など) に変化し、遊離状態の金属成分がほとんど消失するか、たとえ残存していたとしても極めて少ないのが特徴である。
即ち、この残存する僅かな金属成分が、Alを含む溶融Zn浴中において、金属間化合物とともに、浴中のAlを濃縮するのに重要な作用を果たすのである。
【0017】
上述した溶射皮膜は、80〜500 μmの厚さに施工することが好ましく、とくに80μmより薄い場合には、皮膜の気孔を完全に消滅させることが困難であり、一方、500 μmより厚膜にしても格別の効果が得られない。
【0018】
(2) Alを含む溶融亜鉛中における上記溶射皮膜の挙動;
本発明者らは、さきに特許第2758707 号 (特開平4−116147号公報) において、金属炭化物−金属からなるサーメット溶射皮膜をAlを含む溶融亜鉛浴中に浸漬すると、溶射皮膜の表面に付着する溶融金属成分の割合いが、めっき浴中のAl濃度と著しく異なることを開示した。すなわち、溶射皮膜の表面に付着する薄い溶融亜鉛膜中に含まれるAl量が、溶融亜鉛浴中のAl含有量に比較して著しく高くなるAlの濃縮現象が起こり、この高濃度Al濃縮膜が、溶射皮膜に対する溶融亜鉛の侵食を抑制するとともに、被めっき材料との接触を円滑にしてドロス成分の付着を防止することを発見した。
その後、このような現象についてさらに研究した結果、金属−金属炭化物−金属硼化物系サーメット溶射皮膜の表面においてもAlの濃縮現象が発生していることをつきとめ、さらに、かかるAl濃縮現象が、溶射皮膜表面の金属炭化物と金属の反応によって生成する金属間化合物部では緩やかに起こり、その反対に遊離金属部では非常に速く起こり、また、金属炭化物粒子や金属硼化物粒子の上では起こりにくいことも判明した。このことにより、金属炭化物や金属硼化物は、溶融金属との濡れ性が悪く、そのためにドロスの付着を妨げ、耐摩耗性向上の役割りを担当する。
【0019】
一方、Alの濃縮現象が優先して起こる溶射皮膜表面の金属間化合物部および金属部は、同時に溶融亜鉛の侵食反応を受けるところでもあり、またその侵食反応速度は溶融亜鉛中に含まれるAl含有量によって著しく相違することも明らかになった。
このため、本発明において炭・硼化物系サーメットを溶射してなる溶射皮膜については、遊離金属の量を極力抑制する一方で皮膜の表面にAlの濃縮現象が好適に起こるように、金属炭化物/金属の反応による金属間化合物が占める面積を多くすることにした。
【0020】
(3)本発明に係るAl−Znめっき浴用部材の製造方法;
さて、本発明の製造に当たっては、まず、上記溶射皮膜の表面に、Alを含有する溶融亜鉛めっき浴中の平均Al含有量よりも高い濃度(5wt%以上)のAlを含むAl−Zn合金膜を形成することが重要である。例えば、溶射皮膜つき基材を、Al含有溶融亜鉛めっき浴などに浸漬し、皮膜の表面におけるAlの濃縮を速めるとともに、まずは濃度の高いAl含有皮膜を形成し、その後、Al含有量の少ない(0.1〜5wt%未満)溶融亜鉛めっき浴中に浸漬する。この場合、Al濃縮膜の上述した作用機構は飛躍的に向上する。
すなわち、前記 Al 濃縮膜は、上記溶射皮膜を、あらかじめ高濃度Al−Zn浴(例えば、5wt%Al−Zn浴)中に数時間〜数日間浸漬することにより、早期に高濃度Al−Zn膜を形成した後、Al:0.1wt%前後のAl−Zn浴中に浸漬して形成する
【0021】
お、含Al溶融亜鉛浴として、めっき浴を使う場合に、上述した浴中処理を行っても、その浸漬するめっき浴の容量が大きいので、めっき浴中のAl濃度が大幅に変動するようなことはない。
【0022】
【実施例】
実施例1
この実施例では、製造工程の異なる金属−金属炭化物−金属硼化物系サーメット溶射材料を用いて形成した溶射皮膜の耐溶融亜鉛性を調査した。この実施例で用いた溶射材料組成は表1に示すとおりであり、本発明の溶射皮膜は、金属と金属炭化物とをあらかじめ焼結した後、これを粒径3〜10μmに粉砕し、この粉砕物に金属硼化物粒子 (5〜20μm) を有機質バインダーを用いて粒径10〜44μmになるように造粒した材料を用いて、高速フレーム溶射法によって炭素鋼製ロール (SS400, 直径15mm×長さ300mm)の表面に 100μm厚に施工した。
これに対し、比較例の溶射皮膜は、同組成ながら、金属の粉末 (5〜44μm) −金属炭化物−金属硼化物をそれぞれ物理的に混合した材料を用いて本発明と同じ方法で成膜した。
因みに、上記の溶射皮膜を被成したロールを浸漬した溶融亜鉛の組成は、0.1 wt%のAlを含む亜鉛浴であり、470 ℃に保持したこの浴に連続1週間浸漬し、途中24時間毎に溶射皮膜の外観状態を観察した。
表2は、この結果を要約したもので、比較例の溶射皮膜 (物理的に混合) はいずれも24時間の浸漬で溶融亜鉛の侵食を受け、皮膜の一部が局部的に破壊されるとともに、SS400 基材も溶融亜鉛によって侵食されている様子が見られた。これに対し、本発明の溶射皮膜 (金属/炭化物の焼結) は、1週間浸漬後も全く侵食されることがなく、そのうえ、皮膜表面に付着している薄い亜鉛膜も指によって容易に剥離することができた。
【0023】
【表1】
Figure 0004053673
【0024】
【表2】
Figure 0004053673
【0025】
実施例2
この実施例では、表1の2に記載の本発明の材料によって溶射皮膜を100 μm厚に形成した後、470 ℃の温度に保持した下記亜鉛およびAlを含む溶融亜鉛浴中に2週間連続浸漬したのち引き上げ、皮膜の表面に付着している薄い溶融亜鉛膜中のAl濃度を測定するとともに、溶射皮膜の外観状況を観察した。
表3は、この結果を取りまとめたもので、比較例の、Alを含まない純亜鉛浴中に浸漬した皮膜は、7日間〜12日間の浸漬で皮膜が局部的に破壊された。これに対し、Al含有量が0.05wt%である溶融亜鉛に浸漬したものは、皮膜は健全であるうえ、その表面に付着している亜鉛皮膜中のAlは1.8 〜3wt%に濃縮していた。このAlの濃縮傾向は、Alを含むすべての溶融亜鉛浴浸漬皮膜について認められ、また、すべての溶射皮膜は健全であった。
この実施例の結果から明らかなように、本発明の溶射皮膜は、Alを含む溶融亜鉛浴に対し優れた性能を発揮するが、Alを含まない溶融亜鉛浴に対しては耐久性に乏しいことが判明した。
【0026】
【表3】
Figure 0004053673
【0027】
実施例3
この実施例では、本発明の溶射皮膜の表面に濃縮する高濃度Al−Zn膜を早期に形成して利用するため、あらかじめ比較的多くのAlを含む亜鉛浴中に溶射皮膜を浸漬して、その表面に短時間で高濃度Al−Zn膜を形成した後、Al含有量の少ない亜鉛浴中に浸漬する方法の効果について調べた。すなわち、はじめから溶射皮膜をAl含有量の少ないZn浴中に浸漬すると、その表面にAlの濃縮膜が生成するまでにはかなりの時間を要し、この期間中にZnが皮膜中に侵入して溶射皮膜の寿命を短縮させる現象を防止することを狙ったものである。
【0028】
表1記載の1, 4, 5の材料を用いて実施例1の要領でSS400 ロール材の表面に溶射皮膜を100 μm厚に形成したものを準備した。
表4は、溶射皮膜を480 ℃に維持したAlを含まない純Zn (JIS H 2108規定の2種) 、0.05wt%Al−Zn、0.5 wt%Al−Zn浴中に浸漬して、それぞれの皮膜表面に侵入してくるZnの拡散速度を求め、100 μm厚の溶射皮膜を貫通するのに必要な日数を計算によって求めたものである。この結果から明らかなように、純Zn浴中では10〜11日間でZnが皮膜を貫通するが、0.05wt%Al浴では2.4 〜2.6 倍、0.5 wt%Al浴では20〜30倍の日数を必要としており、溶射皮膜の表面に形成される高濃度Al−Zn膜がZnの内部侵入に対して効果のあることがわかった。
また、表5は、これらの溶射皮膜をあらかじめ、5wt%Al−Zn浴中に24時間浸漬した後、純亜鉛浴 (JIS H 2108規定の2種) と0.05wt%、0.5 wt%Al−Zn浴中に浸漬し、皮膜表面から内部へ拡散侵入するZnの速度を測定することによって皮膜表面に早期に形成されるAl濃縮膜の効果を評価した。
この結果から明らかなように、あらかじめ高濃度Al−Zn膜を溶射皮膜の表面に形成しておくと、純亜鉛浴中においてもZnの内部拡散速度が遅くなり、また、Alを含むZn浴中においてもその効果が認められ、特に低濃度Al−Zn浴中のほうがより効果が顕著であった。
【0029】
【表4】
Figure 0004053673
【0030】
【表5】
Figure 0004053673
【0031】
実施例4
この実施例は、13Cr系ステンレス鋼製ロール (直径250 mm, 面長1800mm) の表面に、表1記載のNo.3材料を高速フレーム溶射法によって 120μm厚に皮膜を形成させた後、Alを0.12wt%含む溶融亜鉛めっき用サポートロールおよびシンクロール (図1参照) として適用した例である。
亜鉛めっき浴は、465 ℃で鋼板を連続的に処理したが、20日後、ロールを浴中から引き上げ、ロール表面を目視観察した結果では、亜鉛の付着は認められるもののドロス類の異常付着はなかった。
表面に付着している亜鉛を採取し、その中に含まれているAl量を測定した結果、6.5 〜7.8 wt%も濃縮されており、Al濃縮膜の存在が実機浴においても有効に作用していることが確認された。
その後、これらのロール表面に付着している亜鉛を、5%HCl で溶解除去したところ、溶射皮膜には全く異常は認められなかった。
【0032】
この実施例では、表1記載の2および3のサーメット溶射皮膜 (膜厚 120μm) の上にさらに50μm厚の純Al、35wt%Al−Zn溶射皮膜を有する鋼鉄製ロールを製作し、これを 470℃、0.08wt%Al−溶融Zn浴中のシンクロールとして適用した。従来、この亜鉛めっき浴にはWC−12wt%Coサーメット溶射皮膜を施したシンクロールが使用されており、4週間の使用で皮膜がZnによる侵食を受け、めっき鋼板の品質が低下していたものである。
これに対し、本発明の溶射皮膜の表面にあらかじめAl, Al−Zn合金溶射皮膜を形成させておくと、低濃度Al−Zn浴中に浸漬した直後から、その表面にZnの内部侵入を防止する高濃度Al−Zn膜が形成される結果、30日間の連続運転後でも溶射皮膜は健全な状態を維持しており、同時に高品質めっき鋼板の製造に成功することができた。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、アルミニウムを含む溶融亜鉛と接触することによって、溶射皮膜の表面に、亜鉛による溶射皮膜の侵食を抑制する高濃度アルミニウム含有亜鉛層を形成する本発明の金属炭化物−金属硼化物−金属系サーメット溶射皮膜を施工したロールは、耐溶融亜鉛性が高く、しかもドロスの付着が少なく、そしてこのドロスに起因する品質低下のない部材を提供することができる。
また、本発明は、シンクロールやサポートロールとして使用することによって、高品質の亜鉛めっき鋼板を長期間にわたって生産することが可能となり、生産性の向上、生産コストの低減などに寄与するところが頗る大きい。
さらに、本発明の溶射皮膜を施工したロール類は、皮膜表面に形成されたAl, あるいはAl−Zn合金溶射皮膜によって防食されているため、予備品としてまた輸出搬送など長期間にわたる保管にも腐食や変質することがなく好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶融亜鉛めっき装置の説明図である。
【図2】ドロス排出用溝を有する従来の溶融亜鉛めっき浴用ロールの略線図である。

Claims (1)

  1. 鋼鉄製基材の表面に、金属と金属炭化物とを予め焼結することにより、その金属成分のすべてもしくはその一部を金属間化合物にしたものと金属硼化物とを混合してなる炭・硼化物系サーメットを溶射して被覆し、次いでまず、Alを5wt%以上含有する高濃度アルミニウム−亜鉛溶融浴中に浸漬して炭・硼化物系サーメット溶射皮膜の表面に高濃度アルミニウム−亜鉛合金膜を形成し、その後、Al:0.1〜5wt%未満の低濃度アルミニウム−亜鉛溶融浴中に浸漬することを特徴とするアルミニウム・亜鉛めっき浴用部材の製造方法。
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